をめ ぐる課題 と展望
一 大学院修 士 課程 プ ログ ラムの有 効性 の検 討 を中心 に して‑
西 穣 司
は じめ に 一本稿の意図‑
今 日の大 きく揺れ動 く社会状況の中で,スクール リーダーに要請 される専 門性の明確化 と,その修得 ・向上のための積極的取組みが欧米の先進諸国 を中心 に展開されてお り,わ が国で も1998年以降文部省 (現文部科学省)が この取組 み を促 しているところである。
しか しなが ら,これ らの一連の行政施策や研究論議 において,とくにわが国の場合,スクー ル リーダーに求め られる職業能力の構造や発達 メカニズムに関する検討が弱い と言わざる を得 ない。 とりわけ筆者 は,ス クール リーダーの養成 ・研修促進 を大学院修士課程 プログ ラムに期待 しようとする論議 において, この点の検討 ・吟味の不十分 さを指摘せ ざるを得 ない。
そこで,本稿では, とくに大学院修士課程 プログラムが どのような意味 において有効 な のか,またその有効性が実現 されるためにどの ような要件が必要 とされるかについて,考 察 したい と考 える。
Ⅰ.スクールリーダーの養成 ・研修をめ ぐる政策動向とその背景
わが国の学校管理職 (校長 ・教頭) をは じめ とす るス クールリーダーの養成 ・研修 に関 す る近年の取組みの重要 な端緒 となったのが,主 として次の3つの審議会答 申等である。
○中央教育審議会「今後の地方教育行政の在 り方 について(答 申)」(平成10年9月21日)
○教育職員養成審議会 「養成 と採用 ・研修 との連携 の円滑化 について (第3次答 申)」
(平成11年12月10日)
○文部科学省初等 中等教育局教職員課 「教員養成等 における大学 と教育委員会の連携
に し ・じょうじ/上越教育大学
キーワー ド/スクールリーダー,大学院修士課程プログラム,職能発達,研究知,実践知
に向けて一手 を結 ぼう,大学 ・学校 ・教育委員会 ‑」(平成13年8月23日)
これ らの答 申等 に共通する課題意識 は,情報化 ・国際化 ・高齢化等の社会変化が急速 に 進展するなかで,学校管理者 をは じめ主任層教 師 を含 む教職員の養成 ・研修 の技術的高皮 化 に見合 った対応が必要 とするもの と概括 して よい と思われる。 この課題意識 自体 は,筆 者 も素朴 には認 めてよいが, とくに大学院での研修促進 についての見解 は必ず しも単純 に は首肯 し難い。 なぜ なら,現職教員の大学院での修学形態の研修機会 をこれ まで以上 に積 極的に拡大 しようとすることは結構 なことと考 えるが, よりきめ細かいカリキュラムや研 修 内容 についての吟味が不足 しているか らである。 す なわち, どの ような特性や課題 をも つ教師が, どの ような特徴や有効性 を備 えた研修促進のプログラムをもつ大学院での修学 が適切 か,などの きめ細 かい論拠 と確 かな見通 しが示 されてはいないか らである。
ところで,国 レベルでのスクール リー ダーの養成 ・研修促進施策の提示 に刺激 されて, 大学関係者等 による研究調査や論議が展 開されてはいるが 〔小 島弘道,2003;兵庫教育大 学ス クール リー ダー研究会,2002など〕,やは り大学院修士課程 プログラムの有効性 につ いては十分 な論拠 と見通 しが提示 されているとは見 な しがたい。 この点は,単 にわが国の みの問題状況ではな く,程度の差 はあれ国際的にもおおむね同様 な課題 を抱 えていると考 え られる 〔Huber,S.G.&West,M.,2002参照〕。
こうした事情か らも,筆者は改めてス クール リーダーの養成 ・研修 をめ ぐる論議や施策 をめ ぐって,基礎 的な検討や具体的方策 についての慎重 な検討が不可欠の課題 と考 える。
そ こで, まず以下スクールリーダー に求め られる職業能力の基本的性格 を検討 し,その うえで大学院修士課程 プログラムが有効性 をもちうる中身について考察 を進めることにす る。
Ⅱ.スクールリーダーの職業能力 とその基本的性格
1.スクールリーダーに求められる職業能力の概要
筆者 は,ス クール リーダーに求め られ る職業能力の内容や性格 をとらえる際,ひとまず は教育組織体 に限定 されないあ らゆる組織体 に共通す る管理者 (manager)に求め られる それを基盤 とす ることが適切であると考 える。そ こで,比較的簡明な見解 を提示 している 関本 昌秀の管理能力の構造論 を採用 したい (次頁図 1参照)。
この関本の管理能力の構造論 を基礎 に してス クール リーダーの典型 としての校長 を想定 した場合,「顕在 的 レベルの能力 ・性格」については次の ように解釈で きると考 える。
① ア ドミニス トラテイブ ・スキル (経営技能)・・‑ ・‑学校 としての特性や学校 に影響 を 及 ぼす諸力 を広 い視野か ら的確 に捉 え, 自校 の適切 な教育 目標 を設定 し,その達成 を目 指 した総合的な経営構想 (ビジ ョン)や経営戦略 (ス トラテジー) を樹立 し,それを所 属職員 に明確 に示す技能である。したが って,経営理論や組織理論 に明るいだけでな く,
管理者の 役割行動
管理者の役割 行動 を直接的 に支える顕在 的 レベルの能 力 ・性格
顕在的能力 ・ 性格の基礎を なすポテンシ ャル ・レベル の能力 ・性格
図1 管理能力の構造
アドミニ ヒユーマ テク二力 役割期待 モチべ‑ バイク リ 人 柄
管理能力の素材
〔出典〕関本昌秀 「キャリア ・ディベロップメン トと中高年層」
r組織科学」第13巻第2号,19r79,p.25.
とりわけ教育理念 についての深い理解が備わっていない と,十分適切 に発揮 され得 ない 技能 といえる。
(参 ヒューマ ン ・スキル (協働関係構築技能)・・・・・・・・・学校 としての統合性のある教育機能 を具現するために,主 として所属職員 間における協働関係 を構築する技能であ り,適切 な他者理解 ばか りか管理者 自身の偏 りのない 自己理解が前提 とされる技能である。
③ テクニカル ・スキル (専門的技能)・・‑ ・‑学校業務の具体的処理 に必要 とされる専門 的知識 ・技能 を指 し,具体的には指導内容の構成や指導方法 ・技能,事務処理,施設 ・ 設備の管理等の諸側面 における巧み さをいう。
④ 役割期待の認知力‑・‑‑学校 において, 日々生起 し変化する事態 に即応 して,自らが どのように振 る舞い, どのように貢献すればよいかを鋭 くとらえ,行動 に移 し得 る能力 をい う。
G) モチベーシ ョン・・・・・・・・・所属職員個 々の特性や 日常の勤務状態 を的確 に把撞 して,彼 ら が意欲的に, また自主的に職務に専心 で きるよう,気軽 に相談 に応 じた り激励するなど
して,動機づ けることをい う。
⑥ バイタリテ ィ・・・・・・‑文字 どお り,学校の管理職 として,また学校組織の一員 として, 妥当な気力 ・迫力 ・体力 を備 えていることをいう。
⑦ 人柄‑‑‑学校 を構成する人々 (教職員ばか りか児童生徒 も含 む) との 日常的交流 に おいて,親 しさや温か さを感 じさせ るパーソナリテ ィをい う。〔西穣司,1995;246‑247 頁参照〕
ところで, この管理能力の構造論 と学校経営 におけるリーダーシップ論 との関係 につい て, ここで検討 してお きたい。 もともとリーダーシ ップ とは,「集団 (ない し組織体)の 目的 を達成するためメ ンバーを導 く影響力」 を指す。 また, リーダーシ ップは単独の個体 (リーダー)のみの行動現象ではな く,メンバーの行動や集団 として追求 される課題 の性格 ・ 内容 とも絡み合 って出現する集団現象であることを深 く承知 してお くことが肝要である。
したが って,優れた リーダーシ ップ現象が認め られる場合 には,その集団のメンバーの成 熟度や集団が解決 しようとする課題の性質 との関連性 において リーダー行動 の効果や適合 性が高い とい うことになる。 〔西穣司,2000;20頁参照〕
この見地か らすると,今 日の学校管理者等 に期待 されているリー ダーシ ップは,単 に既 存の秩序 や手順 に沿って効率的な業務処理が行 われればよい とするような性質の ものでは ない と考 え られ る。〔佐古秀一,2000;164‑167頁参照〕 なぜ な ら,従前 の学校慣習や手 法では適切 に処理で きない事態が増加 し,さらに父母 ・地域社会等の さまざまな関係者や 関係機 関等 との協働努力 を通 じて優れた教育効果が追求 されるべ きである と考 えられるか らである。 よって,これ まで以上 に高度で柔軟性 を備 えた リーダーシ ップが,今 日強 く求 め られているとい うことがで きる。そ うすると,前述の関本 の管理能力の構造論 との関連 でいえば,主 として① ア ドミニス トラテイブ ・スキル,② ヒューマ ン ・スキル,③ テクニ カル ・スキルの各スキルが複合的に織 り合わされて,その学校組織体 メンバーの成熟度や 課題内容 に十分適合 した リーダー行動 を通 じて優れた リーダーシップが期待 で きる と考 え
ることがで きる。
2.スクール リーダーの職業能力の発達機序 (仮説)
すで に概略明 らかに したス クールリーダーに求め られる職業能力 は, どの ようなメカニ ズムが作動することによって発達するのであろうか。 この課題の解 明については種 々議論 のある ところではあるが,筆者 は簡潔 なが ら説明力が高い と評価で きるピクル (Pickle,∫.) の見解 に基づいて発達機序 をとらえたい。この ピクルの見解 を凝縮 して示 したのが,次の 図2である。
この図の 「職務行為次元」は,教師 としての 日常の職務活動の遂行ぶ りや巧み さを指す のであるが,筆者が とくに注 目 したいのが,そ うした行動 を支 えている内面的な 「個人特 性次元」と 「内的思考次元」である。 これ ら2つの次元 は,基本的 にパーソナ リテ ィ面で の成熟が機軸 となっていると理解で きる。そ うすると,前述の関本の所論 における とくに リーダーシップに関わる① ア ドミニス トラテイブ ・スキル,② ヒューマ ン ・スキル,③ テ クニカル ・スキルにおける高水準の発達 には,本人 自身の具体的職務経験 を通 じての意味 深 い経験学習が不可欠 と考 えられる。 そ うした意味深い経験学習 を可能 にす る方法 は,吹 の3つである。すなわち,指導 ・助言の 「傾聴」,的確 な 「観察」,丁寧 な 「(自己)省察」
である。 〔Arends,氏.L.,1988;pp.55‑60参照〕
以上の ような見地か らすると,スクールリー ダーの養成 ・研修 には,単純 に大学院修士
図2 教師の就職前から就職後に至る成熟の発達的諸要因
人職 教務助手 く段 階)
教師 成熟教師
高(専門的成熟度)低
〔出典〕Pickle,J.1‑TowardTeacherMaturity",JoLma/OfTeacherEducal妃m, VoJ.36,No4,Ju一y‑August1985,p.58
課程 プログラムが不可欠である, とす る論拠 は見 出 され得 ない。 む しろ, 日常の職務経験 を通 して, また優 れた先輩や同僚職員 との温か くも厳 しい切瑳琢磨 の相互作用 を媒介 とし た,本人の意味深 い経験学習の結果 として優秀 なス クール リーダーが輩出 される と見 るこ とがで きる。 しか しなが ら, この ような優 れたス クール リー ダーは, どの教 師で も等 しく 到達 で きる と見 る ことはで きない ように思 われる。た とえば,佐野勝男 らの研究 において 指摘 されている 「変 えるの に相当の努力 を必要 とす る面」(理解力 ・洞察力 ・意志決定力 ・ 意志決定の実行力 とフィー ドバ ック能力 ・調整力 な ど),.さらに 「ほ とん ど変 えることの で きない面」(基本 的な 「頭 の よさ」,思考 の方向性 な ど) も十分考慮 しなければならない と考 える。 〔佐野勝男他 ,1970;124‑125頁参照〕
Ⅲ.現 職 教 師 に とって の大 学 院修 士 課 程 プ ロ グ ラムの 限 定 的効 用 と改善 課題 一教師にとっての 「研究知」 と 「実践知」の関係性を中心に‑
1.大学院修士課程 プログラムの限定的効用
筆者 は,教 師の職能発達 のため, また優 れたス クール リーダーの養成や研修促進のため には,やは り大学 院修士課程 プログラムは相応 に有効 である と考 えている。 ただ し, ここ でい う有効性 は,現在 までの ところ十分 な論拠 をもって, しか も普遍性 のあ るもの (つ ま り,どの大学院で,どの ような指導者の指導 を受 けたか に関わ りな く)とまでは言 えないが。
この筆者の認識 をいっそ う詳 しく説明す るため に,教貞の教育実践 を支 える3種類の知 識 とい うグ リフ ィン (Grifh ,G.A.)の所 説 を援用 したい。彼 に よれば,教 師の教育実践
を支 えている知識 には3種類 あ り,その内容 は次 の ように説明で きる としている。
蓄積的知識 (fundedknowledge)・・‑ ・‑科学的知識 ない し理論 的知識 と表現 して もよ
い もので,主 として大学等の研究機関か ら提出 される論理的 に整序 された,教育実 践 に関わる体系的知識 を指す。
技芸的知識 (craftknow一edge)・・‑ ・ ‑ 個 々の教 師が教育実践 を積み重 ねるなかで工夫 ・ 改善 を経て獲得 して きた性質の技能的な知識であって,属人的性格が強い。
認識 力 (perception)・・・‑‑知識 とい うよ りは能力 とい うべ き性質の もので,教育実践 の特定場面での即時の適切 な対応 を支 える感受性 ・理解力 ・判断力 を指す。〔Grifh, G.A.,1983;pp.245‑247〕
筆者 は,上記の 「蓄積的知識」は 「研究知」 に,そ して 「技芸的知識」と 「認識力」は 併せて 「実践知」と呼んで よい と考 える。 この 「研究知」と 「実践知」 とい う視角 か らと らえ直す と,筆者 自身非力 なが らこれまで約20年指導 を担当 して きた大学院修士課程 プ ログラムは, きわめて効果的で成功 して きた とまでは言 えない ものの,次の よう な一般的 効用 はあった と考 える。
す なわち, まず 「基盤的学識の更新 ・拡充」 (教師が担当 している教科等 の基盤 となる 学問分野の最新の研究成果 に触れた り,理解 を深めるなど),「生徒 と社会現実 をとらえ直 す契機 の提供」 (教 師が 日々従事 して きた学校教育 をめ ぐる社会状況や生徒 を取 り巻 く発 達環境 の変化等 についての認識の再構成の促進),そ して 「教 師の 自己認識 ・自己理解の 深化」(とくに修士論文の作成過程 を通 じての, 自分 自身の問題関心の整理や教 師 として の適性 ・能力の現状 についての冷静 な認識の獲得 な ど)の効用である。 〔西穣司,1990;
105‑107頁参照〕
さらに,上記の一般的効用 にとどまらず,教師にとっての 「研究知」と 「実践知」との 関係 とい う視角か ら見 ると,次の点における効用があることを強調 したい。す なわち,教 師が 日頃の実践過程で何 とな く感 じていた 「気づ き」や 「つ まず き」 を大学院での学習 を 契機 に して 「研究知」と照 らし合わせ,一定の実証科学的な手続 きを踏 んで研究 を進めて ゆ くことに よって (これ を 「教 師 による実践的研究」 (teacherresearch)と呼ぶ),実践感 覚が豊かで しか も本人にとって も冷静 な反省 を経 た新 たな知見 を見出せ るような成果が得 られるとい う効用である。 この 「研究知」追求のプロセス を経た教師の教育実践 は,それ 以前 とは異 なる質の 「研究的実践」(practicewithresearchmind)の性格 を帯 びて くると考 え られる (先 に参照 した ピクルの見解でいえば 「哲学的 ・科学的行為」の水準 に近づ くと い える)。 〔高久清書,1990;233‑244頁参照〕
この ような 「教 師による実践的研究」の簡略化 したプロセスを図示す ると,次 の図3の ように表現で きると考 える。
ここで,筆者が直接大学院修士課程で指導 を担当 した現職教師による 「実践的研 究」 (4 件 )のエ ッセ ンス を簡潔 に述べてお きたい。
① 小学校高学年女子児童 の男性担任教員 に対する忌避的態度 に関す る研究知見 ‑‑‑
小学校高学年女子児童のなかには,発達面での思春期傾向の著 しい者が含 まれ てお り,彼女 らは男性の担任教貞 を一人の異性 ととらえて行動す ることが結果
図3 教師の職能発達における 「実践知」と 「研究知」の関係性モデル ー 教師の 「実践的研究」(teacherresearch)を媒介として‑
大学院 ・M…..…「
(研究志向機関)
(研究知)
省,離れる (主客分化の
反省的段階)
器二′llllllllll●llll●1‑●
学 校 (実践志向機関)
cra托knowledgeperception
③再び結びつく (実践知)
(主客が再び結びつく反省段階)
①結びついている
(主客未分化の前反省的段階)量IL̲
teache「p「actice 日常実践
r4'M.‑I..‑〜.."'‑IM‑.≡‑I‑4'.!‑‑‑I‑.'4‑‑‑‑‑'‑‑‑i
的に学級集団の凝集性 を低下 させ る働 きが認め られる。〔新井一昭,1995参照〕
② 学級経営 における,児童 ・生徒 の 「受容 と要求」との関係性 についての新 たな知見
‑‑‑ 自己組織性論 の見地か ら学級集団の構造や性格 をとらえ直す と,一定の 条件が満 たされれば教師一生徒関係 における相互主体的 ・相互依存 的 ・相互協 力的関係性創 出の可能性がある。〔堀川明博,1998a,1998b,1999参照〕
② 児童 ・生徒 の学習評価 における教 師の側 の 「見つめる意志」「対話 と綴 り」 そ して 全的で豊かな解釈 と次の有効 な指導の手立てにつながる 「ス トー リー化」を通 して,学習評価 の今後のあ り方 に重要 な示唆 を与 える知見 を詳細 な事例研究 に 基づいて提起 している。〔谷 内口まゆみ,2003a,2003b,石川優子,2004参照〕
2.今後の大学院修士課程 プログラムの改善課題
① 「研 究知」の洗練 ・蓄積 とそれ らを現職教師が効果的に修得できる教材 や学習方 法の研 究開発
筆者は, これ まで考察 して きた ように,大学院修士課程 プログラムが現職教 師の職能発 達促進 に寄与する一定の効用があったことを踏 まえて, さらにその改善 ・充実のために少
な くとも次の3つの課題 に取 り組 むことが必要であると考 える。
残念 なが ら, これまで現職教 師が 「研究知」を的確 に学 び, 自らの 日々の教育実践 との 関係性 を追求 しようとして も,たいていは学術研究の形式や専門的概念等が重視 されてい るので,なかなか容易 には接近で きなかったといわざるを得 ない。 また,現職教 師 にとっ て切実な各学校 レベルや学年 レベルでのカリキュラムの性格や修正 に資す る明快 な 「研究 知」 の提示がぜ ひ必要 と思われる。 さらに,今 日的なテーマ としては,個 々の教 師の 日々
‑の教 育活動 の検討 ・修正 につ なが る児童 ・生徒 の学習促進 のための評価 (assessmentfor
leaning)の原理 と有効 な方法の開発研究 なども,大いに期待 されると考 える。 もちろん,
これ らの課題の克服 は,決 して容易ではないが,大学院の側での意識的 ・継続的な努力 に よって,今後地道 に取 り組 まれることが望 まれる。
② 次の3要件 を充たす 「実践的研 究」 を促進するプログラムの開発
a 高水準 の 「研究知」と 「実践知」 を具 えた教 師教育者 (豊 か な実務経験 を有す る大学 院教員) による 「注意深い継続的指導」が行 われるプログラムであること
b ス クール リー ダー (候補者 )の個 人特性 に深 く配慮 した,「最適 な不 適合」(optimal mismatch)の原則が適用可能 なプログラムであること
C 実習 ・事例研究 ・シャ ドウイングな どの フィール ド ・ワークを重視 しつつ, しか もそ のアセスメン トをきめ細か く追求す るプログラムであること
③ 「研 究知」と 「実践知」との豊 かな交流 ・相互発展 を支 えるフォーラムの構築 これまでの ように学校 ・教育行政機 関 ・教育関係団体 ・大学 (院)等の関係諸機 関が, それぞれ別 々に取 り組んではいて も,積極 的な交流や協働的努力 を積み重ねてゆかなけれ ば,わが国の学校教育全体の質的向上 は困難であると思われる。 そ こで,関係者 ・関係諸 機 関相互の率直な交流 を図るための,互恵的な情報交換か ら協働 的研究開発 をめざす機構 を地域ブロック単位で設置 し,長期的視野 に立 ってスクール リー ダーの養成 ・研修 の促進 を図ってゆ くことが肝要ではないか と考 える。そのための基本構想 や,場所 ・機会の提供 者の役割 をとくにこれ まで現職教師対象の修士課程 プログラムを担 って きた大学院が受け 持 ってもよいのではないか と考 える。
ⅠⅤ.スクールリーダーの養成 ・研修促進のための若干の展望
一結びに代えて一
筆者は,正直 に言 ってスクール リーダーの養成 ・研修のための 「専 門職大学院」の性急 な創設 には賛成で きない。なぜ なら,米 国に代表 されるようなプロフェ ッシ ョナル・スクー ルの伝統 ・実績がわが国にはない し,本年 4月か ら発足する法科大学院について も今後い くつ もの困難 な課題が待 ち受 けている と認識 しているか らである。〔天野郁夫,2002参照〕
したが って,形式 を重 ん じるのではな く,すでに約20年以上 にわたって積み重 ね られ て きた大学院 レベルでの現職教 師のためのプログラムの改善 ・充実の地道 な努力 を積み重 ねなが ら,徐 々に関係者 ・関係諸機関 との連携 ・協力関係 を築いてい くことが肝要 と考 え る。 こうした基盤が整えられることな く,ただ形式的に 「専 門職大学院」を創設 した とし て も,わが国の教育界全体の理解 ・合意 ・協働体制 を欠いては,期待 される効果 は限 られ た ものにならざるを得 まい。
しか も, これまでの現職教師対象の大学院修士課程 プログラムについて も,制度 的には 検討 し直 されるべ き問題点があることをここで確認 してお きたい。す なわち,任命権者 に よって職務研修 として派遣 される教 師 については,2年派遣 と実質1年派遣 (つ ま り,大
学院設置基準第14条の適用 による) との区分があること,さらに同 じく現職教師であ り なが ら本人が 自主的に研修休業制度 を利用 して (給与等の経済的援助 を受けることな く) 修学する制度が併存 していることは,教育行政当局側の一定の理 由づけがあるにせ よ,筆 者は本来的に公正 な制度 とは言い難い と考 える。 また,大学院修士学位 を取得 した教師に ついての給与等の待遇の扱いに差異 を設 けることを是 とする見解があるが 〔麻生誠,1998;
45頁参照〕,筆者 はやは りわが国の教員社会での十分 な理解 ・合意 を欠いたそ うした措置 は,決 して適切 とは言えない と考 える。 したがって,今後は現職教師対象の大学院修士課 程 プログラムについて,大学院その ものの自主的改善努力が当然必要であるが,それ以外 の関係諸機関等 との連携 ・協力関係 を強化 しなが ら,いっそう公正かつ実効性の高い制度 ・ 内容の展開がめ ざされるべ きであることを指摘 してお きたい。
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堀 川明博 1999 「子 どもの 自律性変容 に及ぼす教師 との関係性 に関す る一考察 ‑あ る小学校 の学級経営 事例分析 を通 して‑」上越教育経営研究会編 『教育経営研究』第5号,48‑56頁。
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八尾坂修 2003 「(課題研 究2 教員養成 ・研修 の再構 築)大学 と教育委貞会 ・学校 との連携 の意義 と 役割」 日本教育行政学会編 『(日本教育行政学会年報第29号)地方分権政策下 における自治体
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谷 内ロまゆみ 2003a 「小学校 におけるカ リキュラム経営 の継続的改善 に関する研 究 ‑カ リキュラムの 評価 ・改善促進要因に着 目して‑」上越教育大学大学院学校教育研究科修士論文。
谷 内口まゆみ 2003b 「子 どもの学 び と教師の働 きかけ‑カ リキュラム改善 につなが る教 師の実践的思 考様式 に関する事例研 究‑」 日本学校教育学会編 『(学校教育研 究第18号)揺 れ動 く現代社会
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柳 田幸男 2001 『法科大学院構想 の理想 と現実』有斐 閣。
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