博 士 (国 際 広 報 メ デイ ア) 田中 洋也
学 位 論 文 題 名
語親密度に基づく英語語彙学習方略支援 学位論文内容の要旨
本研究は,教室を中心に外国語として英語を学ぶ学習者の語彙学習に貢献することを目的として いる。研究課題は,次の3点である。(1)高校生,大学生の日本人英語学習者の語彙学習方略使用 実態の調査。(2)日本人英語学習者を対象とした語彙学習方略用診断質問紙の開発。(3)自律的 な 語 彙 学 習 方 略 使 用 を 支 援 す る 教 育 介 入 方 法 の 確 立 と , そ の 効 果 の 検 証 。 研究1では,高校1年生の英語学習者を対象に,語彙学習方略使用と語彙知識定着度の関係を分 析した。結果から,高校1年生段階では,全般的に方略使用が活発ではないこと,実行が容易な認 知処理の浅い方略を使用する傾向があること,が示された。また,探索的因子分析の結果,先行研 究と類似する「体制化」,「イメージ化」,「反復」の3因子を抽出した。あわせて,語彙定着度によ り参加者を5群に分けて分析した結果,下位と上位の学習者群の間に,体制化方略,イメージ化方 略で有意な差が示された。また,習熟度段階によって語彙学習方略使用が変容する傾向が見られた。
研究2では,高校1年生から大学1年生までの学習者を対象に,語彙学習方略使用と産出語彙知 識の関係を考察した。その結果,先行研究による語彙学習方略3因子構造から発展した4因子によ る構造を抽出した。先行研究と同様の「体制化方略」,反復方略とイメージ化方略が統合された「リ ハーサル方略」に加えて「記録方略」,「言語接触方略」の2つの方略が確認された。調査対象者の 学習経験年数を拡大した結果,学習経験,習熟度による学習方略使用の変容を裏づける結果を得た。
学習経験が増えるに従い,積極的に活用される方略は体制化方略や学習目標設定に関わる方略など であり,学習の統制や知識のネットワーク化が発展していく傾向を示していた。一方,音韻情報,
文字情報と意味の一致など認知処理の深い方略に移行していく傾向も示された。語彙学習方略使用 と産出語数との関係では,作文中の産出語数により参加者を4群に分けて分析を行った。その結果,
産出語数のもっとも多い学習者群と他の学習者群の差は,言語接触方略の使用にあり,産出語数の 多い学習者は,言語接触量,言語産出機会を確保する方略を積極的に用いていることが示された。
研究1,研究2の結果から7因子を想定した語彙学習方略質問紙を作成し,大学1年生の英語学 習者1,003名を対象に語彙学習方略使用の実態を解明するため,研究3を行った。確認的因子分析の 結果から,単純リハーサル方略,筆記リハーサル方略,記録方略,体制化方略,言語接触方略,メ タ認知制御方略の7因子による語彙学習方略使用は,モデルとして十分な適合度を示した。また,
学習者の語彙学習に関する自由記述回答をコード化して分類した結果,分類の多くが語彙学習定着 方略の7因子とその下位項目と重なっていることが示された。ー方で,学習方略の有用性認識と実 際の方略使用の間に差があることも明らかとなった。
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研 究3に よ り 確 認 さ れ た7因 子 に よ る 語 彙 学 習 方 略 質 問 紙 に っい て因 子 の信 頼陸 の改 善, 質 問紙 の 学 習方 略診 断手 段 とし ての 実際 的利 用 を想 定し た項 目の 精 選を 目的 に2度の 予備 的調査を実施し た 。 予 備 調査 に もと づぃ て質 問紙 を 改訂 し, 定着 語 彙学 習方 略29項目 か らな る語 彙学 習方 略 質問 紙 第6版 を 作 成し ,研 究4で用 いる こ とと した 。ま た ,語 彙学 習方 略質 問 紙は ,イ ンタ ーネ ッ ト環 境 で 使用 でき る学 習 管理 シス テム に搭 載 し, 科目 履修 開始 時に語彙知識 ,語彙学習方略を診断し,
学 習方略使用のふりかえりを 促す手段として確立した。
本 研究 では ,学 習 方略 使用 を選 択す る 基準 とな るよ うに ,ある特定の 語に関する学習者個人の語 彙 知 識の 程度 とし て 語親 密度 の概 念を 導 入し た。 研究4で は, 大学 生 英語 学習 者を 対象に,語親密 度 に もと づぃ た電 子 ポー トフ ォリ オに よ る語 彙学 習方 略指 導を行い,語 彙学習方略使用と語彙知識 の 変 化を 考察 した 。 語彙 学習 指導 に先 だ って ,参 加者 の語 彙学習方略使 用と語彙知識の関係を調査 し た 。そ の結 果, 新 しい 語に 出会 った 初 期段 階に 用い る, 語の形式と意 味を一致させるための初期 方 略 群( 音声リハ ーサル方略,筆記リハーサル 方略)と,語の知識を強化 ・拡大する発展方略群(記 録 方 略, 参照 方略 , 体制 化方 略, 言語 接 触方 略) のそ れぞ れに対して, メタ認知制御方略が影響を 与 え て い る7因子 間の 関 係が 判明 した 。ま た ,初 期方 略と 発展 方 略の2つ の方 略群 のう ち, 知 識の 広 さ ,深 さ, 語彙 ・ 文法 の運 用能 カに よ って 構成 され る語 彙知識に有意 に貢献するのは発展方略群 の み で あ った 。 語彙 学習 方略 指導 を10週 間実 施し た 結果 ,音 声リ ハー サ ル方 略, 記録 方略 , 言語 接 触 方 略 の使 用 が有 意に 上昇 した 。 個々 の方 略で も29項 目中 ,23項目 に おい て平 均値 が上 昇 し,
う ち13項 目は 統 計的 に有 意で あっ た 。ま た, 全体 的 な語 彙学 習方 略も 事 後に おい て有 意に 上 昇し た 。 さら に, 電子 ポ ート フォ リオ 使用 と 語彙 知識 定着 度の 関係を分析し た。学習者群間の比較によ り , 特に 得点 が高 い 学習 者と その 他の 学 習者 を分 ける 方略 は,編集回数 で示されるメタ認知制御方 略 と 記録 項目 数で 示 され る記 録方 略で あ った 。同 様の 結果 は,質問紙調 査における各因子平均値を 学 習 者群 間で 多重 比 較し た分 析で も確 認 され た。 また ,全 体としては電 子ポートフォリオ使用記録 上 の 語彙 学習 方略 の 使用 が活 発に なる に っれ て, 学習 対象 として設定さ れた語彙知識の定着が促進 さ れ る傾 向に あっ た 。電 子ポ ート フォ リ オを 用い た学 習に 関しては,そ の有用性が,参加者に高く 認 識 され ,イ ンタ ビ ュー 調査 でも 語親 密 度に よる 「知 識の 可視化」がメ タ認知的モニタリングとし て 機 能 し , 「 学 習 方 法 の 選 択 」 が メ タ 認 知 的 コ ン ト ロ ー ル と し て 機 能 し た こ と が 示 さ れ た 。 本 研究 で得 られ た 結果 は, 以下 の5点に 集約 さ れる 。(1)日本人大学 生の英語学習者の語彙学習 方 略 は, 音声 リハ ー サル 方略 ,筆 記リ ハ ーサ ル方 略, 記録 方略,体制化 方略,参照方略,言語接触 方 略 ,メ タ認 知制 御 方略 の7方 略 に分 類さ れる 。 (2)7方 略は ,音 声 リハ ーサ ル方 略と筆記リハー サ ル 方略 から なる 初 期方 略群 と, 記録 方 略, 体制 化方 略, 参照方略,言 語接触方略からなる発展方 略 に 大別 され ,そ れ ぞれ の方 略使 用はメタ認 知制御方略によって駆動され る。(3)語彙知識習熟度 を , 語彙 知識 の広 さ ,語 彙知 識の 深さ , 文法 知識 と関 連し て 用い る語 彙運 用 能カ の3つの側面で構 成 さ れる もの と仮 定 した 場合 に, 影響を与え るのは発展方略群である。(4)学習者が,語親密度に も と づぃ て語 彙知 識 を評 価, 管理 し, 学 習方 略を 選択 する ことで音声リ ハーサル方略,記録方略,
言 語接触方略の使用が活J陸r匕し,その結果として語彙学習方略全体の使用が活´1生化される。(5〕語 親 密 度に もと づぃ て 使用 され た語 彙学 習 方略 の中 で, メタ 認知制御方略 ,記録方略,体制化方略が 語 彙知識定着度と関係する方 略であった。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 河 合 靖 副査 教授 園 田勝英
副査 准教授 笠原 究(北 海道教育大学旭川校)
学 位 論 文 題 名