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Moran過程の数値シミュレーションに関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

Moran

過程の数値シミ ュ レ ーショ ン

2011SE195 夏川将実 指導教員:小藤俊幸

1

はじ めに

有限集団での進化ダイナミクスの解析を始めよう.個体 数は連続変数ではなく,整数で与えられる.その結果,進 化ダイナミクスはもはや決定論的な微分方程式では記述さ れず,確率論的な定式化が必要である. 生物学的な問題を研究するための最良のアプローチは, まず決定論的な記述を試み,それが適切な側面を損なって いるときのみ,確率論的な解析へ移行することである.こ の研究では有限サイズの集団における中立的浮動と一定の 淘汰について調べ,ダーウィンの進化論に相対する中立説 を指示していきたい.

2

中立的浮動

サイズN で固定されたある集団を考えよう.個体の種 類はAとBの2種類ある.個体は同じ速度で繁殖する. したがって,AとBは選択に関して中立な変異体である. すべての単位時間ステップにおいて,1個体がランダムに 選択されて繁殖し,かつ1個体がランダムに選択されて除 去される.ここでは復元抽出を用いよう.すなわち,同一 の個体が繁殖と死亡に選ばれることも起こり得る.繁殖は 突然変異することなく起こる.すなわちAはAを,Bは Bを生産する. こ の 確 率 過 程 は オ ー ス ト ラ リ ア の 集 団 遺 伝 子 学 者 P.A.P.Moranにちなんで名付けられており,1958年に 考案された.各時間ステップで常に1個体の出生と1個体 の死亡が起こるため,集団サイズは必ず一定にあることが 保証されてる.確率変数は個体Aの個体数のみであり,こ こではiと表そう.個体Bの個体数はN − iである.1 変数の確率過程を調べることは,2進数あるいはそれ以上 の変数の過程よりも非常に簡単である. Moran過程は状態空間i = 0, ...., N で定義される.個 体Aを(出生または死亡で)選択する確率はi/N で与えら れる.個体Bを選択する確率は(N − i)/Nで与えられる. すべての単位時間ステップにおいて,次の4つの事象が起 こる可能性がある. (i)繁殖と死亡にAの1個体が選択され,この事象が起 こった後の個体Aの数は,起こる前の数と同じであり,i は変化しない.この事象の確率は(i/N )2である. (ii)繁殖と脂肪にBの1 個体が選択され,この事象が 起こった後の個体Bの数は,起こる前の数と同じであり, N − iは変化しない.この事象の確率は[(N − i)/N]2 ある. (iii)繁殖にAの1個体が,死亡にBの1個体が選択さ れ,この事象が起こった後,Aは1 個体増え,変数iは i + 1となる.この事象の確率はi(N − i)/N2である. (iv)繁殖にBの1個体が,死亡にAの1個体が選択さ れ,この事象が起こった後,Aは1個体減り,変数iは i − 1となる.この事象の確率はi(N − i)/N2である.

3

遷移確率

xn i を時刻nでi個である確率とし, Pi,i−1=i(N − i)N2 (1) Pi,i= 1 − i(N − i) N2 − i(N − i) N2 (2) Pi,i+1=i(N − i) N2 (3) とおく. 時刻nでi − 1個のとき,時刻n + 1でi個となる 確率はPi,i−1xn i−1,時刻nでi個のとき,時刻n + 1でi個 となる確率はPi,ixni,時刻nでi + 1個のとき,時刻n + 1 でi個となる確率はPi+1,ixni+1であるから, xn+1

i = Pi−1,ixni−1+ Pi,ixni + Pi+1,ixni+1 (4)

となる.

4

プログラ ム

Moran過程をシミュレートするプログラムを作成した. 1個体を繁殖に選択する そして1個体を死亡に選択する 2番目に選択された個体は1番目に選択された個体の子供 に置き換えられる プログラムでは集団A,Bを数字の1,0に置き換え,乱 数を発生させるためrand関数を用いた. 4.1 プログラ ム 以下にソースリストを示す. main() {

(2)

int x[N]; int i, n, p, q; srand48(10000); for(i = 0; i < N/2; i++) { x[i] = 0; } for(i = N/2; i < N; i++) { x[i] = 1; } for(n = 0; n < 100; n++) { p = floor(N*drand48()); q = floor((N - 1)*drand48()); if (q >= p) q = q + 1; printf("n = %d, p = %d, q = %d\n", n, p, q); for(i = 0; i < N; i++) { printf("%d ", x[i]); } printf("\n"); x[q] = x[p]; } } このプログラムは初期値として,0,1を5個体ずつ用意 し,乱数により上記の(i)(ii)(iii)(iv)の事象を起こさせど のように変化していくかを表したものである.このプログ ラムを用いて発展させていく.まずはこのプログラムを動 かしどのようになるのかを検証する. 4.2 乱数について drand48 は区間[0, 1)上の一様乱数(疑似乱数)を生成 する関数である. m = 248 = 281474976710656を法とす る乗数 (multiplicand) a = 0xfdeece66d = 25214903917

加数(addend) c = 0xb = 11 の線形合同法(linear con-gruential method) (1) rn+1 = arn + c (mod m)により 生成される乱数をmで割って,[0, 1)上の乱数としている. 注0xは16進数を表す.最初の0xを除いた部分が「数字」 でa, b, c, d, e, fは,それぞれ,10, 11, 12, 13, 14, 15に対 応する. 4.3 結果 4.1のプログラムの実行結果を示す. 0と1では表しに くいので,0を●,1を○とする. n=0 ●●●●●○○○○○ n=1 ●●●●●○●○○○ n=2 ○●●●●○●○○○ n=3 ○●●●●●●○○○ n=4 ●●●●●●●○○○ n=5 ●●●●○●●○○○ n=6 ●●●●○●●○○○ n=7 ●●●●○●●●○○ n=8●●●●○●●●○○ n=9●●●●○○●○○○ この結果ではn=70ですべてが●になった.

5

比較

最初の1の数が半分(5個)としたとき,100回目に1 がi個現れる確率(変数 x[i])を遷移確率から計算するプ ログラムと,実際に乱数を使いシミュレーションした結果 を比較する.遷移確率での結果はこのようになった. 図1 シミュレーション結果 上記のプログラムを発展させ,n = 99の結果のみを100 個表示するプログラムを作った.更に結果の1の数を数え るように組み,遷移確率と比較できるようにようにした. 0と1の数は1:9とし,1の個数はデータの平均をとった. 1の数 0 1 2 3 4 個数 7.67 0 0.33 0.33 0.66 確率 0.07 0.01 0.01 0.01 0.01 1の数 5 6 の7 8 9 10 個数 0 0 0 0 0.66 90.33 確率 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.87

6

終わり に

遷移確率と中立的浮動のシミュレーションの結果はほぼ 一致するという結果になった。これより、遺伝子の変化は 自然淘汰に対して有利でも不利でもなく中立であるという 中立説を指示する.

7

参考文献

参考文献

[1] MARTIN A. NOWAK[著]竹内康博・佐藤一憲・巌佐 庸・中岡慎治[監訳]:『進化のダイナミクス』.共立出 版,東京,2008.

参照

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