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は じ め に

近年、地球環境問題等を背景に、石油に比べ環境負荷が少ない天然ガスの需要が増加 しつつある。

生産地から需要地までの輸送は、パイプラインまたは液化天然ガス(LNG)による 方法が一般的であるが、パイプライン敷設、消費地での再ガス化設備等受入施設に対し 多額の投資が必要であり、これまで大規模な需要地でのみ事業化が可能であった。

最近再ガス化装置を搭載するLNG船(LNGRV)が開発され、LNG輸送に使用する ほか、消費地での天然ガス供給に使用しようとする動きが現れ始めている。LNGRV は、

陸上に再ガス化設備がなくともLNGを再ガス化し荷揚げができることから、陸上基地 の新設や増設ができない地域においても天然ガスの供給が可能であり、また、陸上施設 等に対する多額の投資は不要であることから、需要量が少なくとも事業化が可能である と思われる。また、海上における再ガス化専用施設として、浮体式LNG貯蔵再ガス化 施設(FSRU)や浮体式移送再ガス化施設(FTRU)も検討されている。

実用化にはいたっていないが、浮体式液化ユニットとLNGを輸送するシャトルタン カー、LNGを荷揚げ、再ガス化し、地元市場の送ガスシステムに送り込む浮体式再ガ ス化装置で構成される小型短距離LNG輸送システムも開発されている。

このようなプロジェクトは今後各地で検討されると思われる。そこで、本調査では、

洋上液化施設及びLNGRV等の現状と展望を整理するとともに、浮体式 LNG受入基地 を使用する場合について、LNGRV等及び輸送用LNG船の要件、必要隻数等プロジェ クトの全体像を想定し、フィージビリティ等の検討を行った。

また、巻末に、圧縮天然ガス(CNG)プロジェクトの現状と展望を整理したものを 付録として収録した。

本調査が関係各位のご参考に資することができれば幸いである。

ジェトロ・ニューヨークセンター船舶部

(社団法人日本中小型造船工業会共同事務所)

ディレクター 小濱 照彦 シニアリサーチャー 氏家 純子

(4)
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目 次

1. LNG 概 観

1.1 LNG 需 要 ··· 1

1.2 LNG 生 産 能 力··· 2

1.3 受 入 タ ー ミ ナ ル 設 備 能 力··· 3

1.4 ス ト ラ ン デ ィ ド ・ ガ ス 貯 留 層 ··· 4

2. 浮 体 式 天 然 ガ ス 液 化 プ ラ ン ト 2.1 天 然 ガ ス 液 化 プ ラ ン ト ··· 5

2.2 液 化 プ ロ セ ス··· 6

(a)カ ス ケ ー ド 方 式 ··· 7

(b)混 合 冷 媒 方 式 ··· 8

(c)エ キ ス パ ン ダ ー ・ プ ロ セ ス··· 10

シ ス テ ム 比 較··· 12

2.3 浮 体 式 天 然 ガ ス 液 化 プ ラ ン ト ··· 13

Shell FLNG ··· 13

FlexLNG ··· 14

Excelerate EBLV ··· 16

SBM/Linde EBLV ··· 16

Hoegh FLNG ··· 17

Bluewater FLNG··· 18

BW Offsore FLNG ··· 18

ConocoPhillips FLNG ··· 19

Saipiem FLNG ··· 20

Teekay FLNG ··· 20

Golar FLNG ··· 21

Sevan FLNG ··· 21

Technip FLNG ··· 22

Hamworthy FLNG ··· 23

2.4 問 題 点 と 制 約··· 24

プ ラ ン ト の 規 模 と 重 量 ··· 24

プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 安 定 性··· 24

安 全 性 ··· 25

個 々 の ガ ス 田 に あ わ せ た ト ッ プ サ イ ド 設 計 ··· 25

環 境 上 の 反 対··· 25

格 納 シ ス テ ム··· 26

積 み 出 し の 制 約 ··· 26

2.5 将 来 の 浮 体 式 天 然 ガ ス 液 化 プ ロ ジ ェ ク ト··· 26

Prelude/Concerto ··· 27

Sunrise ··· 27

(6)

Echuca Shoals ··· 27

Kitimat··· 27

Bonaparte ··· 28

Santos Basin ··· 28

Minza ··· 28

3. 浮 体 式 再 ガ ス 化 施 設 3.1 再 ガ ス 化 プ ロ セ ス ··· 29

オ ー プ ン ラ ッ ク 方 式 ··· 30

サ ブ マ ー ジ ド ・ コ ン バ ス チ ョ ン 方 式 ( 水 中 燃 焼 方 式 ) ··· 30

シ ェ ル ・ ア ン ド ・ チ ュ ー ブ 方 式 ··· 31

大 気 加 温 気 化 方 式 ( ア ン ビ エ ン ト ・ エ ア 方 式 ) ··· 32

3.2 浮 体 式 再 ガ ス 化 貯 蔵 施 設··· 33

(a)FSRU—Floating Storage and Regasification Unit Golar LNG ··· 34

Broadwater Energy ··· 36

Blue Ocean ··· 37

BHP Cabrillo Port ··· 38

SBM ··· 39

(b)LNGRV―LNG Regasification Vessel Ecelerate ··· 40

Hoegh ··· 45

(c)FTRU―Floating Transfer Regasification Unit Torp ··· 46

3.3 問 題 と 制 約··· 47

オ ー プ ン ル ー プ 方 式 に 対 す る 反 対 ··· 47

NIMBY ··· 48

マ ー ケ ッ ト リ ス ク ··· 48

3.4 今 後 の 再 ガ ス 化 プ ロ ジ ェ ク ト ··· 48

ロ ン グ ア イ ラ ン ド 湾 ( 米 )··· 48

ニ ュ ー ヨ ー ク ・ ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー ( 米 ) ··· 49

ビ エ ン ビ ル ( 米 ) ··· 49

ポ ー ト ・ エ ス ペ ラ ン ザ ( 米 ) ··· 49

ブ ラ ジ ル ··· 49

Falconara( イ タ リ ア )··· 49

Gioia Tauro( イ タ リ ア ) ··· 50

Adriatic( イ タ リ ア ) ··· 50

キ プ ロ ス ··· 50

North Sumatora( イ ン ド ネ シ ア )··· 50

そ の 他 ··· 50

(7)

4. 短 距 離 LNG 輸 送 ・ 再 ガ ス 化 ケ ー ス ス タ デ ィ

4.1 LNG 輸 送 / 再 ガ ス 化 供 給 チ ェ ー ン の 概 観··· 51

4.2 ケ ー ス ス タ デ ィ 1: ト リ ニ ダ ー ド ― ジ ャ マ イ カ ··· 51

プ ロ ジ ェ ク ト の 背 景 ··· 51

FSRU ··· 52

輸 送 要 件 ··· 53

LNG 船 ··· 54

ガ ス 流 通 ··· 54

総 合 評 価 ··· 55

4.3 ケ ー ス ス タ デ ィ 2: ト リ ニ ダ ー ド か ら 東 カ リ ブ 海 諸 国 へ··· 57

プ ロ ジ ェ ク ト の 背 景 ··· 57

世 界 銀 行 の 評 価 ··· 57

LNG 供 給 チ ェ ー ン の 可 能 性··· 59

総 合 評 価 ··· 60

4.4 そ の 他 の LNG 供 給 チ ェ ー ン の 可 能 性··· 63

マ サ チ ュ ー セ ッ ツ か ら プ リ ン ス エ ド ワ ー ド 島 ··· 63

ト リ ニ ダ ー ド か ら ユ カ タ ン 半 島 ··· 63

南 米 東 海 岸··· 63

南 米 西 海 岸··· 63

Kitimat か ら 米 西 海 岸··· 64

附 録 「 CNG 海 上 輸 送 プ ロ ジ ェ ク ト の 動 向 」 1. CNG 輸 送 の 概 要 ··· 67

2. CNG 船 の 設 計 2.1 EnerSea Transport ··· 71

2.2 CETech ··· 75

2.3 Knutsen ··· 75

2.4 SeaNG ··· 77

2.5 Trans Ocean Gas ··· 79

2.6 TransCNG/Floating Pipeline Company ··· 80

3. CNG 海 上 輸 送 プ ロ ジ ェ ク ト 3.1 エ ジ プ ト か ら ク レ タ ··· 83

3.2 ト リ ニ ダ ー ド ・ ト バ ゴ か ら ジ ャ マ イ カ··· 83

3.3 サ ハ リ ン 島 か ら 北 東 ア ジ ア··· 83

3.4 Dai Hung か ら ベ ト ナ ム 沿 岸··· 83

3.5 タ ン ザ ニ ア か ら モ ン バ サ··· 83

3.6 ミ ャ ン マ ー か ら イ ン ド ··· 84

3.7 カ ナ ダ 東 海 岸 沖 か ら 米 国 北 東 部 ··· 84

3.8 オ ー ス ト ラ リ ア か ら ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド··· 84

3.9 Melkoyaか ら ノ ル ウ ェ ー 沿 岸··· 84

(8)

3.10 そ の 他 の CNG 輸 送 の 可 能 性 ··· 84

4. 問 題 と 障 壁 4.1 プ ロ ジ ェ ク ト の 実 現 可 能 性··· 85

4.2 プ ロ ジ ェ ク ト ・ リ ス ク ··· 88

4.3 技 術 の 不 確 実 性··· 88

4.4 安 全 性 の 問 題··· 88

4.5 シ ス テ ム コ ス ト の 不 確 実 性··· 89

4.6 プ ロ ジ ェ ク ト 開 発 者 の 力 不 足 ··· 90

4.7 強 力 な 競 争 相 手··· 90

5. 将 来 の CNG 船 建 造 の 可 能 性 5.1 背 景 と な る 市 場 推 進 力 ··· 91

5.2 CNG 船 の 発 注 予 測··· 92

(9)

1.LNG 概観

世界の L N G の供給チェーンは、( 1 )炭化水素貯留層からの天然ガス採取、( 2 )採取場 所またはその近辺での天然ガス処理、液化、貯蔵、( 3 )専用のタンカーによる L N G の 海上輸送、( 4 ) L N G 船から受入ターミナルへの L N G の荷揚げ、( 5 )受入ターミナルに おける再ガス化、貯蔵、( 6 )消費者へのパイプライン輸送、の 6 つの段階で構成されて いる。

天然ガス 採取

処理 液化 貯蔵

海上輸送 受入 ターミナル

での荷揚

再ガス化 貯蔵

消費者への パイプライ ン輸送

本報告書では供給チェーンの液化及び再ガス化の段階に焦点を当て、現在計画中、ま たは進行中のプロジェクトのうち浮体式施設の採用が予定されているものを概説する。

まず L N G セクター全体を概観する。

1.1 LNG 需要

L N G 需要は急速に成長している。米国の調査会社であるウッド・マッケンジーによ

れば、世界の L N G 需要は過去 1 0 年間に 1 3 0 %以上増加した。図表 1 に示すようにヨ ーロッパと北米において特に顕著な需要増加がみられる。2 0 1 0 年から 2 0 1 5 年の間に

L N G 需要はさらに 3 7 %成長すると予測されており、北米において最も急速な成長が見

込まれている。

図表 1 世界の LNG 需要予測

0 10 20 30 40 50

2000 2005 2010 2015

南米 0 0 0.4 0.5

北米 0.6 1.8 2.7 8.1

ヨーロッパ 3.3 4.8 10.6 13.2

アジア太平洋. 9.7 12.1 17.7 21.1 単位:Bcf/d

出典:G o l a r L N G / W o o d M a c k e n z i e

(10)

1.2 LNG 生産設備能力

ウ ッ ド ・ マ ッ ケ ン ジ ー に よ れ ば 、 世 界 の L N G 生 産 設 備 能 力 は 2 0 0 5 年 の 1 4 6 . 8 M T P A1から 2 0 1 0 年には 2 4 8 . 6 M T P A と 5 年間で約 6 9 %拡大すると予測されて い る2。 この 期 間には 、 カター ル で大型 L N G 液 化 プラン ト が試運 転 を開始 し た こと を 反映して、中東における L N G 生産設備能力が大幅に拡大している。2 0 1 0 年以降の 5 年 間 に 世 界 の 天 然 ガ ス 液 化 能 力 は さ ら に 4 0 %拡 大 し 、2 0 1 0 年 の 2 4 8 . 6 M T P A か ら

2 0 1 5 年には 3 4 8 . 8 M T P A に達すると予測されている。大西洋地域では 4 5 . 5 M T P A

の L N G 設備能力の生産開始が予定されており、2 0 1 0 - 2 0 1 5 年には同地域で著しい生

産能力の拡大がみられると考えられている。現在の L N G 生産 設備能力は約 3 6 %が太 平 洋 沿 岸 地 域 、3 3 %が 中 東 、3 1 %が 大 西 洋 沿 岸 地 域 に 分 布 し て い る 。2 0 1 5 年 に は

3 6 . 5 %が太平洋沿岸、2 8 . 5 %が中東、3 5 %が大西洋沿岸となると予測されている。

図表 2 LNG 生産能力予測

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 太平洋 66.6 67.7 67.4 68.6 82.3 90.7 95 94 95.2 110.7 127.8 中東 34.2 40.9 45.2 45.5 58.2 81.9 95.8 99 99.3 99.5 99.5 大西洋 46 58.1 63.8 71.1 73.1 76 78.9 83.1 91.2 107.8 121.5

0 50 100 150 200 250 300 350 400

太平洋 中東 大西洋

単位:MTPA

S o u r c e:G o l a r L N G / W o o d M a c k e n z i e

1 M T P A : m i l l i o n t o n s p e r a n n u m( 年 間 百 万 ト ン )

2 2 0 0 9 年 以 降 の 数 字 は 予 測 値

(11)

1.3 受入ターミナル設備能力

世界の L N G の受入設備能力は過去 5 年間に著しく拡大した。受入ターミナルの設備 能力は 2 0 0 5 年の 4 4 . 1 B c f / d(十億立方フィート/日)から 2 0 1 0 年には 7 6 . 9 B c f / d と 5 年 間 で 7 5 %拡 大 す る と 推 定 さ れ て い る 。 大 部 分 は 大 西 洋 市 場 に お け る 受 入 能 力 の 拡 大を反映したものであり、2 0 0 5 年から 2 0 1 0 年の間に受入設備能力は 3 倍以上に拡大 する見込みである。大西洋市場全体の L N G 需要が成長しており、この需要に対応する

ために L N G 受入能力の拡大が必要となったものである。

浮体式再ガス化プラント開発の旗頭であるノルウェーの G o l a r L N G は、2 0 1 5 年に

世界の L N G 受入能力はさらに 2 9 %拡大し 9 9 . 0 B c f / d に達すると予測している。今後

も引き続き大西洋市場が受入ターミナル設備能力拡大の主たる推進力となると考えられ る。大西洋地域では 2 0 1 0 年から 2 0 1 5 年の間にターミナル処理能力が 3 7 %拡大する と 予 測 さ れ て い る 。 一 方 、 太 平 洋 市 場 で は 同 時 期 に 2 2 %の 拡 大 が 見 込 ま れ て い る 。

2 0 1 5 年に L N G 受入ターミナル設備能力は大西洋地域と太平洋地域でほぼ均等になる

と予測される。2 0 0 5 年には太平洋地域が L N G 受入設備能力の 7 5 %を占め、大西洋地 域が占める割合は 2 5 %にすぎなかった。

図表 3 LNG 受入ターミナル能力予測

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 太平洋 33.2 34.2 34.4 35.9 38.8 40.8 41.6 44.3 47.1 48 49.7 大西洋 10.9 13.9 16.5 21.8 33 36.1 38.8 42.1 45.4 48.1 49.3

0 20 40 60 80 100 120

単位:Bcf/d

太平洋市場

大西洋市場

S o u r c e:G o l a r L N G / W o o d M a c k e n z i e

(12)

1.4 ストランディド・ガス貯留層

L N G プ ロ ジ ェ ク ト を 手 掛 け る 大 手 エ ン ジ ニ ア リ ン グ 建 設 会 社 で あ る C B & I L u m m u s( シ カ ゴ ・ ブ リ ッ ジ ・ ア ン ド ・ ア イ ア ン ・ ル ー マ ス ) 社 は 世 界 に 1 0 0 T c f

(兆立方フィート)の随伴ガスと 1 , 2 0 0 T c f の非随伴ストランディド・ガス(既発見未 開 発ガ ス) 貯留 層が存在 する と推算し てい る。 これ らの 貯留 層は 6 , 4 0 0 カ所を超える ス ト ラ ン デ ィ ド ・ ガ ス田に散在 し て お り 、埋蔵量 0 . 1 T c f に満た な い限界 ガ ス田か ら

1 0 0 T c f の超大型貯留層に至るまでその規模は千差万別である。これらのガス田はほ と

んどオフショアに存在し、陸からの距離が長い、需要のある市場から遠い、水深が深す ぎるなどの悪条件のため商業的に開発されていない。

図 表 4 に埋蔵量 別の ス ト ラ ン デ ィ ド ・ ガ ス田の 分 布 を 示 す 。前 述の よ う に埋蔵量

5 0 T c f から 1 0 0 T c f の超大型ガス田数カ所の他に大型液化プラント建設の対象となる規

模の 5 T c f から 5 0 T c f の間のガス田が 7 0 カ所ほど存在する。他方、大型液化プラント

建設の対象とならない埋蔵量 0 . 1 T c f 未満の小規模なストランディド・ガス田は 4 , 0 0 0 カ所近く存在する。新しい液化コンセプトを適用することにより経済的な開発の潜在的 可能性があるのはこれらの小規模なガス田であり、新コンセプトの一つが浮体式天然ガ ス液化施設(F L N G)である。オフショアのストランディド・ガスを F L N G で開発す る技 術、 及 び こ の技 術を 採 用 し て 進 め ら れ て い る プ ロ ジ ェ ク ト 、F L N G の 採 用 を 計 画 しているプロジェクトを次の章で取り上げる。

図表 4 埋蔵量別ストランディド・ガス田数

4 73

337 247

719 1043

3922

50-100 TCF 5-50 TCF

1-5 TCF 0.5-1 TCF 0.25-0.5

TCF 0.1-0.25

TCF

<0.1 TCF

フィールド数 大型液化プラント建設候補

浮体式LNGプラントによる開発の候補

天然ガス1 TCF=LNG2,080万トン

出典:I n f i e l d

(13)

2.浮体式天然ガス液化プラント

天然ガスの液化の歴史は 1 9 世紀にさかのぼる。マイケル・ファラデイによりガスの 液化技術が実証され、最初の実用的なコンプレッサー冷却装置(冷蔵庫)がカール・フ ォン・リンデにより 1 8 7 3 年に製造された。L N G 生産設備は 1 9 1 7 年に米国のウエス ト・バージニアで天然ガス液化プラント(L N G プラン ト)が運転を開始、初めて そ の

有効性が実証された。L N G 技術の実用化の歴史は 1 9 4 0 年代にオハイオ州クリーブラ

ンドの L N G プラントの運転開始にさかのぼる。L N G の商品としての輸出は 1 9 5 0 年

代末に L N G がメキシコ湾から英国に初めて輸送されたことに始まる。1 9 6 4 年に大型

L N G 輸出プ ラ ン ト第一号で あ る A r z e w プ ラ ン ト が ア ル ジ ェ リ ア で英国 市 場向け に

L N G 生産を開始し、現在の世界の L N G 供給チェーンの先駆けとなった。

2.1 天然ガス液化プラント

現在運転中または建設中の L N G プラントは世界 1 8 カ国に 4 4 カ所存在する。これ らは中東に集中しており、現在運転中または建設中のプラントのうち 1 1 カ所が中東に ある。中東の L N G プラントはすべて陸上施設である。現在稼働している F L N G は存 在しないが、複数の F L N G プロジェクトが工学設計(エンジニアリング)または建設 段階にあり、さまざまな F L N G のコンセプトが提案されている。

図表 5 現在運転中または建設中の LNG プラント 11

9 9

6

4

2 2

1

出所:O i l a n d G a s J o u r n a l

(14)

2.2 液化プロセス

天然 ガ ス3を約 マ イナス 162℃の極 低 温に冷 却 すると 常 圧でガ ス が液化 し 、液化 し た ガスは気体の 600 分の 1 の体積となる。天然ガス液化プロセスは原料ガスに随伴する コンデンセート(超軽質油)分離、酸性ガス除去(炭酸ガス、硫化水素等)、水銀除去、

脱水、極低温による液化からなる。

図 表 6 は ガ ス 前 処 理 と 天 然 ガ ス 液 化 プ ロ セ ス の 流 れ を 簡 単 に 示 し た も の で あ る 。 こ のフローチャートは LNG 生産に使用される全ての冷却プロセスにあてはまる。それぞ れのガス田に特有なガスの性質によりプロセス・フローの個々の要素の規模と複雑さが 変化し、不純物除去の順番が多少異なることもあるが、基本的な流れは同じである。最 終的にガスの液化が行われるのは深冷熱交換装置である「コールドボックス」内である。

これより前のプロセスは天然ガスから不純物を除去するプロセスおよび原料ガスを液化 するための熱交換に使用される冷媒を供給するためのプロセスであり、「コールドボッ クス」より後のプロセスは液化されたガスを貯蔵施設に送るためのものである。

スラグキャッチャー

気液分離装置 酸性ガス除去

設備 脱水設備 脱水銀設備

重質分除去設備 C5+

液化設備Cold Box

LNG貯蔵タンク 分溜・調整

コンデンセート 貯蔵タンク

冷媒設備 燃料ガス設備

ボイルオフガス

セー 冷媒として利用

原料天然ガス井戸元

ボイラ、ガスタ ービン、発電

設備等 燃料ガスとして利用

出典: J E T R O N Y 船舶部作成

3 天 然 ガ ス は メ タ ン を 主 成 分 と し 、 こ れ に 加 え て 少 量 の エ タ ン 、 プ ロ パ ン 、 ブ タ ン 、 窒 素 で 構 成 さ れ て

い る 。 メ タ ン の 含 有 率 は ガ ス 田 ご と に 異 な る が 、 一 般 に9 5 %を 超 え る 。 図表 6 天然ガス液化設備のプロセス構成例

(15)

天然ガスを L N G にするための液化技術は大別すると、カスケード方式、混合冷媒方 式、エキスパンダー方式の 3 方式がある。これらの 3 つの技術と F L N G への適用につ いて以下に論じる。

図表 7 主な液化方式の分類

液化方式 プロセス例

( a )カスケード方式 P h i l l i p s S i m p l e C a s c a d e

( b )混合冷媒(M R)方式 (ⅰ) 1 段階方式 A P C I A P - M S M R

B & V P R I C O S M R

(ⅱ) 2 段階方式 T e c h n i p T E A L A R C

L i n d e M F C L i n d e L I M U M (ⅲ)予冷方式 混合冷媒予冷方式 S h e l l D M R

プロパン予冷方式 A P C I C 3 M R L i n d e C 3 M R

( c )エキスパンダー方式 C B & I N i c h e L N G

M u s t a n g N D X (a)カスケード方式

カ ス ケ ー ド 方 式 は フ ィ リ ッ プ ス ・ペト ロ リ ウム社 ( 現コノコフ ィ リ ッ プ ス 社 ) が

1 9 6 0 年代に開発し、アラスカ州のケナイ L N G プラントで初めて使用された液化プロ

セスである。カスケード方式ではプロパン、エチレン、メタンを冷媒として原料ガスを 液 化 す る 。原 料ガ ス は温 度の異な る 3 種 類の純 物 質に よ り 段 階的に冷 却・ 液 化 さ れ る 。 第一段階はプロパンを冷媒とした熱交換である。原料ガスとの熱交換により気化した冷 媒(プロパン)はコンプレッサーにより圧縮され、空気または冷却水により冷却されて 熱交換装置に戻される。プロパンとの熱交換により「予冷」された原料ガスは、次にエ チレンを冷媒とする深冷熱交換装置(コールドボックス)に送られ、更に低温に冷却さ れ液化される。気化した冷媒(エチレン)は再圧縮されたうえ、プロパンを冷媒とする 熱交換装置を通過してさらに低温化され、エチレン・コールドボックスに戻される。液 化した高圧の原料ガスはさらにメタンを冷媒とするコールドボックスに送られ、さらに 極低温に過冷却されたうえで断熱膨張により常圧-1 6 2℃の L N G として貯蔵タンクに 送られる。原料ガスとの熱交換により気化した冷媒用メタンは再圧縮されたうえで、プ ロパン熱交換装置、エチレン熱交換装置を経由して冷却されメタン・コールドボックス に戻される。改良型カスケード方式では荷積み中の L N G 船及び L N G 貯蔵タンクから のボイルオフ・ガス4も冷媒の一部として利用されている。

カスケード方式は他の液化方式よりも効率がよく、動力原単位も少ないが、冷媒系が それぞれに独立した複数の冷凍サイクルを有するため、必要な機器数が多く、システム が比較的複雑であり、それぞれの冷媒に個別の貯蔵タンクが必要である。設備費が高く、

フットプリントが大きい(設備設置に大きな面積を必要とする)ため一般にカスケード 方式は大型 L N G トレイン(T r a i n)にしか適切ではないとされている。そのため、陸 上施設または大型の液化設備能力の浮体式システムに採用が限定される。本章に後述す

4 外 部 か ら の 自 然 入 熱 な ど に よ り 気 化 し た ガ ス

(16)

るように、コノコフィリップスはカスケード方式を F L N G 設計のベースとして検討し、

5 M T P A 以上の F L N G について実用化が可能だと考えている。

図表 8 カスケード方式プロセス構成例

出典:C o n o c o P h i l l i p s

(b)混合冷媒方式

混合冷 媒(M i x e d R e f r i g e r a n t) 方 式 は 一般に窒素 、メタ ン 、 エ チレン 、 プ ロ パ ン 、 ブタンからなる混合冷媒を使用する。混合冷媒は原料ガスの凝結曲線に対応した温度で 気化するように配合されている。混合される冷媒の構成比率は液化される原料ガスの組 成 に あわ せて 調整さ れ る 。深 冷 熱 交 換 装 置(コー ル ドボッ ク ス ) は 1 つ で あ る が 、複 数の気液分離装置(セパレーター)による冷媒分離を異なる温度で繰り返すことにより、

原料ガスの温度レベルを L N G 製造温度まで下げる。

混合冷媒方式はカスケード方式と比べて必要とする機器数、貯蔵システムは少なく、

プラントの設置に必要な面積が小さく、設備費も低い。また、混合冷媒の成分は原料ガ スに含まれていることが多く、分離回収により調達することができる。

混合冷媒方式は最初 S M R(S i n g l e M i x e d R e f r i g e r a n t)方式として 1 系列の混合 冷媒をのみを用いたものであったが、改良型としてプロパンを冷媒として原料ガスを予 備冷 却し ( 予冷) た う え で 、混合冷 媒を 用 い たサイ ク ル で 液 化 、 過冷 却が 行われ る C3M R(P r o p a n e P r e - c o o l e d M i x e d R e f r i g e r a n t)方式が開発された。

混合冷媒方式の難点は冷媒を正確に混合する必要があるため、運転開始(スタートア ップ)とプラントの安定に時間がかかることである。運転停止、再起動が頻繁に繰り返 されることが予想される場合、この点が非常に重要となる。また、可燃性炭化水素冷媒 を原料ガスから分離回収、または陸上から供給する必要があるため、オフショア運転で はこれが負担となる。さらに、オフショア液化施設では船舶の揺れにより液化熱交換装 置(コールドボックス)内で液体冷媒がシフトする可能性がある。

(17)

図表 9 シングル混合冷媒方式

出典:F o s t e r W h e e l e r

混合冷 媒方 式技 術の 主 力 は A i r P r o d u c t s a n d C h e m i c a l s , I n c .(A P C I) で あ る 。 同社は混合冷媒方式である M C R(M u l t i - C o m p o n e n t R e f r i g e r a n t)プロセスを開発 し、これを利用した 2 7 カ所の陸上ベースロード用プラント5で 7 9 の L N G トレインを 保有している。トレインの設備能力は 0 . 8 M T P A から 7 . 8 M T P A であり、生産能力は 拡大している。A i r P r o d u c t s 社は同社が開発した S p l i t M R 冷媒コンプレッサー配置6、 ま た は混合冷 媒方 式 と エキス パ ンダー 方 式 のハイ ブ リ ッ ド で あ る A P - X7プ ロ セ ス を利 用すれば、最大 1 0 M T P A が可能としている。

混合冷媒方式を積極的に扱っている企業としては A i r P r o d u c t s 社のほかに B l a c k

& V e a t c h 社 (P R I C O S M R 方 式8) 、L i n d e 社 (M F C9 a n d L i m u m 方 式1 0) 、 S h e l l 社 (D M R 方 式1 1) 、T e c h n i p(T e a l a r c 方 式 ) が あ げ ら れ る 。F o s t e r

W h e e l e r 社もまた混合冷媒方式を積極的に扱っている。

複数の企業チームが混合冷媒プラントを利用した F L N G 設計に取り組んでいる。こ れ ら の 設 計 は 主 と し て 最 大 4 M T P A の 設 備 を タ ーゲッ ト と し て い る が 、 さ ら に 大型の

F L N G も検討されている。シェルは D M R シングル混合冷媒サイクルが 2 M T P A まで

の規 模の F L N G に適し て お り 、D M R ダブ ル混合冷 媒 サイ ク ル が 4 M T P A ま で の F L N G に適していると考えている。A i r P r o d u c t s 社は B u e w a t e r 社、S a i p e m 社と 提携して A P - M(S M R 方式)、C3M R、または D M R 方式を利用した 0 . 5 ~ 4 M T P A の トレインをターゲットとした F L N G 設計開発に取り組んでいる。B l a c k & V e a t c h は

再ガス化装置搭載 L N G 船プロジェクトを手がけている E x c e l e r a t e 社と提携し、エネ

5 点 検 時 以 外 常 時 運 転 さ れ て お り 一 定 量 の 生 産 を 維 持 す る ベ ー ス 運 用 プ ラ ン ト 。

6 ガ ス タ ー ビ ン 2 基 を 使 用 し 、1 基 で プ ロ パ ン 用 コ ン プ レ ッ サ ー と 高 圧 混 合 冷 媒 用 コ ン プ レ ッ サ ー を 駆 動 し 、2 基 目 の タ ー ビ ン で 低 圧 混 合 冷 媒 用 コ ン プ レ ッ サ ー と 中 圧 混 合 冷 媒 用 コ ン プ レ ッ サ ー を 駆 動 す る 機 械 配 置 。

7 A P - X プ ロ セ ス は L N G の 過 冷 却 に 混 合 冷 媒 で は な く 窒 素 膨 張 装 置 ル ー プ (N i t r o g e n E x p a n d e r L o o p) を 使 用 す る 。

8 P o l y R e f r i g e r a n t I n t e g r a l - C y c l e O p e r a t i o n S i n g l e M i x e d R e f r i g e r a n t S y s t e m

9 M i x e d F l u i d C a s c a d e S y s t e m

1 0 L i n d e M u l t i - S t a g e M i x e d R e f r i g e r a n t S y s t e m

1 1 D u a l M i x e d R e f r i g e r a n t P r o c e s s: プ ロ パ ン (C 3) を 予 冷 に 使 用 す る C3M R 方 式 に 代 え て 、 D M Rは エ タ ン と プ ロ パ ン の 混 合 冷 媒 を 予 冷 プ ロ セ ス に 使 用 す る 。

(18)

ジ ー ・ ブ リ ッ ジ 船 用 に 3 M T P A の 液 化 トレイ ン を提 案し て い る 。T e c h n i p は自社 の

T e a l a r c 方式のターゲットを 1 . 5~3 M T P A の F L N G 船としているが、セミサブ船体

を使用した 5 M T P A 用設備をオプションとして提案している。C B&I は H o e g h とチ

ームアップし、F L N G 設計に年 1 . 6 M T P A の混合冷媒プラントを利用することを検討 している。L i n d e は S B M とチームアップし、自社の混合冷媒プロセスを使用した 2 . 5

M T P A のプラントを搭載した F L N G をターゲットとしている。東洋エンジニアリング、

日立製作所及び C h a r t E n e r g y a n d C h e m i c a l s 社は 2 M T P A の混合冷媒プラント技

術を使用した小・中規模のガス田の L N G プロジェクトをターゲットとして提携してい

る。チャート社によれば、ターゲットとなるプロジェクトには F L N G が含まれている。

(c)エキスパンダー・プロセス(自己冷却方式)

逆ブレイ ト ン/ク ロ ー ド ・サイ ク ル に基 づく プ ロ セ ス で あ る エキス パ ンダー 方 式 は 。 都市ガス供給等におけるピークシェービング用の比較的小規模な L N G プラントで採用 されている。エキスパンダー方式は圧縮した単一成分の冷媒(メタンまたは窒素)を減 圧膨張させることにより深冷熱交換装置内の原料ガスを冷却し液化するものである。エ キスパンダー方式は 1 系列でも 2 系列でも可能であり、オープンループ、クローズド ループのいずれも使用できる。

エキスパンダー方式は設備面積が比較小さく、重量も軽いことから F L N G 利用に適 している。L N G 液化施設技術を手掛ける英国のエンジニアリング会社である C o s t a i n O i l , G a s & P r o c e s s によれば、設備能力 1 . 5 M T P A の 2 トレイン窒素エキスパンダ ー 方 式 液 化 施 設 は 、1 4 0 , 0 0 0 m3L N G 船 の甲 板スペー ス に搭 載 可能だと い う 。F L N G のトップサイド・エンジニアリングを手掛けているノルウェーのエンジニアリング会社

である K a n f a 社は 2 . 7 M T P A のエキスパンダー方式液化施設の重量は同様の規模の

M R 方式液化施設の 3 分の 1(M R 方式 3 5 , 0 0 0 トンに対し 1 0 , 0 0 0 トン)としている。

エキス パ ンダー 方 式 は小 規 模、 中規 模の 液 化 施 設 の 設 備 費 が比 較 的 低い 。K a n f a 社 によれば、2 . 7 M T P A のエキスパンダー方式液化施設の建設コストは M T P A あたり 4

億 5 , 0 0 0 万ドルから 7 億ドルであるのに対し、同様の規模の M R 方式液化施設の建設

コストは M T P A あたり 1 0 億ドルとなる。

特に F L N G として使用する場合、窒素エキスパンダー方式は不燃性冷媒を使用する

ことから本質的に安全であり、施設建設のモジュラー化が比較的簡単であり、冷媒が気 体1 2であることから船舶の動揺が液化施設に及ぼす影響が比較的少なく、条件の異な る 原料ガスに対応する柔軟性があり、プラントの運転が比較的単純であり、システムの運 転開始、運転停止、再起動に時間がかからないという長所がある。

1 2 窒 素 は 大 気 圧 で は マ イ ナ ス 1 9 5 . 8℃ ま で 気 体 で あ り 、 こ れ は 天 然 ガ ス の 凝 結 温 度 よ り も 約 3 5℃ 低 い 。

(19)

図表 10 窒素エキスパンダー方式プロセス構成の例

出典:M u s t a n g

エキスパンダー方式の短所は比較的効率が低いことである。シングル・エキスパンダ ー方式の液化施設をカスケード方式の施設と比較した場合、生産される L N G1キログ ラムあ た り の エネルギー 消 費量は前者 が 2 倍 と な る 。 プ ロ パ ン 予冷 装 置の 設置、 ま た はダブル・エキスパンダー方式の使用により効率は上がるが、それでもエネルギー消費 量は カ ス ケ ー ド 方 式 に比 べ約 7 0 %増 し と な る 。 エネルギー 消 費量を混合冷 媒方 式 と比 較した場合、カスケード方式ほどではないが、それでも効率は大きく劣る。業界専門誌

に掲載された C o s t a i n の研究による液化方式の効率比較を図表 1 1 に示す。

効率は低いが、エキスパンダー方式は小規模な L N G 液化設備に最も適している。す

なわち小規模レンジでは設備費が低く、設置面積が少ない等のプラス面がエネルギー効 率が悪い と い う マ イ ナ ス面を相 殺す る に足る 。 た と え ば 、C o s t a i n 社 は デュア ル ・ エ

キスパンダー設計が 1~2 M T P A の設備能力のプラントに最適のプロセス技術であると

している。後に取り上げるが、2 トレインで 1 . 7 M T P A の設備能力を有する F l e x L N G のトップサイド設備には窒素エキスパンダー方式が採用されている。

図表 11 液化方式の効率比較

液化方式 カスケード方式を 1 . 0 0 とし た場合のエネルギー消費量比

カスケード方式 1 . 0 0

混合冷媒方式 1 . 2 5

プロパン予冷混合冷媒方式 1 . 1 0-1 . 1 5 シングル・エキスパンダー方式 2 . 0 0 プロパン予冷シングル・エキスパンダー方式 1 . 7 0 ダブル・エキスパンダー方式 1 . 7 0

出典:L N G I n d u s t r y , A u t u m n 2 0 0 6

(20)

エキスパンダー方式は C B & I L u m m u s と M u s t a n g E n g i n e e r i n g が積極的に手掛 けている。C B & I L u m m u s は窒素エキスパンダー方式に基づき、最大 2 M T P A のプ ラント用に N i c h e L N G 方式を開発した。C B & I によればこの規模の N i c h e L N G プラ ントは 1 7 0 , 0 0 0 m3の L N G 貯蔵タンクと 3 5 , 0 0 0 m3の L P G 貯蔵タンクを収納できる 全長 2 5 0 m の船体に搭載することができる。M u s t a n g E n g i n e e r i n g はエキスパンダ ー方式に基づいて複数の液化システムを開発している。同社の N D X 設計は、窒素を冷 媒とするクローズドループ・システムであり、1 トレインで 0 . 5 M T P A の液化能力が あ る と さ れ て い る 。M u s t a n g に よ れ ば 1 M T P A の N D X 2 トレイ ン の総重 量は 3 , 0 0 0 トンで、設置面積は 3 6 x 2 1 . 3 メートルとなる。

システム比較

プ ラ ン ト の規 模に よ っ て 最適の シ ステ ムは異な る 。 一般に エキス パ ンダー 方 式 は

1 . 5 M T A までの小・中規模施設に適しており、カスケード方式は 5 M T P A を超える大

型プラントに、混合冷媒方式は中規模から大規模のプラントに適していると言える。し かし、これはおおまかなガイドラインに過ぎない。それぞれの方式について、開発者は さ ら に 幅広い トレイ ン規 模で の利用 に適し て い る と提唱し て お り 、3 方 式 の い ず れ も

F L N G プロジェクトの液化ソリューションとして検討されている。

図表 12 3 種類の基本的液化方式の特性比較

液化方式 カスケード方式 混合冷媒方式 エキスパンダー方式

既存技術の利用 ○ ○ ○

必要とされる設置面積 大* 中* 小

冷媒貯蔵に伴う危険性 有 有 無

船舶の揺れの影響 中 中 低

運転の難易度 中 中 高

運 転開始 /停 止の難 易度 中 難 易 原 料 ガ ス 成 分 変 化 へ の 対

応の柔軟性 高 中 高

効率 高 高 低

総設備費 高 中 低

* 炭化水素冷媒貯蔵の必要があるため

出 典 :A d r i a n F i n n , C o s t a i n O i l , G a s & P r o c e s s , a s r e p o r t e d i n O i l &

G a s J o u r n a l , 2 2 A u g u s t 2 0 0 2

(21)

2.3 浮体式天然ガス液化プラント

現在運転中の F L N G は存在しないが、シェルと F l e x L N G が F L N G 施設の建設プ ロジェクトに着手しており、加えて少なくとも 1 2 の企業グループが F L N G 設計の開 発に取り組んでいる。以下に F L N G コンセプトを概説する。

図表 13 FLNG の概念図

海底井 スラグキャッチャー

気液分離

ガス前処理 酸性ガス除去

脱水、脱水水銀 重質分除去 液化装置 LNG積出 装置

LNG、LPG、コンデンセート貯蔵タンク ユーティリティ 設備

海底ガスパイプライン

係留索 係留索

ライザー

出 典 : J E T R O N Y 船 舶 部 作 成

液化方式はさまざまであるが、現在検討されているすべての F L N G コンセプトに共 通 す る 基 本 概 念 は 、 天 然 ガ ス を 海 底 井 か ら ラ イ ザ ー を 経 由 し て F L N G 施 設 に 送 り 、

F L N G 船上で前処理、不純物除去、L P G 回収を行う。前処理された天然ガスは熱交換

により液化され L N G となる。液化された L N G は F L N G 船上の極低温タンクに貯蔵

され、L N G 船に積みだされ、受入ターミナルへ輸送される。

シェル FLNG

英蘭系石油会社のロイヤル・ダッチ・シェルは 2 0 0 9 年 7 月にフランスのエンジニア リング専門会社であるテクニップ社と韓国のサムスン重工業からなるコンソーシアムに F L N G の基本設計契約(F E E D:F r o n t E n d E n g i n e e r i n g a n d D e s i g n )を発注した。

これとは別に同コンソーシアムは 1 5 年間に複数の F L N G を設計、建造、設置する独 占 的 契 約 者 に 選 定 さ れ 、 基 本 合 意 (M a s t e r A g r e e m e n t) も 結 ば れ て い る 。 テ ク ニ ッ プ/サムス ン、大宇/ J G C、現 代/チヨダ の 3 コンソーシアムに設計建造のテンダーを 発 行 し 、 応 札 を 受 け 、 技 術 評 価 等 が 実 施 さ れ た 結 果 、 テ ク ニ ッ プ/サ ム ス ン が 選 定 さ れ た ものである。業界では基本合意は 1 5 年間に最大 1 0 隻の F L N G 船の建造に結びつくと 予想されている。しかし、基本合意の下で建造される F L N G 船の数は確定していない。

現 段 階 で 確 定 し て い る 契 約 は 基 本 設 計 役 務 (F E E D) の み で あ る 。F E E D は コ ス ト と 引渡しスケジュールの推算の精度を投資決定レベルに高めるための作業である。後述す る よ う に 、 第 1 船 は オ ー ス ト ラ リ ア 北 西 部 の 「 プ レ リ ュ ー ド 」 と 「 コ ン チ ェ ル ト 」 ガ ス田に設置される予定とされている。

シェルの F L N G は L N G 3 . 5 M T P A、随伴 L P G 1 . 5 M T P A の大型ユニットである。

デッキ寸法約 4 5 0 m x 7 0 m の船体が使用される。プラントにはシェルが開発した

D M R 二重混合冷媒技術が採用される。

(22)

図表 14 Shell FLNG 設計概念図

出典:S h e l l

Flex LNG

F l e x L N G は 2 0 0 6 年に浮体式液化施設を開発する目的で設立された企業で あり、

サムスン重工業に 4 隻の F L N G 下部船体を発注している。第 1 船については E P C I C

(エンジニアリング・調達・建設・統 合・完 成)契約が発注されており、これに は複 数施設を対象に共通設計部分を最大化した汎用(ジェネリック)設計のプラント上部設 備を搭載した船体の引渡しが含まれている。設置されるガス田が決まり、ガスの特性が 判明した時点で、 ガス田に 合わせた上部設備 が搭載さ れる。第 2、3、4 船の契約 には 船体、貯蔵タンク、発電装置、積み出し装置、居住施設、船上搭載タレット・システム、 及 び 1 . 7 M T P A の ト ッ プサイ ド ・ プ ラ ン ト をサポー ト す るユーティ リティ(電気・ ガ ス・水道設備)が含まれている。第 2 船から第 4 船までの契約には F L N G の上部設備 部分は含まれていない。

F l e x L N G の船体の寸法は全長 3 3 6 m、船幅 5 0 m である。これは Q - F l e x と Q -

M a x 船型の L N G 船の寸法の中間にあたる。貯蔵タンクには S P B が採用され、貯蔵能

力は L N G 1 7 0 , 0 0 m3、コンデンセート 5 0 , 0 0 0 m3である。S P B タンク設計はデッキが 比較的平坦でありトップサイド・プラントの搭載に適しており、部分積みつけによる中 間液位におけるスロッシング(液揺れ)の問題がない。

F l e x L N G プ ロ ジ ェ ク ト は 現 在 最終設 計 及 び詳 細エ ン ジ ニ ア リ ン グ 段 階 に あ る 。

F l e x L N G が 2 0 0 9 年 2 月に公表したスケジュールによれば、第 1 船の建造は 2 0 1 2 年

第 2 四半期に予定されている。後続船は 6 ヶ月の間隔をおいて建造され、引き渡され る。ただし、設計に難点があったことと、商業的な見通しが不確実であるためスケジュ ールは先送りされた模様である。

(23)

図表 15 Flex LNG 建造計画スケジュール

出典:F l e x L N G

F l e x F L N G によれば、汎用トップサイドの基本設計作業(F E E D)は 2 0 0 9 年第 1

四半期に完了した。同社はこれまで汎用トップサイド設計に 3 0 0 , 0 0 0 時間を費やした としている。汎用トップサイド用のメイン・コンプレッサ、ターボ・エクスパンダー、

コー ル ドボッ ク ス 、B O G(ボイ ルオフ ガ ス )コン プレッサ等 の 主 要機 器は 調 達 が完 了 している。第 1 船の船体機器の大部分もすでに発注されている。

K a n f a A r a g o n( ノ ル ウ ェ ー ) 、N L I E n g i n e e r i n g( ノ ル ウ ェ ー ) 、 O i l a n d G a s S o l u t i o n s(米国)、C o s t a i n O i l & G a s P r o c e s s(英国)がトップサイド設計 に参加している。2 0 0 7 年 8 月に D N V から A I P(基本概念承認)を取得しているが、

詳細図面承認はまだ終わっていない。汎用トップサイド・プラントの設計に関して依然 として問題がある模様である。

第 1 船 を含め 、F l e x L N G 船 は フ ィ ー ル ド契約 を確 保し て い な い 。F l e x L N G が F L N G 供 給 の仮合意を 取 り付け て い た複 数の ガ ス田と の契約 は不発 に終 わっ た模 様で あ る 。 近 い将 来に F l e x L N G を 設置す る可能性が あ る ガ ス田と し て名前が挙が っ て い るのはオーストラリア沖の M i n z a プロジェクトだけである。しかし、後述するように、

このプロジェクトは比較的開発初期段階であり、評価井の掘削も始まっていない。商業 的に不確定要素があるため、F l e x L N G は過去数ヶ月にエンジニアリング作業を縮小し

ている。F L N G 船体第 5 船のオプションが施行されないまま失効したと考えられる。

図表 16 FlexLNG 設 計

出所:F l e x L N G

(24)

Excelerate EBLV

E x c e l e r a t e 社は再ガス化装置を搭載した L N G タンカー開発の先駆者である。後述

するように同社は 8 隻の再ガス化装置搭載 L N G 船(L N G R V)を運航または発注して い る 。 さ ら に 上流へ の事業拡張を 図 り 、E x c e l e r a t e 社 は エネジ ー ・ ブ リ ッ ジ 液 化 船

(E B L V) の 開 発 を検 討し て い る 。 同 社 は B l a c k & V e a t c h と提 携し て お り 、B & V

の P r i c o S M R 液化方式をトップサイドのべースとして採用する。

各 ユニ ッ ト に は 3 M T P A の ト ッ プサイ ド が搭 載さ れ る 。L N G 貯 蔵 能 力 は 2 5 0 , 0 0 0 m3 であり、船体内に収納される。E B L V の貯蔵能力は F l e x L N G の約 5 0 % 増となる。トップサイド・プラントの生産能力も F l e x L N G の約 2 倍となる。船体の 寸法は発表されていないが、この基本設計はシェルの F L N G コンセプトに近い規模の 船体を必要とする。

設計・建造スケジュールについての詳細は公表されていないが、E x c e l e r a t e 社は第 1 船の運転開始を 2 0 1 3 年ごろとしている。このスケジュールは非現実的であり、この プロジェクトの資金調達にはまずフィールド契約を確保することが必要となる。

図表 17 Excelerate FLNG 設計

出典:B l a c k & V e a t c h

SBM/Linde FLNG

ノ ル ウ ェ ー の S B M(S i n g l e B u o y M o o r i n g) 社 は独 L i n d e と チ ームア ッ プ し て

F L N G の設計、マーケティングを進めている。S B M によれば、サムスン重工が技術設

計作業に参加しており、S B M F L N G 第 1 船の船体建造スロットが予約されている。

しかし、建造契約は確定していない。

S B M / L i n d e の設計は 2 . 5 M T P A の S M R 方式プラントを採用したものである。全

長 3 2 0m、船幅 6 0 m の船体に 1 8 0 , 0 0 0 m3の L N G、5 0 , 0 0 0 m3の L P G とコンデンセ ー ト の 貯 蔵 タ ン ク が搭 載さ れ る 。S P B 格 納シ ステ ムが 採 用 さ れ 、外力 が 最小と な る よ う船体が垂直軸周囲に自動的に回転する外付けタレットが搭載される。

(25)

S B M は汎用 F L N G 設計について A B S から基本概念承認を受けている。設備費は 1 隻あたり 2 5~3 0 億ドルと推定されている。同社は今後も F L N G プロジェクト第 1 号 を積極的に推し進めるとしているが、2 0 0 9 年 8 月にはシェル F L N G 向けタレット係 留装置を供給する 1 5 年間の基本契約をシェルと結んでいる。これは大型の契約であり、

この契約が S B M の F L N G 計画にどのように影響するかは不明である。

図表 18 SBM FLN G 設計

出典:S B M

Hoegh FLNG

H o e g h L N G 社は C B & I 社、韓国の D S M E(大宇造船海洋)と提携して F L N G 設 計を開発している。C B & I がトップサイド施設の設計を受注し、D S M E が船体と格納 システムの設計を受注した。H o e g h L N G によれば、設計作業に 2 0 0 , 0 0 0 時間以上を

費やし 2 0 0 9 年 3 月に F E E D 作業を完了したとしている。しかし、建造契約は確定し

ておらず、第 1 船を発注する前に特定ガス田における F L N G のチャーター契約を確保 する必要がある。

トップサイド施設には C B&I N i c h e L N G 窒素エキスパンダー・サイクル方式が採 用される。基本的な設計の設備能力は L N G 1 . 6 M T P A、L P G 0 . 4 M T P A、コンデン セート 0 . 2 M T P A とされている。貯蔵能力は L N G 1 9 6 , 0 0 0 m3、L P G /コンデンセート 3 0 , 0 0 0 m3である。

こ の 設 計 にユニ ー ク な 点 は貨物格 納シ ステ ムに G T T N o . 9 6 方 式強化メン ブレン タ ン ク を 採 用 し て い る 点 で あ る 。メン ブレン タ ン ク は 2 列設 計 と し 、 ス ロ ッ シ ン グ の影 響を最小限に抑え、タンク間の中央隔壁により上部施設を支える構造となっている。

H o e g h によれば、複数のエネルギー会社及びユーティリティ会社と浮体式 L N G 生

産ソリューションの合意覚書を交わしている。H o e g h は第 1 船の設置を 2 0 1 3 年とし ているが、このスケジュールは非常に楽観的である。現時点で H o e g h の F L N G につ いて確定契約は結ばれていない。

(26)

図表 19 Hoegh FLN G 設計

出典:C B & I L u m m u s Bluewater FLNG

オランダの B l u e w a t e r 社は A i r P r o d u c t s 社とチームアップして F L N G 設計を開 発している。プロジェクトは P r e - F E E D 段階(初期設計前段階)であり、どの程度の 力 を 入 れて い る かは不明であ る 。B l u e w a t e r 社 は F L N G 事業に つ い て 、秘 密主義を とっており、情報はほとんど公開されていない。しかし B l u e w a t e r 社が 1 . 5 M T P A か

ら 2 . 5 M T P A の F L N G 設計に焦点を当てていることが知られている。

A i r P r o d u c t s 社 と B l u e w a t e r 社 は そ れぞれ を補う 能 力 を有し て い る 。A i r P r o d u c t s は L N G プ ラ ン ト 設 計 の 最 大 手 のひと つ で あ る 。 同 社 の混合冷 媒方 式 は F L N G の ト ッ プサイ ド 設 計のベー スと し て利用可能 であ る 。 これ ま で B l u e w a t e r 社

の市場は石油生産用 F P S O に限られていた。しかし同社はオフショア L N G 積み替え

用に複合素材極低温ホースを開発しており、フショア L N G 積み替え用装置の設計の経

験は F L N G 設計に役立つかもしれない。

BW Offshore FLNG

ノルウェーの B W O 社は米国の M u s t a n g E n g i n e e r i n g 社と提携して F L N G 設計 を開発している。M u s t a n g 社 はトップサイド設備の設計・エンジニアリングを担当し ている。液化プラントの設備能力は 2 M T P A で N D X - 1 窒素エクスパンダーサイクル 方式を採用する。それぞれ 1 M T P A の 2 基の液化モジュールが搭載される。それぞれ のモジュールの設置面積は 4 0m x 2 0mとなる。L N G 生産に加え、トップサイドは日

産 5 , 0 0 0 バレルの石油・コンデンセート生産能力を有する。

船体は L N G 1 6 5 , 0 0 0~1 8 0 , 0 0 0 m3、石油・コンデンセート 1 0 0 , 0 0 0 m3の貯蔵能力

を有する。V L C C 船体を新造、または改造して利用する。B W O によれば、トップサイ

ドを搭載するための甲板面積は 1 0 , 0 0 0 m2 であり、このうち 3 , 7 5 0 m2に液化装置、脱 水装置、アミン処理装置、インレット・モジュールが設置される。

貯蔵設備には 3 つの筒型タイプ B 9% N i 鋼製タンクを採用している。B W O によれ

(27)

ば 、 同 タ ン ク に は ス ロ ッ シ ン グ の問 題が な く 、球 状タ ン ク よ り も利用率が よ く 、S P B よりも安く、造船所の選択幅が最大化される。タンデム・オフローディングには空中積 み出しホースが利用される。海面浮遊積み出しホースの評価も実施されている。

B W O は D N V から設計の基本概念承認を取得している。設備費は L N G 生産能力 1

トンあたり 5 0~6 0 万ドルと推定されている。B W O は F L N G のデイレートが 6 0 万ド ルで採算ラインに達すると考えている。この数字は高性能仕様の掘削船のデイレートと 同レベルである。B W O はペトロナスと提携しマレーシア沖で F L N G を使用する可能 性を検討している模様である。しかし、造船所に新造、改造契約を発注する前に必要な

F L N G のフィールド・チャーター契約は結ばれていない。

図表 20 BW Offshore FLNG 設 計

出典:B W O ConocoPhillips FLNG

コノコフィリップスは 5 M T P A を超える大規模な F L N G の開発を進めている。先 に述べたように、コノコフィリップスはカスケード方式を開発した陸上 L N G プラント 技 術の先 駆け企 業のひと つ で あ る 。 同 社 は B e c h t e l 及 びサ ムス ン重 工と提 携し て

F L N G を開発している。

コノコフィリップス F L N G のトップサイド・プラントにはカスケード方式が採用さ れる。ベース設計は 5 . 3 M T P A のプラントである。非常に大型のトップサイド施設の 搭 載と なり 、コノコフ ィ リッ プ ス によ れ ば 全長 4 4 7 m のバー ジ型 浮 体 を下部 船 体 と し て使用する予定であり、ベース設計の設備費は 5 0 億ドル強と推定されている。

設計作業の大部分は自社で行なわれており、コノコフィリップス設計についての情報 はほとんど公表されていない。コノコフィリップスは先行するシェルの F L N G プロジ ェクトを見計らいながら、独自の設計開発に本腰を入れるタイミングを図っていると考 えられる。

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Saipem FLNG

イタリアの S a i p e m は A i r P r o d u c t s 社と提携して F L N G 設計を開発している。同 社は 1~2 . 5 M T P A の F L N G に焦点を当てている。S a i p e m F L N G 設計のトップサ イド・プラントはガス田の特性により窒素エキスパンダー・サイクル方式または D M R 方 式 の い ず れ か を 採 用 す る 。A i r P r o d u c t 社 が両方 の 方 式 の プ ラ ン ト 設 計支 援を提供 している。

下部船体の規模は造船所の選択肢を最大限とするために従来型としている。メンブレ ン タ ン ク ま た は S P B 格 納シ ステ ムが L N G 貯 蔵 シ ステ ムと し て検 討さ れ て い る 。 S a i p e m の子会社である M o s s M a r i t i m e が球状タンクに基づいた F L N G 設計を売り 込んで いる に も かかわら ず、親会 社で あ る S a i p e m はモス 型球 状タ ン ク を候 補と して 検討していない。

S a i p e m は汎用型 F L N G 設計をまだ開発していない。設計開発に着手していたとし

ても、少なくとも公表されていない。同社の戦略は設置ガス田にあわせた F L N G に焦 点を当て、具体的なガス特性にあわせ設計したトップサイド用に F L N G の船体を目的 仕様建造するものである。

Teekay FLNG

カナダの T e e k a y C o r p o r a t i o n は F L N G の開発を検討しており、2 つのバージョ ンを評価中である。1 つは 、特定仕様建造の船体に 1~2 M T P A の生産 能力のトップ サイドを搭載するものである。もうひとつは既存の L N G 船を改造し 0 . 5~1 . 0 M T P A の ト ッ プサイ ド を搭 載す る も の で あ る 。M u s t a n g E n g i n e e r i n g が両方 のバー ジョン のトップサイド設計作業を支援している。サムスン重工が目的仕様建造の下部船体の設 計に関与しているとされている。

1 9 9 3 年建造の L N G 船 A r c t i c S u n が改造プロジェクト用として指定されたとされ

ている。同船は S P B 格納システムを搭載しており、貯蔵能力は 8 8 , 2 0 0 m3である。

特定仕様建造の F L N G の貯蔵能力は L N G と L P G を合わせて 2 0 0 , 0 0 0 m3を超える。

A B S が基本概念を承認している。

T e e k e y はカナダのブリティッシュ・コロンビアの K i t i m a t の F L N G 契約の獲得を

図っている。この契約は改造オプションを利用するものである。しかし、同プロジェク トは長い行政許認可プロセスの対象となっており、今のところ進展はあまりみられない。

フ ィ ー ル ド ・ チャー タ ー契約 が結ば れ る ま で T e e k a y が 建造ま た は改 造契約 を 発注す ることはないと考えられる。

図表 21 Teekay FLN G 設計

出典:T e e k a y

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Golar FLNG

G o l a r L N G は 手持ち の L N G 船 を F L N G に改 造す る 設 計 を 開 発 し た 。 同 社 は 、

L N G バリュー・チェーンにおける輸送、再ガス化部門ですでに主要企業であり、 浮 体

式液化部門への事業拡大を図っている。G o l a r 社は 1~2 M T P A の液化能力を必要と するプロジェクトをターゲットとしている。

G o l a r 社 の 設 計 は他社 の 設 計 と 大 き く異な っ て お り 、モス 型球 状タ ン ク を搭 載し た

L N G 船を改造し、液化設備とその関連施設を搭載するために船体の両側にスポンソン

( S p o n s o n s )を張り出し て装着す る も の で あ る 。 プ ラ ン ト は窒素 エキス パ ンダー 方 式 を 採 用 す る。 生 産量は 2 トレイ ン で 1~2 M T P A と さ れ て い る 。F o s t e r W h e e l e r と S K E n g i n e e r i n g が ト ッ プサイ ド 設 計 の エ ン ジ ニ ア リ ン グ ・サービス を提供 し て い る 。 貯 蔵 能 力 は L N G 1 4 5 , 0 0 0~1 7 4 , 0 0 0 m3、コン デ ン セ ー ト 4 0 , 0 0 0 m3 で あ る 。 タレ ットを船上に搭載する必要をなくすためスプレッド係留装置が採用される。積み出しは ローディング・アームを使いサイド・ツー・サイド(横付け)で行なわれる。

G o l a r はアジア太平洋地域で複数の L N G プロジェクトを推進している。G o l a r の

ビジネスモデルは資本出資を行いプロジェクト・リスクに参加することにより最大限の バリュー を獲 得す る も の で あ る 。G o l a r は F L N G プ ロ ジ ェ ク ト に つ い て タ イ の P T T E P(P T T E x p l o r a t i o n a n d P r o d u c t i o n P u b l i c C o m p a n y L i m i t e d)とパー ト ナ ー シ ッ プ を結 んで い る 。 し か し 、 フ ィ ー ル ド ・ チャー タ ー契約 が確定 す る ま で

G o l a r は改造契約の発注には踏み切らないであろう。

Sevan FLNG

ノルウェーの S e v a n M a r i n e 社はシリンダー型船体の F L N G の設計を開発した。

S e v a n が建造したシリンダー型 F P S O と同様に S e v a n F L N G はスウィベルまたはタ

レットを必要としない。S e v a n の子会社である K a n f a A r a g o n がトップサイド・エン ジニアリングを担当している。

トップサイドは D u a l 窒素エキスパンダーサイクルを採用する。ベース設計の生産能 図表 22 Golar FLN G 設計

出典:G o l a r

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力は 2 トレインで 1 . 5~1 . 7 M T P A である。S e v a n によれば、船体には 3~4 系列の トレイ ン の搭 載が可能 で あ り 、 最 大 生 産 能 力 は 3 . 4~3 . 5 M T P A と な る 。 こ の 設 計 に 関連した難点はシリンダー型船体が部分円(パイスライス)構造物を組み合わせること により建造されることである。船体内の構造は大重量のトップサイドを支えることがで きるが、パイスライス型構造によるサポートは必ずしも大重量のトップサイドの設置フ ットプリントの負荷を担うのに適切な配置となっていない。このためトップサイドの配 置に制約が生じる。

船体の貯蔵能力は L N G 1 8 0 , 0 0 0 m3、L P G 3 0 , 0 0 0 m3、コンデンセート 2 8 , 0 0 0 m3で ある。格納システムはステンレス・スチールのシリンダー型タンクをベースとしている。

S e v a n は P r e - F E E D (初期設計前)段階までプロジェクトをすすめている。このコン

セプトが実現可能であるかどうかを判断するには更にエンジニアリングと設計作業を行 う 必 要 が あ る 。S e v a n は 採 用 の可能性の あ る ガ ス田が 特 定 さ れ る ま で詳 細設 計 に は取 り掛からないであろう。さらに同社の財務状況を考慮すれば、フィールド・チャーター

契約を確保するまで F L N G の建造を発注するとは考えられない。一方、S e v a n はフィ

ールド・チャーター契約を確保する前に F P S O を発注した前歴があり、F P S O 事業者 の中で最も投機的リスクを取ってきた。資金繰りがつけばシリンダー型 F L N G 建造を 発注し、世間をあっといわせる可能性も否定できない。

図表 23 Sevan FLN G 設計

出典:S e v a n

Technip FLNG

テクニップは 2 種類の F L N G 設計を開発している。一つは目的仕様建造の船体を利 用するものであり、もう一つはセミサブを利用するものである。船形の F L N G は小規 模から中規模のガス田をターゲットとしている。セミサブ型 F L N G は大規模ガス田を 対象としている。

船形の浮体には L N G 1 . 5~3 M T P A のトップサイド・プラントが搭載される。窒素 エキスパ ンダー方 式が使用 される。 貯蔵能力 は L N G 2 0 0 , 0 0 0 m3、L P G とコンセン デ ートが 4 0 , 0 0 0~6 0 , 0 0 0 m3 である。格納システムは S P B か高度に区切られたメンブ レンタンクのいずれかを採用する予定である。積み出しは極低温空中フレキシブル・パ イプを使ったタンデム配置であり、タレット係留装置が利用される。

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図表 24 Technip 船 型 FLNG 設 計 図表 25 Technip セ ミサブ型 FLNG 設計

出典:T e c h n i p 出典:T e c h n i p

セミサブ型 F L N G は混合冷媒プラントを搭載し、L N G 生産能力は 5 M T P A である。

大型メンブレンタンクを貯蔵施設とし、これがセミサブの船体構造のベースとなる。タ ンクは L N G 2 0 0 , 0 0 0 m3、L P G とコンデンセートが最大 6 0 , 0 0 0 m3 である。スプレッ ド係留システムが使用される。この設計の長所は大重量のデッキロードを支えることが できる点であり、厳海況でも揺れが少ない点である。

テクニップは 2 つのユニットの P r e - F E E D(基本設計前)段階にある。F E E D 段階 に進むには、具体的なガス田が特定される必要があり、チャーター契約を確保するまで 建造契約を発注することはないであろう。

Hamworthy FLNG

H a m w o r t h y は L N G 船上液化装置における実績に基いた 2 つのオフショア液化コ

ンセプトを開発した。ひとつのコンセプトは随伴ガスからの非常に小規模な L N G 生産 をターゲットとしたものである(ミニ L N G) 。もう一つのコンセプトは中規模のガス 田を対象としている。

ミニ F L N G 設計では、日量 6~1 5 トンの非常に小規模な L N G 生産に市場機会を見

出している。プラント設計は S I N T E F L N G 液化技術に基づいており、O i l F l o o d e d S c r e w C o m p r e s s o r、 ア フ タ ー ク ー ラ ー 、熱 交 換 装 置、膨 張 バル ブ を使用 し た混合冷 媒方式を使用する。混合冷媒の圧縮、過冷却、凝結、気化、分離、膨張サイクルが繰り 返される。動力は原料ガスまたは再生ガスを使用したガス・エンジンで提供される。プ

ラントは標準型の 4 0 フィート I S O コンテナに組み込まれる。プロトタイプのプラン

トは 2 0 0 3 年から運転しており、フルスケールの実証実験が計画されている。

図表 26 Hamworthy FLNG 設計

出典:H a m w o r t h y

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