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血管平滑筋細胞増殖へのp 57kip2発現低下の関与 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 中 野 記 嗣

学 位 論 文 題 名

血管平滑筋細胞増殖へのp 57kip2 発現低下の関与 学位論文内容の要旨

    I,背景

  経 皮 的 冠動 脈 拡 張 術後 に 認 め られ る 冠 動 脈再 狭 窄 は ,同 手 技 成 功後 の 最 大 の合 併 症 と して 捉 え ら れ て いる , 再 狭 窄病 変 に お ける 肥 厚 し た新 生 内 膜 を構 成 す る 血管 平 滑 筋 細胞 は , 高 い 増 殖 能 と 幼 若な 表 現 形 を持 つ こ と が知 ら れ て いる , す な わち , 血 管 平滑 筋 細 胞 は種 々 の 刺 激 に 速 や か に 反応 し , 静 止期 を 脱 し 増殖 反 応 を 開始 し う る 能カ を 有 し てお り , そ の増 殖 促 進 的 あ る い は 抑 制 的 な 分 子 機 構 の 解 明 は , 再 狭 窄 の 予 防 を 考 え る 上 で 極 め て 重 要 で あ る .   細 胞 の 分 裂 は , 細 胞 周 期 の 進 行 と 密 接 に 連 動 し て お り ,Gl間 期 か らDNA合 成 が 実 際 行 わ れ るS期 へ の 細 胞 周 期 進 行 に は , 調節 因 子 た るサ イ ク リ ンと 酵 素 活 性を 有 す る サイ ク リ ン 依 存 性 リ ン 酸 化 酵 素(CDK)の 複 合 体 の 活 性 化が 必 要 で ある こ と が 知ら れ て い る. 逆 に , サイ ク リ ン ノCDK複 合 体 に 結 合 し , そ の 活 性 を 抑 制 し て い る 分 子 群(CDK抑 制 蛋 白 ;CKI)の 存 在も 明 ら か に さ れ て お り ,CKIは サ イク リ ン/CDK複 合 体を 抑 制 す るこ と で , レチ ノ ブ ラ スト ー マ 蛋 白(pRb)の り ン 酸 化 を 抑 制 し , 結 果 と し て 転 写 因 子E2Fの 活 性 化 を 抑 制 し て い る .CKIに は,D夕イブのサイクリンをもっぱら抑制するp16 family(pl5"k4b,p l61nk4a,p1811k4匸,p191nk4d) と , よ り 広 い 抑 制 能 カ を 有 す るp21family(p21clp1,p27kiPl,p57klp2) か ら な る .   生 体 内 にお い て ,p21とp27は 比 較 的広 範 囲 に 発現 し て い るが ,p57klp2は終末 分化を 終えた 組 織 ( 脳 , 骨格 筋 , 心 筋, 血 管 平 滑筋 な ど ) にの み 発 現 が認 め ら れ ,そ の 平 滑 筋細 胞 増 殖 に おける動態や生理的役割は知られていない.

lI.目的

  本研究 の目的 は,血 管平滑筋 細胞に おける 細胞周 期進行 中のp57k'p2蛋白の動態を明らかにし,

さ ら に 細 胞 周 期 に 対 す る 影 響 , 特 にGl期 か らS期 に か け て 倹 討 す る こ と で あ る .     III.  方法

  胎 児 ラ ッ ト の 大 動 脈 由 来 の 培 養 血 管 平 滑 筋 細 胞 八10を10% ウ シ 胎 児血 清(FBS) を 合む 培 地 (DMEM)で 培 養 し ,60時 間 の0.5%FBS/DMEMで 細 胞 周 期 をGO/ Gl期 に 同 調 静 止 さ せ ,10% FBS/ DMEMを 再 添 加 し , 血 清 に よ る 増 殖 刺 激 を 加 え4時 間 お き に 細 胞 を 調 製, 以 下 の 実験 に 供 し た . す な わ ち ,flowcytometryに よ る 細 胞 周 期 解析 ,RT.PCRに よ る 表現 形 の 変 化とp57kや2 のmRN八 量 の 変 化 ,Western blotに よ るp57k'p2蛋 白 量 の変 化 ,in‑vilro kinase assayによ る

501

(2)

サ イ ク リ ン /CDK複 合 体 の 活 性 量 で あ る , さ ら に , 種 々 の サ イ ク リ ン ,CDKの 一 過 性 発 現 系 に お い てp57k'p2の 追 加 発 現 の 有 無 に よ る 影 響 をCD‑ 20陽性 細 胞の みを 指標 とし てflowcytometry に よりS期十G2/M期の分布量の 変化を解析した.

    IV.  結果

血 清 除 去 に よ り90% 以 上 のAl0細 胞 が GO/G1期 に 同 調 静 止 し . , 血 清 の 再 添 加 に よ りGlか ら S期 へ の 移 行 が10時 間 前 後 で , ま たG2か らM期 の 移 行 が18時 間 前 後 で 見 ら れ た . 成 熟 型 の 血 管 平 滑 筋 特 異 的 な 分 子 マ ー カ ー の 発 現 は , 血 清 除 去 後 あ る い は 血 清 刺 激 後 に も 認 め ら れ ず , 逆 に 幼 若 な 血 管 平 滑 筋 に 特 異 的 な 分 子 マ ー カ ー の 発 現 は , 血 清 除 去 あ る い は 刺 激 後 を 通 し て 発 現 し て い た .p57k'p2のmRNAの 量 は 観 察 期 間 中 , ほ ぽ 一 定 で あ っ た . 一 方 ,p57k'p2の 蛋 白 量 はGO/G1の 細 胞 静 止 期 で は 多 く 発 現 し , 血 清 刺 激 に よ る 細 胞 周 期 進 行 の 過 程 に お い て は , 刺 激 直 後 か ら 減 少 し , 低 い発 現量 が 維持 され てい た.in‑vitro kinase assayによ る サイ ク リ ン/CDK複 合 体 の り ン 酸 化 活 性 定 量 化 に よ り , サ イ ク リ ンD/CDK4と そ れ に 引 き 続 い て , サ イ ク リ ンE/CDK2複 合 体 が 順 次 活 性 化 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た . さ ら に ,Al0細 胞 に 対 す る 一 過 性 発 現 系 に お い て , サ イ ク リ ンDとCDK4, あ る い は サ イ ク リ ンEとCDK2の 共 発 現 に よりS期+G2fM期の割合はへ゛ クターのみのコ外ロールに 比して両者とも有意に増加したが,p57k'p2 の 各々への追加はその割合の増 加を抑制した.

考案

幼 若 な 表 現 形 に 特異 的 な分 子マ ーカ ー が恒 常的 に発 現し て いる こと ,逆 に高 分 化型 のマ ーカ ー が 発 現 し て い な い こ と か ら ,A10細 胞 は 幼 若 な表 現形 を持 ち 続け る培 養血 管平 滑 筋細 胞と 考え ら れ た .p57kip2蛋 白は 細胞 周 期の 静止 期で 多く 発 現し ,逆 に細 胞 周期 の開 始と 進行 の 際には 速やかに 減 少 し 抑 制 さ れ た発 現 量が 維持 され て おり ,細 胞周 期進 行 に対 する 閾値 を設 定 し抑 制的 に働 い て い る と 推 測 さ れ た . さ ら に ,p57k'p2のm RNAレ ベ ル は ほ ぼ 一 定 で あっ たこ と から ,転 写レ ベ ル で の 調 節 よ り む しろ 蛋 白分 解系 の亢 進 によ る発 現量 減少 が 示唆 され ,実 際ユ ピ キチ ンプ 口テ ア ソ ー ム系 によ る分 解 を受 けう るこ と が既 に報 告さ れて い る.p57k'p2の蛋 白量 減少 を 強制発 現により 補 う と ,Gl期 特 異 的 な の サ イ ク リ ン /CDK複 合 体 の 活 性 化 を 抑 制 す る こ と で 細 胞 周 期 の 停 止 が 実 行 さ れ て い た . 逆 にp57k'p2遺 伝 子 を ノ ック アウ トし た 細胞 では 細胞 周期 の 適切 な停 止と 逸 脱 が 起き ず, 過剰 な 細胞 増殖 の継 続 とア ボト ーシ スが 起 きる こと が知 られ , 併せ て考 えるとp57k'p2 の 血 清 刺 激 後 の 減 少 は , 増 殖 を 惹 起 し う る 細 胞 内 情 報 伝 達 系 の ト リガ ーの ー っと 考え られ た . p57k'p2の 減少 を阻 害す る よう な分 子生 物学 的 なア プロ ーチ は ,血 管閉 塞性 疾患 の 予防と 治療に有 用 であ るこ とが 示 唆さ れた .

皐 士 言 丘 1` 口口口

幼 若 な 表 現 形 を 維 持 す る 血 管 平滑 筋 細胞 の増 殖に おい て ,p57klp2の 減少 はGl期待 異 的な サイ ク リ ン /CDK複 合 体 の 活 性 化 に 関 与 し , 細 胞 周 期 促 進 的 に 働 く .

‑ 502

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

血管平滑筋細胞増殖へのp 57kip2 発現低下の関与

    経 皮 的冠 動 脈 拡張術後 に認め られる 冠動脈 再狭窄 は,手 技成功 後の最 大の合併 症とし て捉え られて いる. 再狭窄 病変に おける 肥厚し た新生 内膜を構成する血管平滑筋細胞は,高 い増殖 能と幼 若な表 現形を 持つこ とが知 られ, その増 殖を制御する分子機構の解明は,再狭 窄の予 防を考 える上 で重要 である .細胞 の分裂 は,細 胞周期の進行と密接に連動しており,

Gl間 期 か らDNA合 成 が 実 際 行 わ れ るS期 へ の 細胞 周 期 進 行に は , 調 節因 子 た る サイ ク リ ン と酵 素 活 性 を有 す る サ イク リ ン 依 存性 リ ン酸化 酵素(CDK)の複合 体の活 性化が必 要であ る こと が 知 ら れて い る . 逆に , サ イ クリ ン /CDK複 合体に 結合し, その活 性を抑 制して い る 分 子 群 で あ るCDK抑 制 蛋 白;CKIは , サイ ク リ ン /CDK複 合 体 を 抑制 す る こ とで , レ チ 丿 ブラ ス ト ー マ蛋 白(pRb) の り ン酸 化 を 抑制 し,結 果とし て転写 因子E2Fの 活性化 を抑制 し てい る .CKIには ,D夕 イ プ の サイ ク リ ン をも っ ぱ ら 抑制 す るp16 familyと,よ り広い 抑制能カを有するp21family(p21°ipl,p2 7kipl,p5 7k'p2)からなる.しかし,生体内におぃ て,p57は終末 分化を 終えた組 織(脳 ,骨格 筋,心 筋,血 管平滑筋など)にのみ発現カs認め られる ものの ,その 平滑筋 細胞の 増殖に おける 動態や 生理的役割は知られていない.申請者 は ,血 管 平 滑 筋細 胞 に お ける 細 胞 周 期進 行 中のp57蛋白の 動態を明 らかに し,さ らに細 胞 周 期に 対 す る 影響 , 特 にG1期 か らS期 にか け て検討 するこ とを試み た.方 法は, 胎児ラ ッ ト の大 動 脈 由 来の 培 養 血 管平 滑 筋 細 胞を10%ウシ 胎児血清(FBS)を含 む培地(D ME M)で培 養 し ,60時 間 の0.5% FBS/ DMEMで 細 胞 周 期 をGO/ G1期 に 同 調 静 止 さ せ ,10% FBS/ DMEMを 再 添 加 し , 血 清 に よ る増 殖 刺 激 を加 え4時 間 お きに 細 胞 を 調製 , 以 下 の実 験 に供 し た . すな わ ち ,flowcytom etryによる 細胞周 期解析 ,Western blotに よるp57蛋 白量の 変化,in―vitro kinase assayによ るサイク リン/CDK複合 体の活性 量定量 である.

さ らに ,p57発 現ア デ ノ ウ ィル ス を 用 いて , サ イ クリ ン ノCDK複 合体 のりン 酸化活 性に対 す る影 響 の 検 討, ま た , 種々 の サ イ クリ ン ,CDKのー 過 性 発 現系 に おいてp57の追 加発現

503 ‑

顕 郎

一 則

   

   

和 聡

畠 嶋

輪 山

北 長

三 畠

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

の有無による細 胞周期への影響を解析した.血清除去によりGO/ G1期に同調静止した状態 で,p57は血管平滑筋細胞に多く発現しており,細胞周期進行に対する閾値を設定すると考 えられた.逆に,血清刺激による細胞周期進行の過程においては,p57は刺激直後から減少 し,低い発現量が維持されており,その減少は細胞周期促進的に働いていることが予想され た .一 方, サイ クリ ンD/ CDK4とそ れに 引き 続いて,サイクリンE/ CDK2複合体が順次 活性化されるこ と,さらにp57の減少を過剰 発現により抑制すると,各々の活性化は有意 に抑制されるこ とが明かとなった.一過性発現系においても,サイクリンDとCDK4,.あ るいはサイクリ ンEとCDK2の共発現による細 胞周期促進作用は,p57の追 加発現により,

著明に抑制されていた.以上から,増殖刺激後の血管平滑筋細胞において,p57蛋白は減少 し,その細胞周期抑制作用が減弱すること,また,その過剰発現による補充は,サイクリン

/CDK複合体の活性化を抑制することで細胞 周期進行と細胞増殖を抑制し,将来的に経皮 的冠動脈拡張術 後の新生内膜肥厚による再狭窄予防に有用である可能性 が示唆された.

  学位発表に際し,主査からの経過説明と紹介の後、申請者はスライドを用いながら約15分 にわたって学位論文内容の発表を行った。その後副査の長嶋教授から,他の細胞系でのp57の 経時的変化について,癌細胞におけるp57の変化について,p57の分解系の機序と役割につい て,p57の動脈硬化に対する一時予防の可能性について,また、副査の三輪教授から、p57の 内在性の結合と細胞周期抑制の可能性について,また、副査の畠山教授から、p57以外の分子 の関与について,また内在性の発現量による疾患予防の可能性について,主査の北畠顕教授か ら、分裂しうる細胞と分裂しない細胞の違い,また,そのテロメラーゼとの関連について質問 がなされた。申請者は研究結果に基づぃて、あるいは文献的知識を駆使して、誠実にかっ、概 ね適切に回答し得た。

  本論文は,先進的かつ精緻な分子生物学的手法を駆使して,血管平滑筋細胞におけるp57蛋 白の動態を明らかにした上で,今までに知られていなかった平滑筋細胞の増殖における役割を 解析した点が高く評価される・

  審査員一同は,これらの研究成果と申請者の豊富な知識と科学に対する見識などをあわせ,

申 請 者 が 博 士 ( 学 位 ) を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実