• 検索結果がありません。

女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について"

Copied!
29
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 1

は じ め に

 近年,経済の活性化を図るには,起業家の輩出が重要だと考えられるよう になってきた。グローバル・アントレプレナーシップ・モニター

(Global En- treprneurship Monitor)

の調査

(注22)参照)

によると,起業家の輩出,特に女 性起業家は経済活性化と大きく関係している。

 我が国においては,女性の社会参加や地域貢献の手段として女性起業が注目 された1980年代から,1990年代になり,徐々に経済活動を担う経営者としての

論  文

女性起業家及び管理職創出に 必要とされる支援について

   日米支援機関調査から   

 

大   石   友   子

 要約:昨今,わが国において,女性起業家や管理職の創出の必要性が認識さ れつつあるが,依然としてその数は10%前後と男性に比較すると少ない。その 理由として,女性の置かれた環境などの外部要因によるものだけでなく,女性 たち自身の経験不足によるリーダーシップの不足が挙げられる。

 本稿の前提として,女性起業家創出のためには,いくつかの段階が必要であ ると考える。まず,女性労働者の増加があり,次に管理職の創出が必要である という問題意識のもとに日本の現状と米国の現状について述べ,次に支援機関 の調査結果をもとに,今後あるべき支援のありかたを考察した。

 働く女性に対する支援は行政をはじめとし,さまざまな取り組みがなされて きたが,充分に機能するためには,制度だけでなく組織風土の変革や経験を積 んだ育成能力のある人材が不可欠であろう。

 キーワード:女性起業家・女性管理職・起業支援機関・リーダーシップ・カ タリスト

(京都学園大学経営学部論集 第21巻第 1 号 2011年10月  1 頁〜29頁)

(2)

女性起業家に期待が寄せられるようになった。そして,その頃から従来ほとん どなかった女性起業家研究や自治体等による女性起業支援が行われ出した。

 1995年,筆者は女性経営者を①キャリア達成②社会参加③能力活用・自己雇 用④事業継承の 4 タイプに分類した。その時にはまだ内部昇進タイプを含めて いなかった。なぜなら,従来からある企業内で経営者になる女性は,そのほと んどが事業継承か父親や夫との共同経営者であり,被雇用者として就職した女 性が昇進してトップに立つことは稀であったからである。

 ところが,1990年代後半になると,1986年施行の男女雇用機会均等法以後に 総合職として採用されたり,海外で MBA を取得したり,とキャリア形成を強 く意識する女性たちの中には実力でトップの座につくことも出てき始めた。従 来の「主婦・女性の視点」の生活密着型事業だけではなく,企業での経験を生 かした起業も増加している。女性に限らず,経営者や起業家は突然現れるわけ ではなく,それまでのさまざまな経験や知識,人脈などの資源を持つことを必 要とされるのは言うまでもない。実際,起業家たちのキャリアをみると,管理 職経験者が多いことがわかる。

 女性起業家・管理職の増加のために,行政機関を始めとし,多くの支援が行 われてきた。支援内容の多くはセミナーや資金支援であったりするが,その効 果は見えづらい。なぜなら,女性たちが真にその能力を生かしてビジネスに携わ るには,時間を経た段階的なプロセスが必要だと考えられるからである。まず,

企業における女性就業者の増加があり,その次に専門分野での経験や管理職経 験を積む女性が増え,そしてその経験を生かして起業するというプロセスである。

 我が国においては女性雇用者がようやく増加し,現在は,女性管理職比率の 低さが大きな課題となっている。女性起業家たちの多くは,企業での管理職経 験を経てきており,制度としての管理職育成のシステムが必要なだけでなく,

女性独自のリーダーシップの葛藤を体験してきている。

(3)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 3

 本稿では,こういった働く女性の置かれた状況と起業の傾向を概観し,次に 女性起業家・及び管理職育成支援についての日米比較調査から,今後の課題を 考察したい。

Ⅰ 日本の女性管理職・女性経営者の現状

1 .データと先行研究

 我が国における女性起業家の調査やデータは少ない。女性管理職・リーダー 育成についての先行研究もわずかである。

 その中でも「就業構造基本調査」や国民生活金融公庫が毎年実施している

「新規開業実態調査」,経済産業省の調査等では,女性起業家の動機や特徴,

業種,業績等の分析が進められている。また,働く女性については,毎年厚生 労働省の「働く女性の実情」でデータを見ることができる。

 特に女性管理職について取り上げた研究としては,1982年に岩男寿美子らに よる都内中小企業42社の面接調査に基づく事例研究「中小企業における女性経 営者の成長歴・生活・経営感」,2006年女性役員の「一皮むける経験―幹部候 補女性を育てる企業のための一考察」

(リクルートワークス2006. Vol. 1・石原直子)

があるが,管理職・役員の絶対数が少ないため,充分な研究ができなかったと いうのが,実態である。

 日本ベンチャー学会「女性と企業研究部会」の田中恵美子による論文「アメ リカ大企業における女性 CEO とリーダーシップ」では,ヒューレットパッ カード社の CEO を務めたカーリー・フィオリーナの女性として求められる期

1 ) 1 ) 2 )

2 )

3 ) 3 )

1 ) 有業率・産業別就業構造・雇用形態などについて全国および各都道府県別の基礎資料を得るこ とを目的に,総務省統計局が実施している。

2 ) 日本政策金融公庫総合研究所が「新規開業実態調査」の調査結果をとりまとめて,毎年発刊し ている。

3 ) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局では,毎年,働く女性に関する動きを取りまとめ,「働く女 性の実情」として紹介している。

(4)

待とリーダーとして求められる期待との間の役割葛藤に着目している。そして,

女性のリーダーシップを引き出すためには具体的な方策が必要であり,数の増 加,制度整備とともに教育・訓練の必要性を述べている。

 女性のリーダーシップについて書かれた著書としては,「フェミニン・リー ダーシップ」

(1987年 2 月,マリリン・ローデン著,山崎武也訳)

,『リーダーとして の男性・女性』

(トルディー・ヘラー著・勁草書房)

が挙げられるが,この中にも

「母性的」であるステレオタイプ女性型リーダーシップと,男性型リーダーシ ップの間で苦悩する女性たちの姿が見えてくる。

 女性起業家研究を手がけている石坂健氏の指摘によると,米国の1992〜1998 年における女性起業家関連研究の「大多数は起業家個人の活動や特性にフォー カスしたもの,国ごとに研究したものが多い。プロセスを分析単位とした研究 はなく,分析ツールとしては,過去に主流であったフェミニスト論からキャリ ア理論や制度理論への変化が見られる。」という。

 また,日本の女性起業家関連研究論文から見ると

(表 1

,「女性起業家と性 表 1

  女性起業研究論文テーマからみる分類

主なテーマ 本 数

起業支援に関するもの 10

キャリアに関するもの 7

起業家の特徴に関するもの 7

起業プロセスに関するもの 3

起業家教育に関するもの 3

経営戦略に関するもの 3

リソースに関するもの 1

ジェンダーに関するもの 1

(2010.7. 日本ベンチャー学会女性と企業研究部会発表資料・石坂健作成図表)転載

(5)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 5

役割志向性とキャリア自己効力:女性のキャリア発達と適応に関する研究」

(1993・松井賚夫)

や「女性企業家の企業家活動における職業経験の影響―「新 人類」女性企業家はどのようにして生まれるか ?」

(2006・鹿住倫世)

「女性の起 業プロセスで形成されるネットワーク構造の違い―斯業経験と仲介者の視点か ら―」

(2010・石坂健)

,「社会制度の変化と女性起業家―女性雇用労働者との対 比から見る―」

(2002・大石)

「女性のライフコースとキャリア形成―女性起業 家の事例研究から」

(2004・高橋徳行,戸板女子短大研究年報)

等において,女性 起業家のキャリアについて触れられているが,そのリーダーシップ形成や育成 支援について論じているものは少ない。

2 .日本における働く女性の現状

( 1 )働く女性と女性起業家

 女性起業家の状況は,働く女性の置かれた環境と大きく関わっている。

 筆者は以前に女性起業家をタイプ別に分類した。従来型Aタイプ(飲食店,

美容院等,従来から女性が占める割合が高かったビジネス)や従来型Bタイプ

(育児,介護等主婦を中心とした女性の得意分野)は,90年代以前から多く見 られた。また,高度成長時代に高学歴でありながら専業主婦になった女性たち の社会参加としてのワーカーズコレクティブや NPO 等が話題になったのも80 年代からである。

 90年代以後,従来型のビジネスでは飽き足らなくなった女性たちが男性中心 の業種にも進出してくるようになったのが,革新型A(既存のビジネスに女性 の視点で切り込む)でさる。さらに,組織の中では自分を生かしきれないので 独立するという革新型Bタイプ(性別に関わりなく,キャリアを生かすベンチ

4 ) 4 )

4 ) 「社会制度の変化と女性起業家―女性雇用労働者との対比から見る―」(2002・大石)

(6)

ャー型起業ビジネス)は,雇用機会均等法以後のキャリアを積んだ女性が増加 してきたことと無関係ではないであろう。

( 2 )働く女性を支援する法律

 1980年代以後,働く女性を支援する法律として,男女雇用機会均等法以後,

育児介護休業法改正均等法次世代育成対策支援法等が徐々に整備されてきた。

 しかし,我が国の働く女性の現状は諸外国と比較すると,決して好転してい るとはいえない。産業構造のサービス化や既婚女性の労働力化などを背景に,

パートなどの非正規社員の増加は,特に若年者や女性に顕著であり,実に女性の 半分以上が非正規社員である。また,出産育児期にあたる30〜34歳層の労働力率 は60.3%と先進諸国では数少ないM字型カーブを描くことも解消されていない。

( 3 )少ない管理職比率

 また,日本の女性たちの管理職比率は10%前後を推移(「働く女性の実情」

厚生労働省雇用均等・児童家庭局では,昭和28年以来,働く女性に関する動き をとりまとめ,毎年発表)している。

 調査によると,係長相当職以上の管理職に占める女性の割合は(2010年「雇 用均等基本調査」)女性の係長相当職13%,課長相当職 7 %,部長相当職 4 % となっており,これは諸外国と比較すると格段に少ない

(図 1

 また,アメリカ大手会計事務所グラント・ソントンが行った調査を見ると,

5 ) 5 ) 6 )

6 ) 7 )7 ) 8 )8 )

9 ) 9 )

5 ) 1985年制定,1986年施行。「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働 者の福祉の増進に関する法律」の通称。

6 ) 1995年成立「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の通 称。

7 ) 1999年に改正。採用,配置・昇進,教育訓練,福利厚生,定年・退職・解雇において,男女差 をつけることが禁止された。

8 ) 2003年施行。次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ,育成される環境の整備を行うため,

国や地方公共団体,101人以上の労働者を雇用する事業主は「一般事業主行動計画」を策定し,

届け出なければならいとし,100人以下の事業主には努力義務としている。

9 ) 2010年第 4 四半期〜2011年第 1 四半期に39カ国・地域で実施。http://www.newsclip.be/20113 10-030281.html

(7)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 7

株式非公開企業の上級官吏職に占める女性の割合が最も多かったのはタイで45

%に上った。中国34%,マレーシア31%,シンガポール30%,台湾30%,ベト ナム23%,日本を除くアジア太平洋は平均27%,日本 8 %となっており,日本 の低さが目立つ。

3 .企業における女性管理職育成の現状と意味

( 1 ) 差別是正から人材確保まで

 労働生産人口の減少等の理由により,女性労働力の必要性は認識されるよう になってきているにもかかわらず,依然として女性管理職比率は低く,女性を 管理職・役員として育成するという視点が欠けている企業が少なくない。とは いえ,ここ20年あまりの間,女性活用から管理職育成への必要性を認識するま

図 1

  女性就業者の割合と管理職に占める女性の割合

(備考 )日本は2009年,韓国,オランダ,スウェーデン,イタリア,イギリス,カナダ,ド イツ,アメリカは08年,フィリピン,ノルウェーは05年のデータ。諸外国は職業別就 業者数と構成比。日本は職業別雇用者数と構成比のデータ。

(出展)厚生労働省「働く女性の実情」,内閣府編「男女共同参画白書」より

  0.0%  10.0%  20.0%  30.0%  40.0%  50.0%  60.0%

フィリピン アメリカ ドイツ カナダ イギリス イタリア スウェーデン ノルウェー オランダ 日本 韓国

   57.8%

   38.5%

   42.7%

   46.4%

   37.8%

   45.3%

   36.0%

   47.3%

   34.6%

   46.0%

   33.2%

   39.9%

   32.2%

   47.3%

   30.5%

   47.1%

   27.5%

   45.7%

   10.2%

   42.3%

   9.6%

   41.9%

管理的職業 従事者の女 性割合 就業者にし める女性割

(8)

でになってきている企業も徐々に増加している。

 ふり返ってみると,まず,企業は男女差別の是正に取り組むことから始まっ た。世界的にも女性の地位が低いとされ,1975年の国連女性の地位委員会で指 摘された我が国では,国連婦人年最終年である1985年に男女雇用機会均等法を 制定した。しかし,この法律ではコース別人事制度による採用の機会均等だけ であり,その後の昇進までは均等にはならず,「総合職」として採用しながら 実質上は戦力として扱わない企業も少なくなかった。また,一般職と総合職の 軋轢や,出産育児との両立が課題として残った。

 しかし,バブル経済崩壊後の90年後半頃から,大手企業を中心として CSR 活動が企業価値に繋がるという考え方が広まり,女性の活用促進をイメージア ップにつなげようと,女性活用プロジェクトの社内設置など,さまざまな施策 が始められるようになった。

 さらに,長引く不況や事務処理の IT 化等により,一般職のアウトソーシン グ化が進み,女性社員も基幹社員として充分にその能力を生かして業績に貢献 してもらう必要性が流通業等を中心に増加してきた。ここにきて,単なる CSR 活動ではなく,両立支援による優秀人材のリテンションがテーマになってきた といえる。その追い風となったのが,2003年施行の「次世代育成支援対策推進 法」

(注 8 )参照)

である。いわゆる「ワークライフバランス」に取り組むこと が,優秀な人材採用と退職率の低下に結びつくことが,徐々に理解され出した。

社員の能力発揮と育成に積極的に取り組む企業姿勢は,経営の持続的発展が期

10)

10)

11)

11)

10) United Nations Commission on the Status of Women 国際連合(国連)の中で,女性の地位向 上に取り組むための中心的役割を果たしてきた組織です。1946年国連の誕生とともに,国際文書 として男女同権の確認を初めて明文化した国連憲章の前文を現実のものとするために,女性の地 位向上を主要な活動として位置づけられた。

11) Corporate Social Responsibility の略で,「企業の社会的責任」。企業が利益を追求するだけで なく,組織活動が社会へ与える影響に責任をもち,あらゆるステークホルダー(利害関係者:消 費者,投資家等,及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。

(9)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 9

待できる企業として,顧客や株主,取引先等の利害関係者からの信頼や好意的 な評価を得ることができる。

( 2 )ダイバーシティによる企業価値の創造

 次の段階としては,女性に限らず多様な人材を活用することが企業価値の創 造に繋がるという考え方である。筆者も参加した経済産業省の調査では,女性 の活躍と企業業績の関係を分析し,女性管理職比率が高いと利益率が高いこと を報告した。しかし,これは単に女性比率の問題ではなく,性別や国籍等属性 に関係ない人材活用を図る企業の取り組みが生産性を高めることであると,結 論付けている。

 21世紀職業財団(厚生労働省)では,1999年(平成11年度)から毎年,仕事 と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち,多様でかつ柔軟な働き 方を労働者が選択できるような取組を行う企業を「ファミリーフレンドリー企 業」として企業表彰を実施し発表している。

 1997年,男女雇用機会均等法の改正により,募集・採用から定年・退職・解 雇に至るすべての雇用管理における女性に対する差別が禁止され,実質的な男 女均等を実現するために,事実上の格差を解消するための企業の積極的な取組

「ポジティブ・アクション」が注目されるようになった。具体的には採用時や 管理職昇進時の一定割合を女性の枠と決め,積極的に男女比率を是正しようと いうものである。

12)

12)

13)

13)

14)

14)

12) 2003年男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」

13) 2007年(平成19年度)からは「均等推進企業表彰」と統合し,「均等・両立推進企業表彰(フ ァミリー・フレンドリー企業部門)」として実施している。

14) 「ポジティブ・アクション」とは,固定的な性別による役割分担意識や過去の経緯から,男女 労働者の間に事実上生じている差があるとき,それを解消しようと,企業が行う自主的かつ積極 的な取組のことであり,単に女性だからという理由だけで女性を「優遇」するためのものではな く,これまでの慣行や固定的な性別の役割分担意識などが原因で,女性は男性よりも能力を発揮 しにくい環境に置かれている場合に,こうした状況を「是正」するための取組である。

(10)

Ⅱ アメリカにおける女性経営者・女性管理職の現状

1 .アメリカの働く女性の現状

( 1 )増加する女性管理職と課題

 米国では,1970年代には現在の日本と同様,女性管理職比率も経営者比率も 低かったが,現在では労働力は全体の48%,管理職・専門職に就いている女性 は49%,女性経営者率は約半数に達している。

 大企業においても,フォーチュン500社リストを見ると,1999年に世界有数 のコンピューターメーカーであるヒューレットパッカードの CEO に就任した カーリー・フィオリ―ナが話題になり,マスコミにも大きく取り上げられた

(2005年退任)。2010年度では500社のうち15人の女性が代表となっているが,

中小企業に比較し,女性役員の少なさは目をひく。

 産業界で女性役員がどのように認識されているかについては,1965年に Are Executives People )が発表され,その追跡調査として20年後に, Ex- ecutive Woman-20 Years Later” がハーバードビジネスレビューで発表されて いる。これらは,男女の意識の差を明らかにしており,女性管理職が受け入れ られるためにはさまざまな障壁があることを指摘している。

 また,INSEAD 教授の Herminia Ibarra による調査では,大多数の項目で女 性のほうが高い評価を得ていたにもかかわらず,「女性は EQ(心の知能指数)

が高く,構想力に乏しい」というイメージが根強く残っていることを指摘して

15)

15)

16)

16)

17)

17)

18)

18)

15) 1939年に,ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードにより米国カリフォルニア州パ ロアルトで創業。パソコン,サーバ,プリンターなどで世界的シェアを持つ)

16) (ガルダ・W・ボーマン,N・ビートリス・ワーシー,スティーブン・A・グレイザーがアメ リカ国内の管理職2000人(男女半数ずつ)を対象にした調査を基にしている

17) Diamond Harvard business Review 2007. 1

18) (INSEAD のエクゼクティブプログラムに参加した149カ国,2816人に関する 2 万2244人によ る360度評価

(11)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 11

いる。

 カタリスト協会がグラスシーリング委員会に提出した報告書『企業の管理職 と女性』では,回答者の大半が,女性に管理能力,技能の面で男性と対等である と答えている

(Catalyst 発行『Perspective』1990. 4. 6. 7)

。また,女性が経営のト ップに上昇するには障害がある。その障害とは「①女性に対するステレオタイ プと偏見がある―女性は仕事に対する貢献度が低い,イニシャティブをとらな い②企業幹部はリスクを冒してまで女性を中枢のポストに配置しない③企業が キャリア・プランニングあるいは職場配置プランを欠いている」と報告して いる。

2 .中小企業で活躍する女性起業家

 近年,大企業の雇用者数が減る中で女性起業家による雇用は増加し,アメリ カ経済を大きく支えていると言われてきた。

 米国における女性経営企業(女性が所有または経営する企業)は,米国商務 省国勢調査局によると,約270万社あり,非農業部門の民間企業の28.7%を占 めている(2007年)。また,1997年から2007年にかけて,女性経営企業は44%

増加し,これは男性経営者の 2 倍となることが,「Women-Owned Businesses  in the 21st Century」において報告されている。女性起業家数は 5 年に 1 度行わ れる米国センサス局の女性所有企業数,労働統計局の雇用形態調査,内国歳入 庁による税務申告においての事業形態としての個人事業数などから,おおまか なデータが把握できる。アメリカでは中小企業が約2,200万社あり,労働力の 50%を雇用しており,一般企業の約 2 倍の速度で増加している。いまやアメリ

19)

19)

20)

20)

21)

21)

19) Diamond Harvard business Review 2009. 3 20) 後述

21) U.S.  Department  of  Commerce  2010  http://www.esa.doc.gpv/Reports/women-owned-buisi- nesses-21st Century)。

(12)

カのビジネスの半分は女性によって占められるようになった。この傾向は91年 を分岐点にして上昇し,アメリカ女性起業家の大躍進を示している。

 また,Global Entrepreneur Monitor 調査によると,女性の起業活動の高い 国は経済成長率が高いことがわかる。

 この調査では,18歳から64歳の人口100人あたりにつき,起業準備者と起業 家(起業後42ヶ月以内)の合計が何人にいるかという指標を Total Entrepre- neur Activity

(TEA)

として表している。米国は他国よりもこの TEA が高く,

18歳から24歳で5.7,25歳から34歳では10.4,35歳から44歳では10.9,45歳か ら54歳で11.9となっており,起業活動の活発さがわかる。また,この男女間の TEA の差が少なく,男女ともに起業活動が活発であることを表している。

 女性起業家の急激な増加の理由としては,第一に産業構造の変化が挙げられ る。第 3 次産業のサービス業や流通業などの増加という先進国共通の産業構造 において,資本を持たないことの多い女性たちでも起業するチャンスが生まれ た。次に,1970年代頃から女性たちの企業におけるグラスシーリング(ガラス の天井=女性たちが企業内での昇進を阻まれることをいう)も大きな要因とい える。企業で働く女性が増加するにつれ,グラスシーリングが問題になってき た。もちろん,企業内での男女格差を解消しようとする動きも出てきたが,自 己実現やキャリア達成の手段として,「起業」を選択する女性が増加した。

3 .アメリカにおける女性支援

( 1 )連邦政府によるスモール・ビジネス支援

 女性管理職数や起業家数の日本とアメリカの差は,経済環境や産業構造,風

22)

22)

22) GEM 調査は米国バブソンカレッジと英国ロンドンビジネススクールの起業研究者たちが合同 調査として始めたもので,企業活動と各国の経済成長率の関係やその特徴を明らかにするために 始められた。1997年に G7を中心とした 9 カ国から始まり,2009年には54カ国の参加となっている。

(13)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 13

土,個人の意識の問題など多さまざまな要因があると考えられるが,特にアメ リカでは,連邦政府や州政府による手厚い支援があることを忘れてはならない。

 その柱となるのが,「女性起業家のための連邦政府(中央政府)レベルでの 4 つの大きな法律」=①雇用機会均等法とアファーマティブ・アクション②融 資機会均等法(1974年 連邦議会で制定)③連邦政府取得合理化法④女性ビジ ネス・オーナーシップ法

(1988年)

である。

 政府機関の取り組みとしては,「全米ビジネス女性評議会」

(National Womenʼs  Business Council)

が1988年,ロナルド・レーガン大統領時代の連邦政府により 設置され,調査活動やその分析により大統領や議会,SBA に対して政策的助 言を行う。NWBC の助言により,1985年当時,女性経営者に対する政府発注 が年間約2000億ドルと全体の 1 %にすぎなかったものが,1994年には全体の 5

%に増加した。また,NABC はベンチャーフォーラムを開催,2000年には 1000名の参加者を得た。

 さらに,クリントン政権の時代,「スモール・ビジネス育成策」が重視され,

女性起業家を支援する施策が全国で展開された。女性事業家向けの指導セン ター,98年にはオンライン女性企業センターも開設した。1997年には「女性ビ ジネス・エンタープライズ政府間委員会」

(Interagency Committee on Womenʼs  Business Enterprise)

が設置された。

( 2 )グラスシーリング打破の取り組み

 一方,キャリアアップ支援について見てみると,民間企業各自や業種単位の キャリアップ支援組織が実際のプログラムを実施している。1967年ジョンソン 大統領時代に,大統領令としてスタートした「アファーマティブ・アクショ ン」制度,続いて1990年代から実施された「グラスシーリングを打ち破る施 策」も大きな転換点であった。アメリカ政府とカタリスト(NPO)と産業界 との連携事例は,企業における女性のキャリアアップに大きな成果を上げた。

(14)

 グラスシーング委員会では,徹底的な分析と対策を研究した結果,産業界に 対して次のような勧告を出した。さらに企業だけではなく,政府の行動として また社会にも障壁の除去のために以下のような提案している。

 ① 組織のトップの政策的な取り組みをすすめる

 ② すべての戦略的な事業計画に労働力活用の多様性を入れる  ③ 道具としてアファーマティブ・アクションを活用する  ④ リーダー登用の有資格者の範囲を広げ,募集する

 ⑤  女性リーダーの教育訓練,ネットワーク,メンタリングプログラムの設 置

 ⑥ 企業幹部に意識教育と監視義務を実施。

 ⑦ 仕事と家庭の両立支援(老人・子ども介護,家族休暇)

Ⅲ.日米支援機関調査から

1 .調査の概要

( 1 )調査目的

 これまで見てきたように,米国では,行政や民間によるさまざまな支援によ って女性の置かれている状況も変化してきた。しかし,日本の場合は,数字で 見る限り女性管理職・起業家ともに米国の約20年前の状況であり,その支援の ありかたは米国の先行事例を参考とすることが必要であろう。

 そこで,支援組織の形態や取り組みについての調査を実施し,日本にとって の課題とあるべき支援について考えていきたい。

( 2 )調査対象と方法

 この調査は,筆者が「女性と仕事研究所」との協力による日米支援機関への

23)

23)

23) 筆者が実施した米国調査が2005年であることから,新たな調査結果が不可されるべきであるが,

その後の調査は見つけることができなかった。今回は調査時のデータを基に報告する。

(15)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 15

アンケート調査とヒアリング調査を実施したものを基にする。

 調査対象として,日本国内は,専門雑誌『女性情報』に載った主な女性団体 のうち,起業あるいは女性のキャリアアップを支援している団体,および「女 性と仕事研究所」のネットワークより該当する団体を抽出した。

 また,米国については,「女性と仕事研究所」の独自の海外ネットワーク,

The Eleven Commandments of Wildly Successful Women”

(Pamela Boucher  Gilberd 著)

に 載 っ て い る National and Womenʼs Business and Professional  Organizations, Associations, and Resource Groups”,及びインターネットより

「女性,キャリア,起業」をキーワードとし検索した。

 さらに,ヒアリング調査は連邦政府機関の SBA,NPO 組織の NAWBO,

Catalyst の 3 ヶ所を訪問,実施した。

2 .日本の支援機関調査結果

( 1 )支援の目的と主体

 日本においては,1980年代後半から全国地方自治体による「女性センター」

(その後「男女共同参画センター」と名称変更)が創設され始め,働く女性支 援として,「再就職セミナー」「キャリアアップセミナー」「起業セミナー」が 開催されている。

 さまざまな支援が展開されているにもかかわらず,かならずしも効果を上げ ているとはいえず,その運営に課題が残されているのではないか,ということ から今回の調査を実施し,以下の結果となった。

24)

24)

25)

25)

24) 2005年 2 月「女性のためのキャリア・起業支援機関調査報告書」(女性と仕事研究所協力・発 行)

25) パドウィメンズオフィス発行。北は北海道新聞から南は沖縄タイムスまで,全国主要17紙に掲 載された女性に関する記事を毎月 7 千点近く収集,厳選した約500点の情報を,18のテーマに分 けて集録している月刊誌。

(16)

 ①  起業やキャリアアップを事業目的とする団体のトップや,中心となるポ ストを占めるのはほとんどが女性(67%)

 ②  団体の活動拠点は,東京(59%)と大阪(25%)埼玉( 8 %)千葉( 8

%)

 ③  団体で働くのは女性が中心であるが正規職員が存在しない団体も多い

(表 2

 ④ 法人格を取得して活動している団体がほとんど

(図 2

 ⑤ 年間予算が 1 億円以上のところも 5 箇所

 ⑥  起業支援の講座とキャリアアップの講座のいずれかを開催している団体 表 2

  雇用者数

0 人

(団体数)

1 〜10人

(団体数)

11〜20人

(団体数)

20人〜

(団体数)

不明

(団体数)

常用 女性 1 5 0 4 1

常用 男性 6 4 1 0 1

正規 女性 5 3 2 1 1

正規 男性 6 3 1 1 1

* 法人格:あり:10(NPO 3 ,財団法人 3 ,独立行政法人 1 ,特別認可法人 1 ,有限会社 1 ,公的機関 1 )   なし:2

図 2

  法人格の種類

財団法人 25%

NPO 25%

独立行政法人 9%

特別認可法人 8%

有限会社 8%

公的機関 8%

なし

17% NPO

財団法人 独立行政法人 特別認可法人 有限会社 公的機関 なし

(17)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 17

は60〜70%。

 ⑦  起業支援の講座はほとんどの団体で実施している。起業分野を実施して いる団体の多くは,キャリアアップ分野も実施

(図 3

表 3

  講座の内容と実施団体数

講座の内容 団体数

意識啓発 6

コミュニケーションスキル 3

コンセプチュアルスキル 2

履歴書の書き方 2

ディスカッション 1

ビジネスマナー 1

情報収集 1

図 3

  起業とキャリアアップに関する事業

 0%  20%  40%  60%  80%  100%

起業支援  あり  なし  不明

キャリアアップ  あり  なし  不明

あり なし 不明

(18)

3 .アメリカ支援機関の調査結果

( 1 )アンケート調査

 郵送とメールで実施したアンケート調査の結果,23か所の組織から返送があ った。その事業内容としては,①キャリア支援講座の実施,②平等推進,③ネ ットワーク支援,④ワークライフバランス支援,⑤リーダーシップ育成,⑥起 業情報,⑦金融支援など多岐に渡っており,これから仕事に就きたい人,企業 内でキャリアアップしたい人,起業したい人などのさまざま立場の女性たちが,

ステージに応じて利用できるようになっている。

 例 え ば,American Business Womenʼs Association 

(ABWA

4

2

で は,

働く女性に,教育プログラムやトレーニングを提供し,キャリア開発を促す。

ネットワーク作りを助け,働く女性の表彰を行う。雑誌 Women in Business を発行。“The ABWA-KU MBA Essentials Program” では,カンザス大学経 営学大学院やカンザス大学経営教育センターから講師を迎え,ビジネスに関し て修士レベルの基礎を学ぶ。2005年から,起業家を視野に入れた講座も行い,

リーダーシップ能力の開発や,ビジネススキルを磨く講座もある。

 The Alliance of Professional Women

(表 4 4

では,女性を対象に講座や 活動の場を提供する。リーダーシップを磨く機会を与え,女性の成長を支援す る。情報の提供を行う。また,資産運用,ネットワーク作り,商談スキル,女 性と政治などさまざまな講座を提供している。

 また,業界別の支援として American Society of Women Accounts 

(ASWA・

4 5

は経理や財務を仕事とする女性のキャリアアップ。 6 の The Associ- ation for Women in Communication 

(AWC)

はコミュニケーション分野(出版,

報道,映画,広報,マーケティングなど)での,女性のキャリアアップを支援,

リーダーシップスキルの開発を行う。国際貿易の世界でビジネスをしている女 性を対象にネットワーク作りや,教育の機会を与える Organization of Women 

(19)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 19 表 4

  アメリカにおける女性のためのキャリア・起業支援機関

団 体 名 所在州 設立

1 Advancing Women テキサス 1995

2 American Business Womenʼs Association (ABWA) ミズーリ 1949 3 Association of Fundraising Professionals (AFP) バージニア 1960 4 The Alliance of Professional Women コロラド

5 American Society of Women Accounts (ASWA) バージニア 1938 6 The  Association  for  Women  in  Communication 

(AWC) メリーランド

7 Alliance of Women Entrepreneurs (AWE) ミシガン 1984 8 American Woman's Economic Development Corpora-

tion

9 Business and Professional Women (BPW/USA) ワシントン DC 1919

10 Catalyst ニューヨーク 1962

11 Center for Womenʼs Business Research ワシントン DC 1989 12 Womenʼs Bureau, US Department of Labor ワシントン DC 1920 13 U. S. Equal Employment Opportunity Commission ワシントン DC 14 Financial Womenʼs Association ニューヨーク 1956 15 National Association of Insurance Women オクラホマ 1940 16 National Association of Career Women ミシガン 1979 17 National Association for Female Executives

18 Organization of Women in International Trade 1989 19 United States Small Business Administration ワシントン DC 1953 20 U.S. Womenʼs Chamber of Commerce ワシントン DC

21 Women Employed シカゴ 1973

22 Women Entrepreneurs バージニア 2002

23 Womenʼs Equity Mutual Fund サンフランシスコ

(20)

in International Trade がある。

 支援の一つとして大きな柱となっているネットワーク作りでは,Alliance of  Women Entrepreneurs 

(AWE・表 4 7

がネットワーク機会の提供,顧客紹 介 な ど を 行 う。“The AWE Quarterly News Letter” を 発 行,Business and  Professional Women 

(BPW/USA・表 4 9

では,職業開発プログラム,ネッ トワーク作り,地域活動の参加などの機会を女性に与える。National Associa- tion of Insurance Women 会員に対して,専門的技術の教授,保険産業での経 験やキャリアの違う人とのネットワークづくりの機会や,ビジネス連携できる ような環境を提供する。

 ま た,女 性 経 営 者 や 起 業 家 に つ い て の 調 査 機 関 の Center for Womenʼs  Business Research

(表 4 11)

,女性雇用者の福祉や職場の環境改善のための Womenʼs Bureau, US Department of Labor

(表 4 12)

,女性の役割や能力向上 に重点を置きながら,財政や財政サービス産業における専門的スキルの向上を 目指す Financial Womenʼs Association

(表 4 14)

,女性の個人的また職業人的 成長を支援する NPO 法人 National Association of Career Women

(表 4 16)

, 会員がキャリア成功や金融保証を成し遂げられるよう,資料やサービス

(教 育・ネットワーキングの機会など)

を提供する National Association for Female  Executives

(表 4 17)

,United States Small Business Administration

(表 4 19)

は米国の独立政府組織である。中小企業に対する助成,相談,支援,利益の保 護,自由競争制度の確保及び,米国全体の経済向上を目的とする。事業融資,

企業開発(教育,情報,技術支援,トレーニング),政府請負,中小企業の擁 護を行う。

 女性のリーダーシップ育成に特化しているのは,U.S. Womenʼs Chamber of  Commerce

(表 4 20)

で,リーダーを養成すること,経済を発展させること,

地域に女性の声を届けることを目的とし,特に中規模市場女性経営のビジネス

(21)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 21

におけるリーダーの養成や経済発展を目指す。

 Women Entrepreneurs

(表 4 22)

はネットワーキング,教育プログラムや 擁護によって,女性企業家の成功を支援する NPO 団体である。女性ビジネス 経営を促進する政策を支持する。あらゆる段階の起業家に情報や資料を提供し,

起業家に経済的機会や財政的安定をもたらすことを目指す。

( 2 )中小企業庁

(SMALL BUSINESS ADMINISTRATION)

 SBA(本部ワシントン)は中小企業を奨励,支援し,その利益を保護するた めに1953年に設立された。商務省は大手企業を管轄しているが,中小企業庁の 支援の対象は既存の中小企業だけでなく,これから起業しようとする人を対象 としている。支援としては,経営ノウハウやスキルを向上させ,政府機関が発 注する仕事にアクセスするチャンスを得るための手助けをし,融資や債務保証 をするなどの事業を行ってきた。これまでに通算20万社の中小企業に債務保証 を行った。SBA は全米に50以上の支部を持ち,さまざまな事業を実施している。

 その中でも,女性経営者育成のために,女性経営者オフィス

(OFFICE OF  WOMENʼS BUSINESS OWNERSHIP)

が1979年に設置され,さまざまな支援を行 っている。活動の目的は,女性の経済活動への参加を促進することであるが,

具体的な活動は非営利団体である Womenʼs Business Center

(非営利団体)

が 行っている。全米で約100箇所あり,SBA との契約によって委託を受けて運営 している。この団体は2001年から活動を開始しており,民間経験のあるスタッ フによってセミナーの実施,交流パーティー,ニューズレターの発行,女性起 業家への顕彰事業などを行っている。ニューヨーク内には,マンハッタン,ブ ロンクス,ブルックリン,クイーンズ,ウェストチェスター&ミッドハドソン の 5 箇所に設置されている。しかし,その活動資金は SBA からの助成金だけ

26)

26)

26) 所在地:409 Third Street, SW, Washington D.C. 20416 URL:http://www.sba.gov/

(22)

でなく, 5 年契約の最初の 2 年間は 3 分の 1 ,後の 3 年間は 2 分の 1 を独自予 算で運営する。

 OWBO 自体が行っている支援は,現在では① WBC の管理監督によるビジ ネス訓練と技術援助促進②信用及び政府調達契約 , 及び国際貿易の機会へのア クセスを提供③インターネットを通じての情報提供,④地区オフィスにおける mentoring roundtables などがあげられる。

 また,SBA が他の省庁と,個別に目標を定め,それを達成するためのプロ グラムを実施している。政府調達での競争力強化のための訓練プログラムを行 い,各省庁に女性起業家の擁護担当者を置き,政府調達の機会やプロセスを広 報している。

 各省庁は SBA と定期的に会議を開き,進捗状況を分析し,どの分野で増や せるかを検討していく。プロネットというコンピューター・データベースが完 成し,中小企業約18万社が登録されている。女性起業家だけの検索もでき,こ れにできるだけ登録させるようにし,10万ドル以下の契約で,政府広報誌に掲 載しない場合は,調達官はこの中から必ず中小企業 5 社の入札を入れ,そのう ち 1 社は女性起業家にしなくてはならない。

 WEB サイト上では,Online  Womenʼs Business Center を立ち上げ,英語 以外にスペイン語,日本語,ロシア語,アイスランド語,アラビア語のページ を持ち,海外からの移住者たちへの配慮もされている。そこでは起業する際に 必要となる知識を学べるように作られており,統計調査や成功事例なども紹介 されている。

 また,具体的に,広告の方法,ビジネス・プランの立て方,マーケティング,

問題解決法,ダイレクトメールの活用の仕方,必要とする資金の調達,コミュ ニケーション,戦略的経営思考,などの経営の基本知識から,報道関係者用資 料,やるべきことのリストまで詳細に作られている。

(23)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 23

 地区オフィスにおける mentoring roundtables

(メンタリング・プログラム)

は 一対一の場合と,ラウンド・テーブル・セッションといって,朝食,ネット ワーク,講演,カウンセリングが統合されたものがある。メンターは退職者エ グゼクティブ・ボランティア財団から派遣される。最近オンライン・女性ビジ ネス・センターが登場し,インターネットで情報を得たり,学んだり,相談を することができるようになった。1988年に女性ビジネス・オーナーシップ法が 成立し,支援策が一層充実した。

( 3 ) NAWBO

(National Association of Women Business Owners)(全 米 女 性 企 業 家協会)

 女性経営者の相互扶助と情報交換の場として,1974年にワシントンで 7 人の 女性たちにより発足した全国的なネットワークで,その歴史は30数年になる。

その当時は,女性たちがビジネスを始めようと考えても,必要な法律や資金,

PR などの知識やノウハウを学ぶところがなかった。そういった問題を解決す るためにメンバーの親交をはかるだけでなく,さまざまな角度から女性経営者 たちをバックアップしようというものである。

 従来点在していた女性経営者たちがネットワークを作り,女性起業家の輩出 に大きな力を及ぼした。現在では全米900万人の女性経営者の代表としての顔 を持ち,政策に対しての提言も行っている。

 NAWBO に は,Corporate and Economic Development Council 

(CEDC)(企 業・経 済 発 展 協 議 会)

,Member Services Council

(メ ン バ ー サ ー ビ ス 協 議 会)

, Public Policy Council

(社会政策協議会)

の 3 つの Council

(協議会)

がある。

 Corporate and Economic Development Council 

(CEDC)(企業・経済発展協議

会)

は,メンバーの経済的な発展を促すための支援をおこなう。メンバーの金 融の健全化を支援する。企業の連携のために WEB サイトを開発する。国際貿 易進展に向けての協力。科学技術能力へのアクセスなどを支援している。

(24)

 Member Services Council

(メンバーサービス協議会)

は,リーダーシップス キル,トレーニング,マーケティング等,メンバーに対するサービスに関する ことを決定する。また,地域協議会を強化することによって,各メンバーの発 展を支援する。

 Public Policy Council

(社会政策協議会)

は公私のパートナーシップで,公的 な社会政策提言をする。教育や草の根の活動,共同によって女性起業家のため の政策を積極的に変えていくことが主要な目的である。

( 4 )カタリスト

(Catalyst)

 カタリストとは,「化学変化を起こさせるための触媒」という意味である。

職場で女性が活躍できるよう,調査や相談を行う NPO 組織で,1962年に設立 された。全国に80以上の支部を有し, 5 つの地区に分けられ,メンバーは,あ らゆる職種の女性たちで構成されている。スタッフは 3 カ所合わせて75名(う ち10名男性),インターンシップが 3 名となっている。

 年間予算は約 6 億円,事業の収支は年間 1 億 5 千万円ほどの黒字になってい る。主な収入は寄付が 3 億円(年間 1 千万円以上の寄付をしている企業が 6 社,

500万円以上が11社,250万円以上が25社)で,フォーチュンが発表する優良企 業ランキングにはいるグローバル企業が500社のうち約300社が,その法人会員 中の20数社がボードメンバー(理事)となっている。理事構成としては近年で は,ビジネス界からの出身が,ほとんどとなっており,カタリストが企業・ビ ジネス界にしっかり根をおろしている様子がうかがえる。

 1970年代,女性の職場進出を助ける目的で,フェリス・シュワルツが, 5 人 の大学学長を集め,女性の人生の選択肢の幅を広げる組織を作ることを呼びか け,カタリストの最初の理事会が結成された。1980年には Career and Family 

27)

27)

27) 財政的には企業の会費が 3 分の 1 ,アドバイザーからの出資が 3 分の 1 ,そして残りの 3 分の 1 がカタリスト賞受賞式のパーティー会費収入。

(25)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 25

Center を設立,共稼ぎ家庭についての企業の意識調査,家庭面でのニーズの 研究を実施した。こういった女性とビジネスに関しての綿密で先駆的な研究活 動はカタリストの諸活動の土台を成している。

 初期には,女性の再就職や失業者支援としてのリソース・センターとして機 能し,1973年,独立した83ヶ所の職業指導センターから成る National Net- work of Career Resource Center” を設立,職業相談や職業あっせんを実施し ている。1975年には,採用面接の際の固定的な性別役割観をなくすため,男性 のライン管理者を対象とした研修ガイドも開発し,女性の抱える問題に取り組 んできた。

 1980代後半からは活動の焦点を変え,女性の昇進を推進し始めた。1986年,

カ タ リ ス ト は Center for Career and Leadership Development” を 設 立,キ ャリアアップの力学を考える鼎談,女性ビジネス・リーダーを紹介した出版物,

男性管理者のジェンダー・アウェアネス向上研修,女性のためのリーダーシッ プ研修などを実施している。

 1990年代に入り,カタリストはトップの地位にある女性の人数の集計を始め,

現在もフォーチュン500社の重役会に属する女性や持ち株役員の地位にある女 性の人数調査を続けている。また,中間管理職や上級管理職の女性や女性管理 者とともに仕事をする男性や,方針決定を行なうビジネス・リーダーにもイン タビューし,女性が直面する障壁や,女性の成功につながる行動,態度,プロ グラム,慣行を調査し,女性に関する統計を取り,女性の現状と将来のあり方 について研究する。

 法人会員対象のコンサルティングサービスでは,職場環境を診断し,女性の 活躍を促進する戦略や解決方法を実施する支援,女性の雇用・定着・昇進を支 援している。また,女性と企業の橋渡し

(corporate board placement)

事業では,

1977年以来,法人組織委員会はフォーチュン1000社の取締役会に,重役として

(26)

資格と経験をもった女性を紹介,250社以上の企業への重役を紹介している。

 日本においても,同様の取組のお手本となっているカタリスト賞は1987年か ら実施され,女性の登用に関して先進的な取組を行い,成果を上げた企業に与 えられる表彰であり,第 1 回の IBM や Mobile 始めとし,General Electric,

P&G,JP モルガン,American Express,2011年度のマクドナルドまで77の企 業が受賞し,この賞を受賞することが株価にも影響を与えるという。

Ⅲ ま と め

 日本経済新聞

(2011年 8 月18日)

に,欧州では上場企業と公的機関に一定以上 の女性役員登用を義務付ける制度の導入が加速してきているという記事が掲載 されている。ベルギー,オランダで法律が成立し,欧州連合(EU)では EU 全域を対象とした法案の検討に入り,役員の 3 〜 4 割を女性に割り当てる(ク オータ制)の導入を考え,アジアにおいてもマレーシアでは法案を準備中であ るという。それらの国に比較するべくもない日本の場合はというと,日経新聞 調査

(国内主要500社対象。2011年 8 月)

によると女性取締役はわずか52人であり,

比率は0.98%,その 4 分の 3 は社外取締役である。また,複数の女性取締役を 配しているのは,資生堂,ブリジストン等少数となっている。

 2010年10月 1 日,APEC 中小企業大臣会に先立ち,岐阜市において日米共 催の女性起業家サミットが開催された。21の APEC 参加国の女性が参加し,

ヒラリー・クリントン国務長官がビデオメッセージで開催の挨拶をした。「パ ネルディスカッションでは,ルース大使が参加者にイノベーションと起業家精 神について自らの考えを語り,女性による企業への積極的参加を呼びかけ,イ ノベーションの効果を最大化する鍵はダイバーシティであると強調した。」

28)

28)

28) 21世紀職業財団の「ファミリーフレンドリー企業表彰」,(株)wiwiw &(特定非営利活動法 人)女性と仕事研究所の「ハッピーキャリア企業表彰」等

(27)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 27

(「AMERICAN VIEW WINTER 2011」)

 このように,欧米等諸外国においても,女性管理職の増加のために法案など の整備をすすめているが,日本においては一部上場企業,特に女性を顧客とす る企業で,女性管理職創出のための取組が行われはじめている。

 これまで経済活動に直接携わる経験の少なかった女性たちが,企業内でのキ ャリアアップ,転職,再就職,そして独立を考えた時,直接的および間接的な 支援が必要となることはいうまでもない。

 前述したように,80年代代半ばごろから全国各地で行政の働く女性支援が増 加した。自治体の女性センターが増加したのはこの頃からである。90年代後半 までに市町村レベルのものを含めると全国約200ヶ所に女性センターが設立さ れた,民間企業や NPO の取り組みも増加してきた。しかし,日本の支援機関 の多くは行政機関として設置されており,不況による税収減少により女性施策 への予算は毎年のように削減されている。団体への場所貸しが主となっていた 婦人会館に対して,独自の啓発事業を展開していくことが,女性センターや男 女共同参画センターの特色であったにもかかわらず,事業予算の削減のために 独自事業に支障をきたしている機関も多い。厚生労働省所管の「女性と仕事の 未来館」が事業仕分けで廃止(2010年度)になったことは記憶に新しい。

 また,NPO についても,行政や企業の助成金を得ることが困難なことに加 え,自らの収入を得るための経営ノウハウを持っていないことが,財政基盤の 弱さとなっている。アメリカの例を見ても,90年代前半にさまざまな事業を展 開していた AWED が2004年に休止した理由として,政府の助成金がなくなっ たことが大きい。

 アメリカの活発な活動を継続している NPO と日本の NPO の運営能力の差 は,民間企業からの助成・寄付・委託の有無が大きく影響している。例えば,

米国のカタリストが発展を遂げ続けている理由として,行政の助成金に頼らず,

(28)

企業との協力を進め,独自の財政基盤を持っていることが独自性を持った事業 展開を進めていく要素といえるだろう。 

 行政機関においては,支援事業担当の管理者側が専門知識のない短期間出向 である場合が多い。また,専門知識のあるスタッフは非正規雇用者であるなど,

継続的な蓄積ができない問題が挙げられる。

 その結果として,前年を踏襲した事業や外部委託になりがちであり,主体的 な支援事業を行えない。継続的な事業を展開するうえで,スタッフ自身の雇用 形態を安定させるとともに,中長期的な視点にたったスタッフの育成の必要が ある。(財)女性労働協会が2000年に実施した支援機関調査においても,支援 スタッフ育成の必要性が指摘されている。

 企業においては,税制の問題や企業の社会貢献に対する考え方の文化的風土 の違いなども上げられるが,女性活用がどういった意味があるかという基本的 理解が必要となる。仕事か家庭かを選ばざるを得ないような働き方を求められ ることは論外であるが,まだまだ「男性たちの障壁」は存在している。その場 合,いわゆるロールモデルが少ないがゆえに,自身がどういった経営者,管理 職であるべきかを確立できないまま,周囲の期待に合わせてしまう傾向が強い。

 企業業績につながる優秀な人材育成を考えるならば,属性に関わらず能力を 発揮できる制度と組織風土を醸成することが重要であろう。また,女性たちが マネジメント力をつけるには,目的や段階に応じたトレーニングが不可欠であ り,企業や社会の中でリーダーとしての経験を積むことが重要なプロセスとな る。そのためには,過渡的措置として女性管理職割合を決めるポジティブ・ア クションの必要性も挙げられる。

 すなわち,単に女性管理職・起業家の量的増加を促進するだけでなく,増加

29)

29)

29) 1952年に労働省婦人少年局の外郭団体として発足,1999年に女性労働協会と名称変更し,働く 女性の地位向上及び女性労働者の福祉の増進を図ることを目的とした事業を展開している。

(29)

  女性起業家及び管理職創出に必要とされる支援について(大石) 29

する過程での支援,ネットワークづくりのあり方を検討する段階にきていると 言える。先進事例を参考にし,行政・企業・NPO で推進し,経済効果に繋が ることが認知されていくことを期待したい。

参考文献

『Women  as  Leaders  and  Managers  in  Higher  Education』(Heather  Eggins. 

1992)

『Women in Business』(Harvard Business Review Paperbacks Series)

『The  Rise  of  Women  Entrepreneurs』(Jeanne  Halladay  Coughlin  with  Andrew  R.Thomas, Quorum Books, 2002)

『Advancing  Womenʼs  Careers』(Ronald  J.  Burke  and  Debra  L  Nelson,  BLACK- WELL, 2002)

『女性の経営マネージメント』(金谷千慧子,中央大学出版部,2006. 3)

『日本の女性経営者』(国民生活金融公庫総合研究所編,中小企業リサーチセンター,

2003. 6)

「女性起業家・女性経営者について」(内閣府男女共同参画会議・影響調査専門調査 会,高橋徳行,2003. 11. 19)

「社会制度の変化と女性起業家―女性雇用労働者との対比からみる―」(大石友子 国民生活金融公庫調査季報第62号,2002. 8)

「女性のためのキャリア・起業支援機関調査報告書」(大石友子.ベルメゾン生活ス タイル研究所.2005. 2)

「女性役員の「一皮向ける経験」―幹部候補女性を育てるための一考察」(石原直子 Works Review 2006. Vol 1)

「中小企業における『女性経営者』の成長歴・生活・経営観」(岩男寿美子・原ひろ 子・村松安子,1982,慶應義塾大学産業研究所)

経済産業省「平成22年度女性起業家実態調査報告書」(三菱 UFJ リサーチ&コンサ ルティング,2011. 3)

経済産業省男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」(経済産業省,座長 大沢真知子,2003)

「女性の起業に関するアンケート調査」(女性労働協会女性と仕事の未来館,2004)

参照

関連したドキュメント

• View reference designs, design notes, and other material supporting the design of highly efficient power supplies

(※1) 「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書」 (平成 29(2017)年 12 月 15 日)参照。.. (※2)

[r]

  支払の完了していない株式についての配当はその買手にとって非課税とされるべ きである。

就職・離職の状況については、企業への一般就労の就職者数減、離職者増(表 1参照)及び、就労継続支援 A 型事業所の利用に至る利用者が増えました。 (2015 年度 35

11月7日高梁支部役員会「事業報告・支部活動報告、多職種交流事業、広報誌につい

受理担当部門は、届出がされた依頼票等について必要事項等の記載の有無等を確認

⇒規制の必要性と方向性について激しい議論 を引き起こすことによって壁を崩壊した ( 関心