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正倉院文書に現れる「有限」と「在限」

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Title

正倉院文書に現れる「有限」と「在限」

Author(s)

宮川, 久美

Citation

宮川久美:古代文化とその諸相(奈良女子大学21世紀COEプログ

ラム報告集 vol.15), p.9, pp.200-185(二七∼四二)

Issue Date

2007-08-31

Description

URL

http://hdl.handle.net/10935/3153

Textversion

publisher

(2)

「有

「在

宮 川 久 美 * 本 稿 は ' 独 立 行 政 法 人 日 本 学 術 振 興 会 平 成 l 九 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 (基 盤 研 究 ( C ) ) の 交 付 を 受 け て 行 っ た 研 究 の 成 果 で あ る 。 「 は じ め に 正 倉 院 文 書 ︹注 l ︺ の 中 に 「有 限 」 と い う 表 現 と 「在 限 」 と い う 表 現 と が 見 ら れ る 。 ﹃ 日 本 書 紀 ﹄ ﹃ 古 事 記 ﹄ に は 「有 限 」 も 「在 限 」 も 現 れ な い 。 ﹃続 日 本 紀 ﹄ と ﹃ 万 葉 集 ﹄ の 題 詞 に 「有 限 」 の み ' そ れ ぞ れ 七 例 ︹注 2 ︺ と 一 例 ︹注 3 ︺ 見 ら れ る 。 つ ま り 「在 限 」 と い う 表 現 は こ れ ら の い ず れ に も 現 れ な い 。 正 倉 院 文 書 に お い て は 「有 限 」 が 七 例 ' 「在 限 」 が 三 例 見 え る 。 周 知 の よ う に ' 「在 」 と 「有 」 は い ず れ も 「あ り 」 と 訓 ま れ る た め に 日 本 人 に は 使 い 分 け が 難 し く ' し ば し ば 混 同 さ れ る こ と が あ る が ' こ れ も そ う な の だ ろ う か 。 本 稿 は ' 「在 限 」 が 「有 限 」 と 同 じ な の か 異 な る の か ' そ れ ぞ れ ど の よ う な 内 容 を 表 現 し よ う と し た の か を 検 討 す る こ と に よ っ て ' 奈 良 時 代 の 日 本 語 表 現 の 二 柄 を 明 ら か に し よ う と す る も の で あ る 。 - 20 0-二 、 正 倉 院 文 書 に 現 れ る 「有 限 」 に つ い て ① -夫 四 時 改 変 、 八 節 推 移 ' 俄 頃 須 奥 t l 周 己 度 ' 且 倒 初 刊 樹 、 不 敢 国 連 -天 平 十 九 年 歳 次 丁 亥 十 一 月 突 酉 朔 八 日 庚 辰 大 唐 弟 子 僧 善 意 記 (﹃ 大 般 若 経 巻 第 五 十 七 ﹄ ︹注 4 ︺ 奥 書 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 二 ノ 七 二 二 ) ) ︽ 訓 読 ︾ -(略 ) -そ れ 四 時 改 変 ' 八 節 推 移 、 俄 頃 須 奥 に し て 一 周 す で に 度 る ' 且 つ 俗 礼 限 り 有 り ' 散 へ て 固 違 せ ず ' -(略 )

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-こ れ は 師 の 僧 正 玄 坊 の 一 周 忌 に 弟 子 善 意 が 書 写 し た 大 般 若 経 一 部 六 百 巻 の 奥 書 で あ る 。 師 が 亡 く な っ て あ っ と い う 間 に 時 は 移 り 変 わ り ' 早 く も 一 周 忌 と な っ て し ま っ た . (師 の 恩 を 思 え ば い つ ま で も 悲 し み は つ き な い が ) 服 喪 期 間 は 一 年 と の 規 定 が あ り ' 敢 え て そ れ に 違 反 す る こ と は し な い と い う の で あ る 。 辛 未 ' 是 の 日 、 太 上 天 皇 の 周 忌 な り 。 大 安 寺 に 設 斎 す 。 百 官 参 り 会 ひ て 各 そ の 事 に 供 る 。 壬 申 ' 話 し て 日 は く 、 「礼 制 有 限 、 周 こ こ おは あし た ち ょく こ これ 忌 云 に 畢 り ぬ 。 元 会 の 旦 は 事 賀 正 す べ し 。 但 し ' 朕 諒 闇 を 除 き 乍 ら 、 哀 感 尚 探 し 。 霜 露 既 に 変 は り て 更 に 捗 帖 の 悲 を 増 し ' 風 景 惟 いよ いよ じゅ んが い おも ひ や 新 た に し て 弥 循 隊 の 恋 を 切 に す 。 来 年 の 元 正 は 賀 礼 を 停 む べ し 」 と の た ま ふ 。 (﹃ 続 日 本 紀 ﹄ ︹注 5 ︺ 延 暦 元 年 十 二 月 幸 夫 条 ・ 壬 中 条 ) 右 の 記 事 は 、 光 仁 天 皇 の 一 周 忌 に 際 し て ' 「光 仁 天 皇 一 周 忌 の 斎 会 は 終 了 し た 。 年 が 明 け た ら 朝 賀 の 儀 式 を す べ き で あ る 。 し か し ' 喪 は 明 け た け れ ど も 尚 哀 感 が 深 い た め 、 来 年 の 元 正 は 賀 礼 を 行 わ な い 」 と の 桓 武 天 皇 の 詔 で あ る 。 服 喪 に つ い て は 令 に 次 の よ う な 規 定 が あ り 、 凡 そ 服 紀 は ' 君 ' 父 母 へ 及 び 夫 ' 元 主 の 為 に 、 一 年 . (﹃ 喪 葬 令 ﹄ ︹注 6 ︺ 服 紀 条 ) 悲 し み が 深 い か ら と い っ て 無 期 限 に 服 喪 す る 訳 に は い か ず ' 一 年 で 忌 明 け と な る べ き な の で あ る .。 桓 武 天 皇 は こ の 規 定 に 適 っ て ' 朝 賓 を お こ な わ な い と し た が ' 善 意 は 敢 え て 違 は ず と 言 っ て い る 。 「俗 礼 有 限 」 は 桓 武 天 皇 の 「礼 制 有 限 」 と 同 じ 意 味 だ が 善 意 は 僧 な の で 「俗 礼 」 と 言 っ た の だ ろ う 。 「有 限 」 は 「か ぎ り あ り 」 と 訓 読 L t 「限 度 が あ る 」 の 意 と 考 え て よ い だ ろ う 。 ② 可 請 零 落 経 事 右 ' 被 僧 都 命 称 、 件 零 落 経 者 ' 使 請 山 階 及 飛 鳥 等 寺 経 者 、 仇 以 状 牒 ' 其 経 名 目 附 寺 家 使 己 詑 ' 事 是 有 限 、 不 須 延 怠 ' (H h著 ) 天 平 勝 賓 六 年 五 月 廿 三 日 上 毛 野 君 「粟 守 」 備 本 経 集 経 六 十 巻 (続 修 四 二 ノ 二 二 八﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 四 ノ 一 三 ) )

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︽ 訓 読 ︾ 零 落 の 経 を 請 ふ べ き 事 いは 右 、 僧 都 の 命 を 被 る に 称 く ' 件 の 零 落 の 経 は ' 山 階 及 び 飛 鳥 等 の 寺 の 経 を 請 は し め よ と 。 借 り て 状 を 以 て 牒 す 。 其 の 経 の 名 目 は 寺 家 の 使 ひ に 附 し お は り ぬ 。 事 は 是 れ 限 り 有 り 、 延 怠 す べ か ら ず 。 (以 下 略 ) こ れ は 、 僧 都 の 命 に よ り 、 併 本 経 集 経 六 十 巻 の 内 の 抜 け て い る 経 を 山 階 寺 と 飛 鳥 寺 に 請 う て い る 文 書 で あ る 。 傍 線 部 は 「事 は 是 れ 限 り 有 り 、 延 怠 す べ か ら ず 」 と 訓 読 し 、 事 に は 期 限 が あ る か ら 延 ば し た り 怠 っ た り す る こ と な く 、 す み や か に し な さ い の 意 で あ る 。 ③ 石 山 司 符 嶺 橘 守 金 弓 鷹 漕 下 柱 事 右 ' 今 彼 材 可 用 切 要 ' 宜 承 知 状 ' 川 水 共 争 漕 下 、 事 有 限 勘 ' 不 得 怠 延 ' 今 具 状 、 差 仕 丁 額 田 部 虞 潰 ' 故 符 、 主 典 安 都 宿 祢 嶺 下 六 年 六 月 四 日 (続 修 一 七 ノ 三 裏 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 五 ノ 二 三 六 ・ l 五 ノ 二 1 四 ) ) ︽ 訓 読 ︾ うな がし 石 山 司 符 す ' 額 橘 守 金 弓 漕 ぎ 下 す べ き 柱 の 事 右 ' 今 彼 の 材 を 用 ふ べ き こ と 切 要 な り 。 宜 し く 状 を 承 知 し て ' 川 水 と 共 に 争 ひ 漕 ぎ 下 せ 。 事 に 限 り と 勘 と 有 り ' 怠 延 す る こ と 得 ず 。 今 状 を 具 さ に し て 仕 丁 額 田 部 虞 演 を 差 し て ' 故 に 符 す 。 (以 下 略 ) - 1

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98-うな がし こ れ は ' 造 石 山 寺 所 が 、 材 木 を 切 り 出 す 現 場 の 領 橘 守 金 弓 に 当 て た 命 令 書 の 案 で ' 柱 に す る 材 木 が 急 ぎ 必 要 だ か ら 川 水 と 共 に 漕 ぎ 下 せ と 言 っ て い る 。 傍 線 部 は ' 事 に は 期 限 と 勘 (数 を 付 き 合 わ せ て 調 べ る こ と ) .と が あ る か ら 怠 る こ と な く す み や か に し な さ い の 意 で あ る 。 ④ 造 東 大 寺 司 石 山 院 所 牒 愛 智 郡 司 追 可 上 残 祖 米 事 右 ' 以 去 正 月 廿 六 日 乞 使 ' 差 散 位 丸 部 足 人 ' 舎 人 弓 削 伯 万 呂 等 ' 発 遣 己 詑 ' 此 迄 干 今 米 井 使 等 未 来 、 仇 更 差 右 大 舎 人 正 八 位 下 ■■■■■■ ■■■■■■ ■■■■■■ ■■■■■■ ■■■■■l 坂 田 地 主 、 発 遣 如 前 ' 察 宜 此 状 、 副 件 米 井 先 後 便 等 ' 依 員 進 上 、 事 有 限 期 、 以 不 得 怠 ' 今 具 状 ' 故 牒 ' 天 平 賓 字 七 年 二 月 十 八 日 案 主 散 位 従 七 位 下 下 村 主 別 普 主 典 正 八 位 上 安 都 宿 祢 (続 々 修 一 八 ノ 四 八﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 五 ノ 三 八 六 ) ) ︽ 訓 読 ︾ 造 東 大 寺 司 石 山 院 所 牒 す ' 愛 智 郡 司 たて まつ 追 ひ て 上 る べ き 残 り の 粗 米 の 事 つか ひ 右 ' 去 る 正 月 二 十 六 日 を 以 て 使 を 乞 ひ 、 散 位 丸 部 足 人 ' 舎 人 弓 削 伯 万 呂 等 を 差 し て 発 遺 し お は り ぬ 。 此 れ よ り 今 ま で 米 な ら び に 使 等 末 だ 来 た ら ず 。 偽 り て 更 に 右 大 舎 人 正 八 位 下 坂 田 池 主 を 差 し て 発 遣 す る こ と 前 の 如 し 。 そ かず 宜 し く 此 の 状 を 察 し て 、 件 の 米 な ら び に 先 後 の 使 等 を 副 へ て 、 員 に 依 り て 進 上 せ よ 。 事 に 限 期 有 り ' 以 て 怠 る を 得 ず 。 今 状 を 具 さ に し て 故 に 牒 す 。 (以 下 略 ) こ れ は ' 石 山 院 が そ の 封 戸 が あ っ た 愛 知 郡 司 に 宛 て た も の で ' 未 納 の 粗 米 と 先 後 に 遣 わ し た 使 と を 数 の 通 り に 進 上 せ よ と 要 求 し て い

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る 。 傍 線 部 は 、 ② ③ と 同 じ く 、 事 に は 期 限 が あ る か ら 怠 っ て は い け な い 、 と い う 意 味 で あ る 。 虞 韻 に 「期 、 限 也 」 と あ り 、 「限 期 」 は 「期 限 」 と 同 義 で あ る . 石 山 院 か ら 奈 良 政 所 に 錆 工 二 人 を 早 速 進 上 せ よ と 牒 し た 文 書 に 「事 有 期 限 ' 不 得 延 廻 」 (続 々 修 1 八 ノ 三 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 五 ノ 一 六

) ) ' 造 東 大 寺 司 か ら 文 部 省 へ 宛 て た 文 書 に ' 「合 経 師 五 人 右 ' 依 有 奉 写 経 期 限 ' 不 得 令 参 向 」 (続 々 修 一 八 ノ 六 裏 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 四 ノ 三 二 四 ・ 1 四 ノ 1 八

) ) な ど と あ る よ う に 「期 限 有 り 」 の 例 の 方 が 多 い 。 ⑤ 符 山 作 所 合 可 作 材 漆 拾 韓 物 一 棉 相 拾 枝 へ四 枝 各 二 丈 三 尺 四 枝 各 長 1 丈 七 尺 並 屍 四 寸 入 六 尺 二 枝 各 長 二 丈 三 尺 直 左 四 右 四 ) 並 へ虞 五 寸 高 七 寸 二 羽 厚 二 寸 半 ) ︹注 7 ︺ 右 、 堂 宗 屋 飛 炎 棉 栢 如 件 ' 宜 承 知 状 ' 月 廿 日 以 前 令 作 ' 早 速 進 上 、 l 架 六 十 枝 へ各 長 1 丈 五 尺 方 三 寸 ) 角 木 四 枝 (各 長 二 丈 四 尺 虞 六 寸 半 屍 三 寸 入 五 尺 ) 右 ' 仏 堂 用 度 如 件 ' 宜 承 知 状 ' 早 速 令 作 、 如 仰 日 限 進 上 ' 司 到 喝 ー 封 筒 殉 矧 ' 今 具 状 ' 以 符 ' 主 典 安 都 宿 祢 安 主 六 年 三 月 十 六 (続 々 修 一 八 ノ 三 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 一 五 ノ 一 六 八 ) ) - 19 6-こ れ は ' 造 石 山 院 所 が 山 作 所 に 宛 て て ' 作 る べ き 材 を 七 十 四 物 示 し ' 早 速 作 ら し め 仰 せ の 如 き 日 の 限 り に 進 上 せ よ 、 と 命 じ た も の で ' 傍 線 部 は ② ③ ④ と 同 じ く 「事 に 限 り 有 り ' 延 廻 す る こ と 得 ず 」 と 訓 み ' 事 に は 期 限 が あ る か ら 日 延 べ す る こ と は で き な い の 意 で あ る 。

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⑥ 謹 解 可 雇 進 越 梓 流 川 道 知 人 等 右 人 等 雇 定 可 進 越 、 但 食 功 常 有 限 、 然 川 水 太 、 故 日 不 廻 流 来 臭 天 平 賓 字 六 年 七 月 十 九 日 後 啓 鮮 年 魚 等 類 右 ' 依 比 日 之 間 川 水 甚 太 ' 此 河 鵜 甘 不 住 ' 又 ' 不 作 網 代 ' 偽 雄 東 西 走 求 ' 都 不 得 彼 賓 、 伏 恐 ' 使 空 進 越 有 元 礼 欺 ' 誠 恐 謹 啓 ' 同 日 宇 治 麻 呂 解 (続 修 三

ノ 一

(﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 五 ノ 二 五 二 ) ) ︽ 訓 読 ︾ 謹 み て 解 す いか だ たて まつ こ 梓 を 流 す 川 道 を 知 れ る 人 等 を 雇 ひ て 進 り 越 す べ し お ほ 右 の 人 等 雇 ひ 定 め て 進 り 越 す べ し 。 但 し 、 食 功 は 常 に 限 り 有 り 、 然 し て 川 水 は 太 し 。 故 に 日 を 廻 ら さ ず 流 し 来 よ 。 天 平 賓 字 六 年 七 月 十 九 日 後 に 啓 す あぎ ら 鮮 け き 年 魚 等 の 類 お ほ う か ひ 右 ' こ の ご ろ 川 水 甚 だ 太 き に 依 り て 此 の 河 に 鵜 甘 住 ま ず 、 又 、 網 代 を 作 ら ず 。 偽 り て 東 西 に 走 り 求 む と い ヘ ビ も ' 都 て 彼 の 実 を 得 ず 。 伏 し て 恐 る ら く は 、 使 ひ を 空 し く 進 り 越 し 、 礼 元 き こ と 有 ら む か と 。 誠 に 恐 れ 謹 み て 啓 す 。 同 日 宇 治 麻 呂 解 す こ れ は 、 材 木 を 筏 に 組 ん で 流 す 川 道 を 知 っ て い る 人 夫 を 雇 っ て そ ち ら に 送 る つ も り だ が ' そ の 賃 金 と 食 料 に は 限 り が あ り ' 川 の 水 も 多 い の だ か ら 日 を 延 ば さ ず に 早 く 流 し て よ こ し て く だ さ い t の 意 と 解 す る 。 「進 越 」 に つ い て は 別 の 問 題 が あ る が ' こ れ に つ い て は 稿 を 改 め て 論 じ る こ と と す る 。 傍 線 部 は 食 功 は 常 に 限 り が 有 る の 意 で あ る 。

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⑦ 造 東 大 寺 召 古 平 万 呂 山 下 老 秦 毛 人 道 守 豊 足 右 ' 為 奉 [ [ ] 浄 足 高 市 老 人 淡 海 金 弓 万 紺 太 智 ] 経 、 追 喚 如 前 、 宜 承 知 状 ' 限 九 月 一 日 ' 参 向 寺 家 ' 笥 側 副 、 不 可 緩 怠 ' 故 召 ' 主 典 従 七 位 下 美 努 連 判 官 正 六 位 上 大 蔵 伊 美 吉 正 六 位 上 石 川 朝 臣 天 平 勝 蜜 四 年 八 月 三 十 日 使 舎 人 大 友 虞 囲 (続 々 修 三 八 ノ 三 裏 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 二 一ノ 三 五 六 ) ) - 19 4-こ れ は 、 造 東 大 寺 司 が 古 平 万 呂 は じ め 八 名 の 者 に ' 勅 旨 経 を 写 す た め ' 九 月 1 日 を 期 限 と し て ' 寺 家 に 参 向 す る よ う 命 じ た 文 書 で あ る 。 署 名 が な い の で そ の 下 書 き で あ ろ う 。 [ 一 の 部 分 は 欠 け て い て 読 め な い 。 「勅 旨 有 限 」 に つ い て は ' 次 の よ う な 例 が 参 考 に な る 。 造 東 大 寺 司 解 申 不 参 考 唱 事 史 生 従 七 位 上 尾 張 虞 足 右 人 ' 預 奉 写 勅 t 剖 金 剛 樹 山司 樹 ' 身 在 寺 家 ' 嘩 周 到 捌 ' 考 唱 之 庭 不 得 令 向 ' 今 具 注 状 ' 謹 解 ' ( 以 下 略 ) (続 々 修 一 八 ノ 六 裏 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 四 ノ 三 二 三 ) )

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造 東 大 寺 司 移 義 部 省 中 解 部 従 六 位 上 韓 国 毛 人 史 生 大 初 位 上 韓 国 千 村 右 人 等 預 奉 写 勅 旨 経 ' 身 在 寺 家 ' 線 促 期 限 、 考 唱 之 庭 不 得 令 向 ' 今 具 事 状 ' 故 移 、 ( 以 下 略 ) (続 々 修 一 八 ノ 六 裏 (﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 四 ノ 三 四 三 ) ) 右 の 二 通 の 文 書 は い ず れ も 、 こ れ こ れ の 人 が 、 勅 旨 経 を 写 す 仕 事 に 預 か っ て い て そ の 身 は 寺 家 に あ る ' 写 す 期 限 が あ っ て 急 が さ れ て い る の で 「考 唱 之 庭 」 に 行 か せ る こ と が 出 来 な い t と そ れ ぞ れ の 所 属 す る 役 所 に 対 し て 事 情 を 説 明 す る も の で あ る 。 「線 促 期 限 」 は 「期 うな が よ 限 を 促 さ る る に 縁 り て 」 JJ 訓 む . ⑦ の 「勅 旨 有 限 」 も 「勅 旨 に よ る 写 経 に は 期 限 が あ る 」 の 意 で あ ろ う . 九 月 l 日 か ら 写 経 を 開 始 す る か ら そ の 日 を 期 限 と し て 寺 家 に 参 れ ' 勅 旨 に よ る 写 経 に は 期 限 が あ る ' ぐ ず ぐ ず 怠 け た り 怠 っ た り し て は な ら な い 、 と 必 ず 期 限 ま で に 参 向 す る こ と を 求 め て い る の で あ る 。 以 上 の よ う に ' 正 倉 院 文 書 に 現 れ る 「有 限 」 は ' す べ て 「限 り 有 り 」 と 訓 み 、 「限 度 が あ る ' 期 限 が あ る 」 の 意 で あ っ た 。 こ と に ① 以 外 は す べ て 怠 ら ず 日 延 べ す る こ と な く 早 く し な さ い と い う 文 言 と と も に 用 い ら れ て い る こ と が 分 か っ た 。 ﹃ 続 日 本 紀 ﹄ に 現 れ る 「有 限 」 も す べ て 「限 り 有 り 」 と 訓 み ' 限 り が あ る 、 限 度 が あ る ' 制 限 が あ る の 意 で あ っ た ︹注 2 参 照 ︺ 。 万 葉 集 の 「有 限 」 の 例 は 次 の よ う で あ る 。 昔 者 有 壮 士 。 新 成 婚 礼 也 。 未 経 幾 時 忽 為 騨 使 被 遣 遠 境 。 公 事 有 限 会 期 無 目 。 -(﹃ 万 葉 集 ﹄ 巻 一 六 ノ 三 八

四 題 詞 ) 「公 事 」 と は 公 務 の こ と 。 「公 事 有 限 」 は ' ②

⑦ と 同 様 に 、 公 務 に は い つ い つ ま で に 何 々 し な け れ ば な ら な い と い う 期 限 が あ る t と い う 意 味 で あ る 。 「公 事 有 限 、 会 期 無 目 」 の 対 句 表 現 は 、 ﹃遊 仙 窟 ﹄ の 別 離 の 場 面

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下 官 拭 涙 而 言 日 ' 所 恨 別 易 会 難 ' 去 留 乗 隔 。 王 事 有 限 ' 不 敢 稽 停 0 -両 人 倶 泣 ' 心 中 嘆 咽 ' 不 能 自 勝 t ド を 利 用 し た 表 現 だ と い う ︹注 8 ︺ 。 確 か に ' こ の 題 詞 の 物 語 の 趣 向 は ﹃ 遊 仙 窟 ﹄ の 別 離 の 場 面 の 影 響 を 受 け た も の で あ ろ う 。 ﹃常 葉 隻 注 揮 ﹄ ,[ 注 9 ︺ は 右 の 説 を 引 用 し た 上 で , 「公 務 の 事 で 出 発 の 日 限 が 定 め ら れ て を り ' 娘 に 逢 ふ 日 が 無 か っ た 」 と す る .1 し か し ' 「会 期 無 目 」 は ' 出 発 前 に 会 う 日 が な か っ た と い う 意 味 で は な く ' 「今 度 逢 え る の は ' い つ の 日 と も 期 限 の 定 め が な い 」 と い う 意 味 で あ る 。 公 務 に は 期 限 を 定 め た 規 定 が あ っ て あ わ た だ し く 出 発 し な け れ ば な ら な い -別 る る は 易 く t L か L t 会 う 時 は い つ と も 定 め が な い -会 ふ こ と 難 し t と い う 対 句 表 現 で あ る 。 た だ し 「公 事 」 は ﹃寓 葉 集 揮 注 ﹄ ︹注 10 ︺ に ' ﹃養 老 令 ﹄ (賦 役 令 ・ 軍 防 令 ) や ﹃ 日 本 書 紀 ﹄ (孝 徳 紀 大 化 元 年 八 月 ) に 見 え る 語 で あ る と 指 摘 さ れ て い る と お り で ' 正 倉 院 文 書 に も 五 例 見 え る ︹注 11 ︺ 。 「公 事 有 限 」 と い う 表 現 自 体 は 特 に 文 学 的 な 表 現 で は な く ' 文 書 を 読 み 書 き す る 宮 人 に と っ て は 慣 れ 親 し ん だ 慣 用 表 現 で あ っ た で あ ろ う 。 三 、 正 倉 院 文 書 に 現 れ る 「在 限 」 に つ い て ⑧ 奉 寓 御 執 経 所 奉 請 大 孔 雀 呪 王 経 三 巻 右 ' 鳥 寓 本 奉 請 如 件 事 在 限 時 早 附 此 使 天 平 神 護 元

六 月 七 日 T r.∼ I 蘭 書

允 日 置 「浮 足 」 判 行 (・臼 -9-) 判 官 美 努 連 「奥 方 呂 」 大 孔 雀 呪 王 経 三 巻 黄 紙 及 表 椅 帯 紫 檀 軸 坤 宮 一 切 経 内 之 右 ' 仕 丁 附 宇 治 部 若 万 呂 、 令 奉 請 如 件 上 馬 養 (続 々 修 一 七 ノ 四 八﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 1 六 ノ 四 四 八 ) ) - 1

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92-︽ 訓 読 ︾ 奉 鴬 御 執 経 所 大 孔 雀 呪 王 経 三 巻 を 奉 請 す 右 ' 本 を 写 さ む が 為 に 奉 請 す る こ と 件 の 如 し 。 事 に 限 り の 時 在 り 。 早 く 此 の 使 に 附 け よ 。 (以 下 略 ) ( 三 六 ) レ こ れ は ' 写 経 の 手 本 と す る た め に 大 孔 雀 呪 王 経 三 巻 を 貸 し て く だ さ い と お 願 い す る 文 書 で あ る が 、 傍 線 部 は 「事 に 限 り の 時 在 り 」 と 訓 み 、 「有 限 」 の 例 ②

⑦ と 同 様 、 事 に は 期 限 が あ る か ら 早 く し て く だ さ い と 急 が せ る 内 容 で あ る 。 こ の 「在 」 は 「有 」 と あ る べ き 所 を 誤 っ た も の と 考 え ら れ る 。 日 置 浮 足 の サ イ ン が あ る が ' 彼 の 名 誉 の た め に 言 え ば ' 自 署 し た の は 「浮 足 」 だ け で 文 書 は 事 務 官 が つ く っ た も の で あ る か ら 、 チ ェ ッ ク 漏 れ で は あ る け れ ど も 浮 足 が 書 き 誤 っ た の で は な い 。 ⑨ 牒 華 厳 院

麻 紙 六 巻 (百 廿 張 一 尺 六 寸 麻 紙 十 九 巻 者 先 進 己 詑 在 限 己 了 ) l 装 演 1 人 へ秦 東 人 ) 但 丈 部 曾 祢 万 呂 者 作 雑 多 紙 ' 自 飴 装 演 者 暇 退 一 仕 丁 二 人 (越 智 馬 甘 他 戸 平 方 呂 ) 一 鋳 備 之 日 ' 鋳 併 師 等 皆 云 、 六 月 上 目 内 定 可 奉 鋳 、 以 前 四 条 事 ' 随 牒 旨 進 送 報 知 ' (臼 山著) 元 年 閏 五 月 廿 八 日 史 生 「志 斐 万 呂 」 (続 々 修 四 四 ノ 一

へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 一

ノ 六 六 二 ) ) こ れ は ' 東 大 寺 の 装 演 所 か ら 大 安 寺 華 厳 院 へ 宛 て た 文 書 で あ る 。 当 時 大 安 寺 で は 華 厳 経 の 書 写 事 業 が 行 わ れ て お り 、 書 写 用 の 紙 を 東 大 寺 の 装 演 所 で 巻 物 に ま で 仕 立 て て ' 華 厳 院 へ 送 っ て い た 。 こ の 文 書 は 、 麻 紙 六 巻 と 装 演 1 人 ' 仕 丁 二 人 を 送 る 送 り 状 で あ る 。 二 行 目

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の 割 注 に ' 麻 紙 六 巻 に つ い て の 説 明 が あ る 。 1 巻 は 紙 を 二 十 張 張 り 継 ぐ の が 普 通 で あ り 、 百 二 十 張 1 尺 六 寸 の 麻 紙 を 貼 り 継 ぎ ま し た ' 十 九 巻 は 先 に 送 り 届 け て い ま す 、 お 預 か り し た 紙 は あ る 限 り す べ て 終 わ り ま し た . と い う 意 味 で あ ろ う . こ こ の 「在 限 」 rは 「限 り 在 り 」 と は 訓 め ず ' 「在 る 限 り 己 に 了 る 」 と 読 む の が 最 も 適 切 で あ ろ う と 考 え ら れ る 。 ⑩ 謹 啓 奉 請 経 井 疏 事 仁 王 経 (在 限 者 ) 仁 王 経 疏 (在 限 者 ) 右 ' 依 先 日 申 状 ' 今 附 堂 童 子 毛 人 ' 奉 請 如 件 ' 乞 必 庭 分 ' 勿 惜 留 給 ' 注 状 謹 啓 、 二 月 廿 三 日 教 輪 状 請 仁 王 経 疏 三 部 ( 一 部 二 巻 玄 範 師 1 部 二 巻 慧 静 師 1 部 三 巻 行 信 師 抄 [ ] ) 右 ' 以 五 年 二 月 廿 三 日 奉 請 教 輪 師 所 (即 使 ) 知 呉 原 生 人 - 1 90-上 馬 甘 (続 々 修 1 六 ノ 七 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 〓 1ノ 四 二

) ) ︽ 訓 読 ︾ 謹 み て 啓 す 経 井 び に 疏 を 奉 請 す る 事 仁 王 経 へ在 る 限 り な り ) 仁 王 経 疏 (在 る 限 り な り ) 右 ' 先 日 の 申 し 状 に 依 り て ' 今 堂 童 子 毛 人 に 附 け て 奉 請 す る こ と 件 の 如 し 。 必 ず 処 分 を 乞 ふ 。 惜 し み て 留 め 給 ふ こ と 勿 か れ 。 状 を 注 し て 謹 み て 啓 す 。 二 月 二 十 三 日 経 輪 状 す 。 請 は れ し 仁 王 経 疏 三 部 へ 一 部 二 巻 玄 範 師 一 部 二 巻 慧 静 師 一 部 三 巻 行 信 師 抄 [ ] ) 右 ' 五 年 二 月 廿 三 日 を 以 て 教 輪 師 の 所 に 奉 話 す 。 (即 使 ) (以 下 略 )

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こ れ は ' 東 大 寺 の 僧 教 輪 が ' 写 経 所 に 対 し て 仁 王 経 と 仁 王 経 疏 を 貸 し て 欲 し い と 頼 ん で 来 た 書 状 で あ る 。 別 筆 で ' 貸 し た 経 疏 が 一 部 二 巻 は 玄 範 師 の も の ' 一 部 二 巻 は 慧 静 師 の も の ' 一 部 三 巻 は 行 信 師 抄 で あ る こ と を 記 し ' こ れ ら を 経 輪 師 の 所 に 貸 し 出 し た 日 付 を 記 し ( て い る 。 「即 使 」 と い う 注 は こ の 書 状 を 持 っ て き た 使 に ' 貸 し 出 す 経 疏 を 持 た せ た こ と を 意 味 す る の で あ ろ う 。 「奉 請 」 は 「貸 し て く だ さ い と お 願 い す る 」 意 味 に も ' 「貸 し て あ げ る = お 経 に そ ち ら に 行 っ て い た だ く 」 意 味 に も 用 い て い る 。 呉 原 生 人 と 上 馬 甘 と が サ イ ン し て い る 。 [ 一 は 判 読 出 来 な い 文 字 で あ る 。 こ の 文 書 の 傍 線 部 も 「在 る 限 り な り 」 と 訓 み ' あ り っ た け 全 部 貸 し て く だ さ い の 意 と 解 す る の が 最 も 適 当 で あ ろ う 。 「必 ず 処 分 を 乞 ふ 。 惜 し み て 留 め 給 ふ こ と な か れ 」 と い う 文 脈 か ら し て も そ う 解 す る の が 適 切 で あ ろ う 。 四 ㌧ 「在 限 」 と い う 表 現 の 意 味 す る こ と さ て ' 三 例 の 「在 限 」 の う ち 、 ⑧ は 「有 限 」 の 誤 り と 考 え た が ' こ の よ う な 誤 り が 起 こ る の は 「有 限 」 を 音 読 み で な く ' 訓 読 み し て い た か ら で あ ろ う 。 正 倉 院 文 書 に 含 ま れ る 文 書 は ' 様 々 な 位 相 に よ っ て 違 い は あ る が ' 原 則 的 に は で き る だ け 正 格 の 漢 文 で 書 こ う と 志 向 し て い る と 思 わ れ る 。 「か ぎ り あ り 」 と い う 日 本 語 を 漢 訳 す る と 「有 限 」 だ と 思 っ て 表 記 し て い る わ け で あ る 。 文 書 の 中 に は 語 順 を 誤 っ た 例 も 多 数 見 ら れ る が ' 二 語 程 度 な ら 語 順 の 誤 り は 起 こ り に く い 。 と こ ろ が 、 「か ぎ り あ り 」 と 唱 え な が ら 漢 訳 す る た め 、 う っ か り 同 じ 「あ り 」 と 訓 む 「在 」 を 書 い て し ま う と い う こ と が 起 こ る の で あ る 。 ⑨ ⑲ の 例 は ' 「あ り っ た け 全 部 」 の 意 味 を 表 す 日 本 語 「あ る か ぎ り 」 を 漢 訳 し よ う と し て ' 適 切 な 漢 訳 が 出 来 な か っ た の だ ろ う と 考 え ら れ る 。 こ の 文 脈 で 「あ る か ぎ り 」 を 漢 訳 す る と す れ ば 、 「責 其 所 有 」 と で も 言 う べ き だ ろ う が 、 こ こ は ' 漢 訳 す る こ と を あ き ら め て 、 全 く 日 本 語 そ の ま ま を 漢 字 で 表 し た の で あ ろ う 。 語 順 も 日 本 語 そ の ま ま で あ る 。 二 例 と も 本 文 で は な く 割 注 に 現 れ る の も 、 や や 気 を 楽 に し て 書 い た の で あ ろ う 事 を う か が わ せ る 。 「あ る か ぎ り 」 は 京 に と く あ げ 給 て 、 物 語 の お は く 候 ふ な る ' あ る か ぎ り 見 せ 給 へ (﹃ 更 級 日 記 ﹄ ︹注 12 ︺ ) の よ う に 平 安 朝 に は 仮 名 で 書 か れ て そ の 存 在 が 明 ら か だ が ' 奈 良 時 代 の 例 と し て は 仮 名 書 き の も の は な い 。 し か し ' 「在 限 」 の 例 か ら 、

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奈 良 時 代 に も す で に 「あ る か ぎ り 」 と い う 言 い 方 は あ っ た の だ と い う こ と が 分 か る の で あ る 。 正 倉 院 文 書 は 、 僅 か に 見 ら れ る 万 葉 仮 名 表 記 を 除 い て は す べ て 漢 文 で あ る た め 、 こ れ ま で 日 本 語 資 料 と し て 顧 み ら れ て こ な か っ た が 、 こ の よ う に ' 奈 良 時 代 の 日 本 語 を 明 ら か に す る 手 か が り が 多 く 含 ま れ る 貴 重 な 資 料 で あ る と 言 う こ と が で き る で あ ろ う 。 注 ︹ 1 ︺ 狭 義 の 正 倉 院 文 書 は 、 正 修 以 下 、 続 々 修 ま で の 六 六 七 巻 五 冊 を さ す が ' こ こ で は 同 時 代 文 書 と し て ﹃大 日 本 古 文 書 (編 年 ) ﹄ (東 京 大 学 出 版 会 ) に 含 ま れ る 文 書 す べ て を 調 査 対 象 と し た 。 続 修 に 属 す る も の は ' 宮 内 庁 正 倉 院 事 務 所 編 ﹃ 正 倉 院 古 文 書 影 印 集 成 ﹄ (八 木 書 店 ) を ' 続 々 修 に 属 す る も の は 宮 内 庁 正 倉 院 事 務 所 撮 影 の マ イ ク ロ フ ィ ル ム 紙 焼 を 参 照 し た 。 ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ の 該 当 す る 箇 所 の 巻 頁 も あ わ せ て 記 し た 八

[

巻 一 ノ

[頁 一 ) 。 ﹃大 日 本 古 文 書 ﹄ の 翻 刻 の 誤 り は 写 真 に よ っ て 正 し た 。 ︹ 2 ︺ 青 木 和 夫 ほ か 校 注 ﹃続 日 本 紀 一

五 ﹄ (新 日 本 古 典 文 学 大 系 二 一

一 六 ' 岩 波 書 店 ' 一 九 八 九

一 九 九 八 年 ) に よ っ て 以 下 に す べ て の 例 を 挙 げ る 。 必 要 な 箇 所 以 外 は 書 き 下 し 文 を 引 用 す る 。 たて まつ ( 1 ) 甲 寅 、 天 皇 ' 中 宮 に 御 し ま す 。 高 斉 徳 ら ' そ の 王 の 書 ' 併 せ て 万 物 を 上 る 。 そ の 詞 に 日 く 「武 重 い 啓 す 。 -中 略 -生 理 有 限 ' 披 胆 末 期 。 時 ' 音 徴 を 嗣 ぎ て 永 く 隣 の 好 み を 敦 く せ む 」 と い ふ 。 (神 亀 五 年 正 月 甲 寅 条 ) 傍 線 部 は 「せ い り ゆ う げ ん ' ひ た む ご せ ず 」 と 訓 読 し て い る 。 「生 」 は 諸 本 「主 」 と あ る の を 意 改 し た も の 、 「胆 」 は 諸 本 に 「瞭 」 と あ る の を 「脆 」 に 意 改 し た も の で あ る 。 脚 注 に 「生 理 有 限 」 は 人 生 に 限 り の あ る こ と を い う t と す る が ' よ く わ か ら な い 。 「主 理 」 ' 「生 理 」 い ず れ で あ っ て も 意 味 は よ く 分 か ら な い 。 ま た ' 「披 瞭 」 な ら ば ' 「ひ ら き み る こ と 」 で あ り ' 「披 脆 」 な ら ば 「き も を ひ ら く こ と 」 で あ る 。 文 脈 か ら 判 断 す る と ' 潮 海 の 使 い が 潮 海 王 の 口 上 を 述 べ て い る 場 面 で あ り ' お 手 紙 に よ る 言 上 で は 限 界 が あ っ て ' お 互 い に 心 を 開 き う ち と け あ う こ と は ま だ 出 来 ま せ ん が ' 今 後 は 折 り あ る ご と に お 手 紙 を や り と り し て ' 隣 国 の 好 み を あ つ く し て 参 り ま し ょ う t と い う よ う な 意 味 で あ ろ う と 思 わ れ る 。 こ こ の 「有 限 」 は 限 界 が あ る t の 意 味 - 1

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88-︹ 3 ︺ ︹ 4 ︺ ︹ 5 ︺ ︹ 6 ︺ ︹ 7 ︺ ︹ 8 ︺ と 考 え て よ い だ ろ う 。 ( 2 ) 割 頑 固 ヨ 刊 、 首 , 従 を 間 は ず , 皆 。嘩 く 卦 に 配 せ む 。 (天 平 元 年 九 月 葵 亥 条 ) も かぎ り まう ただ ひと 傍 線 部 は 「若 し 限 の 内 に 首 さ ず し て ' 後 に 乱 し 告 げ ら る る 者 有 ら ば 」 と 訓 む 。 「有 限 」 は こ こ で は た ま た ま 連 続 し て い る だ け で ' 熟 し た 表 現 で は な い 。 ( 3 ) 王 臣 の 馬 の 数 は 格 に 依 る に 有 限 。 此 を 過 ぐ る 以 外 に 馬 を 蓄 ふ こ と 得 ざ れ 。 (天 平 宝 字 元 年 六 月 乙 酉 条 ) 傍 線 部 は 「か ぎ り あ り 」 と 訓 む 。 制 限 が あ る ' 限 り が あ る 、 の 意 で あ る 。 おも ひみ ( 4 ) 惟 る に ' 王 の 百 官 を 置 く こ と ' 材 を 量 り て 能 に 授 く 。 職 員 有 限 。 (天 応 元 年 六 月 戊 子 朔 条 ) しき 傍 線 部 は 「職 の 数 限 り 有 り 」 と 訓 む 。 宮 人 の 定 員 に は 限 り が あ る t の 意 で あ る 。 ( 5 ) 延 暦 元 年 十 二 月 辛 未 条 ・ 壬 中 条 。 本 稿 第 二 節 ① 参 照 。 ( 6 ) 内 親 王 と 内 外 の 命 婦 と は ' 服 色 有 限 ' 僧 差 す る こ と 得 ず 。 (延 暦 二 年 正 月 戊 寅 条 ) ぶ <し き 傍 線 部 は 「服 色 限 り 有 り 」 と 訓 む 。 服 の 色 に は 制 限 が あ る ' 身 に つ け る こ と が 許 さ れ る 色 に は 限 り が あ っ て 、 身 分 を 越 え 分 限 を 過 ぎ る こ と は 許 さ れ な い と い う 意 味 で あ る 。 ( 7 ) 京 畿 の 定 額 の 諸 寺 は ' 其 数 有 限 。 傍 線 部 は 「其 の 数 に 限 り 有 り 」 と 訓 む 。 京 師 や 畿 内 の 定 額 の 諸 寺 は 数 に 限 り が あ る t の 意 で あ る 。 ﹃ 万 葉 集 ﹄ 巻 一 六 ノ 三 八

四 の 題 詞 。 こ れ に 関 し て は 本 稿 第 二 節 ⑦ 参 照 。 根 津 美 術 館 蔵 。 奈 良 国 立 博 物 館 編 ﹃奈 良 朝 写 経 ﹄ (東 京 美 術 ' 一 九 八 三 年 ) 所 収 の 写 真 を 参 照 し た 。 新 日 本 古 典 文 学 大 系 ﹃続 日 本 紀 ﹄ (前 掲 ︹注 2 ︺ ) に よ る 。 必 要 な 箇 所 以 外 は 書 き 下 し 文 を 引 用 し た 。 井 上 光 貞 ほ か 校 注 ﹃律 令 ﹄ (日 本 思 想 大 系 三 、 岩 波 書 店 ' 一 九 七 六 年 ) の 書 き 下 し 文 に よ る 。 ( ) は 割 注 で あ る 。 以 下 同 じ 。 小 島 憲 之 ﹃ 上 代 日 本 文 学 と 中 国 文 学 中 ﹄ 塙 書 房 、 一 九 六 四 年 、 一

四 一

四 二 頁 。 (延 暦 二 年 六 月 乙 卯 条 )

(16)

︹ 9 ︺ 揮 潟 久 孝 ﹃高 菜 集 注 輝 巻 第 十 六 ﹄ 中 央 公 論 社 ' 一 九 六 六 年 ' 七 五

七 六 貢 。 ︹ 10 ︺ 伊 藤 博 ﹃常 葉 集 揮 注 八 ﹄ 集 英 社 、 一 九 九 八 年 ' 四

三 頁 。 ︹ 11 ︺ 以 下 に 正 倉 院 文 書 の 五 例 を 挙 げ る 。 ( 1 ) 中 室 浮 人 解 申 進 過 状 事 右 ' 浮 人 之 過 甚 深 、 不 能 浮 軽 、 凡 官 者 先 致 礼 敬 於 公 、 後 及 孝 悌 於 親 、 而 今 挿 入 在 過 違 礼 儀 、 以 既 奉 公 事 、 望 請 悔 悦 先 過 、 自 今 以 後 ' 情 動 不 怠 緩 ' -(続 修 一 九 八﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 六 ノ 一 六 二 ) ) そむ 傍 線 部 は 「以 て 既 に 公 事 に 乗 け り 」 と 訓 む 。 こ の 文 書 は 始 末 書 で あ る が ' 当 時 の 宮 人 の 「公 事 」 に 対 す る 認 識 を 表 し て い て 興 味 深 い 。 正 倉 院 文 書 の 「有 限 」 の 例 の ほ と ん ど が 「不 須 延 怠 」 「不 得 怠 延 」 「不 得 怠 」 「不 得 延 廻 」 「不 可 緩 怠 」 な ど と い う つつ し 文 言 と 共 に 用 い ら れ て い た が ' 中 室 挿 入 は 公 事 に そ む い た こ と を よ く 反 省 し て 今 後 は 恰 ん で 勤 め 怠 緩 せ ず ' と 言 っ て い る 。 ( 2 ) -若 有 障 公 事 者 ' 令 返 上 浄 衣 ' (続 々 修 一 八 ノ 六 裏 (﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 四 ノ 三 一 九 ・ 一 四 ノ 一 七 四 ) ) 傍 線 部 は 「も し 公 事 に 障 り 有 ら ば 」 と 訓 む 。 恵 美 押 勝 の 宣 に よ り ' 金 剛 般 若 経 一 千 二 百 巻 を 写 す た め ' 経 師 ・ 装 演 ら 六 人 を 彼 ら が 本 来 所 属 す る 役 所 に 請 う た 文 書 で t も L t 本 務 に 差 し 支 え あ る な ら ば 浄 衣 を 返 上 さ せ ま す t の 意 で あ る 。 ( 3 ) -自 今 以 後 ' 又 可 然 事 有 ' 此 逃 走 不 勘 給 者 ' 必 可 開 公 事 ' 乞 察 此 状 ' 到 必 可 勘 給 加 決 蔚 ' -(続 々 修 一 八 ノ 四 裏 へ﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 一 五 ノ 二 五 七 ) ) か 傍 線 部 は 「必 ず 公 事 を 閲 く べ し 」 と 訓 む 。 逃 走 し た 仕 丁 を 勘 し て 罰 を 加 え る よ う 求 め て い る 。 そ う し な い と 必 ず 公 務 に 支 障 が 出 る と 言 う の で あ る 。 ( 4 ) -馬 養 者 、 昨 今 日 間 ' 蒙 遠 恩 輝 (滞 ) ' 東 西 如 常 ' 但 明 公 何 ' 公 事 平 哉 ' 幸 甚 々 々 -(続 々 修 一 八 ノ 三 裏 (﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 一 五 ノ 二 一四 ) ) - 18

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6-いか ん 傍 線 部 は 「但 し 明 公 は 何 ぞ ' 公 事 平 ら か な る や 」 と 訓 む 。 手 紙 の 常 套 的 挨 拶 表 現 で あ る 。 ( 5 ) -司 不 随 教 導 ' 多 犯 乱 行 ' 因 玄 従 磨 省 大 詰 ' 自 今 以 後 ' 非 為 悪 行 ' 略 仕 奉 公 事 ︰ ・ (続 々 修 四

ノ 四 裏 (﹃ 大 日 本 古 文 書 ﹄ 二 三 ノ 一 八 一 ) ) つつ し 傍 線 部 は 「絡 ん で 公 事 に 仕 え 奉 ら む 」 と 訓 む 。 こ れ も (1 ) と 同 じ く ' 始 末 書 で あ る 。 ど の よ う な 乱 行 を 犯 し た の か ' 高 向 晴 成 ' 根 岩 足 ' 上 氏 成 、 香 山 久 須 万 呂 の 四 人 が 連 署 し て い る 0 こ れ ら の 例 か ら も ' 「公 事 」 と い う 言 葉 が ' 文 字 を 読 み 書 き し て 仕 事 を し て い る 官 人 に と っ て ご く 慣 れ 親 し ん だ 言 葉 で あ っ た こ と が う か が わ れ る 。 ︹ 12 ︺ 吉 岡 噴 ほ か 校 注 ﹃土 佐 日 記 ・ 鯖 輪 日 記 ・ 紫 式 部 日 記 ・ 更 級 日 記 ﹄ (新 日 本 古 典 文 学 大 系 二 四 ' 岩 波 書 店 ' 一 九 八 九 年 ) に よ る 。 謝 辞 本 稿 を な す に あ た っ て 、 松 尾 芳 樹 先 生 ' 杉 本 一 樹 先 生 の ご 指 導 を 頂 い た 。 ま た 、 桑 原 祐 子 氏 、 黒 田 洋 子 氏 、 中 川 ゆ か り 氏 の ご 助 言 を 得 た 。 こ こ に 記 し て 感 謝 の 意 を 表 し ま す 。

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