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ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計

6.1 送受信アンテナの周波数

本年度の調査検討では、400MHz帯のグランドプレーンの影響を受けずに、コスパス・

サーサットの基準を満たす送受信機アンテナの基本設計を行った。なお、ガリレオ衛星か らのリターンリンクは、1.5GHz帯で配信される予定であることが判明したので、来年度

以降に1.5GHz帯の受信専用アンテナについても検討することとした。

6.2 アンテナ設計の仕様・測定条件 6.2.1 アンテナの仕様

この調査検討の目的が、個人が携帯して使用する機器であるため、出来るだけアンテナ を短くするとともに次のような電気的性能を満足するアンテナを開発する必要がある。

コスパス・サーサット規格T.001には仰角5°を越え60°未満の範囲内の90%以上にお いて-3 dBiから+4 dBiのゲインであることと規定されている。また水平面には偏差3dB 以内の無指向性であることが要求されている。

コスパス・サーサット規格C/S T.007の測定方法によればアンテナ測定時の仰角は10°,

20°,30°,40°および 50°の 5角度で、方位角は 0°,30°,60°,90°,120°,

150°,180°,210°,240°,270°,300°および 330°の 12 角度である。これらの

組み合わせで合計60点での測定を実施して、その90%以上の54点以上で規格に合致する ことが要求されている。

また、ビーコンから送信された遭難信号を測定することによりアンテナゲインを算出す ることから、送信電力の偏差±2dB がアンテナゲインの偏差に加算され、最終的なゲイ ンの規定値は-5dBiから+6dBiの許容範囲内となる。

これらの仕様を表6.2.1-1にまとめる。

表6.2.1-1 PLBアンテナの要求仕様

項目 仕様

空中線形式 単一型

放射パターン 半球

送受信周波数 400MHz帯

偏波 垂直直線偏波

交差偏波特性 10dB以上(水平面との差)

利得 全ての方位角と仰角5°を越え60°未満の範囲の90%で、アンテ ナ利得が-4dBi~2dBの範囲であること。

利得偏差 仰角5°以上60°未満の範囲の同一仰角においての利得の偏差は 3dB以内であること。

グランドプレーン 有無にかかわらず利得および利得偏差の条件を満足すること。

VSWR 1.5以下

インピーダンス 50Ω

その他 PLBへの実装・収納を考慮し携帯に適すること

6.2.2 測定条件

(1) グランドプレーン

測定する環境は、コスパス・サーサット規格C/S T.007により、図6.2.2-1に示す擬似

大地面1の上0.75mの高さにφ2.5mのグランドプレーンを設置しその面上中央にPLBを

置く環境(以下、グランドプレーン有り環境と称する)と、図 6.2.2-2 に示す擬似大地面 の上0.45mの高さにグランドプレーン無しにPLBを置き、PLBと測定用アンテナ間の擬 似大地面上には電波吸収帯を敷く環境(以下、グランドプレーン無し環境と称する)の 2 種類であり、これら両方の環境で規格を満足するアンテナの基本設計を行なうことを目標 とする。

1 擬似大地面は広い面積を規定しているものであり、コスパス・サーサット規格 T.007ではグランドプレーンAと称 しているが、本文中ではグランドプレーンとの混同を避けるため、あえて異なる表現である擬似大地面とした。

図6.2.2-1 PLBのアンテナ測定環境:グランドプレーン有り環境

擬似大地面

図6.2.2-2 PLBのアンテナ測定環境:グランドプレーン無し環境

(2) アンテナ測定用筐体

通常、PLBはアンテナと一体になっており、コスパス・サーサット規格により測定を行 なう場合、筐体の影響を確認するためにも何らかの筐体が必要になる。そこで、サイズを 幅55mm 高さ148mm 奥行35mmと考えたアンテナ測定用PLB擬似筐体を図6.2.2-3に 示す通りアルミニウムで製作しシミュレーションや測定に利用した。

55mm

図6.2.2-3 PLB擬似筐体

6.3 アンテナ方式の検討

6.3.1 予備シミュレーション評価

我が国では、コスパス・サーサットのビーコンについては、海面において浮揚状態で使 用するため、測定時にもグランドプレーンを用いる EPIRB 用アンテナの実績はあるが、

陸上でも海でも使用が想定され、グランドプレーン有/無の両方の環境での測定が要求さ れる PLB 用アンテナに対する実績がない。そのため、まず、グランドプレーンの影響を 出来るだけ受けないことを目的とした、λ/2スリーブアンテナにλ/4逆スリーブを付けた

図 6.3.1-1 に示すアンテナでシミュレーションにより評価を試みた。なおその際に筐体は

一般的なハンドヘルド無線機で想定される図 6.3.1-2 のような縦方向で使用するものと想 定して行った。シミュレーションした 406MHz における利得の結果は図 6.3.1-3 および

6.3.1-4に示すとおり、グランドプレーンの有/無のどちらでも、規格を満足する結果とな

った。

図6.3.1-1λ/2スリーブアンテナ(λ/4逆スリーブ付)外観イメ-ジ図

図6.3.1-2 予備シミュレーション時の筐体の想定配置

図6.3.1-3

λ/2スリーブアンテナ・シミュレーション グランドプレーン無し環境

図6.3.1-4

λ/2スリーブアンテナ・シミュレーション グランドプレーン有り環境

しかしながら、λ/2スレーブアンテナ(λ/4逆スリーブ付)は、アンテナ長が約730mm と長く、曲げることが困難であるため、携帯するには不向きである。また、形状上の理由 から国際的に運用されている121.5MHzホーミング周波数への対応も難しい。よって、実 用化も考慮した別なアンテナ方式を検討した。表 6.3.1-1 に示すとおり、水平面に無指向 性が要求されていることから、線状アンテナを検討した。

表6.3.1-1 他のアンテナ方式の検討

ホイップ ダイポール スリーブ 接地方式 接地方式 非接地方式 非接地方式 給電位置 片側 ○ 中央 × 片側 ○

大きさ ○ ○ △

指向性 ○ ○ ○

PLBでの実績 有 無 無

マルチ周波数化 ○ △ △

総 合 ◎ × ○

上記3種類のアンテナのうちホイップアンテナが適していると判断した。

(1) λ/4のホイップアンテナ

λ/4 に近い長さの線状アンテナの指向性をシミュレーションした。図6.3.1-5 に示すと おりグランドプレーン無し環境では良い特性が得られた。

図6.3.1-5

λ/4のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン無し環境

図6.3.1-6

λ/4のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン有り環境

しかし、グランドプレーン有り環境ではグランドプレーンから受ける影響が大きく、図

6.3.1-6に示すとおり指向性の要求仕様から外れてしまう。

(2) λ/2のホイップアンテナ

アンテナとしてはバネ弾性の金属導体で構成されたものを PLB 筐体の周囲に収納する ことが構造上望ましく、その様な収納を考えた場合アンテナの全長は300mm程度になる。

アンテナの全長から最適なアンテナを考えた場合、λ/2のホイップアンテナが考えられ るが、シミュレーションの結果は図6.3.1-7および図6.3.1-8に示すとおりグランドプレー ンが無い場合は良いが、グランドプレーンが有る場合に僅かだが規格から外れた。

最大利得 4.50 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

最大利得 4.55 [dBi]

図6.3.1-7

λ/2のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン無し環境

図6.3.1-8

λ/2のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン有り環境

(3) 3λ/4のホイップアンテナ

全長を3λ/4程度の線状アンテナにすると、図6.3.1.-9および図6.3.1-10に示すとおり グランドプレーンの有無による影響は小さく、コスパス・サーサット要求仕様の指向性特 性が得られる。

最大利得 4.41 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

最大利得 4.32 [dBi]

図6.3.1.-9

3λ/4のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン無し環境

図6.3.1-10

3λ/4のアンテナ・シミュレーション

(406MHz)

グランドプレーン有り環境

しかし、3λ/4の素子長では実用化が困難と判断したλ/2スリーブアンテナ(λ/4逆ス リーブ)と、ほぼ同じ長さになりPLB用として適さない。

さらに、図6.3.1-11および図6.3.1-12に示すとおり、400MHz帯受信周波数でのシミュ レーションを行なった結果、僅かであるが要求仕様を満たさなかった。

X-Z面

最大利得 -0.79 [dBi]

Y-Z面

最大利得 -1.15 [dBi]

X-Z面

最大利得 -1.02 [dBi]

Y-Z面

最大利得 -1.30 [dBi]

図6.3.1.-11

3λ/4のアンテナ・シミュレーション

(466MHz)

グランドプレーン無し環境

図6.3.1-12

3λ/4のアンテナ・シミュレーション

(466MHz)

グランドプレーン有り環境

6.3.2 シミュレーション条件の再検討

予備シミュレーションの結果を受け、実際のアンテナが使用される状態を含めて見直し を行った。再検討を行ったのはアンテナ長と筐体とアンテナの関係についてとなった。

(1) アンテナ長

予備シミュレーションでアンテナ長をλ/4、λ/2、および 3λ/4 に対して行った結果よ り、アンテナ長が長い方がグランドプレーンの有無による影響を受けないことが判明した。

一方実際の機器の大きさを考えると、長いアンテナを収納するのが難しいことから、

アンテナ長として約300㎜程度となるλ/2のもので検討した。

(2) PLBの姿勢の再検討

PLBのアンテナ評価時の姿勢は、図6.3.2-1に示すとおりグランドプレーンに垂直に立 つ姿勢でシミュレーションを行なった。

図6.3.2-1 PLBアンテナ評価時の姿勢

一方、既に海外で販売されているPLBを調査したところ、図6.3.2-2のとおり、筐体に

対して約90°アンテナを起こす機種や、本体表面底部にGPSアンテナがある機種がある

ことが判明した。このことは PLB は筐体を地面に垂直に立てて使用するのではなく、地 面と水平にして使用されることを想定している機種が多いことを意味している。

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