博 士 ( 医 学 〕 本 間 賢 一
学 位 論 文 題 名
Prefabricated flaps using tissue expanders
‑ An experimental study in rats ‑
( Tissue expander を 応 用 し た prefabricated flap の 実 験 的 研 究 )
( ― ラッ 卜 を 用 いた 動 物 実験 ―)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
I. 研究目 的
Prefabricated flapは、 本来、生 理的・ 解剖学的 に存在し ない血 管系を人 為的 にっ く り 、こ れ で 栄養 し た 組織 を 移 植に 利 用 する と い う 画期 的 な 皮弁 で ある。
この 皮 弁 は、donor siteと して利 用する組 織ヘ他 の部位か ら筋肉 片などを っけた 血管 柄 を 移動 し て 、新し い血管 網を形成 させ、組 織移植 に応用す るもの である。
この 皮 弁 の開 発 に より、 従来は 適当な血 管系が解 剖学的 になく移 植に利 用できな かっ た 部 位の 皮 膚 や骨組 織など が、新し く作られ た血行 を用いて 移植す ることが 可能とな った。
一方、tissue expander(TEと略す) はシリコ ン製の バルーン であり 、これを皮
.下に埋 入させ、 一定期 間をかけ て徐々 に膨らませる。それにより、組織は十分に 伸展 さ れ るた め 、 余裕を もって 皮弁を採 取するこ とがで きる。ま た同時 に、TEに より 皮 弁 の血 行 は 増加 し 組 織が 伸 展 され る の で、 より大き な皮弁をdonorの 犠牲 を最小限 にして採 取する ことが可 能とな った。
本 研 究は 、TEを 用 いること により 血行動態 の安定 したprefabricated flapが 作 成可 能 と なる こ と を動物 実験に より証明 し、その 際の新 生血管系 の動態 を解明す ることを 目的とし て行っ た。
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I【,実験fj料おkび方法
実 験勁物 は、体 400〜500gのWistar糸IaLの雄を川い、麻ぬ卆はエーテルとケク ミ ン峻腔IJ、J投 与(0. 1mg/g)で彳fった 。
|.予 備実験。
本 実 験 に 先 立 ち 、 20匹 の ratを 川 い て 次 の 事 項 を 決 定 し た 。 1) Tじ の 人 き さ 、 形 状 、 適 馴 な inf lationの 時 1捌 の 検 討 。 2) 皮弁の解 剖学的 位越、犬 きさ、形 状の検 討。
I.本 実験。
実験動 物は次の3酢に う}け た。
Iお ¥:'rEを使用 しinf lationした もの丶。
II剃 ¥ : TEを 釟 p人 し た だ け で inハ ationし な か っ た も の 。 iiiロf:TEの 代わり にBiobrane0を川いた もの。
各觧13匹 ずっのratを用 いて研究 に供した 。
予備実 験に基づ いてratの腹部 にsx 5cmの正 方形の皮 弁をデ ザインし 、Tト:等の 挿入の ための皮 下ポケッ トを作 成した。TEは直径5cmx高さ2.5cmの半球幵彡とし、
fl apの 形 状 お よ び 用 い た 血 管 束 はI〜 m群 と も 同 様 の 方 法 で 施 行 し た 。 pedicleとす る 血 管束 は 伏 在動 静 脈 で、 速 位 端に8x10mmの 大腿 薄 筋 を筋膜を 合 めて 付 着 させ た 。 血 管柄 は 鼠 径部 脂 肪 組織 の中を 通し、 先端の筋 肉片を5―Oナイ ロ ン 糸 で 、 flap中 央 部 の 肉 様 膜 に ポ ケ ッ ト の 裏 側 . か ら 固 定 し た 。 I群 では 術 後1週間 目 にTEに 対 して 生 食30 ccを 注入し 、一度でf.ull expansion と し た 。u群 はTEをinflationし な か っ た 。I〜ni群 と も に 、 仞 回 手 術 か ら3遡 間 目 にflapを 挙 上 し 、 完 全 なisland flapと し て 元 の 位 置 に 戻 し 縫 合 し た 。 各 群 と も そ の1週 間 後 ( 初回 手 術 から4週 間後 ) にflapの 生着 面 積 を計 算 し た。
1〜m群 と も に 初 回 手術 か ら3週 間 目 に各 ゼ ¥3匹ず つ 屠 殺しmicroangiography を施行 した。ま た初回手 術から4週間 目に、 生着率をtlllJ定 した直後 に各B¥3匹ず っにmiCroangiographyを施行し た。
@ 皮弁 の 生 着率
I群 で は、 最 低91% 、 最高100%、 平 均96.6% で、全 例が91%以 上の生 着率を示
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し た 。11君 ¥ は 、 最 低35.7% 、 最 高100% 、 平 均73.2% で 、90% 以 上 が4例 あ っ たが 他 は30% 台 から80%台 ま で 広 く分 布 した 。m群は 、最低21.8%、 巌高88.4%、ユI′ニ均 59.5%で、Il群と同様に20驚台から80%台まで広く分布した。
統 言II学 的 検 討 はWilcoxon検 定 を 剛 い た 。I群 とn群 の 問 に は5% の 危 険 率 で 、1
‖fと11‖¥のf‖Hこは0.5%の危険率で有意差が認められた。lIロ≠とIlI Zfの矧には 餌,甑 差は認められなかった。
(參Microangiography
I‖fでは 、f人カ! 勦脈か らil三人 した遺 彫剤は 、筋体1勺の微小ifii管か ら吻合ml管を 介 し て 既 存 の 下 腹 壁 動 静 脈 ヘ 流 入 し 、 反 対 側 の 下 腹 壁 動 静 脈 ま で 良 く 描 出 さ れ て い た 。 こ れ に 対 し てu.m群 で は 、 吻 合 血 管 を 介 し て の 下 腹 壁 動 静 脈 の 描mはIおf と 比 較 し て 悪 く 、 特 にpedicleの 先 端 か ら 遠 位 と な る に っ れ て 不 良 で あ っ た 。 ま た f lapを 切 離 し た1週 間 後 に 造 影 し た 所 見 で は 、 切 離 前 は 既 存 の 下 腹 壁 動 静 脈 の 構 造 が 保 た れ て い た も の が 、pedicleに 向 か っ て 、 求 心 性 にW形 成 さ れ た 血 管 網 が 観 察された。
W. 考 案
火 損 細 織 に 合 っ たf lapを 、 身 体 各 部 位 か ら 目 的 と す る 部 位 ヘ 機 能 的 ・ 整 容 的 な にllj題 を 残 さ ず に 移 植 す る こ と は 、 形J戊 外 科 医 の み な ら ず 外科 医 の 理 想とtる と こ ろ で あ る 。 し か し 、 既 存 の 血 管 網 を 利 用 す るflapで は 、 そ の す べ て を 満 足 す る こ と は 難 し く 、 新 し いf lapの 開 発 が 待 た れ て い た 。
本 研 究 はTEを 用 い てprefabricated flapを 臨 床 的 に 、 安 全 か っ 有 効 に 利 剛 し 、 I『ll行 動 態 の 安 定 し た 薄 いflapをdonorの 犠 牲 を 最 小 限 に 採 取 す る 目 的 で 行 っ た 。 Prefabricated flapは 、 移 植 さ れ た 血 管 茎 ま で はaxial pattern flapで あ る が 、 そ の 先 はrandom pat tern fla.pと な る た め 、 あ る 程 度 以 上 の 大 き さ に な る と surgical delayが 必 要 と な り 手 術 手 技 が 複 雑 に な る と い う 避 け て は 通 れ な い 弱 点 が あ っ た 。
し か し 今 回 の 実 験 に お い て 、TEを 使 用 す る こ と でml管 網 が 発 達 す る た め 、I君f はn・m群 と 比 較 し て 有 意 に 生 着 率 が 高 い こ と が 認 め ら れ た 。TEのdelay効 粟 に つ い て は 、 現 在 ま で あ ま り 明 ら か で は な か っ た が 、 本 研 究 に よ りsurgical delayと 同 様 の 効 粟 が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。 ま たTEに よ る 血 管 網 の 新 生 ・ 発 達 の メカ ニ ズ ム と し て は 、flapと 組 織 が 圧 迫 さ れ て 固 く 密 着 す る こ と と 、 機 械 的 に 組 織 が 仲 展 さ れ て 組 織 の 血 液 に 対 す る ニ ー ズ が 高 ま り 、 血 管 新 生 を 促 進 さ せ る も の と 推 定
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さ れ る。
Microangiographyで はI.n‑mの い ずれ の 酢 でも 、 血 管茎 と 筋 肉ま で は 良 好に 描 出 され たが 、既存の 下腹壁動 静脈の 描出はI君羊 が圧倒的 に良好で あった 。これ はTEの 作 用 によ っ て 筋 体内 の 微 小血 管と既存 の下腹 壁動静脈 の問の 吻合血管 が多 数 形 成さ れ た ため で 、 さ らにTEによ る血管新 生促進 作用も伴 って皮 弁内に豊 富な 血 管 網 が 形 成 さ れ 、 そ の 結 果flapの 生 着 率 が 向 上 し た も の と 考 え ら れ る 。 本研 究 によりTEのdelay効 果が確 認され、TEを用い ることに より血 行の良い 薄い prefabricated flapをdonorの犠 牲を最小 限にし て作成で きるこ とが明ら かとな り 広 く 臨床 応 用 への 道 が 開 かれ た と 考え ら れ る。
V. 結 語
TEを用 いたprefabricated flap'0)動物 実験モデ ルを作 成し、TEによるdelay効果 を検討 した。
くD皮 弁 の 生 着 率 はI群 が96.6% 、u群 が73.2% 、m群が59.5% で ,I群 とm排 で はO: 5% 、 I群 と u群 で は 5% の 危 険 率 で 有 意 差 が 認 め ら れ た 。
◎Microangiographyで1群 はii.m群と 比 較して 良好な血 管網の 形成が認 められ TEに よるdelay効 果と 考 え られ た 。
◎TEを 用 いる こ と によ っ て 血行 動 態 の安 定したprefabricated flapを作 成する こ と が 可能 で あ った 。
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学 位 論 文 審 査 の要 旨
学 位 論 文 題 名
Prefabricated flaps usirigr tissue expanders
‑ An experimental study in rats ‑
( Tissue expander を 応 用 し た prefabricated flap の 実 験的研究)
( ― ラ ッ 卜 を 用い た動 物実 験― )
I.研 究目 的
Prefabricated flapは、donor siteと し て利 用す る組 織ヘ 他の 部位 から 血管 茎 を 移 植 し て血 管茎 と組 織の 間に 新し い血 管 網を 形成 させ 、組 織移 植に 応用 する 画 期 的 な 皮 弁で ある 。し かし 、あ る程 度以 上 の大 きさ にな るとsurgical delayが 必 要と な り手 術手 技が 複雑 にな ると いう 弱点 があ った 。
本 研 究は、prefabricated flapの作成の際に、.tissue expanderを用いることに よ り 、 血 行動 態の 安定 した 皮弁 が作 成可 能 なこ とを 、動 物実 験に よっ て証 明し そ の際 の 新生 血管 系の 解明 を目 的と して 行っ た。
H.実 験材 料お よ び方 法
実 験 動 物 は 、 体 重400〜500gのWistar系ratの 雄 を 用 い 次 の3群 に 分 け た 。 I群 : tissue expanderを 使 用 し inf lat ionし た も の o H群 : tissue expanderを 挿 入 し た だ け でinflationし ナ ょ か っ た も の 。 m群 : tissue expanderの 代 わ り にBiobraneOを 用 い た も の 。 各 群 各 々13匹 ず っ のratを 用 い た 。flapの 形状 お よび 用い た血 管束 はI〜m群 とも に 共通 で、ratの 腹部 にsx 5cmの正 方形 の皮 弁を デザ イン し、expander挿入のた め の 皮下 ポケ ット を作 成し た。 伏在 動静 脈の 遠 位端 に8x 10mmの大腿薄筋をっけた 血 管 柄 を 、鼠 径部 脂肪 組織 の中 を通 し先 端の 筋肉 片 をflap中 央部 の肉 様膜 に固 定し た 。I群 の み 術 後1週 間 目 に 生 食30 ccを注 入し 、 一度 でfull expansionとし た。
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彦 康
秀
武 富
慶
浦 山
田
大 小
安
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
u 群は inflation せず 、i 〜 m 群と もに、初 回手術か ら 3 週間目 にflap を挙上し、
完全なisland flap として元の位置に戻し縫合した。各群とも1 週間後にflap の生 着面 積 ・ 壊死 に陥っ た面積・創 が移開し てできた 潰瘍部の 面積を計 算した。
I 〜 m 群とも にflap 作成後 3 週間目に各群3 匹ずっ、また生着率を測定した直 後に各群3 匹ずつにmicroangiography を施行した。
m .実験結果
@皮弁の生着率
I 群では、最低 91 %、最高 100 %、平均 96.6 土3 . 6 %であった。II 群は、最低35.
7 %、最高100 %、平均73.2 土24.7 %であった。m 群は、最低21 .8 %、最高,88.4 %、
平均 59 . 5 土 25.1 %であった。統計学的検討はWilcoxon 検定を用いた。 I 群と u 群 の間には5X の危険率で、 I 群.とm 群の間には0 . 5X の危険率で有意差が認められた。
◎Microangiography
I 群では、伏在動脈から注入した造影剤は、゛筋体内の微小血管から吻合血管を 介して既存の下腹壁動静脈ヘ流入し、反対側の下腹壁動静脈まで良く描出されて いた。これに対して H ・班群では、吻合血管を介しての下腹壁動静脈の描出はI 群 と比較して悪く、特にpedicle と反対側で不良であった。また、flap を切離した1 週間後に造影した所見では、切離前は既存の下腹壁動静脈の構造が保たれていた ものが、vascular pedicle に向かって求心性に再形成された血管網が観察された。
1V .考案および結諭
今回の実験において、 I 群はu . m 群と比較して有意に生着率が高かった。この ことから surgical delay の代わりにtissue expander を用いでも皮弁の生着率は改 善することが明らかとなった。Microangiography ではI .II .III のいずれの群でも、
血管茎と筋肉までは良好に描出されたが、既存の下腹壁動静脈の描出はI 群が圧 倒的に良好であった。これはtissue expander の作用によって筋体内の微小血管と 既存の下腹壁動静脈の間の吻合血管が多数形成されたためで、さらにexpander に よる血 管拡張作 用も伴って皮弁内に豊富な血管網が形成され、その結果flap の viability が向上したと考えられる。このexpander による血管網の発達のメカニズ ムとして 1 ま、機械的に組織が伸展されることにより血管新生の増加するものと推 定されている。
Prefabricated flap は、移植された血管茎まではaxial pattern flap として利 用できるが、その先は random pattern flap となるため、ある程度以上の大きさに なるとsurgical delay が必要であった。本研究により、 tissue expander の delay 効果を利用し、surgical delay を行うことナょく血行の良い薄いflap をdonor の犠牲 を最小限にして作成できることが明らかとなった。このため、従来は適当な血管 茎が解剖学的に存在しなかったために、移植に利用できなかった部位の皮膚や軟 部組織などが血行を保持したままで移植可能となり、広く臨床応用への道がある。
以 上 の こ と か ら 博 士 ( 医 学 ) 学 位 に 妥 当 な も の と 考 え ら れ る 。
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