摩砕による酸化ニッケル粉末の物性変化
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(2) . 第19巻 第1号. 北海道教育大学紀要 (第二部A). 昭和43年9月. 摩砕による酸化ニッケル粉末の物性変化 貞. 嘉. 広. ネロ. 函 館 工 業 高 等 専 門 学 校. 徳永 好治 ◎ 清 水. 清. 北海道教育大学函館分校物理学教室 Ef f f Dry Grinding on the Phys i ects o caI co‐chemi ies of Nio Powder Propert. by Yoshi l )A日1R( ) { azu SA] l Hakodat I Col e Techni ege e ca , Hakodat Y0shiharu TOKUNAGA and Kiyoshi s日工ハ 丁 ーエDZ[ Department ofPhys i i on e cs , Hokkaido University of Educat , Hakodat. 言. s1 . 緒. 摩砕による単一の固体物質の構造および物理学的性質などの変化については多く の 研 究 が あ )酸化ニッ ケルは着色原料, 水素添加触媒の原料などに用いられるが, メカノ ケミカルな処 る. ー 理による物性変化はまだ十分に知られていない. さきに, 筆者らは, 摩砕による酸化ニッ ケルの. ) ここでは酸化ニッ ケル粉末 色相, 格子不整およ び熱処理効果などの変化について報告した, 2~6 のポールミル摩砕による粒状, 構造, 活性, 分光吸収および充填性などの変化について, さらに 詳細に測定した結果を報告する.. S 2, 実. 験. 方. 法. 2・1 試料: 原試料は市販 (和光純薬製試薬一級) の酸化ニッ ケル粉末であっ て, 硝酸ニッケ ルに重炭酸ア ソモソを反応させて得た塩基性炭酸ニッ ケルを良く水洗, 乾燥した後, 800oC で3 時間加熱して製品とされたものである. 2・2 摩砕方法: 摩砕はボールミル (日本化学陶業製 SSA ポ ッ トミ ル で 内 容 積約 400cc) で 行 なった, 摩砕過程におけるミル材料の混入は無視できる程度であっ た. 摩砕の雰囲気は常温大気 中の乾式である.. 2o3 X 線 分 析: × 線 回 折 計 は 島津 デ フラク トメ ー タ ー VD-1 型 で あ る. X 線 は Ni フィ ル タ ー に よ る CuKα 線 を 用 い た. 2ヴ は 80~1000 の簡囲である. 回 折線の半価幅および角度依存性か. ),8 )に よ り 徴結 晶 (Crys i ion) を 求 l i l t t tort t l の 式7 e) の 粒 径 お よ び格 子 不 正 (Lat a ce di s ら Hal め た.. )により, また窒素吸着によ 2・4 表面積測定: 試料の空気透過比表面積を水渡・荒川の装置9. る BET. 表面積を柴田化学製. P‐600 型測定装置で測定した,. (49).
(3) . . 摩砕による酸化ニ ッケル粉末の物性変化. 2・5 充填性測定: 試料の充填性を知るために図1に示す装置でみかけ充填密度を測定 した.. 往復運動させ, 容積 Vの真銅製円筒皿に堆積 した試. ±B. 密度とした. 測定の雰囲気は常温大気中の空気であ. 図1 みかけ密度測定装置略 鳳. る が, 堆 積 容 器 の 寸 法 効 果 お よ び 湿 度 の影 響 は あ ら か じ め 較 正 し た.. l A : Ty er 170メ ッ シュ ふ るい.. 8伽, 高さ=0 B :円筒容器 (直径=1 , .9 .44伽). 2・6 触 媒 活 性 試 験: 試 料 を 過 酸 化 水 素 水 の 分 解. C:ガラス箱.. 反応の触媒として用いたときの分解速度定数から活. ) D : ピス ト ン (振 幅 =lcm p ,m, . , 振 動 数ご300r. 性の比を求めた, 初期濃度 C M :モーター (low) o=6 ,79% の 過 酸 化 水 . 素水 (和光純薬製試薬一級) 80cc 中に摩砕試料 3g を投入し, 温度を 30oC±0.loC に保ちなが ら反応を進行させ, 一定 時間毎に3 ccの過酸化水素水を吸収して, アッ ベ屈折計 (屈折率精度は ±0 /C の .0002, 分 散 精 度 は ±0 ,0005) に よ る そ の屈 折 率 か ら 濃 度 C を 決定 し た. そ の と き 方2Co. 時間変化から分解速度定数を求めた, 2・7 分光反射減衰率測定; 試料の分光反射減衰率を伊藤超音波製 QU- 3型分光光電光度計に 同社製積分球を装着して測定した. S 3.. 実. 験. 結. 果. 3・1 装 入 量 の 影 響: ポ ッ ト の 回 転 数 を 157r p . .m, お よ び摩 砕時 間50時 間 と 一定 に し, ポ ッ ト. への試料装入量を変えたときの X線回折図形では, 装入量の減少とともに回折線の幅は拡大し, 積分 強度はほとんど変 化せず, また バック グラウ ンドの強さは全 く変化しない. 図2にこのとき の格子不整およ び徴結 晶粒径の装入量による変化を示す. これによれば装入量の多いときは徴結. 00g 以下で急減する. 格子不整は装入量の減少とともに徐々に 晶粒径の変 化は少なく,装入量約2. 増加する. したがっ て徴結 晶の微細化に対する摩砕効果において試料の装入量は著しく影響する. 0g :間と一定にし, ポッ トの 3・2 ポッ ト回転数の影響: 試料の装入量を 10 0時 , 摩砕時間を5. 11) 面の回折線の幅の変化を図3に示す. これによれば回転数約 1lo 回転数を変えたときの (1 r p , .m で X 線的摩砕効果は最大とする, 3・3. 格 子 不 整 と 微結 晶 粒 径 の 変 化: こ の ボ ー ル ミ ル で は, ポ ッ ト の 回 転 数 117r .p .m. ,装 入試. 料質量 100g のとき, 摩砕効果と試料採取が最も有効であ ると考えられるので, このときの摩砕 1 5. 曇 -. . 1 l .. . . 0 9蝉 .. 翼 ー 7 o . . 0 0. 5 , .. 励 → 2禽 ・1商 製 入 韻 g. 4 0 0. 1. g 0 鰹 1 , 翠. 猪0 6 .. 0. 0 o 1 2 8 4 0 rp 回 転 数( ,m). 1 6 0. 図 2. 図3. 摩砕された Nio の徴結晶粒径および 格子不整の装入質量による変化,. 11) 面の回折線の半価幅におよぼす (1 ポッ トの回転数の影響,. (50 ).
(4) . . 貞 広 嘉 和・徳 永 好 治・清 水. 清. の時間の変化による Nio の構造変 化調べた. ( ) 面の回折線の変 化の一例を図4に示す. 摩 400 砕時間の増加とともに回折線の幅 は著しく拡大する. また図5に回折線の積分面積の摩砕時間に. よる変化の一例を示す. 摩砕が相当長時間行なわれても, 積分面積はほとんど変 化しない した . がっ て, 酸化ニッ ケルは摩砕によりあまり無定形化しないことがわかる 他方, 図6に示すよ う .. に, 徴結晶粒径は摩 砕の初期において著しく徴細化し, 格子不整は徐々に増加する したがっ て , 酸化ニッ ケルの摩碑による構造変化は, 摩砕過程の初期におい て特に著しく生ずるとみなすこと が で き る.. 3・4 表面積の変化: 図7に摩砕試料 の空気透過比表面積. Sp お よ び. BET 吸着表面積. の 摩砕時間による変化を示す. SA は摩砕はじ めの約50時間で急増し, 約100時間でーたん減少した 後, ふたたび徐々に増加する. 他方 Sp は摩砕はじめの約50時間で急減し, その後僅かに周期的 SA. 変動を示すが平均的にはほとんど変化しない, また摩砕約100時間のときの SA と Sp の増減傾 向は極めて特徴的な対称性を示す. 原試料 の Sp と SA はその差 が小 さいので, 原試料の粉末粒子はほとんど単一 の多結 晶体の集. 1 へ. . . . . . . . 9 1 0 ,. 図4. . 装入量 100g 1 7 r p , ポット回転数 1 . ,m, のときの摩砕 Nio の ( 40 0 ) 面回折線の摩砕時間による変化, 1: 原試料. 2: 5時間摩砕. 3:20時間摩砕, 4:50時間摩砕, 5:150時間摩砕, 6:3 50時間摩砕,. . 9 4 5 5 9 50 9 5 9 E 30 , , l ( βC 2 u 。(度). l l x o. 5 , - 3 終1 x l o. ご ‐ x l o. ’ 2:S I 0. 0 0 3 0 際 砕 時 間(時 ). 4閲. 0. l 2 o o 3 0 0 o o 牛 時 間( 時 降る ). 4 .. 0. 1 0 0 2 0 0 摩 砕 時 間(時 ). 図6. 図 6. 図7. (1 1 1) 面および (400 ) 面の回折線 の積分面積の摩砕時間による変化.. 塵碑= 寺間による徴結晶粒径および格 子不整の変化,. 摩砕時間による表面積の変化, 1: BET 吸着表面積, 2: 空気透過比表面積..
(5) . 摩砕による酸化ニ ッケル粉末の物性変化. 合体であるとみなすことができる. この集合体粒子が摩砕の進行とともに破壊されて, さらに小 さい集合体粒子となるために SA は増大するものと思われる. したがっ て, X 線的徴結 晶の微細 化だけではな く粉末粒子の微細 化も同時に生じているものと考えられる, また破壊された小さい 結 晶集合体は, その大きさの減少にともなっ てみかけの凝集性が増大して凝集粒子を形成し, こ. の凝集粒子の急激な成長によっ て Sp が急減す るものと思われる. さらに摩砕 が進行すると, 多 結 晶体はより 一層微細 化するにもかかわら ず, その凝集性には一定の限界が存在するものと思わ. れる. また摩砕時間約100時間に見られる SA および Sp の変曲点はさらに検討を要するところ であるが, 摩砕過程の初期と後期における酸化ニッ ケルの物性変 化が相異する境界点を示すもの. であることは, 他に測定された実験事実からも推定できる, 3・5 充填みかけ密度の変化 : 摩砕された酸化ニッ ケル粉末のみかけの凝集性が摩砕時間とと もに変化すると思われるので, その充 填みかけ密度を測定 した. 図8に摩砕時間によるみかけ密. 度の変化を示す, 酸 化ニッ ケルの充填性は摩砕の進行とともに非常に 良くなる. 摩砕はじめの約 50時間でみかけ密度は急増し, 約100時間でーたん減少した後, ふたたび増加して一定値に収叙 する. みかけ密度と Sp の摩砕時間変化は全 く対称的であっ て, この事実は粉体粒子の充填性に 凝集粒子径が著しく影響することを示す.. 7 r 3・6 触媒活性と格子不整 : 摩砕時間を50時間, ポッ トの回転数を 11 p ,m, として, 装入量 . 過酸化水素分解速度定数の を変化させて得た試料の格子不 整に対する, 単位吸着表面積当たりの. 変化を図9に示す. 酸化ニッ ケルは, 摩砕の初期には格子不整の増大に, また後期には表面積の 増大に起因 して触媒活性が増加すること が明らかである, 前者は摩砕による化学量論的過剰酸素 o )を示すものではないかと思われる. の増大l 光子エネルギー 定め 5 2 .. . 0 51 .. 1 00 2 00 3 00 雌 砕 時 間 (時). 3 O .. 2 4 .. . ( ー \ 。 ー ▼ - 滋 鏡鱒寒闘 米. 4 00. 図8. . ~時間によるみかけ密度の変化. ; 摩百. 象. 4 x1 0-. 1 2 .. 6 0 0 5 5 0 波 長( m の. 格 子 不 整(任意単位). 図 10 = Nio の分光反射ス ペクトル. 摩鶴 1: 原試料. 2: 5時間塵砕. k 3: 20時間摩猶 . ) 4:50時間摩磁 . 5:100時間摩砕. 6:350時間塵碑.. 0一3 ×1. 園8. 単位表面積あたりの分解速度定数と 格子不整との関係.. ( 52 ).
(6) . 貞 広 嘉 和・徳 永 好 治・清 水. 清. 3・7 分光反射減衰率の変化 ; 摩砕試料 の分光反射減衰率を図10に示す 波長 600m” お よ び , 410m〃 付近の反射?成衰率は摩 砕によりあまり変化しないが , 可視 域では 著しく吸収 きれる 固 。 体酸化ニッ ケルは格子点 のニッケル不在または格子間酸素の増加により, 図10の摩砕初期の反射 1 )を 示 す ス ペ ク トル と 全 く 類 似の 吸 収 変 化1 . こ れ ら の ス ペ ク トル に 見 ら れ る 数 個 の 特 徴 あ る ピ ー. クに対する反射減衰率の摩砕時間変化を図1動こ示 したが, いずれも砕摩はじめの約100時間まで 増大し, とくに可視域 の吸収が急増する事実は摩砕初期の物性変化に対応す るものと思わ れる , 3・8 熱処理効果 : 図12に加熱による格子不整 の変化を示す. 原試料は色相 (鮮緑色) も格子 不整もほとんど変 化しない. 摩砕効果の少ない緑茶色 の試料 (曲線2) は 3 00oC で原試料 の程度. まで色相も格子不整も回復する, 十分に摩砕された黒茶色の試料 (曲線3) は 5000C で も ほ と ん ど回復せず8000C で色相も格子不整も原試料の程度に回復する. 徴結 晶粒径は図13に示すように 程度の差はあるが, 加熱によりいずれの試料も増大する. 図14に, 加熱による摩砕試料の単位質量当 りの減少質量を示す 摩砕効果の著しいもの程質量 . 減少が著しい. いずれも加熱温度の上昇と ともに減少質量は急増し, 一定温度 で平衡になる こ .. ( ー 。 日 ) 。 【 帯 閑 静害闘 米 愈. 1 0 0 2 0 0 零 砕 時 間(時 ) ′. 1:4 0 2 , n “ 2:4 0叫 7 ‘ 3:5 3 0 m p 4;5 8 0 m ‘ ′ 5:6 0 7 m - ′ 0 0 4 3. 図 11. 図 12. 』時間による分光反射減衰率の変 摩溺 化.. 熱処理による格子不整の変化. 1: 原試料. 2:150g装入. 5 0時間摩砕, 3:50 g装入, 183時間摩砕. . . 域 6. . . ◎. 琶 -き. 急 4 . 2. o0 図 13. ル // o 虻. 茎 リーリ メゴー. ・ 00 2. 4 00 6 00 0C 温 度( ). 図 14 温度による加熱減量の変化. 1: 原試料. 2:2 0時間摩砕, 3:9 4時間摩砕. 4:150時間摩砕. 5:3 50時間摩砕.. 熱処理による微結晶粒径の変化, 1: 原試料. 2: 150 0時間摩砕, g装入, 5 3:50g装入, 183時間摩砕.. (53). 8 00.
(7) . 摩砕による酸化ニッケル粉末の物性変化. の平衡に なるときの境界温 度は, 摩砕効果の著 しい試料程高温であっ て, 格子不整の加熱回復に 見られる境界温度に 対応する. 三五. S4 . 結. 市販の酸化ニ ッ ケル粉末を ポールミル で摩砕したときの物性変化を測定 して 次の結果を得た, 1) 摩碑の進行とともに格子不整は徐々に 増加する, 微結 晶粒径は摩砕初期に著 しく微細化し. てほとん ど一定となり, あまり無定形化 しない. 2) 吸着表面積は摩砕初期に 急増し, 後期には徐々に増加する, 透過比表面積は初期に 急減し てほ ぼ一定の値に収鰍する, また摩砕初期に は粉末粒子の微細化と凝集性の増大が認められる, 3) 触媒活性は, 摩砕により初期には主と して格子不整の増加に, 後期には表面積の増加に伴. っ て増大する. 4) 摩砕の進行とともに可視域波長に対する分光反射減衰率は著しく増大する. 0 5) 摩砕された試料は, 摩砕の程度に応じて 300~800 C で3時間加熱すると, 原試料の程度 まで色相およ び格子不整は回復 し, その回復に対応して質量減少が認められる, 加熱により徴結 晶粒はいずれもある程度成長 する. 献. 女. 65 ) 1) ,高橋 浩 : 粉体セミナー (粉体粉末冶金協会, 19 ,45 ,p . 6 96 ) 2) 貞広嘉和, 徳永好治, 清水 清: 北海道教育大学紀要 (第二部A) , 第1号, 28 , 第17巻 (1 . 7) 3 ,第1号, 75 ) 貞広嘉和, 矢代和祐, 徳永好治, 清水 清 : 函館工業高等専門学校紀要, 第1巻 (196 . 6 67) 9 4) 貞広嘉和, 清水 清 : 北海道教育大学紀要 (第二部A) , 第1号, 2 , 第18巻 (1 . 96 7) 5 , 第18巻 (1 , 第2号, ) 徳永好治, 清水 清, 矢代矛縞占 , 貞広嘉和 : 北海道教育大学紀要 (第二部A) 80 .. 96 8)4 75 7(1 6 ) 貞広嘉和, 清水 清 : 材料, 1 .. l l: Proc 7) W. H. Ha , .Soc , A62 (1949) 741 . Phys ,. 75 59 ) 8) 仁田 勇 :X 線結晶学上 (丸善, 19 .3 ,p . 6 7 ) 9 ) 水渡英二, 荒川正文, 高橋 充 : 工化誌, 59(195 , 30 , 3 66) 5 5 10 ) 山科f変郎, 佐野正勝 : 日化, 87(19 , . 1ys =) R. Newman and R, M. Chrenko: PI , 1507 . Rev” ・14 (1959) ,. ( 54 ).
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