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IRUCAA@TDC : 智歯抜去は,どのようなときに専門機関へ送るべきでしょうか。

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

智歯抜去は,どのようなときに専門機関へ送るべきでし

ょうか。

Author(s)

柴原, 孝彦

Journal

歯科学報, 117(2): 132-135

URL

http://hdl.handle.net/10130/4214

Right

Description

(2)

132 歯科学報 Vol.117,No.2(2017)

臨床のヒント

Q&A 56

口腔外科系

Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号は智歯 抜去に関する質問です。

Question

智歯抜去は,どのようなときに専門機関へ送るべきでしょうか。

Answer

対象となる患者に,循環器疾患や出血性素因など の全身的禁忌がなく,また急性症状や悪性腫瘍内な どの局所的禁忌もない場合について考える。さらに 患者年齢,服用薬剤によっても抜歯の是非を決めな ければならないが,本稿では健常な成人の場合を想 定して,術前,術中,術後の時系列に分けて専門機 関へ送るべき判断のポイントを解説する。 術前の判断ポイント 画像所見:下顎智歯の画像所見から次の3つの内1 つでも合致する場合は術後下歯槽神経麻痺が予測さ れるため専門機関へ紹介した方が良い(図1)。当該 智歯の歯槽硬線が下顎管付近で断裂しているとき, 当該下顎管の上壁が不鮮明なとき,智歯歯根が下顎 図1 智歯抜去時に注意すべき画像所見 3つのポイント 管を半分以上で重なっているとき,下歯槽神経麻痺 を惹起することが経験上多い。また,上顎智歯では 深在部に位置し,さらに洞底線が不鮮明なときは術 後歯性感染症の予防も考える必要がある。上記の抜 歯は高度な技術と器量が要求されるので,専門医へ の紹介も選択肢となる。 異常(絞扼)反射・歯科恐怖:患者の苦痛と恐怖心を 緩和させるため鎮静下での対処が求められる。吸 引,筋注などを行う一般開業歯科医院でも可能な簡 便な方法が紹介されているが,確実性かつ安全性か ら歯科麻酔医による静脈内鎮静下での実施が推奨さ れる。鎮静下でなければ反射運動が強いため,患者 に苦痛を与えるのみならず,針刺し誤操作などの医 療事故リスクが高くなる。 術中の判断ポイント 異常出血・気腫:出血には静脈性,毛細血管性そし て動脈性がある。毛細血管性ならば圧迫または局所 凝固剤タンポンによる止血が可能であるが,静脈性 の場合は主血管の明示と止血,または保護床等によ る持続的圧迫が有効となる。動脈性の場合は,特に 対処が難しく主血管の明示と結紮が必要となる。出 血の色調および拍動性などの所見から動脈性か否か を判断する。突発的な出血で術者は動転するが,先 ずは指またはガーゼによる圧迫止血を行う。10-15 ― 46 ―

(3)

133 歯科学報 Vol.117,No.2(2017) 分後に解除し止血の効果がない場合は速やかに専門 機関への紹介を考える。もちろん,ガーゼ等による 圧迫を継続したまま,vital sign をチェックしなが ら搬送する(図2)。 気腫は下顎水平埋伏智歯のタービンによる歯冠分 割時に起こることが多い。出血時の波及と同様に隙 へ進展し,捻髪音を伴う。放置すると感染リスクが 上がるので速やかな抗菌薬カバーと安静が必要とな る(図3)。 器具破損:使用器具破損の有無は必ず術中にチェッ クする。術野への残存が疑われた場合は除去を試み るが,深在性で摘出不可の際は紹介して除去した方 が良い。完全閉創して瘢痕化を期待したとしても, 将来,異常疼痛や感染等を併発することがある(図 4)。 迷 入:口底または上顎洞へ迷入させた場合は,即 日摘出するのが原則である。埋伏歯であっても感染 源となり,術後蜂窩織炎,歯性上顎洞炎を併発する ことが多い。通常,抜歯窩からのアプローチでは難 しく,周囲粘膜骨膜弁を広範囲に開き主要な解剖構 造物を避け的確に除去する必要がある。抗菌薬カ バーも必須なため専門医に委ねた方が良い(図5)。 術後の判断ポイント 神経麻痺(下歯槽神経と舌神経):術中に異常疼痛を 発生しなくても術後に発症する場合がある。神経損 傷の程度を評価することが重要で,単純に経過観察 のみで緩解するとは限らない。場合によって神経断 裂が起きていれば速やかな神経修復術が必要とな る。そのため神経麻痺の程度を主観的かつ客観的に 図2 左下智歯抜去中の異常出血 49歳の女性,呼吸困難を訴え緊急来院。二重舌を呈する(左),止血手術所見(右)。舌側 皮質骨はなく,付近軟組織は挫滅。 図3 左下水平智歯歯冠分割時の気腫 32歳の女性,同部の違和感を主訴に来院。水平埋伏歯(左)の抜去を遠心切開(中)のみで 施行。咀嚼筋隙,頬筋隙,顎下隙そして反対側まで気腫が波及していた(右)。 ― 47 ―

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134 歯科学報 Vol.117,No.2(2017) 図4 右下智歯抜去中のヘーベル破損 38歳の男性,同部の違和感を主訴に来院。3年前に抜歯した。初診時の CBCT。智歯 遠心骨にヘーベル先端の迷入を認める。 図5 左下智歯抜去中の歯根迷入 28歳の男性,分割抜歯中に舌側皮質骨穿孔。智歯歯根 をヘーベルで脱臼時に口底へ迷入。 把握し病態を診断する必要がある(図6)。 出血・疼痛:抜歯後治癒不全が疑われるので原因の 追究に努める。口腔内および画像所見から明確な原 因が把握できればその改善を行うが,長期に経過し 緩解が得られない場合は専門医への相談も考慮す る。薬剤投与のみで鎮痛が可能であったとしても根 本的な診断と治療にはならないことも認識する。 開口障害・感染:抜歯翌日または数週間後の後発的 に発症する場合もある。開口障害が術後反応性のも のか,咀嚼筋への炎症波及かを鑑別する。炎症は 刻々と変化するので経時的な臨床症状の把握が重要 である。炎症の5大症状(発赤,腫脹,疼痛,熱感, 機能障害)をチェックし,感染症の判断が遅れない ように努める。時に特異性炎を継発することもある ので注意する。 智歯抜去と云えども侮るなかれ,思いがけぬ病態 を引き起こし訴訟に至る事例も稀に経験している。 患者および社会から抜歯術者に求められることは, 該当歯の病態を十分に把握し安全で適切な技量の実 施,想定されるリスクを察知し回避する処置の選 択,予想外の事態に対して現状を把握し適格な対処 (紹介も含む),の3項目である。 医療現場は患者の高齢化,リスキーな病態,高度 な要求等々,より複雑化している。身を守る手段の 一つとして本学口腔外科を有効に活用していただき たい。 ⇒メモ 昨今急増している BRONJ について一言。BP 製 剤投与前であれば治療または予防目的の抜歯もあり うる。BP 処方中で ONJ を併発していない場合,抜 歯適応の歯であれば予防目的で抜歯する。ONJ 併 発している場合でも抜歯を躊躇すべきではなく,洗 浄のみで無理に保存しても ONJ を進展させるだけ ― 48 ―

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135 歯科学報 Vol.117,No.2(2017) 図6 下顎智歯抜去後の神経麻痺 左側下顎智歯抜去後の下歯槽神経の一過性伝導障害(左)。右側下顎智歯 抜去後の舌神経完全断裂(右)。 である。BP 処方中の抜歯に際しては,可及的に非 侵襲的処置,抜歯窩鋭縁を除去,骨面露出を避け完 Answer:柴原孝彦 全閉鎖(減張切開を応用)に心掛ける。勿論,抗菌薬 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座 カバーは術前から行い,術後上皮化が完遂するまで 継続する。通常の場合とは異なることを認識してい ただき,専門機関への紹介も一策である。 ― 49 ―

参照

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