Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№7:TGF-β1によるマウス前骨芽細胞の分化調節にお
けるPI3K/Akt シグナル伝達経路の役割
Author(s)
鈴木, 瑛一; 落合(篠), 宏美; 青木, 栄人; 小野寺,
晶子; 齋藤, 暁子; 齋藤, 淳; 東, 俊文
Journal
歯科学報, 114(3): 286-286
URL
http://hdl.handle.net/10130/3343
Right
目的:歯周病など局所に炎症が生じた場合に産生さ れる TGF-β1は,骨芽細胞の分化において促進と 抑制という二相性の作用を示すことが報告されてい る。我々は先行研究において,TGF-β1による骨芽 細胞分化の調節には IGF-1/PI3K 経路が深く 関 わっていることを明らかにした。しかしながら詳し い機序は未だ明らかでない。今回,PI3K の下流の 主要なシグナル伝達物質である Akt に注目し,そ の役割と機序について検討した。 方法:マウス前骨芽細胞(MC3T3-E1)を使用 し,細胞播種24時間後に血清無添加の骨芽細胞分化 誘導培地(OBM)に交換,72時間培養後回収し, 酵素活性染色,ALP 活性測定,Real-time RT-PCR による骨芽細胞分化マーカー解析にて評価を行っ た。また,長期培養における影響をみるために,培 養14日後にアリザリンレッド染色にて石灰化度の評 価を行った。TGF-β1複数回投与条件では,OBM に交換 後12時 間 毎 に TGF-β1 0.1ng/ml 含 有 分 化 誘導培地にて交換を行った。次に,Akt の役割を検 討するため,レトロウイルスベクターを使用し,恒 常的活性型 Akt 遺伝子を MC3T3-E1細胞に強制 発現させ,同様の条件下にて実験を行った。 結果および考察:MC 3 T 3 -E 1 細 胞 に お い て , OBM 単独培養と比べ,TGF-β1複数回投与による ALP 活性,骨芽細胞分化マーカー mRNA(ALP, OCN, BSP)の有意な減少が見られた。一方,活性 型Akt 導入細胞では,TGF-β1複数回投与時に ALP 活性の有意な増加がみられた。活性型 Akt 導入細 胞では,MC3T3-E1と比較しすべての培養条件 において OCN mRNA 発現量の有意な上昇がみら れた一方で,複数回の TGF-β1投与により,投与 回数依存性の mRNA 発現量の減弱が認められた。 石灰化度に関しても,Akt 活性状態において,MC 3T3-E1と比較しすべての培養条件でアリザリン レッド染色強度の上昇がみられたが,TGF-β1複数 回投与により僅かな染色強度の低下が認められた。 以上の結果より,Akt の活性化は TGF-β1による 骨芽細胞の分化調節において,おもに ALP が発現 する分化前期に必須な因子であり,TGF-β1による ALP の活性化を相加的に増強することが示唆され た。 目的:糖尿病は歯周病の重要なリスクファクターで ある。コントロールされていない糖尿病患者では, 歯周組織の治癒に問題があることが指摘されてい る。歯周組織再生療法の臨床応用が進むなかで糖尿 病患者における再生療法の効果については未だ不明 な点が多い。そこで本研究では糖尿病モデルラット に形成した歯周組織欠損に FGF-2を応用し,治癒 に及ぼす影響について検討した。 方法:10週齢の雄性 Wistar ラットにストレプトゾ トシンを筋肉内投与し糖尿病を誘発させた。発症確 認後,両側上顎第一臼歯部に外科的に歯周組織欠損 を作製し,ルートプレーニングを行なった。対照 側には hydroxypropyl cellulose(HPC)を応用し, 実験側には0.3%FGF-2+HPC を応用した。術 後 2週,4週で安楽死させマイクロ CT 撮影後,検体 を採取し,通法に従い固定,脱灰した。その後厚 さ5μm のパラフィン切片を作製し,H-E 染色, PCNA,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)による免 疫染色を行い,光学顕微鏡で観察した。 結果および考察:組織学的観察では糖尿病群で上皮 の深 行 増 殖 が 観 察 さ れ た が,FGF-2の 応 用 に よ り,それは抑制された。FGF-2の応用により,骨 欠損部の根面に対し,斜走する歯根膜様のコラーゲ ン線維束が観察された。しかしセメント質新生は健 常群にのみ限局的に観察された。PCNA による免 疫染色では糖尿病群に比べて健常群で4週において も新生骨周囲の結合組織に陽性細胞が多く観察され た。また FGF-2の応用で両群とも陽性細胞の割合 が有意に増加した(p<0.05)。糖尿病群に HPC の みを応用した群と FGF-2を応用した両群で,血管 周囲に VEGF 陽性細胞が多く発現していた。マイ クロ CT による骨梁構造解析では FGF-2の応用に より糖尿病群でも骨体積,骨梁幅は HPC 群に比べ て有意に増加していた(p<0.05)。以上より,今 回の FGF-2の応用は糖尿病ラットにおいて,歯周 組織の治癒を促進するが,再生は限局的であること が示唆された。