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西ドイツにおける監査規定の改正について

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西ドイツにおける監査規定の改正について

その他のタイトル Prufung des Jahresabschlusses im Aktiengesetz

著者 高柳 龍芳

雑誌名 關西大學商學論集

巻 11

号 4

ページ 349‑364

発行年 1966‑11‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00021512

(2)

349 

西 ド

ツ イ

に お

け る

監 査

規 定

の 改

正 に

つ い

て ︵

高 柳

一九六六年一月から施行されることになった西ドイツ改正株式法については︑

解説が各誌において発表された︒ここでは︑今回改正された法規の中で︑決算監査制度に関するもので︑特に重要

なものだけを限定して取り上げた︒

さて︑法定監査制度に関しては︑我が国では︑商法に基く監査役監査制度と証券取引法に基く公認会計士監査と

八 七 六 五 四 三 ニ ー

監査に関する株式法規制について 監査結果についての報告 監査の範囲について 機密監査報告書について 公示監査報告書について コ ン ツ ェ ル ン 決 算 書 の 監 査

結 語

その性格や特長についての分析や

西ドイツにおける監査規定の改正について

(3)

350 

が併存している︒これと共に会社制度に関して会計を規制する法規が︑

算書に関する規則﹂に従って財務諸表の作成を要請し︑他方︑﹁財務諸表等の用語︑様式及び作成方法に関する規

則﹂に従って財務諸表の作成を要請している︒このことは︑会社会計制度と会計監査制度が法制度上分裂して施行

その点︑西ドイツにおいては︑会社を規制する法規が株式法一本にまとまっているため︑法定監査制度も︑この

株式法にもとづいて規制されるので︑極めて明確な形態をとると共に︑財務諸表も一種類を作成すればよい結果︑

監査制度の運用が極めて有効に施行されていると言えよう︒

西ドイツにおける公認会計士による決算監査は︑株式法の規定の中に繰入れられて年度決算書の確定と関連づけ

られている点︑我が国の公認会計士監査制度が︑決算書類の確定とは全く関連を持たないのと対象的である︒

まず︑決算監査についての概略を述ぺれば︑株式法はつぎのような規定をもっている︒

決算監査の対象は︑年度決算書・営報業告書および会計書類︵一六二条一項︶であり︑その監査内容は︑会計報告

( 1 )  

についての原則準拠性

O r d n

u 品

召 品

Bi gk ei t

と合法性

Ge se tz mi iB ig ke it

の遵守についての検証であるが︑なお︑会

社の状況について誤解を生ぜしめる可能性がある場合にも︑これに関して検査しなければならない︵一六二条二項︶︒

監査を受けるに当っては︑取締役は︑監査証拠となる一切の証憑書類と財産物件を提示すると共に︑決算監査人

は︑取締役に対し︑必要な情報と証明を求めることができる︵一六五条一・ニ項︶︒

規定にもとづいて確立されるものであり︑もし︑被監査会社の取締役が︑何らかの理由によって︑監査実施範囲の

監 査 に 関 す る 株 式 法 規 制 に つ い て

されていることを示すものである︒

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

決算監査人の監査権限はこの 一方は﹁株式会社の貸借対照表及び損益計

(4)

351 

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

制約をはかった場合︑もしくは︑いつわりの情報や証明を提供した場合には︑決算監査人の意見が限定され︑また は拒絶されるのは当然のことながら︑その結果︑取締役に対しては︑不正確な説明をなしたものとして︑罰金刑又 は禁錮刑に処せられることになる︵四

00

条三項︶︒この点︑我が国の場合︑取締役の監査範囲制約に対抗する方

法として︑監査人が意見を限定し︑又は差控えるだけに終るのと比較して︑西ドイツの場合には︑監査人の監査権

( 2 )  

限を強く支えているものがあると言えよう︒

つぎに︑決算監査人の選任は︑株主総会により行われる︵一六三条一項︶︒この場合︑不公正な方法で選任が行

われた疑いのある時や︑株主総会が選任を行わなかった時には︑裁判所が選任を行う(‑六三条ニ・三項︶︒我が

国における監査人の選任が殆んどの場合︑取締役社長か取締役会であるのと対象的である︒

決監査監人は︑資格のある会計監査人

W i r t s c h a f t s p r i i f e r

または会計監査会社

W i r t s c h a f t s p r i i f u n g s g e s e l l s c h a f t

限られ︑株主総会又は裁判所により選任されることによって決算監査人

A b s c h l u B p r i l f e r

という会社機関の地位に

立ってその職責を果すことになる︿一六四条︶︒

さらに︑この決算監査人が︑外形的独立性を失なっている場合には︑決算監査人となることができない︒すなわ

ち決算監査人が個人である場合には︑被監査会社の役員または被用者であるか︑過去三ケ年の間にその地位にあっ

た者︑被監査会社と結合関係にある企業の役員︑所有者又は被用者である者︵一六四条二項︶︒監査会社である場

合には︑この監査会社が︑被監査会社と結合関係にある場合︑監査会社の役員が個人である場合の関係すなわち一

六四条二項に抵触する場合などが外形的独立性を失なうとされている︒この点の独立性に関しては︑我が国の公認

会計士法に基くところの独立性の要請よりはかなりゆるいようである︒

なお︑監査人の精神的独立性の保持に関しては︑誠実公平な監査を行う義務と︑秘密保持の義務が課せられてお

(5)

352 

査報告書はその役割を果す︶となる目的をもつものではない︒

( 3 )  

り(‑六八条一項︶︑この義務違反については︑民事上︑刑事上および行政上の処罰が適用される︒

注山合法性とは︑法律上定められている規定や定款の遵守を指し︑株式法のみならず︑商法・民法・経済法・税法の中で会社 会計に関連ある諸条項を意味する︒原則準拠性とは︑慣習上︑一般に公正妥当と認められている社会慣行・原則・基準に会

計 処 理 が 違 反 し て い な い こ と を 示 す 原 理 で あ り ︑ 例 え ば 正 規 の 簿 記 の 原 則 な ど を 指 す ︒

③監査人の権限については︑拙文﹁監査人の権限についての一考察﹂企業会計第一七巻第八号を参照されたい︒

③監査人の義務については︑拙文﹁ドイツ公認会計士の責任﹂監査第二巻第十号を参照されたい︒

監査が終了すると決算監査人は監査報告書を作成しなければならない︒西ドイツ株式法にみられる決算監査人の 監査報告書は︑我が国及び米国における公認会計士の作成する監査報告誉とはその性格をかなり異にしている︒

一般に監査報告書は︑監査の結果として︑財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であると共に︑監査人 が自己の意見に対する責任を正式に認める手段である︑と言われる︒この監査報告書は︑財務諸表が企業の財政状 態及び経営成績を適正に表示しているか否かについて︑外部の利害関係者に報告すべき目的の下に作成されるので

あ る

か ら

その内容は簡潔明瞭でわかりやすいものでなければならない︒

一般に証券取引法に基く法定監査の目的は︑外部の利害関係者︑特に投資株主の保護におかれるところから︑監 査報告書は︑外部に公表することをもって足り︑その他︑経営者の経営活動への理解を高めるための資料︵内部監 その点︑西ドイツ株式法に基く監査報告書は︑会社機関である取締役および監査役に提出されて︑経営活動への

理解を高めるための資料となるところの極めて詳細かつ綿密な監査報告書

Pr gu ng sb er ic ht

(以下機密監査報告害と

監 査 結 果 に つ い て の 報 告

西 ド

イ ツ

に お

け る

監 査

規 定

の 改

正 に

つ い

て ︵

高 柳

(6)

353 

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

称する︶と︑年度決算書に付記されて一般に公表されるところの簡潔な監査報告書

B e s t

a t i g

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v e r m

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( 以

下 公

監査報告書と称する︶とに別れて二元化する︒この後者の公示監査報告書が我が国の﹁監査基準﹂に示される監査

報告書に比較されるものである︒

この西ドイツに特異な機密監査報告書は︑会計報告についての原則準拠性および合法性に関する批判と︑取締役

の情報と証明の提示の有無︑年度決算書項目分類と説明を行うと共に︵一六六条一項︶︑会計に直接関係なくとも︑

会社状況についての重要な誤解︑取締役の重大な法律違反を認めた時には︑これについても記載し

項︶︑その結果作成された監査報告書は取締役に提出される︵一六六条三項︶のである︒この監査報告書は︑取締役

が︑自ら作成した営業報告書と共に︑監査役に提出するのであるが︑それ以外は︑たとえ株主総会であろうとも提

示されることはない︒全く会社外部の眼に触れることはなく︑会社内部において機密的に保持されるだけなのであ

る︒この意味で機密監査報告書は公共性をもつものではない︒

つぎに︑公示監査報告書が︑決算監査人の署名を附して年度決算書に付記される︵一六七条︶︒監査の結果とし

て除外事項の有無により︑無限定意見︑限定意見あるいは意見拒絶の内容をもつ監査報告書が作成される︒この公

示監査報告書が︑外部の利害関係者の利害を保護する目的のもとに公共に発表される監査報告書である︒

最後に︑決算監査人と被監査会社の間で年度決算書および営業報告書に関する規定の解釈につき意見の相異が生

じた場合には︑監査人又は取締役のいづれからでも︑その申立てにより裁判所が決定を下す方式がとられている

︵一六九条︶︒ちなみに︑裁判所の判決は︑公認会計士協会専門委員会の専門意見書と共に︑監査実施の指針とし

て重視され︑監査慣行に繰入れられてゆくのである︒

以上︑決算監査制度について大略の紹介をなしたのであるが︑

つぎに︑旧株式法と新株式法の間で変更された監 ︵一六六条

(7)

354 

使用せねばならぬ﹁監査の対象

Ge ge ns ta nd

なお︑細部に亙ってはいくたの変更が行われているが︑変更の内容は︑

旧法と新法とでも殆んどその主旨を同じ くするものであって︑新たに設定された規定は︑﹁従属報告書﹂と﹁コンツェルン決算書﹂の監査ぐらいである︒

以 下

︑ ここでは︑重要と思われる項目として﹁監査の範囲﹂・﹁監査報告書﹂および﹁コンツェルン決算書の監 一九三七年株式法︱︱︱一五条によれば︑会計記帳︑年度決算書及び営業報告書中年度決算書を説明せる部分を対象

とする会計報告事項に関する監査が義務づけられており︑なお︑同一四

0

条三項において︑営業報告書に記載され た会社状況と営業経過の中で︑会社の事情について虚偽の記載があったり︑年度決算害に表示されている会社状況 を誤解するかもしれないような場合には︑意見の限定又は拒絶が行われる︒

したがって旧株式法においては監査の実施範囲がどこまでなのか︑すなわち︑会計報告事項だけでよいのか︑会 社状況及び営業経過についても監査を行うのかは明瞭でなく︑したがって︑営業報告書もすべて監査されるのかど

( 1 )  

うかは多くの意見の存するところであった︒

そこで︑新株式法においては︑監査人が義務づけられている﹁監査の範囲

Um fa

ng

﹂と監査人が監査資料として

という名称を区別して用いることによって︑その関係を明確にして いる︒それによれば︑﹁監査の対象﹂の中には︑営業報告書が︑帳簿類︑年度決算書と共に含まれることになり︑そ の﹁監査の範囲﹂としては︑年度決算書︑帳簿類と共に︑営業報告書のうち﹁明細報告

Er

l

te ru ng sb er ic

ht

﹂の部

四 監 査 の 範 囲 に つ い て

査﹂を取り上げ︑

その問題点を探ってみたい︒

査関係の規定のうち︑重要な問題を取上げてみたい︒

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

/  

(8)

355 

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

関係などについての説明が必要とされる︒ 分に関する原則準拠性と合法性の有無に限定したことである︒その他の部分︑すなわち︑営業報告書のうち﹁状況 報告

La ge be ri ch

t

﹂については︑会社状況についての誤解を招く表示がなされた場合についてのみ監査の拡張がな

される︒この部分の監査は︑本来的には監査役による業務執行の監督領域に属すると考えられている︒

( 2 )  

ここで︑営業報告書

Ge sc ha ft sb er ic ht .b

l

ついて一言しておく必要がある︒

西ドイツ株式法では︑監査役は︑取締役の業務執行を監督し(‑︱一条一項︶︑かつ︑会計報告事項の監査(‑︱

一条二項︶をなすべき職責を負う︒したがって︑監査役が︑取締役の行為を監督する基礎となるものが営業報告書

であると言える︒

通常︑営業報告書は︑﹁状況報告﹂部分と︑﹁明細報告﹂部分にわけられる︒

この状況報告は︑年度決算書と直接関係をもつものではないが︑取締役の業務執行に関係をもつ重要な事項がす

べて記載される︒その︱つは会社状況と営業経過であり︑他は︑営業年度終了後に発生した重要事項の記載である︒

具体的に列挙すればつぎのようなものがある︒

すなわち︑収益と費用の総括的分析的相関関係︑収益性と流動性の動向︑生産高・注文高・操業率.売上高など

の趨勢︑を始めとし︑重要な契約事項の締結・経営の拡張や縮少・企業の併合・支店営業所の増設など重要な経営

方策︑重要な訴訟事件の発生︑利益変動の激しい経営部門︑不慮の事故︑営業外活動による重要な損失の発生事情

などが記載される︒さらに︑労働協約︑共同決定法をはじめとする従業員の雇傭関係︑給与関係︑厚生年金・保険

営業年度終了後の重要事項としては︑土地売買︑投資の変動︑使役または利益協同体への参画︑重要な契約︑異

常な損失の発生などが挙げられよう︒

(9)

356 

つぎに︑明細報告の部分は︑重要な内容として年度決算書の項目を説明する︒我が国の場合を考えれば︑ こ の 部

分は︑﹁財務諸表規則﹂の中に規定される財務諸表の附属明細表に当るものと考えてよい︒この部分が︑監査役によ

る会計監査の対象となると共に︑決算監査人によっても検討されねばならぬ監査実施の範囲に属するのである︒

その具体的内容は︑第一に年度決算書の個々の項目についての説明︑第二に法律により特に規定された特別事項

について記載しなければならない︒

前者については︑特に︑価値修正および減価償却︑特別償却︑準備金・引当金の設定・変動・構成・解消など︑

利益分配契約や損失引受契約による収入・支出など異常な費用収益項目などのように︑明細なしには理解できない

項目についての説明は︑省略することができない︒

つぎに︑後者の法律に規定された特別事項としては︑貯蔵株・自己株式の変動状況・相互的資本参加の有無︑条

件付資本参加の場合の引受株式︑認可資本の状態︑現存する享益権︑年度貸借対照表上不明瞭な責任関係︑現・旧

役員関係の総所得︑結合企業との関係︑コンツェルンヘの参加態様︵一六 0 条三項︶などの説明を記載する︒

この営業報告書の明細報告と特別事項に関する合法性および原則準拠性の検証が決算監査の実施範囲に属すると

共に︑状況報告の中に︑誤解を生じたり︑不真実の事実が含まれている場合には︑これもまた監査の対象となるの

である︒この点︑新株式法は︑監査の対象として営業報告書を含めたのであるが︑監査の範囲としては︑原則とし

て︑会計に関する事項の検証に限定しているので︑主旨としては︑旧株式法と全く異なるところはない︒

したがって︑﹁監査の範囲﹂と﹁監査の対象﹂という名称を用いて区別して︑ 一見明瞭化されたようにみえる概念

規定も︑監査の範囲を会計に関する事項の検証にしぽり︑監査の対象を会計に直接関係をもたない事項にまで拡張

する限り︑実践的にはさして実益がないように思える︒会社状況や営業経過の監査をめぐって過去に多くの論争が

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

(10)

357 

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

もたれたのであるが︑決定的見解はなく︑結論としては︑監査を拡張するか否かは監査人の誠実な職業家としての 判断に期待するより外なく︑言葉の上で明確にされた監査の範囲も︑実践上は今後とも困難な問題を残すであろう︒ 注

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1 2 8 .

 

旧株式法によれば︑ この監査報告書は︑取締役および監査役の両者にそれぞれ手交されたのであるが︑取締役は

この決算監査人による監査報告書を︑自ら作成した営業報告書に添えて監査役に提出すれば足りるので︑今回の改

正によって︑この監査報告書は取締役に対してのみ提出されればよいことになった︵一六六条三項︶︒

この機密監査報告書は︑決算監査人が︑監査の終局的結果として︑会計報告事項の原則準拠性と合法性の遵守の

程度を︑精密な根拠を示すことによって確認したものである︒さらに旧株式法と違う点は︑特に年度決算書の項目

分類とその説明を行うべき条文を新たにつけ加えたことである︵一六六条一項︶︒

る事実であって︑ これは︑すでに慣行となってい

この慣行を法上に確認したにすぎず︑主旨において旧株式法と変るものではない︒

さ ら

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規 定

と し

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︑ 監

査 人

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助 言

義 務

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る ︒

決 算

監 査

人 が

監 査

活 動

中 に

企業の生存を危険におとしいれたり︑企業の発展を害するような重要な事実︑法律及び定款に対する取締役の重大

な違反を認識させるような事実を確認した場合には︑

五 機 密 監 査 報 告 書 に つ い て

これらについて報告をしなければならない︵一六六条三項︶︒

(11)

358 

書に記載するのである︒ こ

の 点

に 関

し ︑

公 示 監 査 報 告 書 に つ い て

コ ﹂ ﹁ 言

これを取締役及び監査役にしら

この規定は︑旧株式法にはないが︑監査実践上すでに慣習となって行われていたものを︑法文化したものである︒

は会社の機関であるから︑

し た

が っ

て ︑

一九五四・十ニ・十五の連邦裁判所の判決が慣行の基礎となった︒この判決によれば︑決算監査人

その機関地位としての責任︑さらには︑また︑被監査会社に対する契約義務の両面から

特別の誠実義務が生じ︑

この誠実義務が基礎となって助言義務が発生する︑と述べている︒この判決によると︑破 産の発生またはその可能性のごとき重大な場合に限定しているが︑アドラー・デューリンク・シュマルツは︑業務 執行︑収益性・流動性状況に対し重大な危険の可能性を認識した場合であっても︑これを経営者に対し報告するの

( 1 )  

が職業理念上当然であるとしている︒なお︑企業の危険︑発展の阻害については︑

せる目的をもって︑また取締役の重大な法違反については︑

ここに新しく規定された決算監査人の助言義務もすでに慣習となっていたものを明文化し︑監査報

Ad

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S ・   61 9.  

告書に記載すべき一要素として義務づけたにすぎない︒

注 田

これを監査役にしらせる目的をもって︑機密監査報告

この監査報告書は︑外部の利害関係者の利益を保護する目的をもって公表される監査人の意見の総括であって︑

これが︑我が国の﹁監査基準﹂にみられる監査報告書に当ることは︑すでに述べた通りである︒

監査の終局的結果として︑除外事項が存在せず無限定の確認を証明できる立場に決算監査人がある時には︑年度 決算書につぎの付記をなすことによって︑会計処理の原則準拠性および合法性の確認をしなければならない︒

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

1 0

 

(12)

359 

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

ばならない︵一六七条二項︶︒ 区分﹂を極めて簡潔な型で表現しているとも理解できる︒ て

い る

﹂ ︒

帳処理︑年度決算書および営業報告書は︑私︵私達︶の義務にしたがった監査によれば︑法律および定款と一致し ている﹂(‑六七条一項︶︒この新株式法における確認の証明に関する規定は︑実質的には旧株式法と異なるもので はない︒ただ旧株式法においては︑確認の証明に関する文言については︑その内容を規制しただけで表現方法につ

いては何の定めもしてはいなかった︒

そのために︑慣習上︑つぎのごとき文言が使用されていた︒

﹁会社の帳簿︑書類及び取締役により与えられた情報を基として︑私︵私達︶が義務にしたがった監査をした終局 的結果によれば︑記帳処理︑年度決算書および営業報告書中年度決算書を説明している部分は︑法律規定と一致し

この文言は︑会計監査人協会専門委員会がその意見書

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1

6/ 19 33

を発表して以来︑統一的に使用さ

れてきたものであるが︑今回の改正に当り︑文言形式をも規定したのである︒それに応じて︑﹁会社の帳簿︑書類お よび取締役により与えられた情報を基として﹂監査が実施されるのは︑すでに監査の範囲のところで︑法律により

( 1 )  

定められているところであり︑簡潔を尊ぶ公示監査報告書にあえて記載する必要はないとして省かれたものである︒

我が国の監査基準を引き合いに出せば︑﹁範囲区分﹂に属する個所が省略され︑﹁意見区分﹂に属する個所のみが監査 報告書の内容となっていると考えればよい︒ただし︑﹁義務にしたがった監査をした﹂という文言があるので︑﹁範囲 なお︑監査実施の途上︑又は結果︑除外事項が発生した場合には︑監査人は助言を行うと共に︑

それが容れられ

ない場合には︑公示監査報告書において確認を限定するか︑より重要な場合には確認の証明について拒絶しなけれ

(13)

360 

コンツェルン決算監査人は︑監査を行う必要がある︒

注 山

Be gi 甘

dn

g.

一 三

一 ︑

一 三

四 ︑

したがって︑株式法に基く監査の行われていない個別 拠性及び合法性をも確認しなければ無意味となる︒そこで︑ 礎となった各企業の決算書についても監査を行う必要がでてくるのである︵三三六条四項︶︒

ただし︑右の場合︑個別決算書が株式法に基いて︑あるいは︑株式法に応じた原則に基いて監査されている場合

には︑個別決算書の監査を必要としない︵三三六条三項︶︒

決算書に関しては︑ コンツェルン決算監査人は︑ コンツェルン決算書の基 条︶が遵守されているか否かを監査する︵三三六条二項︶︒ 定を遵守しているか否かを確認するためには︑そのコンツェルン決算書に所収された個別の企業の決算書の原則準

し か

る に

コンツェルン決算書が︑それに関する諸規 コンツェルン決算監査人は︑ ることもできる︵三三六条一項︶︒ 新株式法がコンツェルン会計規定︵三二九条以下︶を採用したことにより︑決算監査人には新しい職務領域が発

生した︒コンツェルン企業に関する規定は︑旧株式法︵一五︑五一︑六五︑八 0 ︑九五︑一︱二︑一︱四︱二八︑︐

一三七条︶にもみられたが︑制度化された実質的な法定監査と結びつけた形では存在しなかった

ので︑今回の改正はこれらの規定を統一し︑詳細な規定を設けたのである︒

コンツェルン決算書及びコンツェルン営業書は一人又は数人のコンツェルン決算監査人により監査される︒原則

としては上位会社の決算監査人がコンツェルン決算監査人を兼ねるが︑上位会社の株主総会は他の監査人を選任す

コンツェルン決算書およびコンツェルン営業報告書に関する規定︵三二九ー三三四

七 コンツェルン決算書の監査

酉 ド

イ ツ

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け る

監 査

規 定

の 政

正 に

つ い

て ︵

高 柳

(14)

361 

西ドイツにおける監査規定の政正について︵高柳︶ 注田図

八 結 語

項 ︶ ︒ 査について︑決算監査人に一の監査権限と二の解説請求権の両方を与えていた︵草案一五三条四項︶のであるが︑ ある企業間の決算監査人の監査権限はどうなるであろうか︒はじめ︑政府草案においては︑ 取締役に対し情報を求めうる解説請求権とをもつことはすでに述べた通りである︒この場合︑

( 2 )  

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は企業の法的独立性を阻害するとの理由を主張して︑ 法曹および経済両委員会

以上のような関係から︑上位会社のコンツェルン決算監査人は︑株式法に基いて監査をうけた企業に対しては︑

一切の監査権限が附与されたのである︒ 取締役に対する解説請求権のみを︑株式法に基く監査をうけていない企業に対しては三三六条四項により例外的に

取締役に対する解説請求権のみならず︑

なお︑上位会社のコンツェルン決算監査人は︑下位会社の決算監査人に対して解説請求権をもっ

Be gr un du ng

 

規定の些細な変更についてはなお多くあるが︑重要な規定の変更は以上の通りである︒コンツェルン決算書の監

査のごとき︑今後の実践にその動向がかけられている重要な規定も新しく設けられたけれど︑

規定については︑ その内容において旧株式法のそれと殆んど変っているところはない︒監査の範囲︑監査人の選任︑

監査人の権限と責任などに関しては基本的にその方向は変化していない︒ 一の監査権限は新株式法から削除された︒ 通常の年度決算監査の場合に︑決算監査人は︑

その他の監査関係の ︵三三六条四 コンツェルン企業の監 コンツェルン関係に 一︑企業の会計帳簿と財産物件一切についての監査権限と︑こヽ

(15)

362 

それでは︑西ドイツにおける法定監査制度のもつ目的それ自体も亦︑変革を受けていないのであろうか︒

一九三七年の株式法の制定と共に︑西ドイツの法定監査制度は確立したと考えられるが︑ この法定監査のもつ社

会的性格は当然に株式法の目的概念に規制されると言えよう︒当初︑株式法の任務はナチス国民経済的社会観を反

映し︑何よりもまず︑共同経済確立目標に応じた経営態様を国家的見地から保護せんとするにあった︒

一九三七年株式法は敢えてナチスの国家経済的社会観を代表するものではなく︑国民経済の発展の結果として必

然的に到達せざるをえぬ帰結として株式法が成立したのであって︑その性格は極めて近代産業社会にマッチしたも

一九三七年株式法は﹁指導者原理﹂に基ぐ﹁株主総会の権限

縫少﹂﹁取締役地位の強化﹂﹁無名性の排除﹂などの施策からみても︑株主保護の立場を強く打ちだすものではなか

株主保護を重視すべき社会的要請が表面化したのは第二次世界大戦によるナチス崩壊後と考えられる︒したがっ

て旧株式法においては株主保護という社会的要請は蔭をひそめていたと言える︒アドラー・デューリンク・シュマ

ルツが﹁法定監査の究局目的は︑もはや債権者や株主の保護のためにのみあるのではなく⁝⁝それよりもなお多く

経営︑従業員並びに国民と国家の全般的利益のためである︒⁝⁝債権者や株主の保護はこのような広範な目的設定

(1) 

の下位乃至は内包概念に属する﹂とのべているように︑法定監査の目的が︑米国や我が国のように︑投資家保護を

直接の契機として制定されたのとは事情が異る︒

しかるに︑その後における経済政策︑社会政策に対する考え方が変り︑自己金融による資金調達だけでは︑拡大

する経済発展に大きな支障をきたし︑資金調達の手段として株式による投資の方法を利用することの重大性を認識

せざるをえぬ時期に入ってきたのである︒株式所有を国民大衆に血耳及促進させることにより︑企業の茫大な資金需 っ

た ︒

のであるとの見解もある︒ともあれ︑いずれにせよ︑

西

(16)

363 

西ドイツにおける監査規定の政正について︵高柳︶

要の達成を計って︑今回の改正がなされたのである︒これら一連の措置が︑

報提供の改革︑三︑個々の株主および少数株主の保護の規定となって現れたと言えよう︒

一 五

右のごとき株式法改正の視点にたつならば︑監査自体に関する規定にそれほどの改正がなされていなくとも︑株 式法自体の性格の変化︑すなわち株主保護を前面に抽しだした株式法の性格づけと共に︑会計諸規定遵守の保証を 目指して制定されたところの法定監査制度の任務もまた当然に変化せざるをえない︒

とにかく︑近代財務諸表監査の目的は︑企業外部の凡ゆる利害関係者の利益を保護するものであると言われるが︑

中でも特に企業への直接の利害関係者としての株主がその焦点にあると考えられる︒今回の株式法の改正に基いて︑

ところで︑前述したように︑

監査制度の目的もまた︑必然的に株主保護に重点を移動したことは否定

d きないであろう︒

ここに問題となるのは︑西ドイツ特有の監査報告書のあり方である︒我が国におい ては︑公認会計士は企業の財務諸表を監査した結果︑専門的意見を外部に公表することによって︑

その責任を果

すことができる︒しかるに西ドイツにあっては︑外部に公表する監査意見

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以外に︑取締役に

対してもまた︑監査結果についての報告

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を行わねばならない︒しかもこの後者の報告内容は極め 近時︑我が国及び米国においても︑公認会計士の指導的立場が強調されているが︑

の指導的立場は︑

いうなれば西ドイツの監査人 その内容は必ずしも同じとは言わないが法によってその実践を規定されていると考えてもよいの ではないだろうか︒監査役や取締役が会計について無知だったばかりに︑幾多の企業危機に直面せざるをえなかっ た歴史的経験から︑専門家たる監査人による会計上のあるいはその他経営上の解説や分析を必要とするに至り︑そ

れが漸次機密監査報告書の形をとり︑現在にひきつがれているのである︒ て茫大な監査資料の集積となって企業に保存されるのである︒

一︑株主地位の強化︑こ︑株主への情

(17)

364 

︵ 終 ︶

しかしながら︑西ドイツにあっても︑最近とみに計数的管理や内部監査制度の整備がとなえられるようになって

きた︒会計制度の整備や内部監査制度が充実の方向をたどる場合︑決算監査人と内部監査人との協働の関係︑報告

書内容のあり方などを通して︑この機密監査報告書は︑現在のようなあり方で存在の余地がなお残るのであろうか︒

あるいはまた︑西ドイツにおける国民経済的要請は︑なおも決算監査人を︑会社機関として位置づけることによ

り︑企業への協力者乃至は経営者への助言勧告者たらしめて︑監査人の会社内部への教示とも考えられる機密監査

報告書の存在を一層必要とする方向へたどらしめるのであろうか︒この問題は︑西ドイツにおける監査制度の特異

な面を示すものであるが︑ その動向は今後の実践にゆだねられるであろう︒

西ドイツにおける監査規定の改正について︵高柳︶

参照

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