原 著
遺伝性骨軟骨異常マウス
(twymouse)における 頭頚移行部の圧迫性脊髄病変 と頚椎の靭帯骨化の
病理組織学的及び免疫組織化学的検討
増 谷 守 彦1 ) 原 田 征 行
2'抄録 自然発 生的 に脊髄圧迫病変 を生ず る
twyマウスの延髄下部 と上位頚髄部 の経時的な病理組織学的変化 と,脊柱靭帯骨 化発現 に関与す る
TGF‑βと
decorinの局在及 び骨化発現 との関連 につ いて明 らか にす るため免疫組織学的検討 を行 った.上 位頚椎部,延髄部では椎間板 と椎体 に連続 し後方へ突 出 した骨化病変 と後方か らの突 出性病変 によ り圧迫 された部位 に一致 し て 白質の変化 が明瞭 に認め られた.圧迫が特 に顕著な部位では灰 白質 にも細胞 の萎縮 と軽度 の脱落 を認めた. び 慢性 の変化は 白質,灰 白質 を問わず,延髄,脊髄全体 に認め られた.抗
TGF‑β抗体染色では初期 に染色性 の高 い軟骨細胞が増加 していた.
抗
decorin抗体染色では骨髄腔面,線維軟骨,靭帯部分が陽性 に染色 され 特 に変性 して突 出 した部位 では明瞭な陽性像 を 示 した. したがって
twyマウスでは椎間板線維輪最外側部 を中心 に骨化過程が進行す る ことが示唆 された.
弘前医学
57:1‑8,2005キーワー ド
:twyマウス;頭頚移行部;靭帯骨化;TGF‑ β;デコ リン.
ORI GI NALARTI CLE
HISTOPATHOLOGICAL STUDY OF THE COMPRESSIVE CERVICAL m I.OPATHY AND IMMUNOHISTOCHEMICAL STUDY OF
THE OSSIFICATION OF THE LIGAMENT
AT THE CRANIO・CERVICALJUNCTION OF TWY MOUSE
MorihikoMasuya and SeikoHarata2)
い
Abstract Thetiptoewalking‑Yoshimura(twy)mouseisamutantstrainshowingmultipleosteochondrallesions includingdeformityofthevertebralcolumnandcervicalmyelopathy.Thepurposeofthisstudywastoclarify boththehistopathologicalalterationsoccurringinthelowermedullaoblongataandhighercervicalcord,andthe involvementofTGF‑βanddecorininpathologicalossification,ofthetwymouse.Alterationofsubstantiaalba wasfoundinlocicompressedbyossificationlesionsinthehighercervicalcordandmedullaoblongata.Cellular atrophyandslightdefluvium ingraymatterwerepresentinthelociwithremarkablecompression.Diffuse changeswereobservedinthemedullaoblongataandthewholecervicalcord.Therefore,weconsiderthetwy mousetobeausefulexperimentalmodelforcervicalmyelopathyincludingacranio‑cervicaljunction.Itwas suggestedthatossificationoftheposteriorlongitudinalligamentprogressedaroundtheposteriorcornerofthe vertebralbodyandanulusfibrosusofthelateralintervertebraldisc,becausethesewerestainedbyantiTGF‑β antibodyandanti‑decorinantibody.
HirosakiMed
,∫
. 57:1‑8,2005 Keywords:twymouse;cranio‑cervicaljunction;ossification;TGF‑ β;
decorin.1)DepartmentofOrthopaedicSurgery,Hirosaki 1)
弘 前大学 医学部 整形外科
UniversitySchoolofMedicine2)AomoriPrefecturalCentralHospital Correspondence:M.Masuya
Receivedforpublication,August5,2004 Acceptedforpublication,March8,2005
2
)青森県 立 中央病 院
別刷 請求 先 :増谷守 彦
平成
16年
8月
5日受付
平 成 17年 3月 8日受理
い る可 能 性 が 考 え られ る
1'.Decorinは
TGF‑β と結 合 し
TGF‑βの活 性 を調 節す る作用 を持 ち,
negativefeedbackfactorである と考 え られて い る
2) .後縦靭帯骨化発現 に際 して
TGF‑βの作用が 関与 して いる ことが推測 されて いるが, 同部で の
decorinの存在 の有 無 に関 して は明 らか にされ て いな い.
1978
年, 実 験 動 物 中央 研 究 所 にお い て
ICR (InstituteofCancerResearch)系 マ ウス か ら近 交 系 を作 出す る 目的で交配 中に,体 型が小 さ く, 脊柱 の琴曲を示 し,前 ・ 後肢 の末梢 関節が拘縮 し, つ ま先立 ち歩行 を示す個体 が発見 され た. この形 質 は常染色体性劣性遺伝子 によって支配 され, こ の 遺 伝 子 を
TiptoeWalking‑Yoshimuraと命 名 し,
twyマ ウス
3'と呼 ばれ て い る.
Twyマ ウス は骨膜や靭帯 の骨形成 のため脊柱管 の狭窄性病変 を
100%自然発症 し,特 にそ の狭窄 は大後頭孔 を 含 む 上位 頚 椎 部 に著 明で あ る. した が って
twyマ ウスは頭頚移行 部 の神経細胞 の変化 を追跡 し, 骨化発現 と骨化 によって圧 迫 され た神経細胞 に関 して検討す るのに適 している と考 え られ る.
本 実験 で は骨 軟 骨 異常 を も
つ twyマ ウス の頭 頚移行部 の病変 を病理組織学的 に経時的 に観察す る と共 にそ の脊 椎 にお け る
TGF‑βと
decorinの 局在 及 び骨化進展 との関連 につ いて明 らか にす る ため免疫組織化学的検討 を行 った.
実験材料及 び方法
1.実験動物
1)Twy
マ ウス
20匹 を用 いた. これ らは慶 応 大 学 医学 部病 理 学教 室 か ら譲 り受 けた
twyマ ウス
14匹 と 日本 ク レア株 式会社 よ り購入 した
twyマ ウス
6匹 を弘前大学医学部 附属動物実験 施設 にて飼育 した.
2)
対 照群 として
ICR系マ ウス
15匹 を用 いた.
前述 の標本 を切 出 し
,10%中性緩衝ホルマ リ ンにて
48時間固定 した.
PlankRychlo液 にて
24時間脱灰後,パ ラフィン包埋 した.延髄部, 上位頚椎 部 につ いて薄切 を行 い,それぞれ横 断 面及び矢状面の 7
tlmの連続標本 を作製 した.
脊 椎, 脊 髄, 及 び延 髄 の病 理 組 織 学 的変 化 を観察す る 目的で, これ らの各パ ラフィン切片 に対 して
hematoxylin‑eosin(HE)染色 を行 っ た.
2)
脊柱 の靭帯肥厚及び骨化過程 の初期変化 を検 討す る 目的で,
5週 令 と
11週令 のパ ラフィ ン 切片 に対 して以下の染色 を行 った.
( 1)抗
decorin抗体染色
(2)
抗
transforminggrowthfactor‑β1 (TGF‑β1 ) 抗体染色
抗
decorin抗 体 染 色 で は 一 次 抗 体 と し て
Chemiconlnternational社 製 の
rabitanti‑ humandecorin(PG40)polyclonalantiserum, 標 識 二 次 抗 体 と して
ZymedLaboratories社 製 の
peroxidase‑goatanti‑rabbitlgG (H+L)を 使 用 した. 抗
TGF‑β1抗 体 染 色 で は脱 パ ラ フ ィ ン後
Peltonら
4'の 方 法 に準 じて 行 い, 前 処 置 と し て 生 化 学 工 業 社 製 の
hyaluronidase(Str .
hyalurolyticus)にて室温 で
12時間の酵素処置 を 行 った.一次抗体 は
BectonDickinsonLabware社製 の
anti‑humanTGF‑β1IgG,turkey,標識 二次抗体 は
NordiclmmunologicalLaboratories社製の
peroxidase‑goatAnti‑turkeyIgG (H+L)を使用 した.
Chroma社 の メチル グ リー ンにて後 染色 を行 った.
結 果
1.Twy
マ ウスの運動の変化
経時的 に
twyマウスの生態 を観察 したが,
5週
令では対 照群 と比べて 目立 った変化 は認 めなか っ
串 :環軸膜
×40
図
1 5週令 t w
y マウス.
(a)
延髄上位脊髄標本
(HE染色)×40.小空胞変性 の出現
を認 め る.
( b) 環軸膜標 本
(HE染色)×200.多 くの線維 軟骨細胞 が認 め られ る.
×200×400
図
2 5週令 t wy マウス
.
(a)
延髄横断標本
(HE染色) ×40 ,
( b) 延髄標本
(HE染色)×400.神 経細胞 は軽度萎縮性 変化 を示 し, 小空胞 と軽
度 グ リアの増 生 を認 め る.
た.
11週 令 で は生
育不 良が 目立 ち,脊 椎 はやや 後考 し, 四肢関節は
拘縮 してきたがつ ま先立 ち歩 行は していなかった
2.Twy
マウスの頭頚移行部脊椎脊髄病理 .
1)5矢状断 を観察す る と最 週令 組織変化
も著 明な変化 は歯突起先 端か ら背側 にかけて肥厚
した環椎横靭帯 と蓋膜が 一体 とな り不規則 に肥厚
,骨化 し,後頭環軸関節 部で脊柱管 内へ突 出 して い
た. また環軸 関節部 も 骨膜が肥厚す る形で脊髄 を
後方か ら圧迫 し,圧迫 された延髄下部 と頚髄上部
は狭窄 されて いた.上 位頚椎では椎間板外側部
及び椎体終板部での変化 は
5週令 で既 に出現 して
お り
,HE染色 で染色性 の低下 を示 し,軟骨細
胞,軟骨基質 の消失 した部 位 を中心 に層板状構造
をもつ変性像や無構造 の変 性像 が認 め られ た. こ
れ は椎体 の石 灰 化 前線 に
よって境界 を有 して いた. また軟骨小宿 の縮小 を 認 めた ( 図 1). 脊
3髄 全体 に渡 りび慢性 に小空胞 が 出現 し,特 に延髄
では辺縁部, オ リー ブ核,皮 質脊髄路, 内側毛帯
,及び外側脊髄視床路 の軸索 の腫脹が出現 し,脱
髄 を認 め,そ の近位で グ リア が軽度増生 して いた
.横断面では延髄下部 は圧迫 のためやや扇平化 し
,オ リー ブ核 な どの神経細胞 は軽度萎縮性変化 を
示 し,小空胞 と軽度 のグ リア の増生 を認 めた.脊髄
小脳路,三叉神経脊髄路 に も同様 の変化が認め ら
れた.延髄 の上部,下部 に うっ血 を生 じ,毛細血管
が拡張 し,軽度 のグ リア の増生 を認 めた. 中心側 に
存在す る脊髄視床路 も 同様 で あ ったが, わず か な
変化 で あった.C2高
位では前後か ら圧迫 され,
串:環軸膜
×40 ×20 0図
3 11週令 t wy マウス.
(a)
延髄上位脊髄標本
(HE染色)×40.著明な脊髄の圧迫 とそれ
に伴 う神経線維の希薄化が認め られ る.
( b) 環軸膜標本
(HE染色)×200.線維軟骨細胞 と骨細胞及び骨芽細胞 の混在 を認め
×40
る.
×400図4
5週令 t wy
マウス.
(a)
延髄横断標本
(HE染色)×
40.
( b) 延髄標本
(HE染色)×400.神経細胞は軽度萎縮性変化 を示 し,小空胞 と軽
度 グリアの増生 を認める.
髄路,脊髄視床路で小
空胞 が存在 し, 白質 の髄鞘 の腫脹 と崩壊が 目立ち
, グ リアの増生が よ り高度 に認め られた.後索で
は グ リアの増生はわずかで あった (
2)11週 図
2).令
矢状 断 を観察す る と
5週令 に比べ
11週令では 環 椎
が歯 突起 と癒 合 し, 骨髄 腔 の狭 小化 を認 め た.後
方か ら環軸椎 間の後環軸膜が肥厚骨化 し, .
あたか
抗TGF‑β抗体陽性 抗decorin抗体陽性
図
5 5週令 t wy マウス.
( a) 延髄 上位 脊髄標 本
(HE染色) ×
40.小空胞変性 の出現 を認める.
( b) 環 軸膜標 本
(HE染色)×200.多 くの線維軟骨細胞が認
め られ る.
抗TGF‑β抗体陰性 抗decor
in抗体陰性
図
6 5(a週令 t wy マウス.
)
延髄横 断標本
(HE染色) ×40.
( b) 延髄標本
(HE染色) ×400.神経細胞は軽度萎縮性変化 を示 し,小空胞 と軽度 グ リアの増生を認め
マ ウスで軟 骨基 質 と軟 骨細 胞 が 陽性 に染 色 さ る.
れ た.一
万 5週令 の t wyマウスでは隅角部の後
縦靭 帯 と軟骨細胞 が陽性であった.抗
decorin抗
体 染 色 は椎体隅角部 の後縦靭帯
部で陽性であった ( 図
5).11週 令 で の t wyマ ウス の椎 間板 線維 輪 最 外側部 の脊柱管 内への突 出部 に一致 して石灰化軟
骨細胞が出現 し線維軟骨層の基質が増加 して いた が,この部位では抗 TGF‑ β抗体染色は陰性であっ た.椎間板辺縁 の線維軟骨の増生の認め られ る部
位 と後縦靭帯 の線維芽細胞様細胞 と線維性結合組 織
及び この近位部 の椎体骨基質 は抗
decorin抗体 染色陽
性であった ( 考 図
6).察
本実験 で使用 した t wyマ ウス は遺伝 性 骨軟 骨 異常マウスで あ り,脊柱,四肢 関節な ど全身性
に
石灰化,骨化 を生 じる ことが認 め られて いる
3'.小島原
5 5)によれば椎 間板線維輪 を主体 とした脊柱 管 内へ
の突 出性病変 は週令が進む につれてそ の程 度 は徐
々 に増大 し,
12週令 にお いて は脊柱管 の 面積 の
18.6%,34週令 においては
24.9%を占め
, 著 明に脊髄 を圧迫 し変形 させ る.今 回 この脊柱
管 内へ の突 出性病変 による神経細胞への影響 を こ
れ まで注 目されて いなか った大後頭孔周辺 の変化
か
らそ の骨性変化 に伴 う延髄部病変 の病理組織学的
消失,壊死,空洞 化 を伴 う灰 白質 の変性 を認 め,
watershedareaの微 少循環 の障害 によ る ことを 報告 して いる.
福 田
8)はイ ヌ を用 いた 頚 髄 の虚 血 性 ミエ ロパ チ‑ の研 究で, ミエ ロパチ‑ の原 因 として前脊髄 動脈
pialplexus後 脊髄 動脈 を含 めた脊髄 表面 の 血管 の閉塞 の重要性 を示 して いる. また 申
9)は脊 髄 に生 じる うっ血 の結果,後索深部 をヰ 心 とした 白質 に脱髄 が生 じ, 内椎骨静脈叢 と前脊髄静脈 を 経 由す る上行経路 の重要性 を説 いて いる.藤野 1 0 ' は家兎 の頚髄腹側圧 迫実験 に
microangiographyを行 い,慢性 的な頚髄圧 迫で は圧 迫部 を中心 とし た上下 2‑ 3髄 節 にお よぶ,灰 白質,前,後 角部 の神経細胞 の消失,壊死巣,空洞 形成,前索部, 側索部 の脱髄性変化,後索部 の空胞状変化 が認 め られ,髄 内,微細動脈 系 の虚 血性循環 障害 を指摘 して いる.
twy
マ ウスの縦 断標本 を観察す る と,そ の脊髄 圧迫 は後頭環軸 関節 と各椎 間板 レベルで強 い. こ れ は肥厚靭帯 の骨化 と椎 間板 自体 の膨隆 による後 方へ の突 出が合併 して いるためで ある と考 え られ る.
上位頚椎部,延髄部では椎 間板 と椎体 に連続 し 脊柱管 内 に突 出 した後縦靭帯骨化病変 と環椎横靭 帯,蓋膜 の骨化病変 によ り前方 か ら圧迫 され, ま た後環椎後頭膜,後環軸膜 な どの後方要素 の骨化 によ り後方か ら圧 迫 され,圧 迫 され た部位 に一致 して辺縁部 に存在す る前皮質脊髄路,外側皮質脊 髄路,外側脊髄視 床路 な どの 白質 の変化 が明瞭 に 認 め られ た.圧迫 が特 に顕著 な部位 では前角細胞 な ど灰 白質 にも変化 が認 め られ たが,神経細胞 の 著 明な萎縮 は縮窄 が進行 してか ら出現 して いた.
しか し神経細胞 の萎縮 は 目立 つが脱落 は ごく軽度 であった.び 慢性 の変化 は 白質,灰 白質 を問わず, 延髄,脊髄全体 に認 め られ圧迫 の程度 に左右 され
の週令 にお いて も認 め られず, また血管腔 の狭窄 や血栓 も認 めなか った.
Itoら
11)は脊髄 へ の圧 迫 が微 小循環や血液脳 関門が破綻 を引き起 こし,虚 血 を生 じる と報告 して いるが,圧迫 による局所 の 浮腫や壊死 な どの循環 障害 を思わせ る変化 は認め られ なか った. しか し,圧迫部位 の上下 にはび慢 性 に うっ血性 の変化 が 明 らか に認 め られ た.脊髄 横 断面で周辺部が侵 されやす く, 白質 に病変が強 い こと,髄鞘 の崩壊 が神経細胞 の変性 よ り目立つ ことな ど長嶋
12 )によって報告 された硬膜外静脈 の 循環 障害 の特徴 を認 めた. また直接圧 迫 を受 けて いない延髄 上部 に生 じて いた脱髄 は圧 迫 による変 化 だけで は考 え に くく,圧迫が高度 にな り長時間 経過す る と脊髄血管 の解 剖 と血行動態 1 3 ) か ら推察 すれ ば,脊髄静脈 な どの静脈還流障害 によるうっ 血 のた め虚血 も生 じて いる と考 え られ る. また狭 窄が進行 した段 階では,灰 白質 の圧迫 によ り特 に 前角が著 明な扇平化 を示 し,神経細胞 の脱落 とグ リオ‑ シス を認 めた とい う橋詰 1 4 'の報告 した後縦 靭帯骨化症 の病理組織 と類似 して いた.今 回認 め られた脊髄 の病理変化 は小野 と藤原
15)の報告 した 頚椎症性 脊髄症 の病理変化 に類似 してお り,頚椎 症性脊髄症 の病理学的変化 を考察す る上で も
twyマウスは有用な動物で ある と考 え られ る.
後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症 な どの脊柱靭 帯骨化症 の成 因はいまだ不 明で あるが,本来骨形 成能 を持 たない靭帯組織 が骨組織 に置換 され る と い う病態 か ら,そ の成 因 に
TGF‑βや
BMPが関与 している可能性が考 え られ る
1,16'骨組織 には様 々なサ イ トカイ ンや成長 因子 の局
在が知 られて いる.
TGF‑βは
TGF‑β1‑ TGF‑β
5まで
5種類 の型が知 られ, この うち
TGF‑β1は,
Seyedinら
17)によ り骨 基 質 中 の軟 骨 誘 導 因
子 として 同定 された成長 因子で,骨化靭帯 の骨基
質及 び骨化巣周 囲の軟骨細胞質 に存在す る ことが
明 らか にされて いる.骨基 質 中の
TGF‑βは分子 量
12,500の二量体 に40,000の プ ロペ プチ ド二量体 が結合 し, これ に
135,000のTGF‑β結合 タ ンパ ク質が更 に結合 した不活性型 として骨芽細胞 よ り産 生 され る 1 8 )
.TGF‑βは元 来 は正 常 の線 維 芽細胞 に作用 して軟寒天培地での増殖 を促進す る 因子 として兄 いだ された. また細胞外マ トリック ス の産生を調節 し,線維芽細胞 な どに作用 して コ ラーゲ ンや フィブロネ クチ ンな どの産生 を促進す る 1 8 ) . これ までの実験で
invitroで間葉系細胞 を軟 骨細胞 に分化 させ
17),invivoにお いて骨膜下骨形 成 を促進 させ る
19・20)ことか ら,骨改変や骨折治癒 過程で骨形成 に重要な役割 を果た して いる と考 え
られている.
細 胞 外 マ トリ ックス に存在 す る
decorinは分子 サ イ ズ が
45,000の コア タ ンパ ク質 に1本 の グ リコサ ミ ノグ リカ ン糖鎖 が結合 した低 分子 デ ル マ タ ン硫酸 プロテオ グ リカ ンで ある.chi
nese hamsterの卵細胞 に高濃度 に
decorinが存在 し,形態 や成長 に大 き く影 響す る こ とが知 られ て い る.Decor
inはTGF‑βへ の結合能が あ り,TGF‑
βは多 くの細胞 中に認 め られ る
decorinの合成 を誘導す るので,decor
inは細胞 の成長 を制御す る feedbacksystemの一つである ことが考 え られて い る.Decor
inはTGF‑βと結合 してそ の細 胞 増 殖促 進作用 を阻害す る ことか ら
TGF‑βの活性 の
negative‑feedback因子 で あ る といえ る2' . ヒ ト の骨化後縦 靭帯組織 で の
TGF‑βに関 して,川 口 ら 2 1 )は
TGF‑β1は骨基質及 び骨化 部周 囲の軟骨 細胞質 には存在 していたが周 囲の間葉系細胞 には 分布せず,異所性骨化 のよ り進んだ段 階で,軟骨 細胞や骨芽細胞 に作用 して骨形成 を促進 して いる と報告 して いる.宮 本 ら
22)はTGF‑β1は骨化靭帯 内の一部 の線維芽細胞様細胞,非石灰化軟骨層 の線維軟骨細胞 に局在 し,脊柱靭帯 の軟骨化及び 骨化 に関与 している と報告 して いる. また軟骨細 胞 は増殖期か ら成熟期 を経て石灰化軟骨細胞へ と 分化す ることが知 られている.
今 回の実験では骨化前駆状態 と考 え られ る
twyマウスの脊椎病変 に着 目し
,TGF‑βと
decorinの局在か ら骨化 の進行 について免疫組織化学的 に検 討 した.
今 回検 討 した
twyマ ウス の脊椎 で は脊柱管 内へ の突 出部 に一致 して石灰化 ( 肥大)軟骨細胞が 出現 し,石灰化軟骨層が増生 して いたが, この部 位 で は抗
TGF‑β1抗体 陰性 で あった. 一方 同部 位 と靭帯 内の線維芽細胞様細胞 が抗
decorin抗体陽性であった ことよ りt
wyマウスでは椎体隅角部か ら椎 間板線維輪外側 の脊柱管 内突 出部 を中心 に 後縦靭帯骨化過程が進行す る とい うことが示唆 さ れ,TGF‑
β1とdecorinの発現 を検討す る ことは骨化機序 の解 明に意義 のある ことと考 え られた.
結
語1.Twyマ ウス の頭頚移行部 の骨性変化 に伴 う
延髄下部,上位頚髄部 を経時的 に免疫学的手法
を用 いて病理組織学的 に検討 した.
2.
歯突起先端か ら背側 の蓋膜,環椎横靭帯 の骨 化,椎 間板外側部及 び椎体終板部での変化 は
5週令で既 に出現 し,軟骨細胞,軟骨基質 の消失
した部位 に変性像が観察 され,週令が進む につ れて拡 大 し,11 週令 で は 同部位 を中心 と した 骨梁の肥厚 と骨形成 を認めた.
3.
脊柱管 内突 出病変 による慢性的な圧迫 によっ て,脊髄周辺部が侵 されやす く,灰 白質 よ りも 白質 に病変が強 い こと,髄鞘 の崩壊が神経細胞 の変性 よ り顕著である ことか ら,t
wyマウスは頭頚移行部 も含 めた頚髄症性脊髄症 の実験 モデ ル として有用であると考 え られた.
4.Twyマ ウス の軟骨細胞 は早期 よ り分化 し,
石灰化軟骨細胞 とな り,椎体 隅角部 と椎 間板線 維輪最外側部 の脊柱管 内突 出病変 を中心 に骨化 過程が進行す る ことが示唆 された.
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