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神経組織各部位におけるmyo-inositol代謝機構と易傷害性との関連性 : 高血糖及び低血糖状態における検討

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Academic year: 2021

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(1)

神経組織各部位におけるmyo-inositol代謝機構と易

傷害性との関連性 : 高血糖及び低血糖状態にお

ける検討

著者

宮本 泰文

発行年

1987-03-24

URL

http://hdl.handle.net/10422/1623

(2)

氏名・(本籍) 学位の種類 学位記番号 学位授与の要件 学位授与年月日 学位論文題目 みや もと やす ふみ 宮 本 表 文  (徳島県) 医学博士 医博第33号 学位規則第5条第1項該当 昭和62年3月24日l 神経組織各部位におけるmyo−inositol代謝機構と易傷害性 との関連性 一高血糖及び低血糖状態における検討− 審 査 委 員 敏  博 男 潔 幸 田 田 門 前 繁 上 授 授 授 教 教 教 査 査 査 主 副 副 論 文 内 容 の 要 旨 〔目 的〕 糖尿病性神経障害は末梢神経障害が主体であり、中枢神経系の障害はほとんど見られない。 他方、低血糖性神経障害は末梢神経障害は稀で中枢神経障害が起こりやすく、かつ脳内各部位 により障害の程度が異なると言われている。しかし、これら代謝性神経障害における神経組織 易傷害性の差異がなぜ生じるかは未だ明らかでない。そこで本研究では、神経組織内myo− inositol(MI)濃度が神経機能と密接に関連している事に着目し、①高血糖ラット、⑧低血糖ラット、 ⑨MIの生合成を阻害するリチウム投与ラットを用いて神経組織内各部位のMI含量を測定した。 また、中枢神経系でMI代謝を促進しているコリン作動性神経をブロックする目的でアトロピ ンをまた、同じくMI代謝を促進する甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を授与し検討 を行った。 〔方 法〕 ①高血糖ラットは、ストレプトゾトシン(50mg/生g)投与14日後のものを、高血糖+TRH 投与ラットは、高血糖ラットにTRH(10mg/kg)を投与し30分後のものを用いた。⑧低血糖ラ ットは、絶食ラットにインスリン(80U/kg)を投与Ll時間後のものを、低血糖+アトロピン 投与ラットは、インスリン投与10分後に硫酸アトロピン(100mg/kg)を投与し50分後のものを 用いた。㊥リチウム投与ラットは、塩化リチウム(10meq/kg)を投与し8時間のものを、リチ ウム+TRH投与ラットは、リチウム投与7.5時間後にTRH(10mg/kg)を投与し30分後のもの を用いた。 検体は、ラットを断頭後坐骨神経、脊髄、脳神経、大脳皮質、尾状核∼視床、小脳皮質、脳 幹を単離し、除蛋白後MI測定に供した。 −44−

(3)

MI測定は、Stepanekの方法を神経組織に応用した。即ち、HPTLCプレート上に0.5 〝1の検体を滴下し、風乾後展開を行った。展開液は、アセトン、メタノール、水(2:2:1) の混合液を用いた。展開後、3%酢酸鉛溶液5ml、ウラニン溶液2.5ml及び塩化メチレン100 〟の混合液中に浸し、風乾後MIの蛍光を測光した。 〔結 果〕 ①高血糖群では大脳皮質、小脳皮質でMI含量に変化は無かったが、脊髄(正常群=6.98± 0.38〟moles/今 wet weight、高血糖群=5.24±0.42)、坐骨神経(3.74±0・15、3・01 ±0.15)にて有意な減少を認めた。高血糖+TRH群では高血糖群との問に有意差はなかった。 血糖値は、正常群(145±6mg//ul)、高血糖群(422±19)、高血糖+TRH群(452±22) と後2群で有意に上昇していた。 ⑧低血糖群では小脳皮質、脳神経、坐骨神経でMI含量に変化は無かったが、大脳皮質(正 常群=7.44±0.29、低血糖群=4.82±0.44)、尾状核∼視床(7.05±0.22、5.76±0.33)、 脳幹(7.96±0.32、6.07±0.26)、脊髄(5.72±0.30、4.16±0.23)にて有意な減少を認 めた。低血糖+アトロピン群では、いずれの組織でも正常群に比LMI含量に有意差は無かっ た。血糖値は、低血糖群(49±4)、低血糖+アトロピン群(36±6)で有意に減少していた。 ⑨リチウム投与群では小脳皮質、坐骨神経でMI含量に変化は無かったが、大脳皮質(正常 群=7.14±0.34、リチウム群=4.55±0.13)、脊髄(6.98±0.46、5.20±0.27)にて有意 な減少を認めた。リチウム+TRH群ではさらに小脳皮質でもMI含量の減少を認めた(正常群 =7.48±0.36、リチウム群=7.41±0.33、リチウム+TRH群=5.52士0.37)。血糖値は、 3群間に有意差は認められなかった。 〔考 察〕 高血糖時、中枢神経ではMI含量は変化せず、坐骨神経で減少していた。これはMIが中枢 ではグルコースよりの合成が主で、末梢では外部よりの取り込みが主であり、高血糖時にはこ の取り込みが障害されるためと考えられている。高血糖時にMI代謝を促進するTRHを投与 してもMI含量に影響しなかったがこれは、中枢ではMIの合成が充分になされており、末梢 ではTRHの受容体が乏しいためと考えられた。低血糖状態では、小脳を除く中枢神経でMI 含量が減少し、坐骨神経では変化せず、またアトロピンを投与する事によりこの減少は阻止さ れた。これは、中枢神経では主にコリン作動性神経系の働きによりMIが代謝されるが、低血 糖時にはMIのグルコースからの合成が減少し、MI含量の低下を来すと考えられ、コリン作 動性神経系に乏しい小脳、及びMIが外部より補充される坐骨神経では減少しないと考えられ た。リチウム投与によりMIの生合成を阻害すると、小脳を除く中枢神経でMI含量の減少を 来し、さらにTRHを負荷すると小脳でもMI含量が減少した。これは低血糖時同様、中枢神 経では主にコリン作動性神経系の働きによりM工が代謝されており、MIの合成をブロックする 事によりMIが減少し、小脳では外部より神経伝達物質としてのTRHを投与する事により同様 の減少が生じると考えられた。 〔結 論〕 MI代謝は高血糖及び低血糖状態において、中枢神経と末梢神経、中枢神経の中でも小脳皮 −45−

(4)

質とその他の部位で異なっており、これらMI代謝の差異が高血糖及び低血糖状態における神 経障害並びに神経組織の易傷害性と関連している可能性が示唆された。

学位論文審査の結果の要旨

本研究は、高血糖性および低血糖性神経障害においてみられる組織易傷害性(vulnerabil T ity)の違いを、myO−inositol代謝の面から実験的に検討を加えたものである。実験とし てはラットの大脳皮質、線条体一視床、小脳皮質、脳幹、脊髄、坐骨神経におけるmyo− inosito】量の変動を測定している。 末梢神経(坐骨神経)におけるmyo−inositol含量は高血糖群で減少がみられるに対し、 低血糖群では変化は見られなかった。逆に中枢神経(とくに大脳皮質)では高血糖群で変化が なく、低血糖群で低下がみられ、また部位による差異が認められた。これはmyo−inositol が末梢神経では外部よりのとり込みにより、中枢神経では細胞内におけるグルコースよりの合 成によっていることに起因すると考え、その合成を阻害するリチウムを投与したところ、坐骨 神経では変化なく大脳皮質では低下がみられ、この考えが支持された。 神経細胞膜におけるmyo−inositolの代謝回転はムスカリン性アセチルコリンレセプター など数種の受容体と連動して神経インパルスの伝達に関与することが考えられている。この点 に注目して、動物にアトロピンを授与したところ低血糖における大脳皮質myo−inositol量低 下が阻止され、さらにいずれの条件下でも何等変動を示さなかった小脳皮質の含量もリチウム での合成阻止下にTRHを投与すると低下した。これは中枢神経における低血糖時の組織易傷 害性の違いとよく合致している。 以上、本研究の結果は、血糖変動によっておこる神経組織の傷害の一因としてmyo−inos主 tol代謝の変動が考えられること、また、それが中枢神経系において神経興奮の伝達機構とも からみあっている事を示唆する興味あるものであり、学位授与に価するものと考える。 −46−

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