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画像診断、最新の話題 脳・脊髄の領域から : ポジトロンCT

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シンポジウム

画像診断,最新の話題

脳・脊髄の領域から

一ポジトロンCT一

嗜疇講。7第鞭元矯〕

放射線医学総合研究所 臨床研究部 ヤマ サキ ト シ ロウ

山 崎 統 四 郎

(受付 平成元年1月17日) 1.はじめに PET(ポジトロンCT)での測定の意義とその応 用での可能性は,測定に際して使用するトレーサ によって異なる. 一般的な応用としては,脳局所の血流やエネル ギー代謝の測定が行われているが,最:近では脳本 来の機能である神経情報伝達に直接かかわる神経 伝達物資やその受容体(レセプター)の測定も行 われるようになった.また酵素活性の測定も始め られている.とくに生ぎた人間を対象としたPET による脳内の受容体と酵素活性の測定は,脳を「こ ころ」との関連のもとに捉えるうえで,もっとも 有用な手段となろう.従来PETを使ったとして も生体での受容体の測定が不可能であった理由 は,受容体への親和性の大きいリガンドに,短時 間(3半減期以内,llCでは20∼60分程度)にポジ トロン放出RIを標識することの難しさと,mgタ ンパク当りpmolオーダの神経受容体を測定対象 とするために,きわめて高い比放射能(500mCi/ μmo1前後)をもつ標識リガンドの合成が要求さ れることから,その技術開発にかなりの年月を要 したためである.また,非特異結合の割合が少な いリガンドであることが要求されるし,脳内受容 体を測定する場合には血液脳関門を通過しやすい 標識リガンドである必要がある.脳研究ないし脳 疾患の診断におけるポジトロンCTについて,こ こでは最新の話題であるレセプター測定を中心と して述べる. 2.標識リガンド開発の現況 従来からPETによる受容体の映像化を目的と して,受容体に結合するリガンドの選択,および これへのRIの標識,すなわち標識リガンドの開 発競争が世界のPET研究グループによって演じ

られてきた.まず1983年にはウプサラ大学の

Longstromにより1℃一Nメチルスピペロンが開 発され,ジョンズ・ホプキンス大学のWagnerら により生体脳でのドーパミンD2レセプターが初 めて映像化された.これは各方面からの注目を集 め,その後も種々のポジトロン標識リガンドの開 発へと進んでいる1).11C−Nメチルスピペロンと同 じドーパミンD2受容体マッピング用のものとし ても,1985年に入りベンザマイド系の11C標識リ ガンド(11C一ラクロプライド)がカロリンスカ研究

所のFardeらにより開発され人体に応用され

た2).’1C一ラクロプライドは人間の生体脳ですみや かに尾状核と被殻とに結合し,その結合に可逆性 を有するなどの利点をもつという,ドーパミンD1

受容体については,D、拮抗剤である11C−

SCH23390が開発され利用されている(ミシガン 大学,ジョンズ・ポプキンス大学,カロリンスカ

Toshiro YAMASAKI〔Division of Clinical Research, National Institute of Radiological Sciences〕 : Positron CT

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研究所). オピオイド受容体については,1984年,すなわ ちヒト生体脳でのドーパミン受容体の映像化に成 功してからちょうど1年後,その映像化に,同じ くジョンズ・ポプキンス大学のWagnerらのグ ループが成功している3).これも生きた人間での マッピングであるが,使用した放射薬剤はオピオ イドのアゴニストであるカーフェンタニルに11C を標識したもので,これにより生体脳でオピオイ ド受容体が,後頭を除いた大脳皮膚と中心灰白質 に主として分布していることが示された.この他 オピオイドのアンタゴニストを用いたものとして は,UC一ディプレノルフィンが使用されている. 中枢性ベンゾジアゼピン受容体に関しては,フ レデリヅクジョリオ研究所のComarらにより開 発された11C標識Ro15−1788が注目される.筆者ら も1984年秋に11C−Ro15−1788の標識合成に成功し, 現在その応用研究を行っている.Ro15−1788はア ソタゴニストであるが,アゴニストとしては11C・ スリクロンが用いられている(ジョンズ・ポプキ ソス大学). 末梢性ベンゾジアゼピン受容体測定を目的とし たものとしてはUC標識PK11195(フレデリック ジョリオ研究所),1’C標識Ro5−4864(英国ハマー スミス病院)などがあり,11C−PK11195については 心筋での臨床利用が始められている(フレデリッ クジョリオ研究所)が,末梢性ベンゾジアゼピン 受容体がダリア細胞に存在することからグリオー マ診断の可能性も検討されている(スウェーデ ン・ウプサラ大学). この他,ムスカリン様アセチルコリン受容体の 測定を目的とした11C標識methyl quinuclidinyl benzilate, MQNB(フレデリックジョリオ研究 所),uC標識デキサチマイド(ジョンズ・ポプキ ンス大学),llC一スコポラミン(ミシガン大学)が 開発され,臨床応用もな:されているが,11G

MQNBは血液脳関門を通過しないために,心筋

でのレセプター測定を中心として研究が進められ ている.ニコチン様受容体については,すでに11G ニコチンが開発されていた(ウプサラ大学)が, 1988年に入りスウェーデン・カロリンスカ研究所 においてその臨床利用がなされた. セトロニソ受容体(S2)に関してもLIC標識Br− LSD(ジョソズ・ポプキンス大学), UC標識ケタ ンセリン(フレデリックジョリオ研究所)4)などの 開発がなされており,すでに脳や心筋での臨床研 究が行われている.フレデリックジョリオ研究所 ではこの他,セロトニンレセプター測定用リガン ドとして,18F標識セテペロソの開発に成功し5), またリタンセリンについても11Cによる標識合成 がなされている6). このような標識リガンドの開発によりベンゾジ アゼピン,アセチルコリン,オピオイド,セμト ニン等のレセプター測定が可能となり,現在はこ れらの測定技術の応用の時代に入りつつある. 3.インビボ・レセプター測定の意義と応用 以下代表的レセプターにつき,その勿〃勿。測 定の意義と応用について述べる. 1)ドーパミンレセプター ドーパミンと疾病との関連では,線条体のドー パミンの欠損はパーキンソン病の硬直と振戦の原 因となり,前脳辺縁系のドーパミン過剰は分裂病 と関連している可能性がつよい. PETによるパーキンソン病症例での線条体の D2レセプターの測定は,すでに一部の施設でなさ れているが,その結果は必ずしも一定ではない. しかし軽症例では線条体のD2レセプターは増加 傾向を示し,病気の進展とともに正常化ないし軽 度の減少傾向を示すようである.これらの結果は パーキンソン病の初期にドーパミンD2レセプ ターにup−regulationが働き,徐々にdown− regulationの状態へ移行するとする考え方に一致 している.またヘミパーキンソン病症例でのPET データでは線条体のD2レセプター密度に左右差 が認められなかったとする報告が多い. 精神分裂病に関しては,これが本来症候群であ り,そのすべてを同一の病因で説明することはで ぎないが,抗精神病薬はドーパミンレセプター (D2レセプター)の遮断によりその効果を発現す ること,および分裂病剖検脳でのドーパミンD2レ セプターの数が増加しているという報告から,一 部の精神分裂病(急性分裂病)では,ドーパミン

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レセプターの異常に基づくというドーパミン過剰 仮説が一般に広く受け入れられている7). このような背景から,米国ジョソズ・ホプキン ス大学のWongらは,1986年分裂病症例でのユ1G Nメチルスピペロンを用いた脳基底核のドーパ ミンレセプター(D2)密度のPETによる測定結果 を発表した.これによると,急性分裂病群では, 基底核のドーパミンレセプター密度(Bmax)が 正常対象群に比べて2∼3倍増加していたとい う8). この報告では,抗分裂病薬をまったく投与され ていない症例が半数含まれているほか,残りの症 例も抗分裂病薬を1ヵ月以上中止した状態での測 定であることから,今後の追試による裏付けが期 待される. 著者らも11C−Nメチルスピペロンを用いて,ヒ ト生体脳でのドーパミンD2レセプターの測定を 行っている9). 写真1は著者らが測定した,正常ボランティア での脳内ドーパミンD2レセプター分布図(トレー サ静注後60∼90分)であるが,線条体へのUC−Nメ チルスピペロンの集積が認められる他,前頭およ び側頭などの大脳皮質にもある程度の集積が認め られる.一般にNメチルスピペロンはドーパミン D2レセプターだけでなく,その一部はセロトニン レセプターにも結合するといわれており,大脳皮 質の集積は主としてセロトニンレセプターによる ものと考えられる. 写真2は22歳の正常男性と72歳の正常男性にお いて,線条体での11C−Nメチルスピペロンとドー パミンレセプター(D2)との結合力を経時的(0 ∼90分)に表したものであるが,年齢の差による と思われるかなりの開きが認められる.リガンド とレセプターとの結合力を線条体と小脳との比で 表しているのは,小脳にはドーパミンレセプター が認められず,これをリガンドに対する特異結合 部位がない対照組織として扱っているためであ る.すなおち線条体における各時点の血流と非特 異結合による放射能の影響を除外するために,小 脳との比を用いている. このように11C−Nメチルスピペロン静注後の線 条体と小脳との放射能比(Ast/Acbl)はすべての 被検者において時間とともに増加していた.また 等価時間に対してAst/Acblは一次関数に従う増 加を認め,その傾き(K3)は加齢とともに低下を 示した.図1は線条体での11C−Nメチルスピペロ ソの移行速度常数K3の加齢に伴う変化を示した ものである. Nメチルスピペロンが一部セロトニンレセプ ターとも結合し,その特異性に問題があることは 既に述べたが,スウェーデン・カロリンスカ研究 所のFardeらが開発した11C一ラクロプライドは D2に特異的に結合し,セロトニンレセプターに結 合することはない.Fardeらは,これを用いて分 裂病症例の検討を行っているが,正常群との差が 認められなかったと述べている.その原因につい ては不明であるが,UC−Nメチルスピペロンを用 いたジョンズ・ホプキンス大学の場合も,当初は 有意の差を見出してはいない.結局非放射性の抗 分裂病薬である,ハロドール(底力ペリドール) の一定量をトレーサ投与前に与えることにより, 初めて有意の差がでたという.ラクロプライドの 場合も,このような解析の違いによって,異なっ た結果が得られた可能性がある.また単純に使用 したリガンドの違いによるものかもしれない.い ずれにしても,複数の施設での追試が必要であり, L ’≡

2

4 3 2 x10『2 ●● ● ● ●

Age (years old}

図1 正常例線条体での11C−Nメチルスピペロンの結

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PET測定によって急性分裂病症例での線条体で D2レセプターが増加しているという結論を下す にはしぼらく猶予が必要であろう. ウプサラ大学グループはドーパミンの再吸収部 位に関しても11C一ノミフェンシンを用いた研究を 始めている.ノミフェンシンは抗欝血として使わ れるが,これは大脳皮質と中心灰白質に存在する ドーパミンの再吸収部位に特異的に結合し,しか も年齢とともに,その結合が低下することを示し ている.彼らは24,35,47,59,72,および81歳 の正常男性の脳内PET画像を提示し,その年齢 による特異結合の変化を示した10). ドーパミンレセプターには,この他D1レセプ ターが存在するが,これに関してもPET測定用 の標識リガンドが開発されている.

SCH23390はドーパミンD1レセプターのアン

タゴニストで,これは特異的にD、セレプターに結 合する.PETによる脳内D1レセプター測定用リ ガンドとして,11C−SCH23390が開発され,すでに 2,3の施設で臨床利用がなされている.早舟リ

ソスカ研究所のFardeらは3人の正常ボラン

ティアと治療中の分裂病患老に11C−SCH23390 と11C一ラクロプライドをそれぞれ投与し, D、なら びにD2レセプターを測定している11).これらの2 つのトレーサはドーパミンが豊富に存在する線条 体に高度に集積し,11C−SCH23390は新皮質にも顕 著な集積を認めたという.スルピリッド等の抗分 裂病薬を投与された症例では,基底核でのD2レセ プターへの11C一ラクロプライドの特異結合が高度

に阻害されるが,D1レセプターへの11C−

SCH23390への影響は軽度であったという. 分裂病症例生体脳でのD、レセプターとD2レセ プターの測定は重要であり,今後のPET測定結 果が期待される. 2)セロトニンレセプター フランスのフレデリックジョリオ研究所では, 5HT、レセプターに選択的に結合するアンタゴニ ストであるケタンセリンに11Cを標識して,これ

を用いたヒト生体脳での5HT2のPETイメージ

ソグを行っている.また米国ジョソズ・ホプキン ス大学では11C・Nメチルケタンセリンと,11C−N メチルー2一プロモーLSDを用いたヒト生体脳での PET測定が始められている.一方スウェーデン・ ウプサラ大学では11Cを標識した5−hydroxytry− ptophan(5HTP)を用いたヒト生体脳での研究が 開始された.これらはいずれも脳内セロトニソレ セプターないしセロトニン(代謝)の測定であり, 睡眠など脳生理機能の研究への応用や,内因性精 神病その他の疾病の診断応用が期待される. 3)オピオイドレセプター オピオイドレセプターのPET測定はアゴニス トである11C一カーフェンタニルとアンタゴニスト である11C一ディプレノルフィンを用いて行われて いる.11C一カーフェンタニルはμレセプターに高 い親和性を有するリガンドであるが,ジ・ンズ・ ホプキンス大学で行われた正常ボランティアで の,UC一カーフェンタニルによるPETイメージで は,静注後しぼらくの間は血流の多い灰白質全体 に放射能が認められるが,その後徐々に後頭皮質 の放射能が減少し,数10分後には後頭部を除いた 大脳皮質全体と中心灰白質に放射能が残り,これ らの部位に特異結合部位が存在することが判 る.11C一カーフェンタニルと同時にキャリア量の ナロキソンを投与した場合には,静注直後に血流 に対応した放射能分布を示すが,その後は急速に 脳全域の放射能が消失し,レセプターへの特異的 結合は認められない. ジョンズ・ホプキンス大学では,この他,側頭 葉てんかん症例でのPETによるμレセプター測 定の結果を報告している.これも11C一八ーフェン タニルによるもので,片側側頭葉に焦点を持つ複 雑部分発作例での測定を行っている.その結果, オピオイド(μ)レセプター結合は脳波で確認され た側頭新皮質で対側に比べて増加していたとい う12). 4)中枢性ベンゾジアゼピンレセプ同一 中枢性のベンゾジアゼピンレセプターのPET イメージングには,アンタゴニストであるUC− Ro15−1788とアゴニストである11C一スリクロンが 使われている.ここでは著者らが行っている11C− Ro15−1788での結果を紹介する. 筆者らがベンゾジアゼピン受容体での測定を行

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うこととなったきっかけは,恐怖や不安のような 清動により脳内ベンゾジアゼピン受容体とベンゾ ジアゼピンとの結合状態が変化することを動物 (マウス)レベルで見出したことにあるが13),この 現象を人問レベルで捉えることを目的として,ベ ンゾジァゼピン受容体に特異的に結合するリガン ドRo/5−1788を選択し,11Cの標識合成を行っ た14). 11C−Ro15L1788の正常ボランティア(安静時)で の脳内分布は写真3のようで,大脳皮質と小脳皮 質に主として分布し,脳内各部に設定した関心領 域での時間放射能曲線は写真4のように,静注直 後に放射能は速やかに上昇し,大脳皮質(1)では静 注後7∼8分でピークを形成してから徐々に減衰 する.基底核と視床ではピークの形成が速く(4 ∼5分),その後の放射能の減衰も速い, 写真5はやはり正常ボランティアでの前頭皮質 と基底核における時間放射能曲線であるが,前頭 皮質(1)では前者と異なり,トレーサ静注直後に急 速に上昇し,次いで徐・効こピークを形成するが, その後の放射能減衰も緩やかである,一方基底核 (2)での時間放射能曲線はトレーサ静注直後に ピークを形成し,その後は速やかに放射能が減衰 している.本渡は後日,再検を行っているが,そ のときの両側前頭皮質での時間放射能曲線は写真 6に示すとおりで,トレーサ静注後,比較的速や かにピークを形成し,その後の放射能減衰も顕著 であり,そのパターンには明瞭な変化が認められ る.本訴でのこのようなパターンの変化は心理的 状況の違いを反映したものの可能性が強いと考え ている 写真7は他の正常ボランティアでの前頭皮質 (1)と基底核(2)における時間放射能曲線を示す. 本山の前頭皮質での曲線はトレーサ静注後,早期 にピークを形成し,次いで速やかな減衰を示すが, この例では前頭皮質での放射能曲線のパターンと 基底核でのそれとは類似の傾向を示している.本 症例ではその後2回にわたり,uC−Ro15−1788によ るPET実験を行っているが,脳内各部の時間放 射能曲線には変化が認められなかった. その他の例では。前頭皮質の時間放射能曲線が 写真7に近いものから,写真5に近いものまで存 在し,その多くはこの2者の中間のパターンを示 した. このように,ヒト生体脳での抗不安薬レセプ ターの結合動態が個人によって異なり,特に同一 個人でもその動態が状況により変動しうる例があ ることが示された.このような例での抗不安薬レ セプターの結合動態の変動はhigh trait anxious

volunteerであることを示すものではないかとも 考えている. いずれにしろ,ヒトでの前頭皮質の受容体結合 動態の変化が,マウスでの強制水泳負荷実験の場 合の変化と対応する可能性があり,将来は本測定 技術が不安神経症などの診断や予防面で応用され ることが期待される. 4.キャリア負荷実験と定量解析

組織内受容体密度はlngタンパク当りpmo1

オーダであるから,これを測定するためのトレー サの比放射能は十分に高い必要がある.例えばト レーサと同一の化合物で,非放射性の物質を大量 にキャリアとして,同時に投与した場合は,放射 性トレーサの受容体との特異的結合は阻害され る.例えば写真8に示すように,放射性のRo15− 1788を投与して,これが脳内の特異結合部位(受 容体)に結合している時点で,非放射性のRo15− 1788を大量に静注した場合には,トレーサ量の放 射性物質の結合は阻害され,結合部位から放射性 トレーサが放出され,脳内の放射能は急速に減衰 する.これをdisplacelnent studyという.同様に トレーサを静注する前に,大量のキャリアを内服 させた場合にも,放射性トレーサは受容体にはほ とんど結合せず,PETイメージ上,受容体の分布 は描出されない.これはsaturation studyといわ れる.以上のように,キャリアを負荷した時に, その影響が認められる場合には,このポジトロン トレーサ法による測定結果が特異的現象を捉えて いることを示すものである. 11C−Ro15−1788のようなトレーサとしての標識 リガンドは,受容体への特異結合と,その他への 非特異結合の2つの結合を生じ,それぞれの結合 部位とトレーサとの間には,移行速度などによっ

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写真1 正常男性ボランティアにおける脳内ドーパミ ンD2レセプター分布.基底核レベルを示す, 写真3 11C−Ro15−1788を用いて測定された正常ボラ ンティア(安静時)の脳内べγゾジアゼピンレセプ ター分布. 写真2 正常男性における線条体ドーパミンD2レセ プターとnC・Nメチルスピペロン結合力の年齢によ る変化. 写真4 正常例脳内各部(前頭皮質,基底核,視床) のLLC−Ro15・1788による時間放射能曲線(写真3と 同一例). 写真5 正常例脳内各部(前頭皮質,基底核)のUC− R15−1788による時間放射能曲線(写真3,4とは異 なる症例). 写真6 写真5に示した正常ボランティアの再検時の 両側前頭皮質時間放射能曲線.

(7)

写真7 正常例脳内各部(前頭皮質,基底核)の時間放 射能曲線(写真3,4および写真5とは異なる例). 写真8 キャリアによるディスプレースメントの実験. て定まるコンパートメントモデルが成立すると仮 定できる.このポジトロントレーサは静脈内に投 与された後,血液脳関門を経て脳内に運ばれ,結 合部位に到達するが,一方では結合部位に結合し たものが解離する.トレーサ静注後,一定の時間 を経て結合部位への結合と結合部位からの解離が 平衡状態に達することとなる.この過程を適当な コンパートメントによる動態モデルとして設定 し,血液中のトレーサ濃度の経時変化から予め仮 定した動態モデルにしたがい,もっとも良く局所 脳内トレーサ濃度の変化を説明するパラメータを 求めることができる.結合能力の指標としては, 各結合コンパートメントへの取り込みの移行定数 とコンパートメントから離れる解離定数との比を 算出することにより,脳内局所の受容体結合力を 知ることができる. 受容体の定量評価にはこの短いくつかの方法が 報告されている.Fardeらは加び伽。検査で用い られるスキャッチャードプロットと同様にリガン ド量を変えた複数の検査により,ドーパミンD2受 容体のBmaxと親和定数を算出している. この他,脳内にレセプターが分布しない部分が 存在する場合は,この部分での放射能を非特異的 結合その他によるもの,すなわち特異的結合を除 いた値と考え,これを用いた定量評価が可能とな る.ドーパミンD2レセプター測定時の小脳や,オ ピオイドμレセプター測定時の後頭皮質がこの ような対象組織になり得る. 5.おわりに 本来,生命現象は生体内で営まれているもので あるから,従来から行われてきたようにこれを試 験管内で追求することは,当然限界があると考え るべきである.一方,PETを用いて生体内での受 容体を測定する場合にも,標識リガンドとレセプ ターとの特異結合だけをどのように分離して測定 するかなどの問題が残る.しかし,現在開発され つつある各種の標識リガンドに加えて,B型モノ アミンオキシダーゼなどの酵素活性測定用のト レーサの開発も進んでおり,PETによる脳研究の ための道具立はかなりの部分が整いつつある.ま たPETにより確立された基盤技術を, SPECTに よる方法論に発展させる研究も始められている. これからの時代は,これらの道具を用いた脳研究 が,その果実を収穫する最も華やかな時代になる と期待される. 文 献

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参照

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