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巻頭言 超高齢社会の高齢者

著者 古谷野 亘

雑誌名 聖学院大学総合研究所Newsletter

Vol.25

No.2

ページ 3‑3

発行年 2016‑03

URL http://doi.org/10.15052/00002845

(2)

Title

巻頭言 超高齢社会の高齢者

Author(s)

古谷野, 亘

Citation

聖学院大学総合研究所

Newsletter

, Vol.25No.2, 2016.3 :3-3

URL

http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/detail.php?item_i d=5632

Rights

聖学院学術情報発信システム : SERVE

SEigakuin Repository and academic archiVE

(3)

巻頭言

超高齢社会の高齢者

 2015年は国勢調査の年であった。国勢調査の結果がまとまるのはまだ先のことであるが、これまでで最 高の高齢化率(65歳以上人口割合)が記録されるのは間違いない。2010年の高齢化率が23. 0%であったの に対して、2010年国勢調査に基づく人口推計によれば、2015年の高齢化率は26. 8%である。

 人口高齢化は今後も急速に進行し、10年後の2025年には高齢化率が30%に達すると推計されている。し かも、2025年にはベビーブーム世代が75歳以上の後期高齢者になるので、後期高齢者の数は2015年の1. 5 倍になり、高齢者介護の問題が今よりもさらに深刻になると予想されている。

 人口の高齢化は、ほとんど常に介護の問題とセットで語られ、高齢社会の暗いイメージを増幅させてき た。しかし、ここに来て、それとはまったく違う高齢者像が提起された。それは2015年 6 月に開催された 日本老年学会総会のシンポジウムにおいてであった。シンポジウムでは、学会のワーキンググループが検 討してきた最新の知見が複数の演者から報告されたのであるが、その内容を一言で言えば、「現在の高齢 者は若くなっている」ということであった。たとえば、最近の前期高齢者(65〜74歳)では多くの慢性疾 患の受療率が低下し、生物学的年齢が 5 〜10歳程度低下している。体力の指標となる握力は、10年の間に 男性で 4 歳、女性では10歳分若返っている。残っている歯の数の平均が咀嚼に必要な20本にまで低下する のは、1957年には男性50歳、女性45歳であったのに対して、2011年には男女とも65歳である。知的機能の 検査では、60歳代の人の平均は最近では40〜50歳代の人と変らず、現在の70歳代の人の平均は10年前の60 歳代の人に相当する、といった具合である。

 社会生活の面での加齢変化(たとえば職業生活からの引退など)には、その時々の政策や景気の動向が 反映されるので、それほど単純ではないし、心身の機能低下の場合のように遅くするのが望ましいと言い きることもできない。生涯現役を志向するのも、早めに引退して新しい活動を始めるのも個人の選択の自 由だし、組織の新陳代謝や他の年齢層がおかれた状況との均衡を図る必要もあるからである。しかし、暦 年齢にこだわって、古い高齢者のイメージにとらわれているのが誤りであることは疑いない。

 そこで、これらの知見をふまえて、日本老年学会と日本老年医学会は次の声明を発表した。

   最新の科学データでは、高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあり、現在の高齢者は10〜

20年前に比べて 5 〜10歳は若返っていると想定される。個人差はあるものの、高齢者には十分社会活 動を営む能力がある人もおり、このような人々が就労やボランティア活動など社会参加できる社会を 創ることが、今後の超高齢社会を活力あるものにするために大切である。

 超高齢社会の設計の基礎となる高齢者像が、今ようやく描かれ始めたのである。

聖学院大学 人間福祉学部 人間福祉学科長・教授 古谷野 亘

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