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都市化進行中の中国農村部における義務教育段階の「学校選択」に関する研究 -「学校選択」理由に対する家庭背景の影響に着目して- [ PDF

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1.目次 序章 1.研究目的と研究意義 2.研究背景と研究課題 3.先行研究における本研究の位置づけ 4.研究方法 5.論文の構成 第一章 学校選択に関する外国の経験 1.諸外国の学校選択と学校選択制の導入 2.親の学校選択理由について 3.学校選択に影響する家庭背景要因の概観 第二章 中国における「学校選択」とその背景 1.中国の「学校選択」とは 2.学校選択の経済的背景 3.「学校選択」の政策的背景 第三章 中国農村部における「学校選択」の増加とその影 響 1.農村部における経済格差の要因 2.教育格差の拡大 3.「学校選択」の増加とその影響 第四章 調査の枠組みと概況 1.調査方法の設定 2.変数の構成 3.調査概況 第五章 調査結果の分析 1.農村部の「学校選択」における親の選択理由につい て 2.親の選択理由に対して、家庭背景の影響について 終章 全体のまとめと今後の課題 1.全体のまとめ 2.今後の課題 序章 中国における、改革開放政策の実施、及び市場経済の 導入に従い、経済の高速発展の一方、社会資源配分の不 均等問題は深刻化するようなった。この問題の影響を受 け、学校間の格差によって引き起こされた「学校選択」 も社会問題として注目されるようになった。この問題は、 新中国が成立して以来ずっと存在していたが、1990 年代 以降、経済状況の改善に従い、それは、小部分の人から 一般民衆まで広がった。選択基準も生徒の学力から、お 金や権力などのコネに変わった。特に、1990 年代後半か ら加速した都市化と高学歴化の影響を受け、農村家庭の 経済状況がずいぶん改善された一方、「学校選択」も増加 するようになった。これは、学校間格差の拡大や、基礎 教育の落後、教育資源の浪費、就近入学制度の揺れなど 様々な社会問題をもたらした。 このような研究背景を踏まえ、本研究の目的は、まず 諸外国の経験から、学校選択、学校選択制の出現・発展、 及び親の選択理由について明らかにする上で、中国にお ける「学校選択」の原因、発展及び現状についてまとめ、 農村部における「学校選択」の増加、原因及び問題点につ いて分析し、さらに、親の選択理由に焦点を当て、都市 化と高学歴化を社会背景として、農村部親の選択理由、 及び家庭背景がそれに与える影響を明らかにする。 さらに、以上の目的に基づき、本研究の研究課題は、 次のようになる。第一、都市化と高学歴化しつつある農 村部における、学校選択に対して親の選択理由を明らか にすること。第二、農村部における、収入と親学歴が、 学校選択理由にどんな影響があるのかについて考察する。 ここで、選択主体としての親は、家庭の収入や学歴な どの家庭背景の影響を受け、農村部基礎教育の問題点に

都市化進行中の中国農村部における義務教育段階の「学校選択」に関する研究

―「学校選択」理由に対する家庭背景の影響に着目して―

キーワード:中国都市化,高学歴化,農村部の学校選択,家庭背景,親の選択理由 所属:教育システム専攻 氏名:徐 誉芝

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対する認識や、「学校選択」選択に対する態度が異なって くる。そのため、親の選択理由に着目して、「学校選択」 の発展、及び農村部「学校選択」現状に対する検討は、「学 校選択」問題を認識するのに重要な意味を持っている。さ らに、近年、都市化と高学歴化といった社会変化は、親 の教育観を始めとする農村部基礎教育の各方面に大きな 変化をもたらした。そのため、社会背景の中で、選択理 由を考察することは、「学校選択」問題を正確に認識する ことに根拠を提供する一方、中国社会における教育機会 の不平等を改善するため、より効果的な政策を作成する ための重要な基礎資料になるだろう。 第一章 学校選択に関する外国の経験 第一章では、欧米や日本などの先進国の研究を踏まえ、 学校選択の出現、発展、現状について整理する。その上 で、とくに学校を選択するときに親たちの選択理由につ いて注目する。

学校選択は、理論として

1950 年代芽生え、1980

年後半から、教育制度として、アメリカを代表とし

ての先進国で定着した。

さらに

1990 年代後期から、

日本を代表としてのアジアまで広がった。

この学校 選択制は、教育機会の保障、公教育の質向上、保護者の 教育権の保障などを目的として作られた。しかしながら、 この制度は効果ばかりではなく、様々な問題も引き起こ した。効果といえば、学力の向上、公的支出の削減、教 育の多様化、いじめ・不登校などの教育的配慮の対応な どが挙げられる。その反面、教育格差の助長、子ども間 の地縁コミュニティの崩壊、風評や噂による選択などの 問題で、一部の学者に批判されている。 また、市場経済の発展、および公教育に多様性の要求 従い、学校選択はより多くの国に認められるようになっ た。その同時に、親の選択理由や基準に関する外国の研 究も増えてきた。これらの研究を見通して、親の選択理 由について、主に通学問題、友人関係、教育内容、ピア グループ効果、学級規模、学校施設などにまとめられる。 さらに、諸外国の経験により、家庭背景の影響から、 親の選択理由を見るとき、一般的に親の職業・社会地位、 及び親学歴を主要な家庭背景として考察する。その中で、 社会地位と学歴は、階層の指標として一緒に見るのが普 通である。そのため、階層と学校選択について、次のよ うにまとめられる。つまり、社会地位、親の学歴が高い ほど、それに関する情報の収集力が強くなり、学校選択 の意欲も高くなる。しかしながら、中国においては、学 校選択は教育制度に認められなく、個人行為として存在 している。特に、社会地位や収入と学歴の非一貫性も顕 著である(劉、李 2010)ため、外国の研究のように、社会 地位や収入と学歴を一緒に見るのは適当ではなくなるだ ろう。 第二章 中国における「学校選択」とその背景 中国における「学校選択」とは、教育資源の配分が不 均等である状況の上で、一部の親が優秀な教育資源を追 究するために、指定された以外の学校を選ぶことである。 そこに問題視とされたのは、学校選択現象での‘択校収 費’問題である。ここの‘択校収費’とは、指定された 以外の学校を選択する時、必要な費用以外、学校によっ て付加的に、様々な名目で高額な費用を徴収することで ある。例えば、択校費、学校建築費、借読費などの項目 がよく見られる。これは、中国公教育の公平を脅かして いる。 この学校選択熱の出現は、偶然ではなく、様々な歴史 的な原因が潜んでいる。 経済の面から見れば、主に教育における財政の地方分 権と教育投資の不均衡から検討する必要がある。財政の 地方分権と同時に、教育支出を地方政府に任せ、地方ご とに自分の状況に応じて、地方のアイデアを生かしなが ら義務教育を発展させていく方針をとった。2006 年の 『中国統計年鑑』のデータを見れば、地方政府は教育支 出の7 割を負担した。その結果、東部と西部、都市と農 村、また地域内部に明確な格差が存在している中国にお いて、一部の発達地区の教育の普及がかなり進んでいる 一方、経済条件が欠乏している地域において、教育投入 が不足し、教育条件に問題を抱え、小中学校の教員が不 足しており、崩壊の危機にある危険な校舎を使用してい る(楠山、2010)。また、高速的に発展している経済の要 求で、短時間で大量な人材を育成するために、政府の教 育投資は高等教育に偏っている。2012 年のデータで見れ ば、学生1人当たり予算内教育経費支出は高等学校が 16825.5 元に対し、義務教育段階である中学校と小学校 はそれぞれ8193.0 元、5940.3 元であった。さらに、高 等教育への傾斜だけではなく、教育投資の都市と農村の 差も、「学校選択」問題を深刻化する原因の一つである。 『中国教育統計年鑑』2010 年のデータによると、都市部 と農村部の在校生の比は、小学校1:4、中学校 1:3 で あったのに対して、都市部義務教育の経費は、農村部の 1.59 倍であった。 政策の面から見れば、「学校選択」に影響している主な のは、戸籍制度、重点学校政策と転制学校政策が挙げら れる。中国の戸籍制度は、人口の流動をコントロールす るため、明確に都市戸籍と農村戸籍に分けている。都市

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戸籍の保有者と比べ、農村戸籍保有者は、社会待遇など 様々の側面で不利益を被っている。例えば、前に述べた 教育投資の差、大学入試に関する戸籍問題、都市に住ん でいる出稼ぎ者の子どもの就学難問題などの社会問題は 注目されている。また、限られた資源を効率的に利用す るため、厳しい競争のテストで選抜した生徒を優秀な教 師と整った設備の学校に入れ、予算を重点的に配分する という重点学校政策の実施は、学校間格差の拡大をもた らしただけではなく、「学校選択」問題の深刻化も引き起 こした。この政策は、2006 年の新『義務教育法』に禁止 され、形式上に消えたが、重点校時代の重点小中学校は 教育資源や、名誉などに恵まれているため、依然として 優秀学校であると公認されている。さらに、1990 年代に、 教育資源不足の問題を解決するために、政府は市場経済 体制を生かし、民間から資源を吸収することにした。こ のように、「民営公助」と「国営民助」といった形式の転 制学校が出現した。このような学校は、もともと優秀な 国営学校であったため、民間の資源を吸収した後、設備 や教員などの条件がさらに高められた。学校間格差もよ り一層拡大されるようになった。 このように、戸籍制度、重点校政策、及び転制学校政 策などの政策の影響で、「学校選択」問題が深刻化されつ つある。 第三章 中国農村部における「学校選択」の増加とその 影響 改革開放以来、基礎教育の普及に対する重視と農村教 育問題の顕著化に従い、中央政府は、農村学校のハード 面とソフト面の両方から入手し、農村教育を改革するた めに、多くの政策措置を取った。しかしながら、各地方 のおかれている状況は異なっており、地方によっては政 府の実施能力も強いか弱いか、それぞれである。また、 政府は、基本方針を示すのみで具体的な人員配置や予算 措置を講じていないため、同じ農村地域において、地方 によって、基礎教育の格差が大きい。その格差は、主に 図1 が示したような経済格差、流動人口の増加が加重し た学校間格差、および「新読書無用論」の流行りが招いた 親教育観間格差に分けられる。これらの格差の影響を受 け、農村部「学校選択」は増加するようなった。 図1.2012 年中国の各地域における都市部と農村部の人 均年収入(元) (国家統計局『中国統計年鑑』2013 年度版のデータに基 づき作成) これは、農村部の基礎教育に様々な問題をもたらした。 マクロレベルで見れば、教育機会平等への脅威、就近入 学制度の揺れ、農村部学校間格差の拡大などの問題が挙 げられる。さらに、ミクロレベルで見れば、農村家庭の 経済負担の増加、学生心理上のストレスを加重すること などが見られる。 第四章 調査の枠組みと概況 本研究は、都市化と高学歴化を背景として、農村部親 の学校選択理由に対する家庭収入と親学歴の家庭要因の 影響を明らかにするため、調査票調査を通じて、回帰分 析を行って考察する。本調査は、山東省青島市の農村地 域で、中学進学を直面している小学校 5、6 年生の親を対 象として実施した。 近年、政府の発展計画に従い

青島市に付属する農村 地域の都市化スピードが加速され、経済状況は大分改善 された。これは、子ども教育に対する親の要求を大きく 刺激し、「学校選択」問題も注目されるようになった。そ のため、青島市の農村地域を選定した。また、中国にお ける義務教育段階の「学校選択」は、小学校の選択と中学 校の選択に分けられるが、中学校の選択が圧倒的に多い である。そのため、中学校の選択について調査を行った。 さらに、選出した農村地域で、教育資源に恵まれた昔の 地方中心小学校A と、県レベル市の郊外に位置し、設備 などが優れている新興小学校B を代表として選定した。 変数の構成について、本論文の研究課題と仮説によっ て、独立変数は、学校の評判(問 11a)、学校選択費の高 さ(問 11b)、家庭の収入(問 6)、及び親学歴(問 5)である。 従属変数は、親の選択意欲(問 10)、主要な学校選択理由 (問 11)にした。さらに、家庭の収入と学歴別に、親の選 択意欲を分析するとき、知り合いの中で選択ケースの多 寡(問 14)をコントロールして、検定を行った。 第五章 調査結果の分析 調査の結果から見れば、「学校選択」に対して、農村部 親の主要な選択理由は、子どもの成績(69.87%)、優秀な 0 10000 20000 30000 40000 東部 中部 西部 東北 平均 都市部人均年収 入(元) 農村部人均年収 入(元)

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教師の割合が高いこと(64.74%)、学校の評判が良いこと (64.1%)、学校の設備が完備であること(46.15%)、選択 対象校の子どもが優秀であること(44.87%)、特色教育の 有無(40.38%)の六つである。従来重視されていた理由の 学校の評判と選択費用問題について分析すると、学校の 評判(64.1%)は依然として親たちが重視している主な理 由の一つであるが、家庭の経済状況、つまり学校選択費 に対する考慮(23.72%)は学校選択を左右する主な原因 ではなくなったと考えられる。 また、調査結果によって、多くの農村部親は、「学校 選択」に対して保守的な態度をとっている。さらに、家庭 の経済状況と親学歴別に見れば、学歴は選択意欲に与え る影響が明らかではないが、家庭の経済状況は、学校選 択に影響を与えている。とくに、知り合いの中で学校選 択ケースの多寡を統制変数としていれると、学校選択ケ ース「たくさんいる」と答えた場合ほど、明らかに家庭の 収入が高いと、学校選択意欲が高くなる傾向が見える。 さらに、家庭の収入と親学歴別に、主要な選択理由を 考察すると、「学校の評判が良い」の理由以外、それぞれ である。つまり、収入別に見れば、家庭の収入が高いほ ど、「子ども成績」、「優秀な教師の割合」、及び「学校の設 備の完備」の理由を重視する。その一方、親学歴別に見る 場合、親の学歴が高いほど、「選択対象校の子どもが優秀 である」、「特色教育の有無」を重視する。 終章 全体のまとめと今後の課題 「学校選択」は、中国現在の発展段階の必然産物として、 すぐに解決できない問題だろう。特に、農村部における 「学校選択」の増加は、教育機会の不平等や就近入学制度 の揺れなどの社会問題を引き起こした。これを背景とし て、本研究は、家庭背景と親の選択理由について考察し た。分析結果によって、学校選択意欲に与えた、家庭収 入の影響は、親学歴の影響より顕著であるが、選択理由 の一つとしての選択費問題は、すでに農村部親が重視し ている主要な理由ではなくなった。これより、経済原因 は「学校選択」に与える影響力は減っているのではないか と考えられる。それに対して、親学歴の影響はまだ顕著 ではないが、中国高学歴化の発展に従い、将来その影響 が強くなることは見込まれるだろう。 また、家庭の収入と親学歴別に、主要な選択理由を考 察すれば、「学校の評判」以外、それぞれ影響している理 由は逆転している。「学校の評判」に対する重視は、中国 教育の歴史において、重点学校制度、転制学校制度など の教育制度の実施がもたらした学校間格差の存在が、事 実として親たちに認められているからである。それ以外 の理由に対して、家庭背景の影響は次のようにまとめら れる。それは、家庭の収入が、「子どもの成績」のような 客観的な根拠または基準がある選択理由に影響しやすい が、親の学歴は「選択対象校の子どもが優秀である」のよ うな主観的に判断される選択理由に影響しやすい。 以上の分析より、たくさんの研究課題が残されたが、 ここで主に二つについて言及する。一つ目は、選択理由 の検討についてである。諸外国の研究を参照しながら、 調査票に 12 個の理由を設定したが、中国の状況に合わ せる選択理由、例えば、調査票で親が提出した学校の寮 安全問題、食堂の食品衛生問題などの考察は不十分であ る。そのため、調査を行う際、予備調査またはインタビ ュー調査を利用して、中国親の学校選択理由に対する継 続的な検討は今後の課題の一つである。もう一つは、主 な学校選択理由に対して、家庭の収入と親学歴の影響が 表した不一致性についての考察である。この不一致性は、 現在中国における社会地位や収入と学歴の非一貫性に影 響を受けた結果であるのか。さらに、その非一貫性が農 村部にもたらした「新読書無用論」は、農村部親の教育観 にどれほど影響しているのか。これらの問題の検討も今 後の課題となる。 主要参考文献 荒井文雄,2011,「フランスにおける学校選択と社会階 層」、京都産業大学論集.社会科学系列28、287-317 楠山研,2010,『現代中国初中等教育の多様化と制度改 革』、東信堂 楠山研,2003,「中国における小学校と初級中学の接続 に関する考察」『京都大学大学院教育学研究書紀要』 第49 号、P376~386 黒崎勲,2004,『新しいタイプの公立学校』日日教育文 庫、第4 章 児山正史,2012,「準市場の優劣論と日本の学校選択 (1):実証的調査・研究の整理」、人文社会論叢.社 会科学篇、27、2012、P103~123 児山正史,2014,「準市場の優劣論とイギリスの学校選 択の公平性・社会的包摂への影響(1)」、人文社会 論叢. 社会科学篇 (32),P 95~110, 2014-08-29 徐家軍,2012,「農村中小学択校問題研究―山東高唐を 例として」、『山東師範大学』2012 蘇于君,2011,「中国における農村教育の発展とその課 題」、神戸大学鶴山論叢、第11 号 劉学東・李敏,2010,「農村中小学生択校問題研究」、現 代中小学校教育、2010.1、No3

参照

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