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症例報告冠疾患誌 2013; 19: Lacrosse NSE 4 水野幸一 1, 原田智雄 2 2, 三宅良彦 急性心筋梗塞 (AMI) で冠動脈造影 (CAG) を施行し, 責任病変が小血管の症例に対して Lacrosse NSE で経皮的バルーン血管形成術 (POBA) を施行

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症例報告

冠疾患誌 2013; 19: 240–246 1川崎市立多摩病院指定管理者聖マリアンナ医科大学循環器内科 (〒 214-8525 神奈川県川崎市多摩区宿河原 1-30-37),2聖マリア ンナ医科大学循環器内科 (本論文の要旨は,第 25 回日本冠疾患学会学術集会,2011 年 12 月・大阪で発表した) (2012.08.30 受付,2013.02.07 受理) doi: 10.7793/jcoron.19.519 I.はじめに  経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)は虚血性心疾患の標準的治療法として確 立されており,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction; AMI)発症早期に PCI を施行することによって,再灌流が 得られれば心筋梗塞巣を縮小させて長期的な予後が改善 される.これまでに積極的に bare metal stent(BMS)を留置 することによって初期成功率が向上し有効性が示されて きた1).そして PCI の最大の課題であった遠隔期に発症す

る責任病変の再狭窄に対しては,薬剤溶出性ステント (drug eluting stent; DES)が劇的に予防する結果が示さ れ2),最近では AMI にも使用されている.しかし,現在

でも AMI で小血管の責任病変に対して経皮的バルーン血 管形成術(plain old balloon angioplasty; POBA)が施行される 症例もある.

 今回,AMI で緊急で冠動脈造影(coronary angiography; CAG)を施行し責任病変が 2.5 mm 以下の小血管の症例に 対して Lacrosse® NSEで POBA を施行.再灌流しステント

を留置せずに終了した 4 症例に対して,約 2 週間後に

CAGを追跡して光干渉断層法(optical coherence tomogra-phy; OCT)で責任病変を詳細に評価したので報告する. II.症  例 1.70 歳代後半,女性  既往歴:8 年前より慢性関節リウマチで加療しており, 6年前から糖尿病でインスリン治療を継続していた.  家族歴:特記すべきことなし.  生活歴:喫煙なし,飲酒なし.  現病歴:2011 年 4 月某日,午前 8 時頃から胸痛を自覚 し安静にて改善しないため救急外来受診となった.来院 時心電図で I,aVL,V4~6 で ST 低下を認め,心筋逸脱 酵素では CK 247,CKMB 31 と上昇しており急性心内膜下 梗塞の診断で入院し緊急 CAG を施行した.  入院後経過:CAG で 1 枝病変,回旋枝 #14 で 99%の高 度狭窄を認め責任病変と思われたため(Fig. 1A)緊急 PCI となった.右大腿動脈アプローチで 6 F ガイドカテーテル JL 3.5を 使 用 し, 病 変 部 へ は Runthrough NS(Terumo Corp.)ガイドワイヤーを通過させ定量的冠動脈造影(quan-titative coronary arteriography; QCA)上,対照血管径 2.19 mm, 最小血管径 0.49 mm であったため Lacrosse® NSE 2.25×13 mm (Goodman Co.,LTD.)を 6 気圧,9 気圧と 2 回拡張し狭窄は 改善した(Fig. 1B).急性期で再灌流が得られ,冠動脈小 血管であったためステントは留置せずに終了した.CCU 搬入後,CK 828 mg/dl,CKMB 81 mg/dl で 8 時間後に最高 値に達し,合併症なくリハビリテーションは順調に経過 した.第 14 病日に亜急性期の CAG を施行.CAG 所見で は早期再狭窄なし.病変を OCT(LightLab Inc.)で観察した

Lacrosse

®

NSE

で緊急冠動脈形成術を施行した小血管が責任の

急性心筋梗塞の 4 症例−光干渉断層法による評価−

水野 幸一

1

,原田 智雄

2

,三宅 良彦

2

急性心筋梗塞(AMI)で冠動脈造影(CAG)を施行し,責任病変が小血管の症例に対して Lacrosse® NSE で経皮

的バルーン血管形成術(POBA)を施行して再灌流し,急性期にステントを留置せずに終了した 4 症例に対し て,約 2 週間後に CAG を追跡し光干渉断層法(OCT)で責任病変を評価した.年齢は 60~79 歳,男性 2 例,女性 2 例で,4 例とも責任病変が回旋枝で,心筋逸脱酵素は早期に最高値に達して合併症は生じなかっ た.今回使用した Lacrosse® NSE のバルーンサイズは 2.0~2.5 mm であった.OCT で 1 症例のみ中膜まで

達する解離が認められてステントを留置したが,他の 3 症例は Lacrosse® NSE の横断面が楔型のナイロン

製ワイヤーによってプラークに適度な亀裂が入り,OCT で至適な血管内腔が確保されておりステント留置を 回避できて退院した.小血管病変の AMI 症例では Lacrosse® NSE を使用した POBA が有用である可能性が

示唆された.

KEY WORDS: percutaneous coronary intervention, optical coherence tomography, non-slip element

balloon, acute myocardial infarction

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J Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246 (Fig. 1C).病変部は最小血管内腔径 1.67×1.67 mm,血管 内腔面積 2.33 mm2で(Fig. 1C*),内膜肥厚と線維性プ ラークを認めたが,病変部にも近位部にも不安定プラーク や血栓は認めなかった.そして,病変近位部である #13 末 梢のプラークの少ない部分でも血管内腔径 1.72×1.89 mm, 血管内腔面積 2.64 mm2であり(Fig. 1C※),PCI 後の血管 内腔面積としては十分とは思えなかったが,元々小血管 であると判断してステント留置せずに終了した.心エ コー図では左心室壁運動障害は認めておらず,リウマチ 疾患に伴った低い ADL の範囲で胸部症状はなく,その後 CAGは追跡されていないが心血管イベントなく通院継続 中である. 2.60 歳代前半,男性  既往歴:健康診断で脂質異常症(LDL コレステロール 150~170 mg/dl)を指摘されていたが放置.  家族歴:特記異常なし.  生活歴:喫煙なし,飲酒;毎日缶ビール 1 ~ 2 本.  現病歴:2011 年 4 月になって階段歩行後の胸部圧迫感 を自覚していた.同年 5 月某日に早朝から胸痛,冷汗が 続き午前中に外来受診.血圧が 190~110 mmHg と上昇し ており,心電図で I,aVL で陰性 T 波,V4~6 で ST 低下 を認めた.来院時の心筋逸脱酵素が CK 1702 mg/dl, CKMB 179 mg/dlと上昇しており,急性心内膜下梗塞の診 断で入院し緊急 CAG となった.  入院後経過:CAG では 2 枝病変,左前下行枝 #8 75%, 回旋枝 #12 完全閉塞であり(Fig. 2A),#12 に対して緊急 PCIを施行した.右橈骨動脈アプローチで 6 F ガイドカ テーテル JL 3.5 を使用し,病変部へは Fielder FC(Asahi In-tecc Co.)ガイドワイヤーに APEX Over The Wire 1.5×15 mm (Boston Scientific Corp.)を載せて閉塞病変を通過させた 後,Thrombuster III SL(Kaneka Medix Corp.)で少量の混合 血栓が吸引され再開通した.CAG では,QCA 上,対照血 管径 2.26 mm であったため Lacrosse® NSE 2.25×13 mm を 9 気圧,14 気圧と 2 回拡張して狭窄は PCI 後最小血管径 2.20 mmに改善した(Fig. 2B).急性期で再灌流が十分得ら れていたため,ステントを留置せずに終了した.CCU 搬 入後,CK 3963 mg/dl,CKMB 408 mg/dl で 6 時間後に最高 値に達し,合併症は認められなかった.リハビリテー ションは順調に経過し,第 15 病日に亜急性期の CAG を 施行した.CAG 所見では #12 に早期再狭窄なし.病変を OCTで観察した(Fig. 2C).病変部は線維性プラークが中 心で一部に脂質成分が混在していたが,Lacrosse® NSEの スコアリング効果と思われる血管内膜の亀裂像を認め (Fig. 2C↑),最小血管内腔径 1.95×2.14 mm,内腔面積 3.43 mm2であった(Fig. 2C*).血栓は認めず,小血管で あり,QCA 上の対照血管径 2.26 mm と遜色ないと思われ A B C Fig. 1 Case 1

A: Left coronary angiogram showed 99% stenosis of the left circumflex #14. B: After emergent PCI.

C: 13 days after emergent PCI, left coronary angiogram and optical coherence tomography images of the left circumflex.

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J Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246

たため,ステントは留置せず経過観察とし退院となっ た.その後は胸部症状なく通院されていたが,約 7 カ月 後に CAG を追跡したところ,#12 に高度再狭窄を認め た.本症例は 2 枝病変で左前下行枝 #8 にも高度狭窄があ り XIENCE V 2.5×18 mm(Abbott Vascular Japan Co., Ltd.)が 留置されており,同部は再狭窄を認めなかった.#12 に再 PCIを施行したが,再度 POBA のみで終了するか考慮し たが,再閉塞を危惧して結局 XIENCE V 2.5×28 mm を 6 気圧まで拡張して留置した.その後は心血管イベントな く経過している. 3.60 歳代後半,女性  既往歴:特記すべきことなし(高血圧を指摘されたこと はない).  家族歴:特記異常なし.  生活歴:喫煙なし,飲酒なし.  現病歴:2011 年 5 月某日,深夜 3 時頃から胸痛,脱力 感が出現し市販の鎮痛薬を内服したが改善せず同日 10 時 頃に救急来院.心電図で I,aVL,V5~6 で ST 上昇を認 めた.心筋逸脱酵素は CK 419 mg/dl,CKMB 53 mg/dl と 既に上昇しており,急性心筋梗塞で入院となり緊急 CAG となった.なお,血糖 261 mg/dl,HbA1c 9.4%,LDL コ レステロール 229 mg/dl と糖尿病,脂質異常症が併存して いた.  入院後経過:冠動脈造影では 3 枝病変,右冠動脈 #1 90%,左前下行枝 #8 75%,回旋枝 #12 完全閉塞であり (Fig. 3A),#12 に対して緊急 PCI を施行した.右大腿動脈 アプローチで 6 F ガイドカテーテル JL 3.5 を使用し,病変 部へは Runthrough NS ガイドワイヤーに APEX Over The Wire 1.5×15 mm を載せて閉塞病変を通過させて拡張し再 開通した.QCA 上,対照血管径 2.36 mm であったため Lacrosse® NSE 2.5×13 mm を 1 回目に 9 気圧,2 回目は狭 窄が十分拡張しないため 14 気圧までかけて拡張された (Fig. 3B).急性期に合併症なく再灌流が得られステント 留 置 せ ず に 終 了 し た.CCU 搬 入 後,CK 4538 mg/dl, CKMB 482 mg/dlで 6 時間後に最高値を呈し,合併症なく リハビリテーションは順調に経過した.第 17 病日に亜急 性期の CAG を施行.CAG 所見では #12 に早期再狭窄は なし.病変を OCT で観察した(Fig. 3C).病変部は La-crosse® NSEのスコアリング効果による血管内膜の亀裂像 を所々に認め,最小血管内腔径 2.38×2.61 mm,内腔面積 4.39 mm(Fig. 3C*)まで拡張されていたが,さらに近位部2 で血管内腔径 2.56×2.58 mm,内腔面積 5.04 mm(Fig. 3C※)2 一部に中膜まで達する解離を認めた(▲)こと,プラーク が脂質成分に富んでいたこと(◆)を重視してステント留 置が妥当と判断した.ステントは,QCA 上,対照血管径 が 3.0 mm 近くに拡張されていたが,3 枝病変でコント Fig. 2 Case 2

A: Left coronary angiogram showed total occlusion of the left circumflex #12. B: After emergent PCI.

C: 14 days after emergent PCI, left coronary angiogram and OCT images of the left circumflex.

A B C

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J Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246 ロール不良の糖尿病があり 20 mm 以上の病変長であり血 管径の遅発損失も考慮して BMS ではなく DES(XIENCE V 3.0×23 mm ステント)を選択した.そして同日右冠動脈 #1 にも XIENCE V 2.5×23 mm を留置した.その後は胸部症 状なく通院されており,AMI 発症 1 年後の CAG で #12, #1ともに再狭窄を認めていない.心エコーでは左室駆出 率 55%で左心室後側壁の収縮低下は残存しているが,そ の後心血管イベントなく経過している. 4.60 歳代前半,男性  既往歴:18 年前から掌蹠膿胞症,3 年前から脂質異常症 で加療中(スタチン内服にて LDL コレステロール 100 mg/dl 前後).  家族歴:特記すべきことなし.  生活歴:喫煙;毎日 20 本,飲酒;毎日日本酒 1~2 合.  現病歴:2011 年 7 月某日に夕食後から胸痛が続き一晩 安静にしても改善しないため,翌日 5 時頃救急受診.心 電図で I,aVL,V2~4 で ST 軽度上昇を認めた.来院時 既に心筋逸脱酵素 CK 541 mg/dl,CKMB 69 mg/dl と上昇 しており急性心筋梗塞で入院となり緊急 CAG となった.  入院後経過:CAG では 1 枝病変,回旋枝 #14 で完全 閉塞を認め責任病変と思われたため緊急 PCI となった (Fig. 4A).右大腿動脈アプローチで 6 F ガイドカテー テル JL 4.0 を使用し,病変部へは Runthrough NS ガイ ドワイヤーを通過させ QCA 上,対照血管径は閉塞直前 が 1.25 mm, 近 位 部 で 1.89 mm で あ り Lacrosse® NSE 2.0×13 mm を 6 気圧で 2 回拡張し,再灌流が得られ狭窄は 改善した.元々分枝の閉塞で小血管であったため,ステ ントを留置せずに終了した(Fig. 4B).CCU 搬入後,CK 971 mg/dl,CKMB 116 mg/dl で 7 時間後に最高値を呈し, 合併症なくリハビリテーションは順調に経過した.第 14 病日に亜急性期の CAG を施行.CAG 所見では早期再狭 窄なし.病変を OCT で観察した(Fig. 4C).狭窄病変部は 線維性プラークが中心で一部に脂質性プラークが混在し ており,Lacrosse® NSEのスコアリング効果と思われる血 管内膜の亀裂像が加わって(Fig. 4C↑)拡張されていた が,最小血管内腔径 1.52×1.94 mm,内腔面積 2.48 mm2で あった(Fig. 4C*).血栓は残存していなかったが,本症 例は器質的狭窄が血栓閉塞して AMI を生じた可能性が考 えられる.元々末梢の小血管でステント径もないため経 過観察とした.さらに約 1 年後に CAG が追跡されたが, 再狭窄はなく心血管イベントなく経過しており,心エ コーで左心室壁運動障害は認めていない. III.考  察  今回 4 症例で使用した Lacrosse® NSEは 3 本のナイロン 製で横断面が楔型のワイヤーがバルーンに装着したス リッピング防止型経皮的冠動脈形成術用カテーテルであ り,わが国では 2008 年から使用されている.当院では, Fig. 3 Case 3

A: Left coronary angiogram showed total occlusion of the left circumflex #12. B: After emergent PCI.

C: 16 days after emergent PCI, left coronary angiogram and OCT images of the left circumflex.

A B C

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J Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246 偏心性病変,屈曲病変,石灰化病変でステントを留置す る前に比較的多く同バルーンを使用してきた.これまで はカッティングバルーンが,従来のバルーンに比べてバ ルーンの表面に装着した刃がアテローマに均等に切開を 加えて不規則な内膜の断裂や圧排を防ぎ大きな冠動脈解 離を予防する3)ことで使用されてきたが,病変への通過性 に問題が多かった.これに対して Lacrosse® NSEではバ ルーン表面に刃ではなくナイロン製のワイヤーが装着さ れているため,カッティングバルーンよりも柔軟性が高 く通過性が良好と思われる.そしてこのワイヤーの横断 面が楔型であることから高い応力を血管壁に効率よく集 中させて,スリップを防ぐのみならず,ワイヤーの走行 に沿って内膜の長軸方向にスコアリング効果を発揮する ため,中膜まで達する解離を生じることが少なく過度の 血管組織損傷が少ない印象がある.そもそも POBA のみ で終了したい小血管病変に対する PCI 施行時には,ステ ント留置が困難と予想され冠動脈血流を障害するような 大きな解離を生じないように配慮する必要があり,La-crosse® NSEはこの点で適している.ただし,蛇行が強い 血管の末梢に病変がある場合には,バルーンの末梢と近 位部でナイロン製のワイヤーが接合しており先端からバ ルーンの近位部までの距離が長く,狭窄の手前の蛇行血 管に追従できず通過しない場合があり,Lacrosse® NSEの 欠点と思われる.一方,最初に Lacrosse® NSEが通過しな くても小さな従来のバルーンで拡張した後にもう一度使 用して通過させた場合でも中膜まで達する解離を生じに くく血管組織損傷は少ないという利点がある.POBA 後 の再狭窄の原因が血管組織損傷後の治癒機転に内膜増殖 を呈することと考えると遠隔期の再狭窄の可能性は従来 のバルーンのみの使用後よりも低いと考えられる.  そして,冠動脈が実際に小血管であるかどうかも PCI 施行時の大きな問題である.AMI では緊急 PCI 施行時に 再開通直後では,造影上,実際の冠動脈血管径より過小 評価されることがあり,緊急 PCI 時にステント留置する 場合にステントサイズを慎重に決める必要がある.当院 では,AMI の緊急 PCI 施行時に大きな解離などの合併症 を生じた場合を除くと血管内超音波(intravascular ultra-sound; IVUS)を併用することは少なく,POBA のみで十分 に再灌流が得られればステントを留置しない症例もあ る.特に大きな側枝のある分岐病変,屈曲病変,小血管 などで,緊急 PCI に煩雑な手技を要して長時間化し造影 剤使用が増加することは極力避けるように配慮してい る.十分に再灌流が得られた後に血管拡張薬を開始し, リハビリテーションが進行してから,急性期ではなく亜 急性期に待機的に IVUS や OCT といった血管内画像診断 装置を併用することによって,血管径の過小評価が解消 Fig. 4 Case 4

A: Left coronary angiogram showed total occlusion of the left circumflex #14. B: After emergent PCI.

C: 13 days after emergent PCI, left coronary angiogram and OCT images of the left circumflex.

A B C

(6)

J Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246 され,急性期に実際よりも小さなステントを留置するこ とから回避され,2 剤の抗血小板療法(dual anti-platelet therapy; DAPT)の忍容性を確認できていれば小血管であっ ても必要に応じて DES をより安全に至適なサイズを留置 でき,遠隔期に良好な成績が得られる可能性が高まるも のと思われる.反対に DAPT の忍容性が不明な段階で過 小評価された小血管に BMS を留置することは極力避ける べきと思われる.  今回提示した 4 症例は緊急 PCI 施行時にはいずれも回 旋枝の小血管を責任病変とする AMI であり,POBA のみ で十分に再灌流が得られたためステントを留置せずに終 了した.4 例とも心筋逸脱酵素は早期に最高値を呈し,合 併症もなくリハビリテーションは順調に経過した.退院 を控えた約 2 週間後の亜急性期に CAG の追跡とともに責 任病変を OCT で観察したが,今回使用した OCT は time-domain OCTであり,若干複雑な手技を要するものの AMI 発症後約 2 週間経過して血行動態が安定しており問題な く施行できた.そしてこの血管内画像診断装置は IVUS 以 上の解像度を持ち,臨床応用されて既に 5 年間以上経過 して安全性と有用性が報告されている4, 5).特にプラーク の組織性状診断に優れ,脂質性プラークの診断は IVUS よ り高いという報告がある6).さらに PCI 施行時には IVUS では観察不可能な小さな解離も描出可能であるため,La-crosse® NSEのスコアリング効果を IVUS 以上に詳細に観

察できて,POBA で終了してよいかステント留置を要す るかなどの PCI のエンドポイント決定にも役立つものと 思われる.  症例 1 では,亜急性期の OCT 所見で血栓は認められ ず,プラークは少なく血管内腔径上も小血管であったた めステントは留置しなかった.本症例では急性期に血栓 が存在していたとすれば,Lacrosse® NSEに装着された横 断面が楔型のワイヤーが血栓の破砕に有用であったと思 われたが,仮に従来からのバルーンによって POBA を施 行したとしても同様の結果が得られた可能性は否定でき ない.  症例 2 では,亜急性期には OCT でスコアリング効果に よる切れ込み像が認められ,血管内腔面積は 3.0 mm2以上 であった.心筋梗塞責任血管に対する評価ではないもの の血管内腔面積が IVUS にて 3.0 mm2以上あれば心筋虚血 を惹起しにくいという報告7)があることから血管径と対照 血管径の関連性のみならず血管内腔面積からもステント 留置は不要と考えた.しかし約 7 カ月後に再狭窄を生じ てしまい,結局 2.5 mm 径の DES 留置となった.本例は OCTでプラークに脂質成分が混在していたこと,退院後 は激務に復帰して生活習慣が乱れていたこと,脂質低下 療法が不十分であったことがプラークの安定化に悪影響 した可能性が否定できない.結果的に AMI で入院時の脂 質異常症の存在や OCT での脂質成分の混在は,血管内腔 面積が 3.0 mm2以上であってもステント留置するべき状態 と判断する必要があったかもしれない.その後スタチン 投与によって脂質異常症は改善しているものの今後も CAGの追跡および厳格な 2 次予防が必要と思われる.  症例 3 では,亜急性期の OCT で 2.5 mm 径の Lacrosse® NSEのスコアリング効果による亀裂像が認められて血管 内腔面積が 5.0 mm2以上あったが,一部で亀裂が中膜まで 達する解離を呈しており DES を留置した.このような解 離を予防するには 2.25 mm 径の同バルーンで低圧から拡 張すべきであったか,2.5 mm の Lacrosse® NSEを 14 気圧 までかけない方がよかったかなど反省点がある.解離自 身は 120 度未満であり薬物療法で経過を追跡する選択肢 もあったが,元々糖尿病や脂質異常症を合併した 3 枝病 変であり,灌流領域が広い病変であることを考えると緊 急 PCI 施行時にステントを留置するべきであったとも考 えられる.仮に Lacrosse® NSEを使用せず従来のバルーン を用いて拡張した場合には拡張しにくく,高圧をかけて さらに大きな解離を呈して最終的にステント留置になっ た可能性が高い.そして緊急時にステント留置するなら 2.5 mm以下のステントを選択していたと思われ結果が変 わっていたことになる.結局,亜急性期に OCT ガイドで 3.0 mm径の DES を留置できたことは,再狭窄を生じる可 能性が最も少ない PCI であったと思われる.  症例 4 では,使用した Lacrosse® NSEは 2.0 mm 径であ りスコアリング効果で拡張できたものの亜急性期の OCT による計測値で明らかに小血管でありステントは留置し なかった.約 1 年後で再狭窄は認められなかったが,本 症例は元々金属アレルギーが疑われており,このままス テント留置を回避し続けるためには,新規病変の出現を 抑制するために冠危険因子の厳格な管理,2 次予防のため の最適な薬物療法を継続していくことが重要と思われる. IV.結  語

 小血管を責任とする AMI 4 症例に Lacrosse® NSEで緊急

冠動脈形成術を施行して,亜急性期に OCT を用いて PCI 後の血管内腔,解離の有無,プラーク性状等を詳細に観 察した結果 1 症例で慢性期に再狭窄を認めたものの至適 な治療へと導くことができた.

 急性期に Lacrosse® NSEで POBA を施行すると大きな冠

動脈解離を形成することが少なく,再灌流が十分に得ら れれば良好な治療法と考えられる.そして亜急性期に責 任病変を OCT で観察をすることが,小血管に対するステ ント留置の適否や,至適なステントサイズの決定に有用 である.その結果,AMI でもステント留置を回避できる 症例が少なからず存在することが示された. 文  献

1) Saito S, Hosokawa FG, Kim K, Tanaka S, Miyake S: Primary stent implantation without coumadin in acute myocardial

(7)

in-J in-Jpn Coron Assoc 2013; 19: 240–246

farction. J Am Coll Cardiol 1996; 28: 74–81

2) Moses JW, Leon MB, Popma JJ, Fitzgerald PJ, Holmes DR, O’Shaughnessy C, Caputo RP, Kereiakes DJ, Williams DO, Teirstein PS, Jaeger JL, Kuntz RE; SIRIUS Investigators: Si-rolimus-eluting stents versus standard stents in patients with stenosis in a native coronary artery. N Engl J Med 2003; 349: 1315–1323

3) Barath P, Fishbein MC, Vari S, Forrester JS: Cutting balloon: a novel approach to percutaneous angioplasty. Am J Cardiol 1991; 68: 1249–1252

4) Kubo T, Akasaka T: Optical coherence tomography imaging: current status and future perspectives. Cardiovasc Interv Ther 2010; 25: 2–10

5) Yamaguchi T, Terashima M, Akasaka T, Hayashi T, Mizuno K,

Muramatsu T, Nakamura M, Nakamura S, Saito S, Takano M, Takayama T, Yoshikawa J, Suzuki T: Safety and feasibility of an intravascular optical coherence tomography image wire sys-tem in the clinical setting. Am J Cardiol 2008; 101: 562–567 6) Kume T, Akasaka T, Kawamoto T, Watanabe N, Toyota E,

Neishi Y, Sukmawan R, Sadahira Y, Yoshida K: Assessment of coronary arterial plaque by optical coherence tomography. Am J Cardiol 2006; 97: 1172–1175

7) Takagi A, Tsurumi Y, Ishii Y, Suzuki K, Kawana M, Kasanuki H: Clinical potential of intravascular ultrasound for physiological assessment of coronary stenosis: relationship be-tween quantitative ultrasound tomography and pressure-derived fractional flow reserve. Circulation 1999; 100: 250–255

Efficacy of balloon angioplasty using Lacrosse

®

non-slip element in acute

myocardial infarction with small vessel disease

̶Assessment with intracoronary optical coherence tomography̶

Koichi Mizuno,

1

Tomoo Harada,

2

and Fumihiko Miyake

2

1Department of Cardiology, Kawasaki Municipal Tama Hospital, Appointed Administrator,

St. Marianna University School of Medicine

2Department of Cardiology, St. Marianna University School of Medicine

Stentless coronary angioplasty, plain old balloon angioplasty (POBA) using a Lacrosse® non-slip element (NSE), was

performed in 4 patients (aged 60 to 79 years old, 2 males and 2 females) who were diagnosed with having acute coronary infarction (AMI). The all culprit lesions were located in the left circumflex artery and successfully reperfused by emergent percutaneous coronary intervention using a Lacrosse® non slip element (NSE) 2.0 mm/

2.25 mm/2.5 mm. Cardiac enzymes were peaked in the early phase; no complications were found after PCI. The follow-up assessment using coronary angiography and optical coherence tomography performed about 2 weeks later showed the large dissection in 1 patient, resulting in the stent deployment. The remaining 3 patients required no stent implantation because the elements placed along the outside of Lacrosse® NSE ensured successful deliverability with

shallow cuts and uniform expansion in the culprits. Here, we report the usefulness of POBA using a Lacrosse® NSE in

AMI with small vessel desese.

KEY WORDS: percutaneous coronary intervention, optical coherence tomography, non-slip element balloon, acute myocardial infarction

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