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酸化剤耐性とキレート剤耐性を有する Q −アミラーゼに関する研究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 萩 原 学 位 論 文 題 名

酸化剤耐性とキレート剤耐性を有する Q −アミラーゼに関する研究

学位論文内容の要旨

  洗剤には、衣類や食器類に付着した澱粉系汚れを除去する目的で液化型a−アミラーゼが 配合されている。しかし、洗剤のpHはアルカりであり、酸化剤およびキレート剤などを含 むため 、既 存の 液化 型a−ア ミラー ゼに は安 定性 およ びコスト面で問題があった。

  本研究は洗剤配合に適した新規顔液化型aーアミラーゼの構築を目的に、蛋白質工学によ る既存アルカリ液化型a一アミラーゼの改良を試みた。しかし、十分な目的酵素が得られな いことが判明したので、新たに目的に適う酵素を自然界よルスクリーニングし、その酵素 学的特性を明らかにした。また、シークエンスとモデリングによる本酵素の構造的特性を 解析するとともに、分子系統学的解析を行った。さらに、実用化に向けた蛋白質工学によ る本酵素の耐熱化を検討した。

1. 蛋 白 質 工 学 に よ る 既 存 ア ル カ リ 液 化 型 a― ア ミ ラ ー ゼ の 改 良   好アルカリ性Bacillus sp. KSM→1378株由来アルカリ液化型a一アミラーゼ(AmyK) の酸化安定化を蛋白質工学的手法により試みた。その結果、AmyK分子中のMet202を非 酸化性アミノ酸残基に置換することにより、過剰のH 202に対しても耐性を有する変異 AmyKの 構築に 成功 した 。し かしながら、変異導入によりAmyKの保持するアルカリpH での高い酵素比活性が低下し、実用面には至らなかった。

2.新規酵素のスクリーニングと酵素特性解析

  そこで次に、洗剤配合に適した新規のaーアミラーゼを生産する微生物の探索を行い、

KSM−K38株を土壌より分離した。本菌株は同定の結果、好アルカリ性Bacillus属細菌で あ るこ とが 判り 、さ らに発生系統学的解析により新種Bacillus属細菌と判断した。

  本菌株の培養液から本酵素(AmyK38)を電気泳動的に単一になるまで精製して、物理 化学的および酵素化学的特性を明らかにした。分子量は55 kDa (SDS‑PAGE)、活性の 最適作用pHは8.0〜9.5であり、糖分解様式などから液化型a一アミラーゼであると考え られた。また、AmyK38は比活性が高く、洗剤配合成分である酸化剤およびキレート剤に 対して非常に安定であった。

  既存の洗剤用液化型a−アミラーゼは酵素構造の維持に必須なカルシウムを分子内に保持 しており、キレート剤の存在下で安定性が低下することが知られている。これに対して

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AmyK38は、酵素分子中の金属分析より、カルシウムを保持していなしゝ全く新しいタイプ のa一アミラーゼであることが明らかとなった。

3.シークェンスとモデリングによるAmyK38の構造的特性解析

  好 ア ル カリ 性Bac田uSsp.KSMーK38株 よ り、AmyK38遺 伝 子 をPCR法 およ び 逆PCR 法等により取得した。取得遺伝子断片には501アミノ酸残基をコードするORFが存在し、

缶Oアミノ酸残基からなる成熟酵素をコードしていることが明らかになった。推定アミノ酸 配列には、a−アミラーゼファミリーに共通な活性中心を形成する4つの保存領域が存在し、

3つの触媒残基も保存されていた。また、BacmUs止曲enfめmユ活a一アミラーゼ(BLA)の X線 結晶構造か ら予想さ れるA、Bお よびCのド メインを有し、液化型a一アミラーゼに 特有のループ領域も存在した。

  組換え枯草菌による生産および生産酵素の特性を検討した。んnyK38構造遺伝子を含む プ ラスミドpHSP−ArnyK38をB.SUb矼ぬISW1214株に形質 転換して 培養した 結果、約 7,000U/mlの組換え酵 素の大量 生産が可 能となっ た(野生 株での生 産性は約0.6U/

m1冫。また、酵素特性は野生型酵素とほぽ同様であった。

  んnyIく38の保持する優れた特性、すなわち、酸化剤耐性および高度なキレート剤耐性を 考 察する目的 で、BLAの立 体構造を 鋳型にし てんnyK38の分 子モデリ ングを行った。

BLAと モデ リ ン グに よ り構 築したAmyK38との活性 中心領域 での比較 を行った 結果、

AmyK38の酸 化 安 定性 はBLAのMet197に 相当する アミノ酸 残基が非 酸化性の ロイシン 残基であることが大きな要因と推定された。また、BAとカルシウム結合領域の比較を行っ たところ、ん11yK38ではカルシウムとの配位が困難な構造を有していることが判明した。

4. AmyK38の分子系統学的解析

AmyK38の種々由来a一アミラーゼあるいは澱粉関連酵素における進化系統樹を構築した。

その結果、活性発現にカルシウムイオンを必要とせず、また結合残基の保存性も低い超高 熱始原菌由来a一アミラーゼとも進化論的に遠く離れており、分子系統学的にも新規な酵素 であることが示唆された。また、系統樹構築に当たり、アルカリプルラナーゼ遺伝子のク ローン化に成功した。

5.蛋白質工学によるAmyK38の耐熱化

  AmyK38は、洗剤用として適した酸化剤・キレート剤耐性のアルカリ液化型a一アミラー ゼであるが、熱に対しては比較的不安定である。そこで自動食器洗浄機専用洗剤(ADD) 配合におけるパフオーマンス向上を目的に、その洗浄条件(50〜60℃)に適応した熱安定 性AmyK38の構築を蛋白質工学により試みた。アプロ亠チとしては、既知酵素との間での キメラ酵素の構築および分子動力学(MD)計算による不安定因子探索の2っを行った。キ メラ 酵素の検 討からは 、N末端側19アミノ酸残基をMTRG(蛋白質工学により酸化剤耐 性および耐熱性を改良したAmyK変異酵素)型とすることによって耐熱性の向上が可能で あることを見出した。MD法による熱振動によって、モデリング構造の変化を引き起こすと 思われる部位の推定を試みた結果、AmyK38のドメインBの構造が大きく壊れることが判っ た。また、本夕ーン部位にQ167E/Y169K変異を導入することにより、耐熱性が飛躍的に

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向上することが明らかとなった。

  さらに、上記2つのアプ口ーチにより見出された安定化因子を組み合わせることにより、

他の優れた酵素特性を失うことなく、耐熱性はさらに向上し、特にADD用として充分な 特性を有する改良AmyK38の大量供給が可能となった。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    松井博和 副査    教授    横田    篤 副査   助教授   伊藤浩之

学 位 論 文 題 名

酸化剤耐性とキレート剤耐性を有する     Q ― ア ミ ラ ー ゼ に 関 す る 研 究

  本 論 文 は 、 図48、 表13、 引 用 文 献109を 含 み 、8章 か ら な る 総 頁132の 和 文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文12編 が 添 え ら れ て い る ,

  洗 剤 に は 、 衣 類 や 食 器 類 に 付 着 し た 澱 粉 系 汚 れ を 除 去 す る 目 的 で 液 化 型aー ア ミ ラ ー ゼ が 配 合 さ れ る が 、 洗 剤 のpHは ア ル カ り で あ り 、 酸 化 剤 や キ レ ー ト 剤 な ど を 含 む た め 、 既 存 の 酵 素 に は 安 定 性 お よ び コ ス ト 面 で 問 題 が あ っ た 。 本 研 究 は 洗 剤 配 合 に 適 し た 液 化 型a− ア ミ ラ ― ゼ の 開 発 を 目 的 に 、 蛋 白 質 工 学 に よ る 既 存 ア ル カ リ 液 化 型a− ア ミ ラ ― ゼ の 改 良 を 試 み た が 、 十 分 な 目 的 酵 素 が 得 ら れ な い こ と か ら 、 新 た に 目 的 に 適 う 酵 素 生 産 菌 を 自 然 界 よ ル ス ク リ 一 二 ン グ し 、 酸 化 剤 や キ レ ― ト 剤 耐 性 の 新 規 ア ル カ リ 液 化 型a― ア ミ ラ ー ゼ を 取 得 し た 。 さ ら に 、 こ れ に 遺 伝 子 工 学 的 改 変 を 加 え 、 産 業 上 応 用 可 能 な 酵 素 の 大 量 発 現 に 成 功 し た 。 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

1. 蛋 白 質 工 学 に よ る 既 存 ア ル カ リ 液 化 型 a− ア ミ ラ ― ゼ の 改 良   好 ア ル カ リ 性Bacillus株 由 来 ア ル カ リ 液 化 型a― ア ミ ラ ― ゼ の 酸 化 安 定 化 を 蛋 白 質 工 学 的 に 試 み た 結 果 、 酵 素 分 子 中 のMet202を 非 酸 化 性 ア ミ ノ 酸 残 基 に 置 換 す る こ と に よ り 、 過 剰 のH202に 対 し て も 耐 性 を 有 す る 変 異 酵 素 を 作 成 す る こ と が で き た 。 し か し 、 変 異 に よ る 酵 素 活 性の 低下 カ汰 きく 実用 面に は 至ら なか った 。

2.新 規 酵 素 の ス ク リ ー ニ ン グ と 酵 素 特 性 解 析

  そ こ で 、 洗 剤 配 合 に 適 し た 新 規 のa− ア ミ ラ ― ゼ を 生 産 す る 微 生 物 の 探 索 を 行 い 、 新 種 の 好 ア ル カ リ 性Bacillus属 細 菌 、KSM−K38株 を 土 壌 よ り 分 離 し た 。 電 気 泳 動 的 に 単 一 な 酵 素 (AmyK38)を 精 製 し 、 各 種 性 質 を 明 ら か に し た 。 分 子 量 は 55 kDa、 最 適pHは8.0〜9.5、 糖 分 解 様 式 か ら 液 化 型a一 ア ミ ラ ー ゼ と 判

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断した。AmyK38 は比活性が高く、洗剤配合成分である酸化剤およびキレ―ト 剤に対して安定であった。

   既存の洗剤用液化型a −アミラーゼは酵素構造の維持に必須なカルシウムを分 子内に保持しており、キレ一卜剤の存在下で安定性が低下することが知られてい るが、本酵素はカルシウムを保持しない全く新しいタイプのa ‐アミラーゼであ ることを明らかにした。

3. シ ー ク エ ン ス と モ デ リ ン グ に よ る AmyK38 の 構 造 的 特 性 解 析   AmyK38 遺伝子を取得し、480 アミノ酸残基からなることを明らかにした。

この配列には a ーアミラーゼファミリーに共通な活性中心を形成する4 つの保存 領域が存在し3 っの触媒残基も保存されていた。また、他のBacillus a‑ アミラー ゼ の X 線結晶構造から予想されるA 、B およびC のドメインを有し、液化型a ― アミラーゼに特有のル―プ領域も存在した。

   組換え枯草菌による酵素の生産を検討した結果、約7 ,OOO U/ml の大量生産 が 可 能 と な っ た 。 ま た 、 酵 素 特 性 は 野 生型 酵 素 と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 。    本酵素の持つ優れた特性、すなわち、酸化剤耐性および高度なキレ一卜剤耐性 に 関 与 す る ア ミ ノ 酸 残 基 を 分 子 モ デ リ ン グ の 手 法 に よ り 推 定 し た 。

4. AmyK38 の分子系統学的解析

  AmyK38 および種々の起源由来の a −アミラ―ゼや澱粉関連酵素の進化系統 樹を構築し、本酵素が活性発現にカルシウムイオンを必要とせず、また、結合残 基の保存性も低い超高熱始原菌由来a −アミラーゼとも進化論的に遠く離れてお り 、 分 子 系 統 学 的 に も 新 規 な 酵 素 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

5. 蛋白質工学によるAmyK38 の耐熱化

  AmyK38 が熱に対して比較的不安定であることから、既知酵素とのキメラ酵 素の作成および分子動力学計算による不安定因子探索の2 つの方法から耐熱化要 素を推察し、両者からの安定化因子を組み合わせることにより、他の優れた酵素 特性を失うことなく、耐熱性はさらに向上し、特に自動食器洗浄機専用洗剤と し て 充 分 な 特 性 を 有 す る 改 良 AmyK38 の 大 量 供 給 を 可 能 と し た 。

   以上のように本研究は、新しい用途に適う新規a ーアミラーゼを取得し、その

酵素学的特性を明らかした。また、シークエンスとモデリングによる本酵素の構

造的特性を解析するとともに分子系統学的解析を行った。さらに、実用化に向け

た蛋白質工学による本酵素の耐熱化を検討し、その大量供給を可能としたもので

あ り 、 学 術 的 に も か つ 産 業 的 に も 大 い に価 値 あ る 成 果 と 判 断 さ れ る 。

   よって審査員一同は、萩原浩が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有

すると認めた。

参照

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