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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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main : 2016/2/20(9:31)

はじめに

「素粒子にはたくさん良い教科書があるので,今更私が書くことなど無いか な」と,このお話を頂いたとき少し考えて込んでしまった.教科書なので,わ かったことを,数式を使って正確に書き,厳密に伝えることが大切である.し かし,基礎科学は研究の時間スケールが長くなったので,教科書で伝える,厳 密にわかっていることが,カビ臭くなってしまう弊害もある.研究の現場はエ キサイティングで,新しい展開が次々に起こっていても,残念ながら大学生に は伝わっていない.第 4,5,6 章は最新の素粒子研究である LHC でのヒッグ ス粒子研究を実験に重心をおいてまとめた.特に LHC 加速器や ATLAS 検出 器などの実験装置の入門も加えてある. これでおしまいにしたら,わかったことでおしまいになってしまう.これか ら大学院進学や卒業研究を考えている大学 3,4 年生に,これからどんな風に素 粒子研究が進んでいくかの「私観」を伝えてみようと思って引き受けた.一人 の男が,産を破り心を狂わせてまで生涯執着したところのモノが何なのかを伝 えてみたく思っている.“私”とすると何か限定された危ないシナリオだと思う かもしれないが,シナリオの終着点がどこなのかは個人差があるが,このシナ リオは多くの研究者が思い描いているものである. 東京大学の物理学科 4 年生に素粒子物理学の授業をしている.心がけている のは,難しい数式より感覚に訴えて理解してもらうことである.今回も,この 方針で,感覚を重視して話を進めている.厳密さには欠けるが,物理学は数学 的な証明ではなく実験事実である.実験事実を中心に第 4∼6 章を組み立て,そ れがどんな風に展開していくかを第 7 章以降に展開した.第 7 章では,ヒッグ ス粒子の発見がただの新粒子発見なのではなく,宇宙論や次の素粒子研究の方 向を決める重要なものであることをまとめている. 言わばヒッグス粒子発見の 本当の意味であり,ここまではおおざっぱに確立した話である. 一方,第 8 章 はこれから期待される展開であり,まだ確立した話ではない. そこを意識して

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main : 2016/2/20(9:31) iv はじめに 読んで頂きたい. 第 2,3 章は,素粒子の基礎原理でヒッグス粒子や超対称性粒子に関係する箇 所を選んでいる.なぜ第 7,8 章のような展開になるのか?その基礎は,こんな ところにある.それがわかってもらえるようにした.授業の資料を基本にして いる.少し数式が出てくるがご愛嬌である.物理に限らず,実験は総合力であ る.これまでいろいろ実験・研究してきて,いろいろ感じたことを,授業の雑 談にしている.所々に小話が入っているのはそれである. これから数年,LHC のエネルギーが倍増され新しい発見が期待できる.この 本に書いた通り展開するかもしれないし,またまた別のサプライズがあるかも しれない.どっちに転んでも新しい世界が広がってくれることだろう. 約束の期限を 1 年以上過ぎてしまって,多くの方に,御迷惑をかけてしまっ たが,最後まで,粘り強く進めて下さった編集制作部の島田さんには,心から 感謝したく思っております.こうして出版にこぎつけたのも,島田さんのお陰 です.また,岡先生には何度も御相談に乗っていただきまして,本当に有難う ございました.さらに本書のテーマであるヒッグス粒子の発見に大きな貢献が できたのは,アトラス日本グループや東京大学素粒子物理研究センターの皆様 のお陰です.この場を借りまして改めて感謝したく思います.         2016 年 2 月 浅井祥仁

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