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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 利用統計を見る

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータ

ビリティに関する制度設計

著者名(日)

今村 肇

雑誌名

経済論集

32

1

ページ

25-52

発行年

2006-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00001698/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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東洋大学「経済論集」 32巻1号 2006年12月

中小企業における退職金制度の運用・給付・

     ポータビリティに関する制度設計

今 村

1.中小企業が退職給付金制度に求めるものは何か 1−1.中小企業の賃金・雇用システムがおかれている現状 1−2.中小企業の退職金給付制度に対する認識 1−3.中小企業をとりまく退職給付制度資金調達・運用の選択肢と中小企業の動向 1−4.適格年金制度廃止にともなう中小企業の対応 1−5.中小企業退職金共済と、あらたな確定拠出・確定給付制度に対するニーズ 1−6.企業の経営戦略や人事方針と各種退職給付制度における支払い準備形態との整合性 1−7.中小企業の退職給付金制度、変化するもの変化しないもの 2.中小企業の勤労者の退職給付金制度に関する意識とニーズ 2−1.中小企業の勤労者をめぐる賃金・雇用環境 2−2.退職給付金制度に対する意識と制度変更に対する反応 2−3.中小企業の勤労者の退職給付金に対する意識 2−4.中小企業の勤労者が望む退職給付金制度 2−6.ポータビリティに関する認識とニーズ 3.中小企業と勤労者双方から今後の退職給付金制度を考える

1.中小企業が退職給付金制度に求めるものは何か

 我が国の中小企業は、退職金給付制度をめぐるさまざまな「移行」と「移換」の問題に直面し、 個々に解決を果たしつつ、その存続をかけて企業活動を行っている。  もとより退職給付金制度は、中小企業の賃金・雇用システムにおいて重要な位置づけを果たして きたが、中小企業をめぐる社会経済が多様な構造変化を遂げつつある中で、個々の企業における位 置づけや役割も多様化しつつある。  一方で、政策面では「税制適格退職年金」制度が平成23年度末に廃止することが決定されたり、 退職引当金に関する非課税制度が廃止されたり、あるいは、あらたに確定拠出年金(日本版401k) が導入されたり、そのほか各種制度において細かな制度変更が行われて、企業の外側から退職給付

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制度の変更を迫られる事態にも直面している。  我々が中小企業の退職給付制度をめぐる制度設計の問題を論ずる際、これらの多様化・変化が、 直接・間接に中小企業の賃金・雇用システムの変更を迫っているという現状について十分考慮しな ければならない。つまり、単に制度間の移行や移換の問題として「制度側」の都合で捉えるのでは なく、中小企業およびその従業員という、直接の利害関係者の「ニーズ」にどう対応するかという 視点で考えなければならないのである。  より具体的に調査の設計を説明すると、まず企業が退職給付制度を設計する際に利用する退職 金・企業年金の運用制度は主に以下の7つであり、それぞれに異なった特徴を持っている。した がって、その中での制度間移行は、必然的に中小企業自体の退職給付金制度を変更する必要が生じ る可能性があるのである。  つまり、①社内準備の退職金・企業年金、②税制適格退職年金、③厚生年金基金、④確定給付企 業年金、⑤企業型確定拠出年金、⑥中小企業退職金共済、⑦特定退職金共済の各制度の間で、現在 移行可能なものもあれば不可能なものもあってまちまちなだけでなく、さらには、給付可能年齢が 純粋に年金として設定されているのか中途退職時にも受け取りが可能なのか、あるいは、給付金の 払い込みが直接個人にされるのか事業主が管理できるのかなど、個別企業によって異なる賃金・雇 用システムとの親和性の問題も存在する。  すなわち、企業の退職給付制度の資金運用の受け皿としての各制度の、いわば資金運用シェアを どうするのかという視点でのみ、制度間移行の制度設計を論ずることの危険性をまず主張しておか なければならない。  そこで、以下では、中小企業の賃金・雇用システムの現状がどうなっているのかからスタートし、 現下の景気回復基調のなかでもなお破行性を呈している企業業績や経営戦略の違いなどを注視しな がら、個々の中小企業の現状にきめこまかく対応する、退職給付金制度の支払準備形態のあり方を 検討する。  同時に、個人の立場から離転職の際ポータビリティについても、ここでの制度設計に重要な影響 を及ぼすと思われるため合わせて検討をする 1−1.中小企業の賃金・雇用システムがおかれている現状  本調査は筆者が分析を担当した(財)雇用情報センターの「中小企業における退職金のポータビ リティに関する調査」の企業調査および勤労者調査の結果を用いている(注1)。回収された有効回 答のサンプルの特性は以下のとおりである。

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計   図表一1 調査対象企業の資本金     藺自1一呈・纏竺 ■TOTAL HO63    0       10       20       30 300万円乗満 300∼500万円来瀦 500∼1000万円未満 1000∼1200万円衆漕 1200∼1400万円来満 1400∼1600万円乗満 1600∼1800万円乗溝 i800∼2000万円乗溝 2000∼3000万円衆満 3000∼4000万円衆鴻 4000∼5000万円衆逼 5000万円以上 叙回筈 (%〉  今回のアンケート調査の対象となった企業は、資本金、従業員数ともに中小企業の中では比較的 規模の大きなものが中心となっている。それは、調査設計の段階で意図されたものであり、退職給 付金制度が一定の制度として安定的に運用されており、給付金の支払準備形態に関しても、その企 業独自の方針を検討する人員や組織があることを念頭においたものである。  調査対象企業の資本金構成を、図表一1によると、資本金が2,000万円以上の企業が全体の約四 分の三を占め、中小企業の中でも比較的資本金の大きなものが調査対象になっている。また、図表 一2で従業員規模を見ても、100人から299人の間に、全体の約85%が集中しており、特に200から 299人規模の企業が3割強を占めている。正社員だけで見ても、やはり100人から299人で約7割以 上を占めている。  実は、このことは支払準備形態の移行ニーズに関する調査結果へ、一定の影響を及ぼすことにな る。例えば中小企業退職金共済に加入できるのは、業種ごとに決められた資本金、従業員規模の範 囲内と定められており、それを超えた場合には他の制度への移行を迫られることになるからである。 一般業種の場合で、常用従業員300人以下または資本金・出資金3億円以下であり、卸売業、サー ビス業、小売業においてはそれぞれ若干条件が厳しくなる。この条件を超えてしまうと、制度対象 の中小企業でなくなり、現状では確定給付企業年金または特定退職金共済制度に相当額を引き継ぐ ことになる。しかも、単に事業拡大による資本金や従業員数の増大だけでなく、企業の合併や吸収 などによって資本金や従業員数が増大するケースもあるため、今回の調査対象企業を分析するにあ

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たってはあらかじめ留意しなければならない事項の一つである。 図表一2 調査対象企業の従業員規模

    [蓑酬饗・司

      一 .一 ■TOTAL M1.063     0       io       20       30 o人 1∼9人以下 10∼19人 20∼49人 50∼99人 100∼149人 150∼199人 200∼299人 300∼399人 400∼499人 500人以上 無回答 ro  ㈲  さらに、退職給付金制度を考える上で重要な企業特性は従業員の年齢構成および勤続年数である。 こちらはむしろ企業側の退職金制度設計・運用にあたっての留意事項となるが、そういった企業側 の雇用システムの個別事情や経営方針などは、支払準備形態の選択・移行だけに視点が片寄ると、 観察されにくいだけに注意しなければならない。  図表一3をみると、調査対象企業の平均勤続年数は、10−14年に36.0%が集中しており、次が5 −9年の26.7%と、15年未満の勤続年数が圧倒的に多数を占めている。また、図表一4にみるよう に、平均年齢も35−39歳(32.7%)、40−45歳(30.9%)と中壮年層がその中心を占めており、団塊 の世代と呼ばれる昭和22年から24年頃に生まれた層を含む50歳以上は7.6%となっており、一般的 な大企業ほど従業員の高齢化は起こっていないことに注意する必要がある。また、今回別途行った 従業員に対するアンケートでは、調査対象の約6割が転職経験ありと答えていることからも、中小 企業が直面する労働市場はかなり流動性の高い、中途退職・転職が頻繁に発生しており、そのよう な労働市場を前提として退職給付金の支払準備形態へのニーズを考えることを忘れてはならない。

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計  図表一3 調査対象企業の平均勤続年数     表頭 問4 正規社員の平均勤続年数     L薮側問!主業種..  一・ 」 ■TOTAL kt,063 5年来満 5∼9年 10∼14年 15∼19年 20∼24年 25年以上 黒回箸 o 10 20 30 0 63 7 62 1 7 1 87 27 9 3 2 1 40  ㈲ 図表一4 調査対象企業の平均年齢       

    畷誤墾‖竺⇒

■TOTAL teT,063    0       ’0       20 19直未連 20∼24直 25∼29良 30∼34但 35∼39頗 40∼44虚 45∼49績 50宜以上 無回害 3(        40     (弘) 1−2.中小企業の退職金給付制度に対する認識  中小企業の退職給付金制度に対する認識は、「従業員の定着志向・忠誠心を高め」、「定年・老後 の生活資金」、さらには、「公的年金の支給開始年齢引き上げに伴って定年退職後の生活資金のつな ぎとなるもの」という、労働者の生涯を長期的なレンジからとらえる3つの要素が他を引き離して 大きい。このことは、中小企業の意識として、定年まで勤めて定年退職一時金もしくは企業年金と しての退職給付制度に対する意識が強いことを示している。一方で、「従業員に辞めてもらいやす

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くするため」「子供の教育や結婚のための資金」「家の建築・購入・修理のための資金」といった、 比較的中・短期的な資金ニーズに対しては、相対的に考慮されていない。  図表一5に示す、中小企業の退職金・企業年金制度の目的・効果に対する認識によると、先ず、 肯定的な意見(そう思う+ややそう思う)をもつ企業の多いものから順に、「従業員の定年・老後 の生活費にあてるもの」81.2%、「公的年金支給開始年齢引き上げにともない定年退職後の生活資 金のつなぎとなるもの」74.2%、「従業員の定着化を図り、企業への忠誠心を高めるもの」64.2%、 「従業員のやる気(モラール)をあげるため」50.7%となっている。  一方、否定的な見解(そう思わない+ややそう思わない)の多かった項目としては、「従業員に 辞めてもらいやすくするため」46.9%、「子供の教育や結婚のための資金」21.7%、「家の建築、購 入、修理などのための資金」18.1%となっている。  肯定的な項目に共通するのは、長期的・安定的な雇用関係の維持とその延長上にある定年退職 後・老後の生活への配慮であり、否定的な項目に共通するのは、中途退職による移動や、生涯の途 中にある生活資金ニーズに対する配慮である。 図表一5 退職金・企業年金制度の目的・効果 5 ■⑨公菌「牽金支給開始年扉引き上げにと毛な掴  年退職後の生活資金のつなぎとなるもの ロ(8)家の建築、購入、修理などのための資金  14 ・(・)子供の鯖や繍のための資金 … 口(6)従業員の定年・老後の生活費にあてるもの       [ .■⑤従業員に辞めてもらいやすくするため        3 ロ④従葉員のやる気(モラール)をあげるため ロ(3)採用にあたって優秀な途中入社社員をひきつ[  けるため       i ●(2)採用にあたって優秀な新入社員をひきつける‘  ため      2 罐i塑の定着化を!竺業へ竺竺竺 1 ︸1﹂ー 逐

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0 10 20 30 40 50 60 70  中小企業の退職金・企業年金に対する考え方は、図表一6の退職金・企業年金の算定基礎からも 確認できる。まず、退職時の賃金を何らかの形でベースにしているものが全体の46.7%を占めてお

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 り、それに対してポイント制などの形で在留年数や職能資格を考慮するものは24%と約半数となっ ている。ただし、退職時の賃金のみで決定する割合が高いといっても、労働者の在職時の貢献が退 職時の賃金に反映されるという賃金体系の存在が前提となっていることはいうまでもない。すなわ ち、退職金・企業年金が賃金の後払いというこれまでの性格を維持していることを裏付けていると いえよう。  一方で、「賃金や職能資格とは別に定めた金額(定額制)など」の15.4%や「在職中の人事評価 結果の累積点を基礎としてポイント制で算出」の2.2%など、在職中の賃金支払額とは独立した算 定方法を持つものは、今後の増加傾向は予想されるものの、依然として少数派である。    図表一6 退職金・企業年金の算定基礎        ド              畷禺畷霧金’鱗〔定基礎に最も近いもの」    ■TOTAL 圓063       0       10       20       30       40       (s) 退載時の賃金全額をベースに 算出 退職時の賃金の一都をペース に算出 竈能費格とその在留年数を基 にP制で算出 一部賃金と一部良能資格の在 留年蝕を基にP制で算出 賃金やほ能責格とは別に定め た金■(定額制等)など 在麿車の人事評俺結果の累積 点を基礎としてP鋼で算出 その他 無回菩 1−3.中小企業をとりまく退職給付制度資金調達・運用の選択肢と中小企業の動向  調査対象の中小企業における退職給付制度の資金運用先は、図表一7に示すとおりである。これ によると、多くの中小企業は、社内に独自の退職金・企業年金の資金を積み立てると同時に、公的 な外部の制度に一定の割合を分散して運用していることがわかる。  最も多いのが「社内準備の退職金・企業年金」で42.2%を占め、次いで、「税制的格年金」の 37.6%、「中小企業退職金共済」の27.6%、「厚生年金基金」の25.7%である。ただし、多くの企業 が運用先を多様化しており、それらは重複して計上されている。  それに対して、制度的に新しい「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」は、それぞれ3.5%、 6.6%と上記の制度に比べると少ない割合にとどまっている。このほか、「特定退職金共済」の 3.7%がある。

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 特に注意すべきは、平成23年度末をもって廃止される予定の、「税制適格年金」を資金運用先と している企業が依然として37.6%を占めていることであり、あと数年の残余期間のうちに駆け込み の制度移行が起こる可能性を示している。 図表一7 現在使用している退職金・企業年金制度 幽環纏用してい三’企集年金制度「 口TOTAL N=|063    0   10   20   30   40   50   60   7e   80 社内拳働の退境金・企婁年金 適格退●年金 厚生年金基金 随定給付企繧年金 企婁型確定拠出年金 中小企皐退口金共済 特定退宮金A済 その他 退田一簡金・企婁年金とも艮 用していない 無回答 376 422 (s) 25) 3.5 6.6 276 37 2.9 08 4.3  これらの退職金・企業年金の資金運用先がどのように変化しつつあるのかを、間接的に探る指標 として、過去5年間に制度変更を行った企業において、5年前に採用していた制度は何かをきいた 結果(図表一8)と、今後5年間に制度変更を行う予定のある企業が、変更後に導入する予定の制 度をきいた結果(図表一9)を用いて検討してみよう。ただし、これらの変更ありの企業は、今見 てきた図表一7のサンプル数1,063に比べると、いずれも約250であり、それぞれ全体の約四分の一 の比率であることに注意されたい。つまり、過去5年間については変更・廃止、今後5年間につい ては変更・新規加入の対象となった制度がこれだけあるということになる。  過去5年間に退職金・企業年金制度の変更があった企業において、変更前に使用していた退職 金・企業年金をきいたものが図表一8である。これによると、圧倒的に多いのが税制適格年金の 50.8%である。設問のききかたが、直接制度変更の対象になったものという限定をしていないため、 必ずしも直接変更・廃止の対象になった数字と読み取ることは出来ないが、すくなくとも中小企業 における退職金・企業年金制度の変更・廃止の第一優先順位がこの税制適格年金であることはまち

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       中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 がいない。以下、社内準備の退職金・企業年金が26.7%、厚生年金基金が20.9%と続いていて、こ の順番に制度変更の対象となっていると考えられる。割合は少ないが、以下中小企業退職金共済が 9.3%、確定給付企業年金5.8%、企業型確定拠出献金3.9%と続いており、何らかの形ですべての 制度が変更・廃止の対象になっていることになり、この点からも中小企業の退職金・企業年金支払 準備形態に関するニーズが多様かつ変化していることがわかる。 図表一8  変更前に使用していた退職金・企業年金        表頭:問10−1 変更前に保用していた制度       .表側:問1 主菓糧       ・. ._   口 TOTAL   lt±2S8       0    10    20    30    40    50    60    70    SO 社内準■の週■金・企章年金 適格退良年金 厚生年金基金 確定枯付企集年金 企皐翌確定拠出隼金 中小企集退●金#済 特定退田金共済 退境金・企皐年金領度はなか った その他 M回答 2G.フ 50.S (鴨) 2e、9 5』 3.9 9,3

β2

01

12 5D 図表一9 変更後の導入・移行する予定の制度 口TOTAL 杜内準債の週田金・企案年金 厚生年金‘金 硫実給付企象年金 企象智硫定提出隼金 中小企象遁●金共済 特定退田金共済 退●金・企案年金鋼度を鹿止 する予定 その他 傭回答 N=2s4 0     to    力D    30    40    SO    60    70    秒0 T5.2 4.5 32.2 33.1 32.2 ⑯ ‘.1 1.5 14.8 t.5

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 それでは、今後退職金・企業年金の支払準備形態として中心となるものを、5年後に移行する予 定の制度で見ると、「確定給付企業年金」が32.2%、「企業型確定拠出年金」は33.3%、「中小企業 退職金共済」が32.2%と、いずれも3割強のほぼ同じ割合を占めている。今後は、この3つの形態 が中心になることは明らかである。図表一7の現在使用している制度において、これらの3つの割 合は、3.5%、6.6%、27.6%と、相対的に新しい制度である「確定給付企業年金」と「企業型確定 拠出年金」の2つが、「中小企業退職金共済」に比べてまだ普及していないことから、5年後に向け てニーズの高い前二者の導入が、今後さらに進むものとみられる。 1−4.適格年金制度廃止にともなう中小企業の対応  それでは次に個々の制度ごとに、変化の方向を探ってみよう。  退職金・企業年金の支払準備形態変化の鍵を握っているのが税制適格年金であることは、制度終 了があと5年間強に迫っていることからも、また前節の結果からも明らかである。 図表一9 制度変更をした企業のうち5年前に税制適格年金を     採用していた企業が、現在採用している制度         1表頭 問9 現在採用している退白金・企案年金制度         甲 問10−!一 変更前1『竺用し∫いた制度  一 1     口連格退R年金 H=131         0    10   20   30   40   50   60   70   θ0        ㈲ 社内皐債の退胞金・企皐年金 適格退■年金 厚生年金基金 砲定紬付企皐年金 企婁型確定拠出年金 中小企禽退o金共済 特定退ロ金共済 その他 退■一跨金・企皐年金とも楳 用していない 無回答 382 s1 22.1 92 2丁5 473 15 38  5.3 00  図表一9は、過去5年間に制度変更をした企業のうち、税制適格年金を採用していた企業だけに 絞って、現在採用している支払準備形態を示したものである。すでに前節でも触れたとおり、直接 の変更関係を示すものではないが、過去5年間における税制適格年金の変更・廃止による移行先を

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 知る手がかりは得ることが出来る。これによれば、圧倒的に多いのは、「中小企業退職金共済」の 47.・3%で、以下、「社内準備の退職金・企業年金」が38.2%、「企業型確定拠出年金」27.5%となっ ている。図表一7にある全体の数値と比べると、「中小企業退職金共済」が19.7ポイント、「企業型 確定拠出年金」が20.・9%高い。したがって、税制適格年金からは、過去5年間にこの二つにもっと も多くの企業が流れているということはまちがいない。  次に、廃止の時期が迫っている今後については、すでに述べた全体的な傾向と同様、「確定給付 企業年金」「企業型確定拠出年金」「中小企業退職金共済」の3制度への移行がほぼ同じ割合で並立 することとなる。図表一10によると、その割合はそれぞれ、37.7%、34.4%、34.0%である。すな わち、これまではその多くの割合が「中小企業退職金共済」に流れていたものが、新しい制度であ る「確定給付企業年金」や「企業型確定拠出年金」が移行の重要な選択肢として加わり、「税制適 格年金」からこれら二つの制度への移行が増加すると予想される。 図表一10 適格年金から今後5年間に変更する予定の退職金・企業年金制度

      認屑↓1豆繍酬㌶磯‡翻

       口連格退■年金  k2|5       0     10     20     30     切     50     6(     70     BO        ㈲        130社内皐債の退槍金・企業年金 厚生年金基金 確定銘付企煮年金 企集型確定艮出年金 中小企索退恒金共済 特定退口金共済 退竃金・企婁年金制度を廃止 する予定 その他 無回箸 42 7 7 3 4 4 ユ 34.e 4 1 5 0 |44 O.9 1−5.中小企業退職金共済と、あらたな確定拠出・確定給付制度に対するニーズ  前節の税制適格年金に続き、同様の検討を中小企業退職金共済についても行ってみよう。これま での5年間の変更では、すでに中小企業退職金共済を採用している企業の間では、その優位は揺る がないものの、今後については、中小企業退職金共済から、企業型確定拠出年金や、確定給付企業 年金への流れが増加する傾向が予想される。ただし、繰り返し述べているとおり、以下の図表は特

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定の制度から別の特定の制度への個別の流れを示すものでないため、直接中小企業退職金共済から これらの制度への移行を意味するものではない。  図表一llに示されているのは、「現在までに退職金・企業年金制度の変更をおこなった企業で5年 前に中小企業退職金共済を採用していた企業が、現在採用している制度」であり、これは最初に示 した図表一7に示される割合との比較で検討する必要がある。すなわち、図表一7では、現在中小 企業退職金共済を採用している企業は27.8%に過ぎないのに対して、図表一11では54.2%とほぼ2 倍に達していることから、中小企業退職金共済を廃止して他の制度に移行して他の制度に移行した 企業は極めて少なく、引き続き中小企業退職金共済制度をその支払準備手段の一つとしている企業 が多いことを示している。  図表一12でも同様で、今後の変更のニーズに関しては、現在すでに中小企業退職金共済を採用し ている企業があらたに同制度を採用するとは答えないわけだから、むしろ「確定給付企業年金」を 導入する予定であるという企業が32.0%、「企業型確定拠出年金」を導入する予定が40.0%と、こ れら二つの制度のあらたな導入が他を引き離して多いことから、今後は、中小企業退職金共済優位 の支払準備手段から、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金の2つを合わせた3制度バランス型 併存へと変わっていくことが予想されるといってよいだろう。 図表一11 中小企業退職金共済、5年前に変更する予定の退職金・企業年金

|魏臨当採鵠瀦聴繍簾金制

   口中小企集退職金共済  M=24        0     10    20 社内準備の退竃金・企集年金 連格退職年金 厚生年金基金 破定給付企秦年金 企集型確定拠出年金 中小企集退■金共済 特定退口金共済 その他 週田}一時金・企集年金とも採 用していない 無回答 2馴 0 52 8 20 7 6 1 5 2 1 3 3 8 8 00 0α 00 30    40     50    60          ㈲

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 図表一12 中小企業退職金共催を現在採用している企業が、今後5年間に あらたに導入・移行する予定の退職金・企業年金

蕗塾壷醗巖亘歴擢躍度

口中小企黛週職金共済  N=25     0     10 20 社内準働の退味金・企婁年金 厚生年金基金 確定給付企婁年金 企婁型確定拠出年金 中小企裏退廠金共済 特定退髄共済 退但金・企薬年金制度を廃止 する予定 その他 栖回答 12.0 30    40     50     60         (%) 0.0 32.0 400 160 0.0 4.0 12.0 4.0 1−6.企業の経営戦略や人事方針と各種退職給付制度における支払い準備形態との整合性  今回のアンケート調査では、支払準備形態として社内準備と社外準備の両方について、それぞれ に関する問題点がないかどうかをきいている。まず、社内準備については、ほぼ7割の企業が「特 に問題はない」と答えており、最大の問題としては「資金不足」が22.1%となっている。社内準備 に関する資金運用は、つねに付随する問題であり、会計上の非課税優遇の復活等の必要性と合わせ て検討すべき問題である。 図表一13 社内準備をしていることに関する問題点     魏    L一 口TOTAL N・390    0   10 費金不足 支飴■決定方法がぼ瞭 担当看が不在または理解不足 特に悶■はない その句 集回苔 問9−1 社内準備をしていることに閣する問題点        一     .1        ! 問12(2) 移行したい制度 ベース 社内準偽の退塊金・企集年金を利用する企1 棄       1 221  46 P5 703  28 O8 2e   30   東}   50   60   ,0   30        ㈲

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図表一14 社外準備をしていることに関する問題点        

      [酷講≧繊謬茎聖

  口TOTAL k837       0     10     20     30     40     50    60     70     80        ㈲ 運用機関に対する不安(利回 りなど) 能力・寮績が反映しにくく. 年功蓮用になりがち 制度に対する理解不足 特1二問題1まなし、 その他 無回箸  一方社外準備に関しては、「特に問題ない」と答えた企業が31.1%あるものの、社内準備に対す るそれが70%を超えていたのと比べると半分以下となっている。特に、「運用期間に対する不安 (利回り等)」は深刻であり、44.2%が心配であると答えている。「能力・業績が反映しにくく年功 運用になりがち」という企業も26.2%にのぼっている。ついで「制度に対する理解不足」が18.0% となっている。企業はより高い運用利回りで安定した資金運用と同時に、自社の能力・業績主義的 賃金制度と整合的な支払準備中断を望んでいることがはっきりとわかる。 点 題 問 る す 関 に と こ る い て し を 備 準 外 社 男 度 制 る い て し 用 採 在 現 15 一 表 図 点 題﹂ 問度 る制 一す金一 一関年 に業一 一と企  こ゜ る金一 い職⋮ て退 しる. をい 備て 準し 外用一 社採皿  在

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鴛量ロ

粉90 80 70 60 50 ④ 30 20 10 0 その他 特定退白金共済 中小企業退職金共済 企集型確定拠出年金 確定給付企婁年金 厚生年金基金 適格退職年金 社内準備の退職金・企業年金

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計  これをさらに支払準備手段別に見るとさらに制度ごとの特徴が明らかになる。図表一15は制度ご との問題点を比較したものである。運用期間に対する不安が高いのは、「税制適格退職年金」が 60.0%で最も高く、続いて「厚生年金基金」が54.9%、「社内準備の退職金・企業年金」が44.4% となり、これら3制度に対する資金運用面での不安が高いことがわかる。また、次に、「能力・業績 が反映しにくく年功運用になりがち」という問題を抱えるのは、「税制適格退職年金」の31、3%、 「中小企業退職金共済」の26.6%となっている。さらに、「制度に対する理解不足」が高いのはや はり「企業型確定拠出年金」で38.6%となっている。  これらを別の角度から「特に問題はない」と答えた企業の割合で比較すると、シェアの低い特定 企業退職金共済を除けば、やはり「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「中小企業退職金共 済」の3つが、48.6%、34.・3%、38.6%と高くなっており、この点からも、これら3制度が今後の 移行にあたって最大の候補となっていることの理由と考えられる。 1−7、中小企業の退職給付金制度、変化するもの変化しないもの  制度間移行をする場合の、企業側、労働者側から見たときのメリット・デメリットは相反すると ころがある。  企業側から見れば、勤労者に直接振り込まれる退職金制度である中小企業退職金共済制度は、自 社の雇用制度との親和性に問題が生じることがある、翻って、勤労者から見れば、保険料として負 担したものが企業側の恣意性に左右されることなく確実に支払われるというセーフティー・ネット 機能があることは大きなメリットである。  企業の統合・離散等にともなう退職給付制度(一時金・年金)の制度設計に当たっては、このメ リット・メリットデメリットを十分に考慮した上で、制度間移行の垣根の自由化を検討すべきであ る。  特に問題なのは、退職給付制度に関しては、勤労者が現実の問題として認識する度合いが低く、 そのために十分な制度理解をしようというインセンティブに乏しいということである。「会社が やってくれていることだから」とか「もらえなくてもしかたがないjなどといった意識が少なくな いのは事実であるが、改善の余地があるのではないか。  そういった、個人の自立性・自律性を保証するような前提がなければ、安易にセーフティー・ ネットの制度設計をフリーハンドに企業にゆだねるような規制改革が、必ずしも勤労者にとって望 ましい結果をもたらすとは言えないだろう。

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2.中小企業の勤労者の退職給付金制度に関する意識とニーズ

2−1.中小企業の勤労者をめぐる賃金・雇用環境  図表一16 勤務先で採用している退職金・企業年金制度       垣「ひ「託毒肌石・る轟豆「桓年金亘度㈲A)       1表側 Q1 会社で採用している退障金・企業年金制度くM A)       L−       .. 一      .    ・_    .一一    ■TOTAL N=1、592       0        10       20       30       40        (%) 退ロー時金制度 税制連格退田年金〔連格年金 )制度 厚生年金基金制度 確定給付金泉年金制度 企集型確定拠出年金制度 自tt独自の年金制度 中小企婁退●金共済噺度 特定退田金共済制度 退■金前払い創度 その他 退田金・企類年食制度は楳用 していない わからない       385 集回答  まず、今回のアンケート対象となった勤労者がどのような退職金・企業年金制度に直面している かを見てみよう。図表一16は、自分が勤めている会社で採用されている退職金・企業年金制度につ いて聞いたものである。勤労者からみて多いのは、退職一時金制度の26.3%、次いで厚生年金基金 制度の20.5%、さらには中小企業退職金共済の9.6%となっている。興味深いのは、図表一7に示 した企業側のアンケートにおける構成比との対比である。ひとことで言えば、勤労者が企業側の支 払準備形態にまで詳細な情報を得ていることは考えにくく、ここに支払準備形態に関する情報の非 対称性を見ることが出来る。すなわち、本人が書面等で確認のしやすい、厚生年金や中小企業退職 金共済などについては認知度が高いのに対して、本来多くの中小企業で重要な支払準備形態となっ ている税制適格退職年金に関する認知度は、4.4%と極端に低くなっている。この点からも、勤労 者自身が直面する退職金制度に関して、本人の意志の有る無しにも影響されるが、十分な情報を 持っていないことがわかる。  以下、このような勤労者個人の立場から直面する退職金・企業年金制度と、企業側がその賃金・ 雇用システムの一環として位置づけつつ最適な支払準備形態を模索する行動との食い違いを念頭に 置きつつ、勤労者アンケートに関する分析を行うこととする。

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計   図表一17 従業員数別会社で採用している退職金・企業年金制度

塾]墨國・…・竺竺三;]

■退■一時金劃度       口税制連格退胞年金(連楕年金 ■厚生年金基金制度      口硫定給付企婁年金銅度          )制度園企彙型確定拠出年金制度   口自社独自の年金制度     ■中小企集退魔金共済制度   ■特定退境金共済制度 ■退■金前払い制度      口その他      ■退■金・企雲年金劃度は撰用 〔〕わからない       していない園無回箸 萄00908070θ050柏302010 0 300人以上 2001299人 1001199人 50199人 10149人 †0人束満  このことは、従業員規模別に会社で採用している退職金・企業年金制度を分類したときにより明 らかになる。図表一17は「無回答」を除いて従業員規模別に集計したものである。したがって、数 値と構成比とに食い違いがあるが、これは無回答の大きさによるものである。  傾向として明らかなのは、規模が小さくなるほど、「わからない」「退職金・企業年金制度は採用 していない」が大きくなることである。10人未満の企業に至ってはこの両者で7割以上を占めてい て、制度的にしっかりとした退職金・企業年金制度でカバーされている勤労者が極めて少ないこと がわかる。それに対して100人を超える規模の企業では、自らの会社の制度を「わからない」と答 えるものの割合は大きく減って、みずからの会社の制度に対する認識が高まっていることがわかる。 ただし、その場合でも前述の「税制適格退職年金」による支払準備に関する認識はあまり高くない。  離・退職時に受け取る一時金の金額について、勤労者はどの程度認識しているのだろうか。図表 一18は定年時の退職一時金、図表一19は中途で辞職時の退職金額である。それぞれ、「わからな い」が57. 2%、36.8%を占めており、勤労者が十分な情報を与えられていないか、あるいは自ら知 ろうとしてないのか、さらには時間的に直近に起こることでないために不確実性が大きくて計算で きないのか、いずれにしても多くの勤労者が賃金の後払い的性格を持っているはずの退職金・企業 年金についての意識が十分でないことが確認される。  その中でも、ヰ途で辞職時の金額が45.7%の企業で300万円以下ということは、年齢的に分散し た標本を選んだことで、勤続年数も適度に分散したことによるものと思われる。

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図表一18 定年時の退職一時金支給額

   瞬9曝纏:壽茎辮

■TOTAL H=1,592    0     10    20 300万円未満 300∼500万円未溝 500∼700万円未溝 700∼1000万円未済 1000∼1500万円未済 1500∼2000万円未酒 2000万円以上 わからない 無回箸 30    4〔    50    60         ㈲ 572 図表一19 ■TOTAL 300万円来満 300∼500万円来満 500∼700万円乗満 700−1000万円来済 1000∼1500万円束満 i500∼2000万円乗済 2000万円以上 わからない 無回答 辞職時に予想される退職金支給額 匡夏二8隷扉扉慧套纏篇竃魏! L..一.  ・一       一一一.  ..     一  , x=1、592 0     10     20     3(     40     田        (N) 2−2.退職給付金制度に対する意識と制度変更に対する反応  一方で、退職金・企業年金制度の変更があった従業員に対しての設問で、図表一20に示すとおり、 「変わらない方がよかった」と答えたものが32.4%と、「変わってよかった」と答えたものの 15.0%の2倍以上であることに注意しなければならない。もちろん、「あまり変わらない」「わから

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 ない」で50%以上を占めてはいるが、 い数値である。 3割の人が制度変更に不満を表明していることは無視できな  図表一20 現在の制度に変更したことに対する意見    「     .・     .      .・     表頭:Q5 現在の制度に変更した事について【ペース 過去5年簡会社で退田金制度・企      婁年金制度変更有】    已9蔓・雛鐵1:変更した;1二ついて【ベース:過去酬会社で繊制度’企. ■TOTAL N・367    0       ,0      20      讃}      40        ㈲ 責わって良かった 賓わらない方が良かった あまり慶わらない わからない 倍回害  では、それぞれ変更してよかった理由、変更しないほうがよかった理由を見てみよう。  まず、図表一21は変更してよかったという15.0%の人たちの意見である。「安心できる制度だか ら」が29.1%、「自己責任で運用出来るようになったから」が25.5%と、本章の冒頭から分析して いるように、何らかの公的な支払準備形態、とりわけ確定拠出型への変更が多いことを示唆してい る。ただし、「年金制度を希望していた」「退職金制度を希望していた」がほぼ同数で20.0%と 21.8%となっており、やはりここでも3つの制度を中心としたなかでの多様な選択が行われている ことがうかがえる。 図表一21 現在の制度に変更してよかった理由 蓑鶏8ぽ留2震}轟ヒ瑠詫量‖[M:駕[tl:麦餐黍薩藷i ■TOTAL N=55    0 葦金領度を●望していたから 退口金領度を希望していたから 退竈金駒払いを糖望していた から 安心できる鯛度だから 高い給付が廟袴できる■度だ から 自己責任で1用できるように なったから その他 缶回筈 10 20 冊 ㈲ 291

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    図表一22 現在の制度に変更しない方がよかった理由       1麺TQ7現在のM9に顧し毒い方力く齢。た軸(M. A)【べ_ス変重否定者】       1表側・Q7 現在の制度に変更しない方が良かった理由(M. A)【ベース 変更否定者】    ■TOTAL  鳥=|19       0     10     20     30     鋼}     50     60        (N) 年金制度を希望していたから 退口金制度を希望していたから 退胞金前払いを希望していた から 制度に不安があるから 高い給付が期待できない制度 だから 自己貴任で直用しなければな らないから その他 無回箸  一方、現在の制度に変更しない方がよかった理由としては、圧倒的に多いのが「高い給付が期待 できない制度だから」で、53.8%を占めている。次いで「制度に不安があるから」23.5%、「退職 金制度を希望していたから」21.8%となっているため、ここ数年続いた運用利回りの低下が、制度 変更によって顕在したことによる影響が大きいと見ることが出来る。ただし、「自己責任で運用し なければならないから」は予想されたほどには高くなく、10.9%にとどまっている。これは、今回 の調査がwebによるものということで、比較的自己責任に対する対応が可能な標本を選んでいる というバイアスが発生している可能性があるので、今後慎重な検討を必要とする。  さらに、年代別に退職金・企業年金制度の満足度を比較したものが図表一23である。これによる と、定年退職に時間的に遠い若年層では「わからない」が多く、一方年齢が高くなるに従って「ど ちらかといえば満足していない」「全く満足していない」の割合が高まってくることである。  これは退職金・企業年金の支払という事態が迫ってこないうちは、制度に対する認識も低く、満 足・不満足どちらの印象も持たないでいるが、その事態が迫ってくるにしたがって、具体的に金額 や制度を知ることとなり、その実態が漠然として抱いていた期待に比べて不満足なものであるとい うことがうかがえる。

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計     図表一23 会社の退職金・企業年金制度に対する満足度 「麺a{E嘉の退亘.企業年翻房礁足匡1 表側 Q35 年代 ■非常に満足している     0どちらかといえぱ満足してい ■わからない         口どちらかといえば溝足してい      〔+2)     る      〔+1)       (O)     ない     (−1) 自全く満足していない     口無回香      (−2) 18 15 6 駅︽ 20124虚 船00908070,05040302010 0 50−54浪 45i49■ 40144蹟 35139怠 30134ば 25129但 2−3.中小企業の勤労者の退職給付金に対する意識  それでは勤労者は、退職金・企業年金に対してどのような認識をもっているのだろうか。図表一 34によって勤労者が考える退職金・企業年金の位置づけを見てみよう。  最も多いのは3つで、「従業員の福利厚生のためのもの」37.8%、「老後の生活保障として給付さ れるもの」34.6%、「退職後の生活一時金として支給されるもの」32.・9%と、いずれも企業による 福利厚生・生活保障のための支給と考えるものであり。その一方で、「賃金の後払いとして退職時 に精算するもの」という明確に賃金の一部として認識するものは22. 1%と、上記の3つに比べれば かなり低めである。  ただし、企業からの主導権については、「功労に対する報酬で会社がその都度決定できるもの」 が15.2%とやはり低めの数値であり、企業側が一方的に決めることには抵抗があり、したがって権 利でもなく恩賞でもなく、やはり福利厚生という形であり、あまり強く権利主張をして勤労者がコ ントロールできるものという認識はむしろ相対的に低いようである。

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図表一24 退職金・企業年金の位置づけ        ttt      tt     ttt  t       1     1表頭:Q10 退職金・企婁年金の位置づけ(M. A)     表側:QIO 退蔵金・企業年金の位置づけ(M.A) ■ TOTAL   N=1,592     0         10         20         30         ro        (N)も の め た の 生 輝 拳 福 の 員 婁 従の に 跨 ● 退の ても しの とみ い胡 払仕 後る のす 食算 賃翰 怪 力 社 会の でも 酬る 報き るで す定 対決 に度 労梯 功の さ 付 蛤 て し と 問 保 活 生の のも 後る 老れ 枯 て し と 金 時 一 活の 生も のる 後れ 培さ 退付 費 経 聾 の め た の 菌 材 人 他 の そ い な 、b か わ 答 回 餌  退職金・企業年金の使途については、年齢の若い層では「不時の備え」が若干多く、年齢が高く なるにしたがって「定年後・老後の生活費」の割合が高くなる傾向は明らかである。ただし、「定 年後・老後の生活費」という認識は、20∼24歳ですでに67.3%と高い値を示しており、職業人生の かなりはやいうちから、退職金を定年後・老後の生活費として、直近には使わないものだという認 識が強いことがわかる。しかし、そのことが退職金・企業年金にまつわるさまざまな権利や手続き に対する認識が遅れる原因にもなっている。     図表一25 年齢階級別退職金の使用目的

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塁曇灘活費日需・… ■糖臥修理など踏襟

秘0ー釦80η.050ω30初10 25129績 20124績 30−34良 35−39直 40144窟 45149抱 50154黄

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 2−4.中小企業の勤労者が望む退職給付金制度  勤労者が望む退職金・企業年金の「支払準備形態」と「支払い形態」に関する比較は、本章にお いて最後にあげる問題提起に関わる重要な観察事実である。すなわち図表一26に示される支払準備 形態に関する従業員の希望は、企業経営者が持っている情報や制度認識とは大きく異なっているこ とに注意しなくてはならない。結果をみると「厚生年金基金」が圧倒的に29.9%と多く、それ以外 の制度に関してはいずれも一桁台の下の方である。唯一例外なのは「中小企業退職金共済」で 7.8%となっているが、運用先の存在を直接知りうる仕組みになっていることによるところが大き い。それ以外の制度については、おそらく企業の労働組合や従業員会などがしっかりと組織化され ていて、また人事からの情報提供も頻繁に行われているような企業でなければ、従業員の認知度は 低いままであり、自己責任管理が原則の確定拠出に関しては、制度的に普及が進んでいないことや 自己責任での管理運用に関する抵抗もあるために、認識はそれほど進んでいないと思われる。まさ にそのことは、「わからない」が45. 5%と半数近くを占めており、先ほどの退職金・企業年金制度 を福利厚生の一環としてある程度企業に任せるという態度と根を同一にする、勤労者の退職金・企 業年金に対する支配的な意識と思われる。  さらに図表一26の従業員の希望する「支払形態」を見ると、このような自ら積極的にリスクを取 るのではなく、ある程度まで企業に依存しようという勤労者の支配的な心理が確認できる。つまり、 圧倒的に多くの勤労者が望むのは「退職一時金と企業年金の併用」の40.3%、さらに「退職一時金、 企業年金、退職金前払いの併用」17.7%という事実によって示されている。前節で見たとおり、定 年も含む退職の事実は目前に迫っていないものの、さまざまな事態に備えて柔軟な支払形態を、企 業側のリスク負担によって確保したいという意識が見て取れるのである。このことは「企業年金の み」が1.9%、「退職金前払いのみ」が1.9%と、支払時点を前にも先にも片寄りすぎて固定するこ とは避けようという意識とも整合的である。 図表一26 従業員の希望する退職金・企業年金の支払準備形態     表頭 015 異体的な希望劃度【ベース 退■一時金のみ・企婁年金のみタイプ希望者】     表側 Q15 真体的な希望制度【ペース 退■一時金のみ・企集隼金のみタイプ希望看】‘  ■TOTA」 k268     0      10      20      30      40      50        (s) ny生tt基t 確定枯付企室年金 企婁型確定拠出年金 中小企婁遼塙金共済 鴨定違境金共済 その■ わからない

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図表一27 従業員の希望する退職金・企業年金制度の支払形態

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■ TOTAL   −|,592     0      10 退ロー時金のみ 企察q喰のみ 退口金前払い創のみ 遭ロー時金と企集年金の併用 週■一時金と退■金前払いの 併用 企泉年金と退ほ金前払いの併用 退■一跨金、企貝年金、退口 金前払いの併用 その他 籏回答 30 ro 50  (覧) 2−6.ポータビリティに関する認識とニーズ  最後にポータビリティに関する勤労者の認識とニーズについて、勤労者側のアンケートから探っ てみよう。図表一2は、離・転職経験のあるなしによる、希望する退職金・企業年金制度の違いを 見たものであるが、それぞれのタイプで最も希望が高いものが、全く対象的であることは予想通り とはいえ興味深い。すなわち、離・転職経験の「ない」人たちにとっては、最も望ましい制度は 「長く勤める程役職が高くなり、毎年の増え方が大きくなる」で、39.2%を占めている、それに対 して離・転職経験の「ある」人たちにとって最も望ましいのは、「転職先に資金を持ち運べる」で 32.5%、次いで「転職しても前の勤務先から支給される」が19.7%となっている。  すでに見てきたとおり、勤労者の意識だけでなく企業側にも、これまでの長期雇用慣行と年功的 賃金制度による一種の「慣性」が残っており、それが退職金・企業年金の改革が勤労者のニーズに 合っていないのではという制度改革の指摘を受ける原因にもなっているようである。しかし、現実 にはこのように勤労者の意識としては、転職の事実を経験するかしないかで、明確に違いが生じて おり、今後このような多様な勤労者にきめ細かく答えていくような制度改革が望まれることになる だろう。

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計    図表一28 離・転職経験の有無別退職金・企業年金の支払形態       表頭:Q16 希望退職金・企業年金(M. A)       表側:Q1フ 離・転職経験の有無        1        口ある         0なし          N=942       H=650        0    10    20    30    釦    50    60    70    80    90    100       (%)    勤続年数にかかわらず毎年同         28・O    じ額だけ増えていく      25.2    長く勤める程役職が高くなり    毎年の増え方が大きくなる       19.3    自分で運用する       17.7       10.2    会社や基金が蓮用する       8,5    転職先に資金を持ち蓮べる        22.2    転職しても前の勤務先から支       19・7    給される       13,7    会社の掛け金に上乗せして賃       20・0    金や賞与からも準備できる        20.5    会社が準債した資産だけから    支給される       ’1.3    わからない       10.3    k回答  しかしながら、制度改革に対する勤労者の評価はあまり高くなく、それゆえに期待度が低いとい う事実が図表一29から確認できる。すなわち、ポータビリティに関して「望ましい」と考えるもの が転職経験の多寡に関わらず8割前後いる中で、その半数が「望ましいが実現は困難」と認識して いる事実は無視できない。 図表一29離・転職回数別ポータビリティに関する見解

睡”.亨機塾璽罐亘:制度・『ヨ

§鑑い   口望ましい力則は闘 ■望まL〈ない  ロわからない 旬009080m60閲403020100 6囚以上 5回 4回 3回 2回 1回

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図表一30離・転職回数別転職時に考慮すること

   [蓑謬一轡識已錘職⇒

■今の会社に勘め綬けることで 0今の会社に勘め続けたときに ■転胞した先のftttでもらえる 期待される賃金の上鼻額     もらえる賃金の安定性     と期椅される賃金の上昇田 口転口した先の会社でもらえる 口今やめた時と勧め続けた摘と 口転職先の会社でもらえる週境 賃金の安定性         でもらえる退胞一時金の差    一時金や退田企婁年金の額 ■自分の能力や資買がどれだけ ■自分の籏能・騒験がどの程度 ■自分のキャリア目標に会社の 生きるか      向上するか      tt事が合っているかどうか 口会社の人事評価が不公平にお ●会社での鼻造のチャンスや可 口会社の福利厚生制度がどれだ こなわれていないかどうか    能性が多くあるかどうか    け整っているか 圏会社の企婁巳土・企婁文化が 口転職がこの先自分のキヤリア ●その他 自分にあっているかどうか    に不利にならないかどうか ■わからない        ■無回答    0  10  20  30  40  50  θ0  }O  A‘  90  1CO        ㈲ 1回 2回 3回 4回 5回 6回以上  現在、新卒で就職した会社に一生勤めるという意識が低下しつつあり、また、企業同士のM&A なども進展し、また新会社法等によって新たな組織を容易に作り出せるようになっていくなかで、 これまでの長期雇用慣行を念頭に形成された退職金・企業年金制度とそれをサポートする支払準備 形態では、十分にそのような変化に対応できないことは明らかである。図表一30に示すとおり、転 職経験を重ねるにつれて、明らかに現在の会社で稼げる賃金よりは、転職先で得られる賃金の安定 性への意識が増大しており、このことは、転職を重ねつつも安定した生涯収入を得るために自ら設 計しようという意識の勤労者が増えることを示唆している。早急に、さまざまに多様化する勤労者 の生涯所得設計に対応できる制度が必要であり、企業側の支払準備形態のニーズに片寄ることなく、 その下で自らの生涯所得設計をする勤労者のニーズとのバランスのとれた制度を総合的に設計すべ きである。

3.中小企業と勤労者双方から今後の退職給付金制度を考える

 規制緩和をして選択肢を多様化するにあたって、それによって影響を受ける、個々の企業や、一 人一人の個人へのインパクトを十分考慮し、またそれらの企業年金・退職金に対するニーズを反映 するような仕組み作りが必要である。  とりわけ、企業の雇用・賃金システムの制度設計との整合性・親和性は重要であり、ある意味で はマネジメントの自由度を束縛することで、中小企業の活性化を妨げているということにもなりか ねない。制度運用側のシステム設計の都合は十分理解できるが、多様な選択の中で、企業の生産性

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中小企業における退職金制度の運用・給付・ポータビリティに関する制度設計 を向上させたり、何度でもやり直しができるようにしたりする制度設計にしなければ、選択の余地 が狭められて結果的には経済的格差の拡大要因になることも考えられるので注意が必要である。  規制改革によって、年金・退職金原資の資金運用先を多様化することは妥当であるが、しかし、 制度間の移行・移換の不整合を残したまま、資金の流れだけを自由化することが、制度本来の主役 である勤労者や中小企業を不利益に陥れる可能性が結果的に生じることを、制度変更の事前に十分 検証されなければならない。  今後の検討の方向としては、制度ごとのメリット・デメリットを詳細に検証し、ユーザーである 中小企業や勤労者がわかりやすく、利用しやすい制度に、さらに再デザインされなければならない。 また、確定拠出年金制度のように、一定の年齢に達しないともらえない年金として位置づけられる 制度の場合は、企業の資金運用、個人の生涯資金計画の観点からすれば、当然のことながら公的年 金制度との整合性や調整な連携が必要となることは言うまでもない。  わかりにくい制度を温存することは、制度を熟知したものとしないものとの格差を発生させ、ま た熟知する能力はあっても中小企業という限られた人材の組織においては時間的制約のためにすべ ての選択肢を考慮できないまま意志決定を迫られるといういびつな状況により、ますます不必要な 格差を助長することにならないだろうか。 注1  本論文は、その調査結果報告をもとに加筆・修正したものである。  今回行った調査の概要は以下の通り。  a)企業における退職金・企業年金制度に関するアンケート調査   ①実施期間 2006年2月8日∼2月20日   ②発送企業数 6,000社   ③回収数   958社   ④回収率   16,0%   ⑤有効回答数 770社  b)退職給付制度に関するアンケート調査   ①実施期間 2006年2月15日∼2月20日   ②調査依頼数 1,995人   ③回答数   1,604人   ④回答率   80.4%   有効回答数  1,604人

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⑤年代別回収数 20代 413人 25.74% 30代 488人 30.42% 40代 510人 31.79% 50代 193人 12.03% 合計 1,604人 100.00% [参考文献] 勤労者の退職金制度のあり方に関する研究会編(2003)、r退職金制度の変革 新会計基準導入と退職給与引当  金廃止』、(財)雇用情報センター 廣野正道(2006)、『中小企業における退職給付制度の現状と問題点』、勤労者の退職金制度のあり方に関する  研究会編『退職金制度の現状と課題』 山田泰章(2005)、『退職金制度の仕組みと変革』、勤労者の退職金制度のあり方に関する研究会編『適格年金  廃止にともなう移行の現状と課題』

参照

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