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語親密度に基づく英語語彙学習方略支援 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 (国 際 広 報 メ デイ ア) 田中 洋也

学 位 論 文 題 名

語親密度に基づく英語語彙学習方略支援 学位論文内容の要旨

  本研究は,教室を中心に外国語として英語を学ぶ学習者の語彙学習に貢献することを目的として いる。研究課題は,次の3点である。(1)高校生,大学生の日本人英語学習者の語彙学習方略使用 実態の調査。(2)日本人英語学習者を対象とした語彙学習方略用診断質問紙の開発。(3)自律的 な 語 彙 学 習 方 略 使 用 を 支 援 す る 教 育 介 入 方 法 の 確 立 と , そ の 効 果 の 検 証 。 研究1では,高校1年生の英語学習者を対象に,語彙学習方略使用と語彙知識定着度の関係を分 析した。結果から,高校1年生段階では,全般的に方略使用が活発ではないこと,実行が容易な認 知処理の浅い方略を使用する傾向があること,が示された。また,探索的因子分析の結果,先行研 究と類似する「体制化」,「イメージ化」,「反復」の3因子を抽出した。あわせて,語彙定着度によ り参加者を5群に分けて分析した結果,下位と上位の学習者群の間に,体制化方略,イメージ化方 略で有意な差が示された。また,習熟度段階によって語彙学習方略使用が変容する傾向が見られた。

  研究2では,高校1年生から大学1年生までの学習者を対象に,語彙学習方略使用と産出語彙知 識の関係を考察した。その結果,先行研究による語彙学習方略3因子構造から発展した4因子によ る構造を抽出した。先行研究と同様の「体制化方略」,反復方略とイメージ化方略が統合された「リ ハーサル方略」に加えて「記録方略」,「言語接触方略」の2つの方略が確認された。調査対象者の 学習経験年数を拡大した結果,学習経験,習熟度による学習方略使用の変容を裏づける結果を得た。

学習経験が増えるに従い,積極的に活用される方略は体制化方略や学習目標設定に関わる方略など であり,学習の統制や知識のネットワーク化が発展していく傾向を示していた。一方,音韻情報,

文字情報と意味の一致など認知処理の深い方略に移行していく傾向も示された。語彙学習方略使用 と産出語数との関係では,作文中の産出語数により参加者を4群に分けて分析を行った。その結果,

産出語数のもっとも多い学習者群と他の学習者群の差は,言語接触方略の使用にあり,産出語数の 多い学習者は,言語接触量,言語産出機会を確保する方略を積極的に用いていることが示された。

  研究1,研究2の結果から7因子を想定した語彙学習方略質問紙を作成し,大学1年生の英語学 習者1,003名を対象に語彙学習方略使用の実態を解明するため,研究3を行った。確認的因子分析の 結果から,単純リハーサル方略,筆記リハーサル方略,記録方略,体制化方略,言語接触方略,メ タ認知制御方略の7因子による語彙学習方略使用は,モデルとして十分な適合度を示した。また,

学習者の語彙学習に関する自由記述回答をコード化して分類した結果,分類の多くが語彙学習定着 方略の7因子とその下位項目と重なっていることが示された。ー方で,学習方略の有用性認識と実 際の方略使用の間に差があることも明らかとなった。

    ‑ 1549−

(2)

研 究3に よ り 確 認 さ れ た7因 子 に よ る 語 彙 学 習 方 略 質 問 紙 に っい て因 子 の信 頼陸 の改 善, 質 問紙 の 学 習方 略診 断手 段 とし ての 実際 的利 用 を想 定し た項 目の 精 選を 目的 に2度の 予備 的調査を実施し た 。 予 備 調査 に もと づぃ て質 問紙 を 改訂 し, 定着 語 彙学 習方 略29項目 か らな る語 彙学 習方 略 質問 紙 第6版 を 作 成し ,研 究4で用 いる こ とと した 。ま た ,語 彙学 習方 略質 問 紙は ,イ ンタ ーネ ッ ト環 境 で 使用 でき る学 習 管理 シス テム に搭 載 し, 科目 履修 開始 時に語彙知識 ,語彙学習方略を診断し,

学 習方略使用のふりかえりを 促す手段として確立した。

  本 研究 では ,学 習 方略 使用 を選 択す る 基準 とな るよ うに ,ある特定の 語に関する学習者個人の語 彙 知 識の 程度 とし て 語親 密度 の概 念を 導 入し た。 研究4で は, 大学 生 英語 学習 者を 対象に,語親密 度 に もと づぃ た電 子 ポー トフ ォリ オに よ る語 彙学 習方 略指 導を行い,語 彙学習方略使用と語彙知識 の 変 化を 考察 した 。 語彙 学習 指導 に先 だ って ,参 加者 の語 彙学習方略使 用と語彙知識の関係を調査 し た 。そ の結 果, 新 しい 語に 出会 った 初 期段 階に 用い る, 語の形式と意 味を一致させるための初期 方 略 群( 音声リハ ーサル方略,筆記リハーサル 方略)と,語の知識を強化 ・拡大する発展方略群(記 録 方 略, 参照 方略 , 体制 化方 略, 言語 接 触方 略) のそ れぞ れに対して, メタ認知制御方略が影響を 与 え て い る7因子 間の 関 係が 判明 した 。ま た ,初 期方 略と 発展 方 略の2つ の方 略群 のう ち, 知 識の 広 さ ,深 さ, 語彙 ・ 文法 の運 用能 カに よ って 構成 され る語 彙知識に有意 に貢献するのは発展方略群 の み で あ った 。 語彙 学習 方略 指導 を10週 間実 施し た 結果 ,音 声リ ハー サ ル方 略, 記録 方略 , 言語 接 触 方 略 の使 用 が有 意に 上昇 した 。 個々 の方 略で も29項 目中 ,23項目 に おい て平 均値 が上 昇 し,

う ち13項 目は 統 計的 に有 意で あっ た 。ま た, 全体 的 な語 彙学 習方 略も 事 後に おい て有 意に 上 昇し た 。 さら に, 電子 ポ ート フォ リオ 使用 と 語彙 知識 定着 度の 関係を分析し た。学習者群間の比較によ り , 特に 得点 が高 い 学習 者と その 他の 学 習者 を分 ける 方略 は,編集回数 で示されるメタ認知制御方 略 と 記録 項目 数で 示 され る記 録方 略で あ った 。同 様の 結果 は,質問紙調 査における各因子平均値を 学 習 者群 間で 多重 比 較し た分 析で も確 認 され た。 また ,全 体としては電 子ポートフォリオ使用記録 上 の 語彙 学習 方略 の 使用 が活 発に なる に っれ て, 学習 対象 として設定さ れた語彙知識の定着が促進 さ れ る傾 向に あっ た 。電 子ポ ート フォ リ オを 用い た学 習に 関しては,そ の有用性が,参加者に高く 認 識 され ,イ ンタ ビ ュー 調査 でも 語親 密 度に よる 「知 識の 可視化」がメ タ認知的モニタリングとし て 機 能 し , 「 学 習 方 法 の 選 択 」 が メ タ 認 知 的 コ ン ト ロ ー ル と し て 機 能 し た こ と が 示 さ れ た 。   本 研究 で得 られ た 結果 は, 以下 の5点に 集約 さ れる 。(1)日本人大学 生の英語学習者の語彙学習 方 略 は, 音声 リハ ー サル 方略 ,筆 記リ ハ ーサ ル方 略, 記録 方略,体制化 方略,参照方略,言語接触 方 略 ,メ タ認 知制 御 方略 の7方 略 に分 類さ れる 。 (2)7方 略は ,音 声 リハ ーサ ル方 略と筆記リハー サ ル 方略 から なる 初 期方 略群 と, 記録 方 略, 体制 化方 略, 参照方略,言 語接触方略からなる発展方 略 に 大別 され ,そ れ ぞれ の方 略使 用はメタ認 知制御方略によって駆動され る。(3)語彙知識習熟度 を , 語彙 知識 の広 さ ,語 彙知 識の 深さ , 文法 知識 と関 連し て 用い る語 彙運 用 能カ の3つの側面で構 成 さ れる もの と仮 定 した 場合 に, 影響を与え るのは発展方略群である。(4)学習者が,語親密度に も と づぃ て語 彙知 識 を評 価, 管理 し, 学 習方 略を 選択 する ことで音声リ ハーサル方略,記録方略,

言 語接触方略の使用が活J陸r匕し,その結果として語彙学習方略全体の使用が活´1生化される。(5〕語 親 密 度に もと づぃ て 使用 され た語 彙学 習 方略 の中 で, メタ 認知制御方略 ,記録方略,体制化方略が 語 彙知識定着度と関係する方 略であった。

    ‑ 1550―

(3)

学位論文審査の要旨

主査    教授    河 合   靖 副査    教授    園 田勝英

副査    准教授    笠原    究(北 海道教育大学旭川校)

学 位 論 文 題 名

語親密度に基づく英語語彙学習方略支援

   本論文は,日本人英語学習者の語彙学習方略使用の実態調査,語彙学習方略用診断 質問紙の開発,自律的な語彙学習方略使用を支援する教育介入方法の確立とその効果 の検証を目的としている。先行研究では,いくっかの学習方略分類が提案され,語彙 習熟度と方略使用の関連が指摘されてきている。しかし,多くの研究が1990 年代以 降に集中し,相互に参照されることが少なかったことや,研究者がそれぞれに認知心 理学や社会心理学の分類を援用してきたことにより,分類用語の異なりや概念の重複 という問題が生じている。本研究では,学習環境や学習目標を焦点化させてデータの 収集と分析を繰り返し,語彙学習方略分類の見直しを試みた。さらに,この分類をも とに学習診断用の語彙方略使用質問紙を開発し,それを用いて,電子ポートフォリオ を使った語彙学習方略支援の効果測定を行った。

   研究の成果として著者は次の主張を行っている。日本人英語学習者の語彙方略は7 っに分類され,それらはさらに,メタ認知制御方略により活性化される2 つの方略群,

すなわち初期方略群と発展方略群に構造化できる。このうち,発展方略群が語彙知識 の習熟度に影響を与える。語親密度を用いて学習者が語彙知識を自己評価することが 学習方略使用の全般的ぬ活発化にっながり,特にメタ認知制御方略,記録方略,体制 化方略の使用を通じて,語彙知識定着度の向上が得られる。

   本論文について,研究成果の意義,方法論的貢献,および教育への示唆の三点から

審査した。その結果,審査担当者は,それぞれ次の点において本論文の意義を認める

ものである。 1 )これまで日本における語彙学習研究の主流であった3 分類モデルを

見直して,国内外の先行研究を統合し,比較的多数の参加者からデータ収集した数度

の分析にもとづいて,より一般化された 7 分類モデルを構築したことは,この分野の

今後の研究の発展に寄与する。2 )30 項目以内で時間的コストをかけることたく実

施可能な語彙学習方略使用診断質問紙を開発したことは,語彙学習方略研究と外国語

教育実践の発展に貢献する。3 )以上の知見を応用する電子ポートフォリオを開発し

て,語彙学習方略支援システムを確立し,その効果を実証的に検証したことにより,

(4)

語 彙 学 習 指 導 に 多 大 な 貢 献 が 見 込 ま れ る 。 以 下 , 順 に 詳 述 す る 。    まず,一点目の研究成果の意義にっいて述べる。語彙学習方略の分類に関する従来 の日本国内の研究では,体制化,イメージ化,反復の3 分類を提示しているのに対し,

国外の研究者はそれより多い因子を提唱してきている。本論文では,高校生および大 学生を対象にデータを収集して探索的因子分析を繰り返し,また国内外の先行研究に 見られる質問紙項目を精査してその因子分析の結果とっきあわせながら理論的に考 察し,7 因子を提唱した。さらに,これを初期方略群と発展方略群に分けて,それぞ れがメタ認知制御方略により活性化されるとした。1 ,000 人規模の大学生を参加者と してデータ収集し,確認的因子分析を実施してこのモデルの信頼性・妥当性を検証し た。調査対象の学習年数により,初期方略群がメタ認知制御方略により活性化される か否かにっいてまだ疑問の余地が残るが,日本の英語学習者を対象にした調査で構築 された語彙習得方略モデルとしては,今までにない包括的なものであり,そこに新規 性を認め,当該分野の発達に寄与すると判断する。

   次に,二点目の方法論的貢献にっいて述べる。本論文では,三つの調査にもとづぃ て開発された語彙学習方略使用診断用の質問紙を,その後も調査を繰り返して改訂 し,信頼性を高めた。学習方略指導の実証的効果検証には,精度の高い尺度が不可欠 であり,この質問紙の開発は,当該分野の研究を進める上で多大た意義を持つ。また,

学習方略指導には方略使用の自己診断が必要であり,30 項目で時間的コストが大き く軽 減されたこ の質問紙は ,方略指導 の実践にも 利用価値が 高いと判断する。

   最後に,三点目の教育への示唆に関する評価にっいて述べる。本論文では,語親密 度の概念を用いて学習者が語彙知識レベルを自己評価することで,メタ認知制御の方 法を作業定義することに成功している。これを用いた教育介入を情報処理機器の利用 により具現化した電子ポートフォリオ「ボキャブラリー・リトリーバー」を開発し,

大学生200 名余を参加者として実証研究を行った。事前・事後の語彙知識習熟度調査 および方略使用調査の結果から,電子ポートフォリオ使用の効果が検証された。また,

語彙知識習熟度の段階に応じて使用する方略の傾向も明らかとなり,方略指導への示 唆となった。したがって,本論文は教育実践に向けて有益な示唆に富んでいると判断 する。

   以上の三点において,本論文は高い学術的意義を持っものである。よって著者は,

北海道大学博士(国際広報メディア)の学位を授与される資格があるものと認める。

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