Ⅰ.新学習指導要領と「言語活動の充実」
1.平成 10 年版学習指導要領とは 平成 10 年版学習指導要領は,平成 8 年 8 月に当時の 文部大臣から教育課程審議会に対して諮問が諮られ, 10 年 7 月に出された答申に基づき,完全学校週 5 日制 のもと,「ゆとり」ある中で「特色ある教育」を展開 し,「生きる力」を身に付けさせることを基本的なね らいとしてつくられた。この「生きる力」とは,簡単 に言えば,「知・徳・体」をバランスよく身に付けさ せようというものである。そしてここで用いられた 「ゆとり」という言葉は,知識偏重・知識の詰め込み に対する「ゆとり」という意味であり,知識として教 えるべきことは徹底して教えたうえで,その知識を活 用して,課題を探究させるということにも時間を十分 にかけるということであった。さらに過去数回の学習 指導要領の改訂においては,「詰め込みからゆとり」 という流れもと,「精選」から「厳選」へといわれて きた。しかしその結果,授業時間数は減少し,教科書 は薄くなって教科書らしくなくなったといわれるよう になった。 そのような中で,学力低下論争が起こった。当初は データの裏付けによらないような意見もあったが, 2003 年に実施された「PISA/TIMSS」の結果が明ら かになり,いくつかの分野において国際比較調査の順 位が下がったると,順位が下がったということだけが 注目され,これが学力低下論と結びつき,学習指導要 領などに対する不満が高まった。 このような中で中央教育審議会に対して新学習指導 要領について平成 17 年 2 月に諮問が諮られ,3 年後の 平成20年1月に中央教育審議会から出された「幼稚園, 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指 導要領などの改善について」(以下答申)が公表され た。 今回の答申作成に当たって中央教育審議会の初等中 等教育分科会教育課程部会では,まず最初に子どもた ちの現状と課題について議論が行われた。そのなかで, 現行の学習指導要領の実施状況などを分析するととも に,社会全体や家庭・地域の変化などについてもあわ せて検討された。その結果,基礎基本となる知識や技 能については,その内容などが身に付いている状況が 見られたが,一方で習得した知識や概念などに基づい て考察したり課題を探究することには課題が見られた。 また体力や生活状況,さらには心の面などについても 課題が見られた(例えば自尊感情を肯定的に持つ子供 が減少しているなど)。 しかし,その一方でこれからの社会を考えたとき, 現行の学習指導要領が求めている「生きる力」の重要 性は再確認された。そこで,今後も「生きる力」の育 成について,その理念は引き継ぐものの,そのための 手立てが必ずしも十分ではなかったとして,新学習指 導要領改訂の基本的な考え方が示された。また今回の 答申作成にあたっては,約 60 年ぶりに改正された教 育基本法などを踏まえて行われている。 さて,今回の答申の中で 1 丁目 1 番地ともいわれて いるのが「言語活動の充実」である。これは学校教育 法第 30 条②に新学習指導要領と経済教育
Economic EducationThe Journal ofNo.31, September, 2012
Economic Education in the New Course of Study
Okura, Yasuhiro 大倉 泰裕(千葉県立松戸向陽高等学校) 表 1 生徒の学習到達度(PISA)2003 年調査 OECD 実施 平均得点の国際比較(40 カ国・地域が参加) 活用能力 前回順位 今回順位 数学的 活用能力 前回 1 位 1 位グループ / 香港,フィンランド,韓国,オランダ,リヒテ ンシュタイン,日本 読解力 前回 8 位 OECD 平均と同程度(14 位) 科学的 活用能力 前回 2 位 1 位グループ / フィンランド,日本,香港,韓国 問題解決 能力 今回から 1 位グループ / 韓国,香港,フィンランド,日本
前項の場合においては,生涯にわたり学習する 基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習 得させるとともに,これらを活用して課題を解決 するために必要な思考力,判断力,表現力その他 の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度 を養うことに,特に意を用いなければならない。 とあるように,学力を①基礎的・基本的な知識や技能 の習得,②思考力・判断力・表現力等の育成,③学習 に対する関心・意欲・態度とみたときに,とくに②の 思考力・判断力・表現力等の育成が十分ではないとい うことに起因している。これらは,国立教育政策研究 所が実施した「教育課程実施状況調査」,「特定の課題 に関する調査」,さらには「PISA/TIMSS」などの国 際的な学力調査の結果から判明したことである。 一般に思考力・判断力・表現力などは,通常は言語 を介して行われる活動である。言語は,コミュニケー ションの道具であるばかりでなく,思考をする際の ツールでもある。そこで,これらの力を身に付けさせ るために,言語を用いた活動を重視すべきであるとい うことである。 しかしここで留意しなければならないことは,単に 話せばいい,何でもいいから喋ればいいということで はない。思考力・判断力・表現力などを身に付けさせ るのであれば,各教科・科目における思考や判断,表 現とは何かということを明らかにした上で,そのねら いに沿って考えさせる,判断させる,相手に分かりや すく表現させるということであり,その過程において 言語を用いるということである(直感で考えたり判断 させたりするのではないということである)。思考・ 判断・表現は一般に言語を用いた活動であるから「言 語活動の充実」というのである。すなわち思考力・判 断力・表現力等を身に付けさせることが目的であって, その手段として言語を用いた活動をするということで ある。したがって,言語だからといって国語科だけの 問題ではない。国語科と外国語科だけの問題でもない。 どの教科においても思考・判断・表現する力などが求 められるわけだから各教科等において,教科の目標を 踏まえてこれらの力をはぐくむ指導に取り組まなけれ ばならないのである。 そして,それらの指導をする場面を示したのが, 「習得・活用・探究」である。これは,基礎的・基本 的な知識や技能はしっかりと習得させなければならな い。もちろん覚えさせることもあれば,考えさせて身 に付けさせることもあるが,身に付けさせるべき知識 や概念,技能などはしっかりと身に付けさせるという ことがまず重要である。これが習得である。その上で 身に付けた知識や概念,技能などをもとに課題につい て考察したり判断したりする,そしてその結果をその 過程も含めて相手にわかりやすく表現し,さらにより よいものへと進めていく,その課題を考察したり探究 したりする場面として,活用や探究という指導場面を 設けることを教科指導などの中で位置づけることを求 めているものである。 「自分に自信がある」と答えた小・中学生:48.4%(平成11年)→38.5%(平成19年)に低下 「勉強や進学のこと」に悩みや心配事があると答えた小・中学生:46.7%(平成7年) →61.2%(平成19年)に増加 【平成19年2月】 【平成11年9月】 あてはまる あてはまる あてはまらない あてはまらない あまりあてはまらない あまりあてはまらない わからない まああてはまる まああてはまる 8.7 29.8 40.2 21.3 12.5 35.9 36.6 11.9 3.2 出典:「低年齢少年の生活と意識に関する調査報告書」(平成19年2月)内閣府 出典:「低年齢少年の生活と意識に関する調査報告書」(平成19年2月)内閣府 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 勉強や 進学のこと 悩みや心配 はない 平成19年2月調査 平成7年11月調査 (%) 46.7 61.2 29.1 43.7 図 1 子どもの心と体の状況
もちろん現実の指導においては,習得と活用が繰り 返されることが多いだろうし,習得と活用を明確に分 けることができないこともあるだろう。さらに探究は 学習の最後の場面(単元の終わりや,科目の最後)で の場面を想定していることが多いから,探究が頻繁に 行われることにはならない。また考察の結果得られた 知見は知識となるわけだから,「習得・活用・探究」 が一方通行で終わるものでもない。また,指導場面を 習得か活用かと厳密に分けることもできないし,その ようなことは意味がない。ここで必要なことは,とに かく知識の注入(暗記中心の授業)をすればいいとい うのではなく,習得した知識や技能をもとに考察した り表現することによって課題を解決する能力も身に付 けることが大切であり,そのような指導をしなければ ならないということである。したがって「言語活動の 充実」と「習得・活用・探究」については切り離して 考えることではなく,一体感をもって考えていかなけ ればならいものである。 またこれ以外に今回の答申で指摘されたこととして は, ・理数教育の充実 ・伝統や文化に関する教育の充実 ・道徳教育の充実 ・体験活動の充実 ・小学校段階における外国語活動 があげられる。さらに社会の変化への対応の観点から 教科等を横断して改善すべき事項として ・情報教育 ・環境教育 ・ものづくり ・キャリア教育 ・食育 ・安全教育 ・心身の成長発達についての正しい理解 が答申において指摘されたところである。
Ⅱ.新学習指導要領における社会科・公民
科の改訂について
今回社会科・公民科の改訂をみるときに踏まえてお かなければならないことが,改正された教育基本法の 第 2 条である。 (教育の目標) 第二条 教育は,その目的を実現するため,学問 の自由を尊重しつつ,次に掲げる目標を達成する よう行われるものとする。 一 幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める 態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うととも に,健やかな身体を養うこと。 二 個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし, 創造性を培い,自主及び自律の精神を養うとと もに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を 重んずる態度を養うこと。 三 正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力 を重んずるとともに,公共の精神に基づき,主 体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与す る態度を養うこと。 四 生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に 寄与する態度を養うこと。 五 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんでき た我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重 し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養 うこと。 教育基本法第 1 条においては教育の目的が規定され ている。これについては旧教育基本法と何ら変わると ころはない。すなわち,教育の目的は,人格の完成を 目指すことと,平和で民主的な国家・社会の形成者の 育成である。これは日本国憲法の下では普遍的な目的 であるといって差し支えないであろう。そして今回の 改訂においてはさらに第 2 条が新たに設けられ,第 1 条の目的を達成するためにはどのようなことをすべき なのか,その手立てについての規定がなされている。 すなわち第 1 条と第 2 条は目的と手段との関係である と言えよう。このことを踏まえたうえで,今回の答申 で社会科・地理歴史科・公民科に対して指摘されたこ とについてみていく必要がある。今回答申では, ○ 社会科,地理歴史科,公民科においては,そ の課題を踏まえ,小学校,中学校及び高等学校 を通じて,社会的事象に関心をもって多面的・ 多角的に考察し,公正に判断する能力と態度を 養い,社会的な見方や考え方を成長させること を一層重視する方向で改善を図る。 ○ 社会的事象に関する基礎的・基本的な知識, 概念や技能を確実に習得させ,それらを活用す る力や課題を探究する力を育成する観点から, 各学校段階の特質に応じて,習得すべき知識, 概念の明確化を図るとともに,コンピュータな ども活用しながら,地図や統計など各種の資料から必要な情報を集めて読み取ること,社会的 事象の意味,意義を解釈すること,事象の特色 や事象間の関連を説明すること,自分の考えを 論述することを一層重視する方向で改善を図る。 ○ 我が国及び世界の成り立ちや地域構成,今日 の社会経済システム,様々な伝統や文化,宗教 についての理解を通して,我が国の国土や歴史 に対する愛情をはぐくみ,日本人としての自覚 をもって国際社会で主体的に生きるとともに, 持続可能な社会の実現を目指すなど,公共的な 事柄に自ら参画していく資質や能力を育成する ことを重視する方向で改善を図る。 ここで特に注目しなければならないことは 3 つめの 項目である。このうち「様々な伝統や文化,宗教につ いての理解」については,グローバル化の進展により, 今まで以上に異文化の理解とその前提ともいうべき自 らの文化や,宗教に対する理解の重要性が高まってい ることをまずおさえておきたい。また「持続可能な社 会の実現を目指す」については,地球環境問題をはじ めとして 20 世紀にはなかったさまざまな解決するこ とが困難な課題に直面していること,さらに「公共的 な事柄に自ら参画していく資質や能力を育成すること を重視する方向で改善を図る」については,その直面 している解決困難な課題に対して,これから生きてい く子どもたちはこの課題を乗り越えていく力を身に付 けさせなければならないことを示したものといえる。 これらを受けて,中学校社会科公民的分野では, 「文化の役割を理解させる学習,ルールや通貨の役割 などを通して,政治,経済についての見方や考え方の 基礎を一層養う学習」ことなどが,高等学校「現代社 会」については「倫理,社会,文化,政治,法,経済 にかかわる現代社会の諸課題を取り上げて,人間とし ての在り方生き方についての学習や,議論などを通し て自分の考えをまとめたり,説明したり,論述したり するなど課題追究的な学習」が,「政治・経済」では 「グローバル化や規制緩和の進展,司法の役割の増大 などに対応して,法や金融などに関する内容の充実を 図る」ことが求められた。 そしてこれらの指導を通して,社会科,公民科の教 科の目標である「平和で民主的な国家・社会の有為な 形成者として必要な公民としての資質を養う」のであ る。これは教育基本法第 2 条 3 に規定された「主体的 に社会に参画すること」と軌を一にしていると言えよ う。 また今回の社会科公民的分野,公民科の改訂におい ては,今回の学習指導要領改訂における大きな特徴で ある言語活動の充実を図り,思考力・判断力・表現力 等を身に付けさせるためにも,学習の最後の段階にお いて「持続可能な社会の形成」を踏まえて課題を探究 する場面を設けるようにした。これは当然「主体的に 社会に参画すること」とも深く関連している。 なお,「持続可能な社会の形成」については,平成 18 年 3 月 30 日付で「国連持続可能な開発のための教 育のための 10 年」関係省庁連絡会議から発表された 『わが国における「国連持続可能な開発のための教育 の 10 年」実施計画』を参照されたい。
Ⅲ.新学習指導要領と経済に関する学習に
ついて
今回の改訂において,経済に関する学習内容では, 今まで以上に仕組みやはたらきということに重点を置 き,経済的分野の学習における基礎・基本となる内容 についての理解を深めることを求めている点にある (このことは政治についても同様である)。それは制度 や名称を覚える学習ではなく,なぜそのような制度や 仕組みがあるのかという学習を行うことを通して「見 方や考え方」を身に付けさせることを求めているから である。 この「見方や考え方」という言葉は学習指導要領に おいては,以前から用いられているものである。たと えば,「いわゆる一票の格差の問題」のような政治に 関する学習内容を説明するのであれば,単に現象を説 明して,どこの選挙区が「一票の重さ」が軽くて,ど この選挙区が「一票の重さ」が重いのか,その比率は いくつなのか,ということを教えて覚えさせることが この学習におけるねらいとはならない。このような現 象を説明するときに,「国民主権」や「基本的人権の 尊重」,あるいは「参政権」といった概念を用いて, なぜ「一票の格差」が民主主義社会ににおいて問題と なるのかということを理解させることが求められるの であり,「その問題の本質は何か,何が問題となって いるのか」ということをとらえるときの概念と説明す ると比較的分かりやすい。この「見方や考え方」は政 治に関する学習では比較的わかりやすいのであるが, 経済に関する学習ではそれが生徒にとっても指導する 側にとってもなかなか分かりにくいわかりにくいと思 われる状況が見られる。その結果としてどうしても事 実や知識を指導するという学習に陥りやすいように思 われる。しかし社会的事象の本質をとらえ,よりよく理解するためにはこの「見方や考え方」を身に付けさ せる指導が必要であり,そのためには経済に関する学 習における「見方や考え方」とは何か,ということを 踏まえた指導が求められる。 また社会の変化に対応した部分としては,「金融の 自由化,労働法制の弾力化など社会経済の各分野での 規制緩和や司法制度改革などの制度改革」(答申より) のなかで,法に関する教育や金融に関する教育の充実 が求められたことに対応して,法の意義,契約,金融, 消費者の保護などについての指導の充実が求められて いる。 これらの指導において留意しなければならないこと としては,制度や法制面についての細かなことを指導 することではないということである。 たとえば「金融」では,金融の仕組みやはたらき, すなわち,なぜ金融があるのか,金融によって経済活 動はなぜスムーズに行われることができるようになる のか,などということについての理解を深めさせるこ とがまず求められている。その際,金融の自由化など を踏まえつつ,直接金融や間接金融についてそれぞれ どのようなものであるのか,なぜ異なる仕組みがある のか,それぞれどのようなメリットやデメリットがあ るのかということを理解させるなどの指導が求められ る。これは直接金融が金融機関としてはどのようなも のがあるとか,間接金融としてはどのような金融機関 があるという話ではない。それぞれが果たしている役 割,さらに近年ではその境界が曖昧になってきている ことなども踏まえながら,それぞれの基本的な役割を おさえることが大切である。さらに,グローバル化の 進展により今日の金融制度や仕組みはどのように変化 してきているのか,さらに金融政策はどのように変 わってきているのかなどについて扱うことを求めてい るのであって,従前のような授業をさらに細かく制度 や政策について指導するということではない。 また「契約」については,まず法の意義を理解させ, さらに今までは日本国憲法中心であった指導に対して, 私法の考え方などについても,契約を通して理解させ ることをねらいとしている。そしてここまではどちら かといえば法教育の側面が強いが,経済教育の視点か らは,契約は経済活動を成り立たせる上で必要不可欠 なものであること,契約を結ぶことによって経済活動 が社会全体から見ても,また契約を結んだ当事者双方 にとって,契約がないときと比べて格段に望ましい状 況,すなわち経済活動が活発に行われそれが双方に とって利益となっていることを理解させることが大切 である。 しかし,ここで「契約」を指導する際に社会科・公 民科として配慮しなければならないことは,「契約」 について「法の面から指導をしました」,「経済の面か ら指導をしました」ということではない。 社会においては法と経済が別個,無関係に存在して いるわけではない。この社会が合理的,効率的に運営 されていくために経済の仕組みがあり,法があるので あって,これらは別個に独立していて,無関係な存在 ではない。学問としてはそれぞれ独立し,固有の学問 対象があるのであるが,社会科・公民科としては,そ の教科目標からみて,経済や法を学問として教えるの ではなく(もちろん学問的な裏付けは必要であるが) この社会において契約はなぜあるのか,なぜ契約を守 ることが社会全体にとって,また自分にとって重要な のかということを法や経済の面から指導して,契約の 持つ意味について考えさせることが,ひいては契約を 守る重要性を理解させることにそのねらいがあること を忘れてはならない。 契約の指導に限らず,このようにものごとを見るこ とは,中学校社会学習指導要領解説の中では,「多面 的多角的」という言葉で表現されている。この言葉は よく地理的分野などで用いられているが,公民的分野 であっても同様である。公民的分野は,昭和 30 年代 は「政経社」といって,政治的分野・経済的分野・社 会的分野の内容を合わせたものであり,分野としての まとまりがなく,また各分野の関連性が弱かったため, 昭和 45 年版学習指導要領で公民的分野として編成さ れたが,その後「政経社」が相互の関連性もちながら 指導されにくい状況が見られてきた。しかしものごと にはいろいろな側面があり,社会科としてはそれらを 総合的にとらえなければならないのであるから,各学 問的な内容に根拠をもちながら,公民として必要な知 識や態度を身に付けさせることに重点を置いた指導を しなければならないのである。 消費者の保護に関わる指導については,消費者基本 法が平成 16 年に制定されたことを受けて,この項目 は従前は消費者の保護については消費者保護行政が中 心であったが,今回の改訂では,消費者の自立の支援 などとの関連,すなわち契約における消費者としての 権利と義務,さらには多重債務問題などにも触れるこ となどが求められることとなり,契約と権利・義務と の関係なども含めて指導することが求められることと なった。