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組織と組織的意思決定過程--意思決定過程論における組織把握の構想を巡って---香川大学学術情報リポジトリ

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組織と組織的意思決定過程

一一意思決定過程論における組織把握の構想を巡って一一

渡 辺 敏 雄

I 序 ウェルナー・キルシコ (WernerKirsch)は, 1970年 か ら 1971年 に か け て 公 刊 し た 『 意 思 決 定 過 程 』 全

3

巻 の う ち 特 に 第

3

巻 に お い て , 既 に 特 定 の 組 織 観 を 提 示 し , そ の 組 織 を 場 に す る 意 思 決 定 過 程 の 特 質 を 論 じ て い る 。 か れ が 組 織 を ど の よ う に 見 て い る の か , あ る い は 簡 単 に 表 現 す れ ば か れ の 組 織 把 握 の 構 想 は , 後 々 の か れ の 提 唱 す る こ と に な る 管 理 論 と し て の 経 営 経 済 学 の 内 容 に も 関 係 す る 。 つ ま り , そ こ に は , か れ の 管 理 論 と し て の 経 営 経 済 学 の 特 質 の 淵 源 が 見 ら れ る の で は な い か と 考 え ら れ る の で あ る 。 Cl) w意思決定過程』の各巻の標題は次のとおりである。 W Kirsch, Ents正heidungstrozess.e,Band 1 Verhaltenswissenschaftliche Ans.atze der Enお正heidungstheorie,Wiesbaden 1970 W Kirsch, Entscheidu四gstrozesse,Band Il lnfo円nationsverarbeitungstheoriedes Enおじheidungverhaltens,W iesbaden 1971 W Kirsch, Ents正heidungs戸roz.esse,Band III Ents正heidungenznOrganisationen, Wiesbaden 1971 ( 2 ) キノレシュの『意思決定過程』に関してはフロームによる次の書評ーがある。

Hans Blohm, (Buchbesprechung), Werner Kirsch, Entscheidungsprozesse, 3 Ban -de, Dr.Th Gabler Verlag, Wiesbaden 1970 und 1971 , in: ZfB, 1971, 55 893-895

この他にもマーク (Wolfgang Mag)による書評 (BFuP.,23Jg., 1971, 55.728-731)も 見られる。 ( 3 ) キノレシュの経営経済学説に関しては,既にわれわれによる次の論稿がある。 渡辺敏雄(稿), ドイアにおける意志決定志向的組織論に関する一考察,一橋研究 第 5巻第 2号(通巻 48号),昭和 55年9月。 渡辺敏雄(稿),管理論としての経営経済学に関する考究(l)-一一ウェノレナー・キノレシュ の見解を中心に一一,香川大学経済論叢 第59巻第 1号,昭和 61年6月。 渡辺敏雄(稿),管理論としての経営経済学に関する考究(2・完〉一一ーウエノレナー・

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-166- 第61巻 第 3号 496 われわれは,キルシュの『意思決定過程』第

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巻の内容は,大まかには次の ように分類されると考えている。 第1部分は,組織の規定の部分である。第2部分は,組織あるいはキルシュ が考察の対象としている情報意思決定システムにおける意思決定過程の特質に 関する部分である。第3部分は,組織における目標形成に関する部分である。 第

4

部分は,組織構成員の意思決定前提の発生に関する部分である。 われわれは,本稿では意思決定過程』第3巻の特に第 l部分と第2部分を 中心にしながら,そこに見られる組織の特質と組織における意思決定過程の特 質を描きだすことに努めたい。なぜなら,それらの

2

つの部分に,キルシュの 組織把握の構想が表現されているからである。 われわれの見解では,それらの 2つの部分には,組織把握の単一の構想が現 れているというより 2つの別個の構想が現れているのである。すなわち,それ らの

2

つの部分のうち,第

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部分にはシステム論的な構想が現れ,第

2

部分に は意思決定志向的な構想が現れていると解されるのである。 こうした異なる 2つの構想の究明を通じてキルシュの組織把握の特徴を探る ことが,本稿におけるわれわれの目的である。 II 組織の特質 キルシュは,第

3

巻の論述の開始直後に,-人間の意思決定過程を考察の中心 に置き,当初はシステム論的範時とは関係なく定式化された組織理論に対して も,システム構想、は概念的枠組

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の研究を指し示 すが,その引用文に明らかなことは,かれがシステム論を思考の準拠枠として キノレシュの見解を中心に一一,香川大学経済論叢 第59巻第 2号,昭和 61年 9月。 渡辺敏雄(稿),意思決定過程論における組織目標の意味,香川大学経済論叢 第60巻 第4号,昭和 63年3月。 (4) 本 稿 で は わ れ わ れ は 意 思 決 定 過 程 』 第3巻を ,EIlIと略記しよう。

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497 組織と組織的意思決定過程 -167 取り入れようとしていることである。このことを確認しておき,われわれはキ ルシュによる組織の規定を見ょう。 キルシュは,組織を目標志向的,開放的,社会技術的システム (zielgerich -tetes, offenes, sozio-technisches System)として規定するのである (EIII, S 26)。以下において,われわれは,これらの特質に関するかれの論述を跡付け よう。 まず,組織が社会技術的システムであるという特質付けについて,キルシュ は,組織が行動システム (Verhaltenssystem)であるということから説き起こす (EIII, SS.. 27 -30)。まずシステムとは,なんらかの観点から区別され,関係の網 の自によって相互に結び付けられている要素(Element)から成る。組織はシス テムのうちでも行動システムである。システムの要素が,インプットをアウト プットに転換するという意味において行動する活動的要素(aktiverElement) である時,システムは行動システムである (EIII,S..27)。そして,それらの活動 的要素は,ある要素のアウトプットがまた別の要素のインプットになっている という形において連結(Kopplung)している。この連結がある故に,組織には, 経路の機能を担う要素も存在することになる。 さて,組織は,通常,人間(Mensch)と機械 (Maschine)を活動的要素として 含むので,社会技術的システムとして把握されなければならなし、。このように 組織には人間のみではなく,機械も含まれるということから,組織は社会的側 面によって影響されるのみではなく,組織においては技術的問題が重要な役割 を果たすこととなるのである。こうしてキルシュは組織の規定の部分では機械 という要素とそれと関連した技術的問題の重要性を強調しているのである。 次に,組織が開放的システムであるという特質付けについてキルシュは論じ ( 5 ) システム論的構想を取り入れるにあたってキノレシュ学説に影響を与えたと考えられる 研究者は,システム志向的経営経済学(systemorientierteBetriebswirtschaftslehre)の 提唱者ハンス・ウノレリッヒ (HansUlrich)である。この点、に関して,キルシュには, ウノレ リグヒの名前を冠した次のような論稿もある。

W Kirsch, Edmund Heinen und Hans Ulrich-Zur Verleihung der Wurde eines Doktors der Wirtschaftswissenschaften ehrenhalber durch die Universitat Zurich一,

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168- 61巻 第3号 498 る(EIII,SS 30-32)。組織の境界を定めることはそのときそのときの研究目的 によるとしつつも,かれは,組織の境界に関して文献で一般に言われているこ とを参照する。開放的であるということは,システム内の要素がシステム外部 の要素と物的・エネルギ一的(伶stωof白印flich トト匂-吃-ma討tionellり)に連結 Lし,ていることをいうが,ここに,システムの境界は,システム 内部の相互作用が,システム内部とシステム外部の相互作用よりも頻度が高い ように設定される。「環境との連結の数を相応のシステム画定によって出来るだ け少なく保つことによって,人々は開放システムを出来るだけ閉鎖的にしよう と試みる。J(EIII, SS.. 30-3L) すなわち,この引用文には,システムが開放的であることによって,外部の 要素から,システム内部に,妨害(Storung)が入ってくることが示されているの である。システムが,外部と物的・エネルギ一的にかつ情報的に,あるいはそ れらのいずれかのやり方において結び付いているのは,一方において,システ ムの生存に不可欠なことであるとともに,他方において,システムの生存を脅 かす要因にもなっている。システム外部から妨害がシステムに向かつて入って くるということは,システムに,その妨害を補償してシステムを破壊されない ように保つ機構がある事を要請する。このような機構こそ,フィードパックな のであるが,われわれはフィードバ yクに関しては後々に触れよう。 組織とその環境とは,形式的には,上記のように画定されるのであるが,そ れでは,人間に関して組織の内部の要素とはどの範囲までの人々をいうのか。 このことについては,組織の参加者 (Teilnehmer)と組織の構成員(Mitglieder) とが区別される形で論じられ,そのうち組織の参加者とは,組織に対して貢献 をして,組織から誘因を受け取る人全てをいうのに対して,組織の構成員は, 意識的で,法秩序によって制裁が加えられる参加意思決定を行い,組織内にお いて公式的な役割(formalleRolle)を果たす人々をいう。そして,キルシュは, 組織の画定に関しては,組織の構成員までを組織内部の要素とし,組織の参加 者のうちで構成員にあたる部分を除いた要素を,環境の要素に含む。 環境は, 3つの層(Schicht)から成る。第1の層は,直ぐ上で‘触れた構成員以

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499 組織と組織的意思決定過程 -169-外の参加者であり,かれらと組織の聞には,比較的に継続的な関係が存在する のである。組織の環境の第2の層は,潜在的参加者 (potentiellerTeilnehmer) である。かれらは,通常,組織とは関係を持たないか,あるいはときたま,し かも自発的ではない関係を持つ。かれらは,かれらの個人的要求,価値,能力 に基づいて組織と貢献と誘因の関係でh結ばれる可能性をもっ限りにおいて r潜 在的」参加者なのである。企業の広告はしばしば,潜在的参加者を事実上の参 加者にするように,かれらに働きかける。ここまでの,組織の構成員と潜在的 参 加 者 は , 組 織 の 課 業 環 境(Aufgabenumwelt;task environment)と言われ る。組織の環境からこれらの組織の構成員と潜在的参加者を除いた部分は,残 余環境(restlicheUmwelt)と言われ,それは広範な公衆(Offent1ichkeit)を表 す(EIII,S 32)

こうして,組織と環境の画定は,組織の構成員であるかどうかによって行わ れ, さらに,組織の環境は

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層に区別されて考えられている。 組 織 の 規 定 の う ち 最 後 の も の は , 目 標 志 向 的 で あ る と い う 特 質 付 け で あ る (EIII, SS. 32-36)。キルシュは,組織が目標志向的であるという組織の特質に関 する論述のなかで組織の目標志向性とならんで,組織は安定性(Stabilitat)をも つことをあげている。ここに組織が目標志向的であるということとならんであ げられた組織の安定性は,組織の目標志向性とどのような関連にあるのかとい う問題が発生しうるのである。組織の目標志向性に関するかれの見解を以下に 掲げよう。 キルシュは組織の目標志向性を説き起こすに当たって,システム論の組織目 標から出発する。サイバネテイグクスに影響されたシステム論においては,組 織 目 標 は 一 般 に シ ス テ ム の 均 衡 状 態(Gleichgewichtszustand)の維持である。 システムが,外部からの妨害にもかかわらず,均衡状態を維持している場合には システムは安定性をもっと言う。複数のシステム変数が許容される(zulassig) 範囲内にあることが安定性をもつことの意味であり r重要な変数の許容される 数値がシステム均衡を定義し,それ故,その数値は『組織目標』として解釈さ れうる。J(EIII, SS. 33)この重要な変数の許容される数値は,生存の機能的要

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-170ー 61巻 第3 500 求(funktionalesErfordernis des Uberleben)とも言われる (EIII,S..34)。そし て,この重要な変数の許容される数値は,組織参加者の外部に存在し,システ ムを観察することによって把握できると考えられていて, この限りでは,それ らは組織参加者の価値や目標にかかわりを持たないのである。 システム論の組織観によれば,制御器(Regler)が存在し,制御対象(Regel -strecke)の現状を当為と比較しつつ,それらの聞に議離が存在するのならば,修 正処置をもって介入するフィートFバッグがなされ,システムの安定性が維持さ れる。この場合には,制御器の当為値としての管理値(Fuhrungsgrose)が上記 のシステムの重要な変数の許容される数値に相当する。ここで,制御器がとり わけ人間であることを考えるならば,組織目標は,重要な変数の許容される数 値として人間の外部に存在するのみならず,人間の内部にもそれに匹敵するも のが存在することになる。 要するに,システム論的な考え方によれば,組織目標とは,組織にとって重 要な変数に関して,それらの個々の変数が実際にとる値が許容値内部に収まっ ている状態,あるし、はこの意味における安定性の維持なのである。そして,こ の組織目標は,個人の認知的過程外部に存在するものなのであって,個人は組 織内部でこの意味の組織目標を管理値として受取り,かれらの行動の前提とし て行く可能性を持っている。但し,もちろん,上記にも触れたように,個人の 外部に存在する組織目標が,まったく個人の意思決定の価値前提と一致すると いう保証はなし、。すなわち,個人の意思決定前提は,組織目標から話離する可 能性を持っているのである。 しかし, - s紹介した組織目標のシステム論的な使い方をキルシュは次のよ うに否定する (EIII,SS.35-36)。その際,かれの見解によるならば,組織目標の システム論的な使い方の否定にも 2つの方向がある。 第

1

に,組織の重要な変数の許容される数値としてのシステム要求は,実り 多くないので,システム論的構想を拒否するという方向がある。実際,組織の 重要な変数の許容される数値としてのシステム要求の目録(Katalog)を,論じ る著者の間で無矛盾な形で示すことはうまくいっていなし、。更に,組織の重要

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501 組織と組織的意思決定過程 171ー な変数の許容される数値としてのシステム要求の維持を組織目標にすることの 背後にある均衡の概念が強調されることによって,すべての組織に存在する葛 藤とそれと結び付いた組織的革新の問題を十分に把握することができない,と 論難されている。この第1の否定の仕方は,均衡状態とシステム要求の構想、を 否定し捨てようとしていることとなる。 第2に,均衡状態とシステム要求の構想、を否定す"ることなく,システム論的 な組織目標の考え方から議離する方向がある。この方向においては,組織の重 要な変数の許容される数値としてのシステム要求の維持を組織目標として位置 付けることはせず,組織目標を他の意味で使う。キノレシュは, こちらの方向の 否定を採用し,組織における個人的意思決定過程ならびに集合的意思決定過程 から出発する組織論に思考を集中し, こうした組織論の内容と一貫的に,組織 が目標志向的であるという意味について次のように規定する。「組織に参加した 個人の意思決定の基礎に一一他の事実的種類ならびに規定的種類の意思決定前 提と一緒に 組織の行動を支配する意思決定前提としての目標観念が存在す る限りで,組織は目標志向的である。J(EIII, S.. 36) こうした議論からわれわれは次のようなことを理解できる。まず,組織の重 要な変数の許容される数値としてのシステム要求の維持を組織目標として位置 付けることはせず,組織目標の他の意味の使用法として,組織構成員の意思決 定の基礎に目標観念があるということが言われたが,このことはあくまで,組 織目標の規定ではなくて, 目標志向的であるということの規定なのである。 キルシュは,組織目標を他の意味で使うときりだしたものの,結局,かれは 決して真正面からはその意味を画定することなく終わっている。キノレシュの行 論からは,第lに,組織目標は何かとしづ根本問題が残存することとなる。ま た,第2に,システム要求の構想、と均衡観が,組織目標とは切り離されたまま で,特に何として位置付けられることもなくかれの学説に残存しているという ことがわかる。 こうしたことを見る限りでは,組織目標が,就中システム要求と切り離すと いうかれの意図を実現しつつどのような形で展開されるのか, とし、う問題と,

(8)

-172- 第61巻 第3号 502 組織目標の内容規定には貢献しないような形で取り入れられたシステム論の内 容がキルシュの学説に対してどのような影響を与えているのか,という問題が, ここで確認されうるのである。 III 組織の構成 われわれは,次に,キルシュの考える組織がどのような部分から構成されて いるのかということを見ておきたいが,このことに関するかれの見解を跡付け る過程で,かれの見解に導入されてくるシステム的特質としての

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つの安定性 概念について触れざるを得ない。 まず上記のような特質を持つ組織には,構造(Struktur)がある。組織の構造 とは「あるシステムにおいて相対的に不変であるものすべてJ

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なの であり,それは,過程の経過における不変の形と規則性ならびに活動的要素あ るいはなんらかの原材料,エネルギー,情報の長期にわたる不変の存在を含ん でいる (E

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。 この構造概念を基礎に置きながら,キルシュは組織の超安定性の概念を導入 することとなる。それは次のように定義されるのである。 組織は, (1)環境からの特定の集合の妨害に対して均衡状態を維持する補償的 フィード、パックの能力を持ち合わせ,かっ(2)システムの元の均衡状態に戻れな いような形で,安定性領域からシステムを押し出してしまう妨害があらわれた ときには,システムはその構造を飛躍的に変化させることによって,変化した 環境に適応することができる場合には,組織は超安定的(ultrastabil)であると いう (E

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。この超安定性の概念規定の背後には,相対的に不変で,継続 的な構造概念がある。なぜ、なら,この意味の構造概念のみが,超安定性に言う 飛躍的な変化を経験しうるからである。 われわれは,まず,ここに導入されることとなった組織の超安定性の概念は 均衡観の表現であると共に,それはシステム的特質であることを窺い知るので ある。 さて,全体としての組織の特質ならびに構造は以上のようであるが,組織は

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503 組織と組織的意思決定過程 173 さらにサブシステムから成っており, どのようなサブシステムからなるのかを 知ることは,キルシュの考察の対象を知る上で重要である。 サブシステムの画定には 2通りの画定基準がある。第 lの画定基準は,外 部に向かつて相対的に閉じているということ,すなわち内部の要素相互間の結 び付きが内部の要素と外部の要素との結び付きより頻繁であるということであ り,こうした画定基準から生まれるサブシステムが構造的サブシステムである。 社 会 心 理 学 的 集 団 研 究 そ し て 社 会 学 的 集 団 研 究 の 意 味 に お け る 集 団(Gruppe) がここに言う構造的サブシステムに相当する。このような集団には,集団を構 成している相互作用が公式的役割によって規則として定められている場合と, 集団が自然に発生する場合がある。キルシュは以下でもわかるように, この構 造的サブシステムの分類法をとるわけではない。 サブシステムの第

2

の固定基準は,特定の機能を果たす要素を取りまとめて 1つのサブシステムにまとめあげるというものであり,こうした画定基準から 生まれるサブシステムが機能的サブシステムである。機能的サブシステムには どのようなものがあるのかという問題に答えることは,機能的分析すなわち組 織が生存しようとするならどのような機能を果たさなければならないのかとい う分析を前提とする。なぜ、なら, こうしてはじめて,必要な機能的サブシステ ムが列挙できるからである。キルシュは,カソツ (D Katz)とカーン (R L Kahn)の研究ならびにミラーげ G引 Miller)の研究から機能的サブシステムの 分類を引用してはいるが,機能の分類が研究者聞に一致する形で列挙できない ので,機能的サブシステムの完全な分類表を完成することは可能ではない, と 考えている(EIII,S 43)。 さて,上記では,システムの超安定性が示されたが,システムがサブシステ ムから成立しているということが言われた今や,今度は,システムの多重安定 ( 6 ) その際キノレシュは次の文献及び論稿に基づいている。

D.. Katz and R L Kahn, The Social 1も:ychology

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Organization, N ew York -London-Sydney 1966

J G MilIer, Living Systems: Basic Concept-Structure and Process-Cross-Ievel Hypotheses, in: Behavioγ"al Scien正e,1965

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-174 第61巻 第3号 504 性(Multistabilitat)とし、う特質が導入されることになる (EIII,SS 48-49)。シ ステムの多重安定性は,サブシステムが相互に相対的に閉じていることを前提 にしていて,システムを構成するサブシステムが,それぞれの管轄する部分環 境をもち,その部分環境について上記の意味で超安定的であることを意味する。 すなわち,部分環境から生まれる妨害がその部分環境を管轄してし、るそれぞれ のサブシステムを,安定性領域以外に押し出してしまわない限りでは, フ ィ ー ドバックによって均衡状態を維持する。このことによって,あるサブシステム の部分環境からの妨害が他のサブシステムに伝播するということはなし、(EIII, S..48)

次に,部分環境からの妨害がそれを管轄しているサブシステムを安定性領域 外部に押し出してしまう場合には,第

1

に,サブシステムは自らの構造を変更 して新たな均衡に達する可能性を持つ。第2に,場合によっては,部分環境か らの妨害が,それを管轄しているサブシステム以外のサブシステムに伝播し, その別のサブシステムで処理の対象となることもある。こうした第

2

の場合も ありうるとは言っているものの,キルシュは,システムの多重安定性は,いつ でも,それぞれのサブシステムがそれぞれ別の部分環境に直面し,あるサブシ ステムが,管轄外の部分環境からの妨害にさらされることを防御することを意 味すると考える (EIII,SS.. 48-49)。 そして,比較的に独立的で,超安定的なサブシステムへの組織の分化は,組 織が,複雑で多様なやり方で妨害してくる環境において存続できるための一つ の重要な条件であるとキルシュは考える。さらに多重安定性に関する論述を締 めくくるにあたって,かれは次のように言う。「環境の複雑性は,組織の複雑性 に反映されている。J(EIII,

S

49) われわれの見解によれば,環境の複雑性は,組織の複雑性に反映されている, というこの引用文は,異なる環境の中にある複数の組織を考えれば,一層複雑 な環境の中にいる組織は,より多くの部分環境を管轄するためのより多くのサ ブシステムを伴っているということを意味すると解される。また 1つの組織 を考え,その環境がより複雑な方へ変動して行くと仮定すれば,変動した環境

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505 組織と組織的意思決定過程 -175-の中で存続するためには,組織はサブシステムの数を増やして全体としてその 構造を再編する必要があることが説かれているのである。そして, こうした全 体の再編はシステム全体の構造の飛躍的変更に相当する故に,システム全体と しての超安定性の意、味するところである。 超安定性と多重安定性に関してキルシュの言うことを要約しておくと,シス テムは,それぞれが超安定的なサブシステムからなっていて(多重安定性の意 味),環境が複雑な方向に変動して行く場合には,サブシステムの数の増加を含 めた全体としての構造の再編をして行く(超安定性の意味)のであり,これら のことはシステムの存続の条件として把握されている。そして,組織がシステ ムである以上,組織もこれらの特質を持つのである。 ここでわれわれが注目しておきたいのは,キノレシュの見解にはこのような環 境との関連に関する言明がはっきりと導入されているということである。そし てその言明は,組織と環境との関連についていわば抽象的に触れたのであり, かれは,組織に一般に妥当する特質として,超安定性と多重安定性というシス テム的特質をあげていると解されるのである。 ここで,われわれは,サブシステムの分類についての議論に戻ろう。上述の ように,キルシュは,一応、サブシステムの画定基準に触れてはいるが,かれは 構造的サブシステムの方を採ろうとはせず,機能的サブシステムの方について は,機能の細かい分類をしだすと機能の種類ひいてはそれらの機能を果たす機 能的サブシステムの種類については研究者間で一致が得られないということを 理由に,少なくとも詳しい機能システムの分類は行わないという態度を採ろう としている。ここには,どちらかというと機能的サブシステムの分類法を採ろ うとし,かっその場合,研究者間で一致が得られるような大まかな分類を採ろ うとするかれの態度があらわれている。それではかれが考える大まかな機能的 サブシステムの分類とは何か。 キルシュによれば,組織は,大きく分けて,生産と配給の物理的過程

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を担当するシステムとこの過 程 を 統 御 す る 情 報 意 思 決 定 シ ス テ ム

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176ー 第61巻 第3号 506 system)という 2つのサブシステムから成立している。このうち,情報意思決定 システムは,さらに,次のサブシステムから成る。作業監督システム (operatives System),管理システム (administrativesSystem),政治:ンステム (politisches System)がそれらである (EIII,SS 49-52)。 このうち,まず作業監督システムは,生産と配給の実行的過程の常軌的統御 を行い,その意思決定は,良く定義され,良く構造化されプログラム化された 意思決定である。 次に,管理システムは,作業監督システムに対するプログラムの展開を任務 とし,その意思決定は,プログラム化されているわけではなく,革新的である。 管理システムが作業監督システムに対するプログラムの展開を行うにあたっ て,諸々の制約の枠を参照しなければならないのであるが,制約を決定するの が,政治システムの任務である。 最後に,政治システムは,目標(Ziel)や戦略(Strategie)といった組織政策, 予算 (Budget)の決定とならんで,組織構造の形成(Gestaltungder Organisa -tionsstruktur),重要な職位に対する人事 (Besetzungder Schlusselposition), 特に重要な個別政策(Einzelmasnahmevon auβergewδhnlicher Bedeutung) の決定を行う。政治システムは,組織にとって最重要な決定を行う場であり, 組織の内外の人々の要求を,組織に対する公式的な制約に転換していくことが その任務となる。 これらのサブシステムから成る情報意思決定システムが,キルシュの意思決 定過程論の考察の直接の場面である。すなわち,かれは組織における生産と配 給の実行的過程の統御の機能を拐う,いわゆる管理組織に相当する部分を考察 の場面とするのである。 この情報意思決定システムは,もちろん詳しい機能を分類してそれを担うサ ブシステムを考えたというのではなくて,研究者間で承認が得られるような大 まかな機能の分類に,すなわち重要な方針の意思決定,そのプログラム化,そ れに基づく実行過程の制御としづ機能の分類に基づくのである。組織に一般に 妥当する特質を挙げようとしていることに関しては,上記の超安定性と多重安

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507 組織と組織的意思決定過程 -177~ 定性というシステム的特質の論述と軌をーにしている。 また,われわれは上記で,組織目標に関するキルシュの見解を検討した部分 で,かれの見解中には,第 lに,組織目標は何かとL、う根本問題が残存するこ ととなり,第

2

に,システム要求の構想と均衡観が,組織目標とは切り離され たままで,特に何として位置付けられることもなくかれの学説に残存している とし、うことがわかる, と言己した。 そしてこのことから,一方では,組織目標が,システム要求と切り離すとい うかれの意図を実現しつつどのような形で展開されるのか, という問題と,他 方では,組織目標の内容規定には貢献しないような形で取り入れられたシステ ム論の内容がキルシュの学説に対してどのような影響を与えているのか, とい う問題が,確認されたのである。j このうち,取り入れられたシステム論の内容がキルシュの学説に対してどの ような影響を与えているのかという問題に関して,この節でわれわれが明らか にしたことから,超安定性と多重安定性というシステム的特質こそは,かれの 見解に存在するシステム論的なものの考えの典型であると言える。そして,超 安定性と多重安定性というシステム的特質は,かれの学説に残存するシステム 論的なものの考え方であるシステム要求の構想と均衡観のうち,.均衡観」の方 に専ら関連しているのである。つまり,.システム要求の構想」の方はここまで では,未だに触れられていないのである。

I

V

組織における意思決定過程 キルシュの考察の場面は,組織の情報意思決定システムということになった が,次にそこにおける意思決定過程の特質をかれがどう見ているかについて触 れよう (EIII,

SS 5

2

-

8

4

)

。 組織における意思決定過程は,面と向かつて共同で意思決定を行える集団の 意思決定過程(Gruppenentscheidungsprozeβ)が多数寄り集まった集合的な意 (7) 本稿第II節「組織の特質」の最終部分を参照のこと。

(14)

-178 第61巻 第3号 508 思 決 定 過 程(kollektiverEntscheidungsprozeβ)で あ る が , 個 人 の 意 思 決 定 過 程 と の 著 し い 違 い は , 個 人 の 意 思 決 定 過 程 で は , 個 人 的 決 心(Entschlus)に よ っ て 過 程 が 終 了 す る の に 対 し て , 集 合 的 な 意 思 決 定 過 程 で は , 権 威 付 け(Autori -sierung)に よ っ て 過 程 が 終 了 す る 。 要 す る に , 組 織 の 意 思 決 定 過 程 に お い て は , 個 人 の 意 思 決 定 過 程 に は 見 ら れ な い 意 思 決 定 の 権 威 付 け が あ る の で あ る 。 こ こ に 権 威 付 け と は r組 織 の 体 制(Verfassung)あ る い は 組 織 に 対 し て 妥 当 し て い る 文 化 的 規 範(kultuelleN orm)に 基 づ き , 組 織 あ る い は そ の 部 分 に 対 し て 一 一 あ る し 、 は ま た 外 部 の 組 織 参 加 者 に 対 し て も 一 一 意 思 決 定 の 結 果 が 拘 束 的 (verbindlich)で あ る と 見 な さ れ る た め に 満 た さ れ な け れ ば な ら な い 過 程 あ る い は 儀 式(Ritus)J(EIII, S..54)で あ る 。 組 織 に お け る 意 思 決 定 で は , 個 人 が 決 (8 ) われわれはここでキノレシュの見解に Lたがって,組織の体制(Verfassung)と文化(KuJ -tur)について触れておこう (VgJEIII, SS..91-93)。キルシュの見解によれば,まず情報 は公開的情報(offizieJJeInformation)と認識上の情報(kognitiveInformation)に区別 される。このうち,公開的情報とは,組織構成員の外部になんらかの形で記されている情 報のことであり,これに対して,認識上の情報とは綴織構成員の記憶の中にある情報のこ とを言うのである。 組織の体制はこれらの情報のうち,公開的情報に属し,そもそも変更不可能かあるいは 変更が困難な情報である。組織の体制は,部分的には国家の法典によって画定されている が,その大部分は,組織構成員の雇用協約に表れている。組織の体制は,組織のもっとも 根本的な政治的意思決定に対する中核機関の画定を含む。それと結び付いているのは,意 思決定が権威付けられたと見なされ得るためにはとのような条件が満足されるべきなの かとし寸前提の規則である。この条件は,管理職伎の人員充足ならびに組織の政策の形成 に関して葛藤があらわれた場合にそれを処理する調停規則の表記を含む。 われわれは,組織の体制の例として,私的組織からの例ではないが,大学の規程集に掲 載され,教授会の意思決定が満たさなければならない各種の規程や細則(学部長候補者 選考に関する細則,教員選考ならびに審査規程等〉を挙げることが出来る。教授会の意思 決定がそれらの規程や細則に言われている条件を満たせは,それは権威付けられたもの として通用するのである。 これに対して,組織の文化は,上述の情報の区別のうち,認識上の情報に属し,組織構 成員によって分かち合われている認識上の情報(概念,価値,態度,信念,プログラム〉 の総体である。こうした文化は,組織構成員の作り出したもの,文書的に記された表現あ るいは口頭による表現,習慣と儀式に現れ,世代聞を記号の形で受け継がれてし、く。もち ろん組織が含まれる社会にも文化はあり,組織構成員は組織がi霞かれている社会の文化 を共有するが,かれらはまた,組織独自の文化をも持つ。そして,この独自の文化によっ て,ある組織は他の組織とは区別される。公開的情報たる組織の体制がどこまで当該の組 織構成員の意思決定に影響できるのかを知るためには,こうした意味での文化を知れば よい。すなわち,組織の文化となって組織構成員の記憶に定着していないような情報は, いくら文書的に固定されて組織の体制という体裁を整えていても,それは単に一枚の紙

(15)

509 組織と組織的意思決定過程 -179-心をしているのみでは,意思決定の結果が,組織や組織外部に対して公式的な ものとしては決して通用せず,当該組織の公式的な手続きあるいは公式的では ないが認められた手続きを経てそれが権威付けられてこそはじめて,そうした ものとして通用するのである。 権威付けの権限を与えられた個人あるいは集団は,中核機関 (Kernorgan)あ るいは中核集団 (Kerngruppe)と呼ばれる。組織の体制は,どの個人あるいは どの集団がどの意思決定に対して権威付けの権限を持つのかを規定している。 ここに組織の権限体系 (Kompetenzsystem)が成立している。こうして確かに, ある意思決定に対しては,その権威付けの権限を持った中核集団が大きな影響 力を持つが,かれらのみが意思決定を支配できるわけでもない。中核集団に対 して影響を与えていこうとする人々が存在するのであって,かれらは衛星 (Sa -tellit)あるいは衛星集団 (Sate

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1

itengruppe)と呼ばれる。 組織の権限体系において,ある意思決定に対して権威付けの権限を持つ中核 集団に対して,権限体系上その下位にいる諸個人が影響を与えようとする場合 に,かれらは衛星集団であるが,権限体系上ある中核集団の上位にいて,その 中核集団に意思決定の権威付けの権限を委譲した諸個人も,その中核集団から 見れば,衛星集団たりうる。上下関係のみではなく,横の関連についてもまた こうしたことが言える。すなわち,ある意思決定については中核集団であった 集団も,組織の階層上同じ地位にあり別種の意思決定を行う別の中核集団に とっては衛星集団たりうるのである。 片に過ぎなし、。 いずれにせよ,キノレ、ンュの見解において,意思決定の権威付けという側面を介して組織 構成員の行動に影響可能性を持つ情報として,公開的情報としての体制ならびに認識上 の情報としての文化が導入されているのは,キノレシュが,個人聞の交渉によってのみ組織 構成員の意思決定前提が発生すると見ているのではなくて,組織構成員の全員が分かち 合っている情報もその発生に関与していると考えているためで、あると解される。 (9) 以下では,われわれはできる限り中核集団で統一する。 (10) 以下では,われわれはできる限り衛星集団で統ーする。 (ll) 中核集団と衛星集団と L、う概念は,既にエドムント・ハイネン(EdmundHeinen)の見 解中にも見られる。ハイネンは,次のように規定している。 "Die Einwirkungsmoglichkeiten der am organisatorischen Zielbildungsprozes

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-180- 第61巻 第3号 510 そして,どの中核集団も,複数の要求の入ってくる葛藤処理の場となる。こ こに様々な要求を担った人々の交渉が行われる余地が発生している。 こうしてキルシュは,管理組織全体に中核集団ならびに衛星集団が存在する と見ているが,われわれの見解によれば, このことを,単に命令と従属の権限 体系の換言として見るとその情報内容が大きく失われる。なぜなら,かれのよ うに管理組織全体に中核集団ならびに衛星集団が存在すると表現することに よって,組織目標形成の場面におけるのみではなく,組織目標が決定され,そ れに基づいて組織の比較的下位の部分で意思決定が行われる場面にも,個人間 交渉を通じて個人の考えが入ってくる事態が表現されることとなるからであ る。それ故,かれの中核集団と衛星集団の概念を説明するのに組織の「権限体 系上」という言葉を出したが,それらの概念の適用は,権限体系上の命令従属 関係には無い情報内容を追加したのである。どの部分に,個人間交渉の余地が 発生するのかには,われわれは以下でも注意しよう。 さて,今,組織全体の中核集団としての政治システムで組織目標に関して意 思決定が権威付けられたとしよう。そして,ここを起点、として,われわれはキ ノレシュの見解を位置付けよう。

beteiligten Gruppen sind somit verschieden Einige Gruppen sind auf Grund ge. setzlicher oder vertraglicher N ormen (z B Satzung einer Aktiengesellschaft) zur Zielfixierung besonders autorisiert Diese privilegierten Gruppen kδnnen als die Kerngruppe des organisatorischen Zielbildungsprozesses aufgefast werden Die ubrigen Gruppen stellen demgegenuber Satellitengruppen dar“(E Heinen, Gnmd. lagen betriebswirts正加iftlicherEntscheidungen-Das Zielsystem der Unternehmung,ー Dritte, durchgesehene Auflage, Wiesbaden 1976, S. 205) これを見る限り,われわれは,キノレシュがハイネンの見解に影響を受けたと言える。し かし, ρ イヰンはこの引用文にあるように,組織の目標意思決定過程を中心に考え,この 過程を巡って中核集団を考えている。これに対して,キノレシュは,中核集団とそれを取り 回む衛星集団を,組織の目標意思決定のみにあるものとしてではなく,かれが直接の思考 の対象としている情報意思決定システム全体の意思決定にあるものと考えている。 このように組織の管理組織を中核集団とそれを取り臨んだ衛星集団によって表現する ことの意味については以下の本稿本文を見よ。その意味によって,キノレシュはハイネンの 見解には見られないものを付け加えたとも言える。但し,ハイヰンにはハイヰンの問題設 定.すなわち「企業の目標体系」を巡る問題があるのであるから,中核集団並びに衛星集 団の適用範囲もかれ独自のものになったことも忘れてはならないて“あろう。

(17)

511 組織と組織的意思決定過程 -181-まず,前提としなければならない組織目標が,その意味について限定されて いないという意味において開放的制約

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である場合に は,中核集団を取り巻く衛星集団はこれを限定解釈する必要がある。もちろん, どのような解釈でも許されるというわけではなく,衛星集団のとる解釈が,権 威付けられた意思決定の意味の範囲内であるということを中核集団に認めさせ るよう交渉が行われて, これが成功する場合に限ってその解釈が許されること になる (EIII,S. 82)。 こうした過程を経て限定された制約は,ある中核集団を取り巻くいくつかの 衛星集団にとって,衛星集団独自の解釈が入るだけに,実際に衛星集団がその 解釈に沿って行動し始めると,衛星集団相互間で,葛藤

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が生じる可 能性がある。 また事実認識を巡っての見解の相違は中核集団と衛星集団との間あるいは衛 星集団相互間で生じがちである。 ここに,意思決定前提の収数に導く調整的行為が必要になるが,それについ てはすぐ後にわれわれは触れよう。 こうして,意思決定とそれに続くその限定解釈さらに調整行為の発生可能性 は,組織目標の決定とその次の段階の意思決定を見て描いたものであるが,そ の場面にだけ適用されるものではなく, さらにそれ以後の段階の意思決定につ いても,まず,意思決定をなす際の交渉,その解釈を巡る交渉, さらに,調整 行為としての交渉という 3つの場面で交渉の余地が発生する。 すなわち,組織目標がある衛星集団に降りて来ると,その衛星集団は集団と しての限定解釈をそれに施すのであるが,この解釈も当該の集団に所属する個 人間の交渉で決定される余地がある。そして,その結果生まれるものが,集団 としての意思決定であり,その意思決定は権威付けられたことになるのである。 次に,この限定解釈された組織目標を達成するためにはその衛星集団内部でも 諸個人が一層それを限定しなければならず,ここに,先と同じく,解釈を巡る 交渉が入るし,また,諸個人が実際に行動し始めると衛星集団としては調整の 必要が発生する可能性があるのである。つまり,組織内部の就中管理組織に相

(18)

182ー 第61巻 第3号 512 当する部分を考えるならば, どの水準の意思決定をとってみても,その意思決 定とそれに続くその限定解釈さらに調整行為の発生可能性という一連の事態が あると考えられるのである。 さて,そのような一連の事態の中で,上にいう葛藤が発生するのは,以下の 意味での意思決定相互依存があるからである。衛星集団あるいはそれに属する 諸個人が意思決定を行おうとする場合には,もちろん組織内では孤立して事を 運ぶわけには行かない。すなわち,集団なら他の集団の意思決定を考慮に入れ なければならないし,個人なら,他の個人の行動あるいは意思決定を考慮、に入 れなければならなし、。なぜなら,組織における意思決定においては,意思決定 相互依存(Entscheidungsinterdependenz)が存在するからである。ここに意思 決定相互依存とは,ある個人の意思決定が別の個人の意思決定と互いに影響し あうことを言う (EIII,SS 61-70)。 そして場合によっては,複数の個人がそれぞれの意味において最適あるいは 満足のし、く代替案を実現できないという意味における葛藤が生じうる (EIII, S..71)

葛藤には2つの種類がある。まず,葛藤は,構成員が異なる価値を基礎に置 きながら,議論されている代替案を相互に異なって評価する場合に発生する。 こうした異なる価値に起因する葛藤は価値葛藤(Wertkonflikt)である。上記の ように,複数の衛星集団が,中核集団の決めた組織目標を限定解釈することは, それらの集団相互間で,解釈が異なることにつながり,このこと故に価値葛藤 は発生する。 次に,葛藤は,構成員が異なる事実上の情報を基礎に置きつつ,議論されて いる代替案を評価する場合にも発生する。こうした異なる事実上の情報に起因 する葛藤は確信葛藤(Uberzeugungskonflikt)である。 こうして葛藤にもそれが何に起因するのかということで2つの種類があるこ とになるが,ここで,葛藤が果たす一種の役割について触れておこう。 組織では常に葛藤解決過程が存在するにも関わらず,葛藤のない組織はない。 どの組織も慢性的葛藤(chronischerKonflikt)を含みつつ存在しているといえ

(19)

513 組織と組織的意思決定過程 -183-る(EIII,S 74)。こうした慢性的葛藤は一方で場合によっては組織の破壊に導 くO なぜなら,構成員が葛藤の未解決であるような組織にいるよりは組織を辞 めることを優先し,かれの適切な後継者が見つからないことが考えうるからで ある。慢性的葛藤の危険は,現構成員の組織からの退出の可能性と後継者の確 保の困難とL、う事態に見られている。 しかし,慢性的葛藤は組織にとってこうした負の作用のみを持つのではない。 葛藤は,組織が変化した環境に適応するための前提でもある。組織の意思決定 担当者が,常軌的意思決定から離れ,革新的意思決定を開始するには,かれら を取り囲む構成員すなわち衛星集団がかれらにそうするように強制してはじめ てそうした方向に向かう。個人間葛藤とそこから発生する操作的処置ないし他 の構成員の要求は,通常新しい意思決定問題の知覚の過程を促進し,またその ことによって新規の創始に取りかかることを促進する。「変化した環境条件に対 する適時的な適応はそのことによって,たとえ保証はされなくとも容易にはな る。J(EIII, S 74) 個人間葛藤に関する論述を締めくくるに当たってキルシュは,葛藤の革新促 進的機能を換言すると言った上で,個人間葛藤はしばしばシステムの超安定性 に対する前提である, として個人間葛藤を位置付けている。ここには,われわ れは,システム論的なものの考え方の影響を,すなわち,超安定性というシス テム的特質が組織についての考察に導入されていることを窺えるのである。 さて,確かに葛藤はこうした肯定的役割を果たすのだが,それをそのまま放 置しておいて肯定的効果が得られるというものでもなし、。複数の個人は,葛藤 状態を含めた意思決定相互依存の中からやはりある方向に収放してL、かなけれ ば当該の集団なら集団のあるいは組織全体なら組織の統一性が確保されない。 この確保に向かう行為こそ調整(Koordination)である。調整についてわれわれ (12) ここでは,キノレシュによって,組織にいることと組織を辞めるという 2分割が考えられ ているのみで,構成員がかれに与えられた任務の遂行から,心理的に撤退するという状 態,すなわち仕事遂行上の動機付けを失いながらも組織には留まっているという状態が 無視されている。

(20)

-184ー 第61巻 第3号 514 は以下で触れよう。 調 整 と は , 当 事 者 の 意 思 決 定 前 提 を 一 定 の も の に 収 放 さ せ る 行 為 で あ っ て , 権 限 体 系 の 中 で 対 等 の 地 位 の 複 数 の 個 人 間 で の 調 整 行 為 が 行 わ れ る 場 合 も あ り , ま た そ う し た 形 態 の 調 整 行 為 が 失 敗 に 終 わ り そ う な 場 合 に は , よ り 上 位 の 個 人 が か れ ら の 意 思 決 定 前 提 の 調 整 の 役 割 を 担 う 場 合 も あ る 。 葛 藤 が 意 思 決 定 前 提 の 解 釈 を 巡 っ て の 見 解 の 相 違 に よ っ て 発 生 す る こ と に 応 じ て , 調 整 は , 意 思 決 定 前 提 の 解 釈 を 意 思 決 定 相 互 依 存 を 起 こ し て い る 当 事 者 間 で 統 ー す る 行 為 で あ る 。 す な わ ち , 価 値 的 前 提 の く い 違 い に よ っ て , あ る い は 事 実 的 前 提 の く い 違 い に よ っ て , 意 思 決 定 相 互 依 存 の 関 係 に あ る 当 事 者 が 葛 藤を起こすが,当事者間で, 目指すべき価値は何か,必要な事実認識は何か, に 関 し て 共 通 の 見 解 が 採 ら れ れ ば 葛 藤 は 収 ま る の で あ る 。 調 整 に つ い て も キ ル シ ュ は そ の 類 型 を 分 類 し て い る 。 そ の 際 2つ の 基 準 で 分類がなされている。 1つは,集権的調整(zentraleKoordination)と分権的調整 (dezentrale Koordination)であり (EIII,SS. 80-82),もう lつは,期待形成に基づ い た 調 整(Abstimmungauf Grund von Erwartungsbildung)とフィードノミック 情 報 に 基 づ い た 調 整(Abstimmungauf Grund von Ruckkopplungsinformation)

(13) 交渉とはどのようなものであるかの紹介にもなるので,われわれは,キルシュの見解に 従いながら,調整を交渉の観点から表現しておこう。 意思決定相互依存の中にいる個人は,情報処理能力の制約(EIII,S 66)から,もちろん すべての意思決定相互依存を予め見抜き,これらの情報に基づいて行動するというわけ にはいかなL、。それ故,個人は,他の個人が将来行うであろう行動あるいは意思決定の一 部分を予測し,残りの部分については,それらが生じたときにどのように処理するか考え ようとする。ただし,この言い方では,個人は,他の個人の行動に対して消極的に適応 (anpassen)しつつ,意思決定相互依存をこなしていくという像が生まれるが,必ずしも個 人は消極的に適応しているばかりではなし、。 個人は,他の個人の行動あるいは意思決定が,かれ自身の期待どおりに生じるように, 積極的に他の個人に働きかけることをも行う。この行為が,操作(Manipulation)であり, 操作は,他の個人の行動に関する期待が実際に生じるようにするために行われるのであ る。こうして,操作の機能は,将来に存在する不確実性の吸収(Ungewisheitabsorption) になるのである(EIII,S. 69)。そうして,このような適応と操作を繰り返すことの中から, その都度復数の個人聞の意思決定前提が一定のものに収赦していくのであるが,意思決 定前提のこうした収数に導く行為が調整なのである。すなわち,操作はその効果からみた 場合には調整的行為なので、ある。

(21)

515 組織と組織的意思決定過程 -185ー である (EIII,SS..82-83)。 集権的調整の場合 1人の人あるいは集団が,特殊な調整意思決定を行う。 かれら調整者は,個々の相互依存的個人に対して,受け入れられた場合には意 思決定の調整に導く制約を課す。この場合には,調整者と被調整者との聞には 非対照的な上下の関係がある。これに対して分権的な調整の場合には,明示的 な調整意思決定が行Lわれない。個人は相互に適応と操作を繰り返しながら,か れら自らで調整を行う (EIII,SS..80-81)。 ここまでが集権的調整と分権的調整との類型分類であるが,支配的な集権的 調整を伴う組織は事実上往々にして,相互の調整すなわち分権的調整の要素を も伴う。つまり,集権的調整者のみが他の個人に対して操作の処置を行い,他 の個人が専ら純粋適応、者として行動するということではなく,他の個人が集権 的調整者に操作的に影響を与えて調整的意思決定の内容をかれらの良いように 仕向けて行くということ,あるいは集権的調整者の意思決定をそのままかれら の前提におくのではく,かれらの解釈をそこに挿入するということが事実に近 いとキルシュは考えているのである (EIII,S,.82)。 次に,期待形成に基づいた調整とフィードバッグ情報に基づいた調整である が,期待形成に基づいた調整の場合には,予め他の個人の行動が予測されその 予測された行動を計画に組み込みながら初期的意思決定が行われる。これに対 して, フィードパック情報に基づいた調整の場合には,意思決定担当者は,他 の個人の行動を予測することを避け,当初の計画に対して妨害が入ったらその 都度修正しようとする。 (14) 組織内で複数の個人の意思決定の調整が行われる場合には,全く他の個人については 不確実性が支配していて,かれの未来的行動については暗中模索の形で対応が行われな ければならないというわけではない。 個人は組織の中で,他の個人がかれ自らにどのような行動を期待しているのかを学習 していて,他の個人もそうした学習をしているので,ある個人の行動は一応の予測jはつ く。ここに言うところの,組織の中で、学習の結果身につけるものが役割(Rolle)である (EIll, SS..83-84)

組織内の個人が役割を学習していることを前提すると,ある個人の他の個人に対する 不確実性の吸収行為としての操作は,役割では未決定の意思決定前提について行われる 行為なのである。

(22)

-186 第 61巻 第 3号 516 以上が調整に関する分類であるが,キルシュは,それらの分類のうちどの形 態が支配的なのかという問いには簡単に答えられないとしながらも,次のよう には考えている (EIII,SS..83-84)。 第 Hこ,組織の役割分析と結び付き,相互依存的な個人は,組織内で長らく 相互に接触し合うと他人がかれにどのような行動を期待しているのかを徐々に 学習するのであって,このことによって,集団で行われる意思決定については まったく偶発的な事態が発生することは少なくなり得る。こうした事態は,期 待形成に基づいた調整とフィードパック情報に基づいた調整のどちらが支配的 なのかに関連し,前者の役割が大きくなることを示している (EIII,S.. 84)。 第2に,集権的調整と分権的調整との分類に関して,そのどちらが支配的な のかとし寸問題は,組織の権力分布に関連している。つまり,純粋集権的調整 は,それを担当する個人の他の個人に対する圧倒的な権力所有を前提としてい る。キルシュは,カ、、ルプレイス(J K Galbraith)の論述を参考にしながら,現 代の大企業では,専門家集団としてのテクノストラクチヤ}が大きな権力を得 て い て , か れ ら は 専 門 知 識 を 基 盤 に し て 影 響 を 行 使 す る よ う に な っ た と す る (EIILS 84)。管理者がかれらに依存していることは,現代の大企業においては, 一応形式的には前面にある集権的支配が,実質的にも広く行われているという ことに疑問を抱かせる。この事実に関するキルシュの指摘は,上記で集権的調 整と分権的調整について分類が行われたとき,事実としては純粋集権的な調整 はなく,分権的調整によって補われているとしづ指摘がなされたが,内容的に それと同じである。 調整についてはこのように,集権的調整と分権的調整とに二分割が行われ, 現代の趨勢的傾向としては,純粋集権的調整というのはないということが指摘 されたのみである。それ以上に,集権的調整と分権的調整,期待形成に基づい た調整とフィートパック情報に基づいた調整のいずれが,条件との関連で趨勢 しかし,われわれは,意思決定前提の発生とのかかわり合いで,特に交渉とならんで役 割を 庖詳しく論じ位置付けることを, ~.~思決定過程」第 3 巻のわれわれの言う第 4 部 分の検討を行う別稿におし、てなそう。

(23)

517 組織と組織的意思決定過程 -187 的に現れるのかということまでは考察されてはいない。 否,このように評価するよりはむしろ,われわれは,条件次第による一層の 詳細な経験的研究の基礎としての一種の分類論がそこに展開されたと見るべき であろう。こうした評価は,葛藤に関するキルシュの記述にも言えることであっ て,かれは負の作用を持つ葛藤と肯定的作用を持つ葛藤を区別してはいるが, それらのいずれがどのような条件のもとで趨勢的に生じるのかまでは論じては いないが, このこともむLろ一層の経験的研究の基礎を築いたと見るべきであ ろう。 いずれの形態がどのような条件のもとで趨勢的に生じるのかまでは論じては いないという,このようなわれわれの評価は,キルシュの『意思決定過程』第 3巻における組織的意思決定過程に関する論述の評価に通じるのである。すな わち,組織的意思決定過程については組織目標の決定から始まって,意思決定 相互依存があり,葛藤が生じる可能性があって,そうした場合には調整行為が 必要となるといった抽象的な水準での意思決定過程の特質の指摘が行われ, さ らに,意思決定過程の経過に沿った現象あるいは行為たる葛藤や調整の大まか な分類が行われた,という形で組織の意思決定過程に関するかれの見解の特質 は要約できるであろう。 この節の論述を要約すると次のようになる。 組織においては,ある意思決定が行われる場合には,複数の個人が相互に影 響を与え合いながら,意思決定の権威付けに導く。意思決定が権威付けられて からは,権限体系の中では下位にいる個人は,その意思決定の結果を前提にし てさらに意思決定を行うわけであるが,意思決定の前提にするほどその結果が 操作的ではない場合には,個人は中核集団との交渉で許される限りにおいて, 結果の意味を限定し解釈しようとする。その後にも,意思決定相互依存に基づ きながら,価値的意思決定前提あるいは事実的意思決定前提に関する見解を 巡っての相違を原因として,個人間葛藤が生じうる故に,複数の個人の闘で相 互に適応あるいは操作が繰り返され,あるいは集権的調整者が入って,調整が 計られつつ,組織の行動が具体的に決定され実行されていくと考えられている

(24)

-188- 第61巻 第3号 518 のである。 これがキルシュの意思決定過程論からみた組織内の行動論なのである。 ここには,まず,組織目標の意思決定については,その解釈を巡って交渉の 余地が発生し, さらに,調整行為として交渉が行われるという 2つの場面で交 渉の余地が発生すると考えられている。ここで,組織目標の意思決定自体もま た交渉によって決められてくることを付け加えれば,組織目標の意思決定を起 点とすれば,組織目標の決定を巡る交渉,その解釈を巡る交渉, さらに,調整 行為としての交渉という

3

つの場面で交渉の余地が発生するとし、う構図が描か れている。 この構図は,組織目標の意思決定とその次の段階の意思決定を見て描いたも のであるが,その場面にだけ適用されるものではなく, さらにそれ以後の段階 の意思決定についても,まず,意思決定をなす際の交渉,その解釈を巡る交渉, さらに,調整行為としての交渉という

3

つの場面で交渉の余地が発生する。そ れ故,キルシュが考えているような情報意思決定システムの内部では,ある意 思決定について

3

つの場面で交渉が発生しうると考えられているのである。 そして,この交渉は,将来的意思決定前提の内容を巡る個人間の相互の操作 行為である故,意思決定前提の対人的な受け入れ促進行為に関する分析がこう した議論に補完的に引き続いて当然である。事実,キルシュは,組織内の交渉 と社会化という主題でこの方向にそった議論を展開しているが,われわれはそ のことについては稿を改めて取り上げることにする。 V 組織と組織的意思決定過程の特質付けに関する吟味 『意思決定過程』という標題からは当然,組織の意思決定過程が中心に論じら れ,その限りで,意思決定志向的構想が前面に出ていると考えられる。しかし, キノレシュはその第

3

巻の開始直後に,システム構想が組織理論の概念的枠組に 適していると言っていた。それ故,かれの『意思決定過程』には意思決定志向 的構想のみならず,システム論的構想が取り込まれていることが分かる。第II 節の「組織の特質」と第III節の「組織の構成」には,システム論的構想が現れ,

(25)

519 組織と組織的意思決定過程 -189-第

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V

節の「組織における意思決定過程」には意思決定志向的構想、が現れている と見られる。そこで,われわれは, これらの節において言われたことを簡単に 要約した後に,システム論的構想と意思決定志向的構想の2つの構想が含まれ れば,キルシュの学説はどのような特質を持つようになるのかということを考 察したい。 なぜ、なら,キルシュがどのように組織を把握しているのかを最も鮮明にする には,組織把握の異なる見方が提示されていていると目される, この

2

つの構 想について,それらの内容と合体された場合の意味を究明する方法を採るしか ないと考えられるからである。 そしてその場合に 2つの構想のうち一方の構想を焦点として選び,その影 響はどのような形で現れているのかを究明する形で議論を進める方法は許され るであろう。その際意思決定過程』第

3

巻には,標題から当然予想される意 思決定過程の特質の指摘のみならず,システム論的構想、が現れていたので,わ れわれは,システム論的構想、の方を焦点に選び,それがキルシュ学説にどのよ うな影響を与えているのかという道のりで考察しよう。 まず,本稿の第

I

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節ならびに第

I

I

I

節は次のように要約できょう。 キルシュはまず,組織の一般的な規定から議論に入っていた。組織は, 目標 志向的,開放的,社会技術的システムであるというのがそれである。これらの 特質に関するキルシュの見解を跡付ける過程でわれわれは次のようなことを窺 い知った。 キルシュは,均衡状態とシステム要求の構想を否定することなく,システム 論的な組織目標の考え方から議離する方向を選択していた。この方向において は,かれは,組織の重要な変数の許容される数値としてのシステム要求の維持 を組織目標として位置付けることはせず,組織目標を他の意味で使い,その意 味として,組織構成員の意思決定の基礎に目標観念があるということを言った が,われわれの見解では,このことはあくまで,組織目標の規定ではなくて, 目標志向的であるということの規定なのであった。 こうしてキノレシュは,結局,決して真正面からは組織目標の意味を画定する

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-190 第61巻 第3号 520 ことなく終わっていた。それ故,第1に,組織目標は何かとし、う根本問題が残 存することとなり, また,第

2

に,システム要求の構想、と均衡観が,組織目標 とは切り離されたままで,特に何として位置付けられることもなくかれの学説 に残存しているということがわかったのであった。 こうしたことを見ることができたので,その箇所で われわれは次のような問 題を確認できるとした。組織目標が,就中システム要求と切り離すというかれ の意図を実現しつつどのような形で展開されるのか,という問題と,組織目標 の内容規定には貢献しないような形で取り入れられたシステム論の内容がキル シュの学説に対してどのような影響を与えているのか, という 2つの問題であ る。 この

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つの問題のうち,システム論の内容の影響については,それに答えて いくためには,そもそもシステム論の内容が明らかにされる必要があった。こ のことに関し,第四節では次のように考えられた。超安定性と多重安定性とい うシステム的特質がそうしたシステム論の内容の主たるものの一つに相当する ことが明確にされた。超安定性と多重安定性は,システム全体の均衡を確保す るための条件あるいは手段となるシステム的特質である。この特質がキノレシュ の見解に取り入れられることになったのである。しかし,均衡状態そのものあ るいはシステム要求が伺なのかは明言されることなく終わった。この限りでは, キルシュの言う,均衡状態とシステム要求の構想を否定することなく,システ ム論的な組織目標の考え方から議離する方向を選択するという志向のうち,否 定されることの無いと言われた均衡状態とシステム要求の構想は,均衡状態そ のものあるいはシステム要求が何なのかを明らかにする方向としてではなく, 均衡状態あるいはシステム要求が達成されるための条件としての超安定性と多 重安定性という特質が導入されることとして実現したのである。 そして結局,組織の目標志向性の規定の論述があるのみで,組織目標の規定 は無かった。 さらに,キルシュは,組織的意思決定過程の特質付けを行ったが,そこでは, 組織的意思決定過程の経過の一般的特質を指摘することのうちに,その中のど

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