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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 千 葉    知

学 位 論 文 題 名

「心肺肉芽腫性病変と動脈硬化初期病変における オステオポンチンの機能的解析」に関する研究

学位論文内容の要旨

1 章 オ ス テ オ ボ ン チ ン と 心 肺 肉 芽 腫 性 病 変      ‐オステオポンチンは肉芽腫性病変を誘導する

    【 背景 】

サ ル コ イ ド ー シ ス の 肉 芽 腫 中 の マ ク ロ フ ァ ー ジ で は 、 オ ス テ オ ボ ン チ ン(OPN)が 強 発 現 す る と 報 告 さ れ て い る(Carlson,1997)。 こ のOPNは 、 早 期 の 免 疫 反 応 を 誘 導 す る サ イ ト カ イン ( early T‑lymphocyte activation‑l,Eta‑l)と考えられ、OPN欠損マウスではThl反 応が 障 害 さ れ 、 肉 芽 腫 が 形 成 さ れ な い と 報 告 さ れ て い る(Ashkar,2000)。 一 方 で 、6‐ サル コグ リ カ ン 遺 伝 子 の 欠 損 し て い る 心 筋 症 ハ ム ス タ ー(Tr02)の 心 臓 で は 、OPNの 過 剰 発 現 と 石 灰 化を 伴う 肉芽 腫性 病変 を認 める(Williams,1995)。

    【 目的 】

心 肺肉 芽腫 性病 変に おけ るOPNの機 能に つい て検 討す る。

    【 方法 】

(1)心 筋 症 ハ ム ス タ ー ( 以 下 、T02)に ウ シ 血 清 ア ル ブ ミ ン と 完 全 フ ロ イ ン ド ア ジ ュ バ ン ト (BSA‑CFA)を 皮 下 投 与 し た 。CFAtま 、 熱 処 理 し た 結 核 死 菌 を 合 む 免 疫 賦 活 剤 で あ る 。 対 照動 物と して 、コ ント ロー ルハ ムス ター(FIB)を使 用し た。

く2) 直 接 的 に 、OPNの 機 能 を 評 価 す る た め に 、OPN遺 伝 子 を 組 み 込 ん だ ア デ 丿 ウ イ ル ス (AdexOPN)を 正 常 ハ ム ス タ ー の 肺 に 導 入 し た 。 そ の 対 照 と し て 同 力 価 のAdexLacZを 使 用 した 。

    【 結果 】

(1) T02ハ ム ス タ ー に 完 全 フ ロ イ ン ド ア ジ ュ パ ン ト(CFA)を 投 与 す る と 、 肉 芽 腫 性 肺 病 変 が 出 現 す る 。 こ の 病 変 は 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ や り ン バ 球 を 主 体 と す る 肉 芽 腫 だ っ た 。 こ の 病 変 の 出 現 と 、 並 行 し て 、OPNがmRNAレ ベ ル と 蛋 白 レ ベ ル で 亢 進 す る 。 こ れ ら の 変 化 は 、 コ ン ト ロ ー ル ハ ム ス タ ー(FIB)で は 起 こ ら な か っ た 。 心 臓 に っ い て は 、 コ ン ト ロ ー ル ハ ム ス タ ー と 異 な り 、Tr02ハ ム ス タ ー で はOPNの 強 発 現 と 、 反 応 性 肉 芽 形 成 を 無 処 置 の 段 階 で 既に 認め てい るた め、CFAに 反応 しな かっ た。

(2) OPN遺 伝 子 を 正 常 ハ ム ス タ ー の 肺 に 導 入 す る と 、 肺 に マ ク ロ フ ァ ー ジ 、 上 皮 細 胞 、 リ ン バ 球 か ら 構 成 さ れ る 免 疫 型 肉 芽 腫 が 形 成 さ れ た 。AdexLacZの 気 管 内 投 与 で は 、 肺 に 肉 芽 腫形 成を 認め なか った 。

(2)

     【考察】

OPN をハムスターの肺に過剰発現させると、マクロファージ、リンバ球の浸潤と肉芽腫 の形成を伴う肺病変を誘導した。 OPN が、Th‑0 からTh‑l への分化を促すサイトカインとし て機能することをin vivo で確認した。

2 章オステオポンチンと動脈硬化

‐オステオボンチンは脂肪線条を増悪させる      【背景】

動脈硬化部位のマク口フアージと血管平滑筋細胞には OPN が発現していると報告されて いる(広田, 1993) 。このOPN は、マクロフアージと1 細胞、平滑筋細胞の遊走活性を促進 する。

     【目的】

動 脈 硬 化 に お い て 、 免 疫 系 に よ り 産 生 さ れ る OPN の 役 割 を 調 べ る 。      【方法】

我 々の使用 した E/L ‑OPN トランス ジェニック マウス(以 下、OPN‑TG) に おいて、 OPN RNA は、免疫グロプリン重鎖のエンハンサー(E,u )の制御下にあり、脾臓や胸腺といっ たりンバ系の臓器に強発現を認める。このマウスは、血管平滑筋細胞よりも、血液細胞が 産 生する OPN の分布を検 討するのに有用である。このOPN‑TG マウスに、 6 週齢から18 週 齢の間、動脈硬化食を与え、 18 週齢における動脈硬化の程度とOPN の発現レベルについ て検討する。

     【結果】

OPN‑TG マウスとコントロールマウスに、動脈硬化食を与えると、大動脈基部に泡沫細胞 の集簇と平滑筋層の肥厚を主体とする動脈硬化病変を形成した。この動脈硬化病変の面積 は、コント口ールマウスと比ぺて、OPN‑I 、G マウスでは有意に拡大する。それに加えて、

OPN‑TG マウスの病変部の泡沫細胞は、免疫組織学的検討により、 OPN 蛋白が強発現して いた。また、大動脈基部の血管壁では、 RT‑PCR により、OPN mRN 」`の発現亢進を認めた。

両 群のマウス で、血清総コレステロール値や血清OPN 濃度に有意差はなく、局所のOPN 発現が動脈硬化を増悪させていると考えた。

     【考察】

動脈硬化食の摂取による高脂血症下では、血管内皮細胞が機能異常を起こし、 0PN を発 現する活性化マクロファージの内皮下へのりクルートメントを起こす。これらのマクロフ アージが、酸化u )L を取り込むと、更に活性化し、マクロファージが泡沫細胞に分化する のを刺激する。泡沫細胞から産生、放出された OPN は、血管平滑筋、線維芽細胞、マク ロファージを更に遊走させて、動脈硬化の初期病変である脂肪線条の形成過程を促進する。

     【結語】

以上より、 OPN が強カなサイトカインとして機能し、肉芽腫性病変や動脈硬化の初期病

変の増悪因子となることを示した。これらの病変が、OPN の抑制により改善し、この心

筋症ハムスター、 OPN‑TG を用いることにより免疫系におけるオステオポンチンの役割を

さらに解明することができると期待される。今回の知見は、肉芽腫性病変や動脈硬化病変

の新たな治療法の計画や、メカニズムの解明に有用な情報を提供すると考えられた。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

「心肺肉芽腫性病変と動脈硬化初期病変における オステオポンチンの機能的解析」に関する研究

  オ ス テ オ ポ ン チ ン (OPN) は 、B細 胞 の 活 性 化 を 弓Iき 起 こ す サ イ 卜 カ イ ン と し て 知 ら れ 、 そ の 標 的 細 胞 や 機 能 は 多 彩 に わ た っ て い る 。 OPN遺 伝 子 発 現 は 、 動 脈 硬 化 部 位 の 粥 腫 内 石 灰 沈 着 と そ れ を 取 り 巻 く マ ク □ フ ァ ー ジ 、 ま た サ ル コ イ ド ― シ ス 、 結 核 な ど の 肉 芽 腫 中 の マ ク □ フ ァ ー ジ 、 類 上 皮 細 胞 と 多 核 巨 細 胞 で 認 め る と 報 告 さ れ て い る が 、in vivoで の 直 接 的 機 能 は 未 だ 不 明 で あ る 。 そ こ で 、 申 請 者 は 、OPNの 機 能 を 追 求 す る た め 、 ま ず 動 脈 硬 化 病 変 の 脂 肪 線 条 形 成 時 の マ ク □ フ ァ ― ジ 遊 走 へ の 関 与 を 、 弓 | き 続 き マ ク □ フ ァ ー ジの 集 簇 を 中 心 と す る 肉 芽 腫 性 病 変 へ の 関 与 を 検 討 し た 。

  OPNが 、 動 脈 硬 化 促 進 性 に 働 〈 か 否 か を 検 討 す る た め 、 免 疫 グ □ ブ リ ン の ェ ン ハ ン サ ― を 有 し 、OPNcDNAを 過 剰 発 現 す る ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス (OPN‑TG) を 作 成 し た 。 こ の 系 で は 、 造 血 細 胞 に よ り 作 ら れ た 外 因 性OPNの 作 用 を 調 べ る こ と が 可 能 と 考 え た 。 コ ン 卜 □ 一 ル マ ウ ス で は 、 腎 と 骨 にOPNの 発 現 を 認 め る が 、 こ れ に 加 え てOPN‑TGで は 、 脾 臓 と 胸 腺 に 発 現 を 認 め た 。 動 脈 硬 化 病 変 の 解 析 に は 、OPN‑TG群 と コ ン ト 口 ― ル 群 に お い て 、 高 脂 肪 食 を 投 与 し 、 大 動 脈 基 部 に お け る 動 脈 硬 化 病 変 を 定 量 化 し た 。 そ の 結 果 、 高 脂 肪 食 群 で は 、OPN‑TG群 の 動 脈 硬 化 病 変 面 積 は 有 意 に 増 加 し た 。 次 に 、OPNの 免 疫 染 色 を 行 う と 、OPN−TG高 脂 肪 食 マ ウ ス に お け る 泡 沫 細 胞 で は 、 コ ン 卜 □ − ル 群 よ りOPNが 強 発 現 し て い た 。 泡 沫 細 胞 は 平 滑 筋a‑ア ク チ ン 陰 性 で あ り 、 マ ク □ フ ァ → ジ 由 来 と 考 え た 。 な お 、 総 コ レ ス テ □ − ル の 平 均 値 に は 両 群 間 で 差 を 認 め な か っ た 。 以 上 よ り 、 高 脂 肪 食 の 摂 取 が 、 血 管 内 皮 細 胞 の 障 害 を 起 こ し 、 活 性 化 マ ク □ フ ァ ー ジ の 血 管 壁 へ の 遊 走 を 起 こす 。 ま た 、 マ ク □ フ ァ ― ジ に よ る 酸 化LDLの 摂 取 は 、 マ ク 口 フ ァ ― ジ を 更 に 活 性 化 さ せ 、 マ ク

□ フ ァ ー ジ の 泡 沫 細 胞 へ の 分 化 を 刺 激 す る 。 こ の 過 程 で 、 泡 沫 細 胞 か ら 誘 導 さ れ たOPNは 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ 、 血 管 平 滑 筋 や 綜 維 芽 細 胞 を 更 に 遊 走 さ せ 、 血 管 壁 の 肥 厚 を も た ら し 、 動 脈 硬 化 を 促 進 す る と 考 え た 。

  次 に 、 肉 芽 腫 性 病 変 に お け るOPNの 機 能 を 検 討 し た 。 心 臓 に 線 維 化 に 加 え て 石 灰 化 周

顕 光

   

   

利 和

畠 出

北 上

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

囲に反応性肉芽形成が起こる拡張型心筋症のモデル動物T02 ハムス夕一 (T02 )を用い た。T02 の肉芽腫形成を検討するため、フ口インド完全アジュノヾント(CFA )を投与後、

肉芽腫性病変を解析した。T02 ハムス夕一心臓では、CFA 投与前後のいずれにも肉芽形成 を認めた。無処置の肺では肉芽腫を認めないが、CFA で免疫後、肺に肉芽腫が出現した。

次に各組織でのOPN mRNA の発現を調べると、T02 ハムス夕一の心臓には無処置でも発 現を認めた。 T02 の肺では、免疫後に OPNmRNA が出現した。正常ハムス夕―では、免疫 の有無に関わらず、心臓と肺にOPNmRNA を認めなかった。気管支肺胞洗浄液中のOPN 蛋 白、肺組織でのOPNmRNA 、肉芽腫はいずれも、免疫後6 日目に出現し9 日目にピークと なり 対応を 示し た。 更に 、○PNcDNA を組み込んだアデノウイルス(AdexOPN )を、正 常ハムス夕一の気管支内に注入し、肺での肉芽腫形成を検討した。その結果、AdexOPN の気管内投与により、肉芽腫の形成を確認した。また、OPN の免疫染色では、肺胞上皮、

気管上皮、マク□ファージにOPN の過剰発現を認めた。AdexOPN 誘導性の肉芽腫は、サ ルコイド―シスのような免疫型の肉芽腫と類似していた。OPN が肉芽腫形成過程に促進因 子として作用することを明らかにした。

   論文発表に際して、副査の長嶋教授からマウスにOPN を過剰発現させたときの変化につ いて、心筋症ハムス夕―の心臓でのOPN の意義について、ヒト肢帯型筋ジスト□フィ―と ヒ卜拡張型心筋症でのOPN 発現の有無について、また副査の上出教授から動脈硬化におけ る○PN の発現は炎症細胞と平滑筋とどちらが主体かについて、皮下投与の際に遠隔臓器の 肺で変化が起こる理由について、また主査の北畠教授からサルコイドーシスの診断にOPN は応用可能かについて、腎臓でのOPN の発現が肉芽腫と関係しているかについて、今後の 研究の方向性についての質問があった。いずれの質問に対しても、申請者は研究結果や文 献的知識を弓1 用し、誠実にかつ、概ね適切に解答した。

   この論文は、病理組織学的解析と遺伝子組み換え技術を駆使して心筋症ハムス夕一の心 肺肉芽腫性疾患、およびOPN トランスジェニックマウスの動脈硬化病変とOPN の発現の関 連を明らかにした最初の報告であることで高く評価され、今後のサルコイド―シスや動脈 硬化の研究に示唆と方向性を与えることが期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高〈評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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