他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 : A法人系列の特養を対象としたアンケート調査の 分析
著者 口村 淳
雑誌名 評論・社会科学
号 126
ページ 1‑13
発行年 2018‑09‑30
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2018.0000000221
要約:本研究の目的は,他職種からみた生活相談員に対するイメージや期待する役割を把 握した上で,生活相談員業務のあり方について検討することである。社会福祉法人A系列 の特別養護老人ホームを調査対象にし,生活相談員以外の専門職から102通の回答を得た。
分析の結果,生活相談員は他職種から,相談援助や連絡調整を中心とした役割を期待され ている傾向があることが明らかになった。生活相談員のあり方として,①職種間をまたぐ 領域の課題に対して積極的に関与していく必要性,②家族の境遇に配慮した上で,入所後 も家族との関係を維持できるように連絡調整を行う必要性,③現場の実態を把握した上で,
連絡調整や情報収集を行う必要性が示唆された。
キーワード:生活相談員,期待される役割,他職種,特別養護老人ホーム
目次
1.研究の背景と目的 2.研究方法
2-1.調査対象および方法 2-2.調査項目
2-3.分析方法 2-4.倫理的配慮 3.研究結果
3-1.回答者の基本属性
3-2.生活相談員に対するイメージ 3-3.生活相談員に期待する役割
3-4.生活相談員に期待または要望すること 4.考察
5.おわりに
1.研究の背景と目的
本研究の主な関心は,特別養護老人ホーム(以下,特養と記す)における生活相談員
────────────
†同志社大学社会学部嘱託講師
*2018年5月30日受付,2018年7月2日掲載決定
論文
他職種からみた生活相談員に期待される 役割と課題
──A
法人系列の特養を対象にしたアンケート調査の分析──口村 淳
†1
の役割である。特養では入所待機者の問題が取り沙汰される一方で,入所者の重度化や 看取り介護の推進,認知症の
BPSD(行動・心理症状)への対応など課題が多く,施設
のソーシャルワーカー(1)といわれる生活相談員の関わりが不可欠といえる。これまでに,生活相談員に関する様々な視点からの研究が行われてきた。代表的なも のに,業務の遂行頻度や優先順位等を調査した研究(岡本ら
1989;中島ら 1990;佐藤
ら
1996;日本社会福祉実践理論学会 1998;東京都社会福祉協議会高齢者施設福祉部会
2006;安立ら 2010;口村 2011),特養と老人保健施設の比較により施設ソーシャルワ
ークの構造を明らかにした研究(和気
2006),タイムスタディで業務分析を行った研究
(石田ら
2010),職務満足度に焦点をあてた研究(井上ら 2011),ソーシャルワークとケ
アワーク実践の両立性に着目した研究(上田ら
2013),専門職性に焦点を当てた研究
(山下ら
2015)などがある。1980
年代後半から現在に至るまで発表されている背景には,未だに生活相談員の役割や業務内容に検討の余地があることをうかがわせる。
上述した先行研究の多くは,生活相談員自身が回答する調査形式に依拠している。つ まり,生活相談員自身が規定する業務内容ともいえる。その一方で,他職種からの評価 も必要ではないだろうか。理由の一つは,生活相談員業務は他職種との相互関係の中で 規定される場合も考えられるためである。施設におけるソーシャルワークの重要性に異 論はないが,他職種からの期待や要請と乖離していては,生活相談員が孤立してしまう 可能性もある。もう一つの理由は,他職種からの評価を得ることにより,自身の専門性 が磨かれると考えられるためである。安易に迎合するのではなく,評価内容を糧として 専門性の向上に努めることが重要と思われる。
他職種からみた生活相談員業務に関する先行調査には,筆者の調べた限り,原田
(2000)や熊坂ら(2009)がある。原田(2000)は,管理者,看護職員,介護職員を対 象に調査を行い,他職種は生活相談員に「利用者処遇上のリーダー」としての存在を望 む意識が高いと報告している。熊坂ら(2009)は,介護職員,看護職員,事務員及び栄 養士に調査を行い,ソーシャルワーク機能発揮への期待がみられる一方で,「何でも屋」
としての役割も期待されていると述べている。これらの先行調査により,他職種が生活 相談員に期待する傾向を知ることができる。
しかし,具体的な業務内容については言及されておらず,その点では検討の余地が残 されている。そこで本研究では,他職種からみた生活相談員に対するイメージや期待す る役割(業務内容)を把握した上で,生活相談員業務のあり方について検討したい。こ れにより,生活相談員業務の明確化や,実践の指針を示すことに資するものと考えられ る。
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 2
2.研究方法
2-1.調査対象及び方法
社会福祉法人
A
系列の特養(10施設)を調査対象とした。各施設の介護職員(5 通),看護職員(3通),栄養士(1通),機能訓練指導員(1通),計画担当介護支援専 門員(以下,施設ケアマネと記す,1通)に無記名,自記式の調査票を郵送した(2)。各 施設の生活相談員から,各職種に記載を請う形で実施した。回収は同封した返送用封筒 を用いて,個別に返信してもらう方法をとった。調査期間は2017
年3
月(1ヵ月間)である。回収数は
102
通(92.7%)であった。2-2.調査項目
調査項目は,①回答者の基本属性,②生活相談員に対するイメージ,③生活相談員に 期待する役割,④生活相談員に期待または要望すること(自由記述)である。
調査項目②は,原田(2000),和気(2006),口村(2010)の見解を参考に,「ソーシ ャルワーカー」「現場のリーダー」「現場の補佐」「コンシェルジュ(何でも屋)」(3)「ス ーパーバイザー」の
5
項目を設定した。調査項目③は,和気(2006),石田ら(2010),口村(2011)の先 行 調 査 を 参 考 に,
相談援助,連絡調整,付帯業務を織り交ぜた
15
項目を設定した。調査項目②は単回答,調査項目③が複数回答である。
2-3.分析方法
調査項目②と③については,単純集計及び回答者の基本属性等とのクロス集計を行っ た。
調査項目④(自由記述)については,質的分析を行った。分析方法は次の通りであ る。まず,自由記述に記載された内容から,文脈ごとに一つのデータとして抽出した。
データは個人から得た情報をそのまま使用しないために全てコード化した。次に,コー ドの内容の類似性に基づき,カテゴリを生成した。さらに,より広い領域として上位カ テゴリにまとめた。
2-4.倫理的配慮
調査依頼書に研究目的と倫理的配慮(プライバシーの保護,無記名であること,研究 目的に限定した調査結果の使用)を明記した。調査結果の集計では,統計処理を施し,
施設や個人が特定できないようにした。
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 3
3.研究結果
3-1.回答者の基本属性
回答者の基本属性は表1のとおりである。職種の項目で,施設ケアマネが
13
人と,配布数(各施設に
1
通づつ)を上回っている。これは介護職員と兼務している人がいた ためで,3人分を施設ケアマネにカウントしたことが理由である。福祉現場の経験年数では,「11〜15年」が
31.4% で最も多く,次いで「16〜20
年」(23.5%),「6〜10年」(21.6%)であった。平均年数は
11.6
年であった。3-2.生活相談員に対するイメージ
他職種からみた生活相談員のイメージについては,「ソーシャルワーカー」が
53.9%
で最も多く,次いで「コンシェルジュ(何でも屋)」31.4%,「スーパーバイザー」5.9
%,「現場の補佐」3.9%,「現場のリーダー」2.9% と続いた。「ソーシャルワーカー」
が過半数を占める一方で,「コンシェルジュ」も約
3
割みられた。「その他」が2
人みら れたが,空欄に具体的な記述はなかった。原田(2000)の調査では,生活相談員に「処 遇上のリーダー」としての存在を望む意識が高いと報告されているが,本調査では「現表1 回答者の基本属性
n=102
項目
性別 男性
女性
19 83
18.6%
81.4%
職種
介護職員 看護職員 施設ケアマネ 栄養士 機能訓練指導員
44 28 13 10 7
43.1%
27.5%
12.7%
9.8%
6.9%
資格
(重複回答)
n=128
介護福祉士 看護師 介護支援専門員 管理栄養士 社会福祉士 理学療法士 柔道整復師
あんまマッサージ指圧師
54 32 23 10 6 1 1 1
42.2%
25.0%
17.9%
7.8%
4.7%
0.8%
0.8%
0.8%
福祉現場の経験年数 平均11.6年
1〜5年 6〜10年 11〜15年 16〜20年 21年以上
21 22 32 24 3
20.6%
21.6%
31.4%
23.5%
2.9%
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 4
場のリーダー」と回答した人は
2.9% であった。
職種別にみた生活相談員のイメージは表2のとおりである。いずれの職種でも「ソー シャルワーカー」が最も多くみられた。母数は少ないものの,施設ケアマネと栄養士で は,「ソーシャルワーカー」が
7
割を上回っている。一方で,看護職員では「ソーシャ ルワーカー」と「コンシェルジュ」が同数であった。3-3.生活相談員に期待する役割
この項目は,回答者
1
人につき3
個を選択してもらう形をとった。その結果,「家族 との連絡・調整」が22.5% で最も多く,次いで「入所前の情報収集・アセスメント」
(15.0%),「苦情・クレームへの対応」(12.7%),「入・退所の調整」(12.1%),「外部機 関との連絡・調整」(10.1%)の順となった。
職種別にみた生活相談員に期待する役割は表3の通りである。いずれの職種でも「家 族との連絡・調整」が最も多く
20% を超える結果となった。2
位以降の順位は,職種 によってバラつきがみられるが,相談援助や連絡調整の役割(①②③⑤⑨)に集中して いる傾向がみられた。生活相談員に対するイメージと生活相談員に期待する役割のクロス集計が表4であ る。「現場のリーダー」と回答した者以外は,ここでも「家族との連絡・調整」が最も 多かった。「ソーシャルワーカー」と「コンシェルジュ」を比べると,「苦情・クレーム への対応」の項目で,「コンシェルジュ」は合計値より
5
ポイント高かった。逆に,「ソ ーシャルワーカー」は合計値より2
ポイント低かった。全体の傾向として,付帯業務(⑫⑬⑭⑮)の割合は
1.0〜2.0% であった。「コンシェ
表2 職種別にみた生活相談員に対するイメージ
n=102 ソーシャル
ワーカー
現場の
リーダー 現場の補佐 コンシェル ジュ
スーパー
バイザー その他
職 種
合計 102
100.0%
55 53.9%
3 2.9%
4 3.9%
32 31.4%
6 5.9%
2 2.0%
介護職員 44
100.0%
24 54.5%
0 0.0%
1 2.3%
16 36.4%
3 6.8%
0 0.0%
看護職員 28
100.0%
11 39.3%
1 3.6%
2 7.1%
11 39.3%
1 3.6%
2 7.1%
施設ケアマネ 13 100.0%
10 76.9%
2 15.4%
0 0.0%
0 0.0%
1 7.7%
0 0.0%
栄養士 10
100.0%
7 70.0%
0 0.0%
0 0.0%
3 30.0%
0 0.0%
0 0.0%
機能訓練指導員 7 100.0%
3 42.8%
0 0.0%
1 14.3%
2 28.6%
1 14.3%
0 0.0%
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 5
ルジュ」と回答した人でも同様の傾向(0〜2.1%)がみられた。
表3 職種別にみた生活相談員に期待する役割
n=306
入所 前 の 情報 収 集
・
① アセ ス メ ント
② 入・ 退 所 の調 整
③ 入所 者 へ の相 談 援 助
④ 家族 と の 連絡
・ 調 整
外部 機 関 との 連 絡
・
⑤ 調整 職
種 間 の 連絡
・
⑥ 調整
⑦ 会議 の 開 催・ 進 行
支援 困 難 事例 へ の
⑧ 対応 苦
情
・ ク レー ム
⑨ への 対 応
⑩ 介護 事 故 への 対 応
ボラ ン テ ィア
・
⑪ 実習 生 の 受入 れ
⑫ 入所 者 の 介護
行事
・ レ クリ エ ー
⑬ ショ ン の 企画
・ 実 施
⑭ 受 診 の 送 迎・ 付 添 い
入 所 者 の 外出 や
⑮ 買 い 物 の 支援
職 種
合計 306 100.0%
46 15.0%
37 12.1%
29 9.5%
69 22.5%
31 10.1%
13 4.3%
5 1.6%
15 4.9%
39 12.7%
4 1.3%
2 0.7%
4 1.3%
3 1.0%
6 2.0%
3 1.0%
介護職員 136 100.0%
23 16.9%
14 10.3%
14 10.3%
30 22.1%
10 7.4%
3 2.2%
3 2.2%
8 5.9%
20 14.7%
3 2.2%
1 0.7%
3 2.2%
1 0.7%
0 0.0%
3 2.2%
看護職員 80 100.0%
10 12.5%
10 12.5%
8 10.0%
19 23.8%
11 13.8%
5 6.3%
1 1.3%
3 3.8%
6 7.5%
0 0.0%
0 0.0%
1 1.3%
1 1.3%
5 6.3%
0 0.0%
施設 ケアマネ
39 100.0%
6 15.4%
5 12.8%
1 2.6%
8 20.5%
5 12.8%
3 7.7%
0 0.0%
0 0.0%
8 20.5%
1 2.6%
1 2.6%
0 0.0%
1 2.6%
0 0.0%
0 0.0%
栄養士 30 100.0%
3 10.0%
4 13.3%
4 13.3%
7 23.3%
3 10.0%
2 6.7%
1 3.3%
2 6.7%
4 13.3%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
機能訓練 指導員
21 100.0%
4 19.0%
4 19.0%
2 9.5%
5 23.8%
2 9.5%
0 0.0%
0 0.0%
2 9.5%
1 4.8%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 4.8%
0 0.0%
表4 生活相談員に対するイメージ別にみた生活相談員に期待する役割
n=306
入 所 前 の情 報 収 集・
① ア セ ス メン ト
② 入
・ 退 所の 調 整
③ 入 所 者 への 相 談 援助
④ 家 族 と の連 絡
・ 調整
外 部 機 関と の 連 絡・
⑤ 調 整
⑥ 職 種 間 の連 絡
・ 調整
⑦ 会 議 の 開催
・ 進 行
支 援 困 難事 例 へ の
⑧ 対
応 苦
情
・ クレ ー ム
⑨ へ の 対 応
⑩ 介 護 事 故へ の 対 応
ボ ラ ン ティ ア
・
⑪ 実 習 生 の受 入 れ
⑫ 入 所 者 の介 護
行 事
・ レク リ エ ー
⑬ シ ョ ン の企 画
・ 実施
⑭ 受 診 の 送迎
・ 付 添い
入 所 者 の外 出 や
⑮ 買 い 物 の支 援
イメ ー ジ
合計 306 100.0%
46 15.0%
37 12.1%
29 9.5%
69 22.5%
31 10.1%
13 4.2%
5 1.6%
15 4.9%
39 12.7%
4 1.3%
2 0.7%
4 1.3%
3 1.0%
6 2.0%
3 1.0%
ソーシャル ワーカー
165 100.0%
26 15.8%
19 11.5%
20 12.1%
36 21.8%
18 10.9%
4 2.4%
3 1.8%
8 4.8%
18 10.9%
4 2.4%
1 0.6%
4 2.4%
1 0.6%
2 1.2%
1 0.6%
現場の リーダー
9 100.0%
1 11.1%
2 22.2%
0 0.0%
1 11.1%
2 22.2%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
2 22.2%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 11.1%
0 0.0%
0 0.0%
現場の 補佐
12 100.0%
1 8.3%
1 8.3%
1 8.3%
4 33.3%
3 25.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 8.3%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 8.3%
0 0.0%
コンシェ ルジュ
96 100.0%
15 15.6%
12 12.5%
7 7.3%
21 21.9%
6 6.3%
7 7.3%
0 0.0%
7 7.3%
17 17.7%
0 0.0%
1 1.0%
0 0.0%
0 0.0%
2 2.1%
1 1.0%
スーパー バイザー
18 100.0%
2 11.1%
3 16.7%
0 0.0%
6 33.3%
1 5.6%
1 5.6%
2 11.1%
0 0.0%
1 5.6%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 5.6%
0 0.0%
1 5.6%
その他 6 100.0%
1 16.7%
0 0.0%
1 16.7%
1 16.7%
1 16.7%
1 16.7%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
0 0.0%
1 16.7%
0 0.0%
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 6
表5 生活相談員に期待または要望すること
総データ数=165 上位カテゴリ データ数
(%) カテゴリ データ数
(%) コード データ数
(%)
他職種との関係
に関する領域 70(42.4)
現場の理解や実態把握 28(17.0)
現場の様子を見に来てほしい 16(9.7)
現場の実情を把握してほしい 9(5.5)
職員の気持ちを知ってほしい 2(1.2)
介護職と話し合う時間をとってほしい 1(0.6)
職員への助言や指導 14(8.5)
現場が困っている時に助言してほしい 10(6.1)
頼み事がしやすい存在であってほしい 2(1.2)
外部研修を紹介してほしい 1(0.6)
職員のメンタルヘルスに取り組んでほしい 1(0.6)
他職種業務の補助 12(7.3)
現場が忙しい時に助けてほしい 7(4.2)
受診の付き添いや送迎をお願いしたい 4(2.4)
行事等を企画し実施してほしい 1(0.6)
外部機関との連絡や
調整 9(5.5)外部機関との調整をしてほしい 8(4.8)
医師との連絡や調整をしてほしい 1(0.6)
他職種との連携や調整 7(4.2)他職種との連絡や調整をしてほしい 6(3.6)
相談員もケース記録に記入してほしい 1(0.6)
相談員の知識や 技術に関する 領域
48(29.1)
業務の明確化 16(9.7)
業務を明確化してほしい 10(6.1)
他職種と業務分担してほしい 4(2.4)
ソーシャルワークを実践してほしい 2(1.2)
円滑な入退所の調整 14(8.5)
入所前の情報を提供してほしい 7(4.2)
ショート利用者の持参薬情報を収集してほしい 2(1.2)
新規入所のバランスを考えてほしい 2(1.2)
新規入所の前に現場に相談してほしい 2(1.2)
入退所がスムーズに行えるようにしてほしい 1(0.6)
専門性の向上 6(3.6)
医療知識に精通してほしい 3(1.8)
介護知識に精通してほしい 1(0.6)
コミュニケーションスキルを高めてほしい 1(0.6)
専門的な対応をしてほしい 1(0.6)
現場のリーダー的役割 6(3.6) 現場のリーダーシップをとってほしい 6(3.6)
苦情やトラブル発生時
の対応 4(2.4)苦情対応をお願いしたい 2(1.2)
トラブル発生時に対応してほしい 2(1.2)
経営的な取り組み 2(1.2) ベッド稼働率の向上に取り組んでほしい 2(1.2)
入所者との関係
に関する領域 26(15.8)
入所者への対応や
関わり 19(11.5)
入所者の要望に対応してほしい 5(3.0)
入所者との信頼関係を築いてほしい 3(1.8)
入所者ともっと関わってほしい 3(1.8)
入所者の気持ちに寄り添ってほしい 2(1.2)
新規入所後のフォローをしてほしい 2(1.2)
入所者と職員をつなぐ存在であってほしい 2(1.2)
リスクの高い入所者に付き添ってほしい 2(1.2)
入所者の状態把握 7(4.2)入所者の状態把握をしてほしい 6(3.6)
入所者について尋ねてほしい 1(0.6)
家族との関係に
関する領域 21(12.7)家族との調整や関係
構築 21(12.7)
家族との連絡や調整をしてほしい 13(7.9)
家族と職員をつなぐ存在であってほしい 3(1.8)
家族との信頼関係を築いてほしい 3(1.8)
入所後の家族のフォローをしてほしい 2(1.2)
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 7
3-4.生活相談員に期待または要望すること(自由記述)
自由記述に記載された内容からデータを抽出したところ,165個を抽出することがで きた。それらを前述の手順に従って分析したところ,44個のコード,14個のカテゴリ,
4
個 の 上 位 カ テ ゴ リ に 分 類 す る こ と が で き た(表5)。以 下 で は,上 位 カ テ ゴ リ は【 】,カテゴリは〈 〉で示す。
【他職種との関係に関する領域】は,〈現場の理解や実態把握〉〈職員への助言や指導〉
〈他職種業務の補助〉〈外部機関との連絡や調整〉〈他職種との連携や調整〉の
5
個のカ テゴリから構成される。ここでは,生活相談員の施設内外の他職種に対する姿勢や業務 内容が示されている。【生活相談員の知識や技術に関する領域】は,〈業務の明確化〉〈円滑な入退所の調整〉
〈専門性の向上〉〈現場のリーダー的役割〉〈苦情やトラブル発生時の対応〉〈経営的な取 り組み〉の
6
個のカテゴリから構成される。ここでは,生活相談員としての業務内容の 明確化や知識や技術面の向上に関する内容が示されている。【入所者との関係に関する領域】は,〈入所者への対応や関わり〉〈入所者の状態把握〉
の
2
個のカテゴリから構成される。ここでは,入所者との関係構築や状態把握に関する 内容が示されている。【家族との関係に関する領域】は,〈家族との調整や関係構築〉から成り,生活相談員 と家族との関係や,家族への連絡調整に関する内容が示されている。
4.考 察
本研究は,他職種からみた生活相談員のイメージや期待する役割等を把握する目的 で,特養の介護職員等を対象にアンケート調査を実施した。他職種からのイメージでは
「ソーシャルワーカー」が過半数を超え,次いで「コンシェルジュ」が約
3
割という結 果であった。期待する役割では,「家族との連絡・調整」が最も多く,そのほか相談援 助や連絡調整に関する役割を期待する傾向が強かった。付帯業務に該当する項目の割合 は低かった。自由記述(期待又は要望すること)を分析したところ,14個のカテゴリ から成る4
個の上位カテゴリ(【他職種との関係】【生活相談員の知識や技術】【入所者 との関係】【家族との関係】)に分類することができた。これらの結果を踏まえ,以下の3
点について考察を行う。第
1
に,他職種が生活相談員に抱くイメージと期待する役割は必ずしも一致していな い点である。本研究では,生活相談員に対するイメージについて,「コンシェルジュ(何でも屋)」と回答した他職種が約
3
割みられた。このことは,生活相談員が「何でも 屋と揶揄されることも少なくない」(和気2006)という見解を支持する結果といえる。
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 8
一方で「コンシェルジュ」と回答した人の,生活相談員に期待する役割(表
4)をみ
ると,「入所者の介護」「行事・レクリエーションの企画・実施」「受診の送迎・付添い」「入所者の外出や買い物の支援」といった付帯業務の割合は
0〜2.1% であった。また,
自由記述の分析(表
5)では,〈他職種業務の補助〉というカテゴリが生成された。カ
テゴリに含まれるコードをみると,「現場が忙しい時に助けてほしい」が過半数を占め,常時,直接援助に関わってほしいのではないことがうかがえる。これらを鑑みると,熊 坂ら(2009)のいう「(他職種は生活相談員に)直接的処遇業務への期待も持っている」
という見解には,限定的な解釈が必要といえる。生活相談員に「何でも屋」のイメージ を抱いている他職種であっても,実際に期待する役割は,付帯業務よりも,相談援助や 連絡調整に関する内容が多いことがわかる。
表
4
をみると「苦情・クレームへの対応」が,「ソーシャルワーカー」に比べ「コン シェルジュ」で高い傾向にあることがうかがえる。特養の苦情やクレームは,必ずしも 生活相談員に起因するものだけではないだろう。介護職員をはじめ他職種の業務に関係 する内容,あるいは原因が複合している内容も少なくないはずだ。しかし,施設で生じ たことに変わりはなく,施設の「誰か」が対応しなければならない。「コンシェルジュ」と回答した人に「苦情・クレームへの対応」が高い傾向だったことからもわかるよう に,職種間をまたぐ課題(苦情等)に対し,生活相談員の関わりが求められているとい えるだろう。「何でも屋」というのは,付帯業務に専念してほしいという意味ではない。
生活相談員は,現場の状況に応じ限定的に付帯業務に関わりながらも,職種間をまたぐ 領域の課題に対して積極的に関与していく必要性が示唆された。
第
2
に,家族との連絡調整が生活相談員の「主担当」として考えられている点であ る。生活相談員に期待する役割(表3)では,「家族との連絡・調整」が 22.5% で最も
高い割合を示した。また,自由記述の分析(表5)においても,〈家族との調整や関係
構築〉というカテゴリが生成された。カテゴリに含まれるデータ数をみれば,〈家族と の調整や関係構築〉(21個,12.7%)は,〈現場の理解や実態把握〉(28個,17.0%)に 次ぐ値といえる。東京都社会福祉協議会高齢者施設福祉部会(2006)の調査では,特養生活相談員の
87.6% が,家 族 と の 調 整 に「積 極 的 に 関 わ る べ き」と 回 答 し て い る。ま た,口 村
(2011)のショートステイの生活相談員を対象に行った調査では,生活相談員が必要と 認識する業務において「家族との連絡・調整」は
88.1% と高い傾向にあることが報告
されている。特養とショートステイを単純に比較することはできないものの,他職種か ら期待される役割と,生活相談員自身が必要と考える役割において,「家族との連絡・調整」に関しては,概ね一致していることが理解できる。自他ともに必要性の認識が高 いことから,特養の現場で「家族との連絡・調整」は,生活相談員の「主担当」になっ
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 9
ている可能性が考えられる。
笹谷ら(2001)は,施設が家族に期待する役割の一つとして入所者への「精神的ケ ア」をあげている。特に入所して間もない時期は,入所者に不安や不穏等の症状がみら れることもあり,そうした症状のある入所者に,家族の「精神的ケア」は有効な手だて となり得るであろう。また,近年特養では看取り介護が推奨される傾向にあり,円滑な 看取り介護を進めていく上で,家族の存在は欠かせない。入所者の生活の質(QOL)
を向上させる意味でも,家族の関わりは重要といえる。
一方,家族側に目を移すと,次のような報告がある。特養に高齢者を預けるという選 択は,家族の介護負担を解放すると同時に,家族自身の選択に対する迷いや葛藤を生じ させるといわれる(奥山ら
2010)。また深堀ら(2008)は,特養入所後に家族の介護時
間は減少するにもかかわらず,家族は入所者のことが気になり,「拘束感」を抱き続け る場合があると報告している。これらの先行研究を通して,特養入所者の家族は,必ず しも精神的に安定した状態にあるわけではないことが理解できる。その点に留意しない と,不用意な連絡や発言等により,家族を傷つけることにもなりかねない。生活相談員 は,入所前から一貫して家族に関わることができる職種といえる。それゆえ,家族の置 かれている立場や背景を理解しやすいのも事実である。家族の境遇に十分配慮した上 で,入所後も家族との関係を維持できるように,連絡調整を行う必要性が示唆された。第
3
に,生活相談員の現場への関わりが希薄ともとれる指摘がみられた点である。自 由記述の分析(表5)において,データ数の最も多いカテゴリが〈現場の理解や実態把
握〉である。「現場の様子を見に来てほしい」「現場の実情を把握してほしい」「職員の 気持ちを知ってほしい」というコードが含まれる。裏を返せば,生活相談員の現場への 関わりの希薄さの指摘と考えられる。佐藤ら(1996)は,生活相談員への期待を介護職 員にインタビューしたところ「もっと援助の現場に来てほしい」「われわれの業務を理 解してほしい」という声が聞かれたと報告している。本研究の〈現場の理解や実態把 握〉と,ほぼ同じ傾向といえるだろう。本研究の結果から,生活相談員は他職種から,相談援助や連絡調整を中心とする役割 を期待されている傾向が明らかになった。各施設で職種による分業が浸透してきたこと が背景にあると推察される。一方で,現場への関与が希薄であるという指摘がみられた ことは,真摯に受け止めるべきであろう。三輪(2004)は「他職種とともに関わる援 助」について,生活相談員は後回しにしやすい傾向があると述べている。本研究で生活 相談員に期待される役割の上位の項目は,主として生活相談員が行う業務であり,それ らが優先的に行われるあまり,現場へ足を運ぶ機会が減少している可能性がある。しか し,他職種連携が重要とされる特養において,前述した指摘の内容は,チームケアの方 向性に逆行しているといえるだろう。他職種が「現場の様子を見に来てほしい」「現場
他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 10
の実情を把握してほしい」と訴えるのは,生活相談員に直接的援助を求めているからで はない。現場に足を運び,入所者や職員の声を拾い上げ,業務に反映させてほしいとい う思いが強いのではないだろうか。その意味でも,他職種とコミュニケーションを図 り,現場の実態を十分把握した上で,家族や外部機関との連絡調整および情報収集を行 う必要性が示唆された。
5.おわりに
本研究では,他職種からみた生活相談員に対するイメージや期待する役割(業務内 容)を把握した上で,生活相談員業務のあり方について検討してきた。生活相談員は他 職種から,相談援助や連絡調整を中心とした役割を期待されている傾向があることが明 らかになった。生活相談員業務のあり方について検討したところ,①職種間をまたぐ領 域の課題に対して積極的に関与していく必要性,②家族の境遇に配慮した上で,入所後 も家族との関係を維持できるように連絡調整を行う必要性,③現場の実態を把握した上 で,連絡調整や情報収集を行う必要性が示唆された。本研究の成果は,特養における生 活相談員の実践の指針を示す上での基礎資料になるのではないかと思われる。
ただし本研究は,特定の法人における調査データを使用しているため,調査結果を一 般化することは難しい。また,少数配置の他職種(栄養士,機能訓練指導員等)のサン プル数が十分とはいえず,クロス集計等で有意な結果が得られなかった。これらの点に ついては,今後の研究課題としたい。
注
⑴ 生活相談員を施設ソーシャルワーカーと規定する見解(和気2006;山下ら2015)がある一方で,落合
(2013)は,生活相談員だけではなく施設長,施設ケアマネもソーシャルワーカーに該当すると論じて いる。本稿では,生活相談員を施設ソーシャルワーカーと捉え,施設ケアマネは他職種として位置づ けることとした。
⑵ 特養の人員基準を勘案し,調査票の配布割合を決めた。特に栄養士,機能訓練指導員,施設ケアマネ は各施設に少数配置であることが考えられるため,各1通とした。
⑶ 口村(2010)は,これからの生活相談員に求められる役割として「コンシェルジュ」をあげている。
「コンシェルジュ」とは,元はホテルの職域の一つで,利用者の要望に応えて,多彩なサービスを担当 する従業員を指す。転じて,公共施設や医療機関等で,利用者の希望に応じてさまざまな提案や手配 をする係にも,その名称が使用されている。ただし,調査項目では回答者にわかりやすいよう「何で も屋」を併記した。
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他職種からみた生活相談員に期待される役割と課題 12
This study aims to examine residential social worker’s expected roles from the other profes- sionals viewpoints and to consider the direction of residential social work. The target of the questionnaire survey was a social welfare corporation affiliated special nursing home for the eld- erly, and 102 professions other than residential social worker responded. As a result of analysis, the following trend was revealed that residential social worker was expecting the role of consul- tation aid and coordination mainly from other professions. Through the study, the following three points were suggested : responding to issues in areas involving multiple professions, coordina- tion to maintain relationship between residents and their family after entering the special nursing home while considering family circumstances, coordination and assessment of residents while understanding the actual condition of facilities.
Key words: Residential social worker, Expected roles, Other professions, Special nursing home for the elderly
Residential Social Worker’s Expected Roles and Issues from the Other Professionals Viewpoints :
Analysis of Questionnaire Survey Result from A Social Welfare Corporation Affiliated Special Nursing Home for the Elderly
Atsushi Kuchimura
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