1.日本赤十字社医療センターについて
渋谷区広尾にある日本赤十字社医療センターは,
1886年にわが国初の赤十字病院として誕生しました。
1972年には,1922年(大正11年)開設の日本赤十字社 産院を統合して今日に至っています。現在では41の診
療科,700余の病床がありますが,特に重点項目とし ているのは,小児・周産期医療,がん診療,救命救 急,災害救護の4つです。
また,付属施設として敷地内に乳児院,助産師学校 があります。院内には乳児院の心理士,非常勤心理士 を含め15名が心理職に携わっています。
2.周産母子・小児センター
妊娠・出産・育児の過程において,母子の健康を総 合的に支援するために「周産母子・小児センター」が 組織されています。出生前から小児期まで産科・新生 児科・小児科・小児保健・小児外科が緊密な連携を とって対応しています。
周産期部門は100年近い歴史があり,周産期病棟は 産前・産後病床90床,母体・胎児集中治療室(MFICU)6
床,新生児集中治療室(NICU)15床,新生児強化・回
復治療室(GCU)40床を擁し,東京都の母体救命対 応総合周産期母子医療センター(スーパー総合周産期 センター)に指定されています。少子化が叫ばれて久 しい今日においても年間の分娩件数は約3000件となっ
ています。NICU・GCUへの入院数は年間600~800例で
す。
3.小児保健部の仕事
私が所属する小児保健部は子どものための健診部で す。乳幼児の健康診断・予防接種・栄養相談・育児相 談・心理相談を通じて子どもの健やかな成長のサポー トを行っています。その中で心理の年間延べ利用件数 は約1500件で,常勤心理士1名,非常勤心理士2名が対
応しています。主な仕事は4つです。①産後の育児支 援,健診に関わる子育て・発達相談,②低出生体重児 の発達検査,③医師依頼のアセスメント,④心理相談 になります。
①乳幼児健診では,小児科・新生児科医師,看護師,
助産師,管理栄養士と臨床心理士が相談窓口となって います。育児・子育て相談では,周産期のお母さんの
産後うつなどはメンタルヘルス科の医師と連携して対 応するだけでなく,きょうだい葛藤への対応や乳児期 からの関わり方など気になる母子関係に早期から介入 することが可能です。1歳前後からは発達が気になる お子さんには適切な発達を促すかかわりにつなげてい きます。
②在胎週数28週未満,1000g未満の超低出生体重児 は,修正1歳半,3歳,就学前,小3時に発達検査を行
います。保護者とのお話の中で適切な母子関係の構築 や発達を促す助言を行います。療育が必要な場合,医 師と相談しながら地域につなげていきます。
③小児科医から発達の問題だけでなく,耳鼻科,眼 科,脳神経外科医等からも頭痛,腹痛,歩行困難,咳 や嘔吐が続くなど身体の不調を訴え,レントゲン,
MRI,CT,血液検査などあらゆる検査をしても身体 的所見が認められない時,心因性との疑いで心理検査 のオファーがあります。発達検査,人格検査,認知検 査,観察,生育歴などの聴取を通してアセスメントを 行います。医師,看護師,助産師,保育士などと連携 することで治療につながっていきます。
④心理相談は,心の問題をかかえるお子さんや発達に 心配のあるお子さんの相談に当たります。乳児から中 学生,その保護者までが対象となります。年間の新規 来談数は60名程です。幼児期から中学生まで毎週50分
の構造の中で心理療法に当たるケースもあります。
4.心理士の役割
フィジカルな面を扱うことが多い医療の中で,症状 からだけではわからない目に見えない子どもの心を扱 い,子どもの特性を捉えること,母親,家族との関係 性,環境の中でその子どもがどのような問題を抱えて いるかを見立てることは心理士としての大きな役割と 感じています。常勤職として入職してから約3年です
が,病院臨床にあたる上でこれまでの様々な経験と,
大学院で学び始めた精神分析的心理療法の視点が大き な強みとなっています。面接,観察,プレイを通して アセスメントし,関係性を築いていくこと,心的世界 でつながっていくことで頑なな子どもたちの心が融解 していくこともしばしばです。日々改めて気づかされ ることも多い中で,出会いと学びを通して,出生前か ら始まるお母さん,子ども,家族の発達を含め,継続 的に支援していける場所になれるよう精進していきた いと思います。
職場だより
日本赤十字社医療センター
2013年度 博士課程修了 2014年博士号取得
村 田 朱 美
Annual Bulletin of Clinical Center for Developmental Disorders, Shirayuri University
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