博 士 ( 工 学 ) 二 浦 裕
学位論文題名
Simultaneous Control of Molecular Weight and Tacticity of Poly(alkyl methacrylate)s Synthesized Using Atom TransferRadiCmP01ymenZadon
(原子移動ラジカル重合によるポリメタクリル酸誘導体の分子量および 立体構造の同時制御に関する研究)
学位論文 内容の要旨
高分子材料の物理化学的特性、力学的特性は、高分子の一次構造、すなわち分子量、分子量分散度、
末端基、および立体構造に大きく影響を受ける。そのため、高分子化学において、生成ポリマーの一 次構造制御は非常に重要な命題であり、これまで種々の制御法が開発されている。しかし、重合可能 なモノマーの多様さなどから、学術的および工業的に重要なラジカル重合では、成長ラジカルの活性 の高さから生成ポリマーの高度な制御は困難とされてきた。
近年、リビングラジカル重合法の開発が進み、ラジカル重合においてもイオン重合同等の分子量の 精密制御が可能な 系が次々と提案されている。特に、遷移金属触媒を用いた原子移動ラジカル重合 (ATRP)は、金属、 配位子、開始剤、および重合溶媒の組合せにより、多様 なピニルモノマーに対 応できる有用な系として興味深い。しかし、より高度に分子量と立体構造の制御をラジカル重合を用 いて同時に達成した例は極わずかである。
そこで、本研究では遷移金属触媒を用いたりピングラジカル重合法による、ポリヌタクリル酸誘導 体の分子量ならびに立体構造の同時制御と同時制御を可能する重合機構の解明、さらには得られたポ リマーの立体構造と熱特性の評価を目的とした。
本論文は5章から構成されている。
第1章は序論であり、本研究の背景および目的について述べた。
第2章で は、 メタ クリ ル酸 メチ ル(MMA)のATRPを行 い、 分子 量、 分子 量分 散度 、な らび に立 体構造について検討した。ATRPの開始系には 、金属源としてCuBr、配位子としてトルス((2‑ジメ チル アミ ノ) 工チ ル) アミ ン(Me6TREN)を 用い た。 溶媒 とし て トル エン 、THF、MeOH、HFIPを 用いてりピング性を検討した結果、HFIP中、低温下(‑20℃〜ー78℃)で重合を行った場合に重合が 制 御 可 能 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 さ ら に 、 重 合条 件の 最適 化を 検討 し、 仕込 み 比が
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[MMA]o/[initiator]O/[CuBr]O/[Me6TREN]O 200:1ニ1:1、溶媒量がHFIP:MMA=4:1(vん)の条件でおこなっ た 重 合 は 、 理 論 直 線 と 一 致 す る 結 果 が 得 ら れ た 。 生 成 ポ リ マ ー の立 体構 造は 、13C NMRス ペ クト ル を 用い て検 討 した 。そ の結 果、 生 成ポ リマーのrr‑三連子の割 合は、‑20℃で重合を行った 場合で75%、
‑78℃ で 重 合を 行 った 場合 で84%で あ った 。立 体構 造か ら 見積 もっ た成 長 鎖末 端へ のモ ノマ ー 付加 様 式 をp値 よ り判 断 した とこ ろ、 いず れ のポ リマ ーも べル ヌ ーイ 統計 にし た がっ てお り、 重合 は 低温 下 に お い て も ラ ジ カ ル 重 合(ATRP)と し て 進 行 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 以 上 よ り 、 低温 下 、HFIP を 溶 媒 と し た 重 合 を 行 う こ と で シ ン ジオ タク チシ ティ ー に富 むポ リメ タ クリ ル酸 メチ ルを 合 成す る ことが可能 となった。
第3章 で は 、1_ ア ダ マ ン チ ル メ タ ク リ レ ー ト(AdMA)、 メ タ ク リル 酸 エチ ル(EMA)、門 .プ チル メ タ ク リ レ ー 卜 .(nBMA)、iso‑プ チ ル メ タ ク リ レ ー ト(isoBMA)、 ド プ チ ル メ タ ク リ レ ー ト(tBMA)の 異 な る 側 鎖 を 持 つ メ タ ク リ レ ー ト のATRPを 行い 、分 子量 と立 体 構造 の同 時制 御 につ いて 検討 した 。 AdMAのATRPでは、Me6TREN、2,2 ・ ビピリジン(bpy)、1,1,4,7,10,10‑ヘキサメチルトリエチレンテ ト ラ ミ ン(HMTETA) のCu錯 体 を 用 い 、CuBr mMTElA開 始 系 が も っ と も 重 合 を 制 御 可 能 な 系 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、AdMAとMMAの ラ ン ダ ム 共 重 合 もCllBrmMTE1、A開 始 系 に て 制 御 可 能で あり 、 分子 量分 散度 の 非常 に狭 い生 成ポ リ マー を得 られ ることを見出した (Aん/^n 1.24〜 1.10) 。HF卩を 溶媒 と した 各モ ノマ ーのATRPで は、 温度 の低 下 とと もに 、重 合 が制 御で きる こと が 示 唆 さ れ た 。 生 成 ポ リ マ ー の 立 体 構 造 を13CNMRス ベ ク ト ル を 用 い て 見 積 も っ た と こ ろ 、全 ての ポ リ マー でm三連 子の 割 合が 増加 して いる こ とが 明ら かと な った (E^仏:げ 64% 〜81%、門BMA:げ 63%〜80%、むDBMA:′′―63%〜82%、fBMA:げ‐59%〜70% 、AdMA:げ―62%〜78%) 。さらに生成 ポ リ マ ー の 熱 特 性 に つ い て 、TGA、DSCを 用 い て 評 価 し た と こ ろ 、 通 常 の フ リ ー ラ ジ カ ル重 合で 得 ら れ た ポ リ マ ー と 比 ベ 、 ガ ラ ス 転 移 温 度 な ら び に 分 解 温 度 が 上 昇 す る こ と を 明 ら か と し た 。
第4章 で は 、HFIP中 で のATRPと 立 体 制 御 の 機 構 に つ い て 述 べ た 。ATRPの 機 構 は 、FD‑Mass測 定 を 用 い て 解 析 し た 。 そ の 結 果 、CuBr/Me6TREN錯 体 はHFIPと1ニ1で 相 互 作 用 し 、 ド ー マ ント ―活 性 平 衡 を ド ー マ ン ト 側 に 強 く 傾 け る こ と が わ か っ た 。 立 体 制 御の 機構 は、13C NMRスペ ク トル を用 い て解 析し た。 各ピ ー クの シフ ト値 から 、 アル キル メタ ク リレ ート モノ マー お よび ポリ マーのカルポニ ル 基 とHFIPと の 間 に 水 素 結 合 が 形 成 する こと を明 ら かと し、 また 、 この 相互 作用 が要 因 とな って 、 立 体 構 造 が 制 御 可 能 と な る こ と を 見 出し た。 以上 、HFIPを溶 媒と し たア ルキ ルメ タク リ レー トの 低 温ATRPを 行 う こ と に よ り 、 生 成 ポ リ マー の分 子量 と 立体 構造 を同 時 に制 御で きる 新規 な 重合 系を 見 出す こと に成 功し た 。
第5章 は 総括 で、 原子 移動 ラ ジカ ル重 合に よる ポ ルメ タク リル 酸 誘導 体の 分子 量お よ び立 体構 造の 同 時 制 御 に つ い て ま と め た 。
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学位論 文審査の要旨
学位論文題名
Simultaneous Control of Molecular Weight and Tacticity of Poly(alkylmethacrylate ) SSyntheSizedUSingAtom TranSferRadiCal POlymerlZation
( 原 子 移 動 ラ ジ カ ル 重 合 に よ る ポ リ メ タ ク リ ル 酸 誘 導 体 の 分 子 量 お よ び
立 体 構 造 の 同 時 制 御 に 関 す る 研 究 )
高分子材料の物理化学的特性 、力学的特性は、高分子の一次構造、すなわち分子量、分 子量分散度、末端基、および立 体構造に大きく影響を受ける。そのため、高分子化学にお いて、生成ポリマーの一次構造 制御は非常に重要な命題であり、これまで種々の制御法が 開発されている。しかし、重合 可能なモノマーの多様さなどから、学術的および工業的に 重要なラジカル重合では、成長 ラジカルの活性の高さから生成ポリマーの高度な制御は困 難とされてきた。
近年、リビングラジカル重合 法の開発が進み、ラジカル重合においてもイオン重合同等 の分子量の精密制御が可能な系 が次々と提案されている。特に、遷移金属触媒を用いた原 子移動ラジカル重合(ATRP)は、 金属、配位子、開始剤、および重合溶媒の組合せにより、
多様なピニルモノマーに対応で きる有用な系として興味深い。しかし、より高度に分子量 と 立 体 構 造 の 制 御 を ラ ジ カ ル 重 合 を 用 い て 同 時 に 達 成 し た 例 は 極 わ ず か で あ る 。 このような背景のもと、本論 文は、遷移金属触媒を用いたりピングラジカル重合法によ る、 ポ リメタクリル酸誘導体の分子量ならびに立体構造の同時 制御を目的としている。
本論文は5章から構成されているが、その概要および評価 できる成果などについて下記 に述べる。
著者 は、 メタ クリ ル酸 メチ ル(MMA)のATRPを行 い、 分子 量、 分 子量 分散 度、 なら び に立体構造について検討した。 その結果、金属源としてCuBr、配位子としてトリス((2‑
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次 樹
夫 毅
豊 恒
憲
知 川
浦 熊
覚 市
宮 大
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
ジメ チルアミノ)エチル)アミン(Me6TREN)、溶媒としてへキサフルオロアルコール(HFIP) を用 いたATRPが、低温下(‑20℃〜‑78℃)でりピング的に進行し、シンジオタクチシティ ー に富 むPMMAを生 成す るこ とを 見出 した 。本 研究成果は、ラジカル重合を用いてPMMA の分 子量ならびに立体構造の同時制御を達成した最初の例である。関連の研究がイオン重 合を 中心に幾っか報告されているが、本論文では汎用性の高いラジカル重合で達成できて いる ことが独創的であり、評価に値する。
著者は、1‐アダマンチルメタクリレート(AdMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、門‐プチ ルメタクリレート(nBMA)、iso‑プチルメタクリレート(isoBMA)、卜ブチルメタクリレー ト(tBMA)の 異な る側 鎖を 持つ メタ クリ レー トのATRPを行い、分子量 と立体構造の同時 制御にっいて検討した。これまでAdMA.を精密合成した例はないが、本論文では構造が精 密に制御されたPAdMAの合成に成功している。また、側鎖の異なるモノマーにおいても、
分子量と立体構造の同時制御を達成している。さらに、生成ポリマーの熱的性質やガラス 転移温度の発現を立体構造を変化させることで制御可能にしている点は、学術のみならず 工 業 的 に も 非 常 に 有 用 で あ り 、 今 後 の 関 連 分 野 の 発 展 に 大 き く 貢 献 で き る 。
著者は、HFIP中でのATRPと 立体制御の機構について検討している。国内外にて、重合 系内での溶媒効果が多く検討 される中、本論文では溶媒と錯体、溶媒とモノマー、および 溶 媒 と 生 成 ポ リ マ ー の 関 与 を 明 確 に し 、ATRPの 新 し い 動 力 学 を 確 立 し で い る 。
これを要するに、筆者はりピングラジカル重合法による、ポリメタクリル酸誘導体の分 子量ならびに立体構造の同時制御の達成と同時制御を可能する重合機構の解明、さらには 得られたポリマーの立体構造と熱特性を明らかにしている。これらの結果は、精密ラジカ ル 重 合 の み な ら ず 関 連 分 野 の 発 展 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よって筆者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与 される資格あるものと認める。
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