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学位論文題名食細胞による活性酸素産生の機構

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Academic year: 2021

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博 士 ( 菜 学 ) 青 山 千 裕

     学位論文題名

食細胞による活性酸素産生の機構

―海綿由来生理活性物質keramamideB を用いた解析一

学位論文内容の要旨

  人を はじ めとする様々な動物は 体内への輿物の侵襲から身を 守らなければならない.多 核 白血球の好 中球は外来異物に対し,遊 走,貪食,活性酸素(02.等 )産生(殺菌効果による異 物 の排 除) ,酵素放出とぃった反 応を示す.この活性酸素産生 は生体防御に必須であり, こ の 反応 を導 く酵素を欠損した遺伝 性疾患の慢性肉芽腫症患者は 感染症を繰り返し死に至る . 細菌由来の 走化性因子であるformyl・Mcthyonyl‑Leucyl‑ Phenylalanine (fMLP)による好中球の 刺 激は ,百 日 咳毒 素感 受性GTP結合 タン パ ク質(Gi)を介 した 経 路に よっ て02.を 産生し , 自血球の活 性化機構を研究するモデル となっている.

  本研 究で は まず ,1991年 に生 薬 学講座の小林淳一教授らに よって発見されたkeramamideB

(KER‑B) を含 むい くっ か の海 綿由 来の 環 状ペ プチ ドが モル モ ット 好中 球をfMLPで刺激 し た際の02. 産生を抑制することを見出し,その作用点をを明らかにした.また,flk4 LP以外の 刺激による 炎症反応に対するKER‑Bの効 果を検討した.

  は じめ にKER‑Bによ る 活性 酸素 産生の阻害を検討した.KER−Bは濃度依存的に02.産生 を 阻 害 し ,50% 阻 害 濃度 は5 yMで あっ た .ま た,KER―B存 在 下に おい ては02.産 生のfMLP 用量 依存 曲線が高濃度側にシフト しており,競合阻害の様式 を示した.一方,fMLPと同様 の 経路 で活 性酸 素 産生 を導 くと さ れる 補体 成分 のC5aに よる活 性酸素産生をKER‑Bは阻害す る こと はな かっ た .以 上の 結果 か らfMLP刺 激に よる02.産 生に おけ るKER‑Bの作 用点は受 容 体レ ベル であ る と考 えら れた . そこで[3H]で標識したfMLPを使用して結合実験を行った と こ ろ ,KER‑BはfMLP受 容 体 の 競 合 阻 害 薬 で ある こと が明 ら かと なっ た. ま た, その ぬは fMLPのア ンタ ゴ ニス トと して 一 般的によく用いられているt−BocMLPと同程度であったこ と からKER−BのfMLP阻 害薬 とし て の有 用性 が示 唆さ れ た。

  っ ぎに 著者 はfMLP競合 阻害 薬 のKER―Bが, タチ ナ タマメ由来のレクチ ンであるコンカナ バ1JンA (Con A)によ る02. 産生 を抑 制す る こと を見 出し た ,し かし ,ConAはflk4LPの結 合 を 阻 害 し な かっ た ,っ まり ,ConAはfMLP受 容体 にア ゴ ニス ト様 の結 合を 示 さな いに も 関わ らずfl¥4 LPの アンタゴニス卜であるKER‑Bによってその最終応答が阻 害されるとぃうこ とが 明らかになっ た.  ConAは細胞表面の糖夕 ンパク質を架橋することに よって様々な細胞 応答 を引 き起 こ すと され てい る こと を考 慮す ると ,KER‑BはfMLP受容 体に 対し て競合的に 作用 するのみでな く,受容体刺激から活性酸素 産生応答までのカスケード の途中をも阻害し てい る可 能性 が 示唆 され た. そこで細胞内情 報伝達因子に対するKER‑Bの 作用を検討した.

Gタン パク 質共 役型 受容体を刺激すると ,受容体に会合しているGタ ンバク質が解離し,

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こ れが ホス ホ リパ ーゼC(PLC)およ ぴイ ノ シト ール リン 脂質3−キナーゼ(PI3― キナーゼ)

を 活性 化す る .活 性化 したPLCによ り産 生 され るイ ノシ トール三リン酸(lP3)は 細胞内のカ ル シウ ム動員を導く.そ の結果カルシウムに依存し て活性化されるタンバク質リ ン酸化酵素 (PKC)によ って 活性 酸 素産 生が 増大 する , 一方 ,P13ー キナーゼの細胞内反応生 成物である PI(3,4,5)P3に依存して活性化されるPKCのサブタイプの存在が知られている.02.産生には カ ル シ ウ ム 動 員 系 とPI3― キ ナ ー ゼ 系 の 両 方 が 必 須 で あ る と 考 え ら れ て い る .   まず ,カ ルシウム動員系につ いてキ食討したところ,KER‑Bはflh4 LP刺激およびConA刺激 に よ る 細 胞 内Ca2゛ 濃 度 の 上 昇 をm害 し た . し か し ,ConA刺 激 に よ る カ ル シウ ム動 員は KER―Bによって も,百日咳毒素(IAP)に. よる前処理によるGiを介する経路の遮断によっても 部 分 的 に し か 抑 制 さ れ なか った ,こ の こと からConAに よる カル シウ ム動 員 はGiを介 した 経 路と 共に チ口シンキナーゼを 介した経路の少なくともニつ によって活性化されている 可能 性 が考 えら れた .ま た ,IP3に 対す る細胞内カルシウム貯蔵 部位からのカルシウムの放 出は KER‑Bの 存 在 に よ っ て変 化 する こと はな かっ た .そ こでPLC活性 に対 するKER―Bの影 響を 検 討 し た と こ ろ , PLC活 性 に も KER・Bは 影 響 し な い こ と が わ か っ た .

  そこでさらに,カルシウム 動員系の他に受容体刺激に よって活性化するPI3‐キナーゼ系に 対 す るKER‑Bの 影 響 を 検 討 し た .tMLPお よ びConA刺 激 に よ るPI3‐ キ ナ ーゼ の活 性 は,

細胞内生成物であるPI(3,4,5)P3の産生量により評価 した.これらの活性はぃずれもKER‑B によ って 抑制 され た .ま た,IAP処理 によってfMLPおよびConAによ るPI(3,4,5)P3の産生 は阻害された.さらにConAに よるPI(3,4,5)P3の産生 はマンノースによって抑制されること から ,こ の応 答はConAの レク チン 作用 に よる もの であ る と考えら れた.また,flk4LPおよ びConA刺激によるPI(3,4,5)P3の産生と02.産生はぃ ずれもPI3―キナーゼの阻害剤である ワートマニン処理によって阻 害された,

  上 述し たPI(3,4,5)P3産生はGタン バク質のpYサブユニットに よって活性化されるPI3― キナ ーゼ であ るpl10yによるものと考え られるが,PI3ーキナーゼは この他に85 kDaの活性調 節 サ プ ユ ニ ッ ト(p85)と110 kDaの 触 媒 サ ブ ユ ニ ット(pl10)から なる タイ プ(p85/pl10ヘ テロ ダイ マー 型)の存在が示されてい る,このへテ口ダイマー型のPI3‐キナーゼはそのp85 に存 在す るSrc homology2(SH2)領 域を 介 して チ口 シン リ ン酸化タ ンバク質と結合し,活性 化す ると 言わ れて い る. 好中 球をConAで 刺激 する とタ ン バク質の チロシンリン酸化が増大 し, これ はIAPに よっ てもKER−Bによ っても影響をうけなかった. この1Jン酸化チ口シンに よりp85/pl10ヘテ 口 ダイ マー 型PI3・ キナ ーゼ が 活性 化さ れる と考 え られ たの でConAで刺 激し た細 胞の 抗ホ ス ホチ 口シ ン抗 体(PY20)免 疫 沈降 画分 中のPI3‐キナーゼ活性をPIを基 質に したPI(3)P産 生 量に よっ て測 定し た .ConA刺 激に よ りPY20免 疫沈 降画 分 中のPI3―キ ナ ー ゼ 活 性 が 増 大 し たが , この 活性 はKER‑Bおよ びIAPに よっ て 抑制 され なか った , また PY20免 疫 沈 降 画 分 中 のPI3― キ ナ , ー ゼ のp85の 量はConAの 刺激 によ り増 大 し,KER‑Bと IAPの 影響 を 受けなかった.一方,t:M LPは抗ホスホチロシン抗体 免疫沈降画分中のPI3‐キ ナーゼ活性を増加させること はなかった.

  以 上の 結 果か ら次 のよ うな 情報伝達経路が示さ れた.  ConA刺激はGiに依存 するPI3−キ ナーゼ及びチロシンリ ン酸化タンバク質に依存す るPI3→キナーゼの両者を同時に活性化する のに 対し ,fMLPはGiに依 存す るPI3・キナーゼのみ を活性化することが示唆さ れた.同様の 見解がカルシウム動員 系においても得られた.IAP,KER−BはConAによるPI(3,4,5)P3の産 生と02.産生をいずれ も抑制しながら,チロシン キナーゼに依存するPI3―キナーゼには無効 で あ っ た . こ の 事 実 はKER―BがConA刺 激 に 含 ま れ るfMLP様 の 作 用の みを 抑制 し てい る こと を意 味 する .さ らに この 結果から、ConAによ るチ口シンキナーゼの活性化 は,PI3―キ

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

栗原 徳光 野村 三宅

堅三 幸子 靖幸 教尚

     学位論文題名

   食細胞による活性酸素産生の機構

一海綿由来生理活性物質keramamideB を用いた解析ー

人をは じめとす る様々な動物は体内への異物の侵襲から身を守らなければならな い.多核白血球の好中球は外来異物に対し,遊走,貪食,活性酸素(O゜ー等)産生

(殺菌効果による異物の排除),酵素放出といった反応を示す.この活性酸素産生は 生体防御に必須であり,この反応を導く酵素を欠損した遺伝性疾患の慢性肉芽腫症 患 者 は 感 染 症 を 繰 り 返 し 死 に 至 る , 細 菌 由 来 の 走 化 性 因 子で あ るformyト methyonyl‑leucyl一phenylalanine (fMLP)による好中球の刺激は,百日咳毒素感受性 GTP結 合タンパ ク質(Gi)を 介した経 路によ って02ーを産生し,白血球の活性化機 構を研究するモデルとなっている.

  申 請 者 はま ず ,1991年に 生 薬 学講 座 の 小林 淳 一教 授らによ って発 見された keramamide B(KER―B)を含むいくっかの海綿由来の環状ペプチドがモルモット好中 球をfMLPで刺激した際のO .産生を抑制することを見出し,その作用点をを明ら かにし た.また ,fMLP以外 の刺激に よる炎 症反応に 対するKERーBの効果 を検討 した. はじめにKER−Bによる活性酸素産生の阻害を検討した,KERーBは濃度依存 的 に02一 産 生 を 阻 害 し ,50% 阻 害濃 度 は5uMで あ った . ま た,KER‑B存 在下 におい ては〇 一産生のfMLP用量依存曲線が高濃度側にシフトしており,競合阻 害の様式を示した,一方,fMLPと同様の経路で活性酸素産生を導くとされる補体成 分 のC5aによ る 活 性酸 素産 生をKER−Bは阻害す ること はなかっ た.以 上の結果 か らfMLP刺 激 に よる02一産 生 に おけ るKERーBの 作用点は 受容体レ ベルで ある

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と考えられた.そこで[3H]で標識したflvlLPを使用して結合実験を行ったところ,

KER―BはfMLP受容体 の競合阻 害薬で あること が明ら かとなっ た,また,そのKl はfMLPのアンタゴニストとして一般的によく用いられているt−BocMLPと同程度で あ っ た こ と か らKERーBのfMLP阻 害 薬 と し て の 有 用 性 が 示 唆 さ れ た 。   っぎ に申請 者はfMLP競合 阻害薬 のKER―Bが, タチナ タマメ由 来のレクチンで あるコンカナバリンA(Con A)による02一産生を抑制することを見出した.しかし,

ConAはfMLPの 結 合 を 阻 害 しな か っ た. っ ま り,ConAはfMLP受 容 体に ア ゴ ニ スト 様の結合 を示さないにも関わらずfMLPのアンタゴニストであるKER−Bによっ てその最終応答が阻害されるということが明らかになった, ConAは細胞表面の糖タ ンパク質を架橋することによって様々な細胞応答を引き起こすとされていることを考慮 す る と,KER‑BはfMLP受容 体に対し て競合 的に作用 するの みでなく ,受容体 刺 激から活性酸素産生応答までのカスケードの途中をも阻害している可能性が示唆さ れた,

  そこ で細胞 内情報伝達因子に対するKER−Bの作用を検討した.この結果から次 のよ うな情報 伝達経 路が示さ れた.  ConA刺激はGiに依存するPI3ーキナーゼ及 びチロシンリン酸化タンパク質に依存するPI3―キナーゼの両者を同時に活性化する のに 対し,fMLPはGiに依存 するPI3―キナーゼのみを活性化することが示唆され た.同様の見解がカルシウム動員系においても得られた,百日咳毒素(IAP),KER−B はConAによるPI(3,4,5)P3の産生と02一産生をぃずれも抑制しながら,チロシン キナ ーゼに依 存するPI3ーキ ナーゼ には無効 であっ た.この 事実はKERーBがCon A刺激に含まれるfMLP様の作用のみを抑制していることを意味する.さらにこの結 果から、ConAによるチロシンキナーゼの活性化は,PI3―キナーゼの活性化を導き ながらPI(3,4,5)P3の産生及ぴ02一産生を引き起こさないことが示唆される,この ConA刺激によるPI(3,4,5)P3を産生しないPI3―キナーゼの細胞内生成物の同定 は今 後の課題 である.本研究はKER−Bが好中球の機能の解明に有用であることを 示した,

  以上のように、本論文は食細胞による活性酸素の産生機構に関する新しい知見を 多く含んでおり、審査員一同は、本論文は博士(薬学)の称号を与えるのにふさわし い論文であると判断した。

参照

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