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衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの 調査検討 報告書 平成 21 年 3 月 社団法人電波産業会

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衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの

調査検討

報 告 書

平成21年3月

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はじめに

本報告書は、「衛星を利用した個人用捜索救助システム」として、我が国に導入するた めの必須要件を具備したPLB(Personal Locator Beacon)の技術的検討の結果を報告す るものである。PLB は海上でも山岳でも利用可能なことから、迅速な捜索救助のために早 期の導入が期待されているが、救難信号の信頼性、つまり誤って発信された救難信号いわ ゆる誤報を排除できることは救助システムを構築・活用する上での基本的要件である。同 様の捜索救助システムとしてEPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)が あるが、このEPIRB システムにおいても誤報対策が大きな問題となっている。PLB にお いては使用台数が極めて多いと予想されるので、誤発信や操作の間違いによる誤報対策が 必須である。もし多くの誤報に対応することになれば、捜索救助のための資源を時間的・ 物理的にも無駄に使用することになり、経済的にも大きな損失となる。 誤報対策として、信号の発信源に対して確認を行う機能など何らかの方策を講じること が必要である。もし誤報として確認されたならば、誤報の発信源となった PLB の発信を 停止させ、混信や不要波を排除することが可能なシステムとすることで有効な運用が可能 になる。そのためには、従来の通信方式である PLB から衛星への単方向通信ではなく、 衛星と個々の PLB との間で双方向通信ができるシステムの開発が必須であると考え、最 適なプロトコルや制御信号の基本要件の検討を行なった。また、発信源の位置の高精度化、 安定な送受信のためのアンテナの最適化および PLB 本体の小型化と省電力化に関して調 査検討し、PLB の有効な利用を図るために PLB の高度化に関する技術的検討を行なった。 検討にあたっては海外の動向調査も実施し、PLB の高度化における双方向通信方式は必須 要件であることが確信された。 本調査検討会は次年度も継続される予定であり、調査検討の中間報告を行うものである。 最後にこの調査検討会において鋭意調査検討して戴いた委員、オブザーバ各位、作業部 会委員ならびに事務局に深甚なる謝意を表します。 平成21 年 3 月 衛星を利用した個人用捜索救助システムに関する調査検討会 座長 東京海洋大学 海洋工学部教授 林 尚吾

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目 次

はじめに 第1章 本調査検討の目的...1 第2 章 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの概要...3 2.1 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは...3 2.2 コスパス・サーサット衛星システムの歴史...4 2.3 コスパス・サーサット衛星システム...4 2.3.1 低軌道衛星(LEOSAR)システム ...5 2.3.2 静止道衛星(GEOSAR)システム...6 2.3.3 中軌道衛星(MEOSAR)システム ...6 2.4 コスパス・サーサットの地上配信システム...8 第3章 リターンリンク用ビーコン信号の最適プロトコルの選定... 11 3.1 ARGOS システムリターンリンクプロトコル... 12 3.1.1 ARGOS システムについて... 12 3.1.2 ARGOS システムビーコン... 14 3.1.3 ARGOS システム信号について ... 15 3.1.4 ARGOS リターンリンクについて... 16 3.2 準天頂衛星システムL1-SAIF プロトコル... 18 3.2.1 準天頂衛星(QZSS)システムについて... 18 3.2.2 L1-SAIF 信号について ... 19 3.2.3 L1-SAIF へのリターン信号の搭載可能性について... 20 3.3 ガリレオ衛星システムリターンリンクプロトコル... 21 3.3.1 ガリレオ衛星システムについて... 21 3.3.3 SAR サービスについて ... 23 3.3.4 リターンリンクについて... 24 3.4 プロトコルの選択... 27 第4章 新たなコスパス・サーサット・ビーコン制御信号の構成... 29 4.1 リターンリンク新機能案... 30 4.2 リターンリンク受信機よりのリターンリンク送出フォーマット案... 32 4.3 リターンリンク応答用フォワードリンクビーコンプロトコル案... 34 4.3.1 リターンリンク試験用フォワードリンクビーコンプロトコル... 34 4.3.2 リターンリンク応答用新フォワードリンクビーコンプロトコルの可能性 .... 34 第5章 ビーコン制御信号の性能の確認... 39 5.1 試験用ビーコン構成... 39 5.2 リターンリンク制御信号によるビーコン動作の詳細... 42 5.2.1 リターンリンクに対する動作の詳細... 44 5.2.2 リターンリンク試験用フォワードリンクプロトコルの詳細... 45 5.2.3 リターンリンク試験結果... 46 5.3 コスパス・サーサット規格の性能検査結果... 53 5.3.1 振動衝撃試験... 53 5.3.2 周波数安定度試験... 54 5.4 その他... 57 第6章 ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計... 59 6.1 送受信アンテナの周波数... 59

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6.2 アンテナ設計の仕様・測定条件... 59 6.2.1 アンテナの仕様... 59 6.2.2 測定条件... 60 6.3 アンテナ方式の検討... 62 6.3.1 予備シミュレーション評価... 62 6.3.2 シミュレーション条件の再検討... 67 6.4 アンテナの諸元... 71 第7章 海外動向調査... 73 7.1 調査概要... 73 7.2 フランス国立宇宙研究センター(CNES) ... 73 7.2.1 ガリレオ衛星打上計画... 73 7.2.2 リターンリンク機能... 74 7.2.3 フランスにおけるPLB 運用実績 ... 75 7.2.4 フランスにおけるMEOLUT(MEOSAR 地上局)実験 ... 75 7.3 ビーコンメーカの状況... 76 7.3.1 ACR 社(米国)... 76 7.3.2 McMurdo 社(英国) ... 77 7.3.3 Kannad 社(フランス)... 78 7.3.4 Jotron 社(ノルウェー)... 79 7.3.5 ELTA 社(フランス)... 79 7.4 参考... 80 第8章 まとめ... 81 おわりに 参考資料 付属資料

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第1章 本調査検討の目的

遭難緊急時の通報のためのコスパス・サーサット(Cospas-Sarsat)衛星システムの一つと して、個人用捜索救助システム、すなわちパーソナル・ロケータ・ビーコン(以下「PLB」 という。)があり、PLB は、捜索救助用機能の有効性はもちろんのこと、従来の衛星 EPIRB などの遭難救助用システムに比べ小型かつ安価であるため、すでに米国、欧州など世界24 か国で導入されており、我が国でも登山者や小型船舶など多くの国民から要望があるもの の導入されていない。その要因の一つに、誤発射における技術的対策がなされていないこ とが挙げられている。誤発射は、捜索救助側に負担をかけるだけでなく、無意味な電波を 発射して、特定の周波数を長時間占有するこことなり、周波数の使用効率を著しく低下さ せている。 今般、世界的に PLB を双方向化(リターンリンク)するなど高度化することが、コス パス・サーサット合同委員会等で検討されている。このリターンリンクを利用して周波数 を有効に利用して誤発射を軽減する技術を調査検討することが、わが国への PLB の円滑 な導入に対する一つの手段として期待されている。 このため、本調査検討においては、海外の動向を踏まえつつ、周波数の占有率軽減のた めのビーコン信号の制御技術を検討し、無駄な電波の発射時間の軽減を図るほか、グラン ドプレーンにとらわれずビーコン信号を安定して制御するためのアンテナ技術について調 査検討を行い、コスパス・サーサット合同委員会へ本技術を提案して我が国への PLB の 導入への促進に寄与することを目的とする。 本年度は次に示す5つの課題に取り組むこととする。 (1)リターンリンク用ビーコン信号の最適プロトコルの選定 衛星通信のリターンリンクのプロトコルについて、諸外国の状況を調査してコスパ ス・サーサット 衛星に適応できる最適なプロトコルを選定する。(第3章) (2)コスパス・サーサット 規格に適合したビーコン制御信号の構成 ビーコンを制御するための信号について、PLB の規格に適合した制御信号の構成を行 う。(第4章) (3)ビーコン制御信号の性能の確認 選定されたプロトコルにコスパス・サーサット 規格に適合した構成のビーコン制御信

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をビーコン試験機器に加え、周波数安定度等を測定してビーコン性能がPLB 規格に適合 していることを確認する。(第5章) (4)ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計 筐体の置かれた環境に依存することなく仰角5~60 度において-3dBi~+4dBi の送受 の確保が可能となる400MHz 帯高性能アンテナの基本設計を行う。(第6章) (5)海外動向調査 諸外国におけるPLB の高度化に関する動向を調査する。(第7章) 本調査検討を通じて、周波数の占有率軽減のためのビーコン信号の制御技術及びグラン ドプレーンにとらわれず安定して送信するためのアンテナ技術の達成を目標として、我が 国へのPLB の導入を促進する。

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2 章 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの概要

2.1 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは、第1 章で述べたようにコスパス・サ ーサット衛星システムによる、個人向けの捜索救助用ビーコンである PLB(Personal Locator Beacon)ことである。 コスパス・サーサットのビーコンには、大きくわけて 3 種類あり、船舶用ビーコンを EPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)、航空機用ビーコンを ELT (Emergency Locator Transmitter)、個人用ビーコンを PLB という(図 2.1-1 参照)。

EPIRB

(非常用位置指示無線標識)

(Emergency Position Indicating Radio Beacon)

ELT

(航空機用救命無線機)

(Emergency Locator Transmitter)

PLB

(救命用携帯無線機)

(Personal Locater Beacon)

船舶用

船舶用

航空用

航空用

個人用

個人用

図2.1-1 ビーコンの種類 EPIRB は、船舶が沈没した場合には自動的に浮上し、遭難位置や船の ID 等を送信する。 ELT は、航空機が墜落した場合に自動的に緊急通報を送信する。PLB は、手動でボタン が押下された場合のみ緊急通報が送信される。 ビーコンから発射された緊急通報は、コスパス・サーサット衛星で受信された場合、そ の情報が地球局経由で各遭難救助機関に通知される。 PLB については、国際的な取り決めがないため他のビーコン(EPIRB 及び ELT)とは違 い、その使用の許可は各国の主管庁に任されている。そのため、現時点では、PLB は我が 国では使用できないが、すでに海外では23 ヵ国で PLB の利用が承認されており、急速に 普及している。 本章ではこれからまずシステムの基本となるコスパス・サーサット衛星システムについ

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て説明する。 2.2 コスパス・サーサット衛星システムの歴史 コスパス・サーサット・システムは、38 ヵ国(2008/12 現在)もの国が加盟している政 府間機関「コスパス・サーサット」(本部:カナダ・モントリオール)によって運用されて いる国際的な捜索救助衛星システムであり、1979 年に米国、ソ連、カナダ及びフランスの 4 カ国の宇宙機関によって締結された覚書(MOU)によって構築されたものである。 4 カ国の宇宙機関の協力と準備によって進められ、1982 年に最初の衛星が打上げられて 以来、数々の遭難者の救助に貢献し、1988 年には、上記の 4 カ国が正式に「国際的なコ スパス・サーサット計画協定」を締結し、世界唯一の公的な捜索救助衛星システムとして 改めて認知された。 国際海事機関(IMO)や国際民間航空機関(ICAO)では、船舶が沈没した場合や航空 機が墜落した場合に自動的に衛星に向けて救助信号を発射する発信機(ビーコン(詳細後 述))の搭載を国際条約で船舶や航空機に義務付けて、船舶や航空機の捜索救助を促進して いる。 初期の衛星システムは、地上約1,000 キロメートルの低軌道で地球を周回する低軌道衛 星(LEOSAR)のみによって構築されていた。当時は GPS が運用になる前であったため、ビ ーコンから発射された電波(121.5MHz や 406MHz)のドップラ効果を計測し、ビーコン の位置を計算するものであったが、その後、1990 年代後半から GPS による位置データを 受け取れる静止軌道衛星(GEOSAR)も加えて運用されている。 初期には 121.5MHz と 406MHz の遭難警報を処理するシステムとして開始されたが、 ID 等のデータ送り出せない 121.5MHz のシステムは、多発する誤報(2007 年には 98.7% の誤報率)への対処が出来ないため、2009 年 2 月 1 日以降は、衛星における信号処理が 停止され、406MHz のみのシステムに移行した。 ただし、121.5MHz は、衛星による捕捉は中止されるが、遭難者の位置を方向探知器に より最終的に特定するためのホーミング用として、今後とも多くのビーコンに搭載される と考えられる。 2.3 コスパス・サーサット衛星システム コスパス・サーサット衛星システムは、低軌道衛星システムと静止衛星システムで運用

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が行われている。しかしその両システムとも、短所を持っており、それらを補うことを目 的として、中軌道衛星システム(MEOSAR)が計画されている。 現在の衛星システムについて図2.3-1 に構成を示す。 (C/S G.007 より) 図2.3-1 コスパス・サーサット・システム 2.3.1 低軌道衛星(LEOSAR)システム LEOSAR は、米国・フランス・カナダが共同で打ち上げた「サーサット衛星」とロシア が打ち上げた「コスパス衛星」により構成されている。 軌道は、両極を通過する高度約1,000km の極軌道であり、現在 5 機(2008/12 現在)の 衛星が運用されている。 このシステムの特徴は、 【長所】 ・ 低軌道なため、低い受信電力でも受信が出来る。 ・ 測位データが無くても信号のドップラ効果を計測することにより位置を計測 出来る。 【短所】 ・ 衛星で位置を確定するのに衛星2 回の通過が必要で、最悪2時間程掛かる。 ・ ドップラ効果による位置計測を行うため、ビーコンに高精度に周波数安定度が 要求される。 なお、このLEOSAR 衛星は、将来(2017 年以降)、後述の MEOSAR システムが整備 された後、打ち上げが中止される予定となっている。

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2.3.2 静止道衛星(GEOSAR)システム

GEOSAR は、米国の「GOES 衛星」、欧州連合(EU)の「MSG 衛星」、インドの「INSAT 衛星」により構成されており、現在5 機の衛星が運用されている。このシステムの特徴は、 【長所】 ・ 常時監視を行っている。 ・ GPS 測位データにより受信と同時に位置の特定が出来る。 【短所】 ・ GPS が搭載されていないビーコンならびに GPS の計測に失敗した場合、位置 の特定が出来ない。 ・ 軌道の高度が約36,000km であるためビーコンの送信電力が大きくなる。 ・ 南極・北極がカバーできない。 船舶用のEPIRB に比較し、PLB は、GPS 付き製品が海外で多数、発売されていること から、GEOSAR が役に立つ機会が多いと考えられる。 2.3.3 中軌道衛星(MEOSAR)システム コスパス・サーサット・システムについては必ずしも専用の衛星を打ち上げる必要はな く、他のシステムの衛星に中継装置を搭載することで機能を果すことができる。そのよう な衛星として測位システム用(GPS、ガリレオ及びグローナス)の衛星の利用が計画され ている。 測位システム用の衛星は図 2.3.3-2 にあるような約 20,000km の軌道を回る中軌道 (MEO)衛星であり、これらによるコスパス・サーサット衛星システムは MEOSAR シス テムと呼ばれる。 現在、コスパス・サーサット用中継装置の搭載を予定している測位システムとしては次 のものが上げられている。 ・GPS 衛星(米)【DASS】 24 機 ・ガリレオ衛星(EU)【SAR/Galileo】 27 機 ・グローナス衛星(ロシア)【SAR/Glonass】 24 機

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(AEROSPACE 社 HP より) 図2.3.3-2 MEOSAR の例:GPS 衛星軌道配置

MEOSAR システムは、従来の LEOSAR ならびに GEOSAR と比べて次のような特徴を 持っている。

【長所】

・ 常時天空に衛星があるので常時監視を行える。

・ 遭難位置検出に 4 機の衛星による信号受信時間差を用いる TDOA(Time Difference of Arrival)ならびに周波数偏差を用いる FDOA(Frequency Difference of Arrival)を使用するので、位置データのないビーコン信号でも LEOSAR より高精度な位置の特定が短時間(十数分)で出来る。

・ 衛星測位受信機搭載ビーコンでは測位データにより受信と同時に位置の特定 が出来る。

・ ガリレオ衛星については地上基地局からビーコンへの通信チャネル(RLM: Return Link Message(双方向通信))を搭載する計画になっており、誤発射 対策に役立つと考えられている。

【短所】

・ 多数の衛星を打ち上げる必要があるため、衛星の打ち上げに費用と時間がかか る。。

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画となっている。

2.4 コスパス・サーサットの地上配信システム

ビーコンから発信された救難信号(以下緊急通報という。)は、衛星を経由して、地上受 信局(LUT: Local User Terminal)で受信され、緊急通報配信を行うために業務管理セン ター(MCC: Mission Control Center)に送られる(図 2.4-1 及び図 2.4-2 参照)。MCC は、 緊急通報を解析した後に海上保安本部や空港事務所などの救助機関(RCC: Rescue Coordination Center)に送付すると同時に、他国の MCC とも情報交換を行う。 日本では、LUT は群馬(民間委託)に、MCC は霞ヶ関(海上保安庁内)に設置されて いる。 LUT 外観 MCC 内部 図2.4-1 LUT 及び MCC ビーコンから発射された緊急通報(406MHz(デジタル情報を含む。))は、LEOSAR で 受信された場合、衛星での受信時のドップラ周波数を計測し、発信された位置の緯度・経 度が計算される。GEOSAR で受信された場合は、ドップラ効果が計測できないため、ビ ーコン自体に内蔵されている GPS 受信機が計算した位置情報(以下「エンコード位置」 という。)が衛星を経由して中継される。なお、GPS が内蔵されていないビーコンが多数 使用されているが、このようなビーコンから発射された緊急通報がGEOSAR で中継され た場合は、エンコード位置情報を除く、その他のデジタル情報のみが地上に伝送される。

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図2.4-2 ビーコンからの緊急通報配信系統図 我が国においては、現時点では EPIRB より発射された船舶遭難の緊急通報は、海上保 安本部に、ELT により発射された航空機の遭難に関する緊急通報は羽田の国土交通省航空 局に通報され、それぞれ適切な救助活動が開始されるようになっている。しかるに PLB については、緊急通報をどのように扱うかががまだ定まっていない。 PLB の緊急通報を受け、救助活動を行うにはその適用範囲が海上から山岳までと広いた め、関係する国及び地方、さらには民間団体の間での調整を行う必要がある。我が国でPLB の使用が許可されるには、技術的問題ばかりではなく配信の問題についても何らかの対応 が必要と考えられる。

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第3章 リターンリンク用ビーコン信号の最適プロトコルの選定

本章では、コスパス・サーサット・ビーコンの双方向化を行うことが可能と考えられる 無線システムについて述べる。候補としてはビーコンからの信号が衛星システムによって 受けられることを考慮し、表3-1 に有るよう ARGOS、準天頂衛星、およびガリレオの 3 種類の衛星システムを検討した。 表3-1 検討対象リターンリンクプロトコル 衛星システム名 ARGOS 準天頂衛星 GALILEO

リンク名 ARGOS-3 Down Link L1-SAIF SAR Service 周波数帯 466MHz 帯 L1:1.5GHz 帯 E1:1.5GHz 帯

プロトコル仕様 独自 SBAS 準拠 独自

公開仕様書 ARGOS-3 Service and

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3.1 ARGOS システムリターンリンクプロトコル

ここではARGOS システム用ビーコンの仕様書を参照し、ビーコンへのリターンリンク プロトコルについて説明する。

参照した仕様書は:

Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A2) Platform Message Transceiver (PMT-A2) Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 2

Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A3, including PTT-ZE) Platform Message Transceiver (PMT-A3)

Physical Layer System Requirements Ed. 4/ Rev. 1

Argos-3 SERVICE AND MESSAGE FORMAT

General Specifications Ed. 2 / Rev. 3

Argos-3 Receiver for Argos PMT

Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 1

となっている。 3.1.1 ARGOS システムについて ARGOS 衛星システムの主目的は科学調査を行うためのもので、海洋観測や野生動物の 生態調査などに使用することを主目的として、1978 年から運用されているシステムである。 運用主体はフランス国立宇宙センター(CNES)の外郭団体である CLS 社、米国の NOAA ならびに Eumetsat(欧州気象衛星開発機構)となっている。運用主体、技術的内容にお いてもコスパス・サーサット・システムと酷似しており(図 3.1.1-1 参照)、ビーコン (Platform)からの 401MHz 帯の信号を用いた低軌道衛星によるドップラ測位と、ビー コンより送られてきた観測データをユーザに配信する。

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(ARGOS-3 カタログより) 図3.1.1-1 ARGOS システム

システムは、ARGOS-1, ARGOS-2 から ARGOS-3 まで、処理容量および通信速度の向 上を行うと共に、ARGOS-3 ではいち早くリターンリンクを導入し双方化が行われている。 ARGOS-3 では標準のフォワードリンク 400bps のものに加えて、4800bps でより長いデ ータの送れるHD タイプもある。 現在世界には約 50 局の受信局がある。その受信局で受信されたデータはフランスと米 国にある処理センターに送られ、信号のデコード、位置の計算などが行われる。(図3.1.1-1 参照)リターンリンクのデータにつてもこの2 つのセンターを経由してリターンリンク管 理センター分配され、マスタプラットフォーム局から衛星に打ち上げられる。衛星はビー コンからのアドレスに応じてリターンリンクデータを送り出す。センターでの処理は、米 国のビーコンからのデータは米国のセンターで、そのほかの国のビーコンからのデータは フランスで行われる。 ユーザへのビーコンからのデータの提供ならびにユーザからビーコンへの送信データの 受け渡しはインターネット経由で行われる。 現時点では、約20,000 台のビーコンが存在し、高度約 850km の局軌道を周回する現用 2 機(予備機合わせて 5 機)の衛星によりサービスが行われている。毎日ほぼ同時刻(赤 道上で日に4~5 回)に衛星がビーコンの視界に入ってくるようになっている。(図3.1.1-2 参照)

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3.1.2 ARGOS システムビーコン ARGOS システムのビーコンはプラットフォームと呼ばれ、外観の例としては図 3.1.2-1 にあるようなものである。内部の構成は図 3.1.2-2 にあるようなものであり、送信だけ行 うPTT タイプと送受信機能を持つ PMT の 2 種がある。 ((株)キュービックアイ HP より) 図3.1.2-1 ARGOS-3 ビーコン外観 (ARGOS システムカタログより) 図3.1.1-2 ARGOS 衛星軌道

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(ARGOS-3 送信機仕様書より) 図3.1.2-2 ARGOS-3 ビーコン構造 3.1.3 ARGOS システム信号について ARGOS-3 システムではビーコンから発射されるフォワードリンクと、衛星からビーコ ンに向けて送られるリターンリンクがある。フォワードリンクはコスパス・サーサットの ビーコン信号と同じように短いバースト信号であるが、リターンリンクについてはHDLC ライクなフォーマットとなっており、データのない場合はHDLC のフラグ信号が連送され ている。 表3.1.3-1 ARGOS-3 フォワードリンクメッセージ構造 データ プレアンブル: キャリア信号82ms 同期パターン: 32bits ブロック番号+メッセージ長+ID+データ +FCS+テールビット ビーコンからのフォワードリンクのデータフォーマットならびに信号の仕様は表 3.1.3-1 と表 3.1.3-2 にあるようなものとなっている。フォワードリンクに載ってくるのは 計測したデータあるいは位置計測用のダミーデータとなっている。双方向可能なタイプの ビーコンに関してはそのほかにリターンリンクデータへのACK や、相互応答型データ収 集を行うための制御信号が送られる。

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表3.1.3-2 ARGOS-3 フォワードリンク仕様

周波数 401.620MHz~401.680MHz (地域により最適周波数を指定) 変調方式 ARGOS-2: BPSK ,ARGOS-3:QPSK*, ARGOS-HD:GMSK ビットレート 400sps (800bps1:2 畳み込み符号を使用) 送信出力 2W 送信周期 60sec (Min) 送信時間 277ms~839.5ms メッセージ長 4bit : N(3bit)+parity アドレスID 28bit ユーザデータ (32bit X N)-8bit テールビット 7, 8, 9bit (畳み込み符号器のため) フレーム長 計 63~288bit *KENWOOD 社製 PMT-RFM には未搭載 衛星からのリターンリンクの信号の仕様は表3.1.3-3 にあるようなものとなっている。 表3.1.3-3 ARGOS-3 リターンリンク仕様 周波数 465.9875MHz 変調方式 位相変調 ビットレート 400bps/200bps フレーム形式 HDLC アドレスID 28bit 衛星番号 4bit サービス 8bit データフィールド 8×(2~17)bit FCS 16bit フレーム長 計 72~188bit 3.1.4 ARGOS リターンリンクについて リターンリンクが設けられた目的としては、より効率的なデータ収集を行うことを目的 としている。 ARGOS システムのリターンリンクに送るメッセージに表 3.1.4-1 にあるように大きく 分けて個別のビーコンに送るものと、全てのビーコンに向けてブロードキャストするもの がある。さらに個別のビーコンに送るものに対しては 1)個別定義のメッセージ 2)双方向データ収集サービス 3)定型メッセージ の3種の種別がある。

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表3.1.4-1 リターンリンクメッセージ種別 定型メッセージ ユーザ定義 個別宛メッセージ 双方向データ収集サービス用メッセージ 衛星ステータス 軌道パラメータ ブロードキャストメッセージ UTC ブロードキャスト この中で、今回の個別のビーコン制御に関連のある定型メッセージについてまとめたも のが表3.1.4-2 のようなものである。 表3.1.4-2 ユーザ個別メッセージ種別 データフィールド Message ID Data 構造 Address Identification 28bit S/C 衛星番号 4bit Service 8bit (00H or 04H) 8bit: PMT-2/PMT-HD 8~128bit FCS No. Msg. ID Message Parameter

0 00/00 ユーザ定義 8~128bit 1 FF/FF PMT リセット 8bit 2 11/11 PMT 位置 16+16bit 3 12/71 キャリアシフト 16bit(Hz) 4 14/72 通常周期 8bit(Sec) 5 17/77 応答周期 8bit(Sec) 6 18/78 送信出力 8bit(0.1W) 7 1B/1B Group ID 追加 28+4bit 8 1D/1D Group ID 削除 28+4bit 9 33/F3 送信ON 48bit 10 35/F5 送信OFF 28+4bit 11 36/36 応答モード ON 16(day) 12 39/39 応答モード OFF 16(day) 13 3A/3A 受信周期 48bit 14 3C/F6 PMT ステータス 8bit 15 3F/3F Group ID リスト 8bit これらのメッセージの目的を見ると、無駄な送信を押さえて周波数の有効利用を図るも および消費電力を減らす目的のものが多く見受けられる。 (ア) 不要になったビーコンの送信を止めるもの (イ) しばらく使わないビーコンの送信を一時的に止めるもの (ウ) ビーコンの送信周期を変更するもの (エ) ACK 受信によりその後の繰り返し送信を停止するもの (オ) 周波数をずらし他のビーコンとの混信の防止もの

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(カ) 軌道情報により、送信時間を衛星通過時に限るもの

これら、メッセージ内容は、コスパス・サーサットのリターンリンクに盛り込む機能の 参考となると考えられる。

3.2 準天頂衛星システムL1-SAIF プロトコル

ここでは、準天頂衛星の衛星よりの信号に関する資料「準天頂衛星システムユーザイン タフェース仕様書(IS-QZSS) Ver. 1.0」をもとに、より、L1-SAIF 信号について説明する。

3.2.1 準天頂衛星(QZSS)システムについて 準天頂衛星システムは、日本で常に天頂付近に1機の衛星が見えるように、複数(例え ば 3)の軌道面にそれぞれ配置された衛星を組合せて利用する衛星システムである。これ らの軌道の高度は静止軌道衛星と同じであるが、静止衛星のように赤道上に配置されてい るのではなく、軌道傾斜角(赤道面からの軌道面の傾き)を持って、地球の自転と同じ周 期で地球を周回することにより交代で衛星が常に天頂方向に見えるようなる。山やビルな どに影響されず高精度の衛星測位サービスの提供が可能となる。 準天頂衛星の打ち上げ計画は政府により 2011 年度に1号機を打ち上げてその評価を行 った後、残りの2号機、3号機を民間により打ち上げる予定になっている。 図3.2.1-1 準天頂衛星の軌道(SPAC ホームページより) 準天頂衛星は、初期には衛星測位サービス以外にも放送や通信への応用も考えられてい たが、その後、測位衛星(GPS)システムを補完、あるいは補強する目的の衛星となった。 補完機能としては、準天頂衛星自体が測位衛星の一つとして測位信号を送信することに より、天頂付近に絶えず衛星がおり測位精度の向上ならびに測位サービス利用の可能性を

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増やす。 一方補強機能としては、測位の精度向上、衛星の補足をやりやすくするための情報など を提供する。この補強のための信号には高精度な測位を可能にする LEX 信号と、高速度 移動体向け補強信号を提供するL1-SAIF 信号がある。今回、ビーコンのリターンリンクと して利用出来る可能性があるとして注目したのはL1-SAIF 信号の方で、名前が示すように、 GPS の測位信号周波数 L1(1,575.42MHz)を用いてコード多重技術により、測位信号と共 に送り出される(表3.2.1-1 参照)。 表3.2.1-1 QZSS 信号の諸元(L1) 信号名称 搬送波識別 中心周波数 占有帯域幅 最低信号強度 L1C/A L1C/A 24MHz(±12MHz) -158.5dBW L1CD -163.0dBW L1C L1CP 24MHz(±12MHz) -158.25dBW -157.0dBW(トータル) L1-SAIF - 1575.42 MHz 24MHz(±12MHz) -161.0dBW 3.2.2 L1-SAIF 信号について L1-SAIF メッセージはすでに使用されている SBAS 方式に準じて送られる。 1フレームは250 ビットから構成され、図 3.2.2-1 のフォーマットを持つ。データ速度 は250bps であるから、毎秒1個のメッセージが送信される。 図3.2.2-1 L1-SAIF フレームフォーマット 8 ビットのプリアンブルは 250 ビットメッセージのビット 1(最初に送信されるビッ ト)から始まり、続いて6 ビットのメッセージタイプがビット 9 から挿入される。212 ビ ットのデータ領域はビット 15 から始まり、24 ビットの CRC(Cyclic Redundancy Check)パリティはビット 227 から始まる。メッセージの送信順序は規定されず、各 1 秒

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間にはどのメッセージタイプも送信され得る。 現在メッセージタイプとして決まっているのは表3.2.2-1 にあるものである。 表3.2.2-1 メッセージタイプ タイプID メッセージ名称 備考 タイプID メッセージ名称 備考 0 試験モード 52 TGP マスク 1 PRN マスク 53 対流圏遅延補正 2~5 高速補正 54~55 (大気遅延補正) TBD 6 インテグリティ情報 56 信号バイアス補正情報 7 (高速補正劣化係数) 57 (軌道情報用に予約) TBD 10 劣化係数 58 QZS エフェメリス 暫定 18 IGP マスク 59 アルマナック情報 TBD 24 複合高速/長期補正 60 (広域情報・メンテナンス情報) TBD 25 長期補正 62 (内部テスト用に予約) 26 電離層伝搬遅延補正 63 ヌルメッセージ 28 クロック-軌道共分散 3.2.3 L1-SAIF へのリターン信号の搭載可能性について 準天頂衛星に現在にところビーコンのリターンリンクを載せる計画はないが、準天頂衛 星関して推進母体である(財)衛星測位利用推進センターが現在実証テーマとして表 3.2.3-2 にあるように“7 つ+1”のテーマを取り上げている。その中で”+1”になっている“緊急通 報他”となっているテーマは自由な形式のデータを送ることが出来、そこにリターンリン ク信号を載せることも可能である。 ここで“緊急通報”が他のテーマと分けて語られているは、このサービスは衛星の本来 の衛星測位サービスではなく通信あるいは放送サービスとしての性格があるため、省庁と の調整が必要と考えられるからである。 表3.2.3-2 (財)衛星測位利用推進センターの実証テーマ 1. 防災関係 5. サービスイノベーション 2. 見守り・バリアフリー 6. 位置情報利用システム 3. 基盤地図関係 7. 交通・ITS 関連 4. IT 自動走行 +1. 緊急通報他 残念ながら現時点では、準天頂衛星にビーコンのリターンリンクを載せる計画はないが、 緊急通報の一部として、あるいは同種のショートメッセージサービスとして載せることは 技術的には可能である。

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3.3 ガリレオ衛星システムリターンリンクプロトコル

ここではガリレオ衛星システムが提供するリターンリンクプロトコルについて、ガリレ オ衛星からの信号についての仕様書「Galileo Open Service Signal In Space Interface

Control Document OS SIS ICD, Draft 1」に従って説明を行う。

3.3.1 ガリレオ衛星システムについて

ガリレオ衛星システムはEU が推進する GPS 同様な衛星測位システムであり、図 3.3.1-1 のように27 機の中軌道衛星から構成される。すでに 2 機の試験衛星が打ちあがっており、 実機は2011 年から順次打ち上げられる予定となっている。

図3.3.1-1 ガリレオ衛星軌道(Galileo Joint Undetaking ホームページより)

ガリレオ衛星システムは初期には民間によるプロジェクトとしてスタートしたが、必要 な資金が集まらず、2007 年に EU のプロジェクトとして EU が資金を提供することにな った。 GPS が軍事用のシステムであるのに比較し、ガリレオ衛星システムは民間のシステムと してスタートしたため、表 3.3.1-1 にあるように標準的な無償のサービスとは別に特定の ユーザ向けの有償のサービスも提供されるのが特徴である。

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表3.3.1-1 ガリレオ衛星システム提供予定サービス

サービス名 サービス内容

Open Service (OS) 無償で提供される測位及び時刻サービス Safety - of - Life Service (SoL) 信号の完全性の保証をしたサービス

Commercial Service (CS) 暗号化された有償のサービスで OS より高い精度を 要求するユーザに提供する。

Public Regulated Service (PRS) 政府機関に暗号化された連続可用性を保証したサー ビス提供する。

Search and Rescue Service (SAR) コスパス・サーサットと協調したサービスを提供す る。遭難ビーコン信号の受信とビーコンへのリター ンリンクの提供を行う。 測位信号については初期においては独自色が強かったが、GPS との協調を計り、同様な 信号を送信することによりGPS + ガリレオ衛星による衛星数の増加による測位可能性の 増大と共に精度の向上も図れるようにした。 一方で、独自のサービスの一つとして捜索救助活動に向けた SAR サービスが計画され ており、その一環としてコスパス・サーサットのビーコンに対するリターンリンクである RLM(Return Link Message)が計画されている。

ガリレオ衛星システムが提供するサービスは、図 3.3.1-2 にあるように GPS と区別し て”E”をつけた周波数帯で表される。SAR サービスは GPS の L1 と同じ中心周波数の E1 と呼ばれる周波数帯で提供される。

(GalileoOSSISICDDraft1) 図3.3.1-2 Galileo Frequency Plan

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3.3.3 SAR サービスについて ガリレオ衛星システムの SAR サービスは、まだ全体が明らかになっているわけではな いが、コスパス・サーサットとの連携だけではなく、捜索救助を目的とした広い内容のサ ービスを提供することを目指しているようである。 (ア) コスパス・サーサット・ビーコンの遭難信号の受信と測位 (イ) リターンリンク対応型コスパス・サーサット・ビーコンに情報提供ならび に制御 (ウ) 専用受信機に対しての情報提供 (エ) SAR 活動を援助するための情報の伝送(大容量データ) ビーコン遭難信号の受信と測位については、時間の掛かる低軌道衛星による遭難警報受 信と、位置情報がないと位置が特定出来ない静止軌道衛星による遭難警報受信を改善し、 将来は中心的役割を果たすものと言われている。この機能については、GPS ならびに GLONAS にも同機能が搭載されるよう計画されており、遭難警報の迅速な対応を可能と するものと考えられる。 リターンリンクは現時点では単向通信となっているコスパス・サーサット・ビーコンか らの緊急通報に対して、低機能ではあるがリターンリンクを設けることにより機能向上お よび誤警報に対応することを目的としたものとなっている。一方、SAR サービス全体とし ては遭難救助活動の円滑化を図ることを目的としているため、数々の情報提供が計画され ているが、それには専用受信機が必要となると考えられる。一例としては、遭難船の近傍 を航行する船舶に対して呼び出しを行い、救助活動を促すような応用が考えられている。 ガリレオ衛星システムが完成したときの遭難警報およびリターンリンクの全体の流れは 図3.3.3-1 のとおりである。

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(コスパス・サーサット委員会資料より) 図3.3.3-1 ガリレオ SAR サービスの信号の流れ 3.3.4 リターンリンクについて コスパス・サーサットでは、ビーコンからの緊急通報が単向通信であることが不便な点 としてあげられている。特に高い誤報率の対策として何らかの形での双方向化が必要との ことで検討されている。 現在のところ、コスパス・サーサットに双方向通信を搭載することを提案しているのは ガリレオ衛星システムの SAR サービスのリターンリンクのみである。しかしながら、ガ リレオ衛星の打ち上げは、予定より大幅に遅延しており、実現するまでしばらくの時間を 要する。 今回、すでにリターンリンクについて一部の仕様が公開されているのでそれを基本に検 討を行った。

E1 信号には E1-B と E1-C の信号が多重されている。そのうち E1-B には航法関係の情 報(I/NAV)が載せられその中にリターンリンクが含まれる。(表 3.3.4-1 参照)

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表3.3.4-1 E1 信号仕様 キャリア周波数 1575.420 MHz 帯域 24.552 MHz 偏波 RHCP 変調方式 CBOC フレーム構造 I/NAV エラー訂正 FEC 受信信号レベル -157 dBW データはOdd(偶数ページ)と Even(奇数ページ)に分けられ順番に送られてくる。 I/NAV のメッセージ構造は表 3.3.4-2 のようになっている。 表3.3.4-2 I/NAV メッセージ構造 フレーム 720sec= 24 サブフレーム サブフレーム 30sec = 15 ページ (GST の 30 秒に同期)

ページ 2sec(通常ページ:Even Page + Odd Page)

I/NAV のフレーム構造は表 3.3.4-3 のようになっている。 表3.3.4-3 I/NAB フレーム構造 Sync(同期)

“0101100000”

I/NAV Page (Even or Odd):ページデータ 240 Symbol(2 Symbol = 1bit)

計:

250 Symbol I/NAV Page (Even or Odd) 114 bit Tail = 6bit(フィル) 計:120 bit Even Page Page Type = 0 : Normal Odd Page Page Type = “0” : Normal

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ページデータについては、上記のフォーマットは通常時(Page Type = “0”)のものであっ て、警報時(Alert)(Page Type = “1”)には別のフォーマットのページ(情報提供用)が送ら れる。SAR データ以外にこの E1-B 信号に載って送られるデータでは衛星軌道データ (Almanac データ)が送られてくる。

SAR データの構造は下記の表 3.3.4-4 のようなものとなっているが、一つの意味のある SAR データとするには短い Short フォーマットで 4 ページ 8 秒(図 3.3.4-1)、の長い Long フォーマットで8 ページ 16 秒(図 3.3.4-2)掛かって SAR データが送られてくる。 表3.3.4-4 SAR データの構造 Start Bit (スタートビット) Short/Long RLM Identifier (Short/Long 区別) SAR RLM Data (データ)

1 bit 1 bit 20 bit 計:22bit

図3.3.4-1 SAR Short メッセージフォーマットデータページ構造 図3.3.4-2 SAR Long メッセージフォーマットデータページ構造 Short フォーマットと、Long フォーマットをまとめて一つのコマンドに書き直すと、下 記の表3.3.4-5 のようになる。ここでビーコンに関係があるのは短い Short フォーマット の方で、Long フォーマットは特定の専用受信機への情報提供目的と言われている。 このメッセージを受けた際のビーコンの振る舞いについては、4ビットのコマンドとパ ラメータにより決められる。

(33)

表3.3.4-5 Short 及び Long メッセージフォーマット Short Message

ビーコンアドレス コマンド パラメータ

20bitX3 4bit 15bit+parity Long Message

ビーコンアドレス コマンド パラメータ

20bitX3 4bit 16bit 20bit 20bit 20bit 19bit+parity

3.4 プロトコルの選択 ここでリターンリンクの最適のプロトコルの選択を行うとなるといくつかの基準を当て はめて考えなくてはいけない。 (ア) グローバルサービスか (イ) リターンリンクが計画されているか (ウ) 実現性は (エ) 国際規格へとの整合性 これらの点を考慮に入れ手評価を行うと表3.4-1 のようになる。 表3.4-1 各衛星システムの比較 システム グローバルサービス 計画 実現性 国際規格との整合性 ARGOS ○ ○ ○ ○ QZSS × △ 2011 以降 △ ガリレオ ○ ○ 2013 以降 ○ この結果から次のような結論が出る。 • コスパス・サーサットとして認められつつあるガリレオ衛星システムのリターンリ ンクを基本として考えるのが一番妥当と考えられる。 • ARGOS システムはそれ自体完結した別システムであるのでリターンリンクだけ を使用することは出来ないが、基本的な考え方が同一なのでリターンリンクの機能 を考えるときの参考となる。また、このシステムを実験用通信手段として使用する 可能性は残る。 • QZSS も基本的な考え方はガリレオと同じコード拡散方式で送られるセンテンス 番号に空きがあり、技術的には可能と考えられるが、残念ながら現時点では、ここ で考えているSAR サービスような機能の提供は検討されていない。

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(35)

第4章 新たなコスパス・サーサット・ビーコン制御信号の構成

ここでは第3章の結論を受け、将来コスパス・サーサットの会合に貢献することを目標 にして、周波数の有効利用を図るためのビーコン制御信号が提供すべき新機能案について 検討し、提案をまとめる。 ここで取り上げる各種信号の関係について図4.1-1 に示す。 図4.1-1 第 4 章で取り上げる信号 COSPAS-SARSAT ビーコン部 Galileo 受信部 フォワードリンク 周波数:406MHz 帯 内容:遭難警報 仕様:C/S T.001 リターンリンク 周波数:1.5GHz 帯 E1 信号:リターンリンク L1 信号:位置データ 仕様:OS SIS ICD

Galileo 衛星 リターンリンク機能付きビーコン リターンリンクデータ + 位置データ 仕様:IEC61162-1

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4.1 リターンリンク新機能案 第3章の検討結果から、ガリレオリターンリンクで提案されているShort フォーマット 案に従ったビーコンの制御信号について検討し、周波数有効利用にために必要な新機能を 実現するコマンド案を取りまとめる。 ガリレオリターンリンクについては、第7章にある海外動向調査にあるようにまだ細か な点については詰められていない。そこで、第3章での検討結果をもとに、ARGOS シス テムの例を参考として日本の関係機関のご意見も取り入れてコマンド案を作成した。 今回まとめた制御コマンド案は以下のとおりである。 (1) 406MHz の送信停止/送信開始 救助活動後、不要になったビーコンが回収出来ずそのまま電池が消耗するま で送信を続けるのを停止する。あるいは、明らかに誤報であることがわかっ た場合に、強制的に送信を停止する。一方、送信を遠隔で開始させるのは特 殊な場合に限られると考えられる。受信部を絶えず活かしておく必要がある ため、外部電源のある車両などのに取り付けられたビーコンなどに限られる。 連絡を絶った車両の位置の特定などトラッキング的な応用が考えられるが、 今回の個人目的には不要な機能と考えられる。 (2) 121.5MHz ビーコン信号の送信停止/送信開始 121.5MHz のビーコン信号は送信出力も小さく到達距離が短いため、捜索隊 が近くまで接近しないと有効ではなく、遭難通報時から送信し続けるのは電 力消費上得策ではない。このため、遠隔で 121.5MHz 信号の On/Off を行い 電力消費を押さえると共に、無駄な121.5MHz の送信を押さえ周波数の有効 利用にもなる。 (3) 406MHz の送信時間間隔の変更 406MHz の遭難信号を1度受信すれば、その後は受信時間間隔が開いても捜 索位置の特定は可能なので、電池の消耗を減らすため、送信時間間隔を遠隔 で増減する。 (4) 遭難通報に対する確認 この機能には2 つの機能が想定されている。 ・緊急通報を陸のRCC が受信した時点で送信されるリターンリンクであり、 緊急通報の受信(ACK)の役目をする。

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・遭難の事実の確認あるいは安否の確認を行う。リターンリンクの受信を警 報音やランプの点灯等で確実にビーコン所有者に知らせ、ビーコン側にて応 答手段(既存の押しボタンの操作、あるいは新たなボタン)を要求する。 (5) 位置情報精度切り替え 現在のビーコンプロトコルによるGPS データの扱い方では、入力可能なビッ ト数に限度があるため通常位置精度4秒(約 120m)の精度までしか入力で きない。しかしながら、リターンリンクによって一度4秒精度の位置を受信 した後、更なる高精度の位置情報の送信の要求ができれば、下位ビットをシ フトさせることなどにより、更なる高精度な位置を得ることが可能になる。 (6) 定型メッセージの表示 ビーコンに小型のディスプレイをつけて、予め用意した定型のメッセージを 選択して表示させることなどが可能と考えられる。 (7) 送信周波数の変更 コスパス・サーサットに許可されている周波数帯の中で、送信周波数チャネ ルをリターンリンクからのコマンドにより変更する。ビーコンが接近してい るような場合に信号を分離する目的で使用するものと考えられる。現時点で は規則上の問題があると考えられる。 以上のことを考慮し、ガリレオ リターンリンク未定義の部分を補足すると表 4.1-1 の ようになる。

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表4.1-1 Short Message 提案

No.(HEX) Command Parameter(15bit) 備考 0(0000) ACK without Parameter None 規定済み 1(0001) ACK with Parameter (必須) 規定済み 2(0010) 406MHz TX Control Start /Stop

3(0011) Change Interval 406MHz TX Long / Normal 4(0100) 121.5MHz TX Control Start / Stop

5(0101) Shift location Data High Res./ Normal 6(0110) Confirm Alert

7(0111) Show Fixed Message on Display Message Pattern No. 8(1000) Simple Question on Display Question Pattern No. 9(1001) Change Frequency CH CH assignment in Hex

A(1010) Reserved for Future Use B(1011) Reserved for Future Use C(1100) Reserved for Future Use D(1101) Reserved for Future Use E(1110) Reserved for Future Use F(1111) Reserved for Future Use

4.2 リターンリンク受信機よりのリターンリンク送出フォーマット案 空間をリターンリンクが伝搬してくる際のフォーマットなどについては規定されている が、最終的にメッセージをリターンリンク受信機からビーコンの制御部に渡すときどのよ うな形態で渡されるかが一番問題となる。可能ならば統一を取っておく必要があると考え られる。 今回ガリレオ衛星システムのE1 信号について考えると • E1 周波数は測位データが送られてくる L1 と周波数は同じであり、測位データと 拡散コードが異なるだけなため、測位データと受信機は共有可能と考えられる。 • 現 在 の GPS (GNSS) 受 信 用 IC か ら の 測 位 デ ー タ は 標 準 的 に は IEC61162-1(NMEA0183 相当)で出力されている。 これらのことから、リターンリンクもIEC61162-1 のフォーマットで測位データと共に 出力されることを想定することが適当と考えられる。 IEC61162-1 の規定に沿ってデータセンテンスを作ると表 4.2-1 のようなものとなる。そ のセンテンスがシリアルラインで8bit Non-parity の 4800bps(標準)で送り出される。通信 は単向通信でそれを受信側で受け取るのみの簡単なプロトコルとなっている。 同一ラインに位置情報を示す既存のデータも載るものと考えられ、ヘッダによりデータ の内容の区別をつけることになる。

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表4.2-1 IEC61162-1(NMEA0183)相当センテンス例

ヘッダ 機 器 コード データ 種 別 ビーコンID コマ ンド パラメータ 受信時間 受信 状態 受 信 モード チェックサム 終了符号 総バイト数

(Max.82)

Galileo TBD HEX 15 桁 HEX

1桁 HEX: 4 桁 UTC A/V 機器コード~* 前までのEOR 48 $ GA BCS ,hhhhhhhhhhhhhhh ,h ,hhhh ,hhmmss.ss ,A ,a *hh <CR><LF> ・ “$”はユニークコードで ASCII コード型センテンスの始まりを表す。 ・ “GA”はガリレオ受信機からのデータであることを示す(既規定ずみ)

・ データ種別”BCS”は今回の新提案”Beacon Control Sentence”であり、NMEA 又は IEC での承認が必要

・ ビーコンID は HEX(16 進数:1~F)で4bit のデータを表し、15 個で 60bit のビーコンアドレスを表す。

・ コマンドおよびパラメータはバイナリデータとして扱い、4bit ずつ切り HEX データで表す。

・ 受信時間~受信モードまではデータの信頼性を示すためのもので、GNSS 受信機からのデータには必ずつける。 ・ チェックサムはデータのエラーチェックのため

・ <CR><LF>はセンテンスのデリミタ

・ 一般的にGNSS 受信機からは GGA, GGL, GSA, GSV, RMC, VTG, ZDA などのセンテンスが出力される。

33

(40)

4.3 リターンリンク応答用フォワードリンクビーコンプロトコル案 4.3.1 リターンリンク試験用フォワードリンクビーコンプロトコル コスパス・サーサットではビーコンから衛星に向けて、緊急通報を送るためのフォワー ドリンクのデータフォーマットならびにそれに関わる規定をビーコンプロトコルと呼び、 ビーコンの種別、使用ID、位置データの有無などにより決められている。 まだ、リターンリンク自体が実験段階のものであることから、リターンリンクを考慮し た、正規のビーコンプロトコルは規定するに至っていない。その代わりに当面、機能試験 を行うため試験用プロトコルの使用を推奨し、その中のビット配列について必要な機能を 割り当て図4.3.1-1 のように規定している。 図4.3.1-1 リターンリンク用テストプロトコルフォーマット 本年度の実証試験では、この試験用プロトコルを使用して行うことにしたが、さらに実 証実験をすすめるには、位置情報の扱える正式なリターンリンク用プロトコルが規定され、 それを使用することが望ましい。しかしそれがかなわない場合は、現行のプリトコルから 代用出来るものを用いて実証をすすめる必要が出ると考えられる。 4.3.2 リターンリンク応答用新フォワードリンクビーコンプロトコルの可能性 リターンリンクの正式に運用時に使用するプロトコルについて、ガリレオサイドからコ スパス・サーサットに対して、2008 年 3 月の EWG-1(Expert Working Group:技術専門 家会合)で提案が行われた。基本的に現在の National Location Protocol を使用することを 提案している。(図4.3.1-2 参照)

ガリレオサイドからの提案の趣旨は、

• ガリレオのリターンリンクを用いるビーコンは、必ず衛星測位(GNSS)受信機を搭 載しているので、その位置データを載せられるプロトコルになる。、

• National Location Protocol 内にある 127~132bit をリターンリンクへの応答など として使用することを提案している。それは、ビーコンが、リターンリンク機能を

(41)

搭載していることを示すRBF(Return Link Beacon Flag)として、127bit をあて、 それを“1”とすることにより残りの 5bit がリターンリンクの関連で使用されるこ とを示すことを提案した。

図4.3.1-2 National Location Protocol データフレーム構造

この提案に対して、 • 問題の 6bit の使用方法については各国の主管庁が決めるところであり、すでにそ こを割り付けている国がある可能性があるので、それに新たな機能を割り付けるの は問題ではないか。 従って新たな専用プロトコルが必要なのではないかとの意見となった。 ガリレオサイドからリターンリンク機能のあるビーコン用プロトコルとして、National Location Protocol を提案したのは、位置データを送るためのプロトコル中もっとも高い位 置精度(4 秒=約 120m)が送れ、かつ自由に使えるビットがあることから、妥当なもの で有ると考えられる。しかし一方では問題の127~132bit を位置データに割り付け、約 30m (1 秒)の精度まで送れるようにしている例もある。

コスパス・サーサットでは2008 年に EWG-1 の開催の後、JC-22(Joint Committee: 合同委員会)が 6 月に開催された。その会合で、米国から GPS 測位データの扱い方、なら びに測位データを送るプロトコルについての改訂が提案(JC-22/5/17)された。その一部は 2008 年の規格改定の際、反映された。

米国の提案内容は:

• Standard Location Protocol/National Location Protocol において、ビーコンの種 別ならびにID の種別を表すための 4bit コード(37~40bit)の割付に予備の“1101” 以外に衛星軌道計算(orbitography)用に割り付けている”0000”と”0001”は使用さ れていない。それらを予備として使用出来るのではないか。

• GPS 測位データの更新周期を 20 分としているのは、静止衛星で受け取ったデータ を積分し、エラーを除くためであったが、最近の衛星は性能が上がり、4 バースト

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有ればほぼ受信出来るので、周期を短くすべきだ。(5 分に短縮される。) • 位置情報の前半分 PDF1 についてなるべく変わらないよう PDF1 の値を、PDF2 で微調整するデータ表現が使われている(表 4.3.2-1 参照)。これは低軌道衛星で 位置を測定する際、信号を一定にさせるための処置だとの説明がされている。これ も現在の衛星ではそこまで行う必要が無くなっている。そこで、PDF1 で表す値を 実測値に近づけ、差分の範囲を狭めた結果、”114~115bit”と”121~122”bit”は不要 になる。(提案は採用される)

表4.3.2-1 National Location Protocol での位置データの配置

位置データ bit 位置 bit 数 内 容 備 考 59 1 北緯/南緯(N = 0, S = 1) 60~66 7 1 度単位で 0~90° 緯 度 67~71 5 2 分単位で 0~58 分 72 1 西経/統計(E = 0, W = 1) 73~80 8 1 度単位で 0~180° PDF1 経 度 81~85 5 2 分単位で 0~58 分 113 1 差分(“- “= 0, ”+” = 1) 114~115 2 1 分単位で 0~3 分 新規格では”0” 緯度差分 116~119 4 4秒単位で0~56 秒 120 1 差分(“- “= 0, ”+” = 1) 121~122 2 1 分単位で 0~3 分 新規格では”0” PDF2 経度差分 123~126 4 4秒単位で0~56 秒 これらの内容を検討すると次のようなことが可能なことがわかる。:

• National Location Protocol で”37~40bit”に、例えば“1101”をリターンリンク機能 付きビーコンとの割付を行う。 • リターンリンク機能付きビーコンの際は、PDF2 のデータは 1 秒単位で 6bit で表 現するよう解釈する。 • リターンリンク機能付きビーコンの際は、各国の裁量となっている”127~132bit” に決まった役割を割り付ける。 そのようにすれば、現在の枠組みの中でリターンリンク用のプロトコルが出来ると考え られる。その例を図4.3.2-1 に示す。

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図4.3.2-1 EXAMPLE OF RTM CAPABLT BEACON PROTOCOL

PDF1 PDF2

Bits 25 26 27 - 36 37-40 41-58 59-85 86-106 107-112 113-126 127-132 133-144

F P Country Code Code Prot. ID Position. Data BCH1 Supplementary Data Position. Data RLM Data BCH2

“1” “1” “1101”

(Exp.) LAT 13bit :

2min Res. RON : 14bit 2min Res. “1” 107=”1” 108=”1” 109=”0” 110=”1” 111=

Position Data Source I/E 112= 121.5MHz Homing Y/N LAT : 7bit 1sec Res. RON: 7bit 1sec Res. 127=ARF 128=MDF 129-132 =RPM

ARF (Acknowledgment / Confirmation-of-reception Flag):1度でもリターンリンクを受信したら”0” MDF (Manual-deactivation flag):通常は”0”、手動で送信が停止された場合”1”とし 1 回送信し停止する。 RRM (return-link-message-reply):ルックアップテーブル使用 (リターンリンク専用のフォーマットなのでRBF フラグは不要) ― 37 ―

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第5章 ビーコン制御信号の性能の確認

ガリレオ衛星システムリターンリンクについては、まだ国際的にも検討が進められてい ない過程のものである。従って、そのような機能を持ったビーコンに関する調査検討は国 際的にも端緒に至ったところである。ここではコスパス・サーサットの合同委員会ならび に技術委員会に提出されたリターンリンクに関する資料を基に試験機を構成し、本調査検 討で目指すリターンリンクに対する機能を実装しその確認を行った。 5.1 試験用ビーコン構成 リターンリンク応答機能を備えた試験用ビーコンとして、従来のビーコンに試験上必要 な機能を追加したものを調達し、試験を行った。試験ビーコンの内部の構成は図5.1-1 の 系統図にあるようなものとなっている。外観は図 5.1-2 のようなものである。リターンリ ンクをビーコンに送る手段としての衛星リンクについては、将来専用受信機用IC(Galileo Chip)が開発されることを想定し、受信機そのものは今回の調査検討の対象外としたが、 代わりに衛星測位受信用IC のための場所を確保した。 図5.1-1 試験ビーコン系統図

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図5.1-2 試験用ビーコン外観 これらを実現するため、試験用ビーコン構成は、「制御基板」、「送信基板」、および「電 源基板」の3 種の基板と「電池」、「アンテナ端子」、「操作スイッチ」および「リターンリ ンク端子」で構成されている。 (1) 制御基板 制御基板は図5.1-3 にあるように、ビーコンの制御を行うための CPU が搭載されている。 また今後、衛星測位データを送信するための準備として衛星測位(GPS)受信用 IC と、 機能強化のための小型ディスプレイを搭載出来るよう考慮されている。 図5.1-3 制御基板

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(2) 送信基板 ビーコンの心臓部とも言えるところがこの送信基板となっている。ここには 406MHz の信号を送り出すための電力増幅部と、今回の一つの目玉である高安定度の406MHz の信 号を作り出す発信器が搭載されている。 消費電流 OCXO DTCXO -20℃ 46.50 mA 2.00 mA +25℃ 25.90 mA 2.00 mA +55℃ 12.20 mA 2.00 mA 起動時 102.00 mA 2.00 mA 図5.1-4 OCXO と DTCXO 外観との消費電流差 ビーコンの 406MHz 帯の遭難信号は衛星によるドップラーシフトにて遭難位置を測位 するために、15 分間と短い時間であるが±1×10-9と非常に高い周波数安定度が要求され

る。従来のビーコンはOCXO(Oven Controlled X’tal Oscillator:恒温槽付水晶発振器) が広く採用されていたが、近年、MCXO(Micro-computer Controlled X’tal Oscillator: マイコン制御水晶発振器、製品名DTCXO)と呼ばれているものが注目されるようになっ てきた。今回は、消費電力の低減と小型化のためこれを採用した。(図5.1-4 参照) (3) 電源基板 「電源基板」は電池よりの電力を各部分で必要な電圧に変換して供給する。406MHz の バースト信号の出力が5W と大きいため、それを賄う工夫が必要となっている。将来携帯 型の機器とすることを考えると、電池を含め検討を行う必要があると考えられる。 使用する電池に関しては、安全面、入手性ならびに価格などを考慮し一般に市販されて いるリチューム電池をパックにして使用することを想定して、表5.1-1 にあるようなもの を用意した。

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表5.1-1 電池一覧

型 名 U10017 CR17450 CR17355 CR123 本 数 3 本(3 直) 6 本(3 直 2 並) 6 本(3 直 2 並) 6 本(3 直 2 並)

電 圧 9V 9V 9V 9V

パック

電池容量 4.8Ah 5.2Ah 3.5Ah 2.8Ah

サイズ φ25.8×50mm φ17×45mm φ17×35.5mm φ17×34.5mm 備 考 電池セル U10017 は 米 国 で 軍 用 に 用いられる単2 サ イ ズ の 電 池 で あ る 。 EPIRB や PLB などでも使 用実績があり、低 温 で も 安 定 し た 大 電 力 を 発 生 す る電池であるが、 高額(他の市販電 池のほぼ3 倍)で あ る こ と と サ イ ズ が 大 き い の が 難点である。 CR17355 同様に ガ ス メ ー タ や 警 報 器 用 で あ る 。 CR17355 に比べ て 長 さ が 10mm ほ ど 大 き く 容 量 も大きい。 ガ ス メ ー タ や 警 報 器 用 に 使 用 さ れる電池であり、 低 温 特 性 や 微 少 電 流 を 長 時 間 流 す 特 性 は 優 れ て い る が 大 電 流 を 流 す の に 難 が あ る。CR123 とほ ぼ 同 サ イ ズ で あ る。 コ ン パ ク ト カ メ ラ や 小 型 ス ト ロ ボ 用 に 使 用 さ れ る電池である。低 温 特 性 や 瞬 間 的 に 大 電 流 を 流 す 特性に優れ、海外 製 PLB での採用 が見受けられる。 5.2 リターンリンク制御信号によるビーコン動作の詳細 リターンリンクについては、コスパス・サーサットの誤報対策として注目されているが、 ガリレオ衛星により提供されるサービスであるため、欧州を中心に検討が進められている。 システムの全体像は決まりつつあるが、細目についてはまだ詰めが行われていない。その 中のコスパス・サーサットに関わる内容については、コスパス・サーサットの会合に提案 が行われ検討がすすめられているため、参加国はそこに意見ならびに提案を行うことが出 来る。 リターンリンク対応制御付き試験用ビーコンの実証実験の環境としては、図 5.2-1 にあ るようなものとなるが、本年度は、そのうち点線で囲まれた部分を行った。 本年度の試験は、試験用ビーコンに受信機に見立てた外部パソコンからリターンリンク 相当のコマンドを与え、試験用ビーコンに所要の動作を行わせる。結果を擬似地球局に見 立てた符号解析器にて読み取るものである。その際の構成例は図5.2-2 に示す。

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図5.2-1 リターンリンク実証実験構成 図5.2-2 本年度実証実験構成図 今回の測定にあたっては、ビーコンプロトコルなど全て新しいものであるため、従来の ものが使用出来ず、専用の測定用の機器を用意して行うこととなった。 擬似地球局 リターンリンク 擬似受信機 GNSS 受信機 リターンリンク 送信機 位置データ リターンリンクコマンド(空中) RF バースト信号 試験ビーコン リターンリンクコマンド 点 線 内 本 年 度 実 施 範 光信号 符号解析器 試験ビーコン 符号書込機 初期設定用 RLM コマンド発生用 PC IEC61163 相当 406MHz バースト信号

図 2.3.3-2  MEOSAR の例:GPS 衛星軌道配置
図 2.4-2  ビーコンからの緊急通報配信系統図  我が国においては、現時点では EPIRB より発射された船舶遭難の緊急通報は、海上保 安本部に、 ELT により発射された航空機の遭難に関する緊急通報は羽田の国土交通省航空 局に通報され、それぞれ適切な救助活動が開始されるようになっている。しかるに PLB については、緊急通報をどのように扱うかががまだ定まっていない。  PLB の緊急通報を受け、救助活動を行うにはその適用範囲が海上から山岳までと広いた め、関係する国及び地方、さらには民間団体の間での調
図 3.1.1-1  ARGOS システム
表 3.1.3-2  ARGOS-3 フォワードリンク仕様
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参照

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