Se n s o r y ‑ To n i cFi e l dTh e o r y の概観 と吟味 ( 1 )
大 内 五 介
伝 統的 な知覚心理学 ,特 に精神物理学 は,知覚 の主体 とい うものを殆 ん ど顧 慮す る所が なか った。む しろ,主体 (有機 体)的要 因を統制 し排除す る事が実 験 の厳 密 さを保証す る とい う考えが潜在 していた。 この よ うな方法論 の上に立 つ心理学は,知覚 の投影的性質や個 人差を説 明で きそ うもなか った し, また実 際的 な性 格心理学や臨床心理学 と余 りにかけ離れた もの とな っていた0
戦 後 , 知覚 を規 定す る 1変数 と して主体的要因を正面か ら坂 り上 げ , そ うす る 事に よって,性格心理学や臨嵐 b理学 との間を橋渡 し出来 るよ うな知覚心理学 を開発 しよ うとす る気運 が俄に高 まった Oそ の よ うな心理学 は ニュ ー・ ル ッ ク心 理学 な どと呼 ばれ も したが,感覚一 緊張的場理論 ( Se n s o r y ‑ To ni cFi e l dTh e o r y )
もその よ うな気運 の下に提案 された 1理論 と見 る事が出来 る。事実 ,提案 者で あ る We r ne r と Wa p ne r に よって, 「この理論 は, 有機 体 の状態が知覚 の 1 部分 で あ る とい う事 を本質 的教義 とす る, 1 つ の有機 体的理論 で あ る 」( 3 6.P.
3 2 5 )と規 定 され てい る
。彼等は また,絶えず知覚 の一般理論 の必要を叫んでい る
。更に,知覚 を研究す る理 由 と して,それが単純 な行動 と複雑 な行動 との中 間的位置 を 占め るか らだ と意義づけ てい る論 文 ( 40) を見れば,彼等 の 目標 は 更に高 く,知覚 の領域 を超えた一般理論 を 目指 してい る と見 て も差支え ない と 思はれ る 。 ただ 目下 の所 ,彼等 の力点 の置 き方には際立つ特徴 が見 られ る
。そ れ は, 「知覚 の一般理論 は知覚 の投影的性質 を説 明 しなけれ ばな らない 」( 3 6.
p. 3 2 4 ) とい う点に あ る
。また有機体的要因 の坂 り上げ方に もユ ニ ークな特徴 が あ る
。それ は,理論 のタイ T 71 ,ともな ってい るよ うに,知覚 を規 定す る要因 と
して専 ら身体的緊張 ( t o n u s ) を強調す る とい う点で あ る
。1 5
この理論 が価値 あ る独創的な理論 である事 は衆 目の見 る所 である
。然 し,疑 問を抱かせ る面 もかな り多い よ うに見受け られ る
。追 ってそれ等 の点について 批判的検討を試みたいが,その前に彼等の理論 と実験 を概観 してみたい。
理論の要点
理論構成は継続的 な過程 であ り, この理論 も知覚 の一般理論 の発達 の 1階程 に ある事 は,提唱者達 も認 めてい る所であ る ( 36 ) 。事実 , この理論が 1 9 4 9 年に 始めて提唱 され て以後,かな り更新 された面が多い。例えば ,1 9 52 年の論文で は,ベ ク トルの概念や平衡化の概念が導入 され,身体平衡 と身体‑対象物間平 衡 の区別がなされ, Roe l o f s 効果の最初の解釈は訂正 され てい る ( 36 ) 。 刺激 物体 と有機 体の関係を表 した り予言 した りす る彼等の巧み な記号法に も,様 々 な摸 索の跡を見 る事が出来 る ( 3 5,32,21 ) 。 また 1 9 5 7 年の論 文では,実験事 実 を 「恒常性」 の概 念を用 いて新解釈 した りしてい る ( 21 ) 。 その他に も数 々の 変更が見 られ るが, ここでは詳 しく跡づ け る余地が ないので,入手出来た最新 の包括的な論文 ( 2 1 ) に従 って招介 してみたい。 この論文では理論は 6 つ の前 堤 ( po s 山I a t e ) 及び実験的結果を説 明す る為 の仮説的 メカニズ ムに整理 して述 べ られ てい る
。以下にその概要を記すが,その前に彼等 の巧みな記号法に触れ てお く事が便利だ ろ う
。彼等 の記号法では,有機体 の状態は0 で表 され,刺 激 対 象 物はS で表 され, 両 者 の間 の関係は,一般に OR Sで表 され る 。0 及び S の特 殊 な状 態は, 各 々に 特殊 な下附記号をつけて表す。 そ して両者 の下附記号が等 しい時は安定関 係を 示 し (e・ g ・0ⅩRS x ,Oy RS y ) , 等 しくない時 は不安定関係を示す。(e. g. 0Ⅹ Rs y , Oy RS x ) 特 に空間的方向に関す る時は,+ ,0 ,‑な どの下附 記 号が用 い ら れ
る :即ち, Oo( 身体 も頭 も兵直で正面を向いてい る, ト‑メスの分布 の均衡 な
状態), 0 .(身体が右に傾いた, 或 は頭や 目が右に向け られた, 等 の状態),
0̲ (反対 に左に傾いた,或 は向け られた,等) ,So ( 刺激対 象物が鉛直である,
1 6
或 は真正面 に あ る,等) ,S+ (右 に傾い てい る,或 は右 方 に あ る,等) ,S̲( S.
の反対) な どと表す。
〔前提 〕
Ⅰ,知覚 の場理論 的性質 の前提‑ この理論 は,知 覚 を破 り扱 うには,精 神 物理 学的 な対 象物刺 激 と精 神生理 学的 な有機 体 の状 態 との間 の関係 を考慮 しな けれ ば な らない と仮 定す る
。知 覚的特性 は,有機 体 の状 態 と対象物か ら来 る刺 激 との間の特殊 な関係 に対 応す る経験 であ る事が 前提 され る。 即 ち,知 覚的経 験 は,有機 体 の状 態 それ 自体だ けに対応す るものでは な く,飛び込 んで来 る刺 激 と関係す る有機 体 の状 態 に対応す るもので あ り,従 って関係が変れば知覚 的 経験 も変 る
oここで基本的 と思はれ る関係 の 1つ は,安定一 不安定 のそれ であ る
o安 定 関係 とは, あ る刺激 が与え られ て も,有機 体 の状 態 の関連す る局面 に 変 化す る傾 向のない場 合 のそれ であ り,反対 に不安 定 な関 係 とは, あ る刺激 が 飛 び込 んで来 る と,有機 体 の関連す る局面 に変 化へ 向 う傾 向 の生ず る事 を意味 す る。
範例として,見かけの垂直の間超について考えて見る。理想的には, 直立 した 身 体 の垂直軸に関 して相称的な感覚一緊張的分布があ り, 刺激が鉛直な棒から来る場合 ( OoRSo)に,垂直 とい う経験が起ると仮定される。更に,このような場面においては , 有機 休内の感覚一緊張的分布に変化への傾向がなく,垂直とい う知覚的経験に反映され
るのは,この安定 した関係であると仮定される。反対に傾 きの経験の場合には不安定な
殊な仕方で変化する傾向を触発する時に,傾きの経験が起る。
I I,安定 化傾 向の前提‑ 変 らない刺激 が 与え られ ,それが有機 体 の現在 の 状 態 と不安定 な関係に あ る時 は,有機 体には その状 態 を よ り安定 な関係へ と変 化 しよ うとす る傾 向が あ る と仮 定 され る ‥即 ち 0Ⅹ RSy の時は , 0 Ⅹを Oy に変 え る傾 向が あ り,その結果 ( ヤRS y に近 くな る.
Ⅲ,刺激 の感覚一 転張 的性質 の前提‑ 精神 生理学 的過程 は,外受容器 ,固
着 受容器 , 内受容 器 のいず れ の水 路 を通 る刺 激 に よ って引 き起 された もので あ ろ うとも, そ の性 質 に おい て感 覚 一緊張 的 で あ る事 が 前提 され る
。この前提は 有機体的要因と感覚的要因の相互作用の問題を処理する提唱者達の試みにその起源を持 つ と言はれるD 即ち ,知覚が片や感覚的 ,片や有機 体 的 とい うような/ミ ラ/ ミラ な 機 能のs ynt he s i s であるとい う考えを排 して ,相互作用する要因は ,見かけは異質的でも ,本質的に同一の性質のものであると仮定 されねばならない ,とい うのが彼等の考 えで あ り,そ こか ら前記の前提へ導かれ る。そ して ,感覚一緊張的 とい う点での精神生理学 的諸過程の同一性が ,片や対象物か ら来 る刺激 とい うような感覚的要因 と,片や体脂的 ( s o mat i c ) 及び内臓的な多くの内的源泉から来 る有機体的要因との相互作用を可能にす る のだ と考 えるのである。
I V,刺 激 の 2 重 性 の 前提 ‑ 刺 激 には ,余 分 (e xt r a ne ous ) 刺 激 と対 象物刺 激 の 2 瞳 が区 別 され る
。対 象物刺 激 とは注 意 され てい る客観 的 源 泉 か らの刺 激 を意味 し,余 分刺 激 とは注 意 され てい る対象 物 以外 の源 泉か らの刺 激 を意味 す る
。そ して , 瞳 々の様 相 ( moda l i t y) ● の余 分刺 激 は,対象 物刺 激 の存否 に かか わ りな く有機 体 の状 態 を変化 す る とい う風 に有機 体に影響 す るが , それ に反 し 対 象物刺 激 の効 果 は ,常 に有機 体 と対 象 物 との間 の相 互 関係 にか か わ る と仮定 され るo ここで留意すべ き事は ,2 種の刺激の違いは , 「 注意 している」或は 「 注意 し
てない」とい う心理学的働 きにかか ってお り,物理的性質によって区別されるのではな い事である。従 って ,同 じ音 も ,a ) 若 し注意され ,空間に位置を占める 1 つの苦 と経験 されるならば対象物刺激 として役立ち,b) 若 し課題が視的対象物を記述する事であ り, その間同時 に提示されている音が注意 されないならば ,余分刺激と して役立つ。
Ⅴ ,刺 激 の機 能的 等価性 の前提‑ この前提 は ,最 も一般 的 な形式 に於 てほ ,
異種 の刺 激 が ,理 想的 には ,知 覚的 に 同一 な最後 の所 産 に導 くと主張 す る もの
で あ る。 然 し更 に詳 し く言 えば ,0ⅩRSx とい う一般 公 式 か ら,論 理 的 に 3 撞 頬
の等価 性 が可 能 であ る と主張 され る :即 ち 1)有機 体 の状 態 に直接 影響 す る諸
要 因 (余 分刺 激) の等価 性 , 2) 刺 激 対象 物 に関す る諸要 因 (対 象物刺 激) の
等価 性 ,及 び 3) 余分 刺激 と対 象物 刺激 との間 の等価 性 であ る
。この前提 は 前
提 Ⅱ と暫掛 こ関連す るものであ り, その よ うな等価性 は,違 った刺 激 が感覚一 緊張 的過程 とい う同一 の精神 生理学 的過程 を引 き起す と仮定 され てい るが故 に 可能 なのであ る と言はれ る
。第 1 種の等価の証拠としては, 頭部傾斜 , 身体慣斜 ,頚筋の直接刺激 ,身体の垂直軸の 周 りの廻転的加速などの全てが ,垂直性の知覚に関 して等価な仕方で機能する,即ち, 見かけの垂直の物理的位置は,余分刺激が加えられた身体の別の反対方向にズ レるとい う事実が挙げられる。第 2 種の等価性の証拠 としては,物理的位置の非相称性 ( 観察者 の右或は左)も,形態の部分の配置の非相称性 も,見かけの 東 正面に同じように影響す る,即ち見かけの真正面は,非相称的におかれた図形の拡が っている方向‑ズ レる事実 などが挙げられる。そ して第3 種の等価性の証拠 としては,見かけの垂直に及ぼす身休 傾斜 ( 余分刺激)の効果と出発点 ( 対象物刺激)の効果の例が挙げられる,即ち,出発 点の左 と身体傾斜の右は,共に見かけの垂直を左にズ レさせる効果を持つ。
Ⅵ ,代 理的水 路放 出 ( vi c a r i o usc ha nne l i z a t i o n) の前提‑ 既 に異種 の刺 激 の 機 能的等価 性が, あ る最 後的所産 に関 して, 1つ の形 の刺激 は他 の形 の刺激 に 代 り得 る或 は代理的 に作 用す る事 を含蓄 してい るのであ るが ,更 に この前提 は 有効 な エネル ギ ‑が異 な る水 路 を通 って放 出 され得 る事 を意味す る
。即 ち,感 覚一 緊張 的諸過程 は,体躯 緊張 的 活動 に よ って も, 内臓 緊張 的活動 に よ って も 或 は知 覚的活動に よ って も表 出 され得 る事が 前提 され る
。例 えば, 1つ の反 応 様 式 が 阻止 されれ ば,活動性は他 の反 応様 式 に水路づ け られ る事が 期 待 さ れ
る
。〔 仮 説的 メカニズ ム〕
Ⅰ,余 分刺激 ‑ 余 分刺 激に対す る仮説 的 メカニズ ムを述 べ るに当 っては,
範例 と して,垂 直性 の知覚 に及 ぼす 身体傾斜 の効 果が 使はれ る
。ここで推論 の
重要 な出発点 とな るのほ,次 の よ うな神経 病理学的 臨床所 見で あ る :即 ち.潤
損傷 を持つ 患 者は しば しば,体 を一方 の側 に傾 け る とその側 に倒 れ る傾 向が あ
る;同様 に これ等 患者 は,光 や聴覚的刺 激に よ って非相称的 に刺激 され て も,
J 5 ‑ i 刺激が加え られた 側に倒 れ る傾 向があ る
。この所 見か ら学 んで,次 の 2 つ の仮
定が引 き出 され る :1)身体 トーヌスは直接 の筋 肉活動に よ って変化 され ると 同 じ仕方 で,感覚的刺激に よ って も非相称的 に変化 され得 る とい う事 ; 2)罪 相称的刺激 は,安 定 した状態 を もた らす為 には対抗力 を必要 とす る事 であ る
。この推論 か ら, 範例 は次 の よ うに説 明 され る
。前述 した如 く, 普通 の状態 で鉛 直 な棒 ( So)を見 る時 は Oo Rso とい う安 定関係が成立 し, その事が棒 の垂 直 とい う知覚 に反映 され る
。次 に身体を左 に傾 けて鎗直な棒 を見 る時 は ど うか。
体が傾 けば必然的に有機体 の状 態 の変化 を伴 う
。彼 等 の仮定 に従えば,体が左 に傾 けば,反対 の右側 の方向へ対抗的調和力が働 く
。そ して この事 は,身体平 衡軸 の右側 (対抗力 の方 向)へ の廻 転 に よって示 され る。 即ち O oか ら 0 .へ変 化 した のだか ら,So に留 まってい る刺 激 との問には 0. Rsoとい う不安 定関 係 が成立 し,それが棒 の傾 きとい う知覚 に反映 され る
。新 ら しい安定関係が成立 し,棒が垂直に見え る為 には棒 はS .の位 置 に移 動 され なければ な らない,即 ち右へ 回転 され なければ な らない。(その時 の安定関係 は0+ RS. ) 体を左 に 傾 けた まま棒 を垂 直に見え る位置 に調整 させ る と,体を傾 けない場合 よ りも右 に ズ レる とい う事実 は この よ うに解釈 され る
。勿論 この考えは,範例 と して取 り 上 げ られた垂直知覚 以外 の次元 (例えば,真正面 な ど) に も等 しく適用 され る もの と考え られ てい る
。Ⅱ,静的対象物刺激‑ ここでは先づ , Gi bs on に よって見 出 された図形順応 現 象,即ち少 し傾いた 線 を注視 してい る と段 々傾 きが感ぜ られ な くな るとい ラ 事実が坂 り上げ られ る
。例えば左 に傾い て る線 を見 る とす る。最初に見た時 ( 順応 前)は勿論OoRS ̲とい う不安 定関係があ り, 線は傾い てい る と知覚 され る。
ここでは線 は固定 され てい る為 に,有機 体の安 定化傾 向は,Ooを0̲に変化す る
。か くして順応後には O̲ RS ̲とい う安定 関係が成立 し,もはや線 の傾 きは感ぜ ら れ な くな る
。この考えは,出発点効果,即 ち,見かけの垂 直或 は真正面が,刺激対象物が
最初に出発 した位置 に よ り近 くな る とい う事実 に も適用 され る
。具体的に言え は, あ る程度 まで被験 者が 出発点 の位 置に順応す るのだ と考え られ る。 この説 明は また ,見かけ の真正面 に及ぼす図形 の非相称的拡が りの効果 に も適用 され る。例 えは,正 方形 の右縁 を被験 者 の客観的真正面 にお き,図形が左側に余計 に拡が って る よ うにす る
。す る と被験 者は非相称的に鉱が ってい るこの図形を よ り相称的 に知覚 し,右縁 は真正面 よ りか な り右に あ るよ うに感 ず る。従 って 右縁 を真正面 に合せ る よ うな課題 を与 え る と,客観的真正面 よ り左 にズ ラす傾 向が あ る ( Roe l of s 効果)。この事実 も, Oo RS ̲とい う不安定 関係が, 00 ‑0 ̲ど い う変化 に よって 0̲ RS ̲に な る傾 向が あ り,その安定化傾 向が知覚的相称 化に 顕現す るのだ と解 され る。
Ⅲ,力動的対象物刺激 ‑ ここでは,対象物 の持つ力動的性質 の空 間的定位 に及 ぼす効果が 問題に され る。例 えは,左 の方 向へ飛 んでい る鳥 の絵 を被験 者 の客観的真正面 に提 示す る と,彼 には正面 よ り左に ズ レて る よ うに見 え る
。従 って桧 を真正面 に持 って来 る よ うに教 示を与 え る と客観的真正面 よ り右に持 っ て来 る傾 向が あ る。
この事実 を説明す る為 には,更に幾つか の仮定が追加 され る。 即ち,飛 んで
る鳥 の よ うな桧 は力動的 な性質 を持つ事,そ の よ うな対象物 の方 向的力動性 は
有機 体に特殊 な仕方 で影響す る事 であ る
。よ り特殊的 に言えは,力動性 を持 っ
た 図形は,有機 体 の上 に,力 動性 の方 向へ の圧力 (一次力) を働か し,そ の圧
力 はその反対方 向へ の有機 体的圧力に よって対抗 され る と仮定 され る。 この考
えを鳥 の絵 に適用 すれ ば次 の よ うに な る。左 に飛 んで る鳥 の桧 は有機 体に左へ
の一次的圧力 を働 か し,有機 体には右へ の対抗力が生ず る。 この事 は平衡軸 の
右へ の移動 (00‑ 0.) で示 され る。従 って客 観 的正面 に あ る鳥 の絵 との関 係
は 0. RSo とい う不安定関係にな り,絵 は正面 にあ る と知覚 され ない。安 定 関
係に な る (正面 にあ る と知覚 され る)為には,絵 は右側 にズ ラされ なけれ ば な
らない。 即ち絵が S .に移 された時 に再び 0. RS. とい う安 定 関 係が 成 立 す
ゝ LJr .・f ・,
る 。
検 証 的 実 験
この よ うな理論 の正 しさを証拠づけ る為 に ,We me r と Wa pne r 等は実に移 し い実験 を遂行 してい る
。勿論 その殆 ん どは彼 等 の指導 してい るクラ ‑ク大学 で な された ものであ り,未発表 の もの もか な り多い*。 そ こで発表 された ものの 中か ら,その主 な ものを概観 してみたい。私見 に よって幾つか の群 に分け て見 る。
〔余分刺 激の効 果〕
薄 明 る く光 る棒 以外に何 の手掛 りもない暗室 で, その棒が垂 直に見え る位置 を定 め させ る実験 におい ては,様 々な余分刺激が見か け の垂直 の位置 を変 え る 効果 のあ る事が確 め られた。先づ ,片側 の耳にだけ音 を響かせ る,或 は片側 の 首 の筋 肉だ けを電気的 に刺激す る と,相対的 に (即 ち余分刺 激 を与え られ ない 統制条件 と比較 して)見か け の垂直は刺激 を加え られた側 と反対 の方 向へ ズ レ
る事が確 め られた ( 2 9) 。 また,体を傾 け る事 も見かけ の垂 直 に影響す る。 少 く とも用 い られた小範 囲の身体傾斜 ( 1 5 0と 3 00 ) では,見かけの垂直 は体 の傾 き の反対方 向へ ズ レ,然 も体 の傾 きが大 きいほ どズ レも大 き くな る
。更に, 同 じ 角度 の体 の傾 きで も,体が支持 され て る時 よ りも支持 され てない時 の方が ズ レ が大 きい事が見出 された。 この事 は,身体 の位置 とい うよ うな静的概 念 では説 明出来ず , I‑ヌス とい うよ うな力動的概 念が必要 にな って来 る と解 され た ( 3 8) . 次 に,体 の縦軸 の周 りの同心 円的廻転 も見かけ の垂 直 の位置 のズ Vを も た らす事が確 め られた。 即 ち,時計廻 りに加速 され る時 は見かけの垂 直は左 に ズ レ,減速 され る時は右 にズ レる
。廻転が逆 であれ は丁度逆 の効果 が 見 ら れ る
。か くして,聴覚的刺激や桐 牛官的刺激 の よ うな感覚的刺激 も,頚 筋 の電気
*未発表のものを含めて,報告論文のかなり詳 しい リス トは,文献( 2 1) を見よ。尚 ,日
本では,東北大学の長塚が精力的な実験的検証を続けているっ
シ ョ ックや身体傾 斜 とい うよ うな直接的筋 肉刺激 も,余 分刺激 として与え られ る時 は同 じよ うな効果 を産む事が確 め られ,機能的等価性 の仮定を支持す る も の と解 された ( 2 8) Q
更に,視覚的 な垂直 の判 断 の場合以外で も同 じよ うな効果が見 られ る事が確 め られた。 即ち, 目隠 しされ て,棒 を上下に撫 でて棒 の垂 直性 を判 断 させ る場 合柾 も,頭部 の傾 斜 ,身体 の傾 斜 ,及び身体 の廻転 な どが , 視覚的判 断 の場合 と 同 じ方 向のズ レを もた らす事が確 め られ ,この事 は , 余分刺激 の効果が視覚 とい う唯 1 瞳 の感覚的様 相 ( moda l i t y) だけに現れ るものでない証拠 と解 された (節)。
更に,類似 の効果 は,垂 直知覚 の場 合だけでな く,正 中面 ( 額 と直交す る面 即ち左右方 向での真正面) の知覚 に も見 られ る事が確 め られた。被験 者を壁 に 向 って其直に坐 らせ,壁 に貼 ってあ る紙 に 自分 の まっす ぐ前方 と思はれ る所 に 印をつけ させ る。 その際 ,眼,或 は眼 と頭 を左右 の どち らか一方に向け させ る
と,見かけ の正 中面 は相対的に反対側 にズ レる傾 向が あ る ( 35 ) 。
長塚 は 自動運 動 の方 向を指標 とす る実験 を試 み てい る
。そ して,頭部を正面 に 向けた まま体を右或 は左 に 9 0 0 廻 した状 態 で暗闇の中の小光点 を観察 させ る ど,その 自動運 動 は体の向け られた方 向 と逆 の方 向 ( 頭部 の廻 された方 向) に 動 く事が多い とい う傾 向を確 めてい る
。更に,片手に重い物 をぶ ら下げ る とい うよ うな非相称的重量負荷 の下 では, 自動運動 の方 向は,重量 を負荷 された側 と反対に な る傾 向のあ る事 を見 てい る ( 1 4) 。
〔 ( 辞的)対象物刺激の効 果〕
先づ ,垂直知覚 につい て出発点効果が確 め られた :即ち最後 に垂 直 と見 られ る棒 の位 置 は出発点に よ り近 くな る * ( 37 ) 。 同様 の効果 は正 中面知覚におい て
辛W er n e r 達の言っている出発点効果は,同じ方向だけから何回も出発 させるという, か
な り特殊な手続によって確かめられたものである事が注意されねばならない。左右か
ら交互に出発 させるという普通の手続でなされた筆者の実験では出発点効果は逆にな
る,即ち見かけの垂直の位置は,出発点より遠 くにズレる傾向の強い事が確められて
い る ( 1 5) 。
も見 られた ( 2 6 ) 。
次 で,対象物 の物理的位置が見かけの正 中面 に影響す る事が確 め られた。即 ち客観的正 中面 の右或 は左に,固定 した対象物が置 かれ る時 は,主観 的正 中面 は対象物 の置 かれた方 向に ズ レる ( 35 ) 。 非相称的に拡が る図 形 も同様 な効果 を 持つ。例えば左右に拡が る図形 の右端 を真正面に合わせ る課題 では,見かけの 正 中面 は左 (図形 の余計に鉱が って る方)に ズ Vる傾 向が ある*。 然 もその効 果は,光 線量 のか な り異 な る 3 瞳 のテス ト図形 (左右に並 ぶ 3 つ の点,輪廓線 正方形,正方面図形) で も同 じ程度に見 られ る事か ら, この Ro e l o f s 効果が, 左右 の 目に入 る光 線量 の違いに よる 十‑ヌスの不均衡 の為に起 る とい う初期 の 考えは変 更 され ,出発点効果 同様 ,有機 体 の安定化傾 向の現れ と見 る事が妥当 とされた ( 2 6 ) 。 また ,図形 の類似性 とい うよ うな 自生的 ( a u t o c b 血o n o u s ) 要因 に よって導入 され るテス ト図形 の非相称性 も,同 じ効 果を持つ事が確 め られた。
例 えば, 3つ並 んだ正方形 の端 か ら 2つに 同 じ色或 は縞模様 をつ けた テス ト図 形 を用い,その*心を正 中面に持 って来 るよ う教 示す る と,見かけ の正 中面は 類似図形 のある側 (左右方 向で の) に ズ レる
。この図形を縦に して見かけ の水 平面 を定め させ て も結果は同様 で,主観的水平面 は類似図形のあ る側 (上下方 向での)に相対的に ズ レる
。そ して この実験 の意義は,ゲ シ ュタ/ レトト理学 な どで,普通,現 象的 な術語 で記述 され る体制 の法則が,行動的術語 で測定出来 る効果を持つ事を例証 した事に あ る と主張 され る (2 5) 。
更に,垂直知覚 に効果を及ぼす幾つか の要 因 (出発点,体 の憤斜,頚 筋 の電 撃) を 1 実験 の中で同時に操作す る相互作用 の研究が為 され,それ等 の要因が 加算的効果を産む事が確 め られた。即 ち同 じ方 向に ズラす要 因が重 なれば効果 は最大にな り,反対方 向に ズ ラす要因が重 なれば効果 は相& J Lされ て相対的に少 くな る
。この事実は,機能的等価性 の仮定を支持す る よき証拠 と 解 さ れ た (
*尚 ,余分刺激と対象物刺激では,効果の方向が反対になる事にも注意 しなければなら
ない。この事実から刺激の 2 重性の前提が生れる事になる ( 36 参照) 0
3 6) * 。
〔 対象物 の方 向的 力動性の効果〕
ここでは対象物 の もつ方 向的力動性 (相貌性), 或 は教 示に よって造 られた 構 えに よって誘発 された方 向性が空間的定位に影響す る事が立証 され る。先づ 横 向 きの顔 の鼻先,或 は矢先状 の 3 角の尖端 を正 中面に定位す るよ うな課 題を 与え る と.見かけ の正 中面 は顔或 は矢先 の向 き と反対 の方 向に ズ レる傾 向が あ り.然 もそのズ レは,正方形 の よ うに方 向性 を持た ない図形 よ りも有意に大 き い事が確 め られた ( 3 6) 。 同様 な事は飛 んで る鳥 の よ うな桧 について も起 り,早 は り見かけ の正 中面 は飛 んで る鳥 の方 向 と反対方 向に ズ レる。然 も,方 向性 の 瞭味 な図形に教 示に よって 方 向性を暗示 して も同様 な効果を持つ ( 34) 。更 に同 様 な事は,水平面定位 につい て も起 る
。即ち刺激 を 目の高 さ と思われ る所 に定 位す る課題 では.上へ の方 向性を持つ 図形は相対的に下 に定位 され,下へ の方 向性 を持つ図形は上 に定位 され る傾 向が ある
。同様 な傾 向は.図形では な くて, 上 へ或は下へ とい うよ う含蓄を持つ語 (例えは,登 る.落 ち る) を刺激 とす る 場合に も見 られ るこ とが確 め られた (5) 。 また.図形 の方向的力動性は, 自動 運動 の方向を も規定す る。即 ち小図形 の自動運 動 の方 向は,図形 の方 向性 と一 致す る方 向に起 る傾 向が あ る。 図形が瞭味 な場 合に.教 示に よって方 向性 を暗 示 して も同様 な事が起 る事が示 された。 か くして,彼等 の有機 体的理論 に よれ ば今 まで記述的 に用い られ ていた物 の力動的方 向性が行動的 に測定出来 る事象 であ り,且つ,教 示に よって誘発 され る物 の"意味"も,実験的 に処理 し理解 し 得 る事が示 された と主張 され ,物 の促迫的性質 ( d e ma ndi ngq ua l i t y)や相貌的 性質 の理解へ の重要 な端 緒 をつかみ得た と主張 され る (3) 0
さて今 までは,対象物 の持つ意味 の 1 つ であ る方向的力動性が有機体 の状態
*その他に,クラーク大学では,頭部傾斜の聴覚的空間定位に及ぼす効果 ,身体廻転の
正中面知覚や物の形に及ぼす効果などが調べられているらしいが ,詳 しい事は未発表
の為に分らない ( 21,3 2 参照) 0
25
に影響 し,その事が物の空間定位や運動知覚に反映 され る事 を見て来たが,そ の逆 の事,即ち有機体 の状態が変れば物 の意味 (方向的力動性) も変 るか ど う かが調べ られた 。 先づ,飛行機や鳥 と似 てい る漠然 とした図形を薄暗い所に提 示 し,それ をいわば横 目で見 させて, どのよ うに見え るかを報告 させた。す る と眼の筋 肉の関与に依存 して,知覚 された方向性に有意 な差異が起 る,即ち, 報告 された方向性は,眼球 の編榛 の大 きい側 と反対 の方向に な る事が確め られ た ( 2 3) 。 次に, 自動運動を観察 してい る問に余分刺激 として音を与え,その 昔 の ピ ッチを段 々と高 くした り或は低 くした りす ると, 自動運動 の方向に特徴 的 な変化が起 る :即 ち,音 を段 々高 くす ると上昇的 自動運動が見 られ,音 を段 々低 くす ると下降的 自動運動が見 られ る傾 向が ある。 これは,力動的性質を持 つ余分刺激が,有機体 の状態に上下方向のベ ク 十ル とい う夙な変化を引 き起す か らだ と解 された (1 2) 0
〔 代理可能性の研究〕
代理的水路放 出の仮定か らは次 の よ うな諸実験が為 されてい る。先づ, 自動
運動は観察時 の身体活動 の程度に依存 して変 る事が確 め られた :椅子に縛 りつ
け る とい うよ うな運動禁止の条件下で 自動運動 を観察 させ ると,動 き始め るま
での潜時は短 く,それに反 し,手を動か しなが ら観察す る とい うよ うな活動条
件下では潜時が短 い。普通条件下ではその中問にな る。運動持続時間について
も同様 な順序が見 られ る。 また質的には,活動禁止条件下 では ジグザ グな どの
複雑 な運動軌跡が多 く,活動条件下では動 きが単純 にな る傾 向が見 られた とい
ラ(4) 。 自動運動 の質に関 しては,長塚 もまた,直立不動 の姿勢で観察す ると
その動 きが複雑で不安定であ り,仰臥 して観察す ると滑 らかで安定 した動 きを
示す事 を見てい る (1 4) 。 また,活蘭 な筋肉活動 の直後に汽車 とか野球 を してい
る人の絵な どを瞬間露 出的に提示す ると,被験者の報告す る運動知覚 の数は普
通 の状態 の下で観察す る対照群 よ り少 くな る傾向が確かめ られた (9) 。 また こ
れ よ り先に, Ko r c l i n等に よって, ロ ー ′ レシ ャ ツハ検査に先立 って被験者の筋
肉活動 を禁止す る と,禁止 されない場 合 よ り運 動反応 の数が多 くな る傾 向のあ る事が確 め られた が (6) , We ne r 等は この事実 も自分達 の理論 を支持す るもの と解釈 し,更に, ロr l t ,5 'ヤ ツ/、 反 応は この よ うに基本 的性 格特性以外 の有機 体 的状定則こ強 く影響 され るか ら,そ の解釈 に当 っては,そ の よ うな "非投影的 局面"に充分 な注意が払われ なけれ ばな らない と警告 してい る ( 31 )0
更に,筋 肉的活動 は,図形や語 の認知閥に も影響す る事が確め られた :活麿 な筋 肉活動 の直後に検査 され る と,寛いだ状態 で検査 された場合 よ りも認知 閥 が高 くな る (8) 。長塚 は仮現運動視に も身体状態が影響す るこ とを見 てい る : 即 ち,活動禁止 の条件下 では,普通条件下 に比 して, 2点間 の距離が よ り大 で あ って も好適 な仮現運 動が見 られ る
。逆 に,活蘭 な筋 肉活動 の直後 の状態では, 普通状態 に比 して仮現運 動 の見 られ る 2 点間距離が短 くな る傾 向 (有意 ではな いが)が あ った。 また身体 を傾 けただけで もやは り,直立姿 勢 の場合に比 して 仮現運動が見 られ る 2 点 間距離が短か くな る傾 向が あ った (1 3 )* 。
〔 情動の効果〕
We me r 等は更に,知覚に及ぼす情動 の効果に研究 を進 めてい る 。 1 つ の実 験 では,被験 者は 目隠 しされ て ステ ‑ジの上 を歩 か され る
。そ して,行 き過 ぎ ると端 か ら転げ落ち る危険 のあ る場 合 とその よ うな危険 のない場合につ いて, 歩 く距離 ,早 さ,ペ ‑スな どが比較 され ,そ こか ら,危険 の状 態 の下 では心理 的距離が縮む事が知 られた とい う ( 声 3) 。他 の実験 では,被験 者は高い台 の端 で, 見かけ の垂直及び正 中面 を定め る課題が与 え られ る
。す る と,見かけの垂直 も 見か けの正 中面 も,危険 のあ る側 と反対 の方 向へ ズ レる事 が 見 られた。然 もこ の情動効果 は,既知 の非情動的刺激 の効果 と協 働的 に働 くとい う証 拠が見 られ た。 この よ うな事か ら,情動的 な刺激 の効 果 も,非情動的 な刺激 の効 果 も,共
*その他 クラーク大学では,聴覚的余分刺激が視覚的明るさや CFF に及ぼす効果など
が調べられているらしいが .未発表の為に詳 しくは分らない′ つ ( 21,32 参照)ただ前
者については,音を聞かせた場合により明るく感ぜられる事が招介されている,
通 な メカニズ ムに よって起 る と主張 され てい る (2 4 ) 0
〔発達的研究〕
更に彼等 は成 人以外 の年令層 に も研究 の歩 を進 めてい る
。この方面 の研究 で 指導理論 とな ってい るのは,「発達 は,分化 と階層的統合が増大す る事で あ る」
とい う We r ne r の周知 の発達理論 で ある
。先 づ若年層 ( 6‑1 9 才)が研究 された (21 ) 。 見かけの垂 直に及ぼす身体傾斜 の効果については,低年層 (少 くとも 7才以 前) では成 人 と逆 であ る,即ち身 体 の傾 いた方にズ レる とい う事実が見出 された。 この事実は, 自己 と対象物が 未分化 な為に,対 象物 を 自己 と同化 させ る とい う自己中心性 の現れ である と解 され る。 静的対象物刺激 の効果(見かけの垂直及び正 中面 に及ぼす 出発 点効 果,見 かけ の正 中面 に及ぼす図形の非相称 的鉱が りの効果) は低 年層ほ ど大 きい とい
う事実が見出 された。 この事実 は,新 らしい或 は変化す る刺激 に有機体を調和 させ るとい う刺激被拘 束性 ( s t i mul usbo unde dne s s ) の為に起 る ものであ り,莱 分化性 の他 の現われ であ る と解 され る
。力動的対 象物刺激が 見かけの正 中面や 水平面に及ぼす効果は , 概ね発達 と共 に減 少す る傾 向が見 られたが , 統計的有意 水準に達す るほ どの一義性 は示 さなか った。然 し,見かけ の運動速 度を比較 さ せ るとい う実験 では ,対象物 の方向的力動性 の効果は有意 な発達的変化を示す :即 ち,動 か され る方 向 と一致す る方向性 を持つ図形の運動速 度 を,方向性 を 持た ない図形の運動速 度 よ りも過大評価す る傾 向が若年にな るほ ど強 い事が見 出 された。 そ して,力動的 (相貌的)知覚 は当然有機体 と対象物 の間 の未分化 性 を予想す るものだか ら, この事実 も発達 の一般 原理 と一致 す ると主張 され る
。また , 非相称的 に加え られた余分刺激 , 非相称的 に拡 が る対象物刺激 ,方 向的
力動性 を持つ対象物刺激 な どは,それぞれ頭部廻転 とい うよ うな運動反応 を引
き起すが , これ等刺激 に よって引 き起 され る頭部廻転 も亦 ,若年ほ ど大 きい こ
とが確め られた 。この事実 も, 発達 と共 に外的反応が減少 し,内面化 ( i nt e r na l i z a ‑
l i o n) が進む とい う仮説 と合致す る と解 され る
。 *彼等 は また , 上記 のデ ータの 1部 につい て , 各部分試行 の結果 の間 の相関を見 る事に よって,刺激 に対す る個 人 の反応 の一貫性が ,発達 と共 に増大す る事 を 確 めてい る
。そ して, 上記 の全 ての事実か ら次 の よ うな結論 を 引 き 出 す :那 ち個 人 の発達 と共 に段 々安定 した 関係枠組が造 られ , 恒常性機構 ( c ons t a nc y me c ha ni s m) が よ り有効 に働 き, よ り安定 した知覚的世界が形造 られ る;若年 層 に見 られ る空 間定位 の 自己 中心性 も刺激被拘鹿性 も共 に , この "物 の恒常"
の欠如 を意味す るもので ある, と。
これ ら若年層 の研究 に続 い て,中 ・老年層 を対象 とす る研究 も進 めてい る
。見かけ の垂直 に及 ぼす身体傾 斜 の効果 に関 しては,中年 まで ほ ( 5 0才 まで)辛 は り,見かけ の垂直が身体傾 斜 と反対方向にズ レる傾向が あ るが ,老 年 ( 65‑
8 0 才) では子供 同様 ,見かけ の垂直が身体傾 斜 と同方 向に ズ レる事が確 め られ た (2) 0
〔精神病理学的 ,薬理学的研 究〕
この方面 の研究 では ,精神病 患者は,発達 の未熟 な段階 と同 じよ うな水準 で 働 くとい う事が基礎的仮 定 とな ってい る (退行仮説)。 先づ脳損 傷患者に於 い ては,見かけ の垂直が身体 の傾 きの反 対方 向にズ レる傾 向が正常者 よ り顕著 で あ る事が確 め られた (1 8) 。 その後 ,脳損傷には, Aube r t 効果 (見かけの垂直が 身体傾 斜 と同方 向にズ レる事) が正常 者 よ り大 きい とい う前頭葉損 傷患者だ け に見 られ る特殊効果 と,出発 点効果が正常者 よ り大 きい とい うr J . E j の損 傷部位 に 関 りない一般効果 の 2 種 精が あ る事が報告 された ( 1 7 ) 0
また , LSD‑2 5とい う薬 も,人格 を原 始化す る働 きを持つ もつ として盛 ん に研究 され てい る
。先づ . 垂直知覚 に及 ぼす この薬 の効果が , 正常者及び分裂病
*彼等は序に,全体と部分の関係から起ると考えられる2 種の幾何学的錯視の錯視量の
発達的変化を追求 している。そして,同化錯視の例として坂 り上げた ミユラー ・リヤ
ー図形では錯視量が発達 と共に減少 し,対比錯視の例として振上げたテチナ一円図形
では錯視量が発達 と共に増大する事を稚め.これも彼等の発達理論の一般性の証拠で
あると主張 しているが詳 しい事は省略するO
患 者 の 2 群 の被 験 者を用 いて調 査 された。薬 を服用 しない場合は,両群 とも 見かけの垂直 は身体傾 斜 と反対方向にズ レる。(但 し,分裂病患者ではズ レ が 少い傾 向が あ り.発達 の よ り低 い段階に対 応す る事が知 られた)薬 を服用 させ る と正常群 では ,体 の傾 き と反対方向へ のズ レが有意に増大 したが ,分裂病群 には有意 な変 化が見 られ なか った。 出発 点効果 については,薬 を服用 させ る と 分裂病群 には有意 な増大が見 られたが ,正常群 には有意 な変 化が見 られ なか っ た (ll ) 。 また ,見か けの水平面が発達 と共 に下降す る とい う既知 の事実か ら, 正常人に LSD‑2 5を服用 させ る と主観的水平面が高 くな るだ ろ うとい う仮説 が実験的 に調べ られ ,仮説 を支持す る結果が得 られた (1 9) 。更に,全体 と部分 の関係に よって起 る錯 視に もこの薬が影響す るだ ろ うと仮定 され て, 3 種 の幾 何学的錯視 (ミュラ ー ・リヤ ー,テチナ 一円,ハ イス ・ザ ンダ ー)が調べ られ たが ,結果 は/\イス ・ザ ンダ ‑の場合だけ仮説 を支持 した (7) 0
〔身体知覚に及はす場 の分 節の効 果〕
対 象物 と有機体 の場 の分節 の程度が知覚 に影響す るだ ろ うとい う想定 の下 に 次 の よ うな実験が為 された。 自分 の頭 の巾を判 断 させ る と過大評価す る傾 向が あ るが , コメカ ミに手 を触れ る とい う条件 では過大評価 の傾 向は有意 に減少す る
。この事か ら,身体 と環境 との間に明確 な境界 のない こ とが ,頭 の 巾を過大 評価 させ る 1 要 因で あ る と解 された ( 3 0) 。次 に頭 の片側だけを手 で触れ る,袷 やす ,或 は熱す る とい う風に して境界 を強 め ると,鼻か ら頭 の両側 までの距離 に関す る限 り,やは り効果が見 られた。即 ち刺激 を加え られ ない側 よ り,刺激 を加え られた側 を よ り短 く知覚す る ( 2 0 ) 。 また LSD‑2 5 が人格 を原始化す る 作 因 として働 き.身体 と環境 の境界 を減弱す るだ ろ うとい う想定 の下に,正常 及び分裂病 の成人を被験者 と してその効果が調べ られた。 両群 の被験 者 ともこ の薬 を服用す ると,身体及び その部分を大 き く知覚す る有意 な傾 向が見 られた が ,対象物 につ いては有意な傾 向が な く,仮説 は支持 され る と考え られた (1 0)0
〔 後記〕 概観に引続いて ,この理論に対する Al l por t( 1 ) の批判 を紹介し,続いて筆者の
評価及び批判 まで筆 を進め る予定であ ったが ,紙数が尽 きたので別の機会に譲 り
た い 。参 考 文 献
1 ・ Al l por t , F・ H・The or i e sofpe r c e pt i ona ndt hec o nc e ptofs t r uct ur e.1 95 5,W i l e y.
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4.Go l dm a n ,A .E.St udi e si nvi c a r i ous ne s s :De gr e eofmot ora c t i vt y a n dt hea ut o‑
ki ne t i cphe nome non. A me r .∫.Ps y c ho1 . ,1 9 53, 6 6, 61 3‑ 61 7・
5.Ka de n,S . , Wa pne r ,S. ,& W e r ne r ,H.St u di es i nphys i ognomi cpe r c e pt i on:r I . Ef f e ctofdi r e c t i ona l dy ma mi c sofpi ct u r e dobj e c t sa n d wor dson t he pos i t i o n oft hea ppa r e nthor iz on,J・Ps y c ho1 . , 1 9 5 5, 39, 61 ‑ 70.
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Ef f e ctofa s c e ndi nga ndde s c e ndi n g gl i di ng t one s on a ut o ki net i c mot i on.J.
Ps yc ho 1 . ,1 9 5 8・ 46, 1 01 ‑ 1 05・
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( Ps y c ho l .Abs t リ 1 9 60, 34: 454)
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2 6.W a pne r ,S. , We me r ,H. ,Br ue l l ,J.H. ,& Gol ds t e i n,A. G.Exper i me nt s on s en s or y‑ t on] ' cf i e l dt he or yofpe r c e pt i on:Ⅴ1 1 .Ef f e c tofa s y mmet r i c a le xt e ntan d s t a r t i ng pos i t i ons of f i gur e s o ‑ I t he vi s ua la ppa r e ntme di a n pl a ne.∫ .exp.
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h