博 士 ( 工 学 ) 張 雅 茹
学 位 論 文 題 名
Study on preparation and dielectric property of perovskite oxynitride SrTa02N
(ベロブスカイト型酸窒化物SrTa02N の合成と誘電性に関する研究)
学位論文内容の要旨
誘電 体 電 子 セ ラ ミ ック ス に は コ ン デ ンサ ーやキ ャパ シター とし て、共 振器 、アン テナ 、ノイ ズフ イ ル タ ー 謡 ど 様 々 な 用 途 が あ る 。 広 く 利 用 さ れ て き た チタ ン 酸 鉛(PbTi(h)やPZT(Pb2r03−PbTi03) 強 誘 電 体 材 料 に 加え て 、PbMgl/3Nb2/33′ よ ど の り ラ クサ ー も 重 要 性 が 増し て い る 。 そ の ぺロ プ ス カ イ ト 型の 結 晶 格 子 が 対 称心 を 持 た 教 い た め に自 発 分 極 す る 前 者に 対 し 、 後 者 で倣 分極を 持つ 局所 構 造 が 平均 化 し た 結 晶 格 子を も つ 。 し か し い ずれ も 化 学 組 成 に 鉛を 含 有 す る と ころ から、 大量 に使 用さ れる 電子セ ラミ ックス によ る環境 汚染 が懸念 され 始めて いる 。
白色LI弭 ) 用 螢光 体 を ど の 機 能 性 無機 材 料 と し て も 注目 さ れ て い る 金 属酸 窒 化 物のう ち、 立方晶 BaTa.02Nや 正 方 晶Snめ2Nは 、 ベ ロ プ ス カ イ ト 型 の 結 晶 構 造 を と る 。 焼 結 が 困 難 を と こ ろ から 50% 程 度 し か 相 対 密 度 の を い 試 料 で 既に 数 千 程 度 の 誘 電率 が 報 告 さ れ て い たも の の 、 そ の 信 憑性 が 疑 わ れて い た 。 本 研 究 では 酸 化 物 お よ び 窒 化物 陰 イ オ ン の 占 有す る サ イ ト が 二種 類あり 、そ れら の 占 有 様 式 を 明 らか に す る こ と に よっ て 局 所 構 造 を 明 らか に で き るsI.Ta02Nに 着 目 し、 中 性 子 線 回 折 法 によ っ て 結 晶 構 造 を精 密 化 し て 誘 電 性 が出 現 す る 機 構 を 明ら か に す る と とも に、よ り緻 密誼 焼結 体を 得るプ ロセ シング を開 発する こと を研究 目的 とした 。
第 一 章 で は 、 酸 窒 化 物 ペ ロ プ ス カ イ トBaTaQNお よ びSn・a02Nに 関 す る 結 晶 構 造 と 誘 電 性 に 関 す る 研究 の 現 状 を 整 理 して 、 酸 化 物 お よ び 窒化 物 イ オ ン の 配 置様 式 に よ る タ ンタ ル周り の六 配位 多 面 体 の歪 を 明 ら か に す る必 要 性 、 さ ら に は 誘電 特 性 を 改 善 す るた め に 不 可 欠 であ る緻密 な焼 結体 を得 る焼 結法に つい て述べ た。
第 二 章 で は、 酸 窒 化 物 ベ ロ プス カ イ トSrI・a02Nを ア ン モ ニ ア窒 化 し て 合 成 す る際 に 、 固 相 混 合 物 を 原 料と し た 場 合 と ソ フト 溶 液 法 で 調 整 し た酸 化 物 を 用 い た 場合 に お け る 、 結晶 構造に おけ る差 異 を 論 じた 。 本 研 究 で 合 成し た 酸 窒 化 物 で は 従来 の 報 告 と 比 べ かを り 平 衡 に 近 い生 成物が 得ら れ、
空間 群14´mcm、a〓0.5702(3)nm,c=0.8078(6)nmで あっ た。酸 化物 /窒化 物イオンのサイト占有 率は 、4aで約0.5(ゆ.50、8hで約0.75,l/0.25であったところから、シス−1・a04N2八面体を形成して 1い ゛イ オ ン の 周 り に は 大き を 分 極 を 生 じ るこ と が 明 ら か に をっ た 。 さ ら に こ の8hサ イ ト の 異 方性 温 度 因 子 はc面 内 で 極 め て 大 きく 、c軸方 向 に 伸 び た1瓠 )4N2八 面 体は 互 い に 大 き く チル ト し を が ら 連 結 し て お り 、こ の 変 位 が 誘 電 率を 大 き く し て い る 可能 性 を 示 し た 。 その 状 況 はTa5゛ イ オ ンが 配 位 八 面 体 の 中 心 か ら 変 位 し て い る と 報 告 さ れ て き たBd・a(kNと は 異 な っ て い た 。 第 三 章 で は 、 酸 窒 化 物 ペ ロ プ ス カ イ トSr1江QNの 焼 結 法 を 開 発 し た 。 合 成 す る 際 と 同 じ ア ン モ ニ ア 気 流 中 で 焼 結 し た既 報 で は 、 焼 結 密度 が 極 め て 低 か った 。 原 料 粉 の 均 一 性を 保 っ と と も に 微 粒 子 で あ る こ と が 焼 結を 促 進 す る う え で重 要 を こ と か ら 、本 研 究 で は ソ フ ト 溶液 法 で 調 整 し た SrT・a02N微 粉 体 を 焼 結 原 料 と し た 。0.2MPaの 加 圧 窒 素 雰 囲 気中 、1400℃で3時間 焼 結 し た と こ ろ 、TaCが 不 純 物 と し て 生 じ た 。 し か し 原 料 粉 に5重 量 ゲ 。 のSrく ニ03およ びLa203を 焼 結助 剤 と し て 添 加 し た と こ ろ 、X線 回 折 法 で は 不 純 物 を 含 ま ず 緻 密 をSm02N焼 結 体 が 得 ら れ た 。 高 温 で
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焼 結する 際にSr0が 部分的 に蒸発 するとともに、再度助剤を結晶格子中へ取り込む双方の反応に よ って緻 密化が促進されることが分かった。しかし焼結後には元の粉体の赤褐色とは異額り黒色 化 してい た。 格子定 数がや や小さ くをり、焼結過程においてSrTa02Nが微量の窒素を失い不定比 組 成とを っていた。アンモニア気流中1000℃で12時間雰囲気焼成するともとの赤褐色に戻った。
焼 結助剤 とし てStC03およびL1203を用い た場合 には、 ポストアニール後でそれぞれ92.7qoおよ び90.1%の相対 密度で あった 。これ らの 焼結体 はl02〜l06Hの 周波数 域では 、周 波数に 依らず 1.7xl04の大きな誘電率を示し、0.04程度の誘電損失が見られた。
第四章では、焼結温度が緻密化、微細組織および誘電性に及ばす影響について調べた。焼結助剤 を 添加し をい 場合に は、焼 結温度 が上 昇する にっれ てTaC、TaONおよび1、a3N5不純物の量が増 え てSrOが揮 発した 。S疋03を添 加する と、1200℃では 微量のSr2T・a03Nが不純物として現れる も のの、1360〜1600℃までの温度域ではsI′ra02N単一相であった。La203を添加した場合には、
1200℃では助剤絃未反応であったが、1360〜16(め℃までの温度域では単一相であった。焼結温度 と ともにSめ 欠損を 埋め る反応 により緻密化が進んだ。しかしSr(ニ03を添加した場合には1500
℃以上では炭酸ガスの揮発を伴うためか緻密化が進まず、開気孔をもつ破断面が走査電子顕微鏡で 観察された。このため高温焼結した焼結体でもアンモニア気流中でのポストアニールが可能で赤褐 色の絶縁体にをり、1500〜1800℃で大きを誘電率が観測された。
第五章では、熱間静水圧焼結法mIP)による無添加焼結について調べた。焼結助剤を添加し誼い で冷間静水圧圧縮したSr1、a02N錠剤をパイレックスガラス管中に封入したのち、19印皿bで14(m
℃ に 達し たの ち3時 間保 持するHIPを 試みた 。六方 晶BN粉 末中に 錠剤を 直接 に包み 封入し たの ちlIPす ると 、X線回折では不純物は見られをいものの、黒色に還元して相対密度92ゲ。まで緻密 化 が進ん だ。アンモニア雰囲気中でアニールしても、緻密なために元の赤褐色までは戻らをかっ た 。しか し白 金箔で 包んだ のち、 六方晶BNまたはアルミナ粉を充填してガラス管に封入してHIP し た試料 では、相対密度は80%程度であり、アンモニア雰囲気中でのアニールが可能であった。
その誘電率は0.8xlぴ程度、損失は10程度であった。
第六章では、SrTa02N誘電体セラミックスの耐熱性について調べた。銀ベーストを電極として、
350℃お よぴ500℃ で1時 間加 熱した のち電 気特性 を測 定したが、顕著を特性変化は見られず500
℃までは大気中で使用できることがわかった。
第七章 では、第一章から第六章までを総括し、助剤を添加する反応焼結法によって得られる約 90%の相 対密度 をもつsl′ra02Nの緻密を焼結体が、アンモニア雰囲気中でポストアニールして 大 きを誘 電率を示すことを確認した。さらに既存の誘電体に比べた長所を議論し、将来展望を示 した。
最後に、本研究では酸窒化物ベロブスカイトSr1.a(hNについて、緻密を焼結体を得る作製法を確 立し、周波数に依らず1ザにも及ぶ大きを誘電率を実測するとともに、結晶構造の精密化からも大 きを誘電率を示すことを確認し、新たを非鉛誘電体として極めて有用であることを明らかにした。
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学位論文審査の要旨 主査 教授
副査 教授 副査 教授
吉 川 信 一 高 橋 順 一 島 田 敏 宏
学 位 論 文 題 名
Study on preparation and dielectric property of perovskite oxynitride SrTa02N
( ペ ロ ブ ス カ イ ト型 酸 窒 化物 SrTa02N の合 成 と 誘電 性 に関 す る 研究 )
誘電体 電子 セラミ ックス にはコ ンデ ンサー やキャ パシタ ーとし て、 共振器 、アン テナ、ノイズフイ ルタ ー 教 ど 様 々 誼用 途 が あ る 。広 く 利 用 さ れて き た チタン 酸鉛(PbTi03)やPZT.(Pb2r03―PbTi03) 強誘 電 体 材 料 に 加え て 、PbMgl/3Nb2/3鴎 次 ど の り ラ クサ ー も 重 要 性が 増 して いる 。その ぺロプ ス カイ ト 型 の 結 晶 格子 が 対 称 心を 持た顔 いため に自 発分極 する前 者に対 し、 後者で は分極 を持つ 局所 構造 が 平 均 化 し た結 晶 格 子 をも つ。し かしい ずれ も化学 組成に 鉛を含 有す るとこ ろから 、大量 に使 用され る電子 セラ ミック スによ る環境 汚染が 懸念 され始 めてい る。
白 色LED用 螢 光 体 誼 どの 機 能 性 無 機材 料 と し て も注 目 さ れ て いる 金 属 酸 窒 化 物の う ち 、 立 方晶 BaI・a02Nや 正 方 晶SrTa02Nは 、 ペロ プ ス カ イ ト型 の 結 晶 構 造を と る 。 焼 結が 困 難 教 と こ ろか ら 50% 程 度 し か相 対 密 度 の 教い 試 料 で 既 に 数千 程 度 の 誘 電率 が 報 告 さ れて い たもの の、そ の信 憑性 が疑 わ れ て い た 。本 研 究 で は酸 化物お よび窒 化物 陰イオ ンの占 有する サイ トが二 種類あ り、そ れら の占 有 様 式 を 明 らか に す る こ とに よ っ て 局 所構 造 を 明 ら かに で き るSrTa02Nに 着 目 し 、 中性 子 線 回折 法 に よ っ て 結晶 構 造 を 精密 化して 誘電性 が出 現する 機構を 明らか にす るとと もに、 より緻 密教 焼結体 を得る プロ セシン グを開 発する ことを 研究 目的と した。
本 論 文 で は、 酸 窒 化 物 ペロ プ ス カ イ トSrTa02Nを ア ン モニ ア 窒 化 し て 合成 す る 際 に 、ソ フ ト 溶 液法 で 調 整 し た 酸化 物 を 用 い従 来の報 告と比 べか 教り平 衡に近 い生成 物が 得られ 、酸化 物/窒 化物 イオン のサイ ト占 有率は、4aで約0.5Q/o.50、8hで約0.75/0.25であったところから、シス‐Ta04N2 八面 体 を 形 成 し てTa5゛ イオ ン の 周 り には 大 き 誼 分 極を生 じるこ とが 明らか にをっ た。さ らに この 8hサ イ ト の 異 方 性 温 度 因子 はc面 内 で極 め て 大 き く、c軸 方 向 に伸 び たTa04N2八 面体 は 互 い に 大 き く チ ル ト し 教 が ら 連 結 し て お り 、 こ の 変 位 が 誘 電 率 を 大 き く し て い る 可 能 性 を 示 し た 。 さ ら に ソ フ ト 溶 液 法 で 調 整 し たSm02N微 粉 体 を 焼 結 原 料 と し 、5重 量 % のSrI二 ニ03お よ び La23を 焼 結 助 剤 と し て 添 加 し て0.2MPaの加 圧 窒 素 雰 囲気 中 、1400℃ で3時間 焼 結 し た と ころ 、 不 純 物 を 含 ま ず 緻 密 教SrTa02N焼 結 体 が 得 られ た 。 高 温 で 焼結 す る 際 にSrOが 部 分的 に 蒸 発 す る ―80―
と と もに 、 再 度 助 剤を 結 晶 格 子 中ヘ 取 り 込む双 方の反 応によ って緻 密化 が促進 される ことが 分か っ た 。 焼 結 過 程 に お い てSrTa02Nが 微 量 の窒 素 を 失 い 不定 比 組 成 と 次る も の の 、 ア ンモ ニ ア 気 流 中 1000℃ で12時 間 雰 囲 気 焼 成 す る と も との 化 学 組 成 をも つ 赤 褐 色 試料 に 戻 っ た 。 焼結 助 剤 と し て SrC03お よ びLa203を 用 い た 場 合 に は 、 ポ ス ト ア ニ ー ル 後 で それ ぞ れ92.7%お よ び90.1%の 相 対 密 度 で あ っ た 。 こ れ らの 焼 結 体 はl02〜106HZの 周 波数 域 で は 、 周波 数 に 依 ら ずl.7xl04の 大 き 教 誘 電 率を 示 し 、0.04程 度 の誘 電 損 失 が 見 られ た 。
ま た 焼 結 温 度 が 緻密 化 、 微 細 組織 お よ び 誘 電性 に 及 ば す 影響 に つ い て 調 べた 。SrC03を 助 剤 と し て 添 加 す る と 、1200℃ で は 微 量 のSr2Ta03Nが 不 純 物 とし て 現 れ る もの の 、136(Y‑1600℃ ま で の 温 度 域 で はSrTa02N単 一 相 で あ っ た。La203を 添 加 し た場 合 に は 、1200℃ では 助 剤 は 未 反 応で あ っ た が 、1360‑ 1600℃ ま で の 温度 域 で は 単 一相 で あ っ た 。 焼結 温 度 と と もにSr0欠損 を 埋 め る 反 応 に よ り 緻 密 化 が 進 ん だ 。 し か しSrC03を 添 加 し た 場 合 に は1500℃ 以 上 では 炭 酸 ガ ス の揮 発 を 伴 うた め か 緻 密 化が 進 ま ず 、 開気 孔 を もつ破 断面が 走査電 子頭微 鏡で 観察さ れた。 このた め高 温 焼 結 した 焼 結 体 で もア ン モ ニ ア 気流 中 で の ポ ス トア ニ ー ル が 可能 で 赤 褐 色 の絶 縁 体 に教り 、1500
〜1800℃ で 大き 改 誘 電 率 が観 測 さ れ た 。助剤 無添加 で熱 間静水 圧焼結 しても ある 程度は 緻密化 し、
相 対 密 度 は800/0程 度 で あ り、 ア ン モ ニ ア雰 囲 気 中 で の アニ ー ル が 可 能で あ っ た 。 その 誘 電 率 は 0.8xl04程 度 、 損 失 は10程 度 で あっ た 。
こ れ を 要 す る に、 著 者 は 酸 窒化 物 ペ ロ プ スカ イ トSrT・a02Nの 誘電性 につい て、そ の緻密 教焼 結 体 を 得る 作 製 法 を 確立 し て 大 き 趣誘 電 率 を見出 すとと もに、 結晶構 造の 精密化 からそ の原因 を明 ら か に し、 無 機 材 料 化学 の 発 展 に 貢献 す る ところ 大改る ものが ある。 よっ て著者 は、北 海道大 学博 士
( 工 学) の 学 位 を 授与 さ れ る 資 格あ る も の と 認 める 。
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