博 士 ( 医 学 ) 千 葉 知
学 位 論 文 題 名
「心肺肉芽腫性病変と動脈硬化初期病変における オステオポンチンの機能的解析」に関する研究
学位論文内容の要旨
1 章 オ ス テ オ ボ ン チ ン と 心 肺 肉 芽 腫 性 病 変 ‐オステオポンチンは肉芽腫性病変を誘導する
【 背景 】
サ ル コ イ ド ー シ ス の 肉 芽 腫 中 の マ ク ロ フ ァ ー ジ で は 、 オ ス テ オ ボ ン チ ン(OPN)が 強 発 現 す る と 報 告 さ れ て い る(Carlson,1997)。 こ のOPNは 、 早 期 の 免 疫 反 応 を 誘 導 す る サ イ ト カ イン ( early T‑lymphocyte activation‑l,Eta‑l)と考えられ、OPN欠損マウスではThl反 応が 障 害 さ れ 、 肉 芽 腫 が 形 成 さ れ な い と 報 告 さ れ て い る(Ashkar,2000)。 一 方 で 、6‐ サル コグ リ カ ン 遺 伝 子 の 欠 損 し て い る 心 筋 症 ハ ム ス タ ー(Tr02)の 心 臓 で は 、OPNの 過 剰 発 現 と 石 灰 化を 伴う 肉芽 腫性 病変 を認 める(Williams,1995)。
【 目的 】
心 肺肉 芽腫 性病 変に おけ るOPNの機 能に つい て検 討す る。
【 方法 】
(1)心 筋 症 ハ ム ス タ ー ( 以 下 、T02)に ウ シ 血 清 ア ル ブ ミ ン と 完 全 フ ロ イ ン ド ア ジ ュ バ ン ト (BSA‑CFA)を 皮 下 投 与 し た 。CFAtま 、 熱 処 理 し た 結 核 死 菌 を 合 む 免 疫 賦 活 剤 で あ る 。 対 照動 物と して 、コ ント ロー ルハ ムス ター(FIB)を使 用し た。
く2) 直 接 的 に 、OPNの 機 能 を 評 価 す る た め に 、OPN遺 伝 子 を 組 み 込 ん だ ア デ 丿 ウ イ ル ス (AdexOPN)を 正 常 ハ ム ス タ ー の 肺 に 導 入 し た 。 そ の 対 照 と し て 同 力 価 のAdexLacZを 使 用 した 。
【 結果 】
(1) T02ハ ム ス タ ー に 完 全 フ ロ イ ン ド ア ジ ュ パ ン ト(CFA)を 投 与 す る と 、 肉 芽 腫 性 肺 病 変 が 出 現 す る 。 こ の 病 変 は 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ や り ン バ 球 を 主 体 と す る 肉 芽 腫 だ っ た 。 こ の 病 変 の 出 現 と 、 並 行 し て 、OPNがmRNAレ ベ ル と 蛋 白 レ ベ ル で 亢 進 す る 。 こ れ ら の 変 化 は 、 コ ン ト ロ ー ル ハ ム ス タ ー(FIB)で は 起 こ ら な か っ た 。 心 臓 に っ い て は 、 コ ン ト ロ ー ル ハ ム ス タ ー と 異 な り 、Tr02ハ ム ス タ ー で はOPNの 強 発 現 と 、 反 応 性 肉 芽 形 成 を 無 処 置 の 段 階 で 既に 認め てい るた め、CFAに 反応 しな かっ た。
(2) OPN遺 伝 子 を 正 常 ハ ム ス タ ー の 肺 に 導 入 す る と 、 肺 に マ ク ロ フ ァ ー ジ 、 上 皮 細 胞 、 リ ン バ 球 か ら 構 成 さ れ る 免 疫 型 肉 芽 腫 が 形 成 さ れ た 。AdexLacZの 気 管 内 投 与 で は 、 肺 に 肉 芽 腫形 成を 認め なか った 。
【考察】
OPN をハムスターの肺に過剰発現させると、マクロファージ、リンバ球の浸潤と肉芽腫 の形成を伴う肺病変を誘導した。 OPN が、Th‑0 からTh‑l への分化を促すサイトカインとし て機能することをin vivo で確認した。
2 章オステオポンチンと動脈硬化
‐オステオボンチンは脂肪線条を増悪させる 【背景】
動脈硬化部位のマク口フアージと血管平滑筋細胞には OPN が発現していると報告されて いる(広田, 1993) 。このOPN は、マクロフアージと1 細胞、平滑筋細胞の遊走活性を促進 する。
【目的】
動 脈 硬 化 に お い て 、 免 疫 系 に よ り 産 生 さ れ る OPN の 役 割 を 調 べ る 。 【方法】
我 々の使用 した E/L ‑OPN トランス ジェニック マウス(以 下、OPN‑TG) に おいて、 OPN RNA は、免疫グロプリン重鎖のエンハンサー(E,u )の制御下にあり、脾臓や胸腺といっ たりンバ系の臓器に強発現を認める。このマウスは、血管平滑筋細胞よりも、血液細胞が 産 生する OPN の分布を検 討するのに有用である。このOPN‑TG マウスに、 6 週齢から18 週 齢の間、動脈硬化食を与え、 18 週齢における動脈硬化の程度とOPN の発現レベルについ て検討する。
【結果】
OPN‑TG マウスとコントロールマウスに、動脈硬化食を与えると、大動脈基部に泡沫細胞 の集簇と平滑筋層の肥厚を主体とする動脈硬化病変を形成した。この動脈硬化病変の面積 は、コント口ールマウスと比ぺて、OPN‑I 、G マウスでは有意に拡大する。それに加えて、
OPN‑TG マウスの病変部の泡沫細胞は、免疫組織学的検討により、 OPN 蛋白が強発現して いた。また、大動脈基部の血管壁では、 RT‑PCR により、OPN mRN 」`の発現亢進を認めた。
両 群のマウス で、血清総コレステロール値や血清OPN 濃度に有意差はなく、局所のOPN 発現が動脈硬化を増悪させていると考えた。
【考察】
動脈硬化食の摂取による高脂血症下では、血管内皮細胞が機能異常を起こし、 0PN を発 現する活性化マクロファージの内皮下へのりクルートメントを起こす。これらのマクロフ アージが、酸化u )L を取り込むと、更に活性化し、マクロファージが泡沫細胞に分化する のを刺激する。泡沫細胞から産生、放出された OPN は、血管平滑筋、線維芽細胞、マク ロファージを更に遊走させて、動脈硬化の初期病変である脂肪線条の形成過程を促進する。
【結語】
以上より、 OPN が強カなサイトカインとして機能し、肉芽腫性病変や動脈硬化の初期病
変の増悪因子となることを示した。これらの病変が、OPN の抑制により改善し、この心
筋症ハムスター、 OPN‑TG を用いることにより免疫系におけるオステオポンチンの役割を
さらに解明することができると期待される。今回の知見は、肉芽腫性病変や動脈硬化病変
の新たな治療法の計画や、メカニズムの解明に有用な情報を提供すると考えられた。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
「心肺肉芽腫性病変と動脈硬化初期病変における オステオポンチンの機能的解析」に関する研究
オ ス テ オ ポ ン チ ン (OPN) は 、B細 胞 の 活 性 化 を 弓Iき 起 こ す サ イ 卜 カ イ ン と し て 知 ら れ 、 そ の 標 的 細 胞 や 機 能 は 多 彩 に わ た っ て い る 。 OPN遺 伝 子 発 現 は 、 動 脈 硬 化 部 位 の 粥 腫 内 石 灰 沈 着 と そ れ を 取 り 巻 く マ ク □ フ ァ ー ジ 、 ま た サ ル コ イ ド ― シ ス 、 結 核 な ど の 肉 芽 腫 中 の マ ク □ フ ァ ー ジ 、 類 上 皮 細 胞 と 多 核 巨 細 胞 で 認 め る と 報 告 さ れ て い る が 、in vivoで の 直 接 的 機 能 は 未 だ 不 明 で あ る 。 そ こ で 、 申 請 者 は 、OPNの 機 能 を 追 求 す る た め 、 ま ず 動 脈 硬 化 病 変 の 脂 肪 線 条 形 成 時 の マ ク □ フ ァ ― ジ 遊 走 へ の 関 与 を 、 弓 | き 続 き マ ク □ フ ァ ー ジの 集 簇 を 中 心 と す る 肉 芽 腫 性 病 変 へ の 関 与 を 検 討 し た 。
OPNが 、 動 脈 硬 化 促 進 性 に 働 〈 か 否 か を 検 討 す る た め 、 免 疫 グ □ ブ リ ン の ェ ン ハ ン サ ― を 有 し 、OPNcDNAを 過 剰 発 現 す る ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス (OPN‑TG) を 作 成 し た 。 こ の 系 で は 、 造 血 細 胞 に よ り 作 ら れ た 外 因 性OPNの 作 用 を 調 べ る こ と が 可 能 と 考 え た 。 コ ン 卜 □ 一 ル マ ウ ス で は 、 腎 と 骨 にOPNの 発 現 を 認 め る が 、 こ れ に 加 え てOPN‑TGで は 、 脾 臓 と 胸 腺 に 発 現 を 認 め た 。 動 脈 硬 化 病 変 の 解 析 に は 、OPN‑TG群 と コ ン ト 口 ― ル 群 に お い て 、 高 脂 肪 食 を 投 与 し 、 大 動 脈 基 部 に お け る 動 脈 硬 化 病 変 を 定 量 化 し た 。 そ の 結 果 、 高 脂 肪 食 群 で は 、OPN‑TG群 の 動 脈 硬 化 病 変 面 積 は 有 意 に 増 加 し た 。 次 に 、OPNの 免 疫 染 色 を 行 う と 、OPN−TG高 脂 肪 食 マ ウ ス に お け る 泡 沫 細 胞 で は 、 コ ン 卜 □ − ル 群 よ りOPNが 強 発 現 し て い た 。 泡 沫 細 胞 は 平 滑 筋a‑ア ク チ ン 陰 性 で あ り 、 マ ク □ フ ァ → ジ 由 来 と 考 え た 。 な お 、 総 コ レ ス テ □ − ル の 平 均 値 に は 両 群 間 で 差 を 認 め な か っ た 。 以 上 よ り 、 高 脂 肪 食 の 摂 取 が 、 血 管 内 皮 細 胞 の 障 害 を 起 こ し 、 活 性 化 マ ク □ フ ァ ー ジ の 血 管 壁 へ の 遊 走 を 起 こす 。 ま た 、 マ ク □ フ ァ ― ジ に よ る 酸 化LDLの 摂 取 は 、 マ ク 口 フ ァ ― ジ を 更 に 活 性 化 さ せ 、 マ ク
□ フ ァ ー ジ の 泡 沫 細 胞 へ の 分 化 を 刺 激 す る 。 こ の 過 程 で 、 泡 沫 細 胞 か ら 誘 導 さ れ たOPNは 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ 、 血 管 平 滑 筋 や 綜 維 芽 細 胞 を 更 に 遊 走 さ せ 、 血 管 壁 の 肥 厚 を も た ら し 、 動 脈 硬 化 を 促 進 す る と 考 え た 。
次 に 、 肉 芽 腫 性 病 変 に お け るOPNの 機 能 を 検 討 し た 。 心 臓 に 線 維 化 に 加 え て 石 灰 化 周