社 会 系 教 科 教 育 学 会 『 社 会 系 教 科 教育 学 研 究 』 第 6 号 1994 (pp.59-64)
モ デ ル 的 ア プ ロ ー チ の 応 用 と 概 念 探 究 学 習
一高等 学校 の都市単 元 の授業設計 −
An Adaptive Model Approach and the Inquiry Teaching of
Concepts :
A Lesson Plan for City Units m High School
沈 光 澤 ( 韓 国 教員 大 学 校 大 学 院) 1 はじ めに どのような現 代地理学 の地 理的見方 ・考え方を 授業 に応用す れば, 3回 も繰 り返す類 似な概念学習 でも興 味が深 まる可 能性があ るのか。教科内 容にお ける多 く の概念を どのよう に構造化し たな らば, 制限 された時 間内に効率 的に概念を 習得させ る授業 設計が できるの か。いかな る質問過 程と問題解決 過程を通 して社会現 象を捉え させたな らば, 学習者 は質の高い知 識と思考 力 を身 に付 けて,未来 に向か って自己学習力を 向上さ せる ことがで きるのか。 本研究 では以 上 の3つの問題 意識に基づ く研究仮 説を 立てて, 高校地理 の授業 を改 善しよ うと試 みた。 授業構成 論で は, 現代 地理学お よび地理教育 の地理 的認識方 法を考察し, 都市単元 の中で取り上 げた概念 を分析 し, 概念 の構 造化を工夫 し, 説明 の論 理と問い の過程を 検討して, 理解理論を考 察した。なお, 授業 構成論 の検討,20事 例の授業 分析, 事例地域 の調査結 果に基づ く学 習指導案A 型およ び学習指導案B型 を設 計し た。 ちな みに,学 習指導案A 型(新地 理Bの主旨 を生か した授業 モデル) はモデルの要件(現 実の再現 性,単 純性,検証可 能性) が揃って,絶対空 間と相対 空間 と人 間活動 と の歴 史 ・ 地 理的 背 景を 4つ の 視点 ( 構造面:理論 的接近,政 治経済的接 近, 機 能 面 :生 態文化 的接 近,社 会行動論的接近 )か ら捉え るモ デル 的 アプ ロ ーチの応用(Adaptive Model Approach) であ る。 学習指導案 B型(概 念探究型授業 モデ ル) は 社会事象 の本質 的なことが らについて客観 的で合理的 な知 識(概念)を 獲得さ せる中心概念を形 成す るため に,情 報の収集, 吟味, 解釈を 通じて法則 的知識 へと 発 展 さ せて い く 探究 的 能 力 を 育 て る 概 念 探 究 学 習 (Inquiry Teaching of Concepts) で あ る。 更 に, 2つ の授業 モ デルの現場 への適用の可能 性の検討 とそ の結果を 分析す るために,実 験授業 に対 する質問紙 調 査およ び評 価問 題の結果 につ いて大型計 算機を利用 し て,分 散分析, 相関分析,因 果推論,因子 分析を実施 し た。 その結果 から3つ の研究 仮説を検証 しなが ら, 地 理 授 業 の設 計 の 要 件 を 定 義 し た。 2 授 業 構 成 論 の検 討 ( 1 )現 代 地 理学 と 地 理 的見 方 ・ 考 え 方 コ ン サ イ ス20世 紀 思 想 事 典 に よ れ ば, パ ラ ダ イ ム は 現 場 の科 学 研 究 に お い て 問 題 の立 て 方 や 解 き方 を 導 く 理 論 的 指 針 や 手 続 き の総 体 を 意 味 す る が, T. S. タ ー ン( ア メ リ カ の科 学 史 家 ) 自 身 は こ れを 「 任 意 の時 期 に , 科 学 の 専 門 分 野 の 成 員 が, そ こ か ら 自 分 た ち の仕 事 の実 践 を 学 ぶ よ う な 特 別 の モ デ ル とな る業 績 」 と定 義 し て い る。(1)一 般 に , 各 学 問 分 野 に お け る 課 題 へ の接 近 は, 記 述 的 段 階 お よ び分 類 的 段 階 か ら 始 ま り , 徐 々 に モ デ ル や 理 論 , 法 則 を 取 り入 れた 説 明 的 段 階 に 発 展 す る。 現 代 地 理 学 もい わ ゆ る 計 量 革 命を 経 て , 個 性 記 述 的接 近 か ら法 則 定 立 的 接 近 の 段 階 に入 っ た と み る こ と が で き る 。 特 に, 人 文 地 理学 の 分 野で は, 顕 示 的 理 論 を 指 向 す る 接 近 が 著 し く 強化 さ れ た。 ク ー ン の い う パ ラ ダイ ム概 念 か ら み る と, 地 理 学 で は, 大 部 分 の研 究 者 集 団 が 景 観 に 対 す る体 系 記 述 と い う パ ラ ダ イ ムを 受 容 し て い た状 況 か ら, 数 多 く の パ ラ ダ イ ムが 互 い に そ の 優 越 性 を 競 り 合 う状 況 へ と 変 わ っ て き た と い え よ う。 地 理 学 は, 1960 年 代 の論 理実 証 主 義 の空 間 に 対 す る 科 学 的 モ デ ル が現 実 に 即 し て み た 場 合 , 非 実 際 的 で あ る こ と か ら, 論 理 実 証 主 義 の理 論 的 接 近 方 法 に 修 正 を も た ら し て き た。 す な わ ち, 理 論 に 基 づ い て 観 察 に 新 た な要 素 ( 行 動 , 現 象 , 構 造 な ど ) を 加 え た 。 例 え ば, W. Bunge は 都 市 内 部 構 造 をGarrison の 移動 の 法 則 に よ っ て 検 証 し て い る 。(2)し か し , 人 間主 義 地 理 学 者E. Relph は 「 環 境 に 対 す る 姿 勢 と い う の は , 経 験 さ れ る も の に対 し て 直接 感 応 で き る よ う に, 考 え る こ と に 対 す る感 じ 取 る こ と, 系 統 性 に対 す る感 応 性 , 説 明 に 対 す る記 述 と 解 釈 , 構 造 に 対 す る 外 見 と 意 味 」 を 強 調 し て い る。(3) 最近 , 資 本 主 義 的 な 世 界 市 場 の発 展 に よ っ て , 自 然 条 件 に 基 づ く個 々 の地 域 的 特 徴 に も社 会 機 能 が もっ と
-59-重要な研究対象となっている。例えば,丁社会の3大
下部構造
(交通,エネルギー,
通信)からみるとき,
距離はコミュニケーションによって空間的機能ではな
く,時間的機能なので距離は時間費用と通信の早さに
よって決定される。Jo
)
Bradshaw (1990)
によると「Gregory
(1978),
Thrift
(1983),
Johnston
(1984),
Taylor (1988)
らによって進められた新しい地誌学は,地域に関する
理論的展望において人間主義(huma
n
is
m)
,構造主
義
(st
r
u
ct
u
rali
sm)
,構造化(st
r
u
ct
u
rat
io
n)
,実
在論(realism)
など少なくとも4つのアプローチが
認められる」ということを指摘している。
(5)以上の
ような研究動向は,人間の生活空間として地球を捉え
るために,地域性を明らかにしようとする地理学のパ
ラダイムの変化に他ならない。
(2)
社会科教育としての地理教育
H.
W.
He
rt
zbe
rgは社会科について4つの定義
「社会科学を単純化させる教科として社会科,社会的
効率性を重視する教科として社会科,社会的目的達成
のための教科として社会科,社会科学として社会科」
を指摘している反面,
(6)
R.D.Ba
r
r,J.
L.B
a
rt
h,
S. S. Shermis
は社会科について3つの社会科教育
の伝統と教育方法
「市民意識の伝達として社会科
(伝
達)
,社会科学として社会科
(発見)
,反省的思考とし
て社会科
(反省的思考)
」を指摘している。
(7)それぞ
れの教育方法について次のように再解釈することがで
きるo
市民意識の伝達としての社会科は社会の価値・信念
を明らかに伝達するために選択的,体系的な知識を重
視する教科中心の教育課程とつながって理解の論理
(他者理解・異文化理解)をとる。これは,
「…を理解
させ…する態度を養う」という態度目標によって,理
解内容が決定される恐れがある。社会科学としての社
会科は知識の構造を重視する学問中心の教育課程とつ
ながって説明の論理
(科学的因果律)をとる。これは,
「・‥について説明することができる」という知識目標
によって,パラダイムから説明内容が決定される恐れ
がある。反省的思考として社会科はデューイの反省的
思考過程の5段階
「困難の漠然とした自覚→困難の明
確化→解決のための仮説の立案→仮説の推論的検討→
検討された仮説の実地検証と結論」の中で発見される
洞察力を重視する経験中心の教育課程とつながって思
考の論理
(問題解決学習)をとる。これは,
「…とい
う問題状況においては…というように行う」プラグマ
ティズム的な技能目標によって,直観から行為内容が
選択される恐れがある。
「1970
年代以後,アメリカでは多くの教育開発計画
が探究過程
,意思決定,価値問題
,生徒指向の
問題
を
強調
している
(8
」
)
これ
は
,生徒の活動と意思決定を
重視
する人間中心の教
育課程
と
して
,社会科が研究過
程
,意
思決定
,価値
問題
,生徒指
向の
問題解決
を通
し
て社
会生活の複雑
な人間関係の
中で成功的に生活
を営
めることと人間社会の改善のために貢献
しうる能力を
培
うことを意図
している
。現在,アメリカではHSG
P (1961-1970)
の
批判か
ら生まれた第
2アメリカ地
理教
育復興運動が1986
年から10
ヵ年計画
で進められ
て
いる
。中山修
一は
『地理教
育ガイ
ドライン(1984)
』
の特徴の中で匚
高校地理学習で習得すべき地理的機能
を5段階法で説明
してあるのも理解
を
しやす
くしてい
ること
,すなわ
ち,地理的発
問
(どこで,なぜ,そこ
で)の機能
,地理的情報の収集機
能,地理的情報の処
理機能
,地理的情報の分析機能
,地理
的一般法則の発
見と検証の機能
とすべ
き5段階の
地理
的機能を初
歩的
段階か
らよ
り高度な段階へ
と提示」
した
ことを挙
げて
いる
(9
。
)
HS
G
Pの都市単元とアメ
リカ地理教育ガイ
ドライ
ンの都市地理
との共通点は概念的知識
を重要なテ
ー
マ
と
して取
り扱う点と地域事例
研究である
。
しか
し,H
S
G
Pの都市単元に比べてアメリカ地理教育ガイ
ドラ
インの都市地理の
内容は
,
「時事的問題とか現実的争
点などと関連する実用的
,応用
的内容が強調
され
てい
るのがわかる
(lO
」
)
これ
は,社会変化に主体的に対応
する創造
力
,情
報処理活用の
育成などと関連
され
るの
がわかる
Oなお
,匚
歴
史
・文化的土台」を強調
してい
る
。これ
は
,生徒に異文化理解
,他
者理解な
どの
多面
的考察
を通
して地理的事
象の本
質的
把楓地理
的見方
・
考
え方
を発展
させてい
くことを意味する
。
(3)
教科内容の概念と構造化
林上が都市地理学の基礎概念と
して
「絶対距離
と相
対距離
,位置
と立地
,近接性
,システム
,機能地域と
等
質地域
,空間的行動」6つを挙
げている
(11
)
ように
高校地理教科書の都市単元用語の選
定をみ
ると
,新た
な地理
B教科書の
中では都市発
達と都市形態
と都市機
能の部分
では
,その用語数が大きく減少
していること
がわか
る
。その
理由を考
えるに
当たっては
,3つの前
提がある
と考
えられる
。
1つは
,第
2次産
業,第3次産
業の発
達によって,
人
口と経済活動の集積が著
しくなる都市
化の
加速
化段
階には
,都
市立地,都市発展のため
に都市分類が要求
され
ているが,
1990
年現在都市人口率が77.4%
に至る
都市
内部の住環境
とか都市間の
関係
とか都市圏などが
重要なテ
ー
マと
して取
り入れ
られ
るだ
ろう。
1つは
,産
業化
,国際化,情報化の時代に,国家全
体
として都市
と日常都市
生活圏との関係
を考
える
とき
,
−60−
時 間 的 変 化 の視 点 か ら都 市 発 達 を 説 明 す る こ と お よ び 都 市 を た だ 機 能 の み で 分 類 す る こと が 記 述 的 知 識 に留 ま る可 能 性 が あ る の で , 現 象 の 論 理 的 , 本 質 的 把 握 を す る こ と が 難 し い だ ろ う。 他 の 1 つ は, 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 の中 にお け る 内 容 の扱 い で は,「 集 落 の発 生 論 や 形 態 論 , 機 能 論 に は 深 入 り し な い こ と と 示 さ れ て い る こ と に 留 意 し, そ れ ら につ い て 都 市 と村 落 の基 本 的 な 性 格 や 課 題 を 把 握 す る上 で 必 要 な 範 囲 に と ど め る よ う に 留 意 す る 」(12) こ と が 明 示 さ れ て い る。 地 理 学 の 研 究 を 4つ に 類 型 化 ( 個 性 記 述 研 究 , 問 題 解 決 研 究 , 方 法 論 開 発 研 究 , 理 論 法 則 研 究 ) し た A. K. Chakravarti & R. C. Tiwari は 「Ackerman (1958) Harvey (1969) Berry (1980) Morrill (1987) 学 者 た ち は, 地 理 研究 が 学 問 と し て 生 き 延 び る た め に は 他 学 問 で も 意 味 深 い と認 定 す る科 学 的 理 論 を 創 る べ き で あ る」 と 述 べ て い る 。(13)し か し , 理 論 は抽 象 度 の 高 い 知 的 産 物 で あ り, 個 々 の具 体 的 事 例 に 対 し て い ち い ち 適 用 す る こ と は 困難 で あ る。 そ の よ う な 場 合 , 理 論 と 現 実 と の 橋 渡 し 的 な 役 割 を 演 ず る の が モ デ ル で あ る。 モ デ ル は理 論 ほ ど 抽 象 的 で は な く現 実 の 特 性 を あ る程 度 反 映 し た 枠 組 み と し て 構 成 さ れ る。 ま た , モ デ ル は実 際 に 資 料 処 理 を 通 し て 検 証 す る こ と が で き る。 そ こで , モ デ ル の要 件 よ り, 次 の よ う に 学 習 内 容 を 構 造 化 して 実 践 的 な 授 業 設 計 が で き る こ と で あ る。 こ れ を 「 モ デ ル 的 ア プ ロ ー チ の応 用 」( 図 1 ) と 名 付 け る こ と に す る 。 E 構 理 論 的 接 近 D 。人 文 地 理 的 事 実 造 F . 政 治 経 済 的 接 近 ☆ モ デ ルの 要 件 ① 現実 の再 現 性 ② 単純 性 ③ 検証 可 能 性 ( 実 際 資 料処 理) 機 G . 生 態 文 化 的 接 近 能 H . 社 会 行 動 論 的 接 近 ( 図 1) モ デ ル 的 ア プ ロ ー チ の 応 用 ( 4) 説 明 と 質 問 の 過 程 P, → TT → EE → P ,( PIとP 凵 ま問 題 点 , TT は あ る 任 意 の 解 答 と か 理 論 , そ し て EE は 間 違 い を 除 く 段 階) と い うK. Popper の 立 場 か ら み る と , 概 念 探 究 過 程 とい う こ と は概 念 を 検 証 し て い く 説 明 す る 過 程, 間 違 い を 修 正 し て い く 過 程 であ るがR. Haines ―Young & J. Petch は 「 説 明 は 理論 に よ る 観 察 可 能 な 現 実 世 界 と こ れ ら の 理論 に 関 す る 科 学 者 た ち の 判 断 に結 び 付 く 」 こ とを 指 摘 し て い る 。c14) 岩 田 一 彦 は 「 社 会 科 の 授業 に お い て 問 い が 重 要 な 意 味 を 持つ の は, そ れ に よ っ て 学 習 過 程 が 決 定 さ れ る か らで あ る 。 そ れ と 同 時 に 問 い に よ っ て 子 ど も が習 得 す る知 識 も変 わ っ て く る の で い っ そ う そ の 意 味 は大 き い こ とを 指 摘 して , 情 報 間 の 関 係 を 求 め る 問 い に (Why ) に よ っ て 習 得 さ れ る 内 容 は, 法 則 性 を 組 み 込 ん だ 説 明 的 知 識 ( 概 念 的 知 識 ) が中 心 に な る」 と 述 べ て い る 。(15) 例 え ば多 く の ア メ リ カ イ ン デ ィ ア ン は現 代 ア メ リカ 人 が今 住 ん で い る 所 で 生 活 し て き た。 し か し, イ ンデ ィ ア ン は初 期 移 住 民 と か 現 代 米 国 人 ほど 自 然 地 形 を 改 変 し て こな か っ た 。( 表 1) を 参 考 にし て 次 のよ う な 発 問 戦 略 が 立 て ら れ る。(16)( 表 1 ) 集 団 善 悪 に対 す る文 化 的 認識 生 産 技 術 自 然 地 形 インディアン 土 地 所 有 権 の 観 念 が無 く大 自 然 は生 きて い て, 人 間 みた い に すべ て の 固 有 の 部分 に霊 が あ る。 自 然 と共 に す る人 間 に な る のが よ い 、 石 器 火 東 部 アメ リ カ 森 林 地 河 川 , 小 川 開 墾 地 初 期 移 住民 土 地 が 富 で あ る。 自 然 は 人 間 の た め の贈 り 物 鋸, 鍬 家 畜 東 部 ア メ リ カ 森 林 地, 河川 小 川, 開 墾地 質 問 1) な ぜ 移 住 民 はイ ン デ ィ ア ン と は異 な る 方 法 で 土 地 を 利 用 し た の か ? 質 問 2) な ぜ イ ン デ ィ ア ン集 団 が 水 を 汚 染 す る こ と が よ り す く な くな か っ た の か ? 質 問 3) ど ち ら の集 団 が 土 地 肥 沃 度 を 滅 失 さ せ て 移 動 し た の か ? 質 問 4) ど ち ら の集 団 に よ っ て安 楽 に 暮 ら す た め に 自 然 環 境 を 変 化 さ せ る 見 込 みが あ っ た だ ろ う か ? 質 問 5) 初 期 移 住民 の西 部開 拓 行為 に対 し て イ ンデ ィ ア ン は何 と言 っ た だ ろ う か ? こ こ で, 質 問 1, 2 が 情 報 間 の因 果 関 係 を 求 め る 問 い (Wh y) に よ っ て , 法 則 性 を 組 み込 ん だ 説 明 的 知 識 ( 概 念 的 知 識 ) が 習 得 さ れ る 。 質 問 3, 4が ど ち ら を 選 択 す る か と い う 意思 決 定 を 迫 る問 い(Which) に よ っ て 匚… な の で … す べ き で あ る」 と い う 規 範 的 知 識 が 習 得 さ れ る 。 質 問 5が 自 分 の経 験を 組 み込 ん で い る の かを 知 り 得 る よ う な 問 い(State : 追 体 験 を 導 く問 い) に よ っ て , 他 者 理 解 と 社 会 観 の育 成 を 図 る 解 釈 的 知 識 が 習 得 さ れ る。 ( 5) 匚理 解 」 理 論 1980 年 代 以 後 , 民 族 主 義 , 地 域 主 義 , 多 元 主 義 , ポ ス ト 構 造 主 義 の 傾 向 は共 通 の 人 間 性 の 否 定 , 異 文 化 ・ 異 宗 教 の 人 々 と の 価 値 の共 有 の 否 定 , 限 界 を 越 え て の 対 話 の 否 定 を も た らし て き た。 そ こで , 最 近 社 会 科 教 ― 61 ―
育 で も異 文 化 理 解 教育 , 対 話 に よ る 自 己 発 見, 自 己 変 革 , 自 己 批 判 の要 求 が 強 調 さ れ て い る 。 ち な み に, 同 じ 地 表 面 に つ い て 過去 の 人 間 集 団 が 現 在 の人 間 集 団 と は歴 史 心 理 が 異 な る こ と もあ る し, 同 じ国 土 に つ い て 首 都 圏 の 住民 が 地 方 圏 の 住 民 と は地 域 心 理 が 異 な る こ と に 注 目 す る 必 要 が あ る。 他 者 理 解 と は自 己 の 行 為 か ら の 他 の 行 為 を 再 体 験 す る こ とで あ る 。 現 象 学 的 な 方 法 に よ っ て 「 他 者 理 解 」 を 通 し た地 域 住 民 の顔 が みえ る「 異 文 化 理 解」 に 至 る こ と が で き る な ら, 地 理 授 業 の 中 で も, 空 間 組 織 に対 し て 歴史 的 ・ 解 釈 的 知 識 が 習 得 さ れ る と同 時 に 意 図 す る 主 体 的 な 態 度 を 養 う こ とが で き る 。 ( 6 )授業 設 計 ・ 授業 分 析 フ ィ ー ル ド ワ ー クを 除 い た多 く の地 理 授 業 の 場 合 , 地 域 に 関 す る 資 料 ( 教 科 書 , 地 図 帳 , 統 計 資 料 , 時 事 資 料 , 視 聴 覚 資 料 , 集 団 思 考 : ク ラ ス討議 ・ 経験 発表 文 章 作 成 , 表 ・ グ ラ フ ・ 地 図 の 分 析 お よ び 作 成 ) か ら 授 業 が 展 開 さ れ る こ と が 一 般 的 な 傾 向 であ る。 そこ で, 1段 階 と して 経 験 的 な 陳 述 で あ る 資 料を 調査 す る とき, 学 習 者 は科 学 者 の視 点 に 従 っ て 客 観 性 と 正 確 性 を 維 持 し な が ら, 仮 説 一検 証 過 程 を 通 し て 説明 的知 識 に至 る。 2 段 階 と し て は 推 論 的 な 陳 述 の定 型 化 で あ る批 判 的 思 考 を 通 し て 空 間 構 造 を 分 析 す る。 即 ち , 概 念 的 知 識 を 理 論 的 に 説 明 す る。 3段 階 と し て 地 域 住 民 の 行 為 を 取 り 巻 く 状 況 を 求 め る た め に資料 の内 的批 判 を す る。 我々 が地 域 住 民 の実 際 的 行 為 を 理 解 す る論 理 は多 く の資 料 が言 語 に 現 れ る か ら 解 釈 的 方 法 論 に従 っ て, 仮 説 一検 証 を 通 し て 地 域 住民 の生 活 を 理 解 す る こ と が で き る。 こ の と き, い か に 現 実 事 象 が 理 解 さ れ る だ ろ う か と い う 発 問 によ っ て, 社 会 全 体 の 立 場 か ら 社 会 的 事 象 に 至 る 構 造 の理 解, 即 ち , 社 会 の 諸 制 度 間 の 関 係 まで 実 践 的 解 釈 に至 る こ と で あ る。 4 段 階 と し て 情 報 を 活 用 す る 能 力 を 培 う為 に 「 地 理 A」「 地 理 B 」 に つ い て 「 内 容 の取 扱 い 」 に 示 さ れ た 「 二 つ ま た三 つ 」 の事 例 な い し は 地 域 を 選 ん で 取 り上 げ る(17)と い う 部 分 が ポ イ ン ト と な っ た こ と を 生 か す 。 即 ち, 情 報 を 活 用 す る 能力 は事 例 地 域 学 習 に対 す る 主 体 的 な 取 り 組 み の 中 で 培 わ れ る こ と で あ る。 20事 例 の 授 業 分 析 の結 果 を み る と , 小 学 校, 高 等 学 校 に比 べ て 中 学 校 の 地 理 授 業 を 設 計 す る 際 に は, 教 育 課 程 を 考 慮 し て 教 科 内 容 の難 易 度 の検 討 が 要 求 さ れ る こ と, お よ び地 理 授 業 の設 計 に 「 他 者 理 解 」 とい う 視 点 が 未 だ に定 着 し て い な い こ と が わ か る。 他 者 の 行 為 を 理 解 す る と き, 社 会 全 体 の 有 機 的 な 観 点 か ら住 民 の 行 動 が い か に 条 件 付 け ら れ て い る の か と い う 問 い を 深 め て い く 必 要 が あ る。 3 新地 理Bの主 旨を生か した授業 設計 A. 経 済 発 展, 住 民 意 識 変 化 ,生 活環 境 変 化 は大 気汚 染 , 水質 汚 濁 , 騷 音 土 壌汚 染 等公 害 問 題 と 地 価 高騰 , 交 通 渋 滞 , 住宅 問題 , 治 安 悪 化 な ど 環 境 の質 の低 下 を もた ら すo 従 って , 都 市 計 画 は政 府 , 公 社 , 公 団, 民 間業 者 , 住 民 が 積 極 的 に参 画 す るo 説 明 的 知 識 ヽ− 推 理 す る B.1) 地 盤 沈 下 の 原 因 : 工 場 建 設 都 市 部 の 高 層化 で あ る。 D-3) 原 因 は法 的 規 制 (1971 年 環 境 庁 が 発 足) の強 化 や 公 害 防止技 術 の進歩おJこび石油ショ ッ クを 契 機 と す る資 源 消 費 型 の 産 業 柵 造 か ら の脱 却 に と もな つ 2) 都市 計 画 の 原 因 : 都 市 環 境 をよ り快適 にす るため に行っ て き たo C.1) F の 原 因 は 核 家 族 を 受 容 す る た め の 住 居 だ から,年肱 生 活 , 環 境 の 変 化(生 活様式 交 通 事 情 の 変 化 ) 2 ) 輸 送力 が高 ま れ ば , 郊 外 の住 宅 地 が 増 え, 輸 送人 員 も 増 え る。 そ の 原 因 は, 都市 民 の生 活 で 時 間 ・ 空 間 距 離 の同 時 克 服 が で き る の で あ る 。 「 近 隣 性 の向 上 」 分 析 的 知 識 推 理 す る 推 理 す る
/ \ / \
D.l) 資 料 の 変 換 2 ) 変 換 資 料 の 分 析 3 ) 地 盤 沈 下 の み 増 加 す る 反 面, 大気 汚 染 水 質 汚 染土 壞 汚 染 騒 音 振 勁 悪 臭 な ど が 現 在 で は ひ と こ ろ ほ ど の 深 刻 さ は な く な り つ つ あ る よ う に見 え る 。 E.都 市 計 画 の例 1 ) 中 近 東 の 迷 路 状 の道 路 網 は 外 敵を 迷 わ せ る た めで あ る と 同 時 に 日 射 を 遮 る効 果 2 ) フ ラ ン ス, スペ イ ンで は 広 場 や 記 念 建 造 物 を 中 心 に 放 射 状 道 路 は 政治制 旻や人々 の意 識 に基 づ く 3) 大 ロ ン ド ン 計 画 によ っ て職 住 近 接 の ニ ュ ー タ ウ ン 計 画 F.千 里 ニ ュ ー タ ウ ンが 現 代 の 高 齢 化 都 市を 象 徴 し て い る こと に 気 が 付 く理 由 の 把 握 1 ) 居 住 者 の 老 齢 化 2 ) こ ど も の 数 は減 り 続 け て い る 3 ) 建 物 と 周 辺 の環 境 の 老 朽化 4) 道 路 渋 滞, 駐 車 場や 商 業 施 設 の不 足 5)千里 ニュ ー タウ ン の一 部 で 増 改築 と再 開 発 G. 通 勤 混 雑 度 問 題 に 対 す る 解 決 策 の 把 握 1) 本 社 機 能 を 地 方 に 分 散 さ せ る な ど に よ っ て 東 京 一 極 集 中 を 是 正 す る 2) 輸送 力 の 増 加を 図 る 3) 時差 通 勤 の 促 進 4) 企業 の 協 力 と 政 府 の 投 資 記 述 的 知 識 判 断 す る 資 料 1 ( 理 論的 接 近 ) 公 害 苦情 受 理 件数( 全国) 資 料 2 ( 政 治 経 済 的 接 近 ) 都 市 を 計画 す る 資 料 3( 牛 態文 化 的接 近 ) 新 聞 社 説 1 ニ ュ ー タウ ン再 生 の理 念 を 資 料 4( 社 会 行 動 論的 接 近 ) 新 聞 社 説 2 通 勤電 車 と文 珥 本 と新 聞 資 料 ― 62 ―4 概 念 探 究 型 地 理 授業 の設 計 B,干 里 ニ ュ ー タ ウ ン の環 境 は 自 然 的 立地 条 件 ( 位 置 , 気 候地形 土 塊 水 , 空 気) と の有 機 的 な 相 互 作 用 の結 果 で あ る 。 従 っ て、 都市 計 画 と 都 市 問題 の解 決 策 には 有 機 的生 態 的分 析 が 要 求 さ れ る。 説 明 的 知 識 推 理 す る