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Academic year: 2021

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氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文の題目

論 文 審 査 委 員

佐 慧太 博 士 理 学

博甲第5542号 平成29年 3月24日

自然科学研究科 地球生命物質科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

The peptidergic control circuit for neuroendocrine dynamics in rats

(ラット神経内分泌動態におけるペプチド性制御機構に関する研究)

准教授 坂本 浩隆 教授 高橋 純夫 教授 坂本 竜哉

学位論文内容の要旨

哺乳類をはじめとした脊椎動物は環境刺激に対して,神経系と内分泌系が相互作用する神経内分泌系の はたらきにより,生体の恒常性維持や社会行動を制御している。神経内分泌系では,ニューロン細胞体で産 生されたペプチド性神経修飾物質(神経ホルモン)が開口放出され,神経ネットワークや血液を介して生理 機能に関与する。一方,神経ホルモンの翻訳後プロセッシングなどに関わる詳細な分子基盤は不明である。

さらに,シナプスといった超微形態を広範囲に可視化する手法は乏しく,神経内分泌動態の基盤となる神 経ネットワークの網羅解析は困難であった。そこで本研究では,ラットを用いて神経内分泌動態における ペプチド性制御機構の解明を目的として,(i)神経ホルモンの生体内動態を可視化するイメージングモデル の確立と,(ii)シナプスを指標としたペプチド性神経ネットワークの立体・網羅(コネクトーム)解析を試 みた。

(i)神経ホルモンの生体内動態を可視化するイメージングモデルの確立

抗利尿ホルモンとして知られるバソプレシン(AVP)は,脊椎動物に広く保存されている神経ホルモンの 一種であり,間脳視床下部AVPニューロンで産生,主に下垂体後葉から放出され,血液を介した神経内分 泌動態により作用する。本研究では,AVPの生体内動態を可視化するイメージングモデルとして,脳内AVP ニューロンにおいてAVP-緑色蛍光タンパク質(GFP)融合遺伝子を発現するAVP-GFPトランスジェニック

(AVP-GFP Tg)ラットを利用した。しかし,GFPは,AVPと比べ分子量が約30倍と巨大であり,異なる生 体内動態を示す可能性もある。この TgラットにおけるGFPの生体内動態と生理応答について解析した。

その結果,AVP-GFP Tgラットにおいて,GFPは,内因性のAVPと同様の生体内動態と生理刺激への応答

を示し,AVP-GFP Tg ラットは,神経ホルモンAVPの生体内動態を可視化する優れたイメージングモデル

であることを明らかにした。

(ii)ペプチド性神経ネットワークのコネクトーム解析

近年,げっ歯類の感覚神経系において,ガストリン放出ペプチド(GRP)が「痒み」特異的な伝達分子と して報告され,「痒み」と「痛み」の分子基盤の乖離が初めて示された。一次感覚GRPニューロン線維は脊 髄後角に投射し,痒みを脊髄へ伝えると考えられる。一方,痒み感覚伝達の脊髄内神経ネットワークは不明 なままであった。そこで,超微形態の立体解析が可能な超高圧電子顕微鏡(HVEM)法に特殊な重金属染色 法を応用し,これまで困難であった効率的なコネクトーム解析に成功した。この手法を用い,ラット脊髄後 角内におけるGRPニューロンのコネクトーム解析を試みた。その結果,シナプス結合を立体・網羅的に捉 え,脊髄後角におけるGRPニューロンが,想定よりも多くのシナプスを介した複雑な神経ネットワークを 形成することを明らかにした。

以上の結果,神経内分泌動態の基盤となる分子動態を可視化できるモデルを確立し,翻訳後プロセッシン グに関わる分子動態の一端を明らかにした。また,効率的なコネクトーム解析を駆使し,痒み感覚伝達にお けるペプチド性神経ネットワークの一端を明らかにした。これらの手法は,AVPとGRPに留まらず,他の 神経ホルモンにも応用可能である。これらの分子・神経機構が明らかになることで,生体の恒常性維持や社 会行動に関与する神経内分泌動態のペプチド性制御機構の解明が期待される。

(2)

論文審査結果の要旨

哺乳類をはじめとした脊椎動物では,ニューロン細胞体で産生されたペプチド性神経修飾物質(神経ホ ルモン)が開口放出される神経内分泌系のはたらきにより,生体の恒常性維持や社会行動を制御している。

一方,神経ホルモンの詳細な分子基盤は不明であり,神経内分泌動態の基盤となる神経ネットワークの網 羅解析も困難であった。本研究は,ラットを用いて神経内分泌動態におけるペプチド性制御機構の解明を 目的として,(i)神経ホルモンの生体内動態を可視化するイメージングモデルの確立と,(ii)シナプスを指 標としたペプチド性神経ネットワークの立体・網羅(コネクトーム)解析を試みた。

(i)神経ホルモンの生体内動態を可視化するイメージングモデルの確立

抗利尿ホルモンとして知られるバソプレシン(AVP)は,脊椎動物に広く保存されている神経ホルモンの 一種である。本研究では,AVPの生体内動態を可視化するイメージングモデルとして,脳内AVPニューロ ンにおいて AVP-緑色蛍光タンパク質(GFP)融合遺伝子を発現する AVP-GFPトランスジェニック(AVP-

GFP Tg)ラットに着目し,このTgラットにおけるGFPの生体内動態と生理応答について解析した。その

結果,AVP-GFP Tgラットにおいて,GFPは,内因性のAVPと同様の生体内動態と生理刺激への応答を示

し,AVP-GFP Tg ラットは,神経ホルモンAVPの生体内動態を可視化する優れたイメージングモデルであ ることを明らかにした。

(ii)ペプチド性神経ネットワークのコネクトーム解析

近年,げっ歯類において,ガストリン放出ペプチド(GRP)が「痒み」特異的な伝達分子として報告され た。一次感覚GRPニューロン線維は脊髄後角に投射し,痒みを脊髄へ伝えると考えられる。一方,痒み感 覚伝達の脊髄内神経ネットワークは不明であった。そこで,超微形態の立体解析が可能な超高圧電子顕微 鏡(HVEM)法に特殊な重金属染色法を応用し,これまで困難であった効率的なコネクトーム解析に成功し た。この手法を用いてシナプス結合を立体・網羅的に捉え,脊髄後角におけるGRPニューロンが,想定よ りも多くのシナプスを介した複雑な神経ネットワークを形成することを明らかにした。

これらの研究成果より,佐藤慧太氏は博士の学位授与に値すると考えられる。

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