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学位論文の要旨

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Academic year: 2021

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続紙 有□ 無□

(様式6号) 「課程博士用」

学 位 論 文 の 要 旨

専 攻 名 システム工学 専 攻 氏 名

石川

いしかわ

あゆみ ○

学位論文題目

建築空間の内観に対する視覚印象と音場による聴覚印象の相互作用に関する基礎的研究(

Basic study on interaction of visual impression for interior and auditory impression for sound field in architectural space

本研究の目的は、建築空間の室内音場に対する聴覚印象に与える空間仕様等の視覚情報の影響を明らか にすること、建築空間の視聴覚環境における視聴覚相互作用の存在、およびその作用が生じる条件を明ら かにすること、そして建築空間の視聴覚環境における視聴覚相互作用による印象変化を引き起こすメカニ ズムに対してモデルを提案するとともに、従来の建築音響設計の指標に対して、視聴覚相互作用による効 果を取り入れた新たな設計指標の提案を検討することである。

我々は日常生活の中で多様な都市・建築空間に遭遇する。室内の環境条件は様々に分布し、在室者はそ れらの違いを五感を通じて主観的に捉えている。認知科学の分野では、外界から受ける刺激に対して人間 の五感を通じて得たそれぞれの主観印象の間には相互作用が生じる場合があり、異なる様相(モード)間 で互いに影響を及ぼし合う効果(クロスモーダリティ)の存在が明らかにされてきた。特に、音に対する 印象は、視覚の影響を受けることが分かっている。

W. C. Sabine

が残響理論を確立して以来、建築音響学が発展を続ける中で、建築空間の幾何学的条件

と音響構造の関係が明らかにされ、建築音響設計を支援する多くの指標(残響時間など)が開発されてき た。しかし、これらの指標にはクロスモーダリティの影響が考慮されていない。一般的にはその影響は少 ないと考えられているが、音場特性(反射音構造)と室内の広さや形状等の仕様との間に存在する物理的 な関連性を経験として蓄積する人間の脳は

2

つの様相で捉えた室内の視聴覚情報を強く結びつけると考 えられ、クロスモーダリティの影響は決して無視できないものと筆者は考えている。しかし、室内の音場 と内観に対する主観印象の関係性についての包括的な知見はこれまでのところ見当たらない。もし、建築 空間の視聴覚環境において有意な影響・効果が存在すれば、建築音響設計においてその考慮は然るべきで あるとともに、効果的な利用も考えられ、これを明らかにすることは有意義であると筆者は考えている。

また、バーチャル・リアリティー(VR)技術を活用したサービスが近年増加している。特に不動産業 界においては建築空間を表現する様々な

VR

コンテンツが実用化され、今後更に普及・展開することが予 想される。現状ではこれらのコンテンツの大半は視覚情報のみを提供するに留まっているが、聴覚情報を 付加すれば更に臨場感の高い空間体験を提供できると考えている。しかしながら、建築空間の

VR

におけ る視聴覚情報の整合性等に関する研究はほとんど行われていない。

本研究では目的を達成するため、音源の種類によらない反射音構造としての室内音場を聴覚情報(聴覚 刺激)、空間の広さや質感などが読み取れるパノラマ画像を視覚情報(視覚刺激)として、実験室におい て仮想的に建築空間の視聴覚環境を構築し、視聴覚刺激の組み合わせ条件や刺激の提示条件(単独提示と 同時提示)毎に視聴覚印象を測定する主観評価実験を実施し、その結果に対して統計的な分析を行い、考 察を行っている。本論文の構成を以下に示す。

1

章では、序章として本研究に関する研究背景及び本研究の位置づけ、本研究の概要を示す。

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続紙 有□ 無□

(様式6号-続紙) 「課程博士用」

氏 名

石川

いしかわ

あゆみ ○

2

章では、視覚情報が聴覚印象に与える影響を明らかにするとともに、視覚刺激と聴覚刺激の組み合 わせの不整合によって生じる違和感と聴覚印象の変化の関連性について考察するため、被験者に対して聴 覚刺激のみを提示する条件と視覚刺激と聴覚刺激を同時提示する条件において聴覚印象を測定する実験 を行った結果と分析を示す。実験結果より、予想残響時間と聴覚刺激の残響時間の差が比較的小さい条件 下において違和感が小さくなるとともに、刺激の提示条件間における聴覚印象の変化が大きくなる傾向が あることなどが明らかになった。

3

章では、建築空間の聴覚印象に対する視覚情報の影響に加えて、視覚印象に対する聴覚情報の影響 についても考察するため、測定する評価項目の範囲を聴覚印象のみならず視覚印象にまで拡張して、視聴 覚に通様相性のある多数の形容詞対を用いて主観評価実験を行い、視聴覚刺激の提示条件間における印象 変化及び評価構造の変化について分析を行った結果を記述する。実験結果からは、印象変化が生じる、す なわち視聴覚相互作用が認められる評価項目(印象)とそうでない項目があることが分かった。また、予 想残響時間と聴覚刺激の残響時間の差の大小に応じて視聴覚刺激の組み合わせを

2

つのグループに分け、

それらの同時提示における実験結果に対して因子分析を行うと、その差が小さいグループでは視覚・聴覚 に関わらず、同じ形容詞で表現される印象の評価項目は同一因子を抽出した。視覚刺激から予想される残 響感と聴覚刺激から受ける残響感がほぼ一致する、つまり両刺激の整合性が高い(違和感が小さい)条件 においてのみ、同じ形容詞で表現される視聴覚の印象は高い相関性を持つことをうかがわせた。

4

章では、第

2

章と第

3

章で得られた結果をふまえて、視聴覚相互作用による評価構造の変化を明 らかにするため、第

3

章のような形容詞の限定をせず、幅広い形容詞を用いて主観評価実験を行った結果 を示す。因子分析の結果、「好ましさ」は視覚刺激の単独提示においては視覚的な「明るさ」と関連する が、同時提示においては違和感と強く関連し、符号の異なる因子負荷量を持って同一因子を抽出した。ま た単独提示から同時提示に切り替わることで、視覚に関わる評価項目が抽出する因子が

1

つに集約される 傾向が見られた。聴覚刺激に対する評価項目は、提示条件に関わらず独立した一因子を抽出する傾向が見 られたが、同時提示における予想残響時間と聴覚刺激の残響時間の差が小さい視聴覚刺激グループのみの 実験結果に対する因子分析では、視覚印象の「広さ」 ・ 「開放感」と聴覚印象に関する評価項目から同一因 子が抽出された。

5

章では、第

4

章までに得た知見を総合して、予想残響時間と聴覚刺激の残響時間の差に対する提示 条件間の印象変化の関係を示すと共に、視聴覚統合の有効範囲を検討したうえでその範囲内外における視 聴覚相互作用を引き起こすメカニズムのモデルを提案した。さらに、視覚情報の存在によって生じる残響 感の変化量(主観量)を、これに相当する残響時間の変化量(物理量)として示し、視聴覚相互作用の効 果を取り入れた新たな設計指標について検討した。

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章では、本研究のまとめ及び今後の課題を示した。

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