Title
妊馬血清性性腺刺激ホルモン投与による牛の過剰排卵誘起
に関する研究( 内容の要旨 )
Author(s)
後藤, 太一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第011号
Issue Date
1994-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2065
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年 月 日 学位授与 の 要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 後 藤 太 一 (東京都) 博士(獣医学) 獣医博甲第11号 平成6年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 岩手大学 妊馬血清性性腺刺激ホルモン投与による牛の過 剰排卵誘起に関する研究 主査 岩 手 大 学 教 授 副査 岩 手 大 学 助教授 副査 東京農工大学 教 授 副査 帯広畜産大学 教 授 副査 岐 阜 大 学 教 授 義 陽二邦 邦 敏 田 宅 野 藤 葉 金 三 屋 佐 千 宏 一夫 忠 郎 論 文 の 内 容 の 要 旨 午の胚移植における過剰排卵誘起には多数の卵胞を発育させる目的で、妊馬血清性性腺 刺激ホルモン(PMSG)あるいは卵胞刺激ホルモン(FSH)が使用されている。両ホルモン製剤 の過剰排卵誘起効果の比較は、従来は異なる午群または個体を対象とした成績に基づいて 行われており、その効果の判定において一致した見解は得られていない。 そこで本研究は、P囁とFSH投与による過剰排卵誘起効果を可能なかぎり同一の条件下 で比較するた捌こ、同じ管理条件で飼養されているホルスタイン種経産午23頭を用い、同 一午においてPMSG3,000IUを1回投与後72時間にプロスタグランジンF2a類縁物質(PG) 500ノ彪を投与、およぴFSH総量2卜40AUを6∼10回漸減投与し投与開始後48時間にPG500 控を投与することによる過剰排卵誘起処置を80日前後の間隔をおいて交互に行い、卵巣の 反応および胚の回収成績を検討した。その結果、PMSG処置群とFSH処置群の平均排卵数は、 それぞれ11.3個と7.5個であり、前者で有意(P〈0.05)に多かった。また、排卵数が2個以 上であったPMSG処置群22頭とFSH処置群17頭の平均排卵数は、それぞれ1l.8個と10.1個、 回収卵数はそれぞれ6.7個と6.8個、受精卵数はそれぞれ5.9個と5.4個、正常胚数はそれぞ れ4.9個と4.6個であった。以上のように、P脛㌫3,000IUを1回投与することによる過剰 排卵誘起の効果は、FSH総量24一、-40AUを6一、ノ10回漸減投与することによるそれと比べて、
-93-優るとも劣らないことが認められた。 つぎに、P鵬G投与による過剰排卵誘起処置時において、多数の正常胚を得ることができ る生殖内分泌学的背景について検討する目的で、ホルスタイン種経産午18頭においてPMSG 3,000IU投与による過剰排卵処置後の胚の回収成績と処置開始日から胚回収日までの間に おける血中プロジュステロン(P)とエストラジオールー17β(Ez)濃度との相互の関係を 調べた。その結果、血中P濃度は全頭においてPMSG投与暗からPG投与暗までの間に増加し 和投与後1∼3日で1ng/ml以下となり、排卵後の増加の程度と排卵数との間、および正常 胚数との間に正の相関関係が認めらゎた。一方、血中E2濃度はPMSG投与からPG投与までの 間に増加し、その増加の程度と排卵数との間、および正常胚数との間に正の相関関係が認 めらゎた。また、排卵後胚回収日までの間における増加量が10pg/ml以上であった8頭の 排卵敬および正常胚敷は、10pg/ml以下であった10頭のそれらと比べて多かったが、有意 差は認められなかった。E2/P値は、排卵数が2個以上であった15頭では処置後の発情発 現目前後に最高値を示した後に低下し、胚回収日までには0.001以 Fの値となったが、排 卵数が0または1個であった3頭では排卵後胚回収日の前日または当日まで0・001以上の値 で推移した。以上のように、P催G投与後発偶発現までの間に血中E2濃度の明瞭な増加が認 められた例では排卵敬および正常胚数は多いこと、また、排卵後胚回収日までの間に血中 Ez濃度が増加しても、排卵数が多く血中P濃度の増加量が多ければEz/P値は低値を示し、 胚の回収成績に悪影響を与えるものではないことが認めらゎた。 さらに、PMS(1投与による過剰排卵誘起処置時における適期授精を容易にするための合理 的な処置方法を検討する目的で、ホルスタイン種経産午14頭についてPG投与後30時間に性 腺刺激ホルモン放出ホルモン類縁物質(Gr一札トA)100上場を追加投与し、24時間後の定時に 人工授精を1回行い、胚の回収成績と血中PおよぴEz濃度の推桔を検討した。その結果、 排卵数が2個以上であった13頑の平均排卵数は10.3個、回収卵数は6.8個、受精卵数は6.0 個、正常胚数は5.2個であり、さきのP帖G単独投与による成績および従来の報告と比べて 優るとも劣らない成績が得られた。しかしながら、排卵数が10個以上と多かった4頭の回 収卵(胚)に対する末受精卵と変性胚の出現率は32%で、やや高いことが認められた。ま た、和投与時の血中E2濃度および排卵後胚回収日までの間における血中Pの最高濃度と排 卵数および正常胚数との間には強い正の相関関係が認められた。以上のように、P鵬G投与 による過剰排卵誘起処置時においてG偶j・Aを追加投与し、その後定時に人工授精を1回行 うことにより正常胚を得ることが可能であることが認められた。 以上の研究結果から、乳用経産午におけるP帽G3,000IUl回投与による過剰排卵誘起 処置は正常胚を得るうえで効果的であることが確かめられ、さらにPMSG投与による過剰排 卵誘起処置時においてGr戯1■Aを追加投与し、定時に人工授精を行うことによって、正常胚 を得ることが可能であることが明らかとなった。
【94-審 査 結 果 の 要 午の胚移植における過剰排卵誘起には多数の卵胞を発育させる目的で、妊馬血清性性腺 刺激ホルモン(PMSG)あるいは卵胞刺激ホルモン(FS11)が使用されている。両ホルモン製剤 の過剰排卵誘起効果の比較は、従来は異なる午群または個体を対象とした成績に基づいて 行われており、その効果の判定において一致した見解は得られていない。 そこで本研究では、同じ管理条件で飼養されているホルスタイン種経産午23頭を用い、 同一午においてPMSG3,0001Uを1回投与後72時間およぴFSI磯ミ量24一、-40AUを 6′、10回漸 減投与開始後48時間にプロスタグランジンF2口煩練物質(PG)500ノ児を投与することによる 過剰排卵誘起処置を80日前後の間隔をおいて交互に行い、胚の回収成績を比較した。その 結果、PMSG処置群とFSH処置群の平均排卵数はそれぞれ11.3個と7.5個であり、前者で有意 (P〈0.05)に多かった。また、排卵敬が2個以上であったPMSG処置群22部iとドS【-t処置肝17頑 の平均排卵数はそれぞれ11.8個と10.1個、回収卵数はそれぞれ6.7個と6.8個、受精卵数は それぞれ5.9個と5.4個、正常胚数はそれぞれ4.9個と4.引田であり、過剰排卵誘起処置に反 応した個体では、胚の回収成績において両処置群間で差異のないことを明らかにした。 つぎに、P旺㌫投与による過剰排卵誘起処置時において、多数の正常胚を得ることができ る生殖内分泌芋的背景について検討する目的で、ホルスタイン種経産午18頭においてP肥㌫ 3,000IU投与による過剰排卵処置後の胚の回収成績と処置開始日から胚回収日までの間に おける血中プロジュステロン(P)とエストラジオールー17β(E2)濃度との相互の関係を調べ た。その結果、血中P濃度は、全頭でPMSG投与からPG投与までの間に増加し、PG投与後l ∼3日で1ng/ml以下となり、排卵後の増加の程度と排卵数との問および正常胚数との間 に正の相関関係があることを明らかにした。一方、血中E2濃度は、P旺芯投与から和投与ま での間に増加し、その増加の程度と排卵数との問および正常胚数との間に正の相関関係が あることを明らかにした。また、排卵後胚回収日までの間の血中Ezの増加量が10pg/ml以 上であった8頭の排卵数および正常胚数は、10pg/ml以下であった10頭のそれらと比べて 多かったが有意差は認められず、この間に血中E2濃度が増加しても、排卵数が多く血中P 濃度の増加量が多ければE2/P値は低値を示し、胚の回収成績に悪影響を与えるものでは ないことを明らかにした。
ー95-さらに、P旺芯投与による過剰排卵誘起処置時における適期授精を容易にするための合理 的な処置方法を検討する目的で、ホルスタイン種経産午14頭について和投与後30時間に性 腺刺激ホルモン放出ホルモン類縁物質(Gn甜・A)100J娼を追加投与し、24時間後の定時に 人工授精を1回行い、胚の回収成績と血中PおよぴE2濃度の推移を検討した。その結果、 排卵数が2個以上であった13頭の平均排卵数は10.3個、回収卵数は6.8個、受精卵数は6.0 個、正常胚数は5.2個であり、さきのPMSG単独投与による成績と比べて優るとも劣らない 成績が得られた。しかしながら、排卵数が10個以上と多かった4頭の回収卵(胚)に対す る末受精卵と変性胚の出現率は、32%でやや高いことが認められた。また、托投与時の血 中E2濃度および排卵後胚回収日までの間における血中Pの最高濃度と排卵敬および正常胚 数との間には強い正の相関関係があることを明らかにした。以上のことから、P推㌫投与に よる過剰排卵誘起処置時にGnⅢ・Aを追加投与し、定時に人工授精を1回行うことにより正 常胚を得ることが可能であることが明らかとなった。 平成6年1月20日に開催した学位論文書査委員会において、提出論文ならびに既発表論 文(芋術誌掲載1編)の内容について、5名の蕃査委員が慎重審議した結果、大字院連合 獣医学研究科の学位論文として、十分にふさわしいことを認めた。