1 .はじめに 消化管上皮には様々な内分泌細胞が存在しており、生 体環境の変化に応じて消化管ホルモンを分泌し、生体の 恒常性維持に関与している。筆者らはこれまで、主に小 腸下部の小腸内分泌
L
細胞(以下、L
細胞)から分泌さ れるグルカゴン様ペプチド-1
(glucagon-like peptide-1:
GLP-1
)に着目してきた。GLP-1
は、膵α 細胞から分泌 されるグルカゴンと同じく、プログルカゴンという前駆 体タンパク質から翻訳後切断されることによって産生さ れるが、切断部位がグルカゴンと異なる(図1A
)1)。分 泌されたGLP-1
は血中を循環し、膵β 細胞に作用して グルコース依存的なインスリン分泌を促進する2)。また生細胞イメージングによる小腸内分泌
L 細胞からの
グルカゴン様ペプチド
-1 分泌制御機構の解明
原田 一貴1、伊藤 幹2、中村 匠1、神谷 泰智1、坪井 貴司1, 2 (1東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系、2東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻) E-mail: [email protected]新しい内分泌現象
図 1.小腸内分泌 L 細胞と GLP-1 (A) グルカゴン遺伝子から転写・翻訳されたプログルカゴンタンパク質が、プロセシングを受ける過程の模式図。膵α 細胞と小 腸内分泌L細胞では異なるプロホルモンコンバターゼ(prohormone convertase: PC)が発現しており、膵α 細胞ではPC2によ りグルカゴンが、小腸内分泌L細胞ではPC1/3によりGLP-1が産生される。GRPP: glicentin-related pancreatic polypeptide, IP: intervening peptide, GLP-2: glucagon-like peptide-2。(B)小腸内分泌L細胞からのGLP-1分泌制御の模式図。L細胞は頂端側が管 腔に、基底膜側が毛細血管や迷走神経に面している。食事に伴い管腔へ流入する栄養素や腸内細菌代謝物の他に、食事、ストレス、運動など様々な環境変化に応じて分泌されるホルモンや神経伝達物質もGLP-1分泌の制御に関与する。
A
比較内分泌学 迷走神経を介して、中枢神経系に作用し、摂食行動の抑 制を引き起こす3)。そのため、
GLP-1
の分泌を促進させ ることで肥満症や2
型糖尿病の治療に結びつくと期待 されている。実際、臨床的にGLP-1
受容体アゴニスト や、GLP-1
を分解するジペプチジルペプチダーゼ4
の 阻害剤が用いられている4,5)。一方、生理的な刺激によっ てGLP-1
の分泌を促進させることも治療法の一つとな りうる。そのため、L
細胞からGLP-1
が分泌される機 構についての研究が現在進展している。L
細胞は、細胞の頂端側が腸管の管腔に面し、基底膜 側が毛細血管や迷走神経に面した「開放型」の細胞で、 管腔内の栄養素や腸内細菌代謝産物、血中のホルモンや 神経伝達物質など、様々な生理活性物質に曝露される環 境にある(図1B
)6)。L
細胞には多種多様な受容体やト ランスポーターが発現し、管腔内に存在する化学物質 を感知し、GLP-1
を基底膜側から開口分泌(エキソサイ トーシス)する。 これまで、糖、アミノ酸、脂肪酸などがGLP-1
分泌 に与える影響について、電気生理学、生化学、動物実 験などの技術を用いた解析が行われてきた。しかし、GLP-1
分泌を制御する分子や遺伝子レベルの詳細な機 構については不明な点が多い。そこで筆者らは、生細胞 イメージング技術を用い、GLP-1
分泌の素過程にかか わるシグナル分子やタンパク質の動態をリアルタイムで 可視化解析することを試みた。 2 .生細胞イメージングによるホルモン分泌機構の可視 化解析全反射蛍光顕微鏡(
total internal reflection fluorescence
microscopy: TIRFM
)は、カバーガラスと水溶液の間で レーザー光を全反射させ、その際にしみ出すエヴァネッ セント光(近接場光とも呼ばれる)を励起光として用い る顕微鏡可視化解析技術である。エヴァネッセント光の 強度は、ガラス面からの距離に応じて急激に減衰するた め、ガラス面から数百nm
以内の範囲のみの蛍光物質を 励起できる。そのため、ガラスに接着または近接した細 胞膜直下の蛍光観察が可能となる。そのため、細胞膜タ ンパク質、アクチン骨格、開口分泌などの動態観察に適 した解析法である(図2
)。緑色蛍光タンパク質(
green fluorescent protein: GFP
) などの蛍光タンパク質を遺伝子工学的に改変し、特定分 子の濃度変化を可視化する蛍光タンパク質型センサーの 開発が、近年盛んに行われている。蛍光タンパク質型セ ンサーには、大きく分けてフォルスター共鳴エネルギー 移動(Förster resonance energy transfer: FRET
)を利用した
FRET
型センサーと、単色輝度変化型センサーがある。FRET
型センサーは、異なる2
色の蛍光タンパク質の間 に、標的分子に対する結合ドメインを融合して作製され る。標的分子が結合すると蛍光タンパク質間の距離が変 化し、FRET
効率の変化、すなわち蛍光強度比の変化と して濃度変化が可視化される。単色輝度変化型センサー は、1
つの蛍光タンパク質に円順列変異や分割などの変 異を加え、結合ドメインを融合して作製される。標的分 子が結合すると、蛍光タンパク質の発色団付近のイオン 環境が変化し、蛍光強度の変化として濃度変化が可視化 される。FRET
型センサーは標的分子の結合に伴う蛍光強度比 の変化率が小さく、また観察に2
つの蛍光波長の測定が 必要で、複数分子の同時観察が難しい。一方、単色輝度 変化型センサーは蛍光強度変化率を向上させやすく、観 察波長が1
つでよいため、複数分子の同時観察も行い やすい。筆者らはこれまで、cAMP
、cGMP
、ATP
、グ ルコースに対する様々な単色輝度変化型センサーの開発 に成功している7-10)。 そこで本稿では、TIRFM
や単色輝度変化型センサー を用いて明らかになった、GLP-1
の分泌制御機構につ いて紹介する。 3 .リゾホスファチジルイノシトールによる GLP-1 分 泌制御機構 リゾホスファチジルイノシトール(lysophosphatidylinositol:
LPI
)は、リン脂質の中でもグリセロール骨格に炭化水 素鎖が1
本のみ結合したリゾリン脂質の一種である。LPI
には細胞移動や膜電位調節などの生理作用が知られ ており、さらに膵β 細胞からのインスリン分泌を促進す る11-15)。しかし、どのような機構でホルモン分泌を促進 するのか、その詳細なメカニズムは不明である。LPI
に対する受容体として、G
タンパク質共役型受容 体の一種GPR55
が知られている16)。GPR55
は膵β 細 胞に発現し、GPR55
のアゴニスト投与によりインスリ ン分泌が促進される17)。また、GPR55
遺伝子欠損マウ スは肥満症状を示すこと、肥満患者で血中LPI
濃度が上 昇していることから、LPI
およびGPR55
が血糖値制御 に関与していると考えられる18,19)。しかし、L
細胞から のGLP-1
分泌とLPI
との関連性については不明である。 マウスL
細胞由来細胞株GLUTag
細胞を用い、Ca
2+ 図 2.全反射蛍光顕微鏡の模式図 細胞の播種されたガラス表面で全反射する角度でレーザー光 を照射する。ガラス面から染み出すエヴァネッセント光を励 起光として用いることで、細胞膜直下の蛍光分子のみを励起 し観察することができる。感受性蛍光色素
Fluo4
を用いて細胞内Ca
2+動態を解析 したところ、LPI
投与により細胞内Ca
2+濃度([Ca
2+]
i) が上昇することを見出した(図3A
)。またGLUTag
細 胞およびマウス急性単離初代培養小腸において、LPI
投 与によるGLP-1
分泌量の増加を見出した(図3B
)。さ らに、GLP-1
分泌顆粒と共局在する性質を持つGFP
を 融合させた組織型プラスミノーゲン活性化因子(green
fluorescent protein-tagged tissue plasminogen activator:
tPA-GFP
)をGLUTag
細胞に遺伝子導入し、TIRFM
で解析したところ、
LPI
投与によりtPA-GFP
の開口分泌 頻度が増加した(図3C
)。GLUTag
細胞において、GPR55
がmRNA
レベルで発 現していることを見出した(図3D
)。そこで、GPR55
の選択的アンタゴニスト投与や、RNA
干渉法を用いたGPR55
の発現抑制を行ったところ、LPI
による[Ca
2+]
i上 昇が抑制された。また、アクチン動態を可視化できる蛍 光タンパク質Lifeact-EGFP
をGLUTag
細胞に遺伝子導 入し、TIRFM
で解析したところ、重合したアクチン骨 格の先端に見られる接着斑の密度が増加した(図3E
)。 さらに、イオンチャネルの一種であるtransient receptor
potential cation channel subfamily V member 2
(TRPV2
)を阻害、または発現抑制すると、
LPI
による[Ca
2+]
i上 昇およびGLP-1
分泌が抑制された。GFP
を融合させたTRPV2
(TRPV2-GFP
)をGLUTag
細胞に遺伝子導入し、TIRFM
を用いて解析を行ったところ、LPI
の投与に伴 う細胞膜の蛍光強度上昇が観察され、TRPV2
の細胞膜 への移行が示唆された。またこの反応は、GPR55
の阻 害によって抑制された。 以上のことから、L
細胞において、LPI
によりGPR55
が活性化され、[Ca
2+]
i上昇とアクチン骨格の再構成が誘 発されることに加え、TRPV2
が細胞膜へ移行すること で持続的な[Ca
2+]
i上昇を引き起こし、GLP-1
分泌が促 進されることが示唆された20)。A
B
C
D
E
図 3.LPI による GLP-1 分泌制御(A)LPI(2 µM)投与時のGLUTag細胞におけるFluo4の蛍光強度経時変化。細胞数72。(B)LPI(2 µM)投与によるGLUTag細胞か らのGLP-1分泌量。試行回数6回。(C)上:tPA-GFPを強制発現させたGLUTag細胞の全反射蛍光顕微鏡画像。校正棒は10 µm。下:
上の正方形で囲まれた部分でのtPA-GFP顆粒の経時変化。蛍光強度が一過的に上昇したのち拡散しながら減衰する様子が確認され
た。校正棒は1 µm。(D)RT-PCRによるGPR55の発現解析。試行回数3回。(E)Lifeact-EGFPを強制発現させたGLUTag細胞のLPI(2
µM)投与前(左)および投与10分後(右)の全反射蛍光顕微鏡画像。校正棒は10 µm。挿入図は正方形で囲まれた部分の拡大画像。
比較内分泌学
4 .赤色 cAMP センサーの開発とin vivoイメージング
への応用
環状アデノシン一リン酸(
cyclic adenosine monophosphate:
cAMP
)は、細胞分化や移動、開口分泌の制御に関与す る細胞内セカンドメッセンジャーである。当研究室では、 過去に緑色の単色輝度変化型cAMP
センサーFlamindo
やFlamindo2
を開発してきた7,21)。しかし、光照射によっ て活性化することができる光遺伝学技術に用いられるタ ンパク質の多くは、青色光により活性化されるものであ るため、励起に青色光を必要とする緑色センサーとの同 時利用が困難である。そこで、1
波長のみの光による励 起および蛍光取得でcAMP
動態を可視化でき、多重色 イメージングや、青色光で活性化する光受容体タンパク 質を用いた光遺伝学との併用にも適用可能な、赤色蛍光 タンパク質を基盤とした単色輝度変化型cAMP
センサー の開発を行った。 発色団付近で分割した赤色蛍光タンパク質mApple
に、マウス
exchange protein directly activated by cAMP
1
(Epac1
)のcAMP
結合ドメインを挿入し、配列の最適化により、赤色
cAMP
可視化センサーPink Flamindo
(
Pink fluorescent cAMP indicator
)を開発した(図4A
)。Pink Flamindo
は、試験管内でcAMP
との結合により蛍光輝度が約
4.2
倍に上昇した(図4B
)。 開発したPink Flamindo
を生細胞に遺伝子導入した 結果、ヒト子宮頸がん細胞株HeLa
細胞や、マウス膵β 細胞株MIN6 m9
細胞において薬理刺激や生理的刺激 への応答が確認された(図4C
)。また、緑色Ca
2+セン サーG-GECO
との同時観察や、青色光照射で活性化しcAMP
を合成する光活性化アデニル酸シクラーゼとの 併用にも成功した22)。さらに、生きたマウス脳内のグ リア細胞の一種アストロサイトでPink Flamindo
によるcAMP
動態のin vivo
二光子顕微鏡イメージングにも成 功した22)。以上のことから、
Pink Flamindo
は、従来のcAMP
セA
B
C
図 4.赤色 cAMP センサー Pink Flamindo の開発
(A)Pink Flamindoの配列模式図。*は変異導入個所を表す。(B)cAMP(100 µM)存在下(実線)および非存在下(破線)でのPink Flamindoの励起蛍光スペクトル。(C)Pink Flamindoを強制発現させたHeLa細胞にアデニル酸シクラーゼ活性化剤フォルスコリ ン(Fsk、100 µM)、ホスホジエステラーゼ阻害剤3-isobutyl 1-methylxanthine(IBMX、200 µM)、アデニル酸シクラーゼ阻害剤2′, 5′-dideoxyadenosine(DDA、100 µM)を順に投与した際の顕微鏡画像および蛍光強度の経時変化。校正棒は20 µm。細胞数30。
ンサーでは不可能であった二色イメージング、光遺伝学 との併用に適用できるだけでなく、
in vivo
イメージン グ実験にも使用可能であり、生きた生体中を含む様々な 細胞において有効なツールであることが示された22)。 5 .キニーネによる GLP-1 分泌制御機構 キニーネは苦味物質の一種である。先行研究におい て、キニーネを経口投与したラットで体重増加に対する 抑制効果が報告され、その効果は苦味による食欲減退と は独立に起こるものだと示唆されている23,24)。そこで、 消化管に取り込まれたキニーネがGLP-1
分泌の促進を 介して体重増加を抑制する可能性を考え、キニーネがGLP-1
分泌に与える影響の解明を試みた。GLUTag
細胞においてFluo4
を用いたCa
2+イメージ ングを行ったところ、キニーネ投与により[Ca
2+]
i上昇 が見られた。しかし、キニーネによりGLP-1
分泌量は増加しなかった(図
5A, B
)。TIRFM
を用いてtPA-GFP
顆粒の動態を解析したところ、キニーネ投与によって顆 粒が細胞膜に接近するものの、膜融合に至らないことが 明らかになった(図5C
)。A
B
C
D
図 5.キニーネによる GLP-1 分泌制御(A)キニーネ(300 μM)投与時のGLUTag細胞におけるFluo4の蛍光強度経時変化。細胞数50。(B)グルコース(25 mM)また はキニーネ(300 µM)投与によるGLUTag細胞からのGLP-1分泌量。試行回数4回以上。(C)上:tPA-GFPを強制発現させた GLUTag細胞にキニーネ(300 µM)を投与した際の全反射蛍光顕微鏡画像。校正棒は10 µm。下:上の正方形で囲まれた部分の tPA-GFP顆粒の経時変化。校正棒は1 µm。図2Cのように、蛍光強度が一過的に上昇したのち拡散しながら減衰する様子が確 認できなかった。(D)Pink Flamindoを強制発現させたGLUTag細胞にキニーネ(300 µM)、続けてFsk(1 µM)を投与した際の 蛍光強度の経時変化。細胞数34。データは平均±標準偏差。N.S.は有意差なし、****はP < 0.0001を示す。
比較内分泌学 蛍光標識ファロイジンを用いて
GLUTag
細胞のアク チンを染色し、TIRFM
で解析した結果、キニーネによ りアクチン重合が促進していることが示唆された。ア クチン重合によりGLP-1
分泌小胞の膜融合が抑制され、[Ca
2+]
i上昇だけではGLP-1
開口分泌に至らなくなって いると推測し、GLP-1
の開口分泌には細胞内cAMP
濃 度([cAMP]
i)の上昇も必要なのではないかと考えた。 そこでPink Flamindo
をGLUTag
細胞に導入し、アデ ニル酸シクラーゼの活性化剤フォルスコリンをキニーネ に続けて投与すると、キニーネ単体では観察されなかっ た[cAMP]
i上昇が誘発され、tPA-GFP
の開口放出頻度 も増加した(図5D
)。 以 上 の こ と か ら、 キ ニ ー ネ は[Ca
2+]
i上 昇 を 引 き 起 こすが、同時にアクチン重合が促進されることによりGLP-1
分泌の促進には至らず、キニーネによる体重増 加抑制効果はGLP-1
分泌以外の作用を介すること、ま たGLP-1
の分泌にはCa
2+とcAMP
の両者が協同的に作 用することが必要であることが示唆された25)。 6 .L- グルタミンによる GLP-1 分泌制御機構L-
グルタミンはアミノ酸の一種で、先行研究におい てアミノ酸の中でも最も強いGLP-1
分泌促進作用を 持つことが知られている26)。しかし、その詳細なメカ ニズムは不明であった。L-
グルタミンをはじめとする アミノ酸を感受する受容体として、カルシウム感受性 受容体(calcium-sensing receptor: CaSR
)、G
protein-coupled receptor class C group 6 member A
(GPRC6A
)、 うま味受容体を構成するtaste receptor type 1 member 1
A
B
C
D
図 6.L- グルタミンによる GLP-1 分泌制御
(A)様々なアミノ酸(500 µM)投与時のGLUTag細胞におけるFluo3の蛍光強度ピーク値の比較。(B)様々なアミノ酸(500 µM) 投与時のGLUTag細胞におけるFlamindo2の蛍光強度曲線下面積値の比較。Flamindo2はcAMPと結合することで蛍光強度が 低下するセンサーであるため、[cAMP]i上昇により曲線下面積値は減少する。(C)L-グルタミン(500 µM)投与による、代表的 なコントロール(変異なし)・TAS1R1機能喪失変異(TAS1R1-ΔC)・TAS1R3機能喪失変異(TAS1R3-ΔC)GLUTag細胞株から のGLP-1分泌量。グルタミンの有無による相対的な分泌変化率を比較した。試行回数7回。(D)L-グルタミン(500 µM)投与に よる、コントロール(変異なし)・TAS1R1機能喪失変異(TAS1R1-ΔC)・TAS1R3機能喪失変異(TAS1R3-ΔC)GLUTag細胞株 それぞれ3株ずつでのFlamindo2の蛍光強度曲線下面積値の比較。データは平均±標準誤差。N.S.は有意差なし、*はP < 0.05、 **はP < 0.01、***はP < 0.001、****はP < 0.0001を示す。
(
TAS1R1
)およびmember 3
(TAS1R3
)などがあるが、そのどれが
L-
グルタミン感受に関与し、どのようなシグナルを伝達しているかも不明であった。
GLUTag
細胞に様々なアミノ酸を投与し、カルシウ ム 感 受 性 蛍 光 色 素Fluo3
お よ び 緑 色cAMP
セ ン サ ーFlamindo2
を用いて[Ca
2+]
iおよび[cAMP]
iの変化を可視化解析した。すると、
L-
グルタミンを投与したと き の み、[Ca
2+]
iと[cAMP]
iの 両 者 が 上 昇 し た( 図6A,
B
)。このうち、[Ca
2+]
i上昇はL-
グルタミンがナトリ ウム-
アミノ酸共輸送体によって取り込まれる際、細 胞内にNa
+が流入して細胞膜の電位が上昇し、電位依 存性カルシウムチャネルを介してCa
2+が流入すること で起こると考えられた。一方、アミノ酸受容体の一種TAS1R3
の阻害によってcAMP
濃度の上昇が抑制され たことから、L-
グルタミンによるcAMP
濃度上昇にはTAS1R3
が関与していると考えられた。通常TAS1R3
は、TAS1R1
と共役したヘテロ二量体(うまみ受容体)とし て機能し、[Ca
2+]
i上昇を引き起すが、[cAMP]
i上昇への 関与は不明である。 そこで、TAS1R1
とTAS1R3
それぞれの機能を詳細 に調べるため、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9
を用い、TAS1R1
またはTAS1R3
の機能喪失変異細胞を樹立し た。その結果、TAS1R3
機能喪失変異細胞ではL-
グル タミンを投与しても[cAMP]
i上昇が起こらない傾向に あり、GLP-1
分泌量が変異なしの細胞に比べて減少し た(図6C, D
)。しかし、TAS1R1
機能喪失変異細胞で は変異なしの細胞との違いは見られなかった。 以上のことから、L-
グルタミンによるGLP-1
分泌 促 進 は[Ca
2+]
iお よ び[cAMP]
i上 昇 に よ っ て 起 こ る こ と、 ま た[cAMP]
i上 昇 に はTAS1R3
が 関 与 し て お り、TAS1R3
はTAS1R1
とのヘテロ二量体としてだけではな く、TAS1R3
のみからなるホモ二量体、またはTAS1R3
以外のG
タンパク質共役型受容体とのヘテロ二量体と して機能している可能性があることが示唆された27)。 7 .おわりに 筆 者 ら の 研 究 に よ り、 小 腸 内 分 泌L
細 胞 か ら のGLP-1
分泌は、Ca
2+やcAMP
などの細胞内シグナル分 子、細胞骨格、イオンチャネル、GPR55
やTAS1R3
な どの受容体によって厳密に制御されていることが示唆さ れた。一方、これらの成果の多くは株化細胞を用いて見 出されたものであり、生体中の消化管で実際にどのよう な制御機構が存在するか、さらなる検証が必要である。 近年、L
細胞は小腸下部のみならず大腸にも分布してお り、小腸と大腸とで異なる働きをすることがわかってき た28,29)。今後、深部消化管でのin vivo
イメージングの 観察系を構築するなどし、これまで解明できなかった分 泌現象の解明を目指したい。 文献1 ) Bell GI, et al. Nature, 302, 716-718 (1983).
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