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監査意見における適正性 概念について

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(1)

岬 2クー   20  

監査意見における適正性   概念について  

森   実  

Ⅰ ほ じ め に  

現代の財務諸表監査の目的ほ,企業が利害関係者に公表する財務諸表に対し   て,独立の職業的専門家としての会計士が意見を表明することに・よって−信頼性   を賦与することにある。こ.の会計士の専門的意見ほ,財務諸表が企業の経常成   績および財政状態を適正に表示しているか否かについて行なわれる。したがっ  

て,この監査意見に.おける適正性概念こそが財務諸表監査の中核的地位を占め   るものということができる。ところが,これまでぬ.,適正性ほあたりまえの概   念として.深く議論されず紅きたのであるがノ最近,適正性が問題としてとりあ  

(1)  

げられることが多くなっている。これは最近の目まぐるしい会計理論の発展に   対応して,財務諸表監査の目的ともいうべき適正性の概念を本質的紅再検討し  

ようという動きを示すもののように思われる。   

本稿でほ,適正性概念の動向が,実時,監査思考の変化を背景に.しているも  

(1)久保田音二郎,「監査報告基準における適正表示の構造」,『包民経済雑誌.』,昭和44年6    月。久保田音二郎,「監査理論としての適正表示の基礎研究」,『産業経劉,昭和43年12    月。久保田普二郎,「公正の会計公準と適正表示の監査」、『産業経理』,昭和45年1月。大    矢知浩司,「監査証明における「適正」の意味と会計原則」,『企業会計.』,昭和45年5月。   

桜井弘蔵,「英・米・加三国の監査報告基準紅おける「適正性概念」について」,『産業経    理』,昭和45年2月。これらにおいてことりあげられた主要な外国文献ほつぎのようなもの    である。DR Scott, The Basis for Accounting Principles〃.Accounting Review,   

Dec.1941、Arthur Andersen and Co.,Accounting and Reporting Problemiof    Accounting Profession,1964。Arthur Andersonand Co.,ThePostulate of Acc,   

Ounting,1960.C.H,Stan1ey,Obiectivityin Accounting,1965.A。J.Briloff,The    Effectivieness ofAccounting Communication,1967.J巾W.Pattilo,The Foundation   

Of FinanCialAccountng,1965.H.E..Arnett,=Th占Concept of Fairness ,TheAc    COunting Review,Aprilユ967.E。L.Kohler, Fairness〃,TheJournalof Accoun,   

tancy,December1967.   

(2)

監査意見における適正性概念紅ついて  

21   

−− ごノ ー  

のであることを指摘するとともに・,適正性概念の分析および構造紅ついて若干   の試論を展開することにしたい。  

ⅠⅠ適正性概念の支持構造  

適正値概念は,−・般に,財務諸表自体の問題として.,換言すれば,会計構造   の問題として出発し,そして会計構造のみに関連する問題であるかのように思   われがちである。   

しかし,元来,適正性概念ほ,監査の側から生じた問題である。すなわち,  

適正性概念は,会計士の監査報告書における企業の会計に.対する監査人として   の結論の表現の問題として生じてきたものである。また,監査報告書の構造に   おいても,それが監査の概軍区分を受けて意見区分が記載されるようになって   いることからも分かるように,適正性概念ほ.,単に.会計構造によっても支持され  

(2)  

る概念であるに.とどまらず,監査構造によって−も支持されて.−いる。   

もちろん,適正性概念が,本質的に,会計構造に.よって基本的に.支持される   ものであることはいうまでもない。それは,監査構造ほ,単に.こ.の適正性を支   持するばかりでなく,むしろ,それを規制する面が強ぐでてくるからである。  

いわば会計構造の適正洩が監査構造というフィルタ−を通して,監査意見にお   ける適正性として−あらわれるというこ.とができる。したがって,適正性概念ほ.,  

会計構造と監査構造とによって二重に支持され,かつ規制されていること紅な   る。   

ところで,このような監査報告書に.おける監査の結論の表現としての適正性   軋該当する文言は,会計士監査の歴史の過程において少しずつ変化してきてい   る。もともと,監査報告書の表現は,それが公表を意図している場合にほ,  

きわめて−\般的かつ抽象的なものになってしまう性質をもっている。しかし,  

そのような性質のものであっても,なおそのような表現の変化の背後にほ,そ   れと密接な関連をもった監査思考の動きを秘めていると考えられる。したがっ  

(2)このような考え方を明確に示しているのがコp∵ラJ7:ある。E.L.KohleI, Fairnes・   

S‖,TheJoumalof Accountancy,December1967.   

(3)

鴇43巻 策1・2・3号  

ー22−   22  

て,詳細な議論を展開するまえ軋,これまでの会計士の監査報告書にあらわれ   た適正性に該当する文言の変化の概略をたどりながら,適正性概念の分析の手   がかりを求めることに.したい。  

Ⅰ王Ⅰ適正性概念の変避   1 兵実かつ正確な表示   

英国の株式会社の監査制度ほ.,1844年の会社法の規定にはじまり,これが会   計士監査の契機になったことは周知のとおりである。ところがこの1844年の法   律でも,また1845年の法律でも,監査報告書の内容についてほ別段なに・も規定  

していなかった。監査報告番の内容についてほじめて規定を設けたのほ,1856  

(3)  

年の会社法の附属定款雛形のB表の第84条であった。   

ここでほ,監査役ほ,取締役が提出した貸借対照表が法痩の規定に.したが   い,かつ会社の状況を責実かつ正確に・表示しているかどうかについての意見お  

よび監査の実施に.必要な情報および説明を月文締役に報告すべきものとしてい   た。ここに監査の結論として,貸借対照表の「兵実性および正確性」について  の意見を表明しなければならないことが明らかにされた。   

実務的にほ,当時の監査報告書は,単純かつ形式的なものであり,「貸借対   照表の金額を帳簿と比較し,その−激することを認めた」といったようなもの   が多かったといわれ,さらに極端に簡潔化された場合には,「監査し,その正   確であることを認めた」という記載形式が−・般化し,これより「説明書」の形  

(4) 式が発展してこきたのである。   

なお,「会社の帳簿に記載されたとおりに・」という文言が入れられるようにな   ったのは,すべての鈍行に監査制度が要求されるように、なった1879年の会社法  

(5)  

以後のことであった。  

(3)H..C.EdeyandProt Panitpakdi, British Comparly Actounting and the Law   1844〜1900=,Studiesin History of Accounting,edited by Litt王eton and B.S.   

Yamey,1956,p.364.  

(射 A.C.Littleton,AccGuntingEvolution to1900,p。29b,p 314.拙稿,「英国における    監査役の独立性と限定監査報告苫」,『香川大学経済論叢』,昭和34年ユ2月。  

t5)H.C.Edey and Prot Panitpakdi,Op小Cit.,p。370.   

(4)

監査意見における適正性概念について   …2β− 

23  

このように,当時の適正性概念に・相当する表現ほ,「真実性」と「正確性」  

(6)  

とであり,当時の監査の目的がここにあったということができる。   

2 適正な表示   

英国において誕生した会討土監査ほ,前世寵末ごろに英国会封士によって米   国に・伝えられて急速な発展をとげた。米国では,最初曙,英国式監査のまった   くの模倣から出発し,やがて独自の貸借対照表監査をうみだしてきたものの,  

監査報告書に・つい  てほ,英国の監査報告書をそのまま引きついで使用してし、  

た。米国独自の監査報告書を考えださねばならなくなったのは,1930年代の世   界的大恐慌後の証券投資家保護目的の財務諸表監査を契機にしでである。すな   わち,1932年から1934年までのAIAの株式取引所協力特別委員会の酒動の過   程に・おいて提示された監査報告書ほ,概要区分に続いて,つぎのような意見区  

(7)  

分の記載を含んでいた。   

「以上のような監査に・もとづいて,貸借対照表,損益計算書および剰余金引   算書は,われわれの意見においては,当該会社の1932年12月31日現在の財政状   態およびその年度の経常成績を,−・般に認められた会計原則に.準拠して適正.に   表示してし、る。」   

ここでほ,財務諸表の「適正性」が監査の目的であることが示されて\おり,  

しかも「適正性」がト叔に蔑められた会計原則」と\の関連においてあらわれ   てきている。   

3 兵実かつ適正な表示   

このように.,米国では,監査報告書は,英国式の証明書タイプのものから意   見二番タイプのものへと移行してきたのであるが,米国が会計士監査理論の発展  

の中心になるに.およんで,これが逆に.英国の監査報告書に影響を与えたとみる  

(6)拙稿,「英国の監査報告書の構造と論理」、『香川大学経済論叢』,昭和41年6月。  

(7)George Cochrane, The Auditor/s Report:Its Evolutionin the U.SいAt=,Sel  ected ReadingsinAccounting and Auditing,edited byM.E.MuIphy.拙稿,「米国    における生成期の監査報告書について」,『香川大学経済論叢』,昭和34年7月。拙稿,「米   

国における監査報告書の発展(1)(2)」,『香川大学経済論造』,昭和35年6月、12月。拙著,『   

会討士監査論』,昭和45年。   

(5)

弟43巻 発1・、、2・3弓   24  

一− ヱ・ゴ ー  

ことができる。すなわち,1948年会社法附則算9灸は,監査報告書に,財務諸   表が会社の財政状態および経営成績を兵突かつ適正に・表示しているか否か,お  

よび法規に準拠しているか否かk.っいての監査人の意見を表明すべきものとし  

(8)  

ている。   

このような英国での監査報告書に.おける表現上の変化ほ,「真実性」および  

「正確性」に代えて,「兵実性」および「適正性.」が監査の目的として示され   たということであり,実質的に.は,「正確性」より「適正性」への移行である  

ということができる。   

4 適正かつ合理的な表示   

さらに.,もっとも最近の考え方を示すものとしては,会計士国顔研究グルー  プが,1969年に発表した「英米加三国の監査報告基準」をあげることができる0   これは,財務諸表に∴ついて監査人の意見の目的として「適正かつ合理的な表示」  

(9)  

という表現を使用している。しかし,その内容自体についてはあまり明確な説   明が与えられていないが,「合理性」ということが財務諸表監査の目的として大   きく主張されるように・なってきたことほ注目されるべきである。  

以上ほ,いわゆる適正性概念の変化をきわめて.表面的かつ形式的にとらえて   きたのである。そこでほ,英国も米国もー・括して単純に変化としてとりあげた  

ので;厳密には問題ものこっているかもしれなシ、0 しかし,このような変イヒの  

なかに.,それを検討する手がかりが含まれている。すなわち,表現の変化とそ   れをもたらした要因との関連を究明することによって,適正性概念の内容をよ  

り深く掘り下げることが可能紅なるのであるd  

ⅠⅤ 炎実性と正確性  

会計の理想としては,利害関係者に.企業紅関するすべての事実をそっくりそ   の寧まの形で報告セきることであろう。したがって,単純な意味の典実性ほ,   

L8)B.Magee,Dicksee′s Auditing,1951,pこ261.  

(9;AccountbntsInternationalStudy Group,TheIndependent Auditors‡モeporting   

StandaIdsin Three Nations,1969.   

(6)

ーー ヱ5 −  

監査意見における適正性概念についで  

25  

文字どおり,事実そのままの報告ということであろう。こ・のようなことは,企   業の活動が非常に.単純かつ小規模の場合には可能であったかもしれない0 ま   た,あまり会計が複雑でなかった段階では,こ・のような単純な意味の真実性が  

追求できるものと考えられたであろう0   

このような真実性を追求するためにほ,事実の記録それ自体が非常に重要で   ある。したがってニ,個々の記録が事実に基づいて行なわれ,また,そ・の記録,  

集計お声.び報告書作成の過程に・おいて正確に行なわれることが要求される0  

これに.対応する監査ほっ いわば「事実の追求の監査」であり,その実際的方   法は「正確性の追求の監査」として行なわれる。それは,過去の個々の事実ほ,  

結局のところ記録の正確性に依存せざるをえないからである0したがって,そ  

れほ証憑書類の監査となり,帳簿の監査となり,計算の監査となり,しかもそ  れらの監査は,「正確性」を重視するので,精細な監査とならざるをえない0   

ところで,このような単純な意味の「真実性」の追求で満足されるのは,企   業とその利害関係者との関係が非常に明確かつ単純な場合であろう○すなわち,  

株主は地域的,かつ縁故的に−・定範囲に限られ,また株主と企業とがかなり固  

定的な関係に.あるような場合である。したがって,株主と企業との関係は非常  

軋密接であり,株主は企業の内容については相当に・詳細な事項にまで通じてい   るのが常である。   

したがって,このような株主にとって鱒,会計の処理方法であるとか,評価   方法であるとか,あるいほ表示方法であるということはあまり重要な問題では  

ない。かれらにとって重要な問題は,経営者または従業員が不正を行なってい   ないかどうかということ,換言すれば経営者または従業員の行為の誠実性が問   題なのである。そこで,経営者またほ従業員の個々の行為を会計的に記録して   おいて,そこに不正または誤謬が含まれていないかどうかを監査することが必   要になるのである○   

このような「行為の誠実性の監査」のために,企業内の個々の記録紅つい   て「事実の追求の監査」が行なわれ,その結果として会計帳簿に一徹するこ  

とが証明された貸借対偲表が「良夫かつ正確な」ものとしてあらわれるのであ   

(7)

貨43巻 鵠1・2・3弓  

−・26−  

(10)  

る。   

このような監査思考ほ.,英国の監査制度に伝統的にみられたものであり,ま   た,米国でも初期の会計士監査において経営者目的の現金監査として行なわれ   たさいにみられたものである。  

Ⅴ 公正性と合理性  

企業の利害関係者が渾沌な場合には,「兵実性」ほ一・義的なものとしてとら   えることができるので,これを会計的に.追求することもあながち無理とほいえ  ない。しかし,利害関係者の範囲が次席に拡大され,かつ流動的に・なってくれ   ば,利害関係者の企業に対する関係ほ,敏雄かつ多樺なものになって−こざるを   え.ない。また,それに対応して−,企業に対する利害関係者の関心も多様なもの   になって:くる。たとえば,株主グループだけをとってこみたところで,企業を支配   する事業株主もあれば株価にのみ関心のある投機株主もあり,さらに.長期的な   安定株主もある。法人株主もあれば,個人棟主,機関投資家もある。さらに.,  

優先株主もあれば普通株主もある。このように株主グル−プ自体が多様化し, 

多様な関心を企業に対し.て示しているのである。   

このような企業の利害関係者の分化かつ多様化の過程を経て,企業と利害関   係者との関係が密接でないものが次第紅増加し,その結果として,企業の内容   をあまり詳しくしらないものが増加してくる。このような関係に‥おいて,利害   関係者の意思決定の資料として会計の情報的意味が重要になるのである。した   がって,会計の情報的意味に密接な関連をもつ会計の処理方怯,評価方法およ   び表示方法などが重要な問題としてうかびあがってくる。   

ところで,多様な関心をもつ利害関係者砿対して,企業の状況に・ついて事実   そのままを示すということほ,大規模かつ複雑化し,したがってその会計に   多くの人為的な会計処理と判断が要求される近代企業の場合には,もほや不可   能なことセある。そこで可能なことは,企業の利害関係者のいずいにも偏しな  

(10)拙著,『近代監査の理論と制度』第7章「行為の裏付けとしての会封監査から情報表示   

としでの会計監査へ,」籍4牽「試査の思考の発展とその史的背景」。   

(8)

監査意見における適正性概念に.ついて   −−27_・  

27  

い公正な会計情報を提供するということである。  

(11)   

このように,会計士監査が「情報の監査」への移行をすすめてくると.き,「公   正性」の概念が重要になるのである。すなわち,利害関係者の会計情報に対す  

る多様な関心ほ,会計の処理方法,評価方法および表示方法に.おいて,それぞ   れ異なる要請をもちだすであろうが1いずれの利害関係者にとっ七も公正不偏   なものが選ばれなけれほならい。   

しかしながら,何が公正な会計であるかを明らかにするのは困難な問題であ   ろう。それほ利害関係者の諸要請を総合してきめられ挙が,そ・の総合ほ,その   時代,その国の政治的,経済的環境および利害関係者集団の思考様式および慣   習にしたがって行なわれなければならない。このような意味で,「公正性」の   内容は.,具体的には,時代および国によって移りかわっていく可変的なもので   ある。また,そうでなけれは,常に・変イヒしていく利害関係者の要請に・対tて−「公   正性」を保つことはできな∨、であろう。   

このような公正な会計構造の形成の中心に.なるのは,会計の実務および理論   の形成にたずさわるものである。そして「公正性」を判断するのにもっとも適   当な立場紅あるのは,独立の会計専門家の集団である会計士集団であることほ   いうまでもない。かれらは,、現実の政治的経済的環境を考慮し,利害関係者集   団の思考様式および慣習を判断しながら,公正な会封構造を形成していくので   ある。これが「−・般的に認められた会計原則」といわれるものである。社会的   に.会計の専門家とし七.認められ,かつ独立の判断を行なうことのできる会計士   集団の間で−・般に承認された会計構造を,社会が利害関係者のすぺてに・公正な  

ものとして受け入れるものである。   

このように「公正性」は会討構造によって支持されなければならない。換言  

すれば,会計構造を形成するさいの具体呵な論理に・よって支持されることが必  

要であろ。すなわち,多くの利害関係者の要請を会言†の目的に・とり入れ,それ  

を「公正性」にしたがって達成するということは潜局において具体的な会計構  

造の論理性によって立証されなければならない。たとえば,会計処理方法,評  

肋 拙著,『会討士監査論』,彿3章「近代監査思考の成立基盤」。   

(9)

箆43巻 第1・2・3弓   28  

丁−・2β−  

価方法および表示方法などは,会封の論理性に.よって利害関係者に・納得させる   必要がある。ここに「合理性」が要求される。   

このような関係において,「 公正性」と「合理性」とは.次第に.強く結びつい   てくる。利害関係者の分化がまだ単純であるあいだは「公正性」の主張だけで   十分であったであろう。すなわち,利害関係者間の利害調整のための「公正性」  

で間に合う。しかし,利害関係者の多様化は,利害調整を困難′疫.するので,「公   正性」を抽象化し,具体的にほ「合理性」が追求される。その意味でほ,「公   正性」より「合理性」に・重点がおかれる傾向を予想することができる0なお,  

この場合でも,「公正性」は,あとでのべるように抽象化した制度的目的として   のこることに注意しなければならない。   

複雑化した近代企業の情報としての会計に倒する利害関係者の多様な要請を   みたすためには,これまでのように「正確性」をもって応えることは.もはや不   可能セあり,「合理性」をもって応えなければならない0ここに・おいて−ほ,利害   関係者の要請に応じて,その意思決声紅対する合目的性を重視した会計処理方   法,評価方法および表示方法が形成される必要がある。   

このような「−・般に認められた会計原則」の準拠性の監査の内容は,以前の   ような単純な意味の英実性を求めるという「事実の追求」ではなくて,「論   理の追求」に重点がおかれる。表現すれば,「事実との−・致の監査」ではなく   て,「論理との−・致の監査」である。   

このような監査は「情報の監査」に対応するものであって,財務諸表を読む   利害関係者の意思決定を重視し,その合目的性という観点から「合理性」を判   断するのである。したがって,このような目的のためにほ,文字どおりの「正   確性」は必要ではなくて,利害関係者の意思決定に対して:「合理的」な情報で  

あることが必要なのである。このような理由から,財務諸表監査においても,  

分析的な監査が重視され,また内部統制組織に・依存する試査が建て前紅され,  

さらに最近のコンビュ一夕−の発展に.対応してシステム監査があらわれて小   る。これらは,すべて情報として.−の会計の「合理性」の監査のあらわれである。   

なお,このような「合理性」の重視は,さきにのべたような多元的社会にお   

(10)

一 29−  

監査意見における適正性概念虹ついて  

29  

ける利害関係者の多様な要請を背景とするものであるが,この「合理性」ほ,  

「−・般に.認められた会計原則」の枠内のものとして追求されるのでなければ  

「公正性」を維持することができないということほいうまでもない。  

ⅤⅠ適正性概念の目的と構造   1 適正性概念の目的   

常識的に考えれば,適正性とは,その財務諸表が信頼できるとか,重大な間   違いがないとか,重大な事実でかくされているものがないということである。  

換言すれば,利害関係者がその財務諸表によって意思決定を行なってもよいと   監査人が判定したことを意味する。このように最近の適正性喝念ほ,単純紅報   告それ自体を問題にするよりも,むしろ情報としての利害関係者の忠志決定に  おける有用性に.重点をおいて考える傾向がみられる。このように財務諸表紅対  

しで情報として−の「合理性」が適正.性概念において要求される。すなわち,利   害関係者が企業の状況を判断し,その結果として経済的資源が合理的に牒己分さ   れるような意思決定に対して一合理的な財務諸表であることを必要とする0その  

ことほまた,同時に,会計士儲査が保証することができる「合理性」をも意味   するものでもある。   

また,−・般に,財務諸表の適正表示はイー・般紅認められた会計原則」への準   拠性によって表現されることが多い。これほ財務諸表が利害関係者のいずれに  も偏しないものであることを,「一触に屈められた会計原則」という社会的基準   によって示しているのである。また,このような「公正性」が監査において確   保されたかどうかを示さなければならない。このため紅「一・般に・認められた監   査基準」が必要とされるのである。   

このように,「適正性」概念は,「公正性」と「合理性」を含み,それは,\  

それぞれ会計構造と監査構造とによって支持される。   

2 適正性概念の構造  

(1)会討構造に.よる「公正性」の支持   

会計構造によって支持される財務藷表の「公正性」ほ,それが利害関係者の   

(11)

第43巻 第1・2・3弓  

÷†3り一−   30  

いずれに.も偏しない公正な会計構造に.よって支持されているということを意味   する。   

ところで,「公正性」とは,その国,その時代の社会的,経済的かつ政治的   な秩序および思考様式に・よって規制されるものである。′したがって.,その「公   正性」ほ,特定の利害関係者の個々の具体的問題が発生し,それがとりあげら   れるまでほ,きわめて−・般的かつ抽象的なものとしてしかとらえることができ   ない。いわば,「正義」とほ何かといった問題に類似する性質のものである。し   たがって,「公正性」ほ,制度としてゐ会計構造の目的を示すものということ   ができる。   

このように.会計構造の制度的目的は抽象的かつ一・−一小般的なものであるので,利   害腐係者が,個々的にその内容を決めていくというようなことはできない。利  

害関係者は,制度的に「公正」なものとされたものを−・般的に承認する.しかな   い。これが「−・般に認められた会討原則」である。これは利害関係者が直接的   に承認したものではないが,会計専門家の間紅おいて−−†般に承認されているが   故に,利害関係者がこれをすべてのものにとって公正なものとして受け入れた   のである。   

このような抽象的な「公正性」は,「一・般に認められた会計原則」への準拠に   ょって達成され,「−・般に認められた会計原則」を具体的に実現するのが「合理   性」である。  

(2)∵監査構造による「公正性」の支持   

財務諸表の公正性ほ,単に会計構造に.よってばかりではなく,監査構造によ   っても支持されるものである。逆に表現するならば,監査意見において表明さ   れる財務諸表の公正性は監査構造に.よって支持される程度のものであるという   規制を受けるということである。財務諸表の公正性を監査構造が支持するため   には,会計士監査自体の「公正性」が要求される。   

しかし,公正な監査とは一・体何かということは,利害関係者のすぺてのもの  

把対して公正な監査とは何かということであり,公正な会計構造の場合とまっ  

たく同じょうに,現実の社会的,政治的,経済的な秩序および思考様式に合う   

(12)

監査意見に.おける適正性概念紅ついて  

31    − ふ仁一  

ものが「公正性」であるというように.,一応抽象的にとらえていくよりしかた   がないのである。   

やほり,公正な会計構造の穆合と同じように,公正な監査構造についてこも,  

個々の利害関係者が「■公正性」の内容を規定していくというものではない。監   査の専門家である会計士集団の問で一・般に.承認されたものを利害関係者が公正   なものと認め十これを制度的目的とするのである。これが「−▲般紅認められた   監査基準」である。この「−・般に.認められた監査基準」への準拠紅よって,監   査構造の抽象的な「公正性」が実現される。このような抽象的な「公正性」を  

目的とする「−・般に.認められた監査基準」を具体的に・支持するのが,監査構造   の「合理性」であることほ,会計構造の場合と変らない。  

(3)会計構造による「合理性」の支持   

「公正性」が会計構造の制度的目的と′して決められれば,つぎ紅,これを具   体的に実現していくことが必要に.なる。いわば「−・般紅認められた会計原則」  

を制度的目的として抽象的な「公正性」を目的とすれば,その形式的な準拠性  

だけを問題に.すればよいので,その内容にまで入っていく必要はない。・その内  

容に入ってその具体的な機能において問題になるのほ「合理性」である0   すなわち,利害関係者のすべてに「公正」な会封構造といっても,それほ,  

結局のところ,利害関係者が意思決定を行なう場合に信頼して大きな間違いを   ぉかさない合理的な財務諸表を支持する会計構造を要求するであろう。それは,  

財務諸表の作成において重大なあやまりがないということであり,また重要な   事実に′ついては十分な公開が行なわれており,企業の経営成績およ.び財政状態   を合理的に判断できるということである。   

したがって,それは完全な正確性奮たは完全な情報公開を要求するものでは   なくて,利害関係者の意思決定のための資料として合理的な程度のものとして   保証するものである。   

現在の会計構造において要求される「合理性」の程度は,「−・般に認められた  

会計原則」の内容自体である。すなわち,そこでほ現在の会計理論および実務  

に率いて認められる会計処理の原則および手続の選択可儲な範囲および妥当な   

(13)

− 3ヱーー   策43巻 弟1・2・3号   32   

会計処理および表示の方法が示される。財務諸表ほ,このような会計構造に.お    ける論理性すなわち「合理性」を実現しなけれほならない。   

すなわち,財務諸表は,利害関係者への情報提供の手段として−,利害関係者   が的確な意思決定を行なうことができるように.,期間的にかつ企業相互間で比   較することができ,合理的な情報を提供できるものでなければならない。会計   構造は,このような目的を達成するための「合理性」が要求されるのである。   

したがって,現在における「−・般に認められた会計原則」では,会計処理の原   則および手続にほ選択の余地があり,また多くの問題に.おいて見積りとか判断  

の介入を許し,さらに・将来の未確定な事象によっで影響をこうむるという限界   を有するものであっても,その組織性,体系性および合理性によって,その財   務諸表は利害関係者の意思決定にとって有用なものと、なっているのである。こ    のように有用性を確保するものが会討構造における「合理性」の支持である。   

これは最近の会計理論に.おいて有用性が非常にクロ、−ズアップされつつあるこ    とを反映するものである。  

(4)監査構造に.よる「合理性」の支持   

財務諸表の適正性,すなわちその現在における内容は「■公正性」と「合理   性」とによって構成されるのが,それはさらに㌧監査構造によって娩刺される。   

これまでのぺてきたように,会計構造によっで支持される「公正性」は,基本   的転は監査構造によっても支持されねほならず,会計構造によって支持される  

「合理性」ほ監査構造によっても支持されなけれはならない。この場合,会計   構造の「公正性」が監査構造の「公正性」により支持され,規制されるよう   に・,会計構造の「合理性」も監査構造の「合理性」により支持され,規制され    ることになる。  

監査構造における「1合理性」は,「−・般に.認められた監査基準」の具体的内   容としてあらわれる。すなわち,財務諸表の「合理性」は,「−・般に認められ   た監査基準」によって示された具体的な監査構造の「合理性」に.よって確保で   

きる程度のものである。   

現在の監査ほ,T腰に,企業の内部統制組織の信頼性を評定し,そゐ結果に   

(14)

監査意見に.おける適正性概念について 

33   −− β3−  

したがって試査によって行なわれることを特徴としている。したがって,監査   意見における適正性の内容は,内部統制組織の合理性に依存し,また試査の合   理性に依存したものであるということである。このための監査構造に.おいて   は,主として「合理性」を追求する監査にならざるをえない。   

さらに,EDPシ′ステムが普及し,かつそれが高度化してくるつれて,EDP   システムの内部に多くのコントロールが組みこまれ,企業のシステムが総合化   される紅つれて会計がそのトータルシステムのサブシステムのようになってく   ると,システム監査が中心に.なってくる。最近監査において−システム監査が主   張されているのほ,とのような動向にしたがうものである。これも,また,目   的に対する手段の「合理性」を主張するあらわれという、ことができる。  

ⅤⅠⅠむ す び  

財務諸表監査における「適正値」概念は,本質的に,利害関係者の制度的要   請を意味するものである。したがって,企業の利害関係者の構成および範臥  

さらにかれらの要請ほ,時代および国によって変化し,また相違するに違いな   いので,「適正性」の内容もこれに対応して変化し,また相違することが考え   られる。  

ところで,これまで申資本主義経済および企業の発展を辿ってみれば,会計   士監査に対する企業、の利害関係者の要請ほ,以前のように.経営者または従業員   の行為の誠実性の監査を渾沌に求めでいるのではなくて,企業の状況について   の情報の監査を求めるように,その重点か移行している。このような監査に.対   する要請が,監査思考を変化させ,適正性概念の内容を,「真実性」および「正   確性」から「公正性」および「合理性」へと移行させたのである。  

 ̄ 

セ・れは,事実そのものを意味するような単純な「真実性」が具体的に会計記   録および会計報告書の「正確性」によって満足されるのは,企業の利害関係が  

きわめて渾純かつ明確であり,また小範囲に限定されて,利害関係者が企業の   内容の詳細に通じており,さらに企業の活動自体が単純な会討処理しか必要と  

しないような段階においでである。ところが,今日の企業のように.,企業の利   

(15)

寛43巻 第1・去・3弓  

一 βイ ーー   34  

害関係が複雑化し,また広範囲におよぴ,したがって,企業の措動自体が多く   の人為的会言†処理および見積りまたは判断を必要とするような会討を要する段   階になった場合紅は,以前のような単縄な「轟実性」および「正確性」の追求   ほ不可能になってしまったのである。それに代わって,利害関係者のすべて一に   公正な会計が要請され,この目的に.適した合理的な構造を追求されるようにな   り,監査意見における「適正性」概念の内容に「公正性」および「合理性」が   入れられることに.なった。   

ところで,このような利害関係者の制度的要請を実現するためにほ,このよ   うな「適正性」概念ほ,会計構造および監査構造に.よって:支持されなけれはな   らないら したがって,「適正性」概念を構成する「公正性」および「合理性」  

ほ,会計構造と監査構造とによって支持される。そこで,監査意見に・おける  

「適正性」ほ,会計構造に.おける「公正性」およぴ「合理性」と監査構造匿お   ける「公正性」と「合理性」とkよって支持される。また,監査構造の「公正   性」ほ会計構造の「公正性」を規制し,監査構造の「合理性」は.会計構造の  

「合理性」を規制する。   

ここで,「公正性」の概念ほ,−・般に.制度的目的として抽象的な性質をもつの   で,現実にほ,会計構造把‥おける「−L般に認められた会計原則」への準拠性と   か,監査構造に.おける「−・般に認められた監査基準.」への準拠性とかいうよ  

うに.,社会的に.一腰に認められたもゐへの準拠に.よって利害関係者のすべて紅   対する「公正性」を形式的に満足するよりはかない。   

ところが,「公正性」のこのような抽象的性質のために.,監査人ほ,「公正   性」を与えられたものとして,「「椴に・認められた会計原則」および「−・般に認   められた監査基準」を無批判的に容認してしまい,そこからより積極的に・それ   らが利害関係者の制度的要請をみたす「公正」なものであるかどうかを検討し   なくなる傾向が生まれる。最近の利害関係者の要請を重視した「適正性」概念   の検討は,このような傾向の批判としてあらわれたものと位置づけることがで   きるであろう。   

それほ.,最近でほ,会計構造においても,また監査構造においても,「合理   

(16)

一一 3さ −  

監査意見における適正性概念について  

35  

性」に重点をおいて考えられる傾向が強くなっているからである0すなわち,  

そこでほ制度的目的としての利害関係者の要請すなわち「公正性」をあまり問   題に.しないで,むしろそれは与えられたものとして,このよ.うな制度的目的を   達成するための,いわば手段としての構造の「合理性」が主とし てとりあげる   傾向がでている。たとえば,会計構造においてほ,一・方でほ.,純粋理論化の傾   向がみられるし,また,情報理論の影響に・より,情報としての特性から会計理   論が形成される傾向もあらわれている。   

また,監査構造に関する議論でも,同じように・,そ・の制度的目的がとりあげ   られるよりも,むしろ,その手段としての「合理性」に・議論の重点がおかれる   傾向がある。たとえば,「合理的」な監査方法の追求として,機械的な椅査よ  

りも分析的な試査の「合理性」が主張され,これに関連して−,内部統制組織の  

「合理性」の検討が重視されるように・なっている。さらに,最近のように・ED   Pシ′欠テ∵ムが発展してきた場合には,システム自体の「合理性」の検討を主体   とした監査方法が主張されるようになってきている。   

最近の「適正性」概念においては,このような「合理性」が1つの重要な要   素となりつつあることは明らかである。しかしながら,「合理性」はいわは手   段としての「合理性」の追求におわり,目的自体の批判にまでおよばないよう   な傾向を生じるおそれがある。しかし,制度的目的である「公正性」は,時代   の変化に.つれて絶.えず変化していく可能性をもつので,常に検討されなければ   ならない0 

るのである。ここに,「公正億」を示すものとしての「−・般に認められた会計   原則」および「一・般に認められた監査基準」が,利害関係者の制度的要請に合   致するものであろかどうかを,常に・検討しなければならない理由がある。この  

ように.,監査意見における「適正性」概念は,「公正性」と「■合理性」とが調  

和されることを課題としているということができる。   

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