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小児頚椎椎間板石灰化症の1例

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Academic year: 2021

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134 臨床報告 〔東女医大誌 第62巻 第4号頁434∼437平成4年4月〕

小児頚椎椎間板石灰化症の1例

東京女子医科大学附属第二病院 整形外科(指導:菅原幸子教授)     オオヤマ  マサヤ  スガワラ  サチコ  イシガミ  ミヤコ

    大山 昌也・菅原 幸子・石上 宮子

    スナガ   ァキラ  サトウ   ユタカ ヤマザキ キヨウコ

    須永  明・佐藤

       裕・山崎        恭子     トガワセイイチロウ  オオノ  ヒロコ  ウエダ  レイ コ

    外川誠一郎・大野 博子・上田 禮子

(受付 平成3年12月6日) ACase with Calcification of lntervertebral Discs of Cervical Spine in Children Masaya OYAMA, Sachiko SUGAWARA, Miyako ISHIGAMI, Akira SUNAGA,      Yutaka SATO, Kyoko YAMAZAm, Seiichiro TOGAWA,        Hiroko OHNO and Reiko UEDA       Department of Orthopedics(Dir㏄tor:Prof. Sahiko SUGAWARA)       Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital   The ca董cification of intervertebral discs in cervical spines has been frequently observed in Europe and the United States since Lyon reported on it in 1932. It孟s rarely observed in Japan. Unlike the similar disease量n adults, the disease in children responds well to conservative therapy. Symptoms improve in a few days or few weeks with calcif量cation disappearing after few months at the latest. Prognosis is good。   We reported on an observed case of calcification of intervertebral discs in a child’s cervical spine in which the symptoms improved quickly together with references to literature.          はじめに  小児の頚椎椎間板石灰化症は,1932年Lyonの 報告以来,欧米では比較的多いが,本邦において は比較的稀で,我々が渉猟し得た限りでは24例32 椎間であった.今回我々は短期間に症状の改善を みた小児頚椎椎間板石灰化症の1例を経験したの で,若干の文献的考察を加えて報告する。          症  例  症例:7歳,女子.  主訴:頚部痛および頚椎運動制限.  家族歴二特記すべきことなし.  既往歴:平成元年2月,滲出性中耳炎の治療お よびアデノイドの摘出を行っている.  現病歴:平成元年9月13日朝より,特に誘因な く頚部痛とそれに伴う頚椎運動制限が出現し,9 月14日当科初診した.頚椎単純レ心像にて,C3/4 間の髄核に一致した部位に石灰化様異常陰影を認 め(図1),精査目的にて9月18日入院となった.  入院時所見:身長120.3cm,体重21.5kg,栄養 状態は良好であった.  左僧帽筋に沿って落痛・圧痛があり,左側屈制 限が認められたが,斜頚位はとっていなかった. また,神経学的所見は正常で筋力低下も認められ なかった.  検査所見:白血球数11,600/mm3, CRP 2.32 mg/dlと.ヒ回していたが,それ以外に異常はな かった(表1).断層撮影では,石灰化様異常陰影 の前方への僅かな脱出とC3/4間のballooning, およびC3, C4両椎体の扁平化が認められた(図 2).       ’ 一434一

(2)

135        図1 頚椎単純レ線像 第3,4間椎間板髄核に一致した部に石灰化様陰影が みられる.        表1 入院時検査所見 末梢血液一般  RBC  454 x 104/mm3  WBC  11,600/mm3  Hb       13.1g/dl  Ht    39.5%  MCV     87 H  MCH   28.9pg  MCHC   33,2%  Platlet     36,6×104/mm3  ESR   lhr llmm 血液生化学検査  T.P.     7.9g/dl  Na      140 mEq〃  K      4,3mEq〃  Cl       105 mEq〃  Ca      9.3mg/dl  P      4.2mg/dl  GOT      301U〃  GPT      121U〃  LDH     1751U〃  CPK     1131U〃  ALP     3551U〃 血清梅毒反応    陰性 尿検査

 比重  

1.010  蛋 白      (±)  糖       (一)  ケトン体    (一)  ウロビリノーゲン (±)  ビリルビン    (一)      図3 第3,4頚椎間のCT像 髄核に相当する位置に斑点状のhigh density areaが みられる.        図2 頚椎断層撮影 第3,4縮織で石灰化様異常陰影が前方に僅かである が脱出している. 一435一 図4 第3,4頚椎間椎間板離核部石灰化様陰影の経  時的推移  漸時陰影の減少を認める.

(3)

136  CTでは, C3/4間の二二に相当する位置に斑点 状のhigh density areaがあり,このCT値から推 測して石灰化が最も疑われた..一部のhigh den・ sity area嫡前方へ脱出していたが,後方への脱出 は認められなかった(図3).  以上より小児頚椎椎間板石灰化症を疑い,保存 的治療にて経過観察を行った,頚椎カラーを装着 し,頚部の安静を保っていたところ,入院後約1 週間の経過にて症状軽快し,白血球数,CRPも正 常化したため10月12日退院となった.  入院中および退院後の経過を単純レ線にて約半 年間観察した.側面像においてC3/4間の髄核に一 致した陰影は次第に減少し,平成2年4月9日の 時点ではその大部分が消退したが,C3・C4両椎体 の扁平化には改善がみられなかった(図4).また この半年間に,頚部痛等の症状の再発は認められ なかった.  以上の臨床経過がEyringら1)の提唱する小児 椎間板石灰化症候群の臨床症状とすべて合致する ことより本症例の診断の根拠とした.          考  察  小児の椎間板石灰化症は,1924年Baronの報 告2)が最初であるが,頚椎においては1932年Lyon 表2 小児頸椎椎間板石灰化症の本邦における報告例 報 告 例 報 告 者 症 例 数 小 林 1974 1 酒 匂 1974 1 古 川 1977 1 丹 治 1979 1 松 林 1979 1 吉 岡 1980 2 武 仲 1980 1 小見淵 1981 3 繁 田 1982 1 荻 野 1982 1 岡 村 1982 1 平 野 1983 1 義 江 1984 2 斎 藤 1986 1 吉 村 1987 1 平 松 1987 1 内 藤 1988 3 自験例 1990 1 合 計 24例 が初めて報告している.以来欧米では既に100例以 上の報告がある.一方,本邦では1932年水町の報 告3)を最初とするが,頚椎におけるものは1974年 の小林以後,我々が渉猟し得た限りでは自験例を 含め24例32椎間であった(表2).  男女比は5:3とやや男子に多く,発症年齢は 4∼13歳で平均7.5歳であった(表3).  羅患部位はC4/5, C3/4, C5/6の順に多く,羅患 椎間数は平均1.3椎間であった.グラフ中胸椎椎間 が表示されているが,これは頚椎との多士間羅患 症例があるためである(表4).  これらの症状としては頚部痛が圧倒的に多く, 24例中23例に見られ,ついで頚椎運動制限の順に なっている(表5).頚部痛がほぼ必発なのは,髄 表3 性・年齢分布(本邦報告24例) 男 年齢 女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

5432 1

12345

表4 罹患部位分布(本邦24例32椎間) 部 位 Cl/C2 C2/C3 C3/C4 C4/C5 C5/C6 C6/C7 C7/Thl Th/Th2 Th2/Th3 Th3/Th4

123456789101112

   うち多椎間罹患例5例 一436一

(4)

137 表5 症状(本邦24例) 症  例 頸 部 痛 23例(95,8%)

運動制限

20例(83.3%) 肩 部 痛 2例(0.08%)

反射低下

2例(0.08%)

筋力低下

2例(0.08%)

知覚鈍麻

1例(0.04%) 咽 頭 痛 1例(0.04%) 表7 小児椎聞板石灰化症候群       (Eyringら,1964) 表6 Etiology of calci丘cation 1.Pain, local or referred 2.Lilnitation of spine motion 3.Evidence of inHammation 4. Intervertebral disc calcification 5.Pediatric age group only 6,Self・limited clinical course 1.Trauma 2.Metastatic infective process 3.Ischemic necrosis 4. Congenita1 5.Vitamin D intoxication 6,Pseudogout 7. Ochronosis 核の石灰化により椎間板:内圧が上昇し,隣接する 靱帯や筋の自由神経終末枝を刺激するためと思わ れる.また24症例中,神経症状を呈したものは2 症例0.08%で,うち1例は左上腕二頭筋腱反射低 下,左上腕二頭筋筋力低下を呈し,他の1例は左 上腕三頭筋腱反射低下,左C8領域知覚鈍麻,左手 握力低下が認められた.神経症状の発現している 症例では椎間板による神経根の圧迫が関与してい ると思われるが,本例はCTにおいて神経根圧迫 を認めておらず,従って症状としては頚部痛,頚 椎運動制限の発現のみを認めたものと考える.  小児の場合の病因論に関しては表6に示すごと くである.外傷説はSchorrら4)により支持されて おり,炎症説はBaron2), Lyonらにより提唱され ているが,その他諸説あり未だ確定したもの妹な い.しかしその特徴において小児における椎間板 石灰化症は成人のそれとはいくつかの点で明らか に異なっている.成人では椎間板の石灰化は変性 変化によるものであり,繊維輪に多く腰椎に多発 する.一方,小児では髄核に多く頚椎に多発する. そして成人では石灰化は永久に残るのに対し,小 児では多くの症例で約1年以内に石灰化が消退し ている.  Eyringら1)は小児の椎間板石灰化症.を一つの症 候群としてとらえられており表7に示す6つの特 徴を掲げている.表中に示されている通り,本症 はself limitingな疾患であり予後良好で,一部神

経症状を呈する場合は観血的治療の適応とな

る5)6)が,通常は保存療法で軽快する.ただし,石 灰化消退後も隣接椎体の変形が残存する場合が多 く1),症状の再発する症例も報告されているた め7),長期における経過観察が必要と思われる.          結  語  1)小児頚椎椎間板石灰化症の1例を報告した.  2)保存療法にて軽快する予後良好な疾患であ るが,隣接椎体の変形が残存する場合が多く経過 観察が必要と思われた.          文  献  1)Erying EJ, Peterson CA, Bjornson DR:   Intervertebral disc calcification in childhood, J   Bone Joint Surg 46・A:1432−1441,1964  2)B盃ron A:Uber eine neue Erkrankung der   Wirbelsaule. Jahrb Kinderkeilk 104:357−360,   1924  3)水町四郎:椎間帯石灰化症.日レ雑誌9:   573−594, 1932  4) Scborr S, Adler E: Calcified intervertebral   disc in children and adult. Acta Radiol 41:   498−504, 1958  5)Smith RA, Vohman MD, Dimon JH et al:   Calcified cervical intervertebral discs in chi・   dren. J Neurosurg 46:233−238,1977  6)Swick HM: Calcification of intervertebral   discs in childhood. J pediatr 86:364−369, 1975  7)Morris IM, Sheppard払: The persistence of   clinical and radiological features after inter−   vertebral disc calcification of childhood. Br J   Rheumatol 25:219−221,1986 一437一

参照

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