下歯槽神経切断による神経障害性疼痛モデルマウス
における三叉神経節細胞のテトロドトキシン抵抗性
電位依存性Na+チャネル電流の減弱
著者
前川 翠
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第19189号
URL
http://hdl.handle.net/10097/00128745
論
文 内 容 要 旨
学籍番号 B6DD1022 氏 名 前川 翠 神経障害性疼痛には電位依存性Na+チャネル(Nav)が関与しているとされているが,顔面領域にお ける神経切断時の疼痛閾値低下の詳細なメカニズムは明らかになっていない.本研究では,三叉神経第 三枝の障害により顎顔面領域に神経障害性疼痛が発生した際の三叉神経節(TG)細胞における電位依 存性Na+チャネルの役割について電気生理学的に解析した.生後8 週の雄性マウスの下顎孔周辺にて左下歯槽神経を切断した.術後4 日目から 14 日目にわたり von Frey hair により下顎~頬部に機械刺激 を与え,機械逃避反射行動を経日的に観察した.下歯槽神経切断側は未手術の対照群と比較して術翌日 から術後14 日目まで機械逃避反射閾値が低下した.従って,神経障害性疼痛モデルを確立したと判断 した.三叉神経節内において障害を受けた下歯槽神経由来の細胞を鑑別するため,手術時に神経切断部 に10% Rhodamine B isothiocyanate–Dextran を投与した.術後 7 日目および 14 日目にマウスの左 TG を摘出し,酵素処理にて細胞を単離した.対照群には同週齢の未手術マウスを用いた.神経障害性 疼痛モデルマウスから単離したTG細胞においては蛍光染色の有無により障害を受けた下歯槽神経由来 の染色細胞群と下歯槽神経に由来していない非染色細胞群に鑑別し,それぞれの細胞に対しホールセル パッチクランプ法を適用し膜電位固定下に電位依存性Na+チャネル電流を記録し,300 nM テトロドト キシン(TTX)を投与し TTX 抵抗性(TTX-R)電位依存性 Na+チャネル電流を記録した.両電流の差 分がTTX 感受性(TTX-S)電位依存性 Na+チャネル電流となる.更に,TTX-R 電位依存性 Na+チャネ ルは不活性化の膜電位依存性の違いからNav1.8 電流と Nav1.9 電流に分けてそれぞれの電流-電圧関係 を解析した.染色細胞群では非染色細胞群および対照群と比較して術後7 日目および術後 14 日目にお いてTTX-R 電位依存性 Na+チャネルの電流密度が著しく減少した.同様にパッチクランプ法を用いて 活動電位を記録したところ染色細胞群では非染色細胞群および対照群と比較して活動電位振幅の半値 幅および活動電位間感覚が著しく減少した.非染色細胞群と対照群間では有意差は認められなかった. 下歯槽神経切断による神経障害性疼痛において障害を受けた神経細胞のTTX-R 電位依存性 Na+チャネ ル電流の減弱とそれに伴う初期活動電位発生頻度の亢進を見出した.