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アポトーシスシグナル伝達の分子機構

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(1)

l■

アポトーシスシグナル伝達の分子機構

梶原隆太郎*、田遡香野*、森明日華*、乾誠治.

Themolecularmechanismoftheapoptoticsignal transductionpathways

RyutaroKajihara簿,KanoTanabe率,AsukaMori掌,Seijilnui*

KCりめoFds:apoptosis,death‑receptor,Fas,TRAIL,TNFa

I.はじめに

アポトーシスとは、多細胞生物の体を櫛成する 細胞の死に方の一種で、特徴的な形態学的・生化 学的性質をもっている。すなわち、アポトーシス は細胞膜の膨化、クロマチンの凝集、ゲノムDN Aの断片化、細胞膜上にファゴサイトーシスシグ ナル分子の発現などの特徴を有しており、血行不 良・外傷などによる細胞内外の環境の悪化によっ て起こる細胞死であるネクローシス(壊死)とは 異なっている。ネクローシスを起こした細胞は免 疫系によって異物として認識され炎症を引き起こ すのに対し、アポトーシスを起こした細胞は秩序 よく排除される。通常、多細胞生物のほとんどの 細胞はアポトーシスによって死んでおり、アポトー シスは器官・四肢の形成や造血系・免疫系などの 維持に重要な役割をもっている。したがって、ア ポトーシスの異常は、神経変性疾患や、発癌、自 己免疫疾患へとつながる。

これまでに、アポトーシスを制御する分子メカ ニズムの研究が盛んになされており、現在では多 くのアポトーシス制御タンパク、酵素が見つかっ ている。通常、アポトーシスが起きる時には細胞

内のカスパーゼとよばれる一連のプロテアーゼが 活性化され、これらの分子が細胞の自己破壊を引 き起こす。カスパーゼはプロカスパーゼと呼ばれ る不活型前駆体として存在し、切断をうけること によって活性型となる。この切断部位はカスパー ゼのC末端側のアミノ酸モチーフ、X‑X‑X‑Asp

(Xはすべてのアミノ酸)であることが知られて いる。活性型となったカスパーゼは細胞内・細胞 膜上の多様な基質を切断し、その結果、細胞を崩 壊へと導く。

哨乳類細胞のアポトーシス経路は大きく分けて 二つに分けられる。一つはデスレセプターより始 まる経路(extrinsicpathway)、もう一つはミ トコンドリアを介して起こる(intrinsicpath‐

way)である(図l)。extrinsicpathwayは細 胞表而上のデスレセプターに、デスリガンドと呼 ばれる細胞外メデイエーターが結合することによっ て開始される。一方、intrinsicpathwayは細胞 内のシグナル(放射線によるDNAダメージ、酸 化ストレス、様々な化学療法剤などによる)に反 応し、ミトコンドリアからアポトーシス関連因子

を放出させてアポトーシスを誘導する。

、熊本大学大学院保健学教育部・検在技術科学分野・病態情報解析学領域 投稿責任者(CorT巴spondingauthor):乾誠治・inui@kumamoto‑u、acjp

− 1 −

(2)

刺激

(サイトカインの欠乏,

DNA損傷,放射線など)

BH3Only蛋白

、 で 墨 。 .

D I S

デスリガンド FasL,TRAILorTNF)

蕊蕪蕊i凝議 溌蕊議蕊籍

鰯鰯 溌灘繍蕊

活性型カスパーゼー8

実行力スパーゼ

ボトー§

図 1 ア ボ ト ー シ ス 伝 達 経 路 の 概 要

Ⅱ、デスレセプターを介する経路

extrinsicpathway

ejctr加sjcpatノtuノαyは細胞表面上のデスレセプ ターに、それに特異的な細胞外デスリガンドが結 合することによってデスレセプターのコンフオメー ションが変化し、これが細胞内へとシグナルを伝 達する。これらのデスレセプターは数秒のうちに カスパーゼを活性化し、数時間のうちに細胞をア ポトーシスヘと導く。大きく3つのデスレセプター /デスリガンドメンバーが知られており、これら すべてがTumorNecrosisFactorReceptor Superfamily(TNFRSF)に属している:①Fas/

Fasligand(FasL)、②deathreceptor(DR4、

DR5)/TNF‑relatedapoptosisinducingligand (TRAIL)、③TNFα/TNFreceptor(TNF‑Rl)。

これらのレセプターはすべて細胞質内に約80アミ ノ酸からなるdeathdomain(DD)とよばれるド メインを有しており、DDを介して下流のアダプ ター分子と結合する。

TNFRSFのデスレセプターは細胞膜上に三量 体として存在している。デスレセプターによるア ポトーシス誘導は、共通の転写/翻訳非依存性経 路を介して行われる。すなわち、デスリガンドの 結合は、DISC(death‑inducingsignalingcom‐

PlGx)と呼ばれる複合体の形成を誘導し、これが 開始カスパーゼ(カスパーゼ8または10)を切断・

活性化する。引き続いて開始カスパーゼは、実行

− 2 −

(3)

活性化する。実行カスパーゼは最終的にアポトー シスのキーとなる細胞内の様々な基質を分解しア ポトーシスを実行する。

1.Fas‑FasL経路(図2)

デスレセプターのなかでFasが最もよく研究さ れている。細胞膜結合型リガンドであるFasLの Fasへの特異的な結合により、Fas三量体が会合 してくる。このことにより、Fasの細胞質内部分 にあるDDがDISCを効率よく動員できるようにな る。DISCはFas、FADD(Fas‑associateddeath domain)、プロカスパーゼ8により構成されてい

る。FADDは、TNFRSFのDDを有するメンバー のシグナル伝達に共通のアダプター分子であるlIo FADDはN末端側にDED(deatheffectordomain)

を持ち、C末端側にDDが隣り合っている(図3)。

Fas及びFADD中にみられるDDモチーフは高度 に保存されており、Fas三量体の会合によって、

両分子中のDD介した相互作用によりFADDが動 員される。また、DDを介したFasとFADDの結 合は、FADDのコンフォメーシヨンを変化させ ,EDを露出させる。このことはプロカスパーゼ 8を複合体中に動員させ、DISCを形成させる。

DISCの形成によりプロカスパーゼ8は自己切断 を受け活性化する。活性型カスパーゼ8は下流の プロカスパーゼ3,6,7を切断する。活性型カ スパーゼ3はDNA修復酵素、細胞質内・核内構 造タンパク質、エンドヌクレアーゼインヒビター などの多種多様な分子を切断する。

Fasを介したアポトーシスには、FADDやプロ カスパーゼ8以外の分子の関係も示唆されている。

RIP(receptor‑interactingprotein)、RAIDD (RIP‑associatedlCH/CED‑3‑homologouspro‐

teinwithaDD)、プロカスパーゼ2はFADD‐

カスパーゼ8経路とは異なったシグナルカスケー ドを形成している。RIP−RAIDD経路はFADD‐

カスパーゼ8経路のバックアップとしての役割が あるのかもしれない。しかし、通常は、この経路

は果たしていない。

Fasを介したアポトーシス経路は、すべてのス テップにおいて制御されている。FasL遺伝子は ほ と ん ど の 細 胞 で 転 写 が 不 活 化 さ れ て い る 。 FasLの発現調節は、CD4+T細胞のactivation‐

inducedcelldeath(AICD)などのFasL/Fasを介 した生物活性をコントロールすることになる。

Fas発現の誘導には、TCRによるPKC活性化のみ が必要なだけなのに対し、FasL発現はPKCの活 性化とCa2+動員によるNFATの活性化が必要と

なる2)。膜結合型FasLによるFasの刺激は、可溶 性decoyレセプターであるDcR3、可溶性不活性 型FasLなどによって阻害される。Fas‑DISC複合 体によるカスパーゼ8の活性化は主にFLIP (FLICE‑likeinhibitoryProtein)とよばれる阻害 分子によって制御される。FLIPはカスパーゼ8 に構造的に似たいくつかのアイソフォームとして 存在するが、酵素活性を欠いている。FLIPがデ スレセプターのDISCに介入すると、カスパーゼ 8の活性化が阻害される。また、Fasを介したア ポトーシスは、Bcl‑2ファミリータンパクやIAP (inhibitorofapoptosisproteins)などのミトコ ンドリアを介した経路によってもコントロールさ れる。

T細胞におけるFasを介した細胞死はアポトー シスによるものだけではなく、ネクローシスによっ ても起きている。Fasを介したネクローシスでは、

FADDとRIPが必要であるが、カスパーゼ8は必 要でない様である。しかしながら、ネクローシス におけるFas、FADD,RIPの分子的な相互の結 びつきは未だよくわかっていない。

− 3 −

(4)

プロカスパー

DISC

:DED(デスエフェクタードメイン)

悪 罵 雲 =

⑳ 露

i議燕雲冨 i 響 … 蕊 … … 瞳

Ⅱ知

寵 I i 認

FADD

活性化カスバーゼー8

カスバーゼー9

瀞 瀞 瀞

:TNFレセプターファミリーに特徴的な=

システイン残基(−)に富む繰り返し配乳

;DD(デスドメイン)

図2Fasを介するアボトーシスシグナル経路

− 4 − ミトコンドリア

活性化カスバーゼーヨ,7

5トー

囚←

舗電一

三 雲

憲雷

一 t 革 望

ブロカスバーゼと3,7

/ ワ

(5)

カスパーゼー8

c ‑ F L l P L

C ‑ F L I P s

*:活性中心のアミノ酸変異

v‑FLlP

FADD 面 窃 撫 逼 に よ

図3DEDをもつシグナル分子の構造

2.TRAlL‑DR経路

ヒト、マウスともにリガンドであるTRAIL に対してdeath‐inducingレセプターDR4、

DR5とdecoyレセプターDcRl、DcR2、OPG (osteoprotegerin)の5つのレセプターが存在し て い る 。 こ れ ら の レ セ プ タ ー の な か で D R 4 、 DR5のみがDDを有しておりアポトーシスを誘 導するのに対して、decoyレセプターはDDを有 していない。DcRlは膜貫通ドメインとDDの両 方を欠失しており、GPI(glycophosphatidyl inositol)によって膜にアンカーされている。DCR

2はDDが一部分欠失しており機能していない。

OPGは可溶性二量体として分泌され、RANKL と結合することもできる。これらのdecoyレセ プターはTRAILと結合することができるが、細 胞内にシグナルを伝達しない。したがって、これ らは機能的デスレセプター三量体の形成を阻害す

ることによって、TRAILを介したアポトーシス から細胞を守ることになる。DR4、DR5の下 流のDISCの形成は、Fasを介したアポトーシス のそれと同様である。すなわち、TRAILはDR 4またはDR5のクラスター化を引き起こし、

FADDとプロカスパーゼ8を動員させ,ISCを 形成させる。そして活性型カスパーゼ8は実行カ

スパーゼを次々と活性化する。

膜結合型TRAILと遺伝子工学的に作成した可 溶型TRAILはともに、多種多様な起源の腫傷細 胞に対して強力にアポトーシスを誘導する。正常 細胞はdecoyレセプターを発現しているのに対 し て 、 腫 傷 細 胞 は 発 現 し て い な い こ と か ら 、 TRAILは特異的に腫傷細胞を殺すことができる

と考えられているが、これには議論の余地がある。

また、TRAIL療法は肝障害を引き起こすとの報 告があり4.51、recombinantTRAILは肝細胞に

− 5 −

(6)

アポトーシスを誘導するということから腫傷治療 への応用には至っていない5'。

3.TNFa‑TNFR1経路(図4)

TNFαは様々な機能をもつ炎症性サイトカイ ンである。このサイトカインは157アミノ酸ペプ チドからなるホモ三量体として存在する。TNF αは2種類のレセプターを介してその機能を発揮 する。一つは、DDを有しているTNFRlであり、

もう一つは、DDを欠如しているTNFR2である。

TNFRlシグナル伝達の最初の段階では、TNF 三量体がTNFR1の細胞外ドメインに結合するこ とにより、阻害分子であるsilencerofdeathdo‐

mainがTNFRlの細胞質内ドメインから解離す る。その結果、TNFRlの細胞内ドメイン同士が 会合し、アダプター分子であるTRADD(TNF receptor‑associateddeathdomain)に認識され る。TRADDはRIP、TRAF2(TNF‑R‑associated factor2)およびFADDを動員させる。動員され たこれらの分子は、TNFR1シグナル伝達の開始 に必要な酵素群を集合させる。FADDはカスパー ゼ8をTNFRl複合体に動員し自己切断を起こさ せ 、 カ ス パ ー ゼ カ ス ケ ー ド を 開 始 さ せ ア ポ ト ー シ スを誘螺する。TRAF2はcellularinhibitorof apoptosisprotein‑1(clAP‑l)とclAP‑2を動 員させる。TRAF2はまた、extracellularsig‐

nal‑regulatedkinasekmasekinase(MEKKl)

やASKlなどのMAPKKKを活性化させ、キナー ゼカスケードにより最終的にJNKを活性化させ ると考えられている。プロテインキナーゼRIP は転写因子NF‑妬Bの活性化に重要である。

TNFRlを介したアポトーシスでは、2つの連 続したシグナル伝達複合体がかかわっている。

まず始めに、TNFのTNFRlの結合により、

TRADD、RIP1,TRAF2を動員させ、plasma membraneboundcomplex(複合体I;TNFRl、

TRADD、RIPl、TRAF2)が形成される。複合 体Iは迅速にNF‑花Bを活性化させる。複合体I 形成後、TRADDとRIPlは修飾を受けTNFRl

から解離し、TRADD(またはRIPl)はFADD と結合、これにさらにカスパーゼ8/10が動員し cytoplasmiccomplex(複合体Ⅱ;TRADD、RIP1,

FADD、カスパーゼ8/10)を形成する。これに よって最終的にアポトーシスが引き起こされる。

複合体Ⅱが形成されるか否かは抗アポトーシス分 子FLIPの量によって規定される。複合体Iによっ てNF‑にBが十分に活性化されていると、それに よってFLIP発現レベルが高くなり、FLIPが複合 体Ⅱの形成を阻害しアポトーシスを抑制する。逆 に複合体IによるNF‑総Bの活性化が不十分であ ると、複合体Ⅱはアポトーシスを引き起こす61.

TNFαの最終的な生物学的結果は、NF‑だBと JNK経路のバランスによって決定する。NF‑臆B は細胞の生存を促進するのに対し、JNKは細胞 死を増強する。TNFαによるJNKの活性化は、

NF‑随Bによって誘導される抗アポトーシスタン パクc‑FLIPのターンオーバーを加速させる。

JNKはE3ユビキチンリガーゼItchをリン酸化・

活性化し、Itchはc‑FLIPを特異的にユビキチン 化し、プロテアソームによる分解を引き起こす。

JNKl、Itch欠失マウスまたはJNK阻害剤で処理 したマウスは、TNFαによる急性肝不全に対し て耐性となることが知られており、これらのマウ スから採取した細胞ではc‑FLIPのユビキチン化 および分解は見られない7'・

アポトーシスの誘導という機能は、生理学的に TNFαの主要な役割ではない。TNFαはNF‑jvB やc‑Junなどの転写因子の活性化を介して炎症 反応や免疫制御を行う。TNFαの過剰産生や TNFR経路の持続的な活性化は、多発性硬化症、

関節リウマチなどの自己免疫疾患の病態形成に深 く関与している81.現在、抗TNFα療法は、これ らの自己免疫疾患に対して有効な方法として利用 されている。

− 6 −

(7)

c ‑ F L l

TNF‑α

篇I諒嘉 : 寵 ;

唾:ゆ噸翰

c ‑ 」 u 、

サイトカイン産生IARBcl‑xL,BcI‑2 細胞増殖・分化 ↓

生存

図4TNFα・TNFR1経路

− 7 −

(8)

Ⅲ、ミトコンドリアを介する経路

(intrinsicpathway)(図l)

哨 乳 類 細 胞 に お い て 、 ミ ト コ ン ド リ ア を 介 す る ア ポ ト ー シ ス 経 路 は 最 終 的 に M O M P (mitochondrialoutermembranepermeabiliza‐

tion)と呼ばれるミトコンドリア膜透過性変化に 集約してくる。MOMPによってミトコンドリア 膜間腔から放出された分子はカスパーゼカスケー ドを活 性化させ、不可逆的にアポトーシスヘと導 く 。

MOMPは通常、Bcl‑2ファミリータンパクの うちのアポトーシス抑制タンパクによって起こら ないように阻止されている。Bcl‑2ファミリーに 属しているタンパクは最大で4つのBcl‑2ho‐

mologydomain(BHlからBH4)を共有して いる。Bcl‑2ファミリーは、アポトーシスにおけ るその役割と共有しているBHの種類から主に3 つのサブファミリーに細分される。アポトーシス 抑制タンパクであるBcl‑2、Bcl‑xl、Bcl‑w,Bcl‐

B9I、Al、Mcl‑lは共通して3〜4つのBHを有 しており、Bcl‑2サブファミリーと呼ばれる。ア ポトーシス促進タンパクのうちの片方のメンバー であるBaX,Bak、Bcl−Xs、Bok、Bcl‑Gl101 はBaXサブファミリーと呼ばれ2〜3つのBHを 有している。アポトーシス促進タンパクのもう片 方のメンバーはBH3−onlyタンパクと呼ばれ、

Bad、Bid、Bim、Bik、Noxal1'、Pumal2'、

Bcl‑GsIoI、Blk、Bmfl3)、Hrkなどが属し、BH 3のみを共通に有している。これら3つのグルー プのうち、BH3−onlyタンパクはBcl‑2サプファ ミリーやBaXサブファミリーの上流に位置し、こ れらの分子と直接結合することによって、その機 能をそれぞれネガティブ、ポジティブに調節して いる。すなわち、上流のアポトーシスシグナルを ミトコンドリアに伝えるシグナル伝達分子として 機能している。たとえば、サイトカインの枯渇な どによってBH3−onlyタンパクが活性化すると、

BH3‑onlyタンパクはBaXやBakと結合しそれら

を活性化させ、Bcl‑2と結合しそれを不活化させ る。

MOMPが起こると、膜間腔のタンパクはサイ トゾル内に放出される。このタンパクの一つであ るシトクロムcはサイトゾル内に存在する単量体 Apaf‑l(apoptoticproteaseactivatingfactor‐

l)に結合する。このシトクロムcの結合により、

Apaf‑lはコンフォメーションが変化し、Apaf‐

lのオリゴマー形成を促進する。これは、intrin‐

sicpathwayの開始カスパーゼであるプロカスパー ゼ9を動員・オリゴマー化させ、活性型カスパー ゼ9に変換する。このシトクロムc、Apaf‑l,

カ ス パ ー ゼ 9 の 複 合 体 は ア ポ ト ソ ー ム (apoptosome)と呼ばれている。続いてカスパー ゼ9はカスパーゼ3/7などの実行カスパーゼを 切断し活性化させる。

MOMP下流のアポトーシスシグナルの過程は、

ア ポ ト ソ ー ム お よ び そ の 下 流 の カ ス パ ー ゼ の レ ベ ルで制御されている。カスパーゼの活性は、IAP (inhibitorofapoptosis)ファミリーの分子がカ スパーゼに結合することによって調節される。た とえば、ヒトX‑linkedlAP(XIAP)は少なくと もカスパーゼ3と7に直接結合する。XIAPや survivinなどのこのような生存タンパクは、多 くの腫傷細胞で過剰発現していることが知られて いる。加えて、これらのカスパーゼインヒビター は、アポトーシス促進タンパクであるSMAC/

DIABLO(secondmitochondrial‑derivedacti‐

vatorofcaspase/directlAP‑bindingprotein withlowpl)によって桔抗されているM・l5lo SMAC/DIABLOは活性型カスパーゼ3から XIAPの結合をはずし、アポトーシスを促進する。

このように、カスパーゼの活性化および機能は、

多種にわたる結合タンパクによって調節されてい

る 。

その他のミトコンドリアタンパクでアポトーシ

ス制御因子作用をもつ分子にはAIF(apoptosis inducingfactor)がある。AIFはbacterial oxidoreductaseにホモロジーがあり、通常はミ

− 8 −

(9)

時には細胞質に移行してくる。AIFによるアポトー シスはカスパーゼ阻害剤では阻止することができ ず、その他のアポトーシス促進因子に非依存的に 核の濃縮・断片化を引き起こす。興味深いことに、

AIFのレドックス活性領域はアポトーシス抑制作 用があり、細胞の生存と死の両方に関係する。カ スパーゼ非依存アポトーシスの詳しいメカニズム はよくわかっていない。

便宜上、intrinsicpathwayとextrinsicpath‐

wayに大別したが、実際はこれらの経路は互い にクロストークしている。細胞の種類、刺激、そ の他の環境要因によって、異なった経路が異なっ た役割を果たしている。たとえば、細胞内に、実 行カスパーゼを直接切断・活性化できないくらい の量しかカスパーゼ8が存在しない場合、カスパー ゼ8によってBH3−onlyタンパクであるBidの切 断が起こり、この経路が主となる(図l)。Bid の切断によりt‑Bidが生成され、これがミトコン ドリアからシトクロムcを放出させカスパーゼ9 を活性化する。さらに、カスパーゼ9はカスパー ゼ 8 を 切 断 し 、 ポ ジ テ ィ ブ フ ィ ー ド バ ッ ク ル ー プ を 形 成 す る こ と に よ っ て 、 も と も と の カ ス パ ー ゼ 8からのシグナルを増強する。

Ⅳ、その他のアポトーシス経路

セリンプロテアーゼの一種グランザイムは、カ スパーゼとは異なった経路で細胞死を引き起こす。

T細胞とNK細胞は、ウイルス感染細胞の除去に、

穎粒‑エキソサイトーシス経路を利用している。

この細胞障害性穎粒によって標的細胞にパーフオ リンとグランザイムを伝達する。アポトーシスシ グナル伝達過程は、各々のグランザイムの種類に よって若干異なっている。グランザイムBはカス パーゼ依存・非依存メカニズムによってアポトー シスを誘導する。グランザイムBはカスパーゼ3,

カスパーゼ8を切断する他に、Bi。などの他の 基質や、ICAD(inhibitorofcaspase‑activated

レアーゼを活性化させる。グランザイムAは、片 方 の D N A 鎖 に ニ ッ ク を 入 れ る こ と に よ っ て 、 カ スパーゼ非依存的メカニズムによってアポトーシ スを誘導する。グランザイムAはSET複合体 (270〜420kDaの小胞体結合複合体)のいくつか の コ ン ポ ー ネ ン ト を 分 解 す る こ と に よ っ て 、 N M 23‑HlDNaseを遊離させ、片方のDNA鎖にニッ

クを入れる'61.

シ ス テ イ ン プ ロ テ ア ー ゼ の 一 種 カ ル パ イ ン (calcium‑activatedneutralprotease)は、もう 一つのアポトーシス経路を形成している。''1W乳類 の カ ル パ イ ン は 、 ユ ビ キ タ ス に 発 現 し て い る C A PNl、CAPN2,2種類の胃特異的カルパイン、

筋特異的なCAPN3が存在している。カルパイン は カ ス パ ー ゼ と 基 質 の い く つ か を 共 通 に し て い る'7)。最近になって、カルパインとカスパーゼは 互 い に ク ロ ス ト ー ク し て い る こ と が 示 さ れ て い る凪'9)。プロテアーゼを介したアポトーシスのさ らなる解明は、カスパーゼ非依存アポトーシスの メカニズムを解き明かすことになるであろう。

V ・ お わ り に

劇症肝炎、エイズ、神経組織や筋組織の変 性'性 疾患など細胞死が病態形成や病因に本質的に関わっ ている疾患は数多い。逆に自己免疫疾患や癌の様 に起きるべき細胞死が起きないために引き起こさ れる病気もある。この様な疾患に対しアポトーシ スをコントロールすることにより治療する試みが 行われている。

文 献

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− 9 −

(10)

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−10−

参照

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