国際租税法における立法管轄権の意義
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(2) 横浜国際経済法学第18巻第1号{2009年9月). 3.本沓の特徴として、まず何と言っても、その取り扱う対象の特殊性を指摘 しておかなければならない。国際租税法の法源5}と言えば、租税に関する 国内法令と租税条約の二つに大別でき、この二つにつきそれぞれ別々の側面 からこれまで検討が加わってきた。すなわち、前者に関してはその国際的側 面゜)が、後者に関して1ま、とりわけそれが国際租税法令に加える修正の態様7). が、それぞれ検討対象となってきたのである。本書が検討するのはsこのい t ち. ずれとも異なる。著者は国際租税を、租税に関する国家実行S}であって国 際的裏素を含むもの、乏定義している9)。その上で、ここには一般国際法が 影響を及ぼし、、かかる影響の最たるものがご国境を越える事象に国内租税法. 令が適用可能な範囲を画定することである、と指摘している1田。著者はこ の論点を、国際的租税管轄権(lnternational F三scal J urisdiction)11)の問題、. すなわち、租税分野における国際法の法定立機能(legitimizing function)と. 称した上で、これを国際租税法の最重要論点である、としている12}。この. ように、立法管轄権の観点から国際租税に関する国家実行を検討する、と いう本書の目的は、先駆的である13}。著者の言葉を借りると、各国の立法. 管轄権に影響を与える一般国際法上の裸の(naked)規範を探求することが 本書の限目であり14)、二重課税排除を目指す条約や慣習が存在しない場合、 いかなる規範が国家の課税権に影響を与えるかが本書の検討対象である15)。. 4.一一fi、著者は分祈の足がかりとして、国際法と掴内法の関係を規律する理. 論として、いわゆる国際法優位の“元論ユ帥を採用している。そこでは国際 法と国内法は.「根本規範」を頂点とする階層秩序の下にあり、国内法の妥 当根拠を国際法に見出すこととなる。クロスボーダーな局面を対象とした国 内租税法令の効力を、[郵祭法の下における国内法の妥当性の問題として理解 しようというのが、本霧の方法論なめである17}。’. 5.’本帯の刊行から20年近くが経過した現在において本書を紹介・検討する ことの意義は、これまで述ぺてきたことから、以下の三点に集約できる。’. 1)第一に、再三述べてきた本書の検討対象の先騨性である。 234.
(3) [{1F評]国際租税法における立法管轄椎の意義. 2)第二に、一般国際法の下で国家の課税権が一定の制約に服するという本 書の立場が、他の研究業績に大いに影響を与えていることである。詳しく は後で検討するとして、このような立場は、反対意見も存在するとはいえ、. 相当程度の支持を受けていると考えて良いだろうIB)。中でも着目すべき は、本書を引用することで、自らの主張の拠り所としている研究業績が存. 在することである。その意味で本書は、かかる研究業績にとっての、まさ に記念碑的性格をも有する。. 3)第三に、国際法と国内法との関係についての理論として国際法優位の一. 元論を採用し、これを分析の上で一貫して適用している点である。一般国 際法の下で国家の課税権が一定の制約に服するという立場を支持する研 究業績は、先にも述べたとおり、本書以外にも存在する。ただし、それら の中に、国際法と国内法の関係に関する何らかの理論19〕を意識的に採用 し、かかる理論を最後まで貫いて検討を行ったものを見つけることはでき ない。その意味で、国際法優位の一元論をIE面から謳った本書の意義を改 めて確認しておく必要があると考えた次第である。今後、国際法と国内法 の関係について、本書とは異なる立場で検討を行う上でも、本書の分析は かなりの程度参考になるであろう。 6.以下、IIで、本書の内容を各章毎に紹介する。続いて皿で、内容の検討を行う。. E 紹介 ロー1序章 1.序章は、本書の採用する方法論と、検討を進める上での基本的視座に二分 できる。. 2.まず著者は、方法論につき、その特質、妥当性、及びそこでの分析結果の 性質を、以下のように述べている。 1)本書が採用するのは、演縄的手法(logical Cledlletive method)であるco)。. 235.
(4) }黄言兵廼11祭葡…済}去学第18巻第1号 (2009ゴF9月). すなわち、ほぽ全世界的な合意が存在する前提を、現実の租税に関する国 家実行に投影する、という作業を繰り返す。. 2)かかる前提から演鐸的に導き出した規範に対し、国家は、それぞれが相 互に存立する上で依拠している。. 3)ただ、このように導出した規範があいまいな(indefUiite)ことがしば しばある。故にそれが、国家実行の妥当根拠を提示しているに過ぎない場. 合がある。この場合、国家実行が具体的にいなかる態様となるかに関し、. 全世界的な合意が存在しないが故に、各国の国家実行は、様々な態様を呈 する21)。換言すれば、各国は国家実行を通じて、演繹的に導き出した規 範を補完している。このため、国際租税法の全体像を把握するためには、. 帰納的手法を採用する必要もある。国際司法裁判所規程38条(国際司法 裁判所が、紛争を国際法に従って裁判する際に適用するものを定めてい る。)が示す通り、かかる手法は、国際法の法源に関する伝統的見解とも 整合的である。 4)一方、’国家実行を検討することで、何』らかの抵触規範(confiict rules). の存在を認識できる場合がある。抵触規範とは、管轄権の抵触の際、いず れの国のそれが優位するかに関する規範である。かかる規範(慣習及び条. 約)が影響を与えるのは、国家の強制管轄権鋤であり、立法管轄権では ない。. 5)もっとも、国家実行が、従前とは異なる新たな権利義務を創設する場合. がある。かかる国家実行は、国家の立法管轄権に影響を与えていると言え る。ただ、このような国家実行は、条約又は慣習としての要件を充足しな ければ、違法価egal)となるza)。. 3.次に著者は、本:書の基本的視座として、租税管轄権には限界がある、とい う立場を表明する。管轄権は主権の属性(atrib ute)aOであるが故に、主権 の範囲においてのみ有効である。よって、主権の限界を見極める必要がある。 かかる見極めが不充分であれば、租税管轄権の抵触が生じる、と著者は説く。 236.
(5) [替評]国際租税法における立法管轄権の意義. 1−2 第1章 1.本章は「租税管轄権の理論的背景」と題し、理論的側面の検討を目的とし た第1部に属する。本章の主たる目的は、なぜ国際法の下で租税管轄権が制 限に服するのか、その理由を探求することである。 2.まず著・者は、諸説との対比の上で、以下の二点を指摘するas}。. 1’)管轄権Gurisdiction)と主権(sovereignty)という二つの概念は、同 一ではない。. 2)管轄権は主権の属性であり、主権に基づき国家は管轄権を行使すること ができる。. 3.次に著者は、国際法の下で課税を正当化する上での法的根拠として、以下. のように、いわゆる主権理論(THE SOVEREIGNTY TH EORY)に基づく 説明が妥当である、と説く26)。. 1)国家は歴史的必然の産物である。自己の存続手段の確保が国家の権利で あり、義務でもある。このため国家は、自国の法令に服する事物に対し、 当該国家の存続に必要な手段を要求する権限を有する。. 2)管轄権は主権の属性であり、課税は管轄権の行使の一態様である。この ように考えれば、租税に関する国家実行が、各国の政策に応じて様々であ ることを説明することができる。. 3)租税管轄権を基礎付けるのは、帰属(aUegiance)である。国民国家を 前提とすれば、自国民の政治的(political)帰属を根拠に、当該自国民を 課税対象にできる。一方、国境を越えた人の移動が増加することに伴い、 国家概念の経済的側面にも目を向け、課税の根拠を、自国に対する経済的 (economic)帰属に求める動き炉生じている。. 4.次に著者は、以下のように、法規範を構成する体系の一つとして「国家」. という概念を捉えれば聞、国際法の有する機能の本質が明らかになるとい うas)。. 237.
(6) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). 1)主権は絶対性を含有するが故に、主権国家は一一Stする相対物(congruent counterparts)であるpm)。すなわち、同一の人々を統治し、同一の対象を. 規律する複数の国家が、同時に同位置に存在することは、法的には不可能 である。ここにおいて国際法は、当該「国家」という法規範の適用可能性、. すなわち、主権国家の国内法が、いつ、誰に、何に、どこに適用となるの かを画定する。. 2)然るに、国際法の規範の多くは、不完全である。国際法は、個人の権利 及び義務を直接定めるのではなく、それらの定めを各国の国内法に委ねて いる甜)。国内租税法令を制定することは、国際法上の権阻を行使するこ とを意味する。このため、国際法の観点から、各国の国内租税法令を、合 法又は違法の行為(acts)とすることができるのである31)。. 5.その上で著者は、管轄権は主権の属性であることから、租税管轄権に対す る制限は主権の制限に類似する、と説く32)。. 6,では、租税管轄権を制限する国際法上の規範として演鐸可能な規範とは、. 具体的にはいかなる様相を呈するのか。著者は国家の権能訓という観点か ら、以下の四つに分けて考えることができる、と説く。 II. 1)国内法秩序は、主権の存する聞のみ存在し得る。 2)国内法秩序は、その対人主権に属する者(国民)に適用できる。. 3〕国内法秩序は、その領土主権が及ぶ領域内に存在するすべての外国人及 び物に適用できる。. 4)国内法秩序が規律することができる対象は、その性質上、専ら国際法の 管轄に属するか、又は国際法が明示的に規律している対象を除く全てであ る31}。. 7.その上で著者は、管轄権の行使が主権の範囲内にあるか否かという点に、 問題を集約できる、としているss)。ここで著者は、かかる判断を行う際の 考慮要素を、以下の通り整理している3G)。. 1)ある事物がある国の主権に属する場含、当該国の管轄権を制限する規範 238.
(7) [書評]国際租税法における立法管轄権の意義. が別途存在するか。. 2)ある事物がある国の主権に属さない場合、当該国の管轄権の行使を許容 する規範が別途存在するか。. 1−3 第2章 Lこのように著者は、租税管轄権の問題を主権の問題として捉えている。本 章は、「国際租税理論の構成要素」と題し、前章と同様、理論面の探求を目. 的とした第1部に属する。著者はここで、主権の態様を出発点とし、国際租 税において国家の課税権を成立させるための法的要因及びこれと関連した納 税義務の範囲を分析している。 2.著者はまず、主権の態様を、以下のように二分しているsc)。. 1)国籍を根拠とし、個人及び法人の所在場所に関わりなく、それらの取引 を規律し、それらの取引に対して法的効果を付与する権限(対人主権). 2)領域内のすべての者(外国人を含む。)及び事物に対して高権を行使す る権限(領土主権). 3.次いで著者は、かかる主権の態様が、国際租税においてどのように影響を 与えているのかを、以下の順序で検討する3s)。. 1)国家が課税を行う上では、課税対象が当該国の主権に服することで・両. 者の問に租税上の連結(FISCAL ATTACH MENT)が存する必要がある。 かかる連結は法的なものであり、属人的なそれと、経済的なそれとに分か れる。前者は、課税国が、納税義務者自身との間で直接確立している。こ. れに対し後者は、課税国が、納税義務者の財産等を通じて、当該納税義務 者との問で間接的に確立している。. 2)租税上の連結の種類は、納税義務に影響を与える。納税義務は、無制限 納税義務と制限納税義務とに二分できる。前者においては、納税義務者の 全ての財産及び所得が、その源泉地を問わず、課税となる。一方、後者に おいては、国家の課税権が一定の制約を受ける(例えば国家は、自国内に. 239.
(8) 横浜国際経済法学第18巷第1号(2009年9月). 源泉が存在する所得にしか課税できない)。一般的に、前者が例外で、後 者が原則である(とりわけ、一般国際法は、物税(imperSOnal taxes)so) については後者のみを採用する旨、要求している)。. 3)納税義務者毎に、課税国が当該納税義務者に行使する主権の態様、両者. 間の租税上の連結の種類及び当該納税義務者の負う納税義務を整理する と、以下の逓りである(本書の記述を基に、表にまとめた)。 納税義務者. {課税固の国民) ※1. 主権. 租税上の連結. 納税義務. 対人主権 無制限納税義務. 〔耀躍皇〕※2 属人的連結 課税国の外国人. ロ税国の非居住者 ロ税国に自身が存在. 領土主権 制阻納税義務. 竃議籔存在〕. 経済的連結. この内、以下の二点に注意しておく必要がある。. ※1:自国民には、国籍を根拠に課税が可能なので、居住の如何を議論す る必要はない。. ※21この場合の無制限納税義務は、慣習として帰納的に展開した規範に 基づく40)。. 4)なお、これらとは別に、ある者が大陸棚や排他的経済水域(以下、両 者双方を指して「大陸棚等」と呼ぶ。)で活動している場合がある。大陸 棚等における沿岸国及び国際組織の主権は機能的(functional)41)であり、. 当該者は当該沿岸国に対して制限納税義務を負う。. 240.
(9) [控評]国際租税法における立法管轄椛の意義. H−4 第3章 1.本章は「租税に関する立法管轄権」と題し、第2部に属する。第2部は、 第1部で展開した理論を、現実の国家実行との関係で例証することを目的と している。. 2.著者はまず、本章において、国家管轄権の内、立法管轄権の検討を中心に 据えることの意義を、以下の三点を指摘することで、再説する42}。. 1)強制管轄権は、行政機関又は裁判所による法の適用と関連している。. 2)法の適用が可能であるということは、当該法が有効であることが前提で ある。. 3)かかる法の有効範囲を画するのが、立法管轄権である。それは国際法の 下で、国家が法を創り出す権限を意味する。 3.著者はまず、国籍を根拠として課税を行う(すなわち、対人主権に基づく) 国家実行を、以下のように検討しているd3〕。. 1)国籍に基づき租税上の連結(属人的連結)の存在を主張する国家は、ほ とんど存在しない。寧ろ、国籍を根拠に課税することは、批判の対象であっ. た。この傾向は、国外在住の自国民や、国外に源泉が存する所得の課税関 係が関わる状況下において、顕著であった。. 2)これは、多くの論者が、国家管轄権の根拠を、専ら属地性に求めている からである。もっとも、かかる理由付けは、専ら法の適用と関連する管轄権、. とりわけ、外国人が関連する局面について妥当するに過ぎず、「域外管轄」 という誤った文言の使用をも導ぐ44)。ただ、管轄権は主権の属性であり、. 主権は属人的側面と属地的側面から成る。故に、国籍に基づく管轄権は、 属地性に基づく管轄権と同程度に有効であると考えるのが、理に適ってい る。. 3)現に、国籍を租税上の連結の根拠とすることを当然に違法とするような 規範は、一般国際法には存在しない。それに、国籍に基づく課税に対する 批判論は、国籍を租税上の連結の根拠とすることが、望ましくない・と主 24i.
(10) 横浜睡1際経済法学第1B巷第1号(2009年9月). 張するのみである。 4)では、国籍に関する国家実行は、どのようになっているのか。. (1)国際法は、いかなる盲然人がある国の国籍を有することとなるのか、 定めていない。逆に言えば、国家は、いかなる自然人が自国民となるかを、. 決定することができる。この権限は、国際法から派生している。. (2)これに対し、法人は、その株主等の国籍とは関係なく、当該法人の設 立地国における国籍を有する’j5)。 rこれが、国際法上の規範である。な. ぜならば、法人は法の産物であり、法人格を付与する法体系(国際法上、. 国家及び国際組織である。)の存在が、当該法人の存在の上では大前提 となっているからであるd6)。. 4.続いて著者は、外国人に対する課税を検討する47)。外国人は、外交官を除き、. ある国の領土主権に服することを理由に、当該国において課税に服する場合 がある(一般国際法上、このような課税を妨げるような規範は、存在しない)。. 著者は、かかる場合を、以下の三通りに分類している。. 1)当該国が、当該外国人にとって、居住地である場合. (1)当該国は、当該外国人にとって、課税上の主たる住所(the main fiscal domicile)を意味する。ここでは、当該国の領域内において、当 該外国人が存在していることが必要である。すなわち、当該国との間に、. 自然人であれば物理的結合dS)が、法人であれば解釈上の結合が、それ ぞれ必要である。. ② 国際法は、「居住」に関する概念の明確化を、各国の国内法に委ねて いる。これを受けて、各国は、様々な態様で「居住」に関する定めを行っ ている49)。. 2)当該国が、当該外国人にとって、居住地でない場合 (1)滞在が短期等の理由で、外国人が居住者としての要件を満たさない. 場合である。一般に、当該国は、当該外国人に対して、直接税たる人 税を課さない。 242.
(11) [書評]国際租税法における立法管轄権の意義. ② ここでは、外国人たる法人との関連で展開してきた課税理論が、自然 人にも影響を与えてきた。すなわち、恒久的施設を巡る理論であるSO)。. 3)当該国に、当該外国人の財産が存在する場合. (1)この場合、 当該国は、 課税上の副次的住所(secondary丘scal domicile)である5n。当該国は、経済的連結に基づき、財産税を課する。 かかる財産税の課税は、当該国が有する排他的権利である。なぜならば、. ある財産の法的性質は、当該財産が領土主権に服する国の法令によって のみ、決定することができるからである52)。さらに、この課税は、.外. 交官や国際機関における民間の職員等、属人的連結に基づく課税が免 除となる者であっても、負担することがある。. ② 一方、当該財産から生ずる所得に対しては、当該所得の受領者と属人. 的連結を確立することができる国が、租税を課することができる。こ れは、財産税の課税とは、区別しなければならない。. 5.最後に著者は、外国人に対する課税の一環として、機能的主権に基づく課 税の検討を行うSS)。ここでの想定事例は、大陸棚等においてある者が活動 している場合である。この場合、沿岸国は、自国の租税管轄権を行使するこ とができるのか。. 1)まず、著者の問題意識を整理しておこう。. {1}国際法は、明示的に禁止していない事項を許可している。一方、か. つて国際法が禁止していた事項は、新たな明示的準則が当該禁止を解 くことで、可能となる。. ②大陸棚等は、沿岸国の領海の外にある。大陸棚等の概念の法的確立 を見る前、ここには国家管轄権の適用がなかった。 (3)現在、沿岸国は、国際法に基づき、大陸棚等に主権的権利(sovereign. r三ghts)を行使している。かかる主権的権利という概念を実定国際法が. 採用する以前、沿岸国が大陸棚等に租税管轄権を行使できなかったと すると、かかる禁止の解除は、その旨定める国際法のみ可能である。. 243.
(12) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). 2)このような観点から、著者は、ここでの検討課題を、以下の二つとして いる。. (1)関連する一般国際法め態様. 海域に関する一般国際法は、大挫棚等との関連で、沿岸国に租税管 轄権を認めているか否か。. ② 主権的権利と租税管轄権の関係. 主権的権利という概念は、大陸棚等で活動を行う者と沿岸国との間 に租税上の連結を産み出し、以て沿岸国の租税管轄権の行使を正当化 するのか。. 3)著者の議論を整理すると、以下の通りである。 (1)「主権的権利」という文言は、主権と同義ではない。当該文言は、大. 陸棚に閏する条約(1958年署名)51)の2条1項に存在するので、これ を解釈x)することとしよう。主権的権利が主権と同義であるとすれば・. 沿岸国は、大陸棚の上部及び下部に対し、あらゆる排他的権利を有する. こととなる。然るに、同条約3条の下では、大陸棚に沿岸国が有する権 利は、当該大陸棚の上部水域及び上空の法的地位に、影響を及ぽさない。 さらに、その権利の排他陛は、探査・開発についてのみ、妥当する56)。. ②大陸棚は、公海に位置する。そこは沿岸国を含め、いかなる国の領域 でもない。この理は、大陸棚に関する条約の成立以前においても、確 立していた。. ㈲故に、沿岸国は、大陸棚に主権を有さない。管轄権が主権の属性で あるとの前提の下では、沿岸国は大陸棚に租税管轄権を行使すること ができない。では、主権的権利に基づき沿岸国が大陸棚に租税管轄権 を行使することは、可能か。この点に関しては、大陸棚に関する条約と. の閏連では、大陸棚における探査・採取にとって、租税管轄権が必要 不可欠か否かを考える必要がある。結論は、消極的である。なぜならば、. ある者が大陸棚で活動を始めるに際し、当該者に沿岸国の国籍を取得. 幽.
(13) [書評]国際租税法における立法管轄椛の意義. させたり、当該沿岸国の居住者となるよう求めれば充分だからである。. こうすれば、当該沿岸国は、当該者の全所得に租税を課することがで きるし、自国の国内法や租税条約に基づき二重課税を排除することも できる。 {4)一方、海洋法に関する国際連合条約(1982年署名)57}の60条及び. 80条は、大陸棚等における人工島、施設及び構築物に対し沿岸国が有 する排他的管轄権を列挙している。かかる列挙の中に、「財政上…の法 令に関する管轄権」が存在する。もっとも、大陸棚等は沿岸国の領域内 にないので、大陸棚等で活動する者は、沿岸国にとって居住者たり得な い。故に、当該沿岸国と当該者との間には、既に述べた意味での租税上 の連結が存しない。ここで沿岸国が有するのは、大陸棚等における探査・. 開発から生じる所得のみに対する課税権、すなわち、制限納税義務に 基づく課税権である。 4)さらに著者は、機能的主権に基づく租税管轄権の展望を述べている。具 体的な検討対象は、深海底に対し国際海底機構が有する租税管轄権と、飛. 行情報区(FLIGHT INFORMATION REGIONS)における航空運輸活動 に対し、各国が有する租税管轄権である。. n−5 第4章 1.本章は「国際的二重課税の原因」と題し、引き続き、租税管轄権の理論の 例証を目的とした第2部を成す。ここで著者は、国際的二重課税という現象 を、租税管轄権の見地から分析する。. 2.著者はまず、国際的二重課税の原因として、各国の租税管轄権の競合をあ げているss)。管轄権の競合とは、二以上の国が自国の法令を同一の事象に 合法に適用する状況を言う。著者はこの現象を、以下の三つに分類している。. 1)無制限納税義務の競合 各国が塙国との属人的連結に基づき、租税管 罐を行使する場合59) 245.
(14) 枇浜国際経済法学第18巻第1号{2009年9月). 2)制限納税義務の競合 各国が、源泉主義に則って自国の課税権を行使する場合OO). 3)無制限納税義務と制限納税義務の競合 ある者が、ある国において全所得に課税を受ける4−pJE方で、別の国でその 所得の一部に課税を受ける場合61}. 3.このような租税管轄権の競合62)に関し、一般国際法は何の規範も提供し てこなかった、と著者は指摘している。. 4.次に著者は、一般国際法の不完全性(]NCOMPLETE NATURE)に伴う 各国の国内租税法規範の相違をあげているas)。国際法は、国内法秩序の有. 効範囲を定めてはいるものの、関係する諸概念(国籍、居住、所得等)の詳 細な定めは、各国の国内法に委ねている。その結果、国家は、その権能の範 囲内であれば、実定国際法の明示的規定がない限り、自由に課税要件を定め ることができる。このことが、二重国籍又は二重居住といった二重課税の原 因を生み出している、と著者は指摘しているet)。. 5.最後に著者は、租税管轄権の違法行使をあげているes)。国家が租税管轄 権を行使する際、国際法に照らして合法に(legitiinized) “行使しなければな. らない。逆に言えば、国家は、自国の管轄権を誤った態様で行使することが、 できてしまう。著者はこの問題を、対人主権及び領域主権に基づく課税66)と、. 機能的主権に基づく課税に分けて、検討している。とりわけ、機能的主権に 関する議論は、大陸棚等における課税に関する先の議論を補完しているので、. 本書の紹介の最後として、この点に関する著者の議論を見ておきたい。 1)大陸棚に関する条約の下では、沿岸国は大陸棚に租税管轄権を有さない。 このような状況下で、各国が大陸棚に「租税管轄権」を行使してきたとい う事実があったとしても、ある種の慣習法が存在してきたということには. ならない。法創造の主体たる国家が新たな法の創造を意図することなく既 存の法に反して行動することは、法の無視であり、当該国家の責任につな がる。 246.
(15) [書評]国際租税法における立法管轄権の意義. 2)これに対し、海洋法に関する国際連合条約は、大陸棚等における人工島 等に対し、沿岸国が有する排他的管轄権を定めているfi7)。一方、昨今の 租税条約では、締約国の定義に、大陸棚等を包含する傾向がある。このよ うな租税条約の定めは、海洋法に関する国際連合条約とは異なる。なぜな らば、海洋法に関する国際連合条約は、大陸棚等自体ではなく、大陸棚等 に所在する人工島等に言及しているからである。. 3)もっとも、このような租税条約の傾向が、新たな法(すなわち、大陸棚 等が沿岸国の領域の一部となる、というような)を創造しているとは、考 えにくい。租税条約が大陸棚等を締約国の定義に含めているからといって、. 当該締約国(すなわち、沿岸国)は、大陸棚等との関係では、制限納税義 務に基づく課税しかできないからである。. 皿 検討 1.以上、本書の内容を紹介してきた(結論に該当する箇所は、全体を要約し ているに過ぎないため、紹介を省略する)。著者は、国際法に関する豊富な 見識を背景に、租税管轄権と、国際租税に関する国家実行という二つの課題 に接近している。国際租税法に関する既存の知識が本書の見地から裏付けを. 得ていく過程をかいま見るに連れ、国際租税法を国際法との関連で検討する ことの必要性を痛感せざるを得ないのである。. 2.以下では、皿一1で、本書の基本的な立場を総じて検討した後に、皿一2 で、本書の中でとりわけ興味深く感じた点を個別に検討する。. 皿一1 総論 1.本書には、「管轄権は、主権の属性である。」という記述が・随所に顔を出す・ 国際法においても、国家の管轄権を、「(主権一彗堵注)の具体的な発現形態」es)で. あるとか、「主権の一側面」G9)であるとか、述べる論者がいる。これは・王. 247.
(16) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). 権という概念が、管轄権という概念を包含することを意味する。著者は一方 で、主権と管轄権とは異なる概念であるとも述べており、かかる包含関係を 強調しているように読むことができる。確かに、主権と管轄権の類似性を指 摘するのみでは、主権の範囲に収まりきらない管轄権の有効性をも考慮する 必要がある。かかる包含関係を強調することで、著者は、このような考慮を 行う必要性を払拭することを意図していたのであろうか70)。. 2.ともかく著者は、管轄権が主権の有効範囲に服するが故に、国際法上、管 轄権は有限である、と説く。国際法が各国の租税管轄権を制限するか否か、 という点に関しては、議論が分かれるものの71)、本書は一貰して、課税権 は国際法の制限に服する、という立場を採用している。この点、国際法の論 者も、国際法の最も伝統的な役割は、国家の管轄権行使につき法的な阻界を 画定することである、としている72)。. 3,さて、管轄権は主権の属性であり、それは主権の有効範囲においてのみ有 効である。以下ではこの理を巡り、検討を進めたい。. 1)まず、著者が本書の目的として掲げる一般国際法上の裸の(naked)規 範との関連で、少し考えてみたい。考察の軸となるのは、国際法の法源に 関する議論と、国際法の各法源が国家管轄権に及ぽす影響である。 (1)国際法上、国際法の法源を国際慣習法と条約〒3)とに分類するのは、 法の成立過程の相違を意識した結果である。これに対し、一般国際法(普. 遍的国際法)と特別国際法という分類は、法の支配する地理的範囲の 広狭を意識している74}。もっとも、国際社会全般に妥当する国際法規 は慣習のかたちをとっている場合が多い75)。故に、一般国際法=慣習 及び特別国際法=条約という図式が、相当程度妥当するようである。. ②では、両者の効力関係は、どのように整理できるのか。以下、国際 法の論者の見解を、二つ見ておこう。. ①「『特別法は一般法を破る」というのは、一般国際法と異なる内容の 特別法を締約国が合意すれば、その締約国の問に特別法が適用される 248.
(17) [諮評]国際租税法における立法管轄権の意義. というだけであって、一般国際法はやはり一般国際法として存在し・ 他のすべての国家に妥当することそのことには変わりはない。」76). ②国際慣習法は「紛争当事国間に適用ある条約が存在しない場合に国 家間の関係を規律するにとどまる。…国際慣習法はあくまで任意法 規であって、国家は他の国と合意を締結することを通じて、国際慣 習法と異なる内容の部分的な秩序をいつでも創出でき」たπ)。. {3)表現に差こそあれ、特別国際法が存在する限りにおいて、一般国際法. が一定の修正を受けることに関しては、意見の一致があると言えよう。. ただ、本書との関係で問題としなければならないのは、国際法の各法 源が、国家管轄権のいかなる側面に影響を与えるのか、という点である。. 既に見た通り、著者は、立法管轄権に影響を与えるのは一般国際法であ り、条約や慣習ではない、としている。これを前提とすれば、一般国際. 法と特別国際法は排他的関係になく、国家管轄権の異なる側面を規律す ることで、いわば棲み分けを行っているという理解が妥当ではないか。. より敷桁すれば、慣習や条約が一般国際法となることで、いかにして 各国の立法管轄権に影響を与えるようになるのかを、根本的に問うべ きであったと言えよう。. 2)一方で著者は、対人主権と領土主権という主権の態様を出発点として租 税上の連結という概念を提唱し、これとの閲連で納税義務の範囲を整理し ようとする7B)。もっとも、かかる主権の態様を国際法上の管轄権の規制 原理とすることに関しては、国際法の分野においては議論が分かれている79)。. これとの関係で著者は、演縄的に導出できる規範のあいまいさを指摘し、. その上で、帰納的手法を補足的に採用すること、すなわち、各国の国家実 行を検討する必要性を説いたse)。著者はここで、租税に関するある国家 実行が主権の範囲内にあるか否かを、個別事例毎に判断する必要性81}を. 示唆している。かかる個別事例の検討の一環として、著者は、国際的二重 課税をも取り上げている。国家管轄権の制限という問題の延長線上には、. 249.
(18) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). 国家管轄権の競合82)という問題が横たわっているからである。. 1[1−2 各論 以上、本書の基本的視座に関し、検討してきた。以下ではこれとの関連で、. 二点を検討しておきたい。いずれも、租税条約に関する論点である。本書は租 税条約を直接の検討対象とはしていないものの、本書の分析が期せずして租税 条約に接近するための窓口を形作っていることは興味深い。. 皿一2−1 租税条約の法的位置付け 1.本書の中には、国家管轄権との関係で租税条約の意義を論じた箇所がある。. 既に1でも触れたものの、より敷桁した箇所が別途存在するので、まずはこ れを訳出しておこうSS)。. 「(国家管轄権の態様の区分の誤解に基因する一訳者注)誤りの一つに、国. 際法は、外交施設団及び領事機関の構成員に対する課税権を制限するのみで ある、という主張がある。かかる主張は一面の真実を含むとはいえ、正しく. ない。国際法は、慣習及び条約といった規範により、この点に関する国家の 強制管轄権を制限するのみだからである。当該規範は、ある国に、法令の創 設や改廃を義務付けない。当該規範が唯一義務付けているのは、当該者に対 し、現行の又は将来の租税法令の適用(すなわち、司法活動及び行政活動を 通じた執行)を差し控えることである。」. 2.以下、上記訳出箇所に関し検討していきたい。. 1)著者は、大陸棚等において沿岸国が有する権利を定める条約を、新たな 権利義務を創設する国家実行に分類し、かかる国家実行は立法管轄権に影 響を与える、と説いている鋤。. もっとも、上記訳出箇所との関連で問題としなければならないのは・先. に総論でも述べた通り、条約が専ら強制管轄権を対象とするものの、こ れが立法管轄権に影響を与えるに至る過程である。 2)それはさておき、一方で、管轄権の抵触との関連で問題となる国家実行を・ 250.
(19) [書評]国際租税法における立法管軸権の意義. 著者は抵触規範と称している。その上で、著者は、抵触規範(著者は、慣 習及び条約であるとしている。)が影響を与えるのは、国家の強制管轄権 であり、立法管轄権ではない、と説く。以下、この点に関し検討していこう。. (1)まず、かかる整理を前提とすると、租税条約の有する機能を比較的明 瞭に説明することが可能である。租税条約は、二重課税を排除するため、 締約国の租税法令の適用を制限するというのが一般的な説明であるas}。. 換言すれば、租税条約は、国i家の課税権を制限する方向でしか作用しな いas)。かかる原則S7)は、抵触規範たる租税条約が、国家の強制管轄権. のみに影響を与えるという前提から、無理なく導き出すことができる。. すなわち、租税条約は、国内法上定めがない租税債務を創設すること ができず、既存の国内法の適用を制限して既存の租税債務を削減する ことしかできないという訳であるSS)。. ② ただ、租税条約を抵触規範と呼称する89)ことに関しては、異論があ. る。抵触規範とは、私的取引が複数の国にまたがる局面において、い ずれの国の法令が適用となるかを決定する国際私法上の概念であるCO〕。. これに対し、国際租税においては、各国が自国の法令に基づいて租税 を課しているのが前提であり91)、このような状況下で、締約国の課税 権を制限するのが租税条約である92} 。故に、それは抵触規範ではなく、. 配分規範(distributive rUle)と称するのが相応しい、と説く論者がい る93)。. 皿一2−2 域外適用 1.国内法の域外適用の問題は、国家管轄権との関連で、国際法上、しばしば 議論の対象となってきた9S)。もっとも、皿で見た通り、著者は、管轄権を 専ら属地的に捉えることに異議を唱え、管轄権の域外適用という概念が誤り であることを指摘している。以下、この点に関し、若干言及しておきたい。 2,管i幡権の属地性を強調することに著者が反対する論拠は、大きく分けて以. 下の二点であった。第一に、管轄権の属地性は強制管轄権については妥当 251.
(20) 横浜国際経済法学第18巻第1号〔2009年9月). するものの、本書の主眼である立法管轄権においては・そうはいかない脆㌔. 第二に、管轄権の背後に存在する主権は、大きく分けて対人主権と領土主権 から成り、両者の聞に原則と例外という関係はない。すなわち、国籍に基づ. き納税義瀦の全所得に課税すること}ま、齢的にあ鵬る゜s’・かかる論 拠は、管轄権の域外適用という概念を、完全に排除するに足りるかe. 1)まず、第一点との関連では、域外適用を立法管轄権の枠の中で捉える論 者がいることを指摘しなければならない。当該論者によると、域外適用と は、「域外的=国際的」な問題を自国法の射程に取り込んで、自国領域内 でそれを規律しようとすることであるo「}。ここで・留意すべきは、当該論. 者が、立法管轄権という概念を、まさに立法をし、かかる規範を適用する ことをも包摂している、と説いていることであるos}・. 2)次に、第二点との関連では、管轄権の行使が自国の領土内に限定的であ ることを否定しつつも、域外適用の問題を取り上げる論者がいることに着 目すべきであろうSS}。当該論者は、域外適用を、「国内法を自国の領域外 で発生した事項に適用すること」100)と定義している。その上で、域外適. 用の対象となった規則が、対抗力の有無を基準に、特定の国家相互間で評 価が分かれる可能性を示峻している101)。. 3.このように、本書の見地を前提としても、域外適用の問題を議論する余地 は充分ある。著者は、管轄権の違法行使を原因どする二重課税という枠の中 でこの問題を考えているものの、問題の大部分を等閑に付している嫌いがあ る1圃。. 4.ある論者は、域外適用なる問題の淵源として、概ね以下の二点を指摘して いる1e3)。第一に、企業や人の活動が高度に国際化したことである。第二に、. そのような企業や人の活動に対する国家法の規制範囲が属地主義に即応し、 国境の中に限定的であることである(この点は、本書の否定する点である)。. 当該論者は、このような現状においては、域外適用に対する現実的な接近方 法はその全面的否定や肯定ではなく、部分的肯定とその範囲の画定である、 252.
(21) [書評]国際租税法における立法管轄椛の意義. と説く100。状況は、国際租税の分野においても相当程度近似していると言っ て良いだろうion)。. 5.ここでいう「部分的肯定」の一つに、自国領域内における他国の国内法令 の適用につき、条約を通じてこれに同意することをあげることができる]os)。. 国際租税法の見地からすれば、これは、他国の国内租税法令を自国内で執行 しないという国家実行に基づく慣習が、.租税条約による逸脱(derogation) に服することを意味する1[「T}。強制管轄権に対する租税条約の影響について. 本書が展開した議論は、条約によって国内法の域外適用を肯定するという側 面から観察することもできるであろう。. 6.最後に、国家間の管轄権競合の解決という面については・租税条約は最も 成功している仕組みである、との指摘があることを紹介しておく10s) e. IU おわりに 1,以上、本善の紹介・検討を通じ、租税法の効力の地域的限界及び人的限界 との関連で、一般国際法が租税立法管轄権に与える影響という問題に考察を 加えてきた。. 2.国際租税法の法源に関する伝統的見解から距離を置いた本書は、結果的に、. 租税条約が国家管轄権との関連で果たす役割を探る上での入り口を提供して いる1co)。本書を検討してきた意義として、この点も強調しておきたいe(了). 1)さしあたり、金子宏『租税法 第14版』100頁以下(弘文堂,20G9)及び清永敬次『税 法(第7版)」23頁以下(ミネルヴァ辿:房、2007)等を参照。. 2)金子・前掲注1)100頁以下。 3)本‡』;は英文で約180頁であり、Kluwer Law and Taxation PubSishersより、Series en. International Taxationの第9号として出版となった。同シリーズの著者としては他に も、1・lugh J. Ault、 Albert J. Raedler・⊂vall Raad等がし’る。. 253.
(22) 杣浜国際経済法学第18巻第ユ号(2009年9月). 著者の専門分野は国際公法、国際経済法、欧州共同体法等であり、本書は、著者 がthe University of Leiden e±提出した欝士論文(法学)である。著者は同著により、 International Fiscal AssuciatienからMitcheli B. Carroll Prizeを受賞している。 本皇1:の書評として、Mccall, Book Reviews,411NTL&coMp. L.(Q. 954, 954−55(1992)が. ある。なお、中里実「外国法人・非居住者に対する所得課税」日税研論某33号141頁 以下(1995)は、識税管轄権に関する国際法上の制限という問題についての代表的な研 究として、本書をあげている。ただ、「その論拠が一種の形式論理的なものにかたよっ ており、必ずしも説得的なものとはなっていないように感じられる。」としている。もっ とも、同論文は、本書の具体的な記述に言及してはいない。 以下では、本田:の特定の箇所に触れる際には、脚注においてMARTHA,1というように 引用頁を示す。. 4)国家管軸権とは、「国家がその国内法を一定範囲の人、財産または事実に対して具体的 に適用し行使する国際法上の権能をいう。」山本草二『国際法[新版U231頁(有斐閣. 1994)。国際法においては、国家管轄権を、その作用に応じて、立法管轄権、執行管轄. 権及び司法管轄権に三分類するのが一般的である。同232頁。かかる三分類は、国家の 権力分立体制とは無関係である、との見解が多い。例えば、小寺彰「国家管轄権の域外. 適用の概念分類」山本草二先生古稀記念f国家管轄権一国際法と国内法一」347頁(勤 草:2}:房,1998〕及び中川淳司「国家管轄権」小寺彰ほか編『講義国際法』152頁(有斐 閣,2004)等を参照。著者もこれに倣う。MARTHA,64.なお、広部・後掲注82)149頁は、 この点につき反対意見のようである。. 一方、立法管轄権とは、「国内法令を制定して、一定の事象と活動をその適用の対象. とし、合法性の有無を認定する権襖」を意味する。山本・前掲書232頁。この点に関し ては、石黒・後掲注97)7頁も、併せて参照。. 5)これに閲しては、木村弘之亮「国際租税法の法源(一)・(二・完)」法研70巻7号1頁 以下(1997)・同70巻8号23頁以下(1997)を参照。. 6)我が国の租税法令から例をあげると、所得税法161条・法人税法138条が定める国内源 泉所得を非居住者・外国法人が有するとき、当該非居住者・外国法人は当該所得につき、 我が国において納税義務を負う。. 7)これに閤しては、井上ほか・後掲注86)を参照。なお、租税条約の役割に関しては、 さしあたり、K VoGEL, KLAus VoGEL ON DouBLE TAxATIotsT Cor“ivEN± Tlo! s 9−76(3rd. ed. 1997)を参.照。. 8)山本・前掲注4)53頁は、国家実行として、外交書簡、政策声明、法制意見、新聞発表、 判決、国内法令、行政機関の決定・措置、条約その他の国際文書の受諾、条約草案に対 する回答などをあげている; 9)M,XRTiIA,1.例えば、宮武敏夫『国際租税法』1頁以下(有斐閣.1993)は、国際租税法を、. 254.
(23) [書評]国際租税法における立法管轄権の意義. 国際取引に閲する租税法と定義している。. 10)MARTHA 1.租税分野における一般国際法の機能として、著者はこれ以外にも、①租税条 約を通じて国際的二重課税を排除し租税回避に対抗するための枠組みの提供、及び③国 際的租税協調の制度化、の二点をあげている。id.. 11)著者は、一般国際法が国家管轄権に与える影響が、法分野に応じて変容することはない という。故に、租税管轄権という言葉を用いる上では、国家管轄権を租税法との関連で 検討していることを意味するに過ぎない、としている。丑at 66. 12) Itゴ. at 2,. 13)木村・前掲注5)・「法源(一)」6頁は、「一般的国際公法の対象となる分野は、国際租税. 法以外の法分野におけるよりはるかに小さい」としている。近時の研究では、一般国際 法の租税問題における影響を、執行管轄権に限定して見る見解がある。中里実「課税処 分における契約の尊重」租税研究708号95頁(2008)。. なお、奥脇直也「国家管轄権概念の形成と変容」山本草二先生古稀記念『国家管轄権 一国際法と国内法一』3頁(勤草書房、1998)は、国際法の分野において、国家管轄施 の問題の扱いが極めて多様であることを指摘している。すなわち、教科番の中には、国 家管轄権の問題を、申心的に位置付けるものもあれば、全く取り扱わないものもあると いう。 14)MARTHA,2, 15)ld.. 16)岩沢雄司「嚇法と国内法の囚係」小寺彰ほか詔麟国麟』98頁(椴閲’2〔醐 及び小寺彰『パラダイム国際法一国際法の基本構成一』47頁(有斐閣,20田)を参照。 17)もっとも、国際法が国内的効力を有するための諸要件は、各国の憲法規範の規律対象で. ある。山本・前掲注4)91頁。国際法優位の一元論の下でも、国内法が、国際法に反す ることを理由に、当然のごとく無効となる訳ではないe小寺・前掲注16〕49頁を参照。 18)後掲注71)を参照。. 19)岩沢・前掲注16)97頁以下。 20) M4RTHA,2,. 21)ld. at 4、 9者は、国家主権が対等であるという前提から・「対等なものどうしの問では相. 互に支配権をもたない」(この法諺に関しては、山本・前掲注4)252頁を参照。)という 原理原則を演縄した場合の例をあげている。 22)MARTHA,5,ここで著者が用いている用語は、 the enforcement jurisidictionである。山本・. 前掲注4)232頁は、これに「強制管轄権」という訳語をあて、執行管轄権と司法管轄 権とを包含する概念としている。 23)MtLIRTIIA, 3.なお著者は、国家実行のうち、演纈的に導出した規範と整合するものの、慣. 習としての要件を充足していないものについても言及している。かかる国家実行は宣君 255.
(24) 描浜国際経済法学第18巻第1Vf{2009年9月). 的(declaratory)であり、演縄的に醇出した当該規範を確認する効力を有するという。 Ia「. at 6,. 24)ld. at 7.原文ママ。これ以外の箇所では、 attributeとなっている。. 25)「租税闘題において国際法が果たす機能に閤する消極的見解」と題する第1節。 26)「租税管轄権の根拠に関する諸説」と題する第2節。 27)lvl.9tRTHA, 23,これは、 Kelsen主導のウィーン法学派の考え方を採用した結果である、と 著者は説く。. 28)「国際法の本質的機能」と題する第3節。 29) ]VIARTI・IA,2324.. 30)ここで著者は、国際法と国内法とが同一の水準にあること、及び、国際法が国内法に委 ねた権限は、国内法固有の権限として適用となることを確認している。Id. at 25.. 31)厄著者はここで、合法性如何の判断の対象とはならない事実(f・・t・)を醐している・ 1ζf,at 25−27.. 32)「租税問題における国際法の機能の認識」と題する第4節。 33)著者はここで、1〈elsenを引用している。 MARTHA,3a. 34)国際法が何らかを明示的に規律している場合においては、国内法秩序は当該国際法上の 規範を執行するのみである。もっとも著者は、何が国内法の管轄に属するのか、国際法 は定めていないことから、こ;で言う国際法の有効性は、潜在的に無制限である、とし ている。ld. at 36.. 35)「管轄権の基本的構想」と題する第5節。 36)著者はここで、常設国際司法裁判所のローチェス号事件(1927年)との関係で、.議論を 展開している。MARTHA, 38−41.同事件に関しては、さしあたり、奥脇直也「判批」山本 草二ほか編『別冊ジュリスト国際法判例百選』42頁以下(有斐閣, 2001)等を参照。. 37)「租税管轄権の概念的前提」と題する第6節。 38)「国際租税の基礎的要素」と題する第7節。. 39)著者はここで、法人の所得に対する課税に言及している。多くの国内法は、法人に対す. る課税を、物税として性質付けしている。かかる性質付けを尊重すれば、法人の未分配 所得に対し当該法人の株主に課税することにつながる。一方、法人の有する独立した人 格を根拠に当該法人自体を課税対象とすれば、当該課税は人税(personal taxes)として の性質付けを有する。MARTHA,54’55r’. 40)MARTHA,53.なお著者は、外国人居住者に無制限納税義務を課すことを正当化する根拠 として、客観的属地主義(objective territoriality)をあげている。これによれば、自国. の領域外で発生しつつ、自国の領域内に影響を与える事象に対して、国家が管轄施を行 使することができるという。もっとも、これでは、自国の外に源泉が存在する未分配の 所得に対する課税を正当化することはできない、という。ちなみに著者は、客観的属地. 256.
(25) […!『評]国際租税法における立法管轄権の意義. 主義との閲連で、前出のローチェス号事件に触れている。Id.52.. 41)山本・前掲注4)150頁は、国際組織がその目的と任務に対応して有する権利能力のこ とを、機能的な能力(fun,ti。nal・capacity)と呼称している・鍬においても・この呼称 を採用した。. 42)「国際法における管轄権の概念と租税に関する立法管轄権の概念」と題する第8節。 43)「国民に対する課税:対人主権」と題する第9節。 44) M,YRTHA,69.. 45)そもそも法人が国籍を有することが可能か否かに関し、著者は、肯定的見解が多数を占 めるようになってきた、と説く。」ld. at 7379.. 46)これとの関係で著者は、自然人又は個人の国籍の選択により、各国における課税上の取 り扱いがi変〕更を受けることはない、と説く。ld. at 79・8L. 47)「外国人に対する課税:領土主権」と題する第10節。 48)「結合」という言葉は、本書のlinkという言葉(M・XRTHA, 90.)と対応させている。なお著者は、. これとの関係で、水兵をはじめとした、いわゆる動的な(ambu!ant)外国人にとっての 居住地に関する検討を行っている。Id. at 91・92.. 49曙者は、これとの関係で澗立地及び類的管理蹴法人の離地を判定する際に各 国が採用している種々の規準に閤し、検討している。ld. at 9Z93.. 50)著者は、これ以外にも、代理ノ・e)存在如何・米国法におけるr営業又劇劇の成立・ 船舶や航空機に関連した利得を巡る課税に関L、議論を展開している。ld 9598.. 51曙者はこi・・tの1贈で融繊務者の所得蹴地に関す麟紐行・・辿該所得激 地が課税上の副次的住所に該当し、経済的連結が存する可能性を検討している。td、 at lo9lo+. 52曙者はこれとの1蠣で醐脇・関しては、当該9hpgの疏肱そのt±向地やその持ち. 主の住所地に振り分けるような特別国際法が存在することがある、としている。fd. at 103.なお、無形資産に関しては、その証書の所在地を原則として重視すべきとしつつ、. 当灘書の所在地とぱ該1軸・に基因する所得の繊地とが轍しな・’場合もあること を指摘している。ld. at 1G6−OS.. 53〕「外国人に対する課税:機能的主権」と題する第11節。. 現欄条約の邦訳として、田臓二郎ほか蹴代劇ベーシ・ク条糸躁第2職魍以 下(束信堂.2000)を参考にした。 55)著者は、条約法に閏するウィーン条約の31条1項が、条約を解釈する上で、文脈により、. その趣旨.剛に照らすべL.と定めてv・ることを指摘する・その上で・大vsamにINS る条約が鵡三国の酬にk’e.llEを及ぼすことを・解釈の上で考慮しなければならない・ としている。MARTRA, n{ 20.. 56)著者は、探査・採取を除けば、沿岸国以外の国も大陸棚においてH由に活動することが 257.
(26) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). できるので、沿岸国の主権的権利を、それ以外の国の権利との相関関係の中で捉える必 要があることを説く。Jd. at 126.. 57)同条約の邦訳として、田畑ほか・前掲注54)244頁以下を参考にした。 58)「租税管轄施の競合を原因とする国際的二童課税」と題する第12節。著者は、法的な分. 析に専念するために、経済的二重課税は取り扱わない、としている。MART賦143 59)著者は、以下のような例をあげている。ある者がA国の国民である一方でB国の居住者 でもある場合、両国共に当該者と属人的連結を確立することができる。その結果、両国 共にs当該者の全所得に課税することができる。ld. at 141−42.. 60)著者は、使用料が、その債務者の居住地国において源泉課税を受けるのと同時に、当該 使用料の基因となる著作権の開発国においても課税を受けるという場合を、例としてあ げている。丑d,at 143.. 61)著者は、以下の二つの例をあげている。」ゴ.at 143−44.. (1)専ら属人的連結が問題となる局面. ある国の国民又は居住者である芸能人が、別の国で芸能活励を行い、そこで所得を 得る場合。. {2)経済的連結が問題となる局面. ある固の国民又は居住者である投資家が、別の国で投資活動を行い、当該投資活動 を通じて所得を得る場合。 62)これ以外にも、先の深海底における活動に関し、課税上の主たる住所の無制限納税義務と、 国際海底機構の制限納税義務が競合する例を、著者はあげている。Id. at l45.. 63)「一般国際法の不完全性を原因とする国際的二重課税」と題する第13節。 64)これとの関連で、著者は、法人の二重居住を分析している。MARTHA, 15355.. 65)「租税管轄権の違法行使を原因とする国際的二重課税」と題する第14節。 66)これとの関係で、著者は、以下の二つの例をあげている。MiNRTtlA,ユ57S5.. (1)非居住外国人問で支払い・受領の対象となった配当に対し、自国内に当該配当の源 泉の一部が存在することのみを理由に課税すること。. (2}ある製品の自国外での売却から生じる所得に対し、当該製品の原料の購入が自国内 であったことのみを理由に課税すること。 なお著者は、これらに加え、ドイッ連邦共和国の機関理論(Organ theory)カξ、国 家管轄権の違法行使に該当すると説く。ld. at 17479.. 67〕著者は、同条約の締約国でない国は、当該管軸権を有さないことを強調している。ld. at 166.. 68)山本・前掲注4)231頁。 69)島田征夫「国家管朝権と国際的管轄権一国際機構管粗権試論一」山本草二先生古稀記念『国. 家管轄権一国際法と国内法一』630貰(勤草書房,1998)。. 258.
(27) 隈詞国際租税法における立法管軸権の意義. 70)プラウンリー・後掲注94)97頁以下は、f通常の国家の権利の総体、すなわち法的権能 の典型的な場合が、一般に『主樹と表現される。これにたいし、特定の権利あるいは 標準よりも量的に少ない権利の集積は、『管轄権1と、呼ばれる。」としている。 71)学説の分岐に関しては、水野忠恒『国際課税の制度と理論』4頁以下(有斐閣,2000)を参照。. JJEFFERY. Tl・IE]遍1PAcT OF STATE SovEREIGNTY ON GLoBAL TRADE A胸INTERNAT[oNAL. TAXATION 25(1999)は、本・書に多くを負いつつ、本書とほぼ同様の立場から、国家の. 課税権には限界があることを指摘している。なお、本浪章市『英米国際私法判例の研究 国際租税法序説」20頁(関西大学出版部,1983)は、「課税描は各国主権の属性であ. り、その附帯する主権と同延的であるという以外に、国際法は殆ど何も語らないので ある。」(脚注省略)と述べつつ、「普遍的国際公法が適当な明確さをもって、国際的な. 意味で、諸国がその統治機能を行使しうる限界を設定し、一国課税管轄権の及ぶ範囲、. 即ち、一国租税法の適用範囲を限定していることについては疑いの余地はない。」とし. ている。同118頁。他に課税権に一般国際法上の制限があることを指摘したものとし. て、A.n。ld and Weeghel,㎜皿A皿0蝋㎜BET匝㎜mx m幽唖AM) DOAalZSTIC ANTI−ABUSE A4E 4SUIZES, in 2 EC AND工NTERNATエoNAL TAx LAw SERIEs: TAx TllEATIES AND DoMEsTlc LAw 81, 90(G. Maisto ed 2006). なお、Norr, Jurfsdiclon£to Taxr且nd in ternanbna1 income、17 TAx L REv.43L 431(1962). は、掴離上のいかなる酬も、国家の租税管轄権の鯛を制限することはない・」と 述べている。同稿は、租税管轄権に制限がないことを論じた代表的な先行業績として、 本書(MARTHA,12 n. 27.)をはじめ、他の論者(水野・同4頁)も引用している。もっとも、. 同稿はすぐ後で、「国家は、自己の法的及び財政的枠組みの中で(within its own legal and fiscal framew。rk)、租税管轄権に閏しいかなる規範を採用しようが自由である。」と・. も述べている(この点に関しては、 MARTHA. 12も参照)・ここで鴻・里実「国際租税法. 上の諸問題」総合研究開発機構編『企業の多国籍化と法1 多国籍企業の法と政策』97. 頁以下(三髄,1986)や鰍・前掲注9)3頁が、N・rrの前掲蹴との1vameで・国家 は自国の主権の及ぶ範囲内で自由に課税権を行使できる、と主張していることに注目し たい。課税権の行使が国家の主権の範囲内に限るとする点では、まさに本害の視座と軌 を一にすると言えよう(すなわち、「自由に」ではなく、「主権の及ぶ範囲内で」に重点. を置いて読むのである)。Norrの同稿に関しては、石黒一憲「連載 ボーダーレス・エ. コノミーへの法的視座第175回 国際課税と抵触法(国際私法)[申一4]」貿易と関 …税54巻1号63頁(2006)も併せて参照。なお、Norrの1司稿(432頁)も、租税管轄権 の行使の際には、国家と納税義務者・課税対象所得との間に、何らかのつながりが必要 である、と述べていることにも注目しておきたい。 ちなみにBruggen, State Resρonsibility under Customat y丑Tternatrbna∫ La vv in n4atters. 。f蹴蜘。。d伽伽、P,幽。。.29麺・ERTAX 115, 121・.61(2001〕は・本階引1破 259.
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