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犯罪の終了についての一考察 大阪高判平成

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犯罪の終了についての一考察

大阪高判平成 1 6 年 4 月 2 2 ( 判 夕1 1 6 9 号 3 1 6 頁)を素材 として

1 は じめに 2 事案 お よび判 旨 3 問題 の所在 4 検討

(1) 書 き込 み行為 時点 にお け る名誉穀損罪 の 終 了につい て

事実摘示状態へ の移行 に よる終 了につい て

イ 行為 の継続 と犯罪 の継続 との関係 につい て

法益侵 害結果 (危険) の発生 の終 了につ い て

(2) 削 除依頼 行為 時 点 にお け る名 誉 穀損 罪 の 終 了につい て

作為義務 の履行 に よる終 了について イ 因果 関係 の消滅 に よる終 了について 5 おわ りに

1 は じめに

本 稿 は,大 阪 高 判 平 成 16年4月22日判 決 (判 タ1169号316頁) を素材 として,犯罪 がい つ終 了す るのか とい う問題 につい て,若干 の考 察 を行 お うとす る もので あ る1)。本判例 は,判 決 日か らすで に7年以上 が経過 してお り,新鮮 さには もはや欠 け る憾 みが あ るが,一見不可解 に も見 えるその論理 や,本判例 を巡 って その後 な された議論 と相 ま って, なあ 素材 として の 魅力 を有 してい る よ うに思 われ るので あ る。

近 藤 和 哉

(本法務研究科教授)

2 事案および判旨

検討 に先立 って,本件 の事案 お よび判 旨 を簡 単 に紹介 してお くこ とにす る。

まず,事案 は,次 の ような もので あ った。

Ⅹ は, 自己が起 こ した交通事故 で,A (秦),

B

(夫)夫妻 の息子 を死亡 させ たが, この業過 致 死 事 件 の論 告 求刑 の直後 で あ る平 成13年7

月5日に

,

Cが管理 す るイ ンターネ ッ ト上 の ホ ームペ ージに,A,B らの名誉 を穀損す る事実 (「本件記事」 とい う) を書 き込 み, これ を,不 特定 多数 の者 の閲覧 に供 した。

その後,下 に引用 した判決 中で認定 されてい る,Ⅹ宅 の家 宅 捜 索,Ⅹ か らD警 察 署 へ のC の電 話 番 号 の照 会,D警 察 署 か らCに対 して な された記事 の削除依頼等 の経緯 を辿 って,平 成15年4月22日,Aは,Ⅹ を名 誉 穀 損 罪 で 告訴 し2)

,

Ⅹ は起訴 されて一審 で有 罪判決 を受 け た (懲 役 1年4月)。Ⅹ は,Aの告 訴 は,名 誉穀損罪 の告訴期 間で あ る6ヶ月 (刑訴235条 1項) を途過 して な されてお り不適 法 で あ る等

と主張 して控訴 した。

これ に対 して,裁判所 は,次 の よ うに判示 し た。

「そ こで検 討 す るのに,名 誉 穀損 罪 は抽 象 的 危 険犯 で ある ところ,関係証拠 に よる と,原判 示 の とお り,Ⅹ は,平 成13年7月5日,B及 びAの名 誉 を穀 損 す る記 事 (以 下,『本 件 記 事』 とい う。) をサ ーバ ー コ ン ピ ュ ー タ に記 憶 ・蔵 置 させ,不特定 多数 の イ ンターネ ッ ト利 用者 らに閲覧可能 な状態 を設定 した もので あ り,

(2)

これ に よって,両名 の名誉 に対す る侵 害 の抽象 的危険 が発生 し,本件名誉穀損罪 は既遂 に達 し た とい うべ きで あ るが, その後,本件記事 は, 少 な くとも平成15年6月末 ころ まで, サ ーバ ーコ ンピュータか ら削除 され るこ とな く,利用 者 の閲覧可能 な状態 に置かれた ままで あ った も ので,被害発生 の抽象的危険が維持 されてい た とい えるか ら, この よ うな類型 の名誉穀損罪 に おい て は,既遂 に達 した後 も,未 だ犯罪 は終 了 せず,継続 してい る と解 され る。 もっ とも, 関 係 証 拠 に よる と,平 成 15年3月9日,D警 察 署警察官 に よって,本件名誉穀損事件 を被疑事 実 と して Ⅹ 方 が捜 索 され た こ とな どが き っか け とな り, その2,3日後,Ⅹ は, 同警 察 署 に 電話 し, 自分 の名 前 を名 乗 った上 で,『自分 が 書 き込ん だ掲示板 が まだ残 ってお り,消 したい が,パ ス ワー ドを忘 れて しま ったので消せ ない。

ホ ームペ ージの管理人 の電話 を教 えてほ しい。』

旨申 し入 れた ところ, 同警察署側 におい て,Ⅹ に対 し,『こち らか ら管理 人 に連絡 の上 削除 し て も ら うよ う依 頼 す る。』 と返答 した上,直 ち に本 件 ホ ー ムペ ー ジの管 理 者 で あ るCに対 し て,『パ ス ワー ドを忘 れた ので消 せ ない と言 っ て きた。 そ ち らで削 除 してや って ほ しLlo』 と 申入 れ, 同人 もこれ に異 を唱 えてい なか った事 実 が認 め られ る とこ ろ, この事 実 は,Ⅹ が, 自 らの先行行為 に よ り惹起 させ た被害発生 の抽 象的危 険 を解 消す るた めに課 せ られてい た義務 を果 た した と評価 で きるか ら,爾後 も本件記事 が 削 除 され ず に残 ってい た とはい え,Ⅹ が上 記 申入 れ を した時点 を もって,本件名誉穀損 の 犯罪 は終 了 した と解す るのが相 当で ある。

しか して,Aの本 件 告 訴 は,上 記 申入 れ の 時点 におい て犯罪 が終 了 した後6ヶ月以 内で あ るこ とが明 らか な平成15年4月22日にな され てい るか ら,適法 で あ る。」

3 問題の所在

本件 の問題 点 は,次 の2つ に集約 され る。

第 1は,Ⅹ が,平 成13年7月5日頃 に,A,

Bの名誉 を穀損す る本件記事 を掲示板 に書 き込 んで 掲載 した行為 (以下,「本件書 き込 み行為」

とい う) に よ り成 立 した名 誉 穀 損 罪 (刑230

条) が,書 き込 み行為 の終 了 とともに終 了 した か香 かで あ る。仮 に,終 了が肯定 され る とす る と,Aが 「犯 人 を知 った」 日が,Ⅹ の 主 張 通 り,平成13年10月4日頃で あるこ とを条件 と してで は あ るが3),平成15年4月22日にな さ れたAの告訴 は,6ヶ月の告訴期 間 (刑 訴235

条 1項) を途過 して な された こ とにな る。

第2の 問題 点 は,本 件 名 誉 穀 損 罪 が,Ⅹ の 書 き込 み行為終 了後 もなお成立 し続 けていた と 考 え る場合 におい て,平成15年6月末 頃 に本 件記事 が削除 され るまで,終 了 してい なか った の か, そ れ と も,Ⅹ が本 件 記 事 を削 除 し よ う として警察 に連絡 を取 った (以下, これ を 「削 除依頼 行為」 とい う)平成15年 3月9日の2,

3日後 の時点で終 了 してい た のかで あ る (い ず れで あ って も,Aの告訴 は有効 で はあ る)。本 件記事 が削除 された時点以 降,本件記事 を構成 要件 的結果 とす る名誉穀損罪 の継続 を肯定 し得

ない こ とは明 白で あるが, これ に先立つ時点で,

Ⅹ が,本 件 記 事 を削 除 す べ く,可 能 な 限 りの 措置 を とった こ とが,名誉穀損罪 を終 了 させ る 根拠 とな り得 るか香 かが問題 とな るので あ る。

以下 では, これ ら2つ の問題 を中心 に,検討 を加 えるこ とに したい。 なお,犯罪 の終 了時期 を巡 る議論 においては,結果 と, これ を惹起 し た行為 とを明瞭 に区別 してお くこ とが,無用 な 混乱 を避 け るた めに有効 で あ る と思 われ る。 そ こで,以下,本稿 で は,結果 として の公然事実 摘 示 を 「事 実摘 示 結 果」, これ を惹 起 した,い わゆ る実行行為 としての公然事実摘示 を 「事実 摘示行為」 と表記 し, また,窃取 (刑230条), 監 禁 (刑220条) につ い て も, それ ぞれ,「窃 取 結 果」・「窃 取 行 為」,「監 禁 結 果」・「監 禁 行 為」 の よ うに表記 して, 区別 をはか るこ とに し たい。

(3)

4 検討

(1) 書 き込 み行為 時点 にお け る名誉穀損罪 の 終 了について

事実摘示状態へ の移行 に よる終 了について (ア) 以 下 で は, まず,平 成13年7月5日 頃の本件書 き込 み行為 時 に,本件名誉穀損罪が 成立 し, そ して終 了 していたか香 か を検討す る。

この時点での終 了 を主張 され るのは, 山 口教 授 で ある。教授 は

,

「名誉穀損罪 の構成要件 は, 公然 と事実 を摘示す るこ とに よる名誉穀損で あ

るか ら,名誉穀損 の状態 は継続す るが,実行行 為 で ある公然事実摘示行為 は継続 しないため, 構成要件該 当性 の継続 はな く,名誉穀損罪 は既 遂 に よ り終 了す るこ とにな る (状態犯)。」 とさ れ る4)

0

これは,名誉穀損罪 の成立要件 で ある事実摘 示結果 が,状態犯 の典型例 とされ る窃盗罪 にお け る窃取結果 (財物 の占有 の移転) とパ ラレル で ある とされ るもので あろ う。す なわち, ある 財物 について窃取結果 が発生 し, これに よ り窃 盗罪 が既遂 に達す る と,以後, その財物 につい ての窃取結果 は存在 しな くな る。 この結果,窃 盗罪 の構成要件 が充足 されな くな って,窃盗罪 が終 了す る5)。 山 口教授 は,名誉穀損罪 におけ る事実摘示結果 も,単 に事実が摘示 されてい る 状態 (不特定 多数人 に視聴可能 にな ってい る状 態) の こ とではな く,事実が非摘示状態か ら摘 示状態へ と移行す るこ とで ある と解 された上, 一旦摘示状態 に移行 した事実が重ねて摘示状態 に移行す るこ とはないか ら,事実摘示結果 の発 生 に よって名誉穀損罪が既遂 に達すれば,以後 は もはや移行が認 め られず,構成要件 が充足 さ れな くな って,名誉穀損罪が終 了す る とされ る

もの と思 われ る6)7)。

しか し, ここには, なお疑 問の余地 が残 され てい る ように思 われ る。

まず,刑法230条 が

,

「公然 と事実 を摘示 し」

と規定 してい るこ とは,非摘示状態か ら摘示状 態へ の移行 が,名誉殴損罪 の成立要件 で ある と 解釈すべ き直接 の根拠 とはな らない。確 かに,

この文言か らすれば,摘示状態へ の移行 が事実 摘示結果 の内容 をなす と解す るのが 自然で ある とい えな くもない。 しか し

,

「人 ・‑・・を監禁 し」

とい う文言で規定 され, 同様 の事情 が認 め られ る監禁罪 においては,被害者 の, 自由な状態か ら不 自由な状態へ の移行 は,監禁結果 の内容 で はない (移行が終 了 して も,監禁結果 ひいては 監禁罪 は終 了 しない) と考 え られてい るのであ

る。

そ うす る と,非摘示状態か ら摘示状態への移 行が,名誉穀損罪 における事実摘示結果 の内容 をなすか香 か は, ち ょうど,盗 品等 の占有 の引 き受 けが 「保 管」 (刑256条2項) の内容 をな すか香 かの議論 におけるの と同様, これ こそが 名誉穀損罪 に よる行為者 の処罰 を根拠づ ける事 実で あるか香 かに よって決せ られ るべ き問題 だ

とい うこ とになる。

この観点か らす る と,摘示状態へ の移行が事 実摘示結果 の内容で ある とす るこ とは,やは り 妥当でない ように思 われ る。例 えば窃盗罪 にお いて, 占有移転 のみが窃取結果 の内容 をなす根 拠 は, あえてい うな らば,返すべ き他人 の財物 を返 さない こ とそれ 自体 は,図書館 の本 な どに ついてわれわれ も日常的 に犯 してい るル ール違 反 で あ って,必 ず しも刑 法上 当罰 的 で ない こ と8), このため, その起 点で あ る占有移転 の阻 止 が,窃盗罪 に よる法益保護 のい わば焦点 とな るこ とで ある と思 われ るが,名誉穀損罪 におけ る摘示状態へ の移行 には, 同様 の事情 を認 める こ とがで きないか らである。名誉穀損罪 に よる 法益保護 の焦点で あ り,事実摘示結果 の内容 と され るべ きなのは,む しろ,移行 に よって生 じ た摘示状態で あ り9), これ に先立つ摘示状態へ の移行 は,監禁罪 におけ る監禁結果 (不 自由状 態)へ の移行 と同 じく,事実摘示結果 (事実摘 示状態) に事実上常 に随伴す るがそれ 自体 は構 成 要件 要素 で ない10),入 り口的事 象 に過 ぎな い と思 われ る。

(イ) 以上 の ように考 える と,本件名誉穀損 罪 も,事実摘示行為時,す なわち,本件書 き込

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み行為 時 には終 了 しない こ とになる。

これに対 して, 山 口教授 は,名誉穀損罪が, 事実摘示状態が続 く限 り継続 す る と解す る と, 実際上 の不都合 を生 じる とされ る。す なわち,

「名誉穀損罪 を継続犯 と解 す るこ とは実際上 も 妥当で ない結論 をもた らす。例 えば, 出版物 に よる名誉穀損 の場合, どこか の古本屋で当該 出 版物 が売 られてい る限 り,名誉穀損罪 は終 了 し ない こ とにな り,告訴期 間, さらには,公訴時 効 の趣 旨が没却 されて しま う。本件 の場合で も, 記事 のキャッシュが どこか に保存 され不特定 多 数人 に よ りアクセス可能 な限 り,犯罪 は終 了 し ない こ とにな る。」11)とされ るので ある。

しか し,古本屋事例 や キャッシュ事例 におい て名誉穀損罪 の成立可能性 を認 めるこ とが,塞 当でない結論で ある とい えるか には, なお検討 の余地が残 されてい るよ うに思 われ る。

まず,犯罪 の継続 は, 山 口教授 が指摘 され る ように, ある時点 において構成要件該当性 をは じめ とす る,犯罪成立要件 が充足 されてい るか 香 かの問題 で ある。従 って,当該書籍 が古本屋 において もなお注 目を集 めてい るが, これが ま さに行為者 の計画通 りだ った (出版時 に, この 態様 での事実摘示 の故意 があ った) とい うので あれば,名誉穀損罪 の継続 を否定すべ き理 由が ない よ うに思 われ る。 この場合 に,告訴期 間や 公訴時効 の趣 旨を理 由 として犯罪 の継続 を否定 す るのは,本末転倒 で あろ う。

古本屋事例等 で名誉穀損罪 の継続 を認 めるの は妥当ではない とい う主張 には,確か に,一定 の説得力が ある。 しか し, それは, これ らのケ ースで は,事実摘示結果や故意等,名誉穀損罪 の成立要件 が欠け, あるい は,訴訟法上 の理 由 か ら,犯罪 の継続 を論 じるこ とに意味がな くな ってい る場合 が事実上 多いか らで あ って,名誉 穀損罪 の継続 を肯定す るのがお よそ不 当だか ら ではない と思 われ る。

例 えば,古本屋事例 についてみ る と, その本 が古本屋 に入荷 して棚 に並べ られた ものの, ま った く人気がな く,誰 の手 に も取 られない まま

隅 のほ うで攻 を被 ってい るな らば,人がほ とん ど訪 れない 山奥 の詞 に置かれた場合 と同様,辛 実摘示結果, ない しは,法益侵害結果で ある危 険の発生 を否定す るこ とが可能で ある と思 われ る12)。 また,書 籍 が古 本 と して どの よ うに流 通 す るか を出版 時 に知 る こ とは困難 で あ るか ら13),当該 書籍 が古本 と して活 発 に流通 して お り,古本屋 に並んでい る時点でなお事実摘示 結果 の継続 を肯定で きた として も,出版時 の行 為者 に, これについての故意 が認 め られない場 合 も多いで あろ う。いずれの場合 に も,名誉穀 損罪 はすでに終 了 していた こ とになる。

さらには,実体法上 は犯罪が継続 してい る と い えて も,訴訟法上 はすで に犯罪が終 了 して し まってい るこ ともあ り得 る ように思 われ る。例 えば,本 を出版 し (新)書店 の店頭 に並べた事 実 について起訴 され,名誉穀損 の罪で処罰 され たのであれば, その後, その書籍 が古本屋でな お注 目を集 めてい るこ とが判 明 した として も, これ を改 めて起訴す るこ とはで きないで あろ う。

結 局 の とこ ろ,本件 の Ⅹ は,本件 記事 を長 期間不特定 多数人 に閲覧可能 な状態 に置 くこ と

を意 図 して本件書 き込 み行為 に及 び, まさに意 図 した通 りの結果 を生 じさせたのであるか ら, 書 き込 み終 了後 に もなお名誉穀損罪 の継続 を認 めるこ とに,何 ら問題 はない ように思 われ る。

イ 行為 の継続 と犯罪 の継続 との関係 について (ア) 以上 の ように,本件名誉穀損罪が書 き 込 み行為時 に終 了 してい るか香 か を判断す るに は,摘示状態へ の移行 が,事実摘示結果 の内容 で あるか香 か を判断すれば足 り, この解釈問題 以外 に考慮すべ き要素 はない ように思 われ る。

ところが,学説上 は,犯罪 の終 了の判断 に際 して,構成要件的結果 と区別 された,実行行為 の継続 ・終 了 をも考慮す るものが存在す る。

例 えば,佐伯教授 は

,

「監禁罪 が継続犯 で あ るのは,監禁 が継続 してい る間は,監禁 の実行 行為 も継続 してお り,監禁罪 の構成要件 が継続 的 に充足 されてい るか らで あろ う。」14)とされ, 西 田教授 も

,

継続 犯 とは,法益侵 害 とともに

(5)

構成要件 に該 当す る実行行為 が継続 す る場合 を い うので あ る。」15)とされ る。 山 口教授 が

,

「効 果 の継続 ‑実行行為 の継続 と捉 える場合,削除 がで きな くとも,本件記事 が残 る限 り犯罪 は終 了 しない。」 とされ, また,本件 名 誉 穀 損 罪 の 実行行為 が本件 書 き込 み行為 に尽 き, これは平 成13年7月5日頃 に終 了 してい る こ とを強 調 され るの も16), この見 解 を念 頭 に置 い た もの で あ る と思 われ る17)0

そ こで,次 には, この見解 につい て,若干 の 考察 を加 えるこ とに したい。

(イ) 実行行為 とその効果 との区別 の問題 は, 従来,監禁罪 につい て,被害者 が監禁 されてい

る間,実行行為 も継続 してい るのか, とい う問 題 として議論 されて きた ところで あ る。

山 口教授 は, ドアに施錠 して閉 じ込 めた とい う類型 の監禁罪 につい て,施錠 の終 了 と共 に実 行行為 が終 了す る とされ る。す なわ ち, そ こで 成立す る監禁罪 の実行行為 は施錠行為 のみで あ り, これ に引 き続 く施錠状態 は,実行行為 の効 果 で あ る とされ るので あ る18)0

これ に反 して,佐伯教授 は,早 くか ら,監禁 罪 にお け る実行行為 の継続 を主張 されてい た。

す なわ ち

,

「監 禁 罪 が継 続 犯 で あ るの は,監 禁 が継続 してい る間 は,監禁 の実行行為 も継続 し てお り,監禁罪 の構成要件 が継続 的 に充足 され てい るか らで あ ろ う。 この こ とは,行為者 が手 で被 害者 を押 さえつ けて逮捕 してい る場合 を考 えれば容易 に理解 で きる。 この場合,押 さえ続 けてい るあい だ逮捕罪 は継続 してい るわけで あ るが,実行行為 が継続 し逮捕罪 の構成要件全体 が充足 され続 けてい る以上,犯罪が継続 す るこ とは当然 の こ となので あ る。 これ に対 して,監 禁罪 の場合 は,部屋 に閉 じ込 め る よ うな典型 的 な場合 を考 えて み る と,行為者 は最初 に部屋 に 閉 じ込 め る行為 を行 ってい るだけで あ る。 しか し,被害者 を部屋 に閉 じ込 めた まま開放 しない こ とも,監禁罪 の実行行為 として評価 で き,実 行 行為 は継 続 してい る とい え るで あ ろ う。」19)

とされ るので あ る。

(ウ) この よ うに,両教授 がい われ る実行行 為 の意味 は異 な ってお り, そ うで あ る以上, そ の存否 の判 断 に不 一致 が生 じるのは当然 の こ と で あ る。 そ うす る と, ここで の問題 は,判 断 の 当否 で はな く,実行行為 を, よ り根本的 には, 行為概 念 を どの よ うに措定すべ きかで あ るこ と

にな る と思 われ る。

まず, 山 口教授 の見解 は,行為 とは,意思 に 基づ く身体 の動静 で あ る とい う通説 的 な行為概 念 を前提 とされ る もので ある。 これ に よれば, 監禁罪 において,犯人 が その手 で施 した施錠 は 行為 で あ るが,脱 出 を試 みて ドア ノブを回そ う

とした被害者 の力 を錠 の留 め金 が妨 げ, あ るい は,壁 に体 当た りした被害者 の身体 を壁 が跳 ね 返 した事象 は,錠 や壁 が犯人 の身体 で ない以上, 犯人 の行為 で はない こ とにな る。

しか し, これ に対 して は,犯 人 は

,

「自分 の 手 で押 さえつ け る代 わ りに部屋 の壁 とい う物理 的手段 を用い てい る」20)だ けで あ り, この こ と が果 た して,行為 の存否 を区別 す る根拠 とな り 得 るか, この よ うな区別 を生 じさせ る行為概念 が妥 当で あ るか とい う疑 問が直 ちに生 じざるを 得 ない。 そ もそ も,犯人 が, 自 ら扉 を押 さえ続 けて被 害者 を監禁 してい る場合 で あ って も,被 害者 は,扉 を押 さえつ け られてい るか ら出 られ ない ので はな く,壁 が あ るか ら出 られ ない のだ ともい える。押 さえつ け られていて開か ない扉 と,頑丈 で破 れ ない壁 とは,被 害者 の移動 の 自 由 を妨 げ る点 において何 ら選ぶ ところがない の で あ り, 日常用語 の上 で は ともか く,刑法理論 上 は,両者 を区別 すべ き理 由が ない よ うに思 わ れ る。

また,身体性 を含 んだ通説的 な行為概念 が, 現実 の場面 で どこまで徹底 されてい るのか, ま た,徹底 し得 るのか に も疑 問が残 る。例 えば, 覚せい剤 を自己が運転 中の車 の ダ ッシュボ ー ド に入 れてい た者 を,覚せい剤所持 罪 の現行犯 と して逮捕 で きるこ とには,何 の疑 問 も抱 かれな い と思 われ るが, これ は,覚せい剤 をダ ッシュ ボ ー ドに入 れた行為 の効 果 (覚せい剤 が ダ ッシ

(6)

ユボ ー ド内に存在 す る とい う事象) もまた,覚 せい剤所持罪 の実行行為 で あ る所持 で あ るこ と が,当然 の前提 とされてい るか らで あ ろ う。 同 様 に,殺人事件 におい て,拳銃発射行為 が実行 行為 で あ る とされ, あ るい は,傷害事件 におい て,投石行為 が実行行為 で あ る とされ る場合 に, 引かれ るべ き引 き金 や,投 げ られ るべ き石 を視 界 の外 に置い た,指 や腕 の動 きのみが実行行為 と して観 念 され て い るか21), また, そ う観 念 すべ き理 由が あ るのか に も,疑 問が大 きい。

この よ うに考 える と,い わゆ る効果 を も含 む もの として行為概念 を措定す るのが,む しろ妥 当 で は ない か と思 わ れ る22)。今 日で は,身 体 の動 をそ もそ もの最初 か ら含 まない,効果 のみ に よって法益 を侵害す るこ とも十分 に可能 で あ るが23), この場 合 に,行 為 の存 在 を否 定 して 処罰 を断念す るの も, これ を身体 の静 で あ る と して不作為 とす る (そ して,当該犯罪 は不作為 犯 で あ る とす る) の も,いず れ も妥 当で ない と 思 われ る。身体性 を含 ん だ通説 的 な行為概念 の 意義 は,行為 とされ,処 罰対象 とされ るべ きこ とが 自明で あ る身体 の動 ばか りで な く,身体 の 静 も, これ が意 ノ馴 こ基 づ く限 りは24)処 罰 対 象 とな り得 るこ とを述べ るこ とに あ り, これ を超 えて,身体性 が行為 の必須 の要件 で あ る とに ま で は及 んでい ない と解 す るのが妥 当で はないか

と思 われ る。

この よ うに,効果 を も行為 に含 め る見解 に対 して, 山 口教 授 は, まず,「効 果 が継続 す れ ば それ を惹起 した行為 が継続 す るな ら,後遺症 が 残 る傷 害 の事案 で は,被害者 が死亡す る まで傷 害行為 , さらに犯 罪 は終 了 しない こ とにな りか ねず疑 問で あ る。」25)とされ る。

しか し,効果 の継続 に よる行為 の継続 を肯定 した として も,新 た な結果発生 が ない ので あれ ば,構成要件該 当性 を肯定 す るこ とはで きない。

傷 害 の後遺症 につい て は, これが,例 えば,辛 指 の喪失や麻痔等 で あれば, これ 自体 に新 た な 傷 害結果 ‑生理的機能 の障害 の発生 を認 め るこ とがで きない か ら,傷害罪 の継続 は認 め られ な

い と思 われ る。 これ に反 して,後遺症 の内容 が 疫 病 の継 続 や26)身体 の他 の領 域 に現 に生 じつ つ あ る生理機能 の障害 で あれば,傷害結果 の継 続 的発生, 払いては,傷害罪 の継続 を肯定 し得 る と思 われ るが27), これ が直 ち に不 当 な結 論 で あ る とは思 わ れ ない㌶)。 も っ と も, この場 合 も,当該結果 と行為 との間の因果 関係 の立証 に問題 が あ り, あるい は,すで に主 た る傷害結 果 につい て処罰 が行 われてい る等 して,傷害罪 が事実上終 了 してい る場合 が多い で あ ろ う。

山 口教授 は また,行為 の継続 を肯定 して しま うと,人 を誤 って監禁 して しまった者 が後 に こ れ に気付 いた場合 に,解放 が不可能 で あ って も, 以後,監禁罪 が成立す る とい う帰結 が不可避 で あ る ともされ る29)0

ここで監禁罪 の成 立 を肯定 す るのは確 か に不 当で あ るが, この帰結 が不可避 で あ る とい える か には疑 問が残 る。監禁 の事実 に気付い た行為 者 には,確 か に,監禁 の故意 が あ る とい って も 良い が, だか らとい って,被害者 に以後生 じる 移動 の 自由の侵害が,故意行為 に よって惹起 さ れ た こ とに な るわ けで は ない か らで あ る30)。 施錠 す るタイ プの監禁罪 に実行行為 の継続 を肯 定 す る立場 に立 った としで も,故意 な く開始 さ れた監禁 において,監禁結果 との間 に因果 関係 を肯定 で きる故意行為 は,や は り,解放 しない とい う不作為 で しか あ り得 ず, 山 口教授 が あげ られ る解放 が不 可能 な設例 で は,監禁罪が成立 す る余地 が ない と思 われ る。

(ェ) もっとも,以上 の よ うに,効果 も行為 で あ る と考 える として も,佐伯教授 が,行為 の 継続 の観 点か ら継続犯 を特徴付 け られ るこ とに は, なお疑 問 が残 る。教 授 は,「継続 犯 の特徴 は,実行行為 が継続 す るこ とに よって,法益侵 害 と構成要件 の充足 が継続 す る とともに,実行 行為 が終 了す れば,法益侵 害 が終 了 し犯罪 も終 了す るこ とにあ る とい える。す なわち,実行行 為 の継続 と犯罪 の継続 が一致 してい る点が特徴 なので あ る。」31)とされ るので あ るが,効 果 を 含 む佐伯教授 の用語法 に よる行為 は,状態犯で

(7)

ある窃盗罪 において も,法益侵害結果 の発生 ・ 終 了の時点 まで,常 に継続 してい る ように思 わ れ るか らで ある32)0

例 えば, 甲が 自 らの手 で商店 の店先か ら商品 を盗む場合,実行行為で あ る窃取行為 の終 了時 期 と,法益侵害で ある商 品の占有移転 の終 了時 期 とは,一致す る と思 われ る。 また, 甲が飼い 犬 に命 じて商品 を盗 ませた場合,手 で盗 る代 わ りに犬 に盗 らせた とい える以上, 甲の命令行為 のみでな く, 甲の命令 の効果,す なわち,犬 が 商店 に赴いて商 品 を盗 るの も甲の実行行為 の一 部で ある とされ る と思 われ るが, ここで も,実 行行為 の終 了時期 と法益侵害 の終 了時期 とは一 致す るで あろ う。

この よ うに,実行行為 お よび結果発生 の継続 を継続犯 の特徴 とし, この観点か ら,窃盗罪 と 監禁罪 とを, ひいては,状態犯 と継続犯 とを区 別 す る見解 には,疑 問が残 らざるを得 ない33)0 両者 の違い は,財物 の 占有 がある状態か らない 状態への移行,移動 の 自由があ る状態か らない 状態へ の移行 それ 自体 が, それぞれの罪 の構成 要件要素 で あ るか香 か とい う,「構成要件解釈 の問題」34)に尽 きるのではないか と思 われ る35)0

(オ) この よ うに考 えるな らば,本件 におい で も, ア ップロー ドボ タンを押 した こ との効果

として,本件記事 が掲示板 に掲載 されてい る間, 手 に持 った プラカー ドを掲 げ続 けて事実 を摘示

した場 合 と同様

,

Ⅹ の実 行 行為 が継 続 してい る と考 えるか, それ とも, ア ップロー ドボタン を押 した瞬間に実行行為 が終 わ ってい る と考 え るかは,名誉穀損罪 の継続 の有無 とは無 関係 で あるこ とにな る。本判決 は,本件名誉穀損罪が 既遂後 もなお継続 してい る とす る一方で,行為 の継続 は特 に問題 としてい ないが, これ も,同 様 の理解 に立 った もので あろ う。

法益侵害結果 (危険) の発生 の終 了につい

この ように,本件名誉穀損罪が,事実摘示行 為 の終 了に よっては終 了 してい ない とす る と, 次 に考 えられ るのは,法益侵害結果 が新 たに発

生 しな くな った こ とに よる終 了で ある。 この観 点か ら,事実摘示行為 の終 了 と同時的 に本件名 誉穀損罪 が終 了す る とされ るのは,林美 月子教 授で ある36)0

教授 は,次 の ように述べ られ る。「この場合, 構成要件的危険の継続 とい う見地か らも,構成 要件 的危険の継続 的発生 は否定 され るよ うに思 われ る。公然性 を要件 とす る名誉穀損罪 は,名 誉 を穀損すべ き事実 を不特定 多数 の者 の視聴 し 得 る状態で行 うこ とが必要で あ り, イ ンターネ ッ ト上 の記事 の書 き込みに よって事実 を摘示す る場合 には,既 に相当広範 囲の者 が記事 に触れ, 名誉 が穀損 され る危険性 が発生 し, その後 の記 事 の残 存 状 態 は,当初 の危 険 と同様 の危 険 を 刻 々 と発生 させ るものではない と考 えられ るか

らである。」37)0

林教授 の この見解 は,事実摘示結果 に よって 現 に生 じてい る危険 (い わば,現実的 な抽象的 危険) ではな く,事実摘示結果 に よって将来生 じるであ ろ う危険 (いわば,潜在的 な抽象的危 険) が,抽象的危険犯 における法益侵害結果 だ とされ る もので あ ろ う38)。 この理 解 は,放 火 罪 が,即成犯39)ない しは状 態犯 で あ る とされ

る場合 に も採用 されてい る と思 われ る。

しか し,抽象的危険犯一般 に もい えるこ とで あるが,事実摘示結果が現 に存在 しなければ名 誉穀損罪が成立 しない とい うこ とは, 同罪 の法 益侵害結果 としての危険 も,事実摘示結果 が現 に存在 しなければ生 じない よ うな ものに限定 さ れ るべ きではないか と思 われ る。林教授 が着 目 され る危険 は,事実摘示結果が未 だ存在 しない 時点,例 えば,行為者が,明 日事実 を摘示 しよ ラ, と考 えてい る時点においてすでに認 め られ 得 る危険であるが,名誉穀損罪 の成立 には これ で足 りる とい うこ とになる と,事実摘示結果が 同罪 の成立要件 とされてい る意味が,減殺 され るように思 われ る。

また, この理解 に よれば,記事 が掲載 され続 けた場合 と,摘示後す ぐに削除 された場合 とで, 生 じた法益侵害 の量 は同 じだ と考 えるこ とにな

(8)

る と思 われ るが, これが妥当で あるかに も疑 問 が残 る。町野教授 は,放火罪 は継続犯で ある と され,焼燈 が継続 してい る限 り,公共 の危険 も 発 生 し続 けてい る とされ るが40),名誉 穀 損 罪 について も同 じように考 えるべ きで はないか と 思 われ る。

さらに,確 かに,犯人 が,特定 の集団のみが 関心 を持 ってその摘示 を待 ち構 えてい るが,描 示後 は関心 が急速 に薄 れ,す ぐに見 向 きもされ な くな る とい う性質 を持 った媒 体41)に事 実 を 摘示 した場合 には,林教授 の指摘 が妥 当す る よ うに も見 える。 しか し,本件 の よ うにイ ンター ネ ッ トの掲示板 に事実 を摘示 した場合 には,被 害者 の名誉 が穀損 され る危険 は,一般消費者 向 け新商品の広告効果 の ように, あるい は,放火 に よる公 共 の危 険 の よ うに42),摘 示 後,む し ろ,急激 な上昇 カーブを描いて拡大 してい くの ではないか と思 われ る。 もち ろん, これ もいず れは衰 え,林教授 が指摘 され る 「残存状態」 に 至 るで あ ろ うが, そ こにおいて も,構成要件 的 結果 である危険の発生 は,規模 を減 じなが らも 継 続 す る よ うに思 わ れ る43)。 これ を, この よ うな事態が論理的 にあ り得 ない窃取後 の違法状 態 と同視す るこ とがで きるのかには, なお疑問 を留保 したい44)

(2) 削除依頼行為 時点 にお け る名誉 穀損罪 の 終 了について

ア 作為義務 の履行 に よる終 了について (ア) この よ うに,名誉穀損罪 の構成要件 の 解釈 の観点か らも,結果発生 の観点か らも,本 件名誉穀損罪が,本件記事 がネ ッ ト上 で摘示 さ れた平成13年7月5日の時点 で は, なお終 了 してい なか ったのだ とす る と,次 に問題 となる のは, これが,いつ終 了す るのかである。

この間題 について, 山 口教授 は,書 き込 み行 為時 における終 了 を認 めない のであれば,本件 記事 が どこか に残 っていて,不特定 多数人 が こ れにア クセス可能 で ある限 り,本件名誉穀損罪 は終 了 しない こ とに な る とされ45),林 幹 人 数 投 は, これ よ り早い時点ではあるが,本件記事

が掲示板 か ら削除 され るまでは終 了 しない とい う見解 を示 されてい る46).両教 授 の見解 にお い て は,Ⅹ の削 除依 頼 行 為 は,名 誉 穀 損 罪 の 終 了に とっては無意味で ある とされてい るこ と にな る。

ところが,本判決 は,次 の よ うに判示 して, 削除依頼行為時点における名誉穀損罪 の終 了 を 肯 定 した。す な わ ち,パ ス ワー ドを忘 れ たⅩ が,警察 にホームペ ージ管理人 の電話番号 を照 会 し,警察 が, こち らか ら管理人 に依頼 す る旨 を返答 した上,管理人 に連絡 を取 って記事 の削 除 を依頼 し,管理人 が これに異 を唱 えてい なか った とい う事実 は,「被 告人 が, 自 らの先行行 為 に より惹起 させた被害発生 の抽象的危険 を解 消す るために課せ られていた義務 を果 た した と 評価 で きるか ら,爾後 も本件記事 が削除 されず に残 っていた とはい え,被告人が上記 申入れ を した時点 を もって,本件名誉穀損 の犯罪 は終 了 した と解 す るのが相 当で あ る。」 とい うので あ る。

ここでは,不作為 ない し不作為犯 とい う言葉 は用い られてい ないが,本判決 は,既遂後 にな お継 続 す る本件 名 誉 穀 損 罪 を

,

Ⅹ が本件 記 事 を掲示板 に放置 して顧 みなか った不作為犯 と構 成 し, これが,作為義務 の履行,す なわち,不 作為 の終 了に よって終 了 した と考 えたので あろ

47)

0

(イ) これに対 しては,作為 に よる名誉穀損 罪が既遂 に達 して終 了 した後 に,不作為犯 とし ての名誉穀損罪の成立お よび継続 を肯定す るこ とは,告訴期 間 ・公訴時効期間の制 限 を潜脱す るこ とにな って疑問で ある とい う山 口教授 の指 摘 がある48)0

しか し,記事 の摘示状態が継続す るに も拘 わ らず,名誉穀損罪が既遂 に達す る と同時 に終 了 す る とい うこ とは,事実 の非摘示状態か ら摘示 状態へ の移行 が,名誉穀損罪 の構成要件要素で ある とい うこ とで ある。従 って,本判決 が, ち し仮 に, この前提 に立 ちなが ら既遂後 に不作為 犯 としての名誉穀損罪 の成立 を肯定 したのだ と

(9)

すれば,本判決 が冒 した無理 は,告訴期 間等 の 制 限の潜脱 どころではな く,犯罪成立要件 を欠 くところで犯罪 の成立 を肯定す る とい う無理 で あ った こ とに な る49)。 この こ とを考 慮 す るな らば,本判決 が不作為 に よる名誉穀損罪 を問題 に したのは,作為犯 としての名誉穀損罪が既遂 と同時に終 了す るため,爾後 の事態 を不作為犯 と構成 して,い わば犯罪 の延命 を図 った とい う のではな く,本件名誉穀損罪が作為犯 として継 続 してい るこ とを認 めつつ, これ を不作為犯 と

して (あ るい は,不 作 為 犯 的 に)表 現 した も の50)と理 解 す るのが,む しろ事 実 に近い ので はないか と思 われ る。

(ウ) 仮 にそ うで ある とす る と,本判決 の問 題点 は,故意作為犯 の犯人 に,犯罪 を中止すべ き作為義務 を肯定 した こ とについての (それ 自 体小 さ くはない)疑 問 を措 けば,本件 において 不作為犯 としての名誉穀損罪 を問題 にす る場合,

これが作為犯 としての名誉穀損罪 とは別個 の犯 罪で あるこ とを看過 してい る点, このため,不 作為犯 としての名誉穀損罪 の終 了に よって, こ れ といわば並行的 に継続 してい る作為犯 として の名誉穀損罪 の終 了 まで をも直 ちに根拠づ けて い る点で ある と思 われ る。

す な わ ち

,

Ⅹ に,本 件 記 事 を削 除 す るた め に行動すべ き作為義務 がある とい う前提 に立つ な ら,確 かに,本件記事 が掲載 された直後か ら, 不作為 に よる名誉穀損罪が成立,継続す るこ と に な るで あ ろ う し,Ⅹ が,警 察 に連 絡 す る等

して作為義務 を履行 した こ とに よ り,構成要件 該当行為 が欠如す るに至 り, これが終 了す るこ とに もな る と思 われ る。 しか し, これは,不作 為犯 としての名誉穀損罪がそ うで ある とい うだ けの こ とで あ って, これ と並行的 に, その成立 要件 の充足 が認 め られ る51)作為 犯 として の名 誉穀損罪 の終 了 とは,直 ちには関係 がない こ と で ある (作為犯 としての名誉穀損罪 は,それ 自 体 の成 立要件 が欠 け るに至 った ときに終 了す

る)0

例 えば, 甲が乙 を蔵 に押 し入 れて施錠 して監

禁 した ときには,当然,作為犯 としての監禁罪 が成立す るが, 甲に, 乙 を解放すべ き作為義務 を肯定で きる とい う前提 (この前提 自体 には疑 問の余地 もある) に立つな ら,不作為犯 として の監禁罪 も並行的 に成立す るこ とにな ろ う。 こ の とき, 甲が,途 中で鍵 をな くす等 して, 乙 を 解放す るこ とがお よそ不可能 になれば,作為可 能性 が消滅 し,不作為犯 としての監禁罪 は終 了 す るが,作為犯 としての監禁罪 まで もが終 了す るわ けで は ない52)。 甲が, 乙 は 自力 で脱 出 し た, あるい は蔵 の中で死亡 した と誤信 した場合 (故意 の消滅) も同様 で あ る53)。本件 におい で ち,不作為犯 としての名誉穀損罪 の終 了 を認定 しただけでは,作為犯 としての名誉穀損罪 の終 了が未 だ根拠づ け られてい ない と思 われ る。

イ 因果関係 の消滅 に よる終 了について (ア) とはい え,本判決が,削除依頼行為時 点 における本件名誉穀損罪 の終 了 を肯定 した こ

とは, その結論 において妥当だ った と思 われ る。

概 ね この時点以降の事実摘示結果 の発生 には,

Ⅹ が 平 成13年7月5日に行 った 事 実 摘 示 行 為54)との間 の因果 関係 を肯定 す るこ とがで き ない と思 われ るか らである。

す な わ ち

,

Ⅹ が警 察 に対 して行 った削 除依 頼行為 は,警察が本件記事 の問題性 をすでに認 識 していた と考 えられ るこ と,警察 が,記事 の 問題 性 を掲 示板 管理 人Cに説 明 し理解 させ た 上で削除 を依頼す る と考 えられ るこ とか ら,記 事 の削除に至 る蓋然性が相当に高度 な行為 で あ った と考 え られ る (実際 に も,C は

,

「異 を唱 えてい なか った」程度 には説得 されてい た)。

この こ とか らす る と, これ ら,本件記事 の削除 に向け られた一連 の行為 の介入 に も拘 わ らず, 本件記事 が削除 されず,事実摘示結果 が生 じ続 けた事態 に対 しては,経験的 に相当な因果経過 で は ない55), あ るい は

,

Ⅹ の事 実摘 示 行為 の 危 険 の現実化 で はない56)とい う評価 を与 える こ とが,一応可能 だ と思われ る (削除依頼行為 以後 の事実摘示結果 は,む しろ

,C

の故意不作 為 に帰 責 され るこ とにな る)。非現実的 な例 で

(10)

はあるが,監禁犯人が,十分 な証拠 を添 えて, 精確 な監禁場所 を警察 に通報 したのに,警察 の 手違いで被害者 がその後数 日解放 されなか った 場合 な どに も, 同様 に,通報 の時点 (正確 には, 手違いがなければ解放 されていたはず の時点)

におけ る犯罪 の終 了 を認 め るべ きで ある と思 わ れ る。 この場合,通報 したのが犯人 自身で な く, 第三者 で あ って も, 同 じ時点での終 了 を認 め る べ きであ る と思 われ るが, これは, ここでの犯 罪終 了の根拠が,作為義務 の履行 ではな く,因 果 関係 の消滅 だか らで ある57)58)0

(イ) また,本判決 が した ように,作為義務 の履行 と,並行す る作為犯 の終 了 とを関連づ け るこ とに も, まった く根拠がない わけではない。

本件 において もそ うであ った よ うに,作為義務 の内容 をなす とされた行為 (い わゆ る

,

「期待 された行為」59)) に,高度 の危 険除去効 果 ない しは結果 回避効果 が見込 まれ る場合 には, その 介入 に も拘 わ らず結果が発生す るのは異常 な事 態で あ り, そ こで は,危険の現実化 の有無 ない しは因果経過 の通常性 が,疑 われ るこ とにな る と考 え られ るか らで ある。

例 えば, 甲が ホテル の一 室 で,13歳 の少女 で ある乙に覚せい剤 を注射 し, 乙が錯乱状態 に 陥 ったが 甲が これ を放置 して乙が死亡 した とい う事件60)におい て,控訴審裁判所61)は,当該 地 の医療体制 や当時 の道路事情等 を詳細 に検討 した上, 甲には, 乙が 「前記 の錯乱状態 に陥 っ た と認 め られ る翌8日午前零時半 ころ以降の時 点 において,‑‑‑蹟躍す るこ とな く救急医療 を 要請すべ き義務 が あ った とい うべ きで あ り,被 告人 が右 の義務 を十分尽 くしておれば,同女 を 救命す るこ とがで きた と認 め るこ とがで きる」

とした。仮 に, 甲がその時点で救 急医療 を要請 したに も拘 わ らず 乙が死亡 していたので あれば (この結果 が生 じるた めには,搬送 中の交通事 故や医師の故意 な どとい った異常事態 の介入 が, 事実上 必要 で あ ろ う), 甲が,実際 の事件 とは 異 な り, 乙の同意 を得ず に覚せい剤 を注射 して いたのだ として も, この注射行為 と乙の死亡 と

の問の因果関係が否定 され る (単 なる傷害罪 と され る)可能性がある と思 われ る。

(ウ) とはい え,期待 された行為 を しなか っ た不作為 と結果 との間の因果関係 は,危険 を創 出 した作為 と結果 との間の因果 関係 とは論理 的 に別 の もので あるか ら,両者間に相関関係 が あ る として も, それは,事実上 の ものに過 ぎない。

行為者 の能力的 な限界等 のために, それほ どの 危険除去効果 ない しは結果 回避効果 が見込 まれ ない行為 を,期待 された行為 として措定せ ざる を得 ない場 合 もあ るが62), この場 合 に は,期 待 された行為 が履行 されたに も拘 わ らず結果が 発生 した場合 に,履行があ った こ とを理 由 とし て,危険 を創 出 した作為 と結果 との間の因果関 係 が疑 われ るこ とはない と思 われ る。

例 えば,母親 甲が,泳げない6歳児 の息子 乙 を, 自己の過失で桟橋 か ら湖 に転落 させて しま った とき, 甲 も泳 げなか った とす る と, 甲に期 待 され る行為 は, 自 らが溺 れ る危険 を冒 して湖 に飛 び込 む こ とで は な く63),浮 き輪 を投 げ込 み, あるい は, ライフセ ーバ ーに急報 して救助 を求 めるこ と等 なので あろ う。 甲が これ を した に も拘 わ らず救助が間に合 わず, 乙が溺死 した とす る と,期待 された行為 の履行 があ ったか ら とい って, 乙 を転落 させて しまった甲の作為 と 乙の死 との間の因果関係 が否定 され るこ とはな い と思 われ る。

(ェ) この よ うに,本 判 決 が

,

Ⅹ の作 為 義 務 の履行 を根拠 として,故意作為犯 としての本 件名誉穀損罪 の終 了 を根拠づ けたのは,結果的 には ともか く,理論的 には,やは り妥当ではな か った と思 われ る。

しか し, よ り根本的 な疑問 は,本件 において は,裁判所が作為義務 の履行 を論 じてい る前提 で あ る不作為 に よる名誉穀損 罪 が

,(

Ⅹ の作為

義務 を肯定 した として も)削除依頼行為 のは る か以前 に終 了 していたのではないか とい うこ と で ある。例 えば,上 の桟橋事例 で, 甲が, ライ フセ ーバ ーに救助要請 をす る等 の作為 に出なか った と仮定 してみ る と, この事例 においては,

(11)

不作為 と結果 との間 の因果 関係 (結果 回避可能 性) が欠 けてい る (期待 された行為 に出て も, 乙 を救命 す るこ とがで きなか った) か ら, 甲の 不作為 には,殺 人未遂罪 は ともか く,殺人既遂 罪 の成 立 は認 め る こ とが で きない64)。 この こ とは,本件 に も, その まま当て は まる よ うに思 われ る。

す な わ ち,Ⅹ は,裁 判 所 が,Ⅹ に 「課 せ ら れてい た義務」 で あ る とす る削除依頼行為 を行

った ので あ るが,事実摘示結果 は, その後 も発 生 し続 けた。 この こ とは,本件 におい て,期待 された行為 を行 って も結果 を回避 で きなか った こ との決定 的 な証拠 で あ る と認 め ざるを得 ない よ うに思 われ る65)。 そ うす る と,本件 で は

,Ⅹ

がパ ス ワ ー ドを憶 えてい た 間 は,Ⅹ に作 為 義 務 が あ るこ とを前提 として,不作為 に よる名誉 穀損罪 の成 立 を肯定 す るこ とがで きるが,パ ス ワー ドを忘 れて しまってい た削除依頼 行為 時 に は, それ も,すで に終 了 して しま っていた こ と に な る66)67)。 こ うな る と

,

Ⅹ の削 除依 頼 行 為 時 に継続 してい た犯罪 は,実 は,書 き込 み行為 を構成要件該 当行為 とす る,作為犯 としての名 誉穀損罪 だ けで あ り,本件裁判所 も,最初 か ら

これの終 了 を問題 に してい た こ とにな る。

5 おわ りに

本判決 が,作為義務 の履 行 を問題 に した のは, あ るい は,Ⅹ と して はで きるだ け の こ とを し たのだか ら名誉 穀損罪 は終 了す る とい う説 明 の 方 が,因果 関係 を問題 にす る説 明 よ りも説得力 におい て勝 る と考 えたか らか も知 れ ない。 この 発想 をさらに遡 る と,犯罪 の成否 を作為犯 の構 成 で検討す るか, それ とも不作為犯 の構成 で検 討す るか は,犯罪 をい わば素直 に表 か ら見 るか,

それ とも裏 か ら見 るか の違い に過 ぎず, どち ら を採 るか は,事案 の解決 に どち らが な じむか の 問題 に過 ぎない とい う認識68)に至 る よ うに も 思 われ る。 しか し, この認識 は, 同一 の行為 を 問題 に してい る限 りに おい て正 しい ので あ っ て69),行 為 が 異 な る場 合 に は,い くら罪 名 が

同 じで あ るか ら とい って も, この よ うな こ とは い えない70)。書 き込 み行 為 を構 成 要 件 該 当行 為 とす る名誉穀損罪 と,記事 を削除 しない不作 為 を構成要件該 当行為 とす る名誉穀損罪 とは別 個 の犯罪で あ り,後者 が終 了 して も,前者 が終

了す る とは限 らない ので あ る。

本 判 決 は, また

,

Ⅹ に本 件 記 事 を削 除 す べ き作為義務 が あ るか否 か をほ とん ど検討 してい ない が, これ もまた,上 の認識 に由来 してい る ので はないか とい う疑いが あ る。確 か に, あ る 行為 を作為 と構成 して故意犯 の成立 が肯定 され るので あれば, その同 じ行為 を不作為 と構成 し て も,行為者 には常 に作為義務 が認 め られ るこ とに な る71)。 しか し, それ とは別 の行 為 を取 り上 げて不作為犯 を問題 にす るので あれば, そ こでの作為義務 の存否 は, これ を‑ か ら検討 し な くて は な らない。Ⅹ の作 為 義 務 を肯 定 す る に当た って,本件裁判所 が特段 の検討 を行 わな か った理 由が

,

Ⅹ の書 き込 み行 為 に名 誉 穀 損 罪 が成立 してい るこ とで あ ったのだ とす る と, その妥 当性 には疑 問が大 きい。 この問題性 は, 不作為 の共犯 との関係 で一層拡大す る よ うに思 わ れ るが72), これ につ い て は,機 会 を改 め て 検討す るこ とに したい。

1) 本件 には,告訴期 間 の起算点 に関す る問題 も含 まれてお り,実際 の事件 において は, これが まさ に争点で あ ったが,紙幅 の都合 もあ り,検討対象 か ら除外す る (多 くの見解 が一致 して認 めてい る よ うに,告訴権者 が犯人 を知 って も,犯罪 が終 了 す るまで は,告訴期 間は進行 しない とす るのが妥 当である と思われ る)。 この間題 に関 しては,例 え ば,松 田俊哉 「判解」最判解説平成18498頁以 下 に,詳細 な検討 と文献 の紹介がある。

2)Bの告訴 は,1310月16日にすでにな され てい た。A,Bの告訴 時期 に この よ うなずれが生 じたのは,告訴状 にAの氏名 の記載漏 れがあるこ とが後 にな って判 明 したためで ある とい う (判 タ 1169316頁 の解説参照)0

3) 本判決 は,Aが犯人 を知 った 目がいつで あるか を認定 しなか ったが,一審裁判所 は, これ を,辛 1539日だ と した よ うで あ る (判 タ1169 316頁)0

4)山 口厚 「イ ンターネ ッ ト上 の名誉穀損罪 におけ る終 了時期」平成17年度重判解159頁。

(12)

5)山 口厚 『刑法総論』 (2版)(2007年)49頁参 照 。

6)山 口教授 が,「実行行為 で ある公然事実摘示行為 が継続 しない」 こ とを,書 き込 み終 了時 に名 誉穀 損罪 が終 了 した根拠 とされてい るこ とか らす る と,

ここで問題 に され,香 走 されてい るのは,事 実摘 示結果 で はな く,実行行為 と して の事 実摘 示行為 (記事 の書 き込 み とア ップ ロー ド行為) の継続 で あ る よ うに見 える。

しか し, 山 口教授 は,実 行行為 が継続 しな くて も犯 罪 は継続 し得 る とい う立場 に立 って お られ る か ら (被 害者 が解放 され る まで終 了 しない監禁 罪 につい て,実行行為 の継続 を主張 す る見解 を批判 して,実行行為 は [多 くの場 合]施 錠 行為 のみで あ り,実行行為 は施錠完 了 と同時 に終 了 してい る とされ る [山 口 ・前 掲 注5)48頁]), こ こで も, 文字通 り実行行為 として の事 実摘 示行為 の継 続 を 問 題 に して お られ るの で は な く,事 実 摘 示 結 果 (よ り具体的 には,窃取結果 におけ る占有移転 とパ ラ レル に位 置づ け られ た,摘 示 状態 ‑ の移 行) の 継続 を問題 に してお られ る もの と推測 され る。

7) 山 口教授 の この見解 は, あ るい は,抽 象的危 険 犯 で あ る名誉穀損 罪 につい て,後 述 す る林 美 月子 教 授 と同様 の法益理解 に立 たれ る こ とに も基 づい てい るのか も知 れ ない。 この観 点 か らの検 討 は, 本項 の 「ウ」 で行 う。

8)財物 が失 われた状態 は違 法状 態 に過 ぎない とい う一般 的 な評価 は, この認識 に 由来 す る よ うに思 われ る。林幹人 「犯罪 の終 了時期一最 高裁平成18 1213日決定 を契機 として‑」刑 事 法 ジ ャー

ル9 (2007年)69頁 も参 照。

9) 事実 が摘示 されてい る状態 は,「刻一刻 の侵害 が 同等 の侵 害 性 を備 えた もので あ る」 (山 口前 掲 注

5)48頁), あ るい は,摘 示状 態 が続 く限 り名誉穀 損 罪 は 「燃 えて い る」 (や や文 脈 が異 な るが,松 田 ・前掲注 1)509参照) と評価 され る と思 われ る。

10)す で に監禁 状 態 にあ る者 を被 害者 とす る,不作 為 に よる監禁 罪 が成 立 し得 るの は, 自由状 態 か ら 不 自由状態へ の移 行 が,監禁 罪 の構成 要件 要素 で

ある監禁結果 の内容 ではないか らで あ る。

ll)山 口 ・前掲注4)159頁。

12)後述 す る よ うに,林美 月子教 授 の見解 は, この 観 点か ら名誉穀損罪 の継続 を否定す る もので あ る。

13)手 続 が定 型 的 で あ る競 売 に お い て は (最 決 平

18・12・13刑 集6010号857頁 参 照), こ の 予 測 は容易 で ある と思 われ る。

14)佐 伯 仁 志 「犯 罪 の終 了時期 につ い て」研 修556 (1994年)17頁。

15)西 田典 之 『刑法総論』 (2版)(2010年)86頁。

16)山 口 ・前掲注4)159頁。

17) もっ とも,効 果 も行為 で あ る とし,継続 犯 を, 実行行為 が継 続 す る罪 で あ る とす る佐伯教授 らの 見解 か ら,本件 におい て名誉 穀損 罪 の継続 が直 ち に肯定 され るこ とにな るのか は,必 ず しも明 らか で はない。

例 えば,佐 伯 教授 は,監 禁 罪 につい て,実行行 為 の継続 を同罪 が既遂後 も終 了 しない こ との根拠 とされ る (佐 伯 ・前 掲 注14)17頁)一 方 で,「犯 罪 の終 了 もまた構成 要件 解釈 の問題」 で あ る とさ れ て (19頁),窃 盗 罪 が状 態犯 で あ る根拠 を, 財 物 の 占有移転 としての窃取 が同罪 の構成 要件 要

素 で あ る こ とに求 めて お られ る。 また,西 田教授 も,傷 害罪 や窃盗 罪 が成 立 と同時 に終 了す る理 由 を, そ う考 えない場合 の帰結 の不 合理 さに求 めて お られ る (西 田 ・前 掲 注15)86頁)。従 って,本 件 で問題 とな ってい る名誉穀損罪 につい て も,罪 摘 示状 態か ら摘示状態へ の移行 が 同罪 の構成 要件 要素 で あ る とされ, あ るい は,摘 示状 態 が継続 す る限 り名誉穀損罪 が終 了 しない の は不合理 で あ る とされ る場 合 には,継続 は香 定 され るこ とにな る と思 われ る。

18)山 口教授 は,「しか し,継続犯 において実行行為 が継続 す る とす るの は (それが可能 な事例 もあ ろ うが)擬 制 にす ぎない (山 口厚 ・刑 法総論 〔補訂 〕43頁。『評価 す れ ば』無 が有 に な るわ けで は ない)。施錠 した部屋 に監 禁 す る事例 で は,『施錠 された状態』 とい う実行行為 の効果 は持続す るが,

『施 錠 す る』 とい う 『意 思 に基 づ く身体 の動 静』

(実 行 行 為) は継 続 しない」 (山 口 ・前 掲 注4) 159頁) と され, ま た,「た と え ば,監 禁 罪 (

220条) は,場所 的移 動 の 自由が侵 害 され る こ と に よ り成 立 し, それが侵 害 され続 けてい る間継続 的 に成 立 し続 け るが, それ は構成 要件 要素 で あ る 場所 的移 動 の 自由の侵 害 が (刻一刻 の侵 害 が 同等 の侵 害性 を備 えた もので あ るた め)持続 的 に肯定 され,当初 の行為 (行為 自体 は必 ず しも継続 して い るわけで はない) との間 におい て持続 的 な構成 要件 該 当性 を肯定 し うるか らで あ る (この場 合 に おい て,上述 した よ うに,監禁行為 が継続 してい る との理解 が示 され るこ とが あ るのは,施錠 状 態 な ど とい う構成要件 的結果 とは区別 された監 禁行 為 の効 果 が継続す るた め, あたか も監禁行為 自体 が継続 す るか の よ うな説 明 が可能 で あ る と思 われ てい るにす ぎない)。」 (山 口 ・前掲注5)48頁) と され る。

19)佐伯 ・前掲注14)17頁。

20)佐伯 ・前掲注14)17頁。

21) 引 き金 を引 き絞 る行為 や石 を放 す行為 が実行行 為 で あ る とい うので あれ ば,引 き金 が動 き,石 が 飛 んで行 くとい う効果 もまた,行為 の一部 で あ る

とされてい るこ とにな る。

22) これ は, この問題領域 におい て そ うで あ る とい うこ とで あ り,他領 域,例 えば,刑 の変 更 に関す る 「犯罪」 (6条) の意義で ある構成要件該 当行 為 が問題 にな る場面 におい で は,行為 の継続 は, 意思活動 と同時的 な範 囲 に限 って認 め られ る と思 われ る (この点 につい て は, 島 田聡 一郎教授 に注 意 を喚起 していただいた)0

23)筋電位 や脳 波 を用 い,い わば,念 じただ けで機 械 を操作 す る技術 は,すでに特殊 な ものではない。

httpノ/www.riken.go.jp/r‑world/info/release/ press/2009/090629/index.htmlも 参 照 (2011年5 31日現在)0

24)有 意性 は行為 の要件 で はな く,身体 性 は要件 で あ る とす る見解 として,平野龍一 『刑法Ⅰ』(1972 年)113頁,町 野 朔 『刑 法 総 論 講 義 案 Ⅰ』(2 版)(1995年)123頁以下 な どがあ る。

25)山 口 ・前掲注4)159頁。

26)ただ し,町野 ・前掲注24)148頁 は,「苦痛」 に ついて否定 的であ る。

27) もっ とも,佐伯 教授 は,傷 害罪 の継続 を肯定 さ れつつ も (佐伯 ・前 掲 注14)20頁以下), この よ

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