助産 学 に関す る シソー ラス開発 の基礎 的研 究
日本赤十字武蔵野女子短期大学専攻科○鈴木美恵子 白石英美 杏林大学保健学部看護学科 今井 晶子 加藤尚美 は じめ に 助 産学 は 、助産 婦 業務 す べ て に関 わ る諸活 動 の ため に必要 な基盤 とな る実 践 の科学 であ る。 しか しまだ ま だ学 問 として は若 く、概 念 の整 理 や 用語 の統 一 が不 十 分 であ り 、さ まざ まな こ とばが 使 わ れ てい る現 状 で あ る 。助 産 学 の研究 が必 要 にな っ て きて い る現 在 、 「索 引誌 」 に おいて 、その手 助 けをす る 「シ ソー ラス」 が 整理 され てい ない た め 文献 を探す こ とに困 難 を きた してい る と もいえ る 特 に今 後 コンピ ェターを媒 介 と した情 報処 理 が必 要 に な って くる と 、それ ぞれ の学 問分 野 に お け るシ ソー ラス の開 発 は必 須 とな る 。 JICST科 学技 術 用 語 シ ソー ラ スで看 護 、助 産 に関 す る もの は見 出 し語 と して 看護 婦 が あ るがUF: 看護 士BT:医 療 従 事者 ・職種 別従 事者 ・・労 働 者RT:助 産 婦 のみ で あ る 。 そ こで今 回 、助 産 学 に関 す るシ ソー ラス の案 を作 成 す るため の 一段 階 と して 助産 学 に関す る学術 論 文に 使用 され て い る学 術 用 語 の種類 、内容 、頻度 お よび包 括 関係 を明 らか に す る事 を 目的 に本調 査 を行 った 。本報 告 はr助 産 」 「分娩 」 に関 す る用 語を主 に例 を示 した 。 ※ シソー ラス につ い て シ ソー ラス とは 、ギ リシ ャ語 で 「知 識 の宝庫 」 とい う意 味 で 辞書 の一 種 で あ る といわ れ てい る 。 情 報検 索 で用 い られ る シ ソー ラス は 、多 くの表 現 方法 の 中 か ら 、標準 的 な表 現方 法 を知 りた い と き 、語 と他 の語 との関係 を知 りたい と きな ど に 、人 また は コ ン ピ ュター に よ って利 用 され 、 情 報 検 索 に携 わ る広 範 な人 々 の用 語 を管 理 す る 重 要 な道具 で あ る 。シ ソー ラス の構成 は 、見 だ し語 と それ に関 係 の あ る語 と、関係子 とい う記 号 で示 され る 。以下 使用 して い る記号 の 概 略を 記 す 。 U F (Used For) ;見 だ し語 との優先関係 を示 す N T (Narrower Term) ;見 だ し語の下位概念 R T (Relanted Tern) ;見 だ し語 との 関連語 B T(Broader Term) ;見 だ し語の上概念 見 だ し語 は 、デ ィス ク リプ タ(一 つ の概 念)を 示 す い くつ か の用 語 の中 か ら シソー ラスで優 先 的 に使用 を認 め た用 語(優 先語)で 、索 引 と検 索 で はデ ィス ク リプ タが 用 い られ る 。 I方 法 1.日 本 助産 学会 誌第1巻 第1号 か ら第6巻 第1号 まで の12冊 を使用 し 、そ こ に集 録 されて い る 学 術論 文1編 ご とに 、そ の論 文 に使 用 され て い る助産 学 に関 す る学 術用 語 と考 え られ るもの を 全 て抽 出 し 、外以 下 の 基準 を設 け統 一 した 。 -用 語抽 出 の基 準-1)助産 学 に関 係 の深 い 熟語 2)合 成 語 、例 えば 「母 性意 識 」 な どの よ うな場 合 は 「母 性 」 「意 識 」 と二 つ に分 けな いで 一 つ の用 語 と して扱 う 3)合 成 語 と思 われ る語 、例 えば 「妊 娠 の受 容 」 「人 間性 豊 か な ケア 」 な ど助詞 で 結 ばれ て い る語 や形 容 詞 の付 い て い る語 は一 語 と しな い 4)助 産学 と重 複す る用 語 の多 い看 護 学 、医 学 、 保 健 、福祉 の分 野 の用 語 は 、その 中 で も助 産 学 に関連 の 深 い もの に限 定 して抽 出 す る 2.抽 出 した用 語 を同 一用 語 ご とに集 計 した うえで 五十 音順 に配列 した 。 3.全 ての論 文 に つ いて 同一 作 業 を行 った上 で 、更 に全 諭文 の学術 用 語 の種 類 と頻度 を集 計 した 。 4.使 用 頻度 の高 い用 語 を選 び 、シソー ラス の構 成 要素 に従 って 同義 語 ・上 位 語 ・下 位 語 さら に関 連語 を協 議 の 上確 定 した 。-61-II結 果 1.日 本 助 産学 会 誌 第1巻 第1号 か ら第6巻 第1 号 まで の12冊 に記 され て い る助産 学 に 関す る用 語 は4070語 の 抽 出 を した 。 用 語 の 使用 頻度 の高 い もの は 、助 産 に 関 す る 用 語 は157語 、分 娩 に 関 す る用 語 は146 語 その 使用 頻 度 を み る と表-1に 示 す よ うに 、 1回 だ け しか現 れ なか った言 葉 は54%で 、 11回 以 上現 れ る言 葉 は7%で あ った 。 使 用 頻 度 の高 い 言葉 は 、助 産婦1300回 、助 産 ケ ア170回 、助産所134回 、助 産婦 教 育 、助 産 学 と続 き 、分 娩 は370回 、助産 介 助76回 ・分 娩 介 助64回 、分 娩経 過 、な どが あ り本学 会 誌 の 使 用 され て い る用 語 の 特性 とも思わ れ た 。 合 成 語 も多 く抽 出 して い るため一 回 だ け しか 現 れ な い も のが多 くな る とい う現 象 は免 れ 得 ない 。 表-1用 語 の使 用頻 度 2.助 産 学 に最 も 関係 の深 い助産 、分 娩 に関 す る シ ソー ラス を作 成 した もの は以 下 表-2の 通 りで あ る 。(表-2・ 表-3) 表-2シ ソー ラ ス
-62-表-3シ ソ ー ラ ス III用 語 抽 出 時 の問 題点 1)助 産 学 領 域 で使 用 され て い る用語 を見 ると 、 特 に使 用 頻度 の高 い助 産 、介 助 の用 語 で は あ る論 文 で は分 娩 介 助 を助産 と し 、あ る論 文 で は分娩 介 助 と し 、研 究者 に よ って用 語 の 使用 が まち まち で あ った 。 2)一 般 に使用 され て い る用 語 の定 義 を使 用 され て され てい な い ので は ない か と思わ れ る事 や 、未 だ用 語 と して認 め られ て い な い もの が使 用 され てい た 。 3)合 成 語 に して も ケ ア管 理 、ケ ア経 験 、家 族 助産 、 プアー フ ァ呼吸 な ど用 語 と して個人 の みが承 知 し て使 って い るか と思 われ る用 語 も多 々 あ る 。 論文 構成 上 、用 語 は 自由 に使 って も良 い とはい え 、読者 に理解 され な くては な ら ない 。 4)173諭 文 約8000字 の内 、同 じ用 語 を20 回以 上繰 り返 し使 用 して い る もの が68論 文 あ り 、その論 文 の キー ワー ドで は あ るが 、中 には 一考 す る必 要 が あ る もの が あ った 。 おわ りに 情 報検 索 の手 段 の基 本 を 支 え る シ ソー ラス は 、 情 報 化社 会 の ソフ トな神経 網 で あ る といわ れ て い る 。コン ピ ュ ター を利 用 して の情 報検 索 は 、 文 字 の 裏 にひ そ む意 味 を考 えに いれ 、情 報 を 引 き出す とい う事 にな るが 、そ こで シ ソー ラスを 使用 し上位 、下位 概 念 を は っ き り させ た上 で 迅 速 に処 理 しよ う とす るも の であ る 。 この シソー ラスの作 成 は そ の道 の専 門 家 が や ら な くて はな ら ない とい われ てい る 。 今 回 の調 査 で 、同 じ言 葉 で も 日本語 、英 語 で の 使 用 が あ った り、曖 昧 な使 用 の合成 語 、動 詞 を 形 容 詞型 に変 化 させ て使用 して い るもの を どの 言 葉 で抽 出 す るの が よい の か 問題 も多 くあ った 。 看 護 、助 産 領域 にお け る シ ソー ラ スの必 要 性 を 感 じ 、更 に検討 を進 め たい と考 えて い る 。 本 研 究 に あた り 、ご指 導 くだ さい ま した 日赤 武 蔵 野 女 子短 期 大学 稲森 教 授 に 深謝 致 し ます 。 参 考 文 献 1)加 藤 一郎 東 京 大学 公 開 講座13P51-65 東京 大学 出版 会1971.10.31 2)橋 本 昌幸 情報 検 索 のABCPl26-135 日本 放 送 出版 協 会S46.10.20 3)JICST科 学 技術 用 語 シ ソー ラ ス1993年 版 4)松 本 直 子 看 護Pl32-142看 護協 会 出 版 会93.4
-63-極 小未 熟 児 にお け る吸 畷 パ ターンの評 価
と経 口哺乳 開始 時期 につ いて
長野 県 こど も病院 新生児病棟 ○伊藤 ゆき 藤原美千代 内田美恵子 三輪百合 子 Iは しめ に 経 管 栄 養 か ら経 口 哺乳 に移 行 す る時 期 は 、当院 で は 修 正 在 胎 週 数 が35週 以 上 、体 重 が1500g以 上 に な った時 点 で 空 乳 首 の吸 畷 状 況 を臨 床 的 に評 価 し て 、経 口 哺 乳 に 移 行 す る か 否 か を決 めて きた 。 し か し経 験 の 浅 い 看 護婦 に と って 、そ の判 断 は容 易 で は な か っ た 。今 回 、空 乳 首 の吸 畷 反 応 を分 析 す る こ と に よ り 、経 口開 始 時 期 の客 観 的 基 準 の 試案 を 作 成 出 来 た の で こ こに報 告す る 。 II方 法 1.対 象 対 象 は 、1993年11月 ∼1994年8月 ま で に 当院 新 生 児 病 棟 に入 院 した 在 胎週 数30週 以下 の症 例 につ い て 、臨 床 的 に 経 口哺 乳不 可 能 と判断 した症 例14例 (非 哺 乳 群)と 実 際 経 口哺 乳 が 行 わ れて い る症 例 30例(哺 乳 群)で あ る 。 非 哺 乳 群:修 正 在 胎 週 数33週1日 体 重1129.6±168.1g 哺 乳 群:修 正 在 胎 週 数38週4日 体 重1925.1±330.5g 図1吸 啜圧測 定装置 の略図 2,測 定 方 法 1)使 用 機 種 ア イ ビ ジ ョ ン 社 製VM-840に 解 析 用NECpC-9801と 印 刷 用 エ プ ソ ンm-80を 接 続 した シ ス テ ム に 空 乳 首(ビ ジ ョ ン製)と ネ ラ ト ン カ テ ー テ ル14Fr (テ ル モ 製)を 接 着 剤 で 固 定 し た も の を 図1の 様 に 接 続 し 、 口 腔 内 圧 を 画 面 上 お よ び 記 録 用 紙 に 連 続 して 記 録 し た 。 測 定 結 果 の 模 式 図 を 図2に 示 す 。 2)測 定 時 間 当 院 の 定 時 の 授 乳 時 間 前 で 空 腹 時 か っ 覚 醒 状 態 に あ る時 3)灘 定 回 数 各 測 定 と も1分 間 の 測 定 を 、3∼5回 繰 り返 し て 測 定 し た 。 4)吸 畷 反 応 の 分 析 指 標 Pmax(cmH20):最 大 吸 畷 圧 B(バ ー ス ト);2秒 以 上 の 休 止 を 含 ま な い 一 連 の 吸 畷 反 応 BF(バ ー ス ト回 数/分):1分 間 の バ ー ス ト回 数 ST(秒):1分 間 の バ ー ス トの 合 計 時 間 図2模 式図 ―64―吸 畷 反 応 数(回 数/分):1分 間 の 吸 畷数 吸 畷 反 応 スペ ー ス(秒):吸 畷 間 経過 時 間 5)統 計 処理 法 unpaired T 検 定 に よ る 。 III結 果 図3は 、哺 乳 群 と非 哺乳 群 の 代 表 的 な吸 畷 圧 波 形 で あ る 。
非哺乳群
哺乳群
図3代 表 的な吸畷圧波形 表1は 哺 乳 群 と非 哺乳 群 の吸 畷 圧 波 形 を分 析 す るため に用 い られ た 各指 標 の平 均 値 、標 準 偏差 並 び に両 者 の 有 意 差検 定 の結 果 で あ る 。Pmax.BF、ST、 は す べ て哺 乳 群 が有 意 に高 値 を示 した 。また 、吸 畷 反応 数 も哺 乳 群 に お い て有 意 に多 く 、従 って吸 畷 反応 スペ ー ス は有 意 に短 縮 して い た 。 有意 差 が 最 も大 きか ったPmaxとSTに つ いて 両群 の 分布 状 況 を図4に 示 した 。P≦45-STの 症 表1検 査項目一覧表 (両群の値は平均±SDで表示しT検 定の結果をP欄 にしめす) 例 はす べ て 非 哺 乳 群 であ った 。55-ST<Pは す べて 哺 乳 群 で あ った 。45-ST<P≦55-ST(境 界エりア)に は 、非哺 乳群 が2例(P1、P2)、 哺 乳 群 が5例(Q1、Q2、Q3、Q4、Q5)混 在 して い た 。 臨 床 上 評価 しやす いPmaxとBFに つ いて 両 群 の分 布 状 況 図5に 示 した 。症例Pr・2はP>30-BF の 非 哺 乳群 に あ った 。症 例Q1・Q2・Q3・Q4・Q5ではQ3 以 外 は哺 乳 群 に あ った 。 IV考 察 私 達 の 施 設 を 含 め て 、 多 くの 施 設 が 経 験 的 に 修 正 週 数 や 体 重 を 基 準 に して 経 口哺 乳 を開 始 す る時 期 を 決 定 して い る 。 しか し 、 こ の 方 法 で は 個 々 の 症 例 の発 達 度 が 十 分 考 慮 さ れ て い な い の で 、や や もす れ ば 、誤 嚥 を 恐 れ る あ ま り経 口 哺 乳 開 始 の 時 期 を 不 必 要 に 遅 らせ て しま う 可 能 性 が あ る 。 こ れ は 、児 の 発 達 促 進 、母 子 関 係 の 早 期 確 立 の 観 点 か ら は 望 ま しい こ と で は な い 。 鈴 木 らの 調 査 を結 果 を 表2に 示 す 。 彼 ら は吸 畷 訓 練 前 後 の比 較 に お い て 、吸 畷 訓 練 を す る こ とに よ り 、吸 引 反 応 数 と1バ ー ス ト当 た り の 吸 引 反 応 数 を 有 意 に 増 大 さ せ る と述 べ て い る 。 しか し 、訓 練 した 児 が 経 口 哺 乳 が 可 能 か ど うか は 、 明 らか に され て い な い 。 我 々 の 調 査 で は 、経 口哺 乳 が 可 能 か 否 か の 指 標 を 得 る た め 、哺 乳 群 と非 哺-65-□:哺 乳群 ●:非 哺 乳群 図4バ ース ト合計 時間 一最大 吸啜 圧分布 図 □:哺 乳群 ●:非 哺乳 群 図5バ ー ス ト回数 一最 大 吸 啜 圧 分布 図 乳 群 の 比 較 を 行 った 。 そ の 結 果 、 Pmax、ST、BT、 吸 畷 反 応 ス ペ ー ス は 有 意 に 減 少 して い た 。 こ れ らの 測 定 値 の 中 のPmax、BF、STの 関 係 か ら 、Pmax-BF,Pmax -STの 分 布 図 の 組 み 合 わ せ で 、経 ロ 哺 乳 可 能 か 否 か の 指 標 を 得 る こ と が で き た 。 具 体 的 に は イ)Pmax>55-STは 無 条 件 に哺 乳 群 ロ).Pmax≦45-STは 無 条 件 に非 哺 乳 群 ハ)45-ST<Pmax≦55-ST の 場 合 は 更 にPmax≦30-BF で あ れ ば 非 哺 乳 群 と 判 定 で き る 。 ま た 鈴 木 ら は 、自 ら吸 畷 反 応 シ ス テ ム を 作 成 し 吸 畷 状 況 の 変 化 を 調 査 し て い る が 、今 回 私 た ち は 多 く のNICUで 呼 吸 機 能 検 査 に 用 い ら れ て い る ア イ ビ ジ ョ ン社 製 の 呼 吸 機 能 測 定 装 置 を そ の ま ま 利 用 出 来 た 点 で 、簡 易 で 良 か っ た とい え る 。 表2吸 引 訓 練 前 後 の 各 指 標 の 平 均 値 とSDな ら び に 相 関1)
-66-Vま と め 1.哺 乳 群 、非 哺 乳 群 に お い てPmax、BF、ST、 吸 畷 反 応 数 お よ び 吸 畷 反 応 スペ ー ス に 有 為 な 差 が み られ た 。 2.経 口 哺 乳 開 始 時 期 の 判 定 に は 、従 来 の 修 正 在 胎 週 数 と 体 重 に 合 わ せ 吸 畷 反 応 の 測 定 値 が 指 標 と な り う る 。 そ の 基 準 は 、 イ)Pmax>55-STは 無 条 件 に哺 乳 群 ロ)Pmax≦45-STは 無 条 件 に非 哺 乳 群 ハ)45-ST<Pmax≦55-STの 場 合 は 更 にPmax≦30-BFで あ れ ば 非 哺 乳 群 と判 定 で き る 。 3.吸 畷 圧 測 定 に は 、 日常NICUで 用 い られ て い る ア イ ビ ジ ョ ン社 製 呼 吸 機 能 測 定 装 置 の利 用 が 可 能 で あ る 。 以 上 よ り 、今 後 、 この 基 準 を 用 い在 胎 週 数 が35週 未 満 、体 重 が1500g未 満 で あ っ て も 、イ)の条 件 を 満 た す 症 例 に つ い て は経 口哺 乳 を 試 み 、ロ)やハ)の症 例 につ い て は 経 管 栄 養 で 続 行 し 、 こ の 基 準 で経 口 哺 乳 開 始 の 決 定 を す る こ と が 、合 理 的 で あ るか 否 か を検 討 して い く予 定 で あ る 。 本研 究 に あ た り 、 ご指 導 いた だ い た長 野 県 立 こ ど も病 院 新 生 児 科 部 長 田 村 正徳 先 生 に深 謝 い た し ま す 。 引 用 文 献 1)鈴 木 え り子 他:未 熟 児 に お け る 空 乳 首 の 吸 引 反 応 パ タ ー ン.MCU,(4).No6470-4761992 参 考 文 献
1) Peter H.Wolff, M.D. : The serialorganization of sucking in the younginfant. Pediatrics Vo -1 . 42, No.6, December943-956, 1968
2) Maureen Hack, Michele Marie Estabrook and S teven S. Robertson: Development of sucking rhythm in preterm infants. Early Hum. Dev, 11 133-140, 1985 3) 鈴 木 え り子 他: 未 熟 児 に お け る空 乳 首 の 吸 引 反 応 パ ター ン. NICU, (4) . No6470-4761992 4) 鈴 木 え り子 他: 未 熟 児 にお け る経 管 授 乳 中の 口 腔 内刺 激 が早 期 コ ッ ト移 床 に及 ぼす 効 果 NICU, (3) . No6459-4641990 5) 黒沢 浩 美 他: 未 熟 児 の 経 口哺 乳 確 立 時 期 に 関 す る検 討NICU, (5) . No8679-6831992 6) 二 木 武 他: 哺 乳 運 動 の 発 達 周 産 期 医 学, (10) . No. 4, 489-4941980 7) 小 林 恵子 二哺 乳 行動 の経 時 的 変 化 と 吸畷 圧 NICU, 1992冬 期 増 刊. 72-76 ―67―
出生 後12時
間 の新 生 児 の体 温 と環 境
(東邦 大学医 療短 期大学)○ 中村理 恵,関 島英 子, 牧 田 眞 佐 美,蛭 田 由 美,西 脇 美 春 (東邦大学 医学 部付 属大森 病院)鎌 田邦子,小 堂弘 子,中 野 ともの I.は じ め に 出生直 後 の新生 児 は,劇 的 な環 境 の変化 に さら さ れ る 。胎 内に比べ る と10℃以 上も低 い環 境温 と羊 水 や血 液 に濡れ た状態 の ため に,新 生 児 の体温 は奪 わ れ易 い 。体 温管 理 は,予 後 に影響す るこ ともあ り, 非常 に重要 で あ る 。 現在,正 常新生 児 のケアはルチン化 し,体 温管 理 もあ る 程 度 のレベルは維 持 され て い る 。新 生児 の取扱 い と体 温 の報告 も多 くな され てい る1.2.3)が,個 々の新 生 児 に適 した質 の高 い看 護 が提 供で きて い るかを考 え る と,検 討 の余 地が あ る と思われ る4.5.6)。 現状 を 分析 す る ことに よ り,看 護 ケア向上 のため の若 干の示 唆 を得 た ので報 告す る 。 II.研 究 目的 出生直 後 の新生 児 を と りま く環 境が胎 外生 活 への 適応 課程 に おい て,ど の よ うに影 響す るか 分析す る こ とに よ り新生 児 の環境 作 りを検討 す るこ とを目的 とした 。 III.方 法 1994年8月 か ら10月 に,東 邦 大 学 医学 部付 属 大 森病 院 で出生 した在 胎週 数38∼41週 の10名 の正 常新 生 児 を対 象 とした(表1)。 分娩 前 の母親 に,児 の体温 測 定(直 腸 温 ・皮膚 温 5点),環 境温湿 度(部 屋 ・寝 床),風 速の測 定 の主 旨を十 分 に説 明 し理 解 を得,承 諾書 に署 名 を して も ら った 。児 が出 生 し,インファントウオーマー上 で直腸 温 の 計測 を,沐 浴,計 測 の後,肩 胛 骨 の下,胸,頸,足 底 の 皮膚 温 を,コ ット入床 後 児の額 の皮 膚温 の測定 を 開始 し た 。児 が 新生 児 室 の コットに 入 床 前 か ら寝 床 内温 湿 度 (コット中 央)及 び室 内温 湿 度,風 速 を測定 した 。体 温 はデ ータコレクタ(AM7002;安 立計 器 社製)で,環 境 温湿 度, 風 速 はデータストッカ(TRH-DM3;神 栄社 製)に よ り1分毎 に 測定 し,出 生後12時 間実施 した 。さ らに,Desmondに よる新生 児 の子宮 外 適応 現象(呼 吸 ・心音・ 皮 膚 色 ・ 活 動 性 ・粘液)7),Brazeltonに よ る覚醒 レベ ル(ST-ATE)8)を 経 時的 に観 察 した(図1)。 今 回 は,特 に新 生 児 の体 温 と,出 生 直後 のケア,分 表1.対 象 ―68―図 1.測 定 ス ケ ジュ ー ル 娩室 と新 生児 室 の環境 につ い て検 討 した 。 IV.結 果 1.体 温 1)直腸温 出 生後5分 程 度で 直腸温 の測 定を開始 してお り,測 定開 始時 は10例 とも37∼38℃ の範 囲で あ った 。経時 的変化 は3パ ターン認め られ,出 生直 後か ら10分程度 の 間に38℃ 以 上 に上昇 した2例(図2)と,徐 々 に直 腸 温 が低下 し保 温 に よ り恒 温 に向か った2例(図3), 一 時 的に直腸 温 の低下 はみ られ るが ,低 体温の域で はな く,ほ ぼ 安定 して経 過 した6例(図4)で あ った 。 図2.直 腸 温の変化(一 時的 に上 昇 したケース) 図3.直 腸温 の変化(一 時的 に低 下 したケース) 図4.直 腸温 の変 化(安 定 して経 過 したケース) ―69―
2)皮 膚温 (1)背 部(肩 胛 骨の下)・ 胸 部 ・頸 部 直 腸温 に相 似 した値 を示 した(図5)。 特 に胸部, 頚部 につ い ては外気 に触 れ る と影 響 を受 ける 。肩胛 骨下 は,新 生児 の寒 冷 時 の体熱産 生 に重要 な褐色 脂 肪組 織 が体 表近 くに多 く存 在す るが,直 腸温 との相 関は み られ なか った 。 (2)足 底 31∼37℃ と変 動 の幅 は大 き く,湯 た んぽな ど物 理 的環 境か らの影 響 を受 け易 か った(図6)。 湯 たんぼ は,臨 床 ナースの判断 に よ り貼 用 した 。 (3)額 部 センサーの固定 が安定 しに く く,外 気 に直 接触 れて い るため外 気温 の影 響 を受 け易 い 。安 定 して い る時 に は33∼36℃ で あ った 。 図5.肩 胛 骨下 ・胸部 ・頸 部 と直 腸温 図6.足 部 ・額部 の変 化 注;図5・6代 表 的 な1ケ ース(A)を 示 す 。 2.分 娩 室 の 環 境 室 温24-26℃,ウォー マー下(ヒ ーターか ら約50cm下)の 温 度 は36-46℃ で あ っ た 。 3.新 生 児 室 の 環 境 1)室 内 の 温 ・湿 度 24∼26℃,55∼65%で あ っ た 。 2)寝 床 の 温 ・湿 度 3∼35℃ 、50∼60%で あ っ た 。 3)風 速 0.1∼0.6m/secで あ っ た 。 V.考 察 1.体 温 1)直腸温 直腸温 が38℃ 以 上 に上 昇 した2例 は,い ずれ もインフ ァントウォーマー下 が45∼46℃ まで高 い温 度 を維 持 して お り, 高温 環境 の影響 と思わ れ る(母 児 ともに感 染 の兆候 は ない)。 正常 新生 児 がインファントウォーマーで受 け る処 置 は 短時 間で あ る こと と,羊 水 で ぬ れて お り体 温 を奪 わ れ易 い点 、緊急 時 に短 時 間で保 温 可能 な状 態 にす る ため な どを考慮 し,ノンサーボ の状 態で 出生前 か らスイッチ をONに してい る 。その一 方 で児 出生 前 の作 動 時 間が 一 定 では な く,時 に高体 温 を ひ きお こ して しま うこ とが明 らか にな っ た 。 2)皮 膚 温 (1)背 部(肩 胛骨 の下)・ 胸 部 ・頸 部 外 気 の影響 と温 度計 の種 類 を考 慮 して測定 す れば, 新生 児 の侵 襲 を最 小限 に して直腸 温 に近 い値 を得 る こ とが で きる 。 (2)足底 環 境 に影響 され 易 く,直 腸 温 が恒温 に保 たれ て い る時 で も31℃ と低 温 を示 す点 を考 え,児 の状 態 が安 定 して い る時 の軽 度 の冷 感 は生 理的 な状 態 と考 えて 良 い こ とが確 認 で きた 。 (3)額 部 新生 児室 で唯 一外 気 に暴露 され て い る部 位 で あ る ので,正 確 な体 温 と しての値が得 られ に くい 。 2.分 娩室 の環 境 分娩 室 は児が 出生 直後 に初 め て物 理 的環 境 に さら され る場 で あ り,蒸 散 に よ り熱 を奪 われ 易 い 。また ―70―
施 設の構造 上,出 生直後 のケアが風 通 しの良 い壁面 に 隣接 した場 所 でな され るた め,対 流,輻 射 に よ る熱 放散 も考慮 しな けれ ば な らな い 。そ こで,初 期体温 低 下を最 小限 にす る目的 でインファントウォーマーを使用 して い るが,環 境調 整 をインファントウォーマーに頼 りす ぎ,児 に適 切 な環 境 を考 え る意識 が 薄れ て い る可能 性 が あ る 。現 状 では,イ ンファントウォーマー下 の環 境 温の測 定 を実施 してお らず,ま た 出生後1時 間前後 で新 生児 室 に入室 す るま で検 温 は特 に実施 して い ない な ど,対 象 の状態 を 的 確 に把握 しなが らケアを行 って い る とはい えな い 。危 険の ない場所 に小 さな温 度 計 を設 置 す る,適 宜 検温 を実施 す る,気 流 を感 じる よ うな らスケリーンを使 用す る な どの配 慮 で,新 生児 に快 適 な環 境 を提 供で きるの では ないか と思わ れ る 。 3.新 生 児室 の環 境 1)室 内の温 ・湿度 同 じ室 温 の部屋 の 中で も窓 際 であ るか壁際 で あ る か で,輻 射 に よ り奪 われ る体熱 の大 きさが変 わ るこ とを考 慮 しな けれ ばな らな い 。 2)寝 床 の温 ・湿度 成人 にお け る快 適 な寝 床環 境(33℃,55%)9)と ほ ぼ一致 す る 。寝床 湿度 が部 屋の湿 度 よ りも低 い点 は, 相対湿度 との関係 で はな いか と思われ る 。 3)風速 新 生児室 で児 は掛 け物 に ほ とん ど覆 われ て お り, 0.1(0.6m/sec微 風 に よ る体 温の喪 失は あ ま り無 い と 考 える 。しか し,空 調 に よる室温調節 で あ るため, 排 気 口付近 や時 間帯 によ り0.6m/secの風 速が観 察 さ れ るこ とを考 慮 してケアす る必 要 があ る 。 V.ま とめ 出生直後 の新 生 児 の環 境作 りを考 え る示 唆 を得 た 。 今 後 は出生 時体重 や覚醒 レベ ル,子 宮外適 応現象 との 関連 な ど,ケース毎 に詳細 な分 析 を行 い,よ り対象 に適 した環 境 が提供 で きるよ う検討 して い きたい 。 謝 辞 本 研 究に あ た りご協 力い ただ いた対象 の方 々,東 邦大 学医 学部 付属 大森病 院産 科,周 産期 センターの ス タ ッフの皆 様 方 に感謝致 します 。 文 献 1) 中 村 覚 美 他: 出 生 後24時 間 の 体 温 動 態 か らみ た 正 常 新 生 児 の取 扱 い の 検 討, 母 性 衛 生, 30(2), 287-2 93, 1992. 2) 藤 田 峯 子 他: 出 生 直 後 の 沐 浴 の 妥 当 性 を 初 期 体 温 下 降 面 か ら再 考(第II報) , 母 性 衛 生, 33(2) , 173 -177 , 1992. 3) 坂 井 理 佳 他: 正 常 新 生 児 の 生 後12時 間 の 体 温 変 化 −体 温 の 連 続 測 定 に よ るコット内 とクベ ーズ内 の 比 較 検 討-, 産 婦 人 科 の 実 際, 39(12) , 1881-1990, 1990. 4) Phillips. C. R. : Neonatal Heat Loss in Heated Cribsvs. Mother' s Arms. JOGN, 3(6) , 11, 1974. 5) 秋 山正: 出 生 時 の 体 温 管 理, 新 生 児 の保 温 ・観 察, 臨 床 婦 人 科 産 科, 45, 600, 1992.
6) 横 尾 京 子: 新 生 児 ケ ア を 見 直 す, 助 産 婦 雑 誌, 45, 868-873, 1991.
7) Desmond. M. M. etal: Pediatric clinics of North America. 13, 656, 1966.
8) Brazelton, T. B. : Neonatal Behavioral Assessme-nt Scale, Clinics in Devel opmeAssessme-ntal Medicine. 50, 1973. 9) 梁 瀬 慶 子: 寝 具, 睡 眠 の科 学, 鳥 居 鎮 夫 編, 朝 倉 書 店, 117-126, 1984. 10) 高 橋 滋, 馬 場 一 雄: 新 生 児 の 体 温 調 節, 新 生 児 の 生 理, 馬 場一 雄 編, 133-160, 医 学 図 書 出 版, 東 京, 1977. 11) 高 橋 滋: 新 生 児 の 保 温 の実 際, 周 産 期 医 学, 23, 2 3-29, 1993. 12) 井 村 総 一: 新 生 児 の 体 温 管 理 と モ ニ タ ー, 臨 床 モ ニ タ ー, 1, 209-217, 1990. ―71―
産 痛 と β-endorphinに
関 す る研 究
――産婦の予測 した陣痛 と実際との相違―― 神奈川県立衛生短期大学 ○皆川恵美子,廣 谷ますみ 横浜市立市民病院 長田久文 前神奈川県立衛生短期大学 藤田八千代 I.は じめ に 産 婦 の産 痛 緩和 に向 け て の援助 は,母 性看 護 に お け る永遠 の テー マで あ り原 点 とい って も過 言 で はな い。 この産痛 にた い して は,精 神 予 防性 無痛 分娩 の原 理 を応用 した ラマ ー ズ法 や分 娩 体位 を仰 臥位 よ り座位 分 娩 とす るな ど,少 しで も安全 で安 楽 な 出産 とな る よ う様 々な方 法 の開 発 や工夫 が な され て い る。 そ して援 助 者 と共 に感 動 の得 られ る, 満 足度 の高 い 出産 とな る よ う私達 は ケアの提 供 に 心 を 砕 い てい る。 少産 少 子 の一途 をた ど って い る 現 在,そ の出産 に対す る イ メー ジは文 化水 準 の向 上 に伴 い,施 設 内 で安 楽 に とい うニ ー ズが よ り強 化 され て きて い る よ うに思 わ れ る。一 方,分 娩 誘 発 や 計 画麻酔 分 娩 な ど も開 発 され 一応 の成 果 を上 げて い る。 特 に この産 痛 と関 連 して 体 内で は,モ ル ヒネ効 果 と して 知 られ る,β-endorphin(以 下 β-EPと 略す)が,和 痛効 果 に関与 して い る こ とが明 らか に されて きて お り,こ の こ とを応 用 して,ク モ膜 下腔 に β-EPを 注 入 し,経 膣 分娩 時 の疼 痛緩 和 に 顕著 な効 果 を得 た とい う1)発表 もみ られて い る。 これ らβ-EPに 関 す る研 究 は,従 来医 学 的 な立 場 か らな されて きた 。本 研 究 で は看 護 的 側面 か ら, この β-EPが どの よ うな状 況 にお い て功 を奏す る のか,ま た産 婦 が 自覚 して い る産 痛 と どの よ う に 関 連 して い るのか を分 析 す る こ とで,産 痛 緩 和 へ の援 助法 の鍵 を探 る こと を 目的 に追 究 を試 みた 。 II.方 法 およ び対 象 1.方 法 分 娩時 の援 助 法 を究 明 した い主 旨 の説明 を し, β-EPの 測定(採 血)と 質 問紙 調 査 の両 方 に協 力 の得 られ た産 婦 を対 象 に行 な った 。 産 痛 に つい て は 自記式 質 問紙 に て,分 娩 第1期 (入院 時 の痛 み),分 娩 第II期(児 頭 が娩 出 され る時 の痛 み)お よ び分 娩第IV期(帰 室 した 時 の痛表1各
時 期 の 産 痛 得 点
―72―み)に つ い て,各 時 期 ご と に どの 部 分 に(腹 部 ・ 腰 部 ・陰 部),ど の 程 度 の 痛 み が 知 覚 さ れ た かV AS(visual analogue scale)2)を 用 い て10段 階 尺 度 で 測 定 を 行 な っ た 。 β-EPの 測 定 時 期 は,分 娩 第I期 の な か で 最 も 苦 痛 を 伴 う と思 わ れ る,子 宮 口 全 開 大 直 前 の 産 婦 を 対 象 と した 。 統 計 学 的 検 定 に は,x2検 定 に て 解 析 を行 な っ た。 2.対 象 本 研 究 に と っ て の 有 効 研 究 対 象 は98名 で,平 均 年 齢 は29.3才,最 年 少16才 で 最 高 齢 は40才 で あ っ た 。 出 産 回 数 は,初 回 産 か ら2回 経 産 ま で で あ っ た 。 そ の割 合 は初 産63名(64.3%),1回 経 産27名(27. 6%),2回 経 産8名(8.2%)で あ っ た 。 学 歴 は,中 学 卒 業(以 下 中 学 卒)4名(4.1%), 高 校 卒23名(23.7%),専 門 学 校 卒12名(12.4%), 短 期 大 学 卒28名(28.9%),大 学 卒29名(29.9%) 大 学 院 卒1名(1.0%)で あ っ た。 III.結 果 1.VASに よ る 産 痛 得 点 1)各 時 期 各 部 位 の産 痛 得 点:産 痛 得 点 は 表1に
図1各
時 期 の 学 歴 別 産 痛 得 点
図2β-EP値
の 分 布
示 す と お りで,入 院 し た 時 の 痛 み (以 下 入 院 時)と して 腹 部 ・腰 部 ・ 陰 部 の そ れ ぞ れ の 痛 み の 得 点 は,腹 部4.4,腰 部4.1,陰 部2.0。 い よ い よ 児 頭 が 娩 出 さ れ る時 の 痛 み(以 下 娩 出 時)は,腹 部7.5,腰 部6.4,陰 部7.1。 帰 室 した 時 の 痛 み(以 下 帰 室 時)は,腹 部3.1,腰 部2.9,陰 部 6.1で あ っ た 。 各 部 の 時 期 毎 の 合 計 (30点 満 点)で は,入 院 時10.5,娩 出 時21.0,帰 室 時12.1で,入 院 時 か ら帰 室 時 ま で の 痛 み の 総 得 点(90 点 満 点)で は,43.6で あ っ た 。 初 経 産 別 で 時 期 毎 の 計 を み る と,初 産 は 入 院 時10.6,娩 出 時20.7,帰 室 時11.6で,総 得 点42.9で あ っ た 。 経 産(1 ∼2回 経 産 含 む)は ,入 院 時1 0.3,娩 出 時21.6,帰 室 時13. 2,総 得 点45.1,と ほ と ん ど 差 は み ら れ な か っ た 。 2)各 時 期 の 学 歴 別 産 痛 得 点 :学 歴 を 中 学 卒 と高 校 お よ び 専 門 学 校 卒 業(以 下 高 校 ∼ 専 門 卒),短 期 大 学 か ら大 学 院 卒 業(以 下 短 大 ∼ 院 卒)の3 分 類 と し た 。 学 歴 別 は,図1の 通 り で あ ―73―っ た 。 時 期 毎 に み る と,中 学 卒 は 入 院 時21.3,娩 出 時28.8,帰 室 時21.0,総 得 点71.0。 高 校 ∼ 専 門 卒 で は,入 院 時12.4,娩 出 時21.5,帰 室 時13.8, 総 得 点48.7。 短 大 ∼ 院 卒 は,入 院 時8.4,娩 出 時2 0.4,帰 室 時10.7,総 得 点39.4で あ っ た 。 こ の 結 果,中 学 卒 の 群 が 入 院 当 初 よ り産 痛 を 強 く感 じて お り,娩 出 時 の 平 均 得 点 と 同 値 を 示 して い た 。 ま た,産 痛 を 強 度 に 感 じる 傾 向 は,娩 出 時, 帰 室 時 も 同 様 で あ り,娩 出 時 は最 高 の 痛 み とす る 10点 に 迫 る値 と な った 。 帰 室 時 の 陰 部 の 痛 み は, 娩 出 時 の 平 均 値 を 上 回 る高 値 を 示 し,入 院 か ら帰 室 ま で の 分 娩 第I期 か らIV期 ま で の 全 て の 時 期 に お い て,他 の 群 よ り も極 め て 強 度 に 産 痛 を感 じて い た 。 高 校 ∼ 専 門 卒,短 大 ∼ 院 卒 と高 学 歴 の 順 に 産 痛 得 点 は 低 く な る傾 向 を示 した 。 産 痛 と学 歴 と の 関 連 を み る と,入 院 時 の 産 痛 と 学 歴 の あ い だ で 関 連(x2=14.63,df=6,P<0.02) が 認 め ら れ,娩 出 時 の 産 痛 と の あ い だ で は,さ ら に 高 い 関 連(x2=17.90.df=6,P<0.006)が 認 め られ た 。 ま た,入 院 時 と娩 出 時 ま で の 産 痛 と 学 歴 (x2=20.39,df=6,P<0.002)お よ び 入 院 時 か ら 帰 室 時 ま で の 産 痛 と学 歴(x2=19.06,df=6,P<0. 004)に お い て も同 様 に 高 い 関 連 が み られ た 。 3)陣 痛 の 予 測 と実 際:陣 痛 は思 って い た と お り で あ った か を 時 期 別 に み る と,思 って い た と お り (以 下 は い)と 答 え た 人 は,入 院 時11.5,娩 出 時
図3子
宮 口 開 大 別 β-EP値
22.7,帰 室 時12.5,総 得 点46.7。 ど ち ら と も い え な い(以 下 ど ち ら と も)で は,入 院 時8,7,娩 出 時21.1,帰 室 時12.7,総 得 点42.5。 陣 痛 は 思 って い た と お り で は な か った(以 下 い い え)と 答 え た 人 は,入 院 時10.2,娩 出 時19.1,帰 室 時11.7,総 得 点41.0で あ った 。 2.β-EP値 1)β-EP値 の 分 布:β-EP値 の 分 布 は 図2の 通 り と な っ た 。 最 も多 い 割 合 を 占 め た の は,10-19pg/ mlま で の20.4%,つ い で30-39pg/mlの15.3%と な り, 3∼270pg/mlの 範 囲 に 分 布 して い た 。 2)子 宮 口 開 大 と β-EP値:子 宮 口 開 大 別 中 央 値 を 折 れ 線 で 現 し,25パ ーセンタイルお よ び75パー センタイルを 含 め 図3に 示 し た 。 中 央 値 は7cm開 大24.5pg/ml, 8cm31.0pg/ml,9cm43.0pg/ml,10cm66.0pg/m lと 開 大 と と も に β-EPは 高 値 を 示 し,子 宮 口 開 大 と β-EP値 と の 間 で 高 い 関 連(x2=24.01,df=9,P <0.004)が 認 め られ た 。 ま た,子 宮 口7お よ び 9cm開 大 時 に β-EP値 の 分 布 の 広 が りが み られ た 。 3)初 経 産 別 β-EP値:初 経 産 別 で は,初 産55.1p g /ml,1回 経 産47.5pg/ml,2回 経 産45.5pg/mlと 出 産 回 数 が 増 え る ご と に 減 少 傾 向 が 示 され た 。 3.産 痛 と β-EP値 1)入 院 時 か ら帰 室 時 ま で:入 院 時 か ら帰 室 時 ま で を 通 し て み た 産 痛 と β-EP値 の あ い だ で,有 意 差 は み られ な か った 。 2)子 宮 口 開 大 別:子 宮 口 開 大 別 に 産 痛 と β-EP値 を み る と,7∼8cm 開 大 群 で は 入 院 時 か ら娩 出 時 ま で の 産 痛 と β-EP値 と の 間 で,関 連(x2 =18.15,df=9,P<0.03)が 認 め ら れ た 。 しか し,9∼10cm開 大 群 で 同 様 に 関 連 を 求 め た が,有 意 差 は み ら れ な か っ た 。 3)陣 痛 の 予 測 と実 際:陣 痛 は 思 っ て い た と お り で あ っ た か の 解 答 別 β一 EP値 で は,は い と答 え た も の45.5pg /ml,ど ち ら と も46.2pg/ml,い い え 61.8pgmlと,陣 痛 が 予 測 と反 した 産 婦 の ほ うが 高 値 を 示 し た 。 ―74―ま た こ れ を 初 経 産 別 に み る と,初 産 で は い と答 え た 産 婦 は43.1pg/ml,ど ち ら と も47.1pg/ml,い い え68.0pg/mlと さ ら に は い と い い え の 群 で β-EP の差 が 開 い て い た 。 し か し,経 産(1∼2回 産 含) 別 で は,は い49.3pg/ml,ど ち ら と も39.5pg/ml, い い え42.6pg/mlと ほ と ん ど β-EPに 差 は認 め ら れ な か っ た 。 ま た 同 様 に,子 宮 口 開 大 度 別 に み る と7∼8cm 開 大 群 で は,は い39.5pg/ml,ど ち ら と も34.2pg/ ml,い い え37.1pg/mlと 差 が み られ な い の に た い し,9∼10cm開 大 群 で は,は い58.6pg/ml,ど ち ら と も66.1pg/ml,い い え73.7pg/mlと 開 大 が 進 ん だ 群 に そ の 差 が 顕 著 で あ っ た 。 IV.考 察 入 院 時で は,腹 部 ・腰 部 を中心 に中 等度 よ り弱 い痛 み を感 じて お り,ま た 陰部 の痛 み も軽度 で は あ るが 分娩 早期 よ り感 じて い る ことが 分か った 。 娩 出時 は,産 痛 得 点で 最 高 の痛 み を10と した こ とか ら考 え る と,各 部 の産痛 が6∼7点 で あ り予 想 に反 し低 い得 点 で あ った 。帰室 時 は,陰 部 に高 得点 が示 され,こ れ は娩 出 時 と同程 度 の痛 みで あ る ことが分 か った 。 ち なみ に この調 査対 象 で は, 98例 中(不 明1例)会 陰 切 開が加 え られた もの が 91名(92.9%)と,ほ とん どの産 婦 に会 陰切 開 が 施行 され てい た。 この分 娩 第IV期 は,分 娩 が終 了 し帰 室 で き る とい うホ ッとす る時期 で あ る。 この 時 に陰部 の痛 みが 娩 出時 の痛 み とほぼ 同 レベ ルの 痛 み と して知 覚 され る こ とは,分 娩 を 無事 な し遂 げた とい う安 堵 感 や児 と会 う事 の で きた喜 びっ ま りは分 娩 体験 の満 足度 を妨 げ る要 因 にな りかね な い と も伺 え る。 初経 産 別 に みた,産 痛 の総 得点 にお いて ほ とん ど差 が み られ なか った こ とや,経 産 は子 宮 復古 が 強 くな る こ とに よ る分 娩 第IV期 の腹 部 の痛 み は, まだ この時 期 に はみ られ ず 著明 な差 はみ られ なか った。 学 歴 に よ る,産 痛 の感 じ方 が高 学 歴 ほど低 い こ とか ら,林 ら3)の 研究 と同 様 であ り本 研究 で は そ の関連 性 が有 意 に高 い ことが認 め られ た。 この こ とは,産 婦 の援助 を行 う上 で 重要 な情 報 の 一 つ で はな いか と考 え る。 β一EP値は,藤 原 ら4)の行 った 自然分 娩 にお け る分 娩第I期 の値 と,本 研究 で も同様 の結 果 で あ った 。 また,分 娩 第I期 よ りIII期までの 間 で,分 娩進 行 とと もにβ-EP値 が上 昇 した とあ り,本 研 究 に おいて も分 娩第I期 の子 宮 口7cm以 上 の開 大 進行 と ともに分 泌量 が増 加 して い るこ とが 明 らか に され,同 様 の傾 向 が示 され た。 予 測 して いた とお りの陣痛 であ って も,産 痛 得 点が 高値 を示 した こ とと,β-EPの 分 泌量 が 初産 に高 く,陣 痛 が予 測 に反 して いた群 でそ の差 は顕 著 とな って いた こと。予 測 に反 して いた群 で も陣 痛 を経験 して い る経産 婦 よ り,陣 痛 が 未知 の体験 で あ った初産 の群 が は るか に高 値 を示 した こ と。 子宮 口開 大が 進 行す るに と もな い,予 測 に反 した 群 が最高 値で あ った こ とな ど これ らの結 果 か ら考 え あわ せ ると,陣 痛 が ど の程 度 の 痛 み と して知 覚 され るか は,さ ま ざまな要 因 が絡 ん で い る もの と 思 われ る。 しか し,陣 痛 が 予 測 に反 して い た と い う大 脳 か らの 指 令 によ り,下 垂 体 よ り和痛 効 果 を 高 め るたあ に,生 理 的 に反応 しβ-EPの 分 泌 が増 加 した とも考 え られ る。 さ らに分 泌 の増量 に よ り, 産痛 の知 覚 も和 らげ られ た と も推 測 され る。 以 上 の こ とか ら,産 痛 を 強 く感 じる傾 向 の因 子 と して学 歴が 関 与 して お り,こ の こ とが 単 な る学 習過 程 の問題 と して取上 げて よ い ものか,そ の環 境 や状況 をめ ぐる諸 因子 が 関 係 して い る もの か な ど詳 細 に分析 す る必 要 が あ る と考 え る。 ま た,陣 痛 が 初 めて の体 験 で あ る初産 婦 に と っ て陣 痛 が どの よ うな もので あ るか,実 際 との 相違 が少 しで も埋 め られ るよ うな援助 方 法 の工 夫 が必 須 で あ る。 今回 は,β-EP値 によ り産痛 との関 連 を と らえ, 主 観 的 な産 痛 とあわ せ検 討 したが,産 婦 が産 痛 か ら少 しで も開 放 され る よ う,今 後 さ らに過 去 の痛 みの 体験 や妊 娠 ・分 娩の受 容 との 関連 な どそ の他 複 合 す る諸因 子 を探 る必 要 が あ る と考 え る。 まだ例 数が 少 な いた め さ らに増 や し追 究 す る こ との必 要 を認 め て い る。 ―75―
V.ま とめ 1.娩 出時 の陰 部 の産 痛 得 点 と帰 室 時 の陰部 の得 点 とは,ほ ぼ 同様 に高 値 で あ った。 2.入 院 時 の産 痛 ・娩 出時 の産 痛 と学 歴 との間 で いず れ に も,高 い有意 差 が 認 め られ た。 3.子 宮 口開大 進 行 とと もにβ-EPは 高値 を示 し, また そ の間 に は高 い有 意 差 が み られ た。 4.子 宮 口7∼8cm開 大 群 で は,入 院 時 か ら娩 出 時 まで の産 痛得 点 とβ-EP値 との間 で,有 意差 が 認 め られた 。 5.β 一EP値は,陣 痛 が予 測 どお りで あ った群 と 反 して いた群 とで は,予測 に反 して いた群 に高 い 傾 向 が み られ た。 また予測 に反 す る群 の なか で も, 初経 産 別 で は初 産 婦,分 娩第I期 で は進行 して い る子 宮 口9∼10ccm開 大 群 に,β-EP値 が さ らに 高 い傾 向 を示 した 。 な お本 研究 は,横 浜 市地 域 研 究 費補 助金 の助 成 によ る もので あ る。 引 用 ・参 考 文 献 1)松 本 明 知,他4:β-endorphinに よ る無 痛 分 娩,麻 酔,10,1027,1980 2)水 島 繁 美:疼 痛 の 主 観 的 評 価,JOURAL OF C LINICAL REHABILITATION,1(5),402-405, 1992 3)林 智 子,深 川 ゆ か り:分 娩 第I期 の 陣 痛 評 価 と分 娩 の 満 足 度 と の か か わ り,母 性 衛 生,30 (3),357-363,1989 4)藤 原 篤,他2:自 然 分 娩,無 痛 分 娩,帝 王 切 開 分 娩 に お け る β-Endorphin,ACTH,pro-lactin,cortisol動 態 に 関 す る 研 究,産 婦 人 科 治 療,51(2),235,1985 ―76―