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盲点におけるフィリングインの刺激特性 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)盲点におけるフィリングインの刺激特性 キーワード: 刺激特性,異方性,受容野,ミスマッチ. 行動システム専攻 蘭 悠久 1.はじめに 盲点(blind spot)は,網膜上にある解剖学的には視神経 乳頭(optic disc)とよばれる部位であり,視細胞が存在し ない.しかし,単眼視条件では,盲点に提示された視覚情. Display. 報が脳に送られないにもかかわらず,視野の一部が欠けて 基準線分. 見えることはない.これは視覚系が盲点周辺の情報に基づ いて知覚的フィリングインを行っているからである. 刺激線分. (Ramachandran, 1992). 脳には視覚情報の欠如を補う知覚的補完という機能があ 盲点領域. る.盲点におけるフィリングインは,先天的に存在する情 報の完全な欠如を補うという点で独特であり,これを検討. 観察距離 30cm. Left eye. することは,補完機能の解明へとつながるものと考えられ. Right eye. る.しかし,盲点におけるフィリングインを規定する刺激. Fig. 1. 実験条件. 特性やそのメカニズムについては,十分に解明されている とはいえない.. 120. 本研究では,盲点における知覚的フィリングインの刺激 特性とその異方性について線分刺激を用いて検討すること を目的とした.. 90. 60. 150. 30. 180. 0. (※実験 1 については省略.論文を参照されたい. ). 2.実験 .実験 2 盲点におけるフィリングインが方位によって系統的に変. Fig. 2. 実験 2 の刺激. 化するのかどうかを数量的に検討した. 線分は, (視角)幅 1.7°で,200msec 提示された.実験 方法. は暗室で行われ,刺激の輝度は,0.28cd/㎡で,背景の輝度. 被験者 9 名.. は,78.1cd/㎡であり,99.3%のコントラストであった.刺. 刺激と装置 刺激線分が右眼の盲点領域に,基準線分が. 激は CRT ディスプレイに提示され,コンピュータで作成,. 他眼の盲点対応領域に提示された(Fig.1) .独立変数は線 分の方位(0°, 30°, 60°, 90°, 120°, 150°)であった (Fig.2) .. 制御された. 手続き 実験の前に,各被験者の右眼の盲点領域が測定 された.被験者は刺激線分が基準線分と同様に 1 本のつな がった線分として知覚されたときを判断した..

(2) 結果と考察. 1 要因分散分析の結果,方位の主効果が統計的に有意で. 1 要因分散分析の結果,方位の主効果が統計的に有意で. あった(F(1,6)=7.025,p <.05) .Fig.4 にフィリングイ. あった(F(5,40)=4.056, p <.005) .単純主効果の検定を. ンに必要な V1 皮質上での線分の長さの平均値を方位別に. 行ったところ,0°と 60°,0°と 90°,0°と 120°の間. 示す.. でそれぞれ有意な差が得られた.Fig.3 にフィリングインに 必要な線分の長さの平均値を方位別に示す.. この結果から,V1 に投影される線分の幅,長さを統制し ても,異方性が生じることが示され,偏心度による皮質拡 大係数はフィリングインの異方性の原因ではないことが明. N=9. らかとなった.. 4. 3 Cortical Line Length for Filling-in !mm". Line Length for Filling-in !deg". 5. 3 2 1 0 0°. 30° 60° 90° 120° 150° 180° Orientation of Line(deg). N=7. 2. #. 0 Horizontal. Vertical. Orientation of Line Fig. 3. 方位別フィリングインに要する線分の長さ Fig. 4. 方位別フィリングインに要する V1 皮質上での線分 この結果から線分が水平方位から垂直方位へと傾くにつ. の長さ. れて,フィリングインに必要な線分の長さは長くなること. また,被験者ごとにフィリングインに要した線分の水. が明らかになり,盲点におけるフィリングインは方位によ. 平・垂直比と盲点の水平・垂直比を V1 皮質上での長さを. って系統的に変化すると結論できる.. 用いて算出(Fig.5)し,被験者群内で積率相関係数を求め た結果,異方性は V1 における盲点の形状によるものでは. .実験 3 3.実験. ないことが明らかにされた(r=.27) .. 盲点におけるフィリングインの異方性が網膜偏心度によ る皮質拡大係数によるものかどうかを検討した.. 被験者 7 名. 刺激 刺激線分と基準線分の長さや幅は,盲点中心の偏 心度による皮質拡大係数の値(Virsu & Hari,1996)を基. H - V Ratio of Filling-in. 方法. 2.0. N=7. #.5. #.0. 準に計算された.独立変数は線分の方位(水平,垂直)で 0.5. あった.. 0.5. 手続き 試行数は方位 2 水準を 12 回繰り返し,計 24 試. 0.7 0.9 #.# #.3 H - V Ratio of Blind Spot. #.5. 行であった. Fig. 5. V1 皮質上での線分の水平・垂直比と盲点の水平・垂 結果と考察. 直比..

(3) フィリングインが生じる最大の空間偏位量 (線分のズレ幅) ,. 4.実験 .実験 4・ ・5・ ・6 盲点を鋏む 2 本の線分の位置と方位と輝度のミスマッチ. 角度差,輝度の平均値を方位別に示す. これらの結果は,フィリングインは,位置と方位のミス. のフィリングインに対する影響を検討した.. マッチ条件では水平方位より垂直方位のほうが生じやすく, 輝度条件では水平方位より垂直方位のほうが生じにくいこ. 方法. とを示す.. 被験者 4 名,5 名(輝度条件のみ) . 刺激 線分は,長さ H: 3.0°,V: 3.6°で,200ms 提示され. 輝度条件(1.7°)であった.独立変数は線分の方位(水平, 垂直)と線分幅(位置条件のみ)であった.刺激の輝度は, 黒 0.20cd/㎡で,背景の輝度は 77.1cd/㎡であった(輝度条件 のみ) .. 3 Spatial deviation!deg". た.線分の幅は,位置条件(1°,0.5°) ,方位条件(0.8°) ,. N=4. 2. #. 0. (a). Horizontal. d. Vertical. Orientation of lines. Fig. 7. 方位別フィリングインが生じる最大空間偏位量.. (c). 60. Angle difference (deg). (b). N=4. 70. θ. 50 40 30 20 #0 0 Horizontal Vertical Orientation of fixed line. Fig. 6. 実験 4,5,6 の刺激.d は空間偏位量,θは角度差を 示す.. Fig. 8. 方位別フィリングインが生じる最大角度差. 手続き 被験者は,刺激線分が 1 本のつながった線とし. 断した.. 結果と考察 位置条件では,分散分析の結果,方位の主効果が統計的 に有意であった(F(1,3)=16.317,p <.05) .線分幅の主 効果は有意ではなかった.. Line Brightness for Fillingin (cd/$). て見えなくなったときと見えたとき(輝度条件のみ)を判. 80. N=5. 60 40 20 0. Horizontal Vertical Orientation of line. 方位条件では,分散分析の結果,方位の主効果が統計的 に有意であった(F(1,3)=14.351,p <.05) . 輝度条件では,分散分析の結果,方位の主効果が統計的 に有意であった(F(1,4)=8.056,p <.05) .Fig.6,7,8 に. Fig. 9. 方位別フィリングインが生じる最大輝度..

(4) 5.実験 .実験 7. 拡大係数に依存しないこと,盲点を鋏む 2 本の線分の位置. 盲点におけるフィリングインに要する線分の長さとその 異方性に対する色の影響を検討した.. と方位のミスマッチ条件では,水平方位のほうが垂直方位 よりもフィリングインが生じにくく,輝度のミスマッチ条 件と色では,水平方位よりも垂直方位のほうが生じにくい. 方法. こと,さらにフィリングインに要する線分の長さは,色に. 被験者 7 名.. 依存しないことが示された.. 刺激と手続き 色刺激は,交照法を用いて主観的等輝度. これらの結果は,盲点におけるフィリングインのメカニ. に統制した.独立変数は,色(赤,緑,青,灰)と方位(水. ズムが方位によって異なることを示唆する.位置と方位の. 平,垂直)であった.その他は,実験 2 と同様であった.. ミスマッチ条件ではその他の刺激特性と結果が異なること から, 2 本の線分が整列していない場合に,フィリングイ. 結果と考察. ンの異方性の傾向が変わると考えられる.. 2 要因分散分析の結果,方位の主効果が統計的に有意で. この異方性の傾向の違いは,フィリングインの際に反応. あった(F(1,6)=10.382, p <.05) .色の主効果は有意では. する V1 の 6 層のニューロンの受容野の形状によるものか. なかった.Fig.10 にフィリングインに必要な線分の長さの. もしれない.そのニューロンの受容野は水平方位に盲点領. 平均値を方位別に示す.. 域を越えるような横長の楕円形あるいは円形であり,これ. Length of line for Filling-in(deg). 4. N=7. が水平結合 (Komatsu et al., 2002) に影響し,異方性をもた Horizontal. Vertical. らしていると考える.また,2 本の線分が整列していない 場合には,水平方位ではミスマッチが検出されやすく,垂. 3. 直方位では検出されにくいことから異方性が生じるものと 考える.. 2. 本研究では,盲点におけるフィリングインへの V1 の関 与が示唆された. 更なるメカニズムの解明のために, 今後,. #. 線分刺激の運動,形態特性や複雑な面刺激を用いて,V1 以降の高次視覚野の関与を検討することが必要である.. 0 Red. Green. Blue. Gray. Color of line. Fig. 10. 方位別色によるフィリングインに要する線分の長. 7.引用文献 .引用文献. さ.. Komatsu, H., Kinoshita, M., & Murakami, I. 2002 Neural responses in the primary visual cortex of the monkey during. この結果は,フィリングインに要する線分の長さが色に よらないこと,および水平方位よりも垂直方位でフィリン グインに要する線分の長さが長くなる傾向は色に依存しな いことを示す.. perceptual filling-in at the blind spot. Neuroscience Research, 44, 231-236. Ramachandran, V. S. 1992 Filling in gaps in perception: Part1. Current Directions in Psychological Science, 1, 199-205. Virsu, V., & Hari, R.. 6.総合考察 .総合考察 6 つの実験より,盲点におけるフィリングインに要する 線分の長さは,水平から垂直へと線分が傾くにつれて,系 統的に長くなること,その異方性は網膜偏心度による皮質. 1996. Cortical magnification, scale. invariance and visual ecology. Vision Research, 36, 2971-2977..

(5)

Fig. 5. V1 皮質上での線分の水平・垂直比と盲点の水平・垂 直比.
Fig. 9.  方位別フィリングインが生じる最大輝度. d θ (b) (c) (a)

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