Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
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Title
№16:円回内筋上腕頭と尺骨頭筋束の発生起源は異な
る
Author(s)
冨田, 尚充; 廣内, 英智; 山本, 将仁; 松永, 智; 北村,
啓; 笠原, 典夫; 山本, 仁; 阿部, 伸一
Journal
歯科学報, 120(2): 210-210
URL
http://hdl.handle.net/10130/5181
Right
Description
目的:ヒト成人肘関節の屈曲および前腕の回内運動 を担う円回内筋は,上腕頭(浅頭)および尺骨頭(深 頭)から起始する2頭筋である。上腕頭は上腕骨内 側上顆,尺骨頭は尺骨鈎状突起から起始し,2頭は 合流して橈骨の外側面(円回内筋粗面)に停止する。 運動を支配するのは正中神経(C6,C7)であるが, 正中神経本管は上腕頭と尺骨頭の間を走行し,遠位 へ向かうことが知られている。しかしながら,胎生 期に円回内筋の両頭筋束と正中神経の解剖学的構造 が形成される過程については報告が少なく不明な点 があった。そこで今回我々はヒト胎児を用い,経時 的な両者の構造構築過程について観察を行った。 方法:試料はコンプレテンセ大学発生学研究所所蔵 の胎児17体および秋田大学医学部解剖学講座所蔵の 胎児7体を用いた。この研究は1995年のヘルシンキ 宣言(2013年に改訂)の規定に従って実施し,コン プレテンセ大学,秋田大学および東京歯科大学の倫 理委員会の承認を得て行った。観察対象を3群に分 け,胎生7∼8週齢の胎児8体(頭臀長(CRL)22 ∼35mm),胎生12∼16週齢の胎児9体(CRL60∼ 125mm),そ し て25週 の 胎 児7体(CRL200∼250 mm)を実験に供した。試料摘出後,通報に従い薄 切切片を作製し,各種染色を施した。そして,上腕 から前腕に至る部位に関する組織形態学的観察を 行った。 結果:7∼8週齢の胎児では円回内筋上腕頭の筋束 が,上腕骨から薄く幅広い筋束として観察され,そ の筋腹内を正中神経が貫通していた。円回内筋に分 布する正中神経からの運動神経線維は,貫通部より 近位で分岐しているため,組織切片上で正中神経は 明確に確認することができた。しかし,円回内筋尺 骨頭の筋束に関しては観察できなかった。また尺骨 頭の起始部周囲の腕尺関節についても特定できな かった。12∼16週の胎児では,腕尺関節の関節包が 出現し,円回内筋尺骨頭の筋原基と思われる部位が 観察された。そして25週の胎児では,円回内筋尺骨 頭筋束が腕尺関節の厚い関節包から起始しているこ とが観察された。 考察:今回の観察結果から,円回内筋の上腕頭と尺 骨頭の筋束は,まったく異なる起源をもつことが明 らかとなった。すなわち胎生初期に,すでに上腕頭 筋束は上腕骨内側上顆に由来して成熟を始めてい た。しかし尺骨近位端および腕尺関節は未成熟で, 円回内筋尺骨頭筋束は,起始する足場がなくまだ発 生していないと考えられた。その後成熟を開始した 腕尺関節を足場とし,円回内尺骨頭筋束が成熟を開 始し,最終的には尺骨近位端の完成を待って起始部 を形づくると考えられた。よって,円回内筋尺骨頭 筋束の起源は,腕尺関節の関節包であることが考え られた。 目的:ヒト外眼筋の一つである外側直筋の運動は, 外転神経に支配される。動眼神経,滑車神経,眼神 経,上顎神経が海綿静脈洞の外側を走行するのと異 なり,外転神経だけが内頸動脈とともに海綿静脈洞 内部を貫通することが知られている。これまで外転 神経と海綿静脈洞の胎生期における形態形成過程に 関しては報告も少なく不明な点がある。そこで今回 我々はヒト胎児を用い経時的な両者の構造構築過 程,および周囲を走行する脳神経の発生について検 索を行った。 方法:試料は秋田大学医学部解剖学講座所蔵の胎児 を 用 い た。こ の 研 究 は1995年 の ヘ ル シ ン キ 宣 言 (2013年に改訂)の規定に従って実施し,秋田大学 および東京歯科大学の倫理委員会の承認を得て行っ た。観察対象の試料として,胎生30∼37週齢の胎児 18体(頭臀長(CRL)258∼310mm)を実験に供し た。頭部標本から脳を摘出し,頭蓋底の正中線,眼 窩,内耳,中耳,顎関節,鼻腔,および骨の口蓋を 含むブロックを作製した。ブロックはプランク・リ クロ溶液で6日間インキュベートして脱灰した後, 通法に従いパラフィン包埋を行った。その後,矢状 断(6ブロック)および前額断(12ブロック)の切 片厚10ミクロンの薄切切片を作製,HE 染色を施 し,組織形態学的観察を行った。 結果:矢状断面の観察結果から,外転神経は海綿静 脈洞の内部を走行し,強固な鞘で包まれていた。そ の鞘は,錐体蝶形靭帯まで連続していた。また外側 直筋は,幼弱な筋線維の集塊として観察された。外 転神経はその筋線維集塊の後方で横方向に湾曲し, 多くの外眼筋を支配する動眼神経の走行を避けるよ うに外側直筋の内部で分布していた。動眼神経およ び周囲の脳神経はすでに成熟していたが,外転神経 と外側直筋は未熟であった。さらに前額断面の観察 結果から,海綿静脈洞はトルコ鞍の外側に観察さ れ,翼突筋静脈叢との交通もすでに形成されていた。 考察:今回の観察結果から,海綿静脈洞内部を走行 する外転神経の胎生期における形態は未熟で,多く の外眼筋を支配する動眼神経の成熟を待って形成さ れていく可能性が考えられた。さらに海綿静脈洞と 周囲の静脈系の連続性,および内部を外転神経とと もに通過する内頸動脈の構造は,すでに胎生期に完 成していることが明らかとなった。