真核微生物の環境応答と遺伝子発現
著者
東北大学遺伝生態研究センター
雑誌名
IGEシリーズ
巻
16
ページ
1-116
発行年
1993-03
URL
http://hdl.handle.net/10097/49102
ロ6匿シ'J-ズ司る*
真核微生物の環境応答と遺伝子発現
lG∈
東北大学遺伝生態研究センター
I GEシリーズの発刊にあたって
地球上の環境は,今,かってない大きな問題に当
面しております。世界各地で進行している生態系の
急速な変化のなかには,人間生活に深刻な影響をも
たらす可能性のあるものが,多数含まれています。一
万,人間の活動が宇宙空間へと拡がるにつれ,地球
外生態系の構築が,新しい課題として登場しつつあ
ります。生態系の崩壊を防ぎ,より豊かな環境を創
造するための科学的努力が,今日ほど強く求められ
ている時はありません。
本研究センターは, DNA分子技術を中心に遺伝
子的段階にまで到達した生物研究の諸成果を生か
し,生態系における生物の生活を一層深く解明し,節
たな人間環境の創造に貢献することを目指しており
ます。いうまでもなく,この課題はきわめて学際的
であり,多分野の研究者との相互交流と協力によっ
て,はじめて達成されるものであります。本研究セ
ンターでは,ワークショップによる研究者間の討論
と意見交換を重視するとともに,その成果をより多
くの方々にご利用いただく出版活動にとり組んでお
り ます。こ こに発刊しますIGE(Institute of Genetic Ecologyの略)シリーズも,こうした努力の一環であります。
本シリーズの内容は,多岐にわたる可能性をもっ
ておりますが, 3つのタイプに大きく類別されるだ
ろうと考えておりますo すなわち, (i)特定のテー マ,又はトピックについての解明に関するもの(* 印を付します), (ii)特定のテー7J又はトピックに関する最新の文献,実験法の紹介に重点をおくもの
(**印),そして(iii)新しい可能性を求める学際的
交流,対話を試みるもの(***印)であります。
このIGEシリーズが,多方面の方々のお役に少し
でも立つことを願って,発刊の辞とします。
1989年3月東北大学遺伝生態研究センター
⑳日 次⑳
はじめに 吉田 和夫・大瀧 保----・・・・・-酵母菌の重金属耐性とそれに関与するメタロチオネ
イン遺伝子の発現制御 村山 徹郎---生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating一真核生物酵母と原核生物大腸菌との接合の分
子機構を中心として-吉uj 和夫・西川 正信・猪俣 孝二 関藤 孝之・松本由紀子--- 21細胞性粘菌の環境適応と遺伝子発現
一有性生活環における細胞の性的融合機構の解
析一 柳滞嘉一郎 環境応答研究材料としてのChlamydomonas -性的活性化に対する光のかかわり-佐藤 忠文超極小真核生物研究の意義
一特徴のある材料探しからの研究によってオリ ジナリティーの高い研究の萌芽を-黒岩 常祥 ヒゲカビ(Phycomyces)における接合反応の制御 機構 大瀧 保・山崎 裕・等々力政彦-I- 75菌類の2次代謝産物生産と生活環境制御
-植物病原菌を例として一 貫名 字・細胞レベルでみたカサノリの情報発現調節
石川依久子はじめに
吉田 和夫*・大瀧 保**
生物はその長い生存の歴史において,種々の知恵を獲得してきた。突然 変異によって生じた遺伝子の変異を,保存してきた。そして,環境の変化 が起こった時,生物は過去に蓄えた遺伝子を組み換えることによって,そ の環境の変化を乗り越えてきた。 単細胞性の微生物は,一個の細胞自体が一個の生物である。したがって, 一つの細胞に起こった突然変異は,その生物自体の変異となる。そして,そ の生物は環境の変化を,一個の細胞で受けとめなければならない。このように,単細胞性微生物は環境の変化に直接対処し,敏感に反応して行動せ
ざるを得ない。そして,環境の変化のシグナルを,直接生活環自身の変化 として取り入れていく知恵を獲得する。 本ワークショップでは,酵母や粘菌,糸状菌や下等藻類など真核微生物 を材料に取りLげ,これら生物の環境応答の機構を分子レベルでの遺伝子 発現として探ろうとするものである。この中には原核微生物の手法を比較 的容易に適用でき,分子レベルでの解析の非常に進んだものもあり, 一方 始まったばかりのものもある。本ワークショップの つの特徴は,したがっ て,今後の研究の発展に資するため,異なった材料で,異なった立場で,輿 なった方法でこれらの問題に取り組んでいる研究者を集めたことにある。 第二の特徴は,我々世話人はさておき,各分野での第一人者を演者に迎 えたことである。それは,先端的な研究の報告もさること-ながら,研究の 動機や態度,実験系の確立,そして今後の夢など,大きな成果の後ろに潜 '広島入学・確学部 H 東北人字・遺伝生態研究センター・_) む思想的なものを探りたかったからである。これは,これからの若手研究 者にとって大きな力となることを信じたからである。そしてこれらの目的 は,ほぼ達成されたと考える。 そして第三の特徴は,テーマのキーワードの-一つに「接合」を取り上げ たことである。先にも述べたように,単純な構造の真核微生物は環境の変 化を感受し,直ちに生存のための方策をとる。その一つが有性生殖への転 換であり,これまで蓄えた遺伝fの組合せを馬剛史する。したがって,接合 や接合への転換のメカニズムを探ることは,とりもなおきず,これら微生 物の環境応答の機構(知恵)を明らかにすることにもなると考えたからで ある。 本ワークショップは平成4年10月213日に,東北大学遺伝生態研究セン ターの主催で,仙台市の公民館で公開セミナーの形式で行われたものであ る。本小冊子はその内容である。多忙のところ本ワークショップの主旨に 賛同され,演者として,そしてまた貴重なコメントを多数戴いた参加者と して,お集まり戴いた多数の方に心から御礼を申しあげます。また,この ワークショップの開催にあたって事務的仕事を全てやって戴いた,東北大 学遺伝生態研究センター0?共同利用掛長,片平勝美氏,そして種々のお手
伝いを戴いた生態生理研究部門の菊地裕子氏と大学院学生諸君にも心から
御礼を申しあげます。酵母菌の重金属耐性とそれに関与する
メタロチオネイン遺伝子の発現制御
村 山 徹 郎 は じめに第二次世界大戦後間もなく,京都大学理学部植物学教室の芦田研究室に
おいて「酵母菌の鋼に対する適応的変異の研究」と題する研究が始められ, すでに半世紀近くが経過した。その間多くの研究者がこのテーマに集い,請 文数も数十編に及んだが,グループとしての研究活動は昭和40年中頃に消 滅した。この間に得られた成果をふまえ,その後の20余年,筆者の研究室 において継続された研究の一端を紹介したい。1.酵母菌の重金属耐性研究の沿革
研究の目的は,酵母菌の重金属に対する適応的変異現象をモデルに生物
の環境への対応を生理学的に探ることであった。しかし,世の移り変わり を反映して,耐性菌の重金属取り込み能を利用した環境浄化への試みなど 当初とは異なる方向への進展も見られたが,ここでは初期の目的に従って 記述を進める。酵母Saccharomyces cereuisiaeの 一系統の野生二倍体株(P 秩)を1mM-CuSO。を含む液体培地に接種すると図1Aに示すような成長 パターンを示す。20時間程度の 一次成長,ほぼ20時間の成長停止期を経て 活発な耐性菌による成長が始まる。寒天ヒにおいても白色の一次コロニー の上に耐性菌にもとずく茶褐色の二次コロニーの形成が60時間以降にお いて観察された(図1B)。このようにして得られた耐性株(R。。株)は4 愛媛大学坤学部▲U O 賛 紳 型 且 20 40 的 10 増 や 時 間(時間) 図1感受作株を含銅培地-接種した後の菌の挙動 A 蘭の成長パターン B:寒天l二でのコロニーの側面形態図 C:柄養液内での細胞形態 A-1銅耐作株による金属の取り込Ji 菌株 僭ノ& h,ネセ(mM) 宙x颱ゥ7 菌体に取り込まれた金属量 r ヨtEv6Vニツ P RL:U 窒偵$7U4 B 1.42 0.1CdSO4 縱 ().2CuSO4 0.1CdSO4 R
酵母菌の重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝子の発現制御 5 mM-CuSO4培地中においても成長することが出来る1)。以後このP株と R。u株を比較しながらその耐性機構の生理学的解析を行なった。 a)金属の取り込みと細胞内分布 金属含有培地に成育したP, Rcuは共に細胞内に金属を取り込むが,そ の取り込み量はR。。の方が多い。また,表1に示すように鋼はカドミウム よりも細胞内での蓄積量が多く,取り込まれた金属は細胞内の色々な分画 で検出された。特に金属の一部は可溶性分画に蛋白質と結合して存在する 可能性を示してはいたが,この時点ではまだ分離精製の域に達していな かった2)。一方,内貴などにより鋼の一部が硫化銅として存在すること, 従ってR。。では硫化水素発生量の多いことが示された3)。また,芦田らは鋼
存在下に成育したR。。の電子顕微鏡観察やⅩ線解析の結果,硫化銅の微細
な粒子が細胞壁付近に沈着し,その鋼は1価で存在している可能性を指摘 した4)0b)耐性株の遺伝性と金属間交叉耐性
酵母菌の重金属耐性が遺伝子支配であることは既にLindegren 一派5), Middlekauff6)などにより報告されていたが,彼等の使用した耐性株は多く の野生株のなかで偶発的に見出されたものであり,我々のように馴養によ り得た耐性株とはその僅質を異にする可能性があった。瀬野はR。。と数種 類の野生株との交配結果からR。Uの鋼耐性は優性の1遺伝子支配である と結論した7)。なおR。Uは鋼の他にカドミウムに対してもPよりやや強い 耐性を示した8)。2.カドミウム耐性菌の分離・選定
上述の結果をふまえ,研究の新たなるスタートとして,まず,遺伝的形 質の確立しているSaccharomyces cerevisiaeの実験室株の1倍体株からカ ドミウム耐性菌の選別・分離を行なった。いくつかの実験室株についてそ れらのカドミウム感受性を調べ,比較的感受性の低い一株(Ⅹ3382-3A株) を自然耐性株として選別した。一万高い感受性を示した株(lol秩, 102株) を順次高い濃度のカドミウム含有培地に移植・馴養することにより夫々カ ドミウム耐性を高めたものを作成,これらを獲得耐性株(301株, 302株)101 301 30EU IO2 302 日l i1 331 図2 各種耐性株の濃度勾配寒天板上での成長領域 感受性株: 101, 102 カドミウム耐性株: 301,302,30EU 図の左端が0,右端が3mM-CdSO。
として分離した。各株の金属耐性の判定のためには濃度勾配寒天法を用い
た。すなわち,長方形のプラスチック皿に金属の濃度勾配を持つ寒天板を 作製し,この上に被検菌の浮遊液を塗布し,一定時間培養したのちの菌の 成長限界域より判定した.,図2に示す様に101株, 102株と,これらを母株 とする耐性301株,302株は明らかにその成長限界域に差がある。また,301 株と302株の交配2倍体331株は夫々の対応1倍体株より低い耐性しか示 さなかった。このようにカドミウムで馴養することにより耐性株を得ることは出来るが,この方法で得られた耐性株が金属無添加培地とほぼ同じ成
長を示すカドミウム濃度限界は0.5mM (Ⅹ3382-3A株では0.2mM)で あった9)。なお,30EUは紫外線照射により得たカドミウム耐性株であるが, その耐性の強さは301, 302株には及ばない。このようにして数種類の耐性 株を得たが,色々の性質を勘案して今後使用する耐性株は301株と Ⅹ3382-3A株に限定した。酵t:i:両U)重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺ll王子U)発射'u御 7
3.カドミウム耐性株の性質
a)カドミウム耐性株の遺伝的性質 カドミウム耐性の遺伝解析を行なうために,上記2耐性株を夫々数種の 感受性株と交配, 2倍体株を作成したoその結果Ⅹ3382-3A株由来のものは Ⅹ3382-3A株と同程度のカドミウム耐僅を示したが301株由来のものはす べて301株より弱く,感受性株よりは強い耐性であった。また,それら交 配2倍体株の4分子分析の結果(表2), Ⅹ3382-3A株由来のカドミウム耐 性は,単一の核性優性遺伝子支配であることを示している。この遺伝子は 遠山らによりCAD2として第2染色体の右腕に位置していることが確認 された10)。なお,以後の実験には遺伝子マーカーとしてCAD 2のみを持 つXTT-Id株をX3382-3A株のかわりに使用した。一万301株は交配する 感受性株によりその耐性の程度が異なる。 4分i・分析の結果は表3に示す 様に耐性判定に用いたカドミウム濃度により異なった分離比を示し, 表2 自然カドミウム耐件株の四分子解析 交削株 ウィォH 9 イ 4:0 」 2:2 」2 0:4 Ⅹ33823AXS1 1 田2 い X33823AXS2 " 1 田R 0 紐 X33823AXS3 4 都R ∩ S 1, 2,3は夫々感受性株 T56,CMR-5(),IS318-IB 表3 獲得カトミウム耐件株の凹分子解析 上 汗地のCd濃度(mM) ネ ィォH 8 4:() 」 2:2 綿 イ 0:4 0.2 飛 5 1 r 4 い十j R 9 0.4 0 " 12 0.5 0 途 17H X3382-3A株に見られたような耐性:感受性の比が2:20)分離をしなかっ た。このことから301株のカドミウム耐性は部分優性,かつ複数の核性遺 伝子支配であると考えている11)0 b)カドミウム耐性の安定性 自然耐性株においては問題にならないが,獲得耐性株においてはその耐 性の安定性が重要である。 301株をカドミウムを含まない培地で継代培養 を行ないその耐性の変化を調べたところ,金屑を含まない液体培地に数回 植え継いでもその耐性は殆ど変化しなかった。しかし, 10回以上移植を繰 り返すと耐性は徐々に低下し一定の所で安定,それ以後耐性低下は認めら れなかった12)。この耐性低下株はHM株として必要に応じて実験に使用し た。 C)耐性株によるカドミウムの取り込みと細胞内分布 カドミウムを含む培地に成育した耐性株は菌体内にカドミウムを取り込 むが2種の耐性株ではカドミウムの取り込み量が異なる。夫々成育時のカ ドミウム濃度が異なるが獲得耐性株である301株の方が自然耐性株より取 り込み童が多く,かつ取り込まれたカドミウムの76%は温水中に潜出し た。一一一万自然耐性株では12%が溶出するに過ぎない。さらに菌体内のカド ミウムの細胞内分布においても,表4で示す様に301株内ではカドミウム の大部分が細胞質内に存在する。しかし, XTTJd株ではかなりのカドミ
ウムが細胞壁など細胞内構造物に結合して存在していた。耐性菌体内にお
けるカドミウムの結合物質を探ると言う点においては可溶性分画に多量の カドミウムを含むことが好ましく,この点において301株の万に興味があ り,以後の実験には主として301株を使用した。なお, 301株の分析電子顛 末4 2種耐性株における力卜、ミウムの菌体内分/1J カトミウム含量(JLg/mgDWcell) 歯株 俤ydYFィン8唯 可溶性分画 傅ノ[ ケZィ 犯ニニ「 XTT-Ⅰd 鉄迭 r 261(44) #h ウSR 3()1 C#c r 1334(93) c " a:細胞破砕全液中の%を示す酵ll1両U)重金属耐性とそれに関LjTるメタロチオネイン遺仏子U)発現制御 9 微鏡解析からカドミウムの細胞器官内での分布を見ようとしたが,カドミ ウムの細胞内濃度が低く良好な結果を得ることが出来なかった。しかし, 301株を3mMCdS04に3時間浸積して薗体内カドミウム濃度を卜げた 標晶ではカドミウムが液胞に燐と共に存在していることを示していた が14),これは成育条件とは異なるので液胞へのカドミウムの局在を確信す るものではない。
4.カドミウム結合性蛋白質の分離と性質
カドミウムの存在下で成育した301株に取り込まれたカドミウムの大部 分は可溶性分画に存在する。そこで0.5mM-Cd培地で48時間培養した菌 体からカドミウム結合性蛋白質の分離を試みた。集菌,洗浄した後トリス 緩衝液で75oC,30分の抽出を行なった。これを温水抽出液とし,順次セフア デックスG-50,CM-セフアデックス,DEAE-セラァデックスで分別,得ら れたピークの内カドミウム含量の高い分画を採取した。これはカドミウム: 表5 カドミウム結合性蛋白質のアミノ暇組成1() 蛋['-i質のモル比5:1を持つほぼ単一のCd結合性蛋白質である。そのアミ ノ酸組成は表5に示す様にシステイン,アスパラギン酸,グルタミン酸,お よびリジンの含崖が高い。また,システインは18%と高い含量を示してい る。一万芳香族アミノ酸は殆ど含まれていない。これらの性質は熱に対す る安定性と共に既に報告されているメタロチオネイン(MT)15)と極めて よく似た性質であった。さらにその紫外線吸収パターン(図3)はpH-7.9 では250nmにショルダーを持つが低pHで消朱するという典型的なカド ミウム-チオール結合である。また図3で示している様に,アポ蛋白質は カドミウム,鋼,亜鉛などと再配位出来る。このようなことからカドミウ ム存在下に成育した301株はカドミウムメタロチオネイン(Cd-MT)を合
成していると断定した16)。一万, Fogel17), Butt18), Hamer19)などは鋼耐性
酵母株からの鋼メタロチオネイン(Cu-MT)の分離・精製,誘導の機構な 2 20 払0 260 2 80
Wave Length. nm
ll 図3 Cd-MTの紫外線吸収スペクトル (1,2:夫々 pH-7.9,2.0の緩衝液中での/くターン3,4,5:アポ蛋白質 にCd,Cu,Znを添加,再結合させたもの)酵J:1両u)重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝[-a)発現制御11 辞母C d-M T 1 5 11) Gln-^8rL-61LJ-GltJ-=8-61tJ- CL18-Gln-Cu8lt3lrI-CtJ8-61u-Sor:-Cu8-1S 20 Lt18-^8n-A8n-61u-Gln-Cu8- 61n-Lu8-Sor一一一 9 時母C u-M T Cg8-ABn-Ser-AeP-AIPILu9-Cut-Pro-Cue-GIu-Aln・Lul-SBr-6tLJ-GltJIThr-Lv8-LtJ9-Slr-Cue-Cul-SBr-61U-Lu8 図4 酵母Cu-MTと酵母Cd-MTのアミノ酸配列の比較 どを報告している。さらに彼等は鋼耐性菌におけるMTの合成は鋼,また は銀によってのみ誘導され,カドミウムは誘導iこ関与しないとしている。 従ってカドミウム耐性株,鋼耐性株はそれぞれ異なるMTを合成している 可能性があった。そこでCd-MTのアミノ酸配列を決定,それをCu-MT と比較した。結果は図4に示すように我々が決定し得たアミノ末端より23 番目迄は完全にCu-MTのそれと一致した。このことは鋼耐性株,カドミ ウム耐性株はそれぞれ誘導される金属種は異なるが,産物は同じ蛋白質 MTであることを示している。なお我々はアミノ末端より23番目迄しか 決定していないが,表5に示したMTのアミノ酸組成から見る限り95% 以上の相同性で同 一蛋白質であると言える。
5.カドミウム結合性蛋白質の合成条件
鋼耐性株によるCu-MT-合成には鋼,または銀による誘導が必須であ る20)oカドミウム耐性株もまたその合成にはカドミウムが必要であり,その 童は培地の中のカドミウム濃度に依存している(図5)。なお,培地にカド ミウムを添加してからMTの合成が認められるまでには2時間程度が必 要である。さらに301株は鋼の存在下でもMTを合成することを確認し た。12
培養時のカドミウム濃度(mM)
0 0.l 0.2 0.3 0.4 0.5 こ:二コ - MT 図5 異なるカドミウム濃度の下で培養した301株によるCd-MTの合成量の 比較 (異なる濃度のカドミウム存在下で48時間培養した菌の温水抽出液のポ リアクリルアミドゲル電気泳動図)6. Cd-MT遺伝子の検索・機能
a) Cd-MT遺伝子の分離,構造 301株はカドミウムや鋼の存在下で,一方鋼耐性株は鋼存在下でのみ MTを合成するが,この両株により合成されたMTは同一蛋白質である。 当然これらの構造遺伝子は同じ性格のものであろう。鋼耐性株ではすでに MT遺伝子としてCUP lが同定され,その鋼耐性の程度はこの遺伝子の 増幅度に比例していることが報告されている20)。そこで, Butt博士より cUp lを含むプラスミドYEp36の贈与を受け,それをプローブとして cd-MT遺伝子のクローニングを行なった。まず, 301株の染色体DNAを 抽出,制限酵素Kpnlを用いてDNA断片を作成,これのCUP lを含む1.3 kb断片をプローブとしてサザン解析を行なった。図6に示す様に感受性株酵母菌の重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝子の発現制御 13
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}■ ●■ < 図6 301, ×2180-IB, CMR-50 (感受性株)から分離したDNA断片のサザン 解析 ㊤: KpnlによるDNA断片の電気泳動図 ⑧:CUPlをプローブとしたサザン分析パターン (矢印は2Kb DNAの位置を示す) (CMR-50)ではかすかに認められるに過ぎない2kbバンドが301株では 鋼耐性株であるⅩ2180-1B棟のそれと同程度に濃染色されている。これは Ⅹ2180-1B棟と同程度に増幅されていた,すなわち10コピー以上のCUP lが301株に存在していることを意味している21)。そこでこの2kb断片を 回収,プラスミドpUC18に挿入,これを用いて大腸菌の形質転換を行な い,このなかからCUPlを含むプラスミド選択,それらをpUMTCとし, これを材料にして301株由来のCUP l様遺伝子のSau3AIとⅩbalの制14
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-日日 仁コ XIY -u 「ココ uu lコ (Y.YJH) J_ IX -日日 ⊂コ †I -1 ■ー叩構F.・. 4..ff.:.I JLt
図7 Cd-CUP lの染色体上の分布を示す/くルスフィルド電気泳動図 ㊤:染色体の分離パターン 左端は染色体番号 ⑧: CUP lをプローブとしたサザン解析 限酵素地図を作成したがⅩ2180-1B株由来のものと非常によく似ていた。 これと,転写産物のMTとの相同性を考え合わせ301株には増幅された CUP lが存在すると判定したが記述の便宜上301株由来のものを以後 Cd-CUP lとしてCUP lと区別する。 b) Cd-CUP lの染色体上の位置 301株のCd-Cup lの染色体上の位置を検討するためにCUP lをプ ローブにしてパルスフィールド電気泳動を行なった。結果は図7に示す様 にⅩ2180-1B株ではFogelらによる報告22)のとおり第8染色体に強いハ イブリッドシグナルが認められたのに反して301株ではそのシグナルが複 数の染色体に分散して存在するという不一致があった26)。この意味につい酵母菌の重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝子の発現制御15
④
301N X2 t80-1B tD 5D-H DD5D>H(YEp1 3) DD5〇・・K (YEPb34)㊥
30tJI X2180-18 JP5D-∼ DKD-5tトX(YEp1 3) 帆-5D-A (YEqp34) 図8 YEMp34による転換株の金属耐性の比較 (㊨, ⑧は夫々カドミウム,鋼の濃度勾配寒天上の成長パターン) ては目下検討中である。なお前述の自然耐性株XTT-Id株ではこれに相当 するシグナルは存在せず,この株のカドミウム耐性がMTに依存しないこ とを示している。 C) Cd-CUP lの機能 pUMTCからCd-CUP lを含む0.98kbDNAを分取し,大腸菌一酵母 シャトルベクターYEp13に挿入,得られたプラスミドの一つをYEMp34 とし,これを酢酸リチウム法により数種類の金属感受性酵母菌に導入して 発現の様子を見た。その1例を図8に示すが,転換株は銅に対して耐性を 示した。同時にこの転換株においてもCu-MTが合成されていることを確 認した。ところが,転換株億カドミウムには全く耐性を示さなかった。Cd-cUp lは301株以外の株においては,鋼の存在下においてCu-MTの合 成に関与し,それを保持する株に鋼耐性を与えるが,カドミウムの存在下 では機能しないことを示している。このことは金属による発現機構の違い を示唆している。 d) Cd-CUP l発現のための条件 301株のCd-CUP lの発現は鋼またはカドミウムにより誘導的に起こ16 1
3
QI Q'ぎ卓、卓、
卑 ojQ ojQ一.●▼●●
図9 301,Ⅹ2180-1B,IS318-4C (感受性株)から分離したRNAのノーザン解 析(種々の条件で培養した菌株から抽出した全RNAのCUP lをプロ-プとしたノーザン解析) る。一方Ⅹ2180-1B株のCUPlは銅,または銀によってのみ誘導される。 この違いは当然発現調節機構の違いを示しているので,まずCd-CUP 1 の発現に金属添加が必須かどうかをCd-CUP 1 mRNAのレベルで検討 した。CUPlをプローブとして301株のRNA抽出物についてノーザン解 析を行なった所,鋼,カドミウムにより転写が確認されたのは勿論である が図9は金属を添加しなくてもある程度の転写が起こっていることを示し ている。なお, mRNAのレベルは添加したカドミウムの量に比例して増加 している。 Ⅹ2180-1B棟では金属無添加では全くmRNAが検出出来ない ことから301株では量的には少ないが構成的に転写されていると言え る23)07.カドミウム耐性菌内でのCd-CUP l発現の調節
鋼耐性株Ⅹ218011B棟のCUP l発現はトランスアクティングファク ターACE 124)が鋼の配位により構造変化を起し,これがCUP lの上流域酵母菌U)重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝[-の発現制御 17 にあるUASと結合することにより始動する25)0 ACE l蛋白質についても 研究が進み,その構造変化に関与するのは鋼,銀であることが確認されて いる26)。もしⅩ2180-1B棟と同じ調節機構が301株にも存在すると仮定す るならば, 301株にもACE-1様の蛋白質が存在し,それがカドミウムによ り構造変化を起す様な物でなければならない。次の間題としてⅩ2180-1B 株由来のACE lと301株由来のACElとの比較,それらに対する金属の 関与を解析しなければならない。現在301株にもACE l類似の配列が X2180-1B株と同様に第7染色体上に存在することをACE lをプローブ としたサザン解析から確認している。しかし301株ではこれ以外にカドミ ウムに特異的な調節遺伝子の存在も考慮にいれねばならず, Cd-CUP lの 調節機構解明は今その緒についたばかりである。
8.カドミウム耐性機構の多様性
301株は低濃度のカドミウムから順次高濃度へ馴養することにより耐性 を与えたために,その耐性機構は複数であると思われる。4分子解析はそれ を示唆している。この論文では耐性機構を担う一因をMT合成の有無に限 定して論じたが,ここでもまた予期せざる多くの困難に遭遇した。 Ⅹ2180-1B株では明快な結果が301株では非常に複雑なものとして解釈を困らせ る。 301株では鋼においてもカドミウムにおいても同じMTを合成するに も関わらず,その合成調節は非常に異なっている。そこで調節遺伝子とし てACE l以外にCd-ACEを想定して図10のような調節機構を仮想し ているがこれの実証はこれからの問題である。また,301株を鋼や亜鉛の存 在下で培養すると鋼耐性は増加するがカドミウム耐性が低下する。このよ Cu7' r:,lZ◆図10 CUP 1 (Cd-CUP 1)の発現調節に関与するACE I, Cd-ACE Iの関
18 うな現象がMT合成で解明出来るのかどうか疑問ではあるが,ニッケルの ようなMT誘導と無縁な金属で培養した場合にはカドミウム耐性の低下 が認められないのでMTとの関連を考えた方が妥当である。なお,これに 似た現象は前述のHM株においても見られた。すなわちHM株はカドミ ウム耐性の低下の代償として301株より強い鋼耐性を示した。さらに,鍋 馴蓑によるカドミウム耐性低下株やHM株ではⅩ2180-1B株と同様 CUPlのハイブリッドシグナルが第8染色体にのみ限定されていた0 301 株に見られた第8染色体以外に存在したCUP lハイブリッドシグナルの 安定のためにはカドミウムの存在が必要なのかも知れない。またこのシグ ナルがカドミウム耐性に重要な意味を持つ可能性も大きい。このように一 見単純に見える金属耐性機構も非常に多くの因子を抱え,それらが互いに 複雑に絡みあったものである。闇夜に鶴を追うもどかしさを感じつつ,何 時果てるとも分らない問題に取り組んでいる。(最近の研究には301株より 再分離した301N株を使用した。) おわ り に 研究の一つの流れとして半世紀になんなんとする私の研究室の成果の一 部を述べたが,これで完了と言う訳のものではなく,前節に述べた様によ り複雑になった感が深い。生物の環境適応は古くて新しい生物学者の興味 をそそる問題である。アプローチの,そして材料の多様性のゆえに総括的 に結論を出すことは難しい。今後とも多くの研究者に様々な研究テーマを 提供し続けることであろう。
この論文は愛媛大学理学部生物学教室生理学研究室のスタッフ,ならび
に青春の一時期,その情熱をこの研究に燃やした卒論学生,修論学生諸君 の成果の一部である。おわりにあたり,発表の機会を与えて頂きました関 係者の方々に感謝致します。参考文献
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生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating
真核生物酵母と原核生物大腸菌との接合
の分子機構を中心として-吉田 和夫・西川 正信・猪俣 孝二
関藤 孝之・校本由紀子
I.はじめに パン酵母Saccharomyces ceyleUisiaeは真核微生物の中で遺伝学及び生理生化学的研究が最も進んでいて,その生活環に於ける環境応答と遺伝子発
現についても解明が進んでいる。今剛ま生物環境応答としての大腸菌と酵 母の接合現象(Trams-kingdom Mating生物界間接合)について我々の研究を中心に紹介したい。これは原核生物の大腸菌と真核生物の酵母とが接
合し,大腸菌から酵母菌へ遺伝子DNAが伝達移行する現象で,本来は遺伝
子の接合伝達は同一一種間に限定されている苦のものが,種はおろか生物界 (Kingdom)までも越えて水平伝達することを示すものであり進化生態学 的にも大変興味深いものである。ⅠⅠ.細菌及び酵母菌の接合
原核生物の性の起源は3/0億年前の始生代に,減数分裂を伴う真核生物の
性は10億年前の原生代に始まったと言われている。原核生物である大腸菌 など細菌の性はF国子のようなエピゾームにより決定されていて,その接 合も一方向的である1)。接合伝達プラスミドを持つ供与菌(雄)からの性繊 毛を介して受容菌(雌)とペアが形成される。次いで接合管が形成され,プ 広島大学理学部22 ラスミド0)一方のDNA鎖の特定配列oriTでニックが入り, 5'末端から 受容薗側へ 一本鎖DNAの移行が起こる。それと平行して移行鎖及び残留 鎖を鋳型としてDNA合成が受容菌,供与菌内で同時進行する。最終的には 完全な二重鎖環状プラスミドが複製され,接合が完Ij'して供与菌と受容歯 は分離する。受容菌はプラスミドを受取り,トランスコンジュガント(接 合完了体)となる。自己伝達性プラスミドは最小限mob, t7la, OriT, oriV 遺伝子群が必要で, mobはoriT特異的ニッ9/静素で, lraは多数の遺伝f-群の総称で,性繊毛形成,接合管形成,接合制御等に関与する遺伝子から なっている。 oriTはmob酵素により認識切断され移行開始する配列で, orl'Vはプラスミドの複製開始起点であるo mobとtraはトランスに機能 するので,必ずしも同じプラスミド上になくてもよく,別のプラスミド(-ルパー)上でもよい。 F因子には挿入配列IS,TnlOOOがあり,これを介し て大腸菌染色体に組み込まれてHfrとなり,染色体全体を可動化する事は よく知られている。また,プラスミドの細菌内共存性は不和合性遺伝子inc が決めていて,同一一一inc種は共存できない。しかし,細胞Aのヘルパーが 細胞Bに自己伝達し, Bの同一一種のincプラスミドを細胞Cへ伝達するこ とは可能で,これを通常の二親接合(Biparental mating)に対して三親接 令(Triparental mating)と呼ぶ。 一・万,真核生物である酵母菌には高等動植物の雌雄に相当する明確な性 の分化があり,雄性配偶子,雌性配偶子に相当するα,α一倍体細胞が同等 に接合して接合子二倍体細胞を形成する。この二倍体細胞(α/α)は出芽に より無性増殖を繰り返すが,栄養飢餓の状態にするとそのシグナルにより 減数分裂が誘導されてそれぞれ2個のα, α--・倍体細胞からなる4分胞子 を形成する。このα,α胞子は発芽して出芽による無性増殖をくり繰り返す が,両細胞を混合すると,両細胞から分泌される性フェロモンがトリガー となり接合が誘導され,性的細胞凝集,ペアー形成,細胞融合,核融合の 一連の過程を経て接合子が形成される。これはへテロタリック(雌雄異体 悼)株の性サイクルであるが,ホモタリック(雌雄同体性)株も本質的に 同じで,一倍体細胞が性転換してすぐ別の一一倍体細胞と接合し二倍体に なってしまうので安定な一倍体細胞の世代がないだけである。以上の接合
'tl.物環境応答としてajTrans-kingdom Matillg 23
脚芸◎
旭子形碇 図1パン酵母の環境J応答と惟サイクル遺伝丁の発現 ホモタ1)ック(雌雄同体)株ではH()1クレースの作Mに・iり, HMRa またはHMLαが第In染色体のMATに転送(A)さかることにより他 か決定され.フェF,モンfT成とその作JT]によりGl停lLとシュムー形F,q. 性的凝集塊中での対合と接合子形碇かおこる(B)0 ▲倍体では -lE、`;体で 働く遺伝子は抑制されるLC)れ 貧栄養が/クナルとなりRAS CAMP 遺Iz、1発現カスケートか発動し減数分書生か起こり.胞f一が形F'乾されるo フェロモン信弓伝達では別のカスケートか発動する(E)oH()による惟転 換可能株かホモタリック(雌雄同体)株で, H()か突然変災すると-テロ タリック(雌雄異体)株となる。 HLSGは・倍体遺伝子, DSGは二倍体遺 伝ィ, ASGは性的凝集物質迫伝f-, MFはフェロモン退伝7・. ASは凝 集物質, PherはフェF]モンをホす。中空矢印は促進. T′ナ二矢印は抑制,波 状矢印は遺伝子発現を示す。他は省略,詳しくは文献3を参照。2/1 過程は図1に簡略化して示すように複雑な遺伝子発現カスケードにより精 妙に制御されている2 4)。
ⅠII.生物界間接合-大腸菌と酵母の接合
図2は原核真核生物界間接合用に我々が構築した伝達性シャトルプラス ミドの一部を示す。大腸菌で働く mob,oriT oriVとマーカー遺伝子,醍 母で働く複製配列ARS,動原体CEN,マーカ㌻遺伝子等から構築されて いるo貞核生物や働く遺伝子は白抜きブロックで示してある。これらプラ スミドは別のヘルパーl・.のt71aとmobO)トランス機能によ-'て可動化さ れる。即ち,プラスミドは種属・生物界間の障壁を越えて可動化する機能 と移動DNAの安定化維持機能が必要である5-9)0 図2のプラスミドを形質転換で導入した人腸菌から酵母へ接合伝達杏 行った実験結果のまとめが表1である6 10)。この接合には人腸菌同志の接 合で使われるメンブレンフィルター法を使用した。大腸菌同志の接合では ⅠⅠで述べたように性繊毛による凝集塊が形成され,その中でペアができ接 合のプロセスが進むと言われており1),同様に酵母菌同志の接合でも性的 凝集が必須である2 3)。図3に示すように大腸菌と酵母の生物界間接合でも 凝集塊形成は必須でこれを抑制すると接合が阻害される8)。図3の写真が 示すように酵母と大腸菌が相如こ接着凝集していることがわかるo この凝集は酵母の細胞表層物質も関与していることは,生物界間接合頻度が酵母
菌株によって大きく変わることからも明らかである。 表1から分かるように栄養要求性酵母から非要求性酵母が出現するが (No.1,2,6-8), ()riTやヘルパープラスミドがないとこの非栄養要求性株 の出現は見られない(No.3-5)。これは大腸菌から酵母へプラスミドが接合 伝達されることを示している。この結果を分子レベルで証明するために出 現したpAY-GUSを接合伝達された酵母トランスコンジュガントから DNAを抽出し,サザンプロット解析を行った。確かにプラスミドがどのト ランスコンジュガントにも存在した(図4)。 PAY-GUSのGUS遺伝子は ガラクト-ス存在下でのみ誘導発現される(図5,他のプラスミドのサザン 解析については文献6-9参照)。また,継代培養したトランスコンジュガン/上物環境(,lLIJl答としてJ)Trams-kingdom Mating 25
OTrV orlT orlV orlT
ミ‡ご A ∩
orlT mob
図2 原核真核/ト物問接合絹ソヤトルプラスミトの構造
07・iTは伝達開始起点, rm'Vは複製開始起点, m()bほ()rz'T特興的ニソク 酵素. t7Jaは伝達に関与する遺仏L ARSl, CEN4, I.EU2, TRPJ. URA:3. GAIJIOproは-ソ酸母の複製配列,動原体,ロイシン[州.ト り)卜ファンfT成.ウラシル合成.カラクトース賛化性遺111三了-7°モー タ-を示すoGUSはダルクp二クー七の遺(1三千.NPTIIはネオマイノン ホスホトランスフ工ラ-セ遺仏子, Kmr,Tcrはカナマイノン,テトラサ イクリン耐性遺伝了を示す。LBとRBはTiプラスミトのT-DNAの境 界配列o白抜きフロックは呉核′t=.物で機能する遺伝[を示す。pAY-GUS は発現軋 pBASGは動物用プラスミトo pAYIOOシリ--スは1nCPタイ プ, pAY20(J/リースはincQタイププラスミ ho
26 。」 。酔態rL-1],hCo型瑞桝Jt 小:mNL1'要黙秘]/\ー卜LJ.Jt/I+i-1 c十〃r、心」 ; ・T: I/I.,1二・∵ 、J・--∴,..'。./二FJ . I. rriJ l、・ 'i・(、 ⊂日⊃ ⊂〕 u u (J Z Z.Z Z Z /. UN UN UN UN UN UZ UZ 二/ GN 凸N ‖U]∵otxトO UN 丁∵. :・rTf, tljTjlrr atqt2LnU・u()u ㍗;盟.hJ.・∵ミ三・T ∴\・fJfhlr :.t[.二p, -1[ 1.〔ニ/ '.こ・ドニp.望.1 ,L/.I. '・/i.,Tj-, /-77二、土.∵ ・・.・」,ここ/.∴「.IJ∵JrT・;.I,I/(/,rj ri・;Tl,(.Jill.卜・- ].二。1∵ ijgY.1 Lqr<tt卜やT:_ nt⊥凸 DfS態'L′\要領軸q/11卜4.,㌔)・Ej ./Ll卜」卜「L l小二宍NLI遠地剖1/斗=∵竹重噛1艦盗ノ(竺巧 .\、!?IrJJJ.・,:,I 卜dtZト1上 りY t卜L .\トL」 卜rLエ ていtJ,二,:lr.I.'[I二(,T〓 yIトトー′、1'√Emf南甘ぐq心qouL.LT,EJT二一NNHtFd.()TNHtZd.cTOZ出trdエリY4=DL lr :'・7[・,I/:/・r/」⊥if,I//i..-・・[7.1ぎニ∴、.1g.=).・jh∵r.. 十∴., ・・,J J・'n.. ,,rFFi・})77) Co7鳴W似賛辞LLl。IjぐyjJi匝瞥NT㌣卓恕槻半S岬7;i/i(lト-舟。巾嶋11〔蒜 a P U (q i/,1トム鮮FF盲〔JTj崎唖睡叫Y).宙蟹辞TrTJ1Q二,t尽・=へ\ Y\小」Co酎atqtzlnU・uOUbFI cf.f計aTqtZJnU rtZ 。甘りLrrTll蜜 oN.十ilt二,ふや.UZ [d]60 1 1'.三 L rdi,IOTXト爪 [d]∵OTX6N [d] 7OTX∞0 [d] ∵≡×トT 1 ニ_ 1 こ_ こ_ ニ_ こ_ TOTXg+() N-OTXZ:O EJ)tX60 1TOTXNO TOTXmO M.OTX∞O M.OIXCd GN OZ QZ [d] TOTX6fT ーdL T()TXOZ: LuH.Ldv dlL d.ll .tZln 十tZln +t21コ +I:1n +nat,d1ト .naJ .dlL 十d1ト..I:1n +d.ILL 」Zli1 .tZJll TL.」.) .tfJ.) .I:・lA1 +I:1n T∞NZNAX T∞7,NZ.1× _っt⊥0× mt⊥0× (..[ [(I・ (otNHtZdこOTgHX 二UuVd)N6CH1 f7T 癌聾ソ「7観望七=\o)I)]Zf7ZILDtft)LVXZj().,ml17. 1JE?lJL7SH 石二oNHtrd.TOT^VdlTtaU⊥uT∈ CT 二)TZ:HtZdAT()LIVd)f71?gLgd ZT 1 IIを、∴l∴・・・+.l諾1 .I,㌔.・[/.=、‥ニH,,,±、、\,/,.′・・l[・1(,IH!tU ・cTONXttdlTOTgHX 〓N^Vd)TOTgH 〓 ・JT()ZHttd,TOTgHX t・uNAVd)toTgH Ot ・cTONHt[dJfOTgHX I()N^Vd)TOTgH 6 Lr中溢「L--1/礼 TgNZZAX 7J偲aY)LLLと.i.jZiq㌘CJl.ILHJIlDlruLJSTXJJ0)LJ. ZZJ一…"(,SH CTOZ:出t[d)lOTgHX 〓Z,.1Vd)TニーgH g CNA× lカNNIQA× t∞NZNltX T∞ZNNLtX TのNNZA× TgNZZ.1× l∞NNTiA× ・,H,..;,fIヱ二.rJ[,1′:(I.[l二.u.,l [l二・,Hf i oTNHtZd.TNNト1VdノT()tgHX(,こTt I.Ill)d・(TT(1..1Vd二()tEIH 9 (mTONHtZd.I()TgHX LCTONHttdノt()TEZHX ・cTOZ:HtEd/JoTgHX (,cTONHtid/一OTE[HX T()TgH S 言トdt(.i)tOtgH I, soztAvd云〓gH C ・Tニ㍗1VdITOTgH Z: 三(..tJ(I:.′Vd.TOTEZH I ft壷/・t\7櫨盟#l(?ulF]・W,(,ULU.ござ,",zJ).)"Lb,Xへ\,,-ZZ[…,"(,SH 和雄GD世態7粗餐Y l哨 副エ;i tトト atqtZ】nU 卑ij惑wlj蛍 ∵("rJ]7, 'r]∵∵. ,山-. A,.=-I L・, -I..
生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating 27 図3 大腸菌と酵母の接合凝集とマイクロコロニー形成 A,非凝集; B,凝集沈澱; C, Bの沈澱の頗徴鏡写真; D, ARSのない プラスミド伝達と一過発現によるマイクロコーロニー形成o写真中央の大 きい二つが正常コロニーで,その周りに多数ある小さいコPニ-がマイ クロコロニーo
28 ト酵母からこのプラスミドを抽出して,大腸菌を形質転換し,その形質転 換体から抽出したDNAを解析した結果はプラスミドは機能的にも構造的 にも変化していなことを示している。これらのプラスミドは通常富栄養培 地で培養するこ七でキュアリング(宿主からの除去)できる。このことは プラスミドの存在の証拠の一つでもあるが,希に(10-7の頻度)キュアリ ングできないトランスコンジュガントが出現する(表1. No.2)。この酵母 の全DNAのパルスフィールド電気泳動結果弟図6Aで,大部分はプラス ミド伝達前の酵母のそれと明瞭な差異は認められないが(レーン1,3),明 らかに新しいバンドの出現したトランスコンジュガント(レーン2)が得ら 図4 pAY-GUSの大腸菌からパン酵母への接合伝達 A,トランスコンジュガント酵母DNAのEcoRI消化, 7ガロース電気 泳動後,-チジュムプロミド染色.1-3はDBY747トランスコソジュガン
ト, Cは接合前のDBY747, Mはサイズマーカーo B, Aのサザンブロッ ティソグ,プローブはpBIN19。
生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating 29 図5 酵母-接合伝達されたpAY-GUSの発現調節 非伝達酵母(A),非誘導トランスコンジュガント酵母(B),ガラクト-ス誘導トラスコソジュガント(C)のGUS活性。 れた7).前者はプラミスドのURA3遺伝子のみが,後者はプラスミド全体 が染色体に組み込まれていることが,図6Bのサザンプロット解析の結果 から分かった。更に組み込み機構を知るために,トランスコンジュガント のURA3遺伝子座付近のDNA構造を解析した(図6C)。パルスフィール ド電気泳動でバンドシフトを生じないトランスコンジュガントからは全部 5・5kbのURA3を含むBamHI断片しか見られないが(レーン1-3,5),バ ンドシフトのあるトランスコンジュガントでは, 15,ll,3,1.5kbの4個の BamHI断片が検出された(レーン4)o このことから,我々は図6D,Eに 示すような組換えが原核真核生物間接合の際に起こったと考えている7)。 即ち,染色体のura3-52とプラスミドのURA3とが二回組換えにより入 れ替わるか(D),接合伝達時にプラスミドが多重複製して二回組換えで入 れ替りバンドシフトを起こす程大きなサイズのDNA挿入となった(E)0 更に,我々は形質転換によるDNA導入に比べて接合伝達によるDNA導 入では二回組換えが起こり易く,接合伝達時のDNA構造を変える因子の 存在の可能性がある結果を得ている(発表予定)。なお,ここで使用した u71a3やIeu2は復帰突然変異を起こさないマーカーである。 pAY112と201 (図2参照)は酵母での複製配列ARSを持っていないの
A
刈 Ⅳ W M …SZ州 Ⅸ…Ⅵ. Ⅵ 川 X V ● lJL● "kb_ 昌一し2kb 】 --- - .-55kb 3kb- / + T5kb-. JT5kb-.iT5kb-.i 'r'拙<・.IIL I ・C型七二一」払・→卜拠 1.JIkb l〇・8kb -_ _._ 10.8tt) 1.Atb 3,3kb ∼ I Z T T 盟::トミーー ⊂hr 8 tD柚 o 3 ▲ 5 t 一〓仙川 図6 キュアリング不能トランスコンジェガント酵母のプラスミドDNAの解 析 A,キュアリング不能トランスコソジュガント酵母のパルスフィールド 電気泳動核型。 1-3はpAY201伝達で得られたトランスコンジュガント のDNA,左端ローマ数字は染色体番号。 ら, Aのサザンプロット。 1-4 はプロ-ブにURA3のないpAY201 (pKT230)を, 5-8はpAY201を 使用o C, Aのトランスコソジュガント酵母DNAの劫mHIダイジェ ストのサザンプロットで,1-3と5はバンドシフトのなかったトランスコ ンジュガント, 4はBの2のバンドシフトのあったトランスコンジュガ ント, 6は伝達前のYNN281酵母からのDNA。プローブはpAY201。D, Cの1-3,5のトランスコソジュガントの説明図でHとBはそれぞれ HindIII,BamHI切断箇所。 E,Cの4のトランスコンジュガントの説明 図で, HとBはDに同じ。生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating 31 供与剛E・EOIi)才 '空音rYMr・Ln ♀ (I) 臣ilttlラスミド 扶幌
・b, i
・C,匝廟
トラン7.コンジュ〝ント _/一 / 「一、-\」13号誓晋品失 持…完芸化 ば蓋空色休
'e'@@@
TTイタ…ニー 2吉品三:≡_' 鳴;ご三三
図7 大腸菌と酵母の接合過程と三種のトランスコソジュガント酵母形成の機 構 (a)接着,凝集塊形成; (ち)接合管形成と_DNA移行; (C)トランス コンジュガントの形成;(d),(e)三種のトランスコソジュガント(ト3) の形成。32
で酵母内では増殖できないが,酵母へ伝達されたプラスミド遺伝子が一過
的に発現して,図3Dのようなマイクロコロニーを形成することを見出し た7)。この接合を不稔生物界間接合(Abortive trams-kingdom
conjuga-tion)と呼んでいる。
以上の大腸菌とパン酵母の接合の結果を推測もまじえて模式的にまとめ
たのが図7と図8である7,10)。大腸菌内の伝達性プラスミドのわⅦ遺伝子の 働きにより大腸菌と酵母菌とが接着,凝集塊を形成し(a),その中で対を 作り,接合管を形成する。 mobの作用によりoriT部位で切断され, 5'末 端から一本鎖DNAが酵母内へ入り,核膜を通過し核へ移行する。そこで相 補鎖が合成されて再環状化して元のプラスミドと同じ構造になる(b,C)0 大 腸 菌 ( ♂ ) 戎官用 新生書換点 D N Aポリメ レースIII D N AへリカーゼI aJaJ一 移行銀 D N Aポリ メ レース D N A冶含ま白井 辞 母 ( ♀ ) 図8 細菌酵母間接合におけるDNA移行の分子機構 traによる接合管形成, mobによるoriT部位のニックと5′端からの一 本鎖DNAの酵母核内への移行。移行中に宿主酵母染色体との組換えの 生起o移行鋳,残留鎖の相補鎖合成,再環状化。 DNA,RNAポリメL'-スほ宿主酵母染色体由来。生物環境応答としてのTrans-kingd()m Mating 33 プラスミドがARSを持っていなければ,一一一過的発現をしてマイクロコロ ニーを形成するが,最終的には消失する(d,el)0 ARSがあればプラスミ ドとして安定に保持されて,キュアリング可能な正常コロニーを形成する (d,e2)0 ARSの有無に関わらず-一一・回あるいは二回組換えにより染色体に 組み込まれることが低頻度で起こり,キュアリングされない止常コロニー を形成する(d,e3)。図8はDNA移行時の分子伝達機構のスキームで,情 報不足のところは大腸菌同志の接合から類推補足したものである。 現在のところ,パン酵母受容菌についての生物界間接合に於ける役割は 何も解っておらず,菌株によって受容能にも大きな差異が見られるが,追 伝的には今のところ全然不明である。最近,このような生物界間接合はパ ン酵母以外の系統分類学的にも可なり離れたクルーベリ酵母11-12)と大腸菌 の間でも起こる事を兄いだしている8-10)o 表1のNo.9-11がそれである。 この場合,面白いことにパン酵母のARSのないpAY201でも正常コロ ニーを形成するところから,このプラスミドのどこかの箇所がクルーベリ 酵母のARS機能を果たすものと考えられる。更に,クルーベリ酵母内では 非常に組換えを起こし易いことも解ってきた。また,パン酵母のCENがあ るとプラスミドが脱落しやすくなる等興味深い現象が見られる・8㌻10)0 核(様体)を持たない大腸菌突然変異体ミニセルと酵母の接合を試みた のが表1のNo.13で,ミニセルから酵母へのプラスミド伝達を示している が,これはまだ完全とは言い難いところがある8)0
IV. Trams-kingdom Matingと細胞内オルガネラの進化
ここで述べた大腸菌と酵母の生物界間接合は進化生態学的に人変興味深
い現象であり,色々の問題提起が可能であるが,オルガネラの起源と関連 させて考察してみたい。 独自の遺伝子複製発現系をもつミトコンドリアや葉緑体等のオルガネラの起源には共生進化説と連続進化説とが鋭く対立している。連続説は祖先
細胞が突然変異と自然選択により連続的に進化してミトコンドリアや葉緑 体を形成するに至ったと主張するものであり13),共生説は嫌気性祖先細菌 に好気性細菌やラン藻が共生進化したのがミトコンドリアや葉緑体の起源34 だとする14,15)。現在の分子生物学や細胞生物的データは共生説に大変有利 なようであるが,共生説の最大の難点はオルガネラの遺伝子の大部分を何 故またどのような機構により宿主核に移行させたかについて説得力のある 合理的な説明が無いことである13,15)0
この難点を解決するための作業仮説として我々の提唱するのが細胞内接
合伝達仮説(Endosymbiotic conjugation hypothesis)で,その概念図を 図9に示す。これはオルガネラ候補の細菌(mtlやct')が共生し(A),吹 いでこれらと宿主核候補(nu')との間に細胞内で接合が起こる(B)。伝達 された共生細胞の移行DNA(T領域)と環状染色体との組換による組み込 みと切断から線状染色体形成に至る。一方,共生細菌のT領域の偽遺伝子 化や組換えによる消失等が起こる(C)。その後,選択圧により安定化した ものがオルガネラとして生き残る(D)。この仮説は遺伝子の移行原因と移 行機構の両方を同時に説明できるだけでなく,オルガネラ遺伝子の核への 一方向移行性についても旨く説明できる。イントロンの起源も同様な機構 で生じたものかも知れない。この仮説をより論理的で説得力のあるものに するためには,少なくとも1) DNA,RNA,蛋白質の一次構造等の分子生 物学的データ解析による接合伝達に関与する分子(あるいは痕跡分子)の オルガネラでの検索と2),細胞内接合伝達を実験的に証明することが必要 であり,現在その努力を続けているところである。Ⅴ.おわりに
生物の環境応答の歴史的蓄積が進化と言えよう。生物同志は色々な方法
により相互作用し応答しあっている。その最も劇的な相互作用の例が性と 言える。種の現代的定義によれば接合は本来同一一種内に限定されている筈 である。生物界間接合による遺伝子の水平伝達の生物学的意義については直に
様々なことが考えられる。本稿ではその一例として,細胞内小器官のミト コンドリアや葉緑体の起源に関する共生説の理論的基盤としての細胞内接 合伝達説を提唱した。また,この接合はバイオテクノロジー分野に新たな ベクターや遺伝子導入法を提供するものであることも了解できよう。生物生物環境応答としてのTrans-kingdom Mating 35 EndosyTnbl oBi8
B EFSon
c信
s el ec ti on & S tabi112:ALL on 図9 オルガ不ラ起源におけるオ ルガ不ラ退伝子の核-の移 行機構の仮説 オルガネラ候補の好気惟細 菌(nlt′)やラン藻(ct′)の 共ノf=_の確;1_, nu′は宿+核恢 補, ch′ほ染色体候補, Cは 共生細繭の染色体. Tは移 子J予'JiiDNA韻域(A); jI; ′卜細胞内での,tlj′ト_南と宿Ⅰ二 核の接/uL仏達(BJ; T試掘 と核染色体との組換え机j^ 込み,組JA込j*による環状 染色体の線状化による無色 体形成と舛/+.細菌染色体T の組換え喪失しC);組換え 体の競合選択とミトコント リ7 (mt),葉緑体Lct)核 (nu),染色体(ch)としての 安L/ii化(D)o36
h'・温【こ7蒜・蕊
匡∃ En Eヨ EZiIZ 図10 +.物系統樹と遺伝了・のFf=_物界間接合及び生物界内接合による伝達 系統樹は:.生物界説による。矢印は伝達方向を示す。矢印3は土壌細菌 7クpバクテリアからTiプラスミドのT-DNA植物細胞への伝達を 示す。厳解な意味で本稿で述べた接合と違うが類似性から入れてあるo /^印4は本稿で述べた大腸菌から酵母蔚-の接合伝達を示すo学的意義の考察や応用は勿論大切であるが,この性現象の自然界での存在
例をより多く確認して例外的な特殊現象でないことを示していくことも非 常に大切である。現在までに知られている種属あるは生物界を越えた代表 的接合現象の例を系統樹と関連させてまとめたのが図10である10,16)。この 図の矢印の広がりが今後の研究の進展によりどうなって行くか興味深いも のがある。状況的には種や性について考え直さないといけない時期に来て いるのかも知れない。参考文献
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細胞性粘菌の環境適応と遺伝子発現
一有性生活環における細胞の性的
融合機構の解析-柳 津 嘉一郎
I.細胞性粘菌の有性的生活環
細胞性粘菌はアメーバ状の単細胞微生物で,林や森の腐葉土の中で,バ
クテリアをたべて2分裂によって無僅的に増殖している。細胞性粘菌のお おきな特徴は,餌とするバクテリアがなくなり,増殖できなくなると,多 数のアメーバ細胞が一一一箇所に集まってきて多細胞体をつくることである。 この多細胞体は,特有の形態形成をへて子実体を形成する。この過程で,同 一クローン(1n)の細胞が柄と胞子の2種類の細胞に分化する。一一したがっ て,細胞の分化のメカニズムの研究に最も単純なモデル・システムとして 用いられてきた。 細胞性粘菌はこうした無怪的生活環のほかに,有性的生活環をもってい る。有性的生活環では,細胞はバクテリアの有無にかかわらず,交配型の 異なる細胞同士が融合して,接合体(2n)を形成する。接合体は周りの細 胞を食べて成長し,その間に減数分裂をして,マクロシス.卜とよばれる殻 をかぶった球状の構造体となる(図1)。環境条件にめぐまれると,マクロ シストの殻が破れて,なかから数十のアメーバ細胞(1n)が出てくる。こ の過程は,無怪的生活環に比べてあまり研究されていない。 粘菌細胞が無性的生活環にはいるか,あるいは,有性的生活環にはいる かは,交配型の異なる細胞の存在以外に,外部の環境条件によって決めら 筑波大学生物科学系40 図1 れる。有性的生活環にはいるには暗条件で充分な水がなくてはならない。暗 条件でも充分な水分がなければ,細胞は無性的生活環にはいる。したがっ て,暗条件下で液体培地で細胞を培養すると,マクロシストが形成される が,光条件下で水分の充分でない寒天培地で細胞を培養すると子実体が形 成される。 すべての生物は環境に順応して生きている。環境が著しく変わったとき, 適応できない生物種は絶滅する。しかし生物にとって,環境は何時どのよ うに変化するのか,予測不可能である。そこで,生物の種は環境がどのよ うに変わっても適応できるよう,絶えず準備している必要がある。その準 備の一つは,突然変異によって得た新しい遺伝子を,たとえその時の環境 に有利でなくても,特に不利でなければ,同じ種の間にできるだけ拡散し て,とっておくことである。この遺伝子交換のシステムは生物の種の生き 残りと進化にきわめて重要であり,このシステムの最も効率よい方法が有 性生殖である。一般に, 2分裂によって増殖し,無性生殖と思われている生 物でも,よく調べてみると,環境条件によって有性生殖をするものが少な くない。細胞性粘菌もそうした生物の一つである。
細胞性粘菌U)環境適l心と退ll王子IEfL1 41 歴史的にみると,細胞性粘菌は最初に子実体として発見されたため,育 性的生活環があることは長い間,気ずかれずにいた。交配型の異なる系統 株が発見され,それらの細胞を混ぜて,暗条件下で水分o)多い培地で培養 すると,子実体とは全く形態の違うマクロシストが形成されることが発見 されても,それが性的な細胞融合の結果,生じてくる構造体であることは 長いこと証明されなかったo交配型の異なる,それぞれ異なった遺伝的マー カーをつけた細胞を混合し,マクロシストから生じてくるアメーバ細胞を 調べてみると,親型のマーカーをもった細胞に混ざって,組替え型の細胞 が生じてくることがある。しかし,どちらか一万の親型の細胞のみが牛じ てくることも多く,したがって,マクロシストの形成過程で,果して正常 に遺伝子の交換が行なわれているか否か,はっきりした結論がえられな かった。しかし,その後,マクロシストの形成過程で減数分裂を示すシナ プトネマ・コンプレックスが現れることがわかり,その過程が,遺伝子の 交換をともなう有性的生活環であることが確かめられた。
ⅠⅠ.細胞の性的融合
体細胞と生殖細胞がわかれている多細胞体では,配偶子のみが性的融合
を行う。しかし,単細胞生物では,同一の細胞がある条件のもとで配偶子 的に変化して,性的融合をおこなう。粘菌細胞では,この条件が暗条件と 充分な水の存在であるo細胞性粘菌D. discoideumの交配型の異なる二つ の系統株, NC4とHMlの細胞を,それぞれ別々に,液体培地で暗条件下 で9時間以上培養する。すると,細胞は性的融合能を獲得して,配偶子細 胞としての性質をもつようになる。このような細胞を混ぜ合わせると,多 数のNC4とHMlの細胞同士が数分問に融合して,ジャイアント・セルと よばれる大きな多核の細胞をつくる。一日一,融合能を獲得した細胞は,寒 天培地上で光があたっていても融合して,マクロシストを形成する。した がって,暗条件と水の存在という条件は,細胞が性的融合能をうるために 必要であるが,融合に必要な条件ではない。細胞の融合にはさらに, Caイ オンが必要とされる。 このような方法で,多核の細胞が生じるのは,混合する細胞数が多いた412 めで,自然の状態では,細胞数が少ないので,通常, 2核の接合子が生じる もU)と思われる。しかし,多核でも,融合する核は2核で,残りの融合し ない核は消滅するため結局,接合子は2核となる。前述のように,交配型 の異なる細胞にそれぞれ遺伝的マーカーをつけてマクロシストをつくらせ ると,片方の親型のマーカーをもったアメーバ細胞だけが生じてくるとい うような結果は,多核のジャイアント・セルでたまたま同じ親型の2核が 融合したためであろう。 では,細胞の性的融合はどのようにして起こるのであろうか。性的融合 が交配型の違う細胞同士で起こることは,融合が,交配型の違う細胞を混 ぜ合わせなくては起こらないことからも推定されるが,二つの型の細胞を それぞれ色の違う色素で生体染色してみると,そのことを顕微鏡の下で確 かめることができる。したがって,細胞は性的融合をするためには,まず 相生に交配型が異なることを確かめるメカニズムをもっていなくてはなら ない.もちろん,同じ種でないと融合しないから,同じ種であることを確 認するメカニズムもなくてはならない。その上で細胞膜の融合が起こる。こ れらのプロセスを一一一つずつ現在の時点で区別することは難しい。したがっ て,ここではとりあえず,すべてを一括して性的細胞融合のプロセスとよ んでおこう。 性的細胞融合のプロセスは細胞が死んでいても起こる。融合能をもった HMlの細胞をつぶして膜フラクションを集め,これを融合能をもった NC4の細胞の浮遊液にくわえると, HMlの膜断片がNC4細胞に融合し て,細胞は死ぬ。一一万,融合能をもたないNC4細胞に膜フラクションをく わえても,細胞は死なない。また,同じHMlの細胞にくわえても細胞は死 なない。
ⅠⅠⅠ.性的融合に関わる細胞表面分子の同定と単離
融合能をもった細胞の膜表面には,このように,性的融合に関わる分子 が存在し,細胞の生死とは関係なく機能する。この分子を同定するために まず,融合能をもつNC4の細胞をウサギに注射した。この抗血清からIm-munogloblinGを単離し,パパイン処理でFabフラグメントをつくり,融紬胞JIl粘【+ilu)環境適応と遺伝子発現 43
Table 1. Abs()rption of fusion-inhibitory activity 。f Fab by sliced polyacrylamide gels
Rangeofrelative m()lecularmass (kDa) 波W6窒匁匁 唯w'
activity Exp.1 埜 EXpー3 Gel#1:(300-97) R 52% 3 s R 途R #2:(97-65) 都"R 100% #3:(65-42) 涛"R 96% #4:(42---33) 塔坦 85% #5:〔33-24) 涛"R 85% #6:(24-1とり 塔BR 87% #7:(18--Fr()nt) 涛bR 79% Contr()I 涛bR 1()()%
C()ntr()1 ; gel slice c()ntained no pr。tei11
合能をもつNC4細胞を処理したところ, HMl細胞の融合能が著しく阻害
されることがわかった。そこで,融合能をもつ細胞ともたない細胞を125Ⅰで ラベルし,それぞれを壊して膜フラクションを集め,これを可溶化し,こ
れにL記の抗血清のFabフラグメントをくわえて,生じた沈降物をSDS-polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE)にかけてみた。する
と,融合能をもつ細胞だけに特異的バンドが少なくとも2本, 138kDと 38kDの位置に見られることが分かった。 この2本のバンドは果して細胞の融合に関わっているであろうか。この ことを調べるために,得られたSDS-PAGEのゲルを7つに切り分け,それ ぞれをつぶして,上記の抗血清のFabに加え,その細胞融合能の阻害効果 を調べてみた。その結果(表1), 138kDの分子を含む#1のゲルはFabの もつ細胞融合能の阻害効果を著しく減少させた。しかし,3白kDの分子を含 む#4のゲルは阻害効果を減少させなかった。したがって,138kDの分子は 細胞o)融合に関わっているが,38kDの分子は関わっていない。このことさ らに確認するため, 138kDのバンドを含むゲルの部分を切り出してつぶ し,これをウサギに注射して138kD分子の抗血清をつくった。融合能をも つNC4細胞をこの抗血清のFabフラグメントで処理すると,融合率は著 しく減少した。この減少はFabの濃度に比例して,濃度が高くなると,細