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Cdtl を分子標的とした癌細胞増殖抑制の検討

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 横 山 朗 子

学 位 論 文 題 名

Cdtl を分子標的とした癌細胞増殖抑制の検討 学位論文内容の要旨

【緒菖】

  細 胞に は 一細 胞周 期に 一度 の みDNA複 製が 起こ るよ うに制御する機構が備わ っており,複製 の「 ライ セ ンス 化J制御 と呼 ばれ る. っ まりS期 のDNA複製に先立ち,G1期に複 数の蛋白質から なる複製前複合体pre‑replication complex(pre‑RC)がゲノム上に形成されることが必須となる・

CdtlはG1期 に発 現しDNA上のorigin recognition complex(ORC)と呼ばれる蛋白 に結合し,同じ くpre‑RC構 成 蛋 白 で あ るCdc6と 協 同 し てminトchromosome protein (MCM)complexをDNA上 に結 合さ せ ,pre‑RCを完 成さ せ る働 きを もつ . この ようにCdtlの機能はGl期 に作用するが,S 期に おい て は再 複製 が生 じな いようにニつの経路 で制御を受けている‐そのー っがS期でのSCF 複合 体に よ るユ ビキ チン 化, プロテアゾームでの 分解であり,もうーっはS期 からM期において Cdtlのイ ン ヒピ タ一 蛋白 であ るgemininが発現し,CdtlのORCへの結合を阻害す る経路である・

本研 究で は 安定 化さ せたgeminin変具体,すなわちdestruction boxを欠損させ ,細胞周期に依 存し て分 解 され ないgeminin△DをHIV由 来のTAT蛋白 の下 流に 配し た りコ ンビ ナン卜蛋白を作 製し ,細 胞 へ効 率良 く導 入す ることでCdtlの機能 に与える影響と癌の分子標的 治療への応用の 可能性を検討した‐

【方法】

1.TATリコンピナン卜 蛋白の作成と精製

  ヒ卜geminin cDNAよ りpolymerase chain reaction (PCR)法にてgeminin全長,すなわち野生型 gemininWTお よびgeminin cDNAよ りgemininの 分 解モ チーフであるdestruction box (22〜30ア ミノ酸)を欠損させたgeminin△D,コン卜ロ―ルとしてgreen fluorescent protein cDNAの全長を PCRで増 幅し た. 得 られ たPCR産 物を 各々 適切 な 制限 酵素で切断し,pTAT‑HAに クローニングし た.次にこれら3種類 のプラスミドでE.co′BL21を 形質転換させ蛋白を合成させた.精製したTAT リコ ンビ ナ ント 蛋白 は, 以後TAT‐gemininWT,TAT‐geminin△DおよぴTAT‐GFPと記載する・

2. 癌細 胞株 にお け るTATリコ ンピナント蛋白の導 入と細胞内でのCdt1との会合 、安定性の確認   細胞内への導入:TATリコンビナント蛋白添加培養液(10〃g/m|)で子宮頸癌細胞株(HeLa)を 2時 間培 養し ,抗HA抗体 を― 次抗 体, 二 次抗 体と してFITC‐conjugated抗 マ ウス抗体(Santa CruzBiochemiStry)を 用いて免疫染色を行い,螢 光顕微鏡にて観察した.Cdt1との会合:同様に 培養 したHeLa細 胞のwhoIecellIysateを 抗HA抗体 で免 疫沈 降 し,SDS‐PAGEで 分離泳動しニト ロセルロース膜に転写 した.抗Cdt1抗体を―次抗体としてウエスタンブロッティングを施行した,

TATリコ ンピ ナン 卜 蛋白 の安 定性:同様に培養したHeLa細胞の培養液を交換後 ,経時的にwhole ce‖IySateを 回 収 し , 抗HA抗 体 を ― 次抗 体 とし てウ エス タ ンブ ロッ ティ ング を 施行 した , 3‐TAトGeminin△Dに よるpre‐RC形成抑制のを検 討

  HeLa細 胞 をM期 に 同調 後, リリ―スと同時にTATリコンビナント蛋白を加え12時間培養した.

    一544―

(2)

各々の細胞を回収し,細胞質蛋白,核結合蛋白を分離回収した.Pre‑RC構成蛋白の抗体すな わち 抗MCM7抗体(Santa Cruz Biochemistry),抗ORC2抗体(CALBOCHEM)およぴ当研究室で 作 成 し た 抗geminin抗 体 を 一次 抗 体 とし て ウ エ スタ ン ブ ロッ テ ィ ング を 施 行し た , 4.細胞増殖曲線とFACS

  細胞増殖曲線を得るために,各細胞株(HeLa,HL60,K562,DLD1,HCT116)を10ハg/crilの濃 度で蛋白を加えた培養液で培養した.生細胞の数を経時的に測定した‐アポトーシスの検討のた めに,上記と同様に培養した細胞をAnnexin V‑FITC(BECKMAN COULTER)とpropidium iodideを 用いて二重染色を行った.また,分裂期の細胞の測定のために,抗ヒストンH3(Serl0)抗体(Cell Signaling Technology)およびpropidium iodideで二重染色をした.また,細胞に含まれるDNA含 有量の測定のために,各々の細胞を培養5日目に回収しpropidium iodideで染色した.これらの 処理を加えた細胞は,FACS Calibur flow cytometer (program CELLQUEST,Bo:;ton DickinSon) を用いて測定し,Flowjo program (Digital Biology)で解析した.

5.正常線缶芽細胞株(W138)での検討

  W138に対して,癌細胞株と同様にTATリコンビナント蛋白を加えて,細胞増殖に与える影響と アポト―シスの変化を検討した.

【結果と考察】

  HeLa細胞 にお いて3種類のTATリ コンビナ ント蛋白 は速や かに細胞 内に取 り込まれ , TAT‑gemininWTお よ ぴTAT‑geminin△Dは 細 胞 内のCdtlと 会 合し た . また , 細 胞 内で TAトgeminin△DはTAT‑gemininWTに 比 べて 明 ら かに 安 定 であ る こ とが 証 明 され た .   形成されるpre‑RCを核分画に存在するするMCM7を指標として評価するとTAT‑geminin△D を加えた細胞において,核結合蛋白分画でMCM7の発現が明らかに低下しており,Cdtlの機能 阻害がpre‑RC形成阻害にっながることが確認された‐また,TAT‑geminin△Dを加えることで,

HeLa細胞のみならず他の癌細胞株(大腸癌およぴ白血病)でも著明な細胞増殖の抑制とアポト ーシスの増加が認められた.ー方で細胞分裂に対してはTAT‑geminin△Dは影響を与えず,細胞 のDNA含有量では低下が認められた.このニつの事象からはTAT‑geminin△Dによりpre―RC形 成阻害が起こりDNA複製が抑制されるものの,細胞分裂は抑制しないためにpre‑mature mito:;is が出じ,アポトーシスが誘導されると考えられた.

  一方,正常線維芽細胞株における同様の検討では,細胞増殖スピードは軽度低下するものの アポ卜ーシスの誘導は見られなかった・

【結語】

  TAトgeminin△Dは癌細胞株に選択的に細胞増殖抑制とアポト―シスを誘導した.このことより Cdtlの 機 能 阻 害 は 癌 の 分 子 標 的 治 療 へ の 応 用 を 期 待 さ せ る と 考 え ら れ た .

545 ‑

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Cdtl を分子標的とした癌細胞増殖抑制の検討

  Cdtl は 細 胞 増 殖 の 過 程 で 、 DNA 複 製 の ラ イ セ ン ス 化 制 御 に 関わ る蛋 白で 、 pre‑replication complex (pre‑RC )の構成蛋白と報告されている。近年この蛋 白 の癌 組織 での 過剰 発現 などの 報告 もあ り、 本研 究ではこの Cdtl のインヒビタ ー 蛋 白geminin を恒 常的 に細 胞内 に発 現さ せる こと で、癌 細胞 の増 殖を 抑制 し 細 胞 死の 誘導 が可 能で はない かと 考え た。 イン ヒビ ター であ るgeminin の発 現 量 は 細 胞 周 期 に お い て Cdtl と 逆 相 関 に 制 御 を 受 け て い る た め 、 geminin の APCIC に よ る 分 解 を 防 ぐ た め に 分 解 モ チ ー フ (D‑box) を 欠 損 さ せ 、 か つ 細 胞 内 ヘ 高 率 に 導 入 す る目 的 で 、 HIV 由 来 の TAT 配 列 を 融 合 さ せ た 皿 岨 'geminin

△ D を 作製 した 。こ のり コン ビナ ント 蛋白 を各 種癌 細胞株 およ びヒ ト線 維芽 細 胞 株の 培養 液に 加え て、 細胞増 殖に 与え る影 響を 生細胞数の測定、アボトーシ ス 細 胞 の 割 合 の 変 化 、 pre:RC の 形 成 に 与 える 影 響 、 DNA 量 の 変化 、細 胞分 裂 に 与え る影 響を 解析 した 。作製 した りコ ンビ ナン ト蛋白は 10 ルg/ml の濃度で培 養 液に 隔日 投与 した 。癌 細胞お よぴ ヒト 線維 芽細 胞において、リコンビナント 蛋 白 は速 やか に細 胞内 取り込 まれ 、endogenous Cdtl と会 合し た。 癌細 胞で は pre‑RC の 形 成 抑 制 、 DNA 量 の 減 少 、 ナ ポ ト ー シ ス の 増 加 が 確 認さ れた が、 ヒ ト 正常 線維 芽細 胞で はわ ずかに 増殖 抑制 が観 察さ れたが、アポトーシスは来た さ な いこ とが 示さ れた 。以上 から 、TAT‑ geminin △ D は癌 細胞 に選 択的 に細 胞 増 殖抑 制と 細胞 死を 誘導 する可 能性 が示 され た。

     口 頭 発 表 に 際 し 、 副 査 の 畠 山教 授よ りgeminin のAPC/C に よる 分解 以外 の 分 解 メ カ ニ ズ ム の 有無 、 お よ び APC 認 識 モ チ ー フKEN‑box の 検 討 が な さ れ た か 、 geminin の 神経 の発 生・ 分化 に与 える 影響 への 検討が なさ れて いる か質 問 が あっ た。 また 、マ ウス 細胞株 での 検討 が有 益で ある可能性を示唆していただ い た 。こ れに 対し て申 請者は 、 KEN‑box に 関し ては 今後の 検討 を要 する こと 、 ま た geminin の も う ー つ の 機 能 で あ る HOX 遺 伝 子 や ポ リ コ ー ム 遺 伝 子 群 の 転 写 調節 に関 わる 機能 に関 連した 細胞 周期 制御 とは 別の制御機構が存在するかど

博 俊

正 弘

香 田

浅 秋

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

うか,また今回作製したりコンビナント蛋白が神経の発生と分化,増殖に与え る影響の検討は、今後の課題であると回答した。ついで、副査の秋田教授から 本研究の次のステップは何を検討しているか、また、ヒトでの治療への応用に はどのような可能性があるか、正常細胞および癌細胞でのCdti およびgeminin の発現に差があるかどうかに関して質問があった。これに対して申請者は、癌 細胞選択的に細胞死が誘導されるメカニズムの解析、in vivo 実験を加える必要 があること、ヒトへの臨床応用のためには正常細胞への導入を防ぐためにdrug delively system に検討を加える必要があること,およぴ癌細胞においてはCdti とgeminin の発現量が増加している報告があると回答した。さらに、主査の浅 香教授より正常細胞でアポトーシスが生じない理由への考察、正常細胞に関し てWI38 以外での検討の有無、本研究の今後の展開に関して質問があった。こ れに対して申請者は、正常細胞では、細胞周期を停止するチェックポイント機 構が機能している可能性が考えられたが、今回の検討では明らかに出来なかっ たこ と、 正常細 胞は WI38 のみの検討となったが、NIH3T3 での検討では細胞 死が誘導されないことを回答した。また、今後はむwvo 実験を行うことで、

geminin の細胞増殖への影響のみならず神経系への影響の有無などの生体での 効果を詳細に検討する必要があると回答した。

   本研究は、安定型geminin を′r .AT モチーフに融合させて細胞内ヘ誘導し、癌 細胞に選択的に増殖を抑制して細胞死を誘導させることが可能であることを明 らか にし た。本 研究 を足 掛かりとして今後の更なるgeminm およびCdt1 の機 能解析と癌治療への応用が期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得

単位なども併せ、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有す

るものと判定した。

参照

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