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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 黒 須 拓 郎

     学位論文題名

HuR and AU ― rich element containing mRNA are necessary     for angiogenic phenotypes in tumor endothelialCe11S    (腫瘍血管内皮細胞におけるHuR を介したVEGF −AmRNA の発現亢進は      腫瘍血管新生を促進する)

学位論文内容の要旨

  生体に生じるがんは様々な細胞から構成されている。実質には腫瘍細胞が、問質には 線維芽細胞、免疫細胞や血管内皮細胞が存在する。これまで、腫瘍細胞には種々の異常 があることが知られていたのに対して、問質細胞は正常であると考えられてきた。しか し、近年、問質細胞も正常と異なる性質をもっていることが報告され始めている。Hida らはこれまでに、がん問質に存在する腫瘍血管内皮細胞(tumor endothelial cell:TEC) が様々な点で正常血管内皮細胞(normal endothelial cell:NEC)とは異なることを報 告して きた。例 えば、TECはNECと比較し てTumor endothelial markers (TEMs)や Vascular endothelial growth factor (VEGF) receptor−2(VEGFR−2)などの遺伝子発 現が亢進している。

  VEGFは強カな血管新生因子のーつで、その中でもVEGF一Aは量的にも活性の強さから も血管新生および血管発生において主要な役割を果たしている。VEGF―AmRNAは非翻訳 領域にAU(アデニン、ウラシル)‑rich element (ARE)をもつARE―mRNAである。ARE‑mRNA には、cーrriycやcーfosなど、腫瘍細胞の悪性化に重要な役割を果たす遺伝子から転写さ れたも のが多く 、Hu antjgenR(HuR)によって安定化されることが知られている。通 常、HuRは細胞の核に局在しているが、低血清や熱ショック等の刺激が細胞に加わると、

AREに特異的に結合し、ARE―mRNAを核外輸送し、細胞質において安定化することが知ら れている。HuRのmRNA核外輸送のヌカニズムについて未だその詳細は不明であるが、

腫瘍細胞では正常な細胞とは異なる機序によりAREーmRNAを核外輸送していることが知 られている。また、がんの悪性度が高いほど細胞質のHuRのタンバクレベルが高しゝこと も報告されている。これまで、腫瘍細胞におけるVEGF―Aの発現とHuRによる核外輸送 との関連についての報告は散見されるが、血管内皮細胞においてこの関連を検討した報 告はない。そこで、本研究では、TECを用いてVEGF―AmRNAの発現亢進と恥Rによる核 外輸送・安定化との関連について検討し、さらに、TECの生物学的性質に対してHuRノ ックダウンの及ぽす作用を解析した。

  実験には、ヒト口腔がん細胞移植マウスから分離培養したTEC (oral carcinoma EC) と、正常マウス皮膚から分離培養したNEC (skin EC)を用いた。定量的real−time RT−PCR     ―556―

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法 を 用い て 解 析し た と ころ 、TECはNECに 比 べ てVEGFーAmRNAの 発現を 著明に亢 進して いた。これまでに、TECでは、NECに比較して増殖が早いことやVEGF recep・tor (VEGFR)ー1、 VEGFR―2の 発現がNECに比 ベ数倍か ら十数 倍ほど高 いこと が報告さ れてい る。今回 の結 果で は、TECが自身 でVEGF‑Aを発 現してい ること が示され 、その高 い増殖能にはVEGFーA のオ ートクラ イン機 構が関与 してい る可能性 が示唆 された。 螢光免疫 染色法により細胞 内 に おけ るHuR夕 ン バク の 局 在を 検 討 し たと こ ろ 、NECでは 、 正常 な細胞 であるHMVEC と同 様にHuRは核の みに限局 してい た。一方 、TECでは、腫 瘍細胞で あるoral carcinoma cellと 同 様に 核 と 細胞 質 の 双方 にHuRが 存 在 して い た こと か ら 、TECに おいて はHuRが 細 胞 質へ 核 外 輸送 さ れ てい る 可 能性 が示 唆された 。そこ で、TECにおけるVEGF‑A mRNA の 発 現亢 進 とHuRに よる 核 外 輸送 な らび に安定化 との関 連を検討 するため 、siRNAによ るHuRノック ダウン 実験を行 った。TECを核 と細胞質とに分画し、細胞質におけるVEGF−A mRNAの変 化を解 析したと ころ、HuRをノ ックダウンしたTECでは、細胞質におけるVEGFーA mRNA量 が 明ら か に 減少 し た こと か ら 、HuRはVEGF―AmRNAの核外輸 送と安 定化を介 して mRNAの 発 現 亢 進 に 関 与 し て い る こ と が 示唆 さ れ た 。次 に 、HuRノ ック ダ ウ ンに 伴 う VEGFーA発現 量の減少 が、TECの生物 学的な性 質に及 ぽす影響 を検討 した。低血清環境に お け るTECの生 存 能 を検 討 し たと こ ろ、HuRをノ ックダ ウンした 細胞群で は未処 理群や コ ン トロ ー ルsiRNAを 導 入 した 群 に 比べて 、生細胞 数が有 意に減少 した。 また、HuRノ ック ダウンに 伴い、 低血清環 境にお けるTECの自由運動能も著明に抑制された。そこで、

血 管 内皮 細 胞 の生 存 や 運動 に 関 わる シグ ナル分子 であるAktに注 目し、HuRノッ クダウ ン がAktの りン 酸 化 に及 ぼ す 影響 を ウエ スタンブ 口ッテ イング法 で検討し た。HuRをノ ッ ク ダウ ン し た細 胞 群 ではAktの り ン酸 化が抑制 されて おり、HuRノック ダウン による TECで のVEGF―Aの 発 現 低 下 、 さ ら にはVEGF―Aの オー ト ク ライ ン 機 構の 抑 制 には 、 Akt/PI3K経 路 のシ グ ナ ル伝 達 の 抑 制が関 与してい ること が示唆さ れた。 血管内皮 細胞 の 生 物学 的な 性質の ーつであ る管腔形 成能も 、HuRノ ックダ ウンに伴 って著 明に抑制 さ れた。

  HuRノ ック ダ ウ ンに よ りTECの 生 存能、 運動能、 管腔形 成能、な らびに これらに 関与 す る シグ ナ ル 分子 で あ るAktのり ン 酸化 が抑制さ れた。 これらの 結果は、TECに おいて 発 現 亢進 し て いた 血 管 新生 因 子 、VEGF一AmRNAが、HuRノック ダウンに より発 現が低下 し 、TECに おけ るVEGF―Aの オ ー ト クライ ン機構が 機能し なくなっ たこと を示すも のと 考 え られ た 。HuRを ノッ ク ダ ウン し たTECに 対 してVEGF−Aを添 加す ること により、 生 存能 や運動能 、管腔 形成能が コント 口ールと ほぽ同 程度に回 復したこ ともこの考え方を 支持している(デー夕非公開)。

  以上 の 結 果よ り 、TECに おい てHuRはVEGF一AmRNAの核 外 輸 送お よび安 定化を介 して そ の 発現 亢進 に関与 し、TECの生存や 運動、 管腔形成 を促進 すること で腫瘍 の血管新 生 に 重 要な 役割 を果た している ことが示 された 。このこ とは、HuRをタ ーゲッ トにした 血 管 新 生 阻 害 療 法 を が ん の 治 療 に 応 用 で き る 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    戸 塚 靖 則 副 査    教 授    進 藤 正 信 副査   特任准教授樋田京子

     学位論文題名

HuR and AU −rich element containing mRNA are necessary     for angiogeniCphenotypeSintumorendothelialCe11S

( 腫 瘍 血 管内 皮 細 胞 に お け る HuR を 介 した VEGF ― AmRNA の 発 現 亢進 は      腫 瘍 血管 新 生 を 促 進 す る )

   審査は,審査員全員出席の下に,申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につい て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る .

   本研 究は, 腫瘍 血管 内皮 細胞(tumor endothelial cell: TEC) における VEGF‑A mRNA の 発現 亢進と HuR に よる核 外輸 送・ 安定化 との関連,ならびに TEC の生物学的性質に対 するHuR ノックダウンの影響を解析したものである,実験には,ヒト口腔がん細胞移植マ ウスから分離培養したTEC (oral carcinoma EC) と,正常マウス皮膚から分離培養した正 常 血 管 内 皮 細 胞 (skinEC; normal endothelial cell: NEC) を 用 い た .    ま ず , 定 量 的 real‑time RT‑PCR 法 を 用 いて , TEC は NEC に 比 べ て VEGF‑A mRNA の 発 現を 著明に亢進していることを明らかにし,TEC の高い増殖能にはVEGF‑A のオートク ライン機構が強く関与している可能性を示した,

   螢光 免疫染 色法 によ り細 胞内に おけ るHuR 夕 ンバ クの 局在を 検討 し, NEC ではHuR は 核のみに認められる一方,TEC では核と細胞質の双方に存在することを明らかにし,TEC に お い て は HuR が 細 胞 質 へ 核 外 輸 送 さ れ て い る 可 能 性 を 示 し た .    次 に , siRNA に よ っ て HuR の ノ ッ ク ダ ウ ンを 行 し ゝ , TEC に お け る VEGF‑A mRNA の 発現亢進とHuR による核外輸送ならびに安定化との関連を検討した.HuR をノックダウン し たTEC で は,細胞質における VEGF‑A mRNA 量が著しく減少してしゝることを示し, HuR が VEGF‑A mRNA の 核 外 輸送 と 安 定 化 を 介 し て mRNA の発 現 亢進に 関与 して いる ことを 明 ら か に し た , ま た ,HuR ノ ックダ ウン に伴 う VEGF‑A 発 現量 の減 少が TEC の生 物学的 な性質に及ぽす影響について検討し,HuR をノックダウンした細胞群では,未処理群やコ ン トロ ールsiRNA を 導入し た群 に比 べて, 低血清環境における TEC の生存能は有意に減

‑ 558

(4)

少し,

TEC

の自由運動能も著明に抑制されること,また血管内皮細胞の生物学的な性質の ー つ で あ る 管 腔 形 成 能 も 著 明 に 抑 制 さ れ る こ と を 明 ら か に し た .

  

さらに

HuR

ノックダウンがAkt のりン酸化に及ぽす影響につしゝてウエスタンブ口ッティ ング法を用いて検討し,

HuR

をノックダウンした細胞群では

Akt

のりン酸化が抑制されて い るこ と を示 し ,HuR ノッ ク ダウ ンによる

TEC

での

VEGF‑A

の 発現低下や 生物学的性 質 の変化には,Akt/PI3K 経路のシグナル伝達の抑制が関与していることを明らかにした,

  

こ れ ら の結 果 から ,

TEC

にお い て,

HuR

VEGF‑A mRNA

の 核外 輸送 および安定 化を 介してその発現を亢進し,TEC の生存能や運動能を高め,さらに管腔形成を促進すること に よ り , 腫 瘍 の 血 管 新 生 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る と 考 察 し た ,

  

論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関連する 研究について質問が行われた.

  

主な質問事項は,

    

螢光免疫染色で細胞質内に

HuR

の局在が認められた腫瘍血管内皮細胞の比率はどの

    

くらいであったか,

    

本研究で用いた細胞分画法の詳細とその精度について,

    Tube formaton

を生 じる際,血 管内皮細胞 の中で

p38MAPK

が活性化する遺伝子は

    

何か,

    VEGFfVEGFR

の 下 流 で

p38MAPK

の 活 性 化 を 直 接 誘 導 す る

MAPKKK

MAPKK     

は何か,

    HuR

を ノッ ク ダウ ン し た際 , 腫瘍 血 管内皮細胞 の細胞質に おける

VEGF

ーAmRNA

    

の発現減少がみられているが,細胞全体での発現レベルの低下はなかったのか,

    HuR

がmRNA を安定化する機序について,

    RNA

干渉法の原理にっしゝて,

    

分離した血管内皮細胞の品質管理について,

    Tumor associated macrophage

Cancer associated fibroblast

に っいて,

等であった,

  

し〕ずれの質問についても,論文申請者から明快な回答が得られ,また将来の研究の方向性 に つ しゝ て も具 体 的に示さ れた,本研 究は,

TEC

において,

HuR

VEGF‑A mRNA

の 核外 輸送および安定化を介してその発現亢進に関与し,TEC の生存や運動,管腔形成を促進す ることにより,腫瘍の血管新生に重要な役割を果たしていることを明らかにし,HuR をタ ーゲットにした血管新生阻害療法はがんに対して有効な治療法になりうる可能性があるこ とを示したことが高く評価された.本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,関連領域 にも 寄与すると ころ大であ り,博士( 歯学)の学 位授与に値 するものと認められた,

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参照

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