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一精神障害領域 における生活満足度尺度 との関連 よ り

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(1)

(58)

原著 :秋田大学医学部保健学科紀要

13(

1 ):

58‑62,2005

「 作業 に関す る自己評価 ( 改訂版)」 と精神障害者の 主観的満足度 との関連性 についての研究

一精神障害領域 における生活満足度尺度 との関連 よ り

石 井 奈智子 * 石 井 良 和 * 新 山 喜 嗣 * 高 岡 哲 郎* *

要 ヒ 日 ユ

近年,精神障害領域においては患者の処遇を含めた人権への配慮の重要性だけでな く

,qualityoflife

( 生活の質,

QOL)

の評価 も重視 されるようになってきた.今回,

QOL

をクライエン ト自身の回答に基づいた主観的なものと定 義 し,精神障害者の

QOL

尺度 として生活満足度スケール

(LSS)

を用いて,作業療法の評価の一つである作業 に関 す る自己評価改訂版

(OSAⅡ)

と生活満足度の関連を検討 した.その結果,

OSA

Ⅱ\ 作業的有能性尺度 と

LSS

の合計 点 に相関がみ られ,また,

OSA

Ⅱの

5

項 目が

LSS

に影響を与える要因 として抽出された.

Ⅰ. は じめに

リ‑ ビ リテ ‑ シ ョンで は,

quality oflife

( 生 活 の 質 ,

QOL)

を高 め る ことが重要 な 目的 とな って い る.

世 界 保 健 機 関

(WHO)

QOL

を 「一 個 人 が生 活 す る文化 や価 値観 の中で, 目標 や期待 ,基 準 , 関心 に関 連 した 自分 自身 の人生 の判 断 にお け る認識」 と定義 し, 最 終 的 に は個 人 の認 知 に よ って決 定 され る と して い

1).QOL

の特 性 と して は,① 患者 自身 によ る回答 に 基 づ き, ② 主 観 的 で, ③

QOL

の指標 は多 因子 か らな り,④ 時間 と共 に変化 す る ことの

4

つ が あ げ られ て い る

2)

.精神保 健 領域 にお いて も, ク ライ エ ン トの

QOL

を維 持 ・向上 させ る ことは,社 会 的不利 の改善 や社会 参加 を促進 す る こととと もに作 業療法実 施 の際 の主要 な 目的 とな る. しか し,精 神 障害者 はその疾 病 の特 性 か ら自己の現 在 の状況 を正 確 に判 断 す る能 力 が低下 し て い る と言 わ れ, 自身 に よ る

QOL

評 価 は一 般 に困難 と考 え られ て きた3 ) . ただ し, 一 方 で現 在 で は, 治 療 の 自己決定 に対 す る判 断 や 同時 に 自己の状 況把握 に関 す る能力 を基本的 には保持 してい るとー い う考 え方が徐 々

*秋田大学医学部保健学科作業療法学専攻

**笠松病院

58

に優 勢 とな りつ つ あ り4 ) , イ ンフ ォー ム ド ・コ ンセ ン トや 自身 によ る

QOL

評 価 を重 視 す る必 要 性 が あ る と い う主 張 が され るよ うにな った

5・6.7)

作 業 療 法 に関連 す る領域 で は, 従 来 まで

QOL

を評 価 す る作 業療法 独 自の評価 法 は極 めて少 な いが, 対象 者 の主 観性 を重 視 した作業 療法実 践 モ デルで あ る人 間 作 業 モ デ ル

(ModelofHuman Occupation

, 以 下

MOHO)

に準 拠 した 「作 業 に関 す る 自己評 価 ( 改 訂 版)

(OccupationalSelfAssessmentversion

Ⅱ, 以 下

OSAⅡ)」

を用 いて

QOL

関連 の評 価 との関係 を 明 らか に しよ う とす る試 み が 行 わ れ る よ う に な っ た

8・9)

. これ らは,

OSA

Ⅱ と標 準 的 な健 康 関 連

QOL

尺 度 で あ る

SF‑36

日本 語 版

Vesionl.2 (SF‑36)

を実 施 し,人 間 の生 活 を包 括 的 に と らえ るツール と して の

OSA

Ⅱの有用 性 と作 業 療 法 学 生 の傾 向 を検 討 し8 ) , ま た

SF‑36

を外 的基 準 と して

OSAI

Iの満 足 度 得 点 との 関連 を検 討 した もの で あ る9 ) .

osA

Ⅱの満 足 度 得 点 と は

OSA

Ⅱを構 成 して い る有 能 性 尺 度 と価 値 尺 度 の得 点 差 とい うことにな って い るが

1

0 ) , 高 い価 値 尺 度 得点 か ら高 い有能 性尺度 得 点 を引 く場合 と,低 い価値 尺度

KeyWords:

作業に関する自己評価改訂版

(OSAⅡ) QOL

生活満足度スケール

(LSS)

精神障害者

秋田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第

1

(2)

石井奈智子

/

「 作業 に関す る自己評価 ( 改訂版) 」 と精神障害者 の主観的満足度 との関連性 についての研究

(59)

得点か ら低 い有能性尺度得点 を引 く場合 で は,満足度 得点 は同 じであ って も質的 に異 な り,例 えば前者で は よ り高 い

QOL

を獲得 して いることなどが推測で きる 場合 もあるだ ろ う. ただ し, この点 につ いては,臨床 現場 で

OSA

Ⅱを用 い る場 合 にはその後 に実施 す る面 接 によ って確認 され るので重大 な問題 にな ることはな い. しか し,

OSA

Ⅱの変化 を治療上 の成果 と考 え, 同時 に

QOL

の特性で もあ る対象者 の主観 的満足感 の 変化 で あ る と もみなせ るため には,

OSA

Ⅱによ る対

象者 自らの報告 に基づ く情報 が

QOL

を反映す る もの

と して信頼 で きることが前提 とな る.

本研究 は,

OSA

Ⅱと精神科領域 にお ける

QOL

評価

と して従来 か ら用 い られて いる基準 との関連 を検討す ることを目的 とす る もので ある. このよ うな試 みの一 貫 で あ る以前 の段階 の報告

8

・ 9 )で は,健康被験者 を対 象 と した ものであ った. そ こで,今回 は精神障害 を持 つ患者群 を対象 と して,

OSA

Ⅱで得 られ る各領域 の 成績が従来 の

QOL

の関連項 目の上 で

かなる意義 を

持 ち うるか につ いて検討す ることと した. そ して, こ の試 みほとりもなお さず,作業療法独 自の評価法 と し て汎用 されっっ あ る

OSA

Ⅱが患者 の

QOL

の評価 法

と して も有用であ り得 るか否かを確認す ることを意味 す るもので ある.

Ⅱ.

1.

研究手続 き

OSA

Ⅱは,第

1

部 「自分 につ いて」 と第

2

部 「環

境」 によ って構成 され,

MOHO

3

つ のサ ブ システ ム ( 意志,習慣化,遂行) および環境 に対応 した

29

目の設問が ある. それ らに回答す ることによって, ク ライエ ン ト白身 の作業的有能性 (うま く機能 している か) と価値 ( 何 を重要 と考 えてい るか), そ して,環 境 の影響 を理解す ることが可能 となる評価様式である.

OSA

29

項 目は,遂行領域

11

項 目,習慣化領域

5

項 冒,意志領域

5

項 目,環境領域

8

項 目か らなる

.OSA

の有能性尺度 は,問題 あ り ‑ 1 点,やや問題

‑2

点, 良 い

‑3

点,非常 に良 い

‑4

点,価値尺度 は大事 でな い

‑1

点, やや大事 でない

‑2

点,大事

‑3

点,非常

に大事

‑4

点 のそれぞれ

4

段階 にな って いる.

OSA

Ⅱの使用者用手 引 きに 「 環境」 につ いての部分 は,研 究 目的のために用 いる場合 は信頼性 はまだ十分 に実証 されていない段階にあるとされているため,今回 は第

1

部 の 「自分 について」 のみのデータを用 いることと した.

精神科領域 の外的基準 と しての

QOL

評価 は,現在 作業療法 で使用 されて い る

QOL

評価法 の中で,精神

秋田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第 1号

障害者 を対象 と した評価法である生活満足度 スケール

(LifeSatisfactionScale

,以下

LSS)

を用 いた. こ

の評価 法 は比較 的簡便 に実施 で きて, 精神 障害者 の

QOL

に重 要 と思 わ れ る要 素 を包 括 して い る. また

LSS

は,

QOL

を生活全体 に対 す る主観的 な満足感 と 定義 し, これまでの多数 にわたる

QOL

に関す る研究 ・ 調査 に基づ いてい くつかの クラスターと してまとめた

5

領域 ( 身体的機能 (

5

項 目),環境 (

7

項 目),社会 生活技能 (

6

項 目),対人交流 (

4

項 目),心理的機能

(8

項 目)) と生活全般 たっいて (

1

項 目) の満足度 の

31

項 目か ら構成 されている.満足度尺度 は,各項 目ご とに,非常 に不満 ‑

‑3

点,不満

‑‑2

点,やや不満 ‑

‑1

点, どち らで もない

0点,だいたい満足

‑ 1

点, 満足

‑2

点,大変満足

‑+3

点 の

7

段階 となっている.

この質問紙 は験者が読 み上 げ, クライエ ン トにフェイ ススケールをみて答 えて もらった.

2 .対 象

対象 は,秋 田県 内の

4

つの病院 に入院中かまた はデ イケアに適所 中で,本研究 の主 旨を理解 し同意書 に署 名 した精神障害者

35

名 ( 男性

23

名,女性

12

名)で,辛 均年齢 は

52.6±11.5

才 ( 男性

54.3±9.1

才,女性

51.8

±

12.6

才)であ った.対象者 の疾患 は,統合失調症

30

名, てんかん

2

名, そ ううつ病

2

名,精神発達遅滞

1

名で あ った.対象者 に

OSA

Ⅱと

LSS

の両方 を同一 日に配 布 し,

OSA

Ⅱと

LSS

の実施順 を ラ ンダムに振 り分 け て,作業療法室 内で験者 と一対一で机 に向か って並ぶ 面接 を とって回答 させた.

3.

データ分析法

デー タ分析 は, (

丑OSA

Ⅱの有能性尺度 お よび価値 尺度得点 の信頼性 を,各項 目間の反応 の一貫性 の程度 か ら推定す るために,

Cronbach

α

係数 を算 出 し,

OSA

Ⅱの各領域別平均値 と

LSS

得点合計 および各

領域 間 の相 関 を検討 した. また,③

OSA

Ⅱの各領域 平均値 と有意 な相 関が認 め られ た

LSS

を従属変 数 と

した重 回帰分析 を実施 し,精神 障害者 の

QOL

に影響

を与 え る

OSA

Ⅱ上 での要因 を検討 した.

統計処理 には統計 ソフ ト

SPSS

1

1.5JforWindows

を用 い,統計上 の有意水準 は危険率

5%

と した.

Ⅲ.結 果

LSS

各項 目の平均 と標準偏差

(SD)

を表

1

に示 し た. また,

OSA

Ⅱ各領域 の平均 と

SD

を同様 に表

2

に示 した.

osAI

Iの 内 的整 合 性 は, 作 業 的有 能 性 にお心 て

59

(3)

(60)

石井奈智子

/

「 作業 に関する自己評価 ( 改訂版

)

」 と精神障害者の主観的満足度 との関連性 についての研究

α=.909

,価値 において

α.950

であ った.

LSS

得点 と

OSA

Ⅱの相 関

(Spearman

の順位相 関 係数)を表

3

に示 した.有意 な相関がみ られたものは,

LSS

合計 と

OSA

Ⅱ有能性尺度合計

(rs=.44

,

p<.

01 ), 遂行領域有能性尺度合計

(rs=.37

,

p<.05)

,習慣化領 域有能性尺度合計

(rs=.53

,

p<.

01 ),意志領域有能性 尺度合計

(rs=.40

,

p<.05)

だ った.一方,

LSS

合計 と価値尺度では,いずれ も有意な相関は認 め られなか っ た.

OSA

有能性合計で は

LSS

L5

領域

1

項 目の うち 有意 な相関がみ られた ものは, /身体的機能

(rs=.45

,

p<.

01 ),社会生活技能

(rs=.39

,

p<.05)

,心理的機能

(rs=.47

,

p<.

01 ) だ った.

OSA

Ⅱ価値 合計 と

LSS

の 各領域 には有意 な相関 はみ られなか った.

OSA

Ⅱ遂

1

L

S

S各項目の 均点

平 均 点

(SD)

生 活 全 般 身 体 的 機 能

環 境

社 会 生 活 技 能 対 人 交 流 心 理 的 機 能

LSS

合計

0

. 5 1

(

1 . 31 ) 1 . 8 5

(

3 . 7 4 ) 5 . 0 6

(

6 . 9 6 )

3

. 8 9

(

5. 5 9 ) 1 . 5 4

(

3. 9 6 )

3

. 0 3

(

6. 3 5 )

1 5 . 8 9

(2

1. 2 2 )

2 0SA

Ⅱ各領域の平均点 平 均 点

(SD)

遂 行 領 域 有 能 性

遂 行 領 域 価 値 習慣化領域有能性 習 慣 化 領 域 価 値 意 志 領 域 有 能 性 意 志 領 域 価 値 作 業 有 能 性 合 計

価値合計

2.66(0.46) 3.16(0.43) 2.70(0.53) 3.16(0.49) 2.62(0.54) 3.12(0.46) 2.66(0.44) 3.15(0.43)

行領域 有能性 と

LSS

の各領域 で は身体 的機能

(rS .43

,

p<.

01 ) で,習慣化領域有能性で は,身体的機能

(rs=.45

,

p<.

01 ),社会生活技能

(rs=.45

,

p<.

01 ),対 人交流

(rs=.35,p<.05)

,心理的機能

(rs=.60,p<.

01 ) で,意志領域有能性 は社会生活技能

(rs=.47

,

p<.

01 ) , 心理 的機能

(rs=.43

,

p<.

01 ) で有意 な相 関がみ られ た.

OSA

Ⅱ価値尺度 では,意志領域 と

LSS

の心理 的 機能

(rs.36

,

p<.05)

に有意 な相関がみ られた.

LSS

の合計点 を従属変数 とした重回帰分析 ( ステ ッ プ ワイズ法) を実施 した結果,

OSA

Ⅱ作業 的有能性 の 「めん どうを見 なければな らない人 を見 る」,「金銭 の管理 をす る」,「 他人 とうま くや っている」,「 学生, 勤労者, ボランティア,家族 の一員 などの役割 にかか わ る」, 「自分 の 目標 に向か って はげむ」 の

5

項 目が

LSS

に影響 をあたえ る要 因 と して抽 出 され た ( R

2=

0.597

,

p<0.

01 ).

Ⅳ. 考 察

分析結果 よ り,

OSA

Ⅱの作業 的有能性,価値 の両 尺度 は, α が共 に

0.7

以上 で あ った ことか ら,質 問絶 としての内的整合性が保たれているものと判断された.

OSA

作 業 的有能 性 尺度 の合 計 お よ び各 領域

は,. LSS

の合計 と有意 な相関が認 め られたが,

OSA

価値 尺度 には有意な相関は認め られなか った. このことは,

OSA

作業有能性尺度が

LSS

で評価 され る精神障害者 の

QOL

を見 ることがで きる指標 と しての可能性 を示 唆す る ものである.

OSA

作業 的有能性尺度 は自分 の 作業遂行 の度合 いを評価 しているものであるが,各項 目の表現 はやや暖味で抽象的な形式 にな っている. そ れに比較 して,

LSS

は精神障害者 の

QOL

に重要 と思 われ る要素を包括 した具体的な表現形式である. した が って,

OSA

Ⅱには 自分 に とって実 際 に重要 な事柄 か どうか は別 問題 と して も,

QOL

には直接 に結 びっ 表

3 LSS

得点 と

OSA

Ⅱの相関

(Spearman

の 順位相関係数

rs)

LSS

合計 生活全般 身体機能 環 境 社会生活技能 対 人 心理機能

OSA

有 能 性 合 計

OSA

価 値 合 計 遂 行 領 域 有 能 性 遂 行 領 域 価 値 習慣化領域有能性 習 慣 化 領 域 価 値 意 志 領 域 有 能 性 意 志 領 域 価 値 環 境 領 域 有 能 性 環 境 領 域 価 値

++++fA42783002664332534.3530000000000 609351281903020312110000000000 593552352041414231410000000000 *****996659726532224243530000000000

0.30 0.20 0.29 0.16 0.35*

0.21 0.18 0.15 0.40* 0.17

7904073610

4

2326243540000000000

60

*p<0.05 **p<0.01

秋田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第

1

(4)

石井奈智子 / 「 作業 に関す る自己評価 ( 改訂版 ) 二 と精神障害者の主観的満足度 との関連性 についての研究

(6

1 )

かない事柄 を対象者 はイメー ジして 自己記入 している と考え られ る.

重回帰分析 の結果,精神障害者 の生活満足度 には,

OSA

5

項 目が特 に影響す る要因 として上 げ られた.

この

5

項 目の うち,

3

項 目は 「めん どうを見なければ な らない人 を見 る」,「 金銭 の管理 をす る」,「 他人 とう ま くや っている」で遂行領域 に含 まれ る内容だ った.

「 学生,勤労者, ボランテ ィア,家族 の一員の役割 に 関わ る」 は習慣化領域 で あ り,「自分 の 目標 に向か っ てはげむ」 は意志領域 に含 まれ る内容であ った.薮脇 ら

8)

は,作業療法学生 を対象 と した

OSA

Ⅱと健康 関 連

QOL (SF‑36)の関連 を検討 し,SF‑36

の全体的健 康感 に影響 を与 え る要因 と して

OSAⅡの遂行 のサ ブ

システムの

3

項 目 「 他人 に自分 を表現す る

「 身体 を 使 って しな ければな らない ことをす る

「 行かなけれ ばな らない所 に行 く」 を挙 げ,作業療法学生 は, 自分 の考えを表現 し日常課題 を処理す る技能が健康 の認識 に関与す ると報告 した. この ことは学生 にとって,学 生であるとい う役割 に関す る事柄が

QOLに関与す る

と捉えることがで きると考 え られた.

本研究 の重回帰分析で得 られた

5

項 目は,今回対象 としたクライエ ントのほとんど

(33

名)が入院中であっ た ことか ら,入院によって阻害 されやす い事柄である 可能性があ ると思われた. すなわち,「めん ど うを見 なければな らない人 を見 る」 とい う項 目のめん どうを 見なければな らない対象 は必ず しも明確 ではないが, もしそれが家族 の成員であ るとすれば, 自身の入院 に よって事実上 それがで きな くなっていると考え られる.

「 学生 などの役割 に関わ る」 ことも,入院 とい う環境 でやはり不可能 とな った ことであろう.今回の研究の 対象者の大部分を統合失調症の患者が 占めるが,統合 失調症の慢性期 における症状 として,対人交流技能 の 低下があげ られ る.・ この ことは 「 他人 とうま くや って いる」 ことに関係 し,社会生活を送 る上で必要 な技能 であると考 え られた. また統合失調症 の患者の行動特 性 として,現実吟味力が弱 い ことや注意 と関心の範囲 が狭 い ことがいわれている. このよ うな行動特性 は,

「自分 の 目標 に向か って はげむ」 とき, 目標を明 らか にす ることやその目標のために必要 なことを順序立て て計画で きないことに影響 を及ぼ している可能性があ る.「 金銭 の管理 をす る」 ことも,入院生活や疾病 の 症状 によ ってすべてを自由に管理 して生活 している患 者 は少ない もの と推測 され るが, これについて も現在 の生活状況 にかかわ る要因である. このようにとらえ た場合に,精神障害者の生活満足度 に影響す る要因は, 各領域の中で も特 に現在 の生活の中で 自 らが実際に実

秋 田大学 医学部保健学科紀要 第

13

巻 第 1号

施で きていない事柄 を中心 に していると考え られた.

この ことか ら帰結す ることは精神障害 を もっ患者 にお いては我 々が通常 な しえている生活領域 のい くつかに ついて欠落 を余儀 な くされてお り, その ことが患者 の 主観的な

QOLの劣化 に直接 に結 びっ いている可能性

があるとい うことである.今後, これ ら患者 の

QOL

向上 を意図 してい く上で, いったん制限 され ることと な った生活領域 の回復への配慮が是非重要 な もの と思 われた.

今回,価値尺度 とはほとんど有意な相関を示さなか っ たが,価値 とい う概念 は作業の有意義性や 目標 とも関 連す るため,作業療法 において は重要 な視点である, 価値尺度を単 に作業療法独 自の評価であると結論づ け るだけでな く, その妥 当性 を検討す ることが今後 の課 題 と考 え られ る.

文 献

1 )木原義春 :統合失調症患者 の

QOL

北陸神経精神医 学雑誌

16(12):2930,2002

2)

図万弘子 ・他 :統合失調症患者 の生活 の質

(QOL)

に関す る文献 的考察. 日本公衛誌

50(5):377387

,

2003

3)

角谷慶子 :精神障害者 における

QOL

測定 の試み一生 活満足度 スケールの開発‑.京府 医大誌

104(12):14 131424,1995

4)横藤田誠 :十分 な判断能力のない患者 のイ ンフォーム

ド・コンセ ン ト.

OT

ジャ‑ナル

37(10):102311028

,

2003

5)

辻貴司 :精神障害領域の作業療法 におけるイ ンフォー ム ド・コンセ ン ト

.OT

ジャーナル

37(9):897902

,

2003

6)

猿渡利枝 ・他 :精神分裂病患者 の

QOL

OT

活動 に ついて.作業療法

20(

特):

130,2001

7)

古川貴史 ・他 :精神科作業療法 の役割 と

QOL.

作業 療法

19(

特):

142,2000

8)

薮脇健司 ・他 :作業 に関す る自己評価改訂版

(OSA

Ⅲ) と健康関連

QOL

の関連性一作業療法学生 を対象 として‑.作業療法

23(

特):

63

1

,2004

9)

山田孝 ・他 :作業 にお ける

QOL

評価一作業 に関す る 自己評価改訂版

(OSA

Ⅱ) の満足度尺度 の検討‑.

作業療法

23(

特):

637,2004

10)

山田孝 ・他訳 :「 作業 に関す る自己評価改訂版

(OSA

Ⅲ) 使用者用手引 き. 日本作業行動研究会

61

(5)

(62)

石井奈智子 / 「 作業 に関す る自己評価 ( 改訂版) 」 と精神障害者の主観的満足度 との関連性 についての研究

TheStudyforRelationofOccupationalSelfAssessmentversion2 andSubjectiveSatisfactionDegMeeinPsychiatricOccupationalTherapy

‑ throughLifeSatisfactionScaleinPsychiatricDisorder‑

Nachiko lsH

I I*

Yoshikazu lsH

I I*

YoshitsuguNIIYAMA*

Tetsuro TAKAOKA**

*

CourseofOccupationalTherapy,SchoolofHealthSciences,AkitaUniversity

**KasamatsuHospital

InlateyearsQualityoflife(QOL)isregardedasimportantinamentaldisorderdomain.

Inthisstudy,IdecidedQOLsubjectivityt。bebasedonananswerofaclient.TheQOL scalethatI usedwasalifesatisfaction degreescale(LSS).IexaminedOccupationalSelfAssessmentversion2and connectionwithaQOLscale.Asaresult,correlationwasconsideredatapointofOSA Ⅱ intotalanda pointofLSSintotal,andfiveitemsofOSA Ⅱ WereextractedasafactortoaffectLSS.

62

秋 田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第

1

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